バケット型ジョークラッシャ
【課題】この発明は、スラグその他の廃材処理に使用されるバケット型ジョークラッシャの改良に関する。
【解決手段】建設機械のアームに取付けられるバケットと、該バケット内に固定されたジョー固定歯と、該ジョー固定歯に対峙して上部を偏心軸に軸支し下部をトッグル機構で支持するジョー動歯とを設け、ジョー動歯の往復揺動によりスラグその他の被破砕物を破砕するバケット型ジョークラッシャにおいて、クラッシャー部の左右のバケット側板の内側に、ジョー固定歯とジョー動歯の開口姿勢に対応した略三角形状の耐摩耗性鋼板からなるライナープレートを着脱可能に配置してなることを特徴とするバケット型ジョークラッシャ。
【解決手段】建設機械のアームに取付けられるバケットと、該バケット内に固定されたジョー固定歯と、該ジョー固定歯に対峙して上部を偏心軸に軸支し下部をトッグル機構で支持するジョー動歯とを設け、ジョー動歯の往復揺動によりスラグその他の被破砕物を破砕するバケット型ジョークラッシャにおいて、クラッシャー部の左右のバケット側板の内側に、ジョー固定歯とジョー動歯の開口姿勢に対応した略三角形状の耐摩耗性鋼板からなるライナープレートを着脱可能に配置してなることを特徴とするバケット型ジョークラッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スラグその他の廃材処理に使用されるバケット型ジョークラッシャの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業機のアームに装着されるバケット型のジョークラッシャとして、例えば特開2009−45529(特許文献1)の石を粉砕並びに選別するためのバケットでは、石のような材料のための入口開口部と出口開口部と、この入口開口部と出口開口部との間の前記石のような材料の流れ方向とを規定しているスコップ形状の本体と、この本体内に装着され、互いに対向した第1並びに第2のジョーと、この第1のジョーを第2のジョーに対して接離させて、これらジョー間を流れる前記石のような材料を粉砕するために、前記第1のジョーに少なくとも関連し、回動軸線を中心とした前記第1のジョーの第1の回動および並進の移動を与えるように、回動軸線を中心として回動する部材と前記第1のジョーとの間に偏心接続部を有する移動手段と、前記第1のジョーの第2の回動および並進の移動を与えるための、前記本体と前記第1のジョーとの間のトグル接続部とを具備し、このトグル接続部は、それぞれの枢支軸線を中心として回動するように、前記第1のジョーと本体とに枢支された支柱を有し、この支柱は、前記両枢支軸線を結ぶ線分が、前記支柱と第1のジョーとの間の枢支軸線と、前記回動軸線とを結ぶ線分に対して、90°より大きな角度で傾斜されるように、前記第1のジョーと本体との間に延び、このバケットは、セル状の構造体が形成された下部と、前記本体のそれぞれの側部に装着された補強プレートとを含んでいるバケットの構造が開示されている。
また、特開2009−56423(特許文献2)のバケット型ジョークラッシャでは、バケット底内面に、ジョー固定歯を設け、それに対向して、上部を油圧モータにより駆動する偏心主軸に軸支し、下部をトッグルプレートで支持して、逆八字形の配置で、ジョー動歯により、被破砕物を破砕できるようにした油圧ショベルのアームに取り付けるバケット型ジョークラッシャにおいて、偏心主軸の一方側の油圧モータと他方側のフライホイールとの中間部に、カウンターウェイトを設けてバランスを調整できるようにし、偏心主軸の回転により、ジョー動歯を被破砕物を上部から下部に押し下げるように往復動させながら、トッグルプレートを先上りの勾配に取り付けて、被破砕物をジョー固定歯に押しつけることにより、強力かつ微細に破砕できるようにしたバケット型ジョークラッシャの構造が開示されている。
【0003】
これらのバケット型ジョークラッシャでは、バケットの前方の開口から掬込み部に掬い込まれた被破砕物は、クラッシャー部のジョー固定歯とジョー可動歯の広く開口した投入口から投入されて破砕機構による破砕処理が行われるが、破砕機構が稼働中は常時、破砕物がぶつかりもまれて摩耗損傷する。
摩耗部分はメンテナンス時に耐摩耗の肉盛り溶接で補修することもできるが、バケット全体の寿命に大きな影響を与える。
一方、バケット型ジョークラッシャは建設機械のアーム先端に取り付けるため、全体の重量が制約されており、バケット側板だけを厚肉に設定しても限度がある
従来のバケットでは、バケット側板の損傷した部分だけを交換できず、バケット側板全体を交換する必要があり、分解に手間がかかり、また補修費用も高額となっていた。
【0004】
更に、バケット型クラッシャの重量制限に対処するため、ジョー動歯の軽量化が図られているが、ジョー動歯の歯板の先端はジョー動歯のベース部分に一体に形成された鉤状の掛止部に掛け止められているので、マンガン製の歯板に伸びが生じた場合にこれを吸収することができず掛止部に亀裂や破損が生じるが、ベース部分全体の補修が必要になるという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−45529号公報
【特許文献2】特開2009−56423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、バケット側板の内側にライナープレートを着脱可能に固定しておき、破砕処理時のバケット側板方向への衝撃をライナープレートで受けさせてバケット側板を保護し、ライナープレートの摩耗・損傷時にはライナープレートだけを交換することができるようにしたバケット型ジョークラッシャを提供することにある。
この発明の更なる課題は、トッグルプレートとトッグルシートの接触面を最小限にすることで、潤滑油の供給を必要とせず連続したスムーズな運動でテンションスプリングにも偏加重を与えることのない信頼性の高いトッグル機構を提供することにある。
この発明の更に別の課題は、ジョー動歯の歯板の伸びに対して、緊締具のテンションの調整でこれを吸収でき、また簡単に交換することができる歯板固定爪部を設けたバケット型ジョークラッシャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、
建設機械のアームに取付けられたバケットが、バケット前方の投入口側に設けた掬込み部と、該掬込み部の後方に設けたクラッシャー部と、バケット後端の排出口とを有しており、前記クラッシャー部に、バケット内に固定されたジョー固定歯と、該ジョー固定歯に対峙して上部を偏心軸に軸支し下部をトッグル機構で支持するジョー動歯とを設け、前記ジョー固定歯とジョー動歯とを上部の空間を投入口として広く開口し下部に向かって徐々に狭くして下部が排出口となるように配置し、前記ジョー動歯の往復揺動によりスラグその他の被破砕物を破砕するバケット型ジョークラッシャにおいて、
クラッシャー部の左右のバケット側板の内側に、ジョー固定歯とジョー動歯の開口姿勢に対応した略三角形状の耐摩耗性鋼板からなるライナープレートを着脱可能に固定してなることを特徴とする。
上記ライナープレートには外方へ突出するスタッドボルトが固着しており前記バケット側板の外側からナットにより着脱可能に固定してなる。
【発明の効果】
【0008】
この発明のバケット型ジョークラッシャでは、バケット側板の内側にジョー固定歯とジョー動歯の開口姿勢に対応した略三角形状の耐摩耗性鋼板からなるライナープレートを着脱可能に固定することで、バケット側板をライナープレートで保護することができ、ライナープレートが摩耗、損傷した場合にはそのライナープレートだけを新しいライナープレートに交換するだけで、簡単、且つ廉価に摩耗、損傷を解消することができる。
また、トッグル機構は、トッグルプレートとトッグルシートとの接触を最小限とすることで、ジョー動歯の動きに伴うトッグルプレートの変位を連続的に且つスムーズに行うことができ、テンションスプリングにも偏加重を与えることなく信頼性を高めることができる。
そして上下に防塵用のカバーを設けることでバケット型ジョークラッシャを倒立させてもトッグル機構はダストによる影響を受けることがない。
更にジョー動歯の歯板の伸びに対して、歯板を拘束するために別体の歯板固定爪部を設けることで、歯板固定爪部のボルトなどの緊締具のテンションの調整で伸びを吸収でき、また歯板固定爪部自体を簡単に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)はバケット型ジョークラッシャの側面図、(b)は内部を横断した平面図である。
【図2】(a)は破砕機構を開いた状態のバケット型ジョークラッシャの断面図、(b)はトッグル機構の拡大図である。
【図3】破砕機構の中間の状態のバケット型ジョークラッシャの断面図である。
【図4】破砕機構を閉じた状態のバケット型ジョークラッシャの断面図である。
【図5】破砕機構の中間の加圧状態のバケット型ジョークラッシャの断面図である。
【図6】(a)はバケットの入口開口を下向きにした状態、(b)は被破砕物にバケットの先端を貫入した状態の油圧ショベルの側面図である。
【図7】(a)はバケットで掬い込んだ状態、(b)はチルトアップした状態の油圧ショベルの側面図である。
【図8】(a)はバケットの出口開口を下向きにして上昇させた状態、(b)は建設機械の上部旋回体を反転して排出場所に破砕物を排出する状態の油圧ショベルの側面図である。
【図9】(a)から(c)は建設機械のブームやアームと衝合せずにバケットを回転しうる状態を示す側面図である。
【図10】バケット型ジョークラッシャの出口開口側から見た斜視図である。
【図11】ライナープレートの斜視図である。
【図12】(a)はバケット型ジョークラッシャに内蔵された油圧回路図、(b)はブロック図である。
【図13】(a)はカバーの一例を示す斜視図、(b)はカバーの別の例を差示す斜視図、(c)はカバーの異なる例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、この発明のバケット型ジョークラッシャの好適実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
本実施例のバケット型ジョークラッシャ1は、油圧ショベル20のアーム21(図6参照)に取付けられるバケット1が、バケット前方の投入口側に設けた掬込み部1Aと、掬込み部1Aの後方に設けたクラッシャー部1Bと、バケット後端の排出口とを有している。
クラッシャー部1Bには、バケット1内に固定されたジョー固定歯5と、該ジョー固定歯5に対峙して上部を偏心軸7に軸支し下部をトッグル機構8で支持するジョー動歯6とを有している(図2〜5参照))。
また、該ジョー動歯6の駆動装置としてピストン式油圧モータ9の出力軸に設けられた駆動プーリーP1と、前記偏心軸7に設けられた従動プーリーP2と、両プーリー間に掛け渡される無端ベルトBとからなっている(図1(a)参照)。
【0012】
[バケット]
バケット1は、前述の通り、掬込み部1Aとクラッシャー部1Bとからなっている。
クラッシャー部1Bにはジョー固定歯5とジョー動歯6とからなる破砕機構を内蔵しており、破砕機構の投入側となる掬込み部1Aに砕石やスラグその他の被破砕物を掬い込むための入口開口部3を有し、破砕機構の排出側となる他方に出口開口部4を有し、入口開口部3から出口開口部4まで貫通する破砕通路Wを有する公知形状からなっている。
【0013】
このバケット1の底面30は、図1及び図10で示すように、掬い込み部1Aの底面となる底面前部31が先端が上方位置にあって徐々に下降する傾斜面となっている。
また、本実施例では、掬込み部1Aの底面上に、バケットの投入口先端から後述のジョー固定歯の歯板の先端に連なるように湾曲面からなる掬い面部1aが設けられた二重底構造となっている。
バケット1はブラケットとアームとの枢着個所を支点にして回転するので、上記掬い面部1aによってスムーズに被破砕物を掬い上げ破砕機構に投入することができる。
【0014】
次に、クラッシャー部1Bの底面は、前記底面前部31につながって後方に延びる底面本体32であって、前記傾斜面の下端から上方に折れ曲がる前方脚部33を設けて略水平に延びる底上げ面を有している。
【0015】
前方脚部33は、本実施例では断面略V形状からなっており、また底面本体32の後端には断面略横倒コ字状の後方脚部34が突設されており、前方脚部33と後方脚部34とはほぼ同じ高さとなっている。
本実施例では前方脚部33と後方脚部34とは底面30の左右両側の底面縁部に沿って設けられた枠体からなっている。
そして、底面の後端は上向きに傾斜して排出口となる出口開口部4の左右の縁部となっている。
また、前方脚部33と後方脚部34の形状は前記実施例に限定されるものではなく、下方に突出する形状であればよい。
【0016】
[ライナー材]
そして、前記前方脚部33には、その底部を覆うように断面略く字状に曲折された耐摩耗性を有する前方ライナー材43が固着されており、また後方脚部34には、その底部を覆うように扁平面からなる後方ライナー材44がそれぞれ固着されている。
ライナー材の形状は前方脚部33や後方脚部34の底部を覆うものであればよく、その形状は前記実施例に限定されない。
これによりバケット1の底面30は4点で支持され、それ以外の底面前部31及び底面本体32はいずれも水平面に対して中空位置に保持されているので、底面30が被破砕物と接触しにくくなり、被破砕物の掬い込みに際しても擦れて摩耗や損傷を生ずることがない。
【0017】
[ジョー固定歯]
前記バケット1内で底面側に沿ってジョー固定歯5が固定されている。
該ジョー固定歯5は、その表側に突条及び溝が破砕方向に延びる断面凹凸状の一方の歯部(図示せず)を有している。
【0018】
[ジョー動歯]
前記バケット1内でジョー固定歯5と対峙してジョー動歯6が配置されており、ジョー固定歯5とジョー動歯6の間の空間が被破砕物が移動する破砕通路Wとなっている。
前記ジョー動歯6は、ジョー固定歯5の歯部に対向する表側にその突条及び溝に噛み合うようにピッチをずらして破砕方向に延びる突条及び溝からなる他方の歯部(図示せず)を有している。
【0019】
ここで、上記ジョー動歯6は、ベースフレーム6A上にマンガン製の歯板6Bを取り付けた構造からなっている(図2(b)参照)。
上記歯板6Bをベースフレーム6Aに掛止める歯板固定爪部60がジョー動歯6と別体に形成されている。
該歯板固定爪部60は鉤部61と該鉤部61に一体に形成された基部62とを有している。
部61が掛け止められた状態で前記基部62が前記ベースフレーム6Aにボルト等の緊締具63で着脱可能に緊締されている。
【0020】
バケット型クラッシャは、自走式クラッシャや固定式クラッシャに比べて軽量化された歯板6Bが用いられているが、歯板6Bは素材であるマンガンの特性上伸びが生じ、伸びによる荷重が歯板6Bと接触する歯板固定爪部60に加わる。
そこで、歯板6Bの伸びをボルト等の緊締具のテンションの調整や歯板固定爪部60を損傷、破損させることで吸収することができる。
損傷、破損した歯板固定爪部60は緊締具を取り外すことで容易に交換できる。
【0021】
前記ジョー動歯6は、上部がバケット内で正逆方向に回転可能に軸支された偏心軸7に固定され、下部が荷重受部82を介してトッグル機構8を構成するトッグルプレート81に支持されており、バケット1の入口開口部3を、ジョー固定歯5とジョー動歯6との空間を投入口として広く開口し、バケット1の出口開口部4に向かって徐々に狭くして先端が排出口となるように略テーパ状に配置している。
【0022】
[トッグル機構]
本実施例で、トッグル機構8は、トッグルプレート81と、該トッグルプレート81の受部としての可動側トッグルシートとなる第1荷重受け部82及び固定側トッグルシートとなる第2荷重受け部83と、テンションロッド84とからなっている。
トッグルプレート81は、前記第1荷重受け部82及び第2荷重受け部83と接する支柱本体の両端が断面円弧状、より好ましくは断面略半円形状に形成されている。
【0023】
また、第1荷重受け部82は、ジョー動歯6の下端に固定されており、前記トッグルプレート81の他方の端部の円弧と同じ向きでより大径の曲率に設定された断面円弧状で前記他方の端部と断面上で点接触する接触面を有している。
図示例では、トッグルプレート81の中央を中心にした端部の回転軌跡に沿った湾曲面からなっている。
ここで、トッグルプレート81の他方の端部と第1荷重受け部82の接触面とはいずれも熱処理を施しており耐摩耗性を有している。
【0024】
第2荷重受け部83は、バケットフレームに設けられており、前記トッグルプレート81の一方の端部より大径の曲率に設定された断面円弧状で前記一方の端部と断面上で点接触する接触面を有している。
図示例では、ジョー動歯6の変位と一体に変位する第2荷重受け部83に対してトッグルプレート81の他端が連動して転動しうるように一方の端部より大きい曲率で第1荷重受け部82の接触面より小さい曲率に設定された湾曲面からなっている。
【0025】
ここでも、トッグルプレート81の一方の端部と第2荷重受け部83の接触面とはいずれも熱処理を施しており耐摩耗性を有している。
これにより、トッグルプレート81の両端部は第1荷重受け部82及び第2荷重受け部83に対して線接触(断面上では点接触)しながらトッグルプレート81の中央を回転中心としてスムーズに転動させることができる。
【0026】
このトッグルプレート81は、ジョー動歯6に固定されたリングLに先端のU字状のフック部84aが掛け止められたテンションロッド84とバネ85を介して、前記接触個所が受面(接触面)から離脱しないよう拘束されると共に、ジョー動歯6の垂直面より偏心軸7側へ上り勾配に取りつけることにより、偏心軸7の回転(正回転)によりジョー動歯6の下部を固定歯5に接近乃至離間方向に入口開口部側で略円形に動いて往復揺動するジョー動歯6を、被破砕物をはさんでジョー固定歯5に押しつけるように動作させる。
なお、下部荷重受け部83の下面の調整板86の取付枚数を増減させることにより、ジョー動歯6とジョー固定歯5の下端の間隙を調整し、被破砕物の破砕寸法を増減することができる。
【0027】
また、トッグルプレート81の一方の端部と第2荷重受け部83との接触面を覆うようにトッグルプレート81に通して固定した防塵用の固定側カバーC1を設け、同様にトッグルプレート81の他方の端部と第1荷重受け部82との接触面を覆うようにトッグルプレート81に通して固定した防塵用の可動側カバーC2を設けておけば、バケット型ジョークラッシャを上下転倒させてもトッグル機構はダストによる影響を受けることがない。
【0028】
ここで、図2(a)は、出口開口部4を最も開いた状態の図であり、図3は開き始めの中間状態の図であり、図4は出口開口部4を閉じた状態の図であり、図5は閉じ始めの中間圧縮状態の図である。
【0029】
[ライナープレート]
前記クラッシャー部1Bのバケット側板には、その内側に耐摩耗材の一例として高マンガン鋳鋼製のライナープレート22が着脱可能に取り付けられている(図11参照)。
即ち、クラッシャー部1Bのバケット側板は、破砕機構が稼働中は常時、破砕物がぶつかりもまれて摩耗損傷する。
摩耗部分はメンテナンス時に耐摩耗の肉盛り溶接で補修することもできるが、バケット全体の寿命に大きな影響を与える。
一方、バケット型ジョークラッシャ1は建設機械のアーム先端に取り付けるため、全体の重量が制約されている。
そこで、クラッシャー部1Bの側板で破砕機構となるジョー固定歯5とジョー動歯6の開口姿勢(待機姿勢)の側面を完全に覆うように対応して略三角形状のライナープレート22が側板に着脱可能に取り付けられる。
【0030】
本実施例ではライナープレート22は、図示例の場合、前記開口姿勢のジョー固定歯5とジョー動歯6の長手方向の中央と前記歯の基端となる投入口側の略中間位置を基端とし、徐々に幅狭となって排出口まで伸びている。
また、図示例の場合、基端側は同じ幅となり略コ字状となっている。
このライナープレート22には、外向きに水平に突出するスタッドボルト23が一体に固着(溶着)されており、クラッシャー部1Bの側板には上記スタッドボルト23に対応する位置にボルト孔24が穿設されている。
【0031】
そこで、前記側板の内壁面側にライナープレート22をあてがい、スタッドボルト23をボルト孔24に通して、側板の外側に突出させ、突出部分をナット25で緊締することでライナープレート23を側板2の内壁面に着脱可能に固着することができる。
これにより破砕機構で被破砕物が側板に押し付けられてもバケットの側板が傷むことなく高寿命化を図ることができる。
【0032】
[カバー]
前述のように、バケットの側板2の外側前方に偏心軸7と油圧モータ9の出力軸が突出しており、偏心軸7には従動プーリーP2が連結され、同時に破砕エネルギーを蓄えるためのフェイスホイール状のカウンターウエイトWが取り付けられている。
また、前記側板2の外側後方には、油圧モータ9の出力軸に連結された駆動プーリーP1が連結されており、無端ベルトBによりベルト伝動されている。
【0033】
そして、図13に明瞭なように、プーリーP1、P2と無端ベルトBの保護及び保安のためにカバー10が取り付けられている。
カバー10は、前方が大径の従動プーリーP2を覆うため大径の略半円形状からなり、中間部分が徐々に幅が狭まり、後方が小径の駆動プーリーP1を覆うため小径で逆向きの略半円形状からなってバケットの側板2と平行に離間する外壁部と、該外壁部10Aとバケットの側板2との間を塞ぐ周壁部10Bとからなっている。
【0034】
バケットの反対側の側板2’には、前記偏心軸7の他方端が外方へ突出しており、前記従動プーリーP2と同じ大きさのフライホイールP3が連結され同時にカウンターウエイトWが取り付けられる。
本実施例では、上記フライホイールP3の保護及び保安のために、同様のカバー10’が取り付けられている。
上記カバー10’は、反対側のカバー10と同一形状であってもよいし、フライホイールP3を覆うだけの短い形状であってもよい。
【0035】
そして、前記カバー10には、バケットの入口開口3側となる周壁部10Bには、傾斜面が形成されている。
即ち、カバー10の外壁面10Aの前方の輪郭より前方のバケットの側板2に周壁部10Bの先端が接して取り付けられ、該先端から外壁面10Aの先端縁部までが徐々に隆起する傾斜面に設定されている。
従来のカバーは周壁部が側板2に対して略直角に立ち上げる垂直面であるため、特に正面に向かう前面部分では、バケットから外れた被破砕物の衝撃を周壁部が直角に当たるため、周壁部や外壁部の角部が変形したり損傷する虞れがあったが、本実施例では周壁部10Bを傾斜面とすることで、被破砕物の衝撃を緩和して、カバー10の変形や損傷を防ぐことができる。
【0036】
図13(a)は、カバー10の前方の周壁部10Bを一連の傾斜面に設定した場合を示すもので、外壁面10Aの先端縁部の形状を略円弧形状とし、周壁部10Bの先端を前記外壁面10Aの先端縁部と略同心大径の略円弧形状に設定してカバー10の外壁面10Aより前方に離間した位置で側板2に接するように取付け、一連の略C字状の傾斜面11とした構造を示す。
図13(b)は、カバー10の前方の周壁部10Bを複数の傾斜面の組合せ形状とした場合を示すもので、周壁部10Bの先端縁部をカバー10の外壁面10Aより前方に離間した位置で側板2に接するように取付け、周壁部の先端縁部と外壁面の先端縁部とを複数の略四角形の傾斜面12でつないだ形状となっている。
図13(c)は、四角形に替えて、略三角形や梯形の傾斜面の組合せ形状としたものであり、前方の周壁部10Bを略三角形や略梯形の傾斜面13の組合せで形成した形状となっている。
【0037】
前記傾斜面11〜13は、側板2から外方に向かって傾斜すればよく、更に上方に向かっても傾斜するもの、あるいは下方に向かっても傾斜するものであってもよい。
また、稜線部分は角を立てず湾曲面とすることが好ましい。
上記実施例では、側板2に対して傾斜する傾斜面を示したが、被破砕物がぶつかる方向に対して傾斜していればよいので、側板2に対して直角となる垂直面であっても、周壁部10Bの上部又は下部であれば傾斜面として用いることができ、これらを組み合わせて前方の周壁部10Bとすることができる。
【0038】
また、カバー10の外壁面10Aの中途位置には、前部が略半円形で後部が略方形状の隆起部15が形成されている。
該隆起部15の半円形状の稜線15Aに対する厚み方向の面15aが円弧状に湾曲し、方形状の上下の稜線15Bが、内側から外方へ向かって漸次傾斜する傾斜面15bに形成されている。
前記各傾斜面により被破砕物をカバー10の外方へガイドすることができるので、被破砕物がカバー10の周壁面10Bに直接に衝合せず、変形や破損を防止することができる。
上記構成は、カバー10’においても同様の構成とすることができる。
【0039】
[駆動構造]
前記偏心軸7は、バケット1の一方の側板2の入口開口部3寄りで外方へ突出し、該突出部分にフライホイールとなる大径の従動プーリーP2が固定されている。
前記偏心軸7は、従動プーリーP2の回転軸に、該回転軸の中心から偏心した位置により大径の断面円形の偏心部7aが一体に取り付けられた公知構造からなっている。
なお、従動プーリーP2同軸で対応する側板2’の外側には対となるフライホイールP3が取り付けられている。
図中Wは、従動プーリーP2やフライホイールP3に固着されたカウンターウエイトである。
【0040】
また、前記一方の側板2に沿って、前記偏心軸7から出口開口部4側に離間した位置で側板2の内側にピストン式油圧モータ9が固定されている(図1(b)参照)。
このバケット型ジョークラッシャに内蔵され、ピストン式油圧モータ9を備えた油圧回路は、油圧ショベル20の公知の油圧回路(図示せず)と接続されている。
【0041】
本実施例で一例を示すバケット型ジョークラッシャに内蔵される油圧回路は、図12(a)に示すように、正回転側のポートと逆回転側のポートを有するピストン式の油圧モータ9に、油圧ショベル20に装備されたアタッチメント用の油圧回路のポンプ側のポートPとタンク側のポートTとを接続している。
油圧モータ9が正回転すると偏心軸7を介してジョー動歯6が破砕方向に動く。
この油圧回路に第1、第2油圧パイロット切換弁V1,V2と、絞りC1、C2、C4及びチェック付き逆止弁C3、C5を有する破砕制御回路が設けられている。
オペレータが油圧ショベル20に設けられた図示しない破砕作業用のペダルを踏み込むと、ペダル踏み初期はPポートから入るラインの油圧が低い為、第1油圧パイロット切換弁V1はスプリングの付勢力で図示の逆転位置(a)になっており、オイルは油圧モータ9の逆回転側のポートM2に供給される。
【0042】
これにより油圧モータ9が逆回転を始めると、油圧モータ9から出たオイルはM1ポートからチェック付き逆止弁C5に流れ、第1油圧パイロット切換弁V1を通り、Tポートに戻る。
前記チェック付き逆止弁C5を通過したオイルは、その流れる量が制限されるので、油圧モータ9の逆回転は、正回転に比べ遅く回転させることができる。
【0043】
また、Pポートから図中点線で示すパイロットラインに入るオイルは、絞りC1,C2により徐々に圧力が上がり、一定の圧力に達すると第2油圧パイロット切換弁V2を図示のドレンへの通過位置(c)から遮断位置(d)に切り替え、第1油圧パイロット切換弁V1のパイロットポートに圧油を送って第1油圧パイロット切換弁V1を正転位置(b)に切換え、オイルを油圧モータ9の正回転側のポートM1に供給し、油圧モータ9は正回転する。
オイルは油圧モータ4からM2ポートを通り第1油圧パイロット切換弁V1を通り、Tポートに戻る。
【0044】
これにより、破砕作業に際して、ペダル踏み込み初期のみ油圧モータ9を逆回転させ、以後は油圧モータ9を正回転させることができる。
初期の逆回転の回数は1回転未満から数回転程度が好ましいが、この発明では特に限定されない。
前記パイロット圧を調整することで第1油圧パイロット切換弁V1の位置の切換のタイミングを変更してもよく、被破砕物の種類や形状などの条件に対応して適宜実験的に定めることができる。
【0045】
上記実施例では、油圧ショベルに装備されたアタッチメント用の油圧回路として一方向に循環するモードを用いた場合を例に説明したが、この発明では上記油圧回路に限定されない。
例えば、方向切替弁により正転、逆転の双方向に切り替えて循環するモードを用いてもよい。
油圧回路では、破砕作業時に、ペダルを踏み込むと、自動的に最初に油圧モータ9を逆回転させ、次いですぐに正回転させつづける構成であれば、どのような回路構成であってもよい。
これにより、図8(b)に示すようにバケットの開口がほぼ真上を向いた位置でスラグ等の硬い被破砕物のチョーク状態から破砕処理をスタートするバケット型ジョークラッシャにおいて、シングルトッグル機構から生じるジョー動歯6の運動特性を利用した破砕を行うことができる。
【0046】
また、作業中にスラグ等に含有された金属等、硬い異物を噛み込んでジョー動歯が停止した場合にも、まずモータ9を止めて破砕処理を停止する。
次いで、油圧ショベルのアームを上方向に移動させ、同時にバケット1を反転させる(図6参照)。
これによりバケット1内の破砕通路W内に残留した被破砕物が落下する。
次いで、オペレータは、破砕作業用の操作ペダルを踏み込むことで、油圧モータ9が最初に逆回転するので、これにより噛み込んだ異物を除去することにも利用してもよい。
【0047】
このように構成されたピストン式油圧モータ9の出力軸が前記側板2から外方へ突出し、該突出部分に小径の駆動プーリーP1が固定されている。
これにより、従動プーリーP2と駆動プーリーP1とは側板2の外側に並んで配置され、従動プーリーP2と駆動プーリーP1の間に無端ベルトBが掛け渡されており、無端ベルトBには平ベルトが使用された平ベルト伝動構造となっている。
【0048】
上記構成からなっているので、破砕機構は、まずバケット1内に組み込んだ油圧モータ9の出力軸に接続された駆動プーリーP1から平ベルトBを使って、偏心軸7に取り付けた従動ホイールP2を回転させる。
偏心軸7は偏心して回転するもので、ジョー動歯6の排出側に設けたトッグル機構8に組合せ、ジョー動歯6の排出側に往復揺動運動を与える。
【0049】
破砕機構の破砕通路Wは、入口(供給)側から出口(排出)側に向かって徐々に容積が狭くなっている。
往復揺動運動を得る目的で、重力で下に移動する被破砕物に対し、破砕のための圧縮荷重を与えることになる。
【0050】
被破砕物が硬いスラグである場合には、偏心軸7は常に破砕時の強い衝撃荷重を受けるが、フライホイールの従動プーリーP2は、ジョー動歯6の復帰時のエネルギーを蓄え、これを圧縮破砕時に放出することで、大きな負荷変動を緩和する。
また、無端ベルトBには平ベルトを採用することで、スラグ中に含有する金属などの硬い異物を噛み込んだ時に受ける大きな衝撃負荷を一瞬の伸びやスリップで緩和することができる。
【0051】
更に、ベルト駆動を作用することは、駆動用油圧モータの出力軸への負荷を低減し、軸廻りからの油漏れのリスクを低くしている。
ベルト駆動は、高速で回転する油圧モータ9の出力軸の回転数を偏心軸7で本実施例では約1/4から1/5の範囲で減速することで逆に油圧モータ9の出力軸トルクを4から5倍に上げたことになり、駆動廻りの設計をコンパクトにできる。
【0052】
この発明では、被破砕物としては特に限定されないが、スラグの破砕処理に適するので、スラグ破砕機として用いてもよい。
本実施例では、バケットを建設機械のブームやアームと干渉しない回転軌跡を有するように外周形状を設定したので、作業性に優れる(図9(a)から(c)参照)が、この発明では上記形状に限定しなくてもよい。
【0053】
また、上記実施例ではモータとして油圧モータを用いた場合について説明したが、油圧回路は実施例の構造に限定されない。また、油圧モータに替えて電動モータを用い、それを制御する電気回路を用いてもよい。
電動モータ9の場合も、オペレータが建設機械で破砕作業用のペダル又はスイッチを投入すると、電動モータは最初は偏心軸7を逆回転させ、続いてすぐに偏心軸を正回転させて破砕作業を行う破砕制御回路を設ければよい(図12(b)参照)。
【0054】
特に、電動モータを使用する場合、正回転のみで破砕処理を行おうとすると、チョークによるオーバーロードにより、電動機定格の200〜300%の過負荷をかけることになりサーマルリレーやフューズの切断をしないと停止できず、これを頻繁に繰り返すと故障の原因となるため、過負荷リレー等で機械を保護する必要があったが、破砕作業時に、最初に逆回転させ、続いて正回転させることで、そのような不具合を防ぐことができる。
その他、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々に設計変更しうる。
【符号の説明】
【0055】
1 バケット
2 側板
3 入口開口部
4 出口開口部
5 固定歯
6 ジョー動歯
7 偏心軸
8 トッグル機構
9 ピストン式油圧モータ
10 カバー
20 油圧ショベル
21 アーム
81 トッグルプレート
82 第1荷重受け部
83 第2荷重受け部
84 テンションロッド
85 バネ
B 無端ベルト
P1 駆動プーリー
P2 従動プーリー
W 破砕通路
【技術分野】
【0001】
この発明は、スラグその他の廃材処理に使用されるバケット型ジョークラッシャの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業機のアームに装着されるバケット型のジョークラッシャとして、例えば特開2009−45529(特許文献1)の石を粉砕並びに選別するためのバケットでは、石のような材料のための入口開口部と出口開口部と、この入口開口部と出口開口部との間の前記石のような材料の流れ方向とを規定しているスコップ形状の本体と、この本体内に装着され、互いに対向した第1並びに第2のジョーと、この第1のジョーを第2のジョーに対して接離させて、これらジョー間を流れる前記石のような材料を粉砕するために、前記第1のジョーに少なくとも関連し、回動軸線を中心とした前記第1のジョーの第1の回動および並進の移動を与えるように、回動軸線を中心として回動する部材と前記第1のジョーとの間に偏心接続部を有する移動手段と、前記第1のジョーの第2の回動および並進の移動を与えるための、前記本体と前記第1のジョーとの間のトグル接続部とを具備し、このトグル接続部は、それぞれの枢支軸線を中心として回動するように、前記第1のジョーと本体とに枢支された支柱を有し、この支柱は、前記両枢支軸線を結ぶ線分が、前記支柱と第1のジョーとの間の枢支軸線と、前記回動軸線とを結ぶ線分に対して、90°より大きな角度で傾斜されるように、前記第1のジョーと本体との間に延び、このバケットは、セル状の構造体が形成された下部と、前記本体のそれぞれの側部に装着された補強プレートとを含んでいるバケットの構造が開示されている。
また、特開2009−56423(特許文献2)のバケット型ジョークラッシャでは、バケット底内面に、ジョー固定歯を設け、それに対向して、上部を油圧モータにより駆動する偏心主軸に軸支し、下部をトッグルプレートで支持して、逆八字形の配置で、ジョー動歯により、被破砕物を破砕できるようにした油圧ショベルのアームに取り付けるバケット型ジョークラッシャにおいて、偏心主軸の一方側の油圧モータと他方側のフライホイールとの中間部に、カウンターウェイトを設けてバランスを調整できるようにし、偏心主軸の回転により、ジョー動歯を被破砕物を上部から下部に押し下げるように往復動させながら、トッグルプレートを先上りの勾配に取り付けて、被破砕物をジョー固定歯に押しつけることにより、強力かつ微細に破砕できるようにしたバケット型ジョークラッシャの構造が開示されている。
【0003】
これらのバケット型ジョークラッシャでは、バケットの前方の開口から掬込み部に掬い込まれた被破砕物は、クラッシャー部のジョー固定歯とジョー可動歯の広く開口した投入口から投入されて破砕機構による破砕処理が行われるが、破砕機構が稼働中は常時、破砕物がぶつかりもまれて摩耗損傷する。
摩耗部分はメンテナンス時に耐摩耗の肉盛り溶接で補修することもできるが、バケット全体の寿命に大きな影響を与える。
一方、バケット型ジョークラッシャは建設機械のアーム先端に取り付けるため、全体の重量が制約されており、バケット側板だけを厚肉に設定しても限度がある
従来のバケットでは、バケット側板の損傷した部分だけを交換できず、バケット側板全体を交換する必要があり、分解に手間がかかり、また補修費用も高額となっていた。
【0004】
更に、バケット型クラッシャの重量制限に対処するため、ジョー動歯の軽量化が図られているが、ジョー動歯の歯板の先端はジョー動歯のベース部分に一体に形成された鉤状の掛止部に掛け止められているので、マンガン製の歯板に伸びが生じた場合にこれを吸収することができず掛止部に亀裂や破損が生じるが、ベース部分全体の補修が必要になるという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−45529号公報
【特許文献2】特開2009−56423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、バケット側板の内側にライナープレートを着脱可能に固定しておき、破砕処理時のバケット側板方向への衝撃をライナープレートで受けさせてバケット側板を保護し、ライナープレートの摩耗・損傷時にはライナープレートだけを交換することができるようにしたバケット型ジョークラッシャを提供することにある。
この発明の更なる課題は、トッグルプレートとトッグルシートの接触面を最小限にすることで、潤滑油の供給を必要とせず連続したスムーズな運動でテンションスプリングにも偏加重を与えることのない信頼性の高いトッグル機構を提供することにある。
この発明の更に別の課題は、ジョー動歯の歯板の伸びに対して、緊締具のテンションの調整でこれを吸収でき、また簡単に交換することができる歯板固定爪部を設けたバケット型ジョークラッシャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、
建設機械のアームに取付けられたバケットが、バケット前方の投入口側に設けた掬込み部と、該掬込み部の後方に設けたクラッシャー部と、バケット後端の排出口とを有しており、前記クラッシャー部に、バケット内に固定されたジョー固定歯と、該ジョー固定歯に対峙して上部を偏心軸に軸支し下部をトッグル機構で支持するジョー動歯とを設け、前記ジョー固定歯とジョー動歯とを上部の空間を投入口として広く開口し下部に向かって徐々に狭くして下部が排出口となるように配置し、前記ジョー動歯の往復揺動によりスラグその他の被破砕物を破砕するバケット型ジョークラッシャにおいて、
クラッシャー部の左右のバケット側板の内側に、ジョー固定歯とジョー動歯の開口姿勢に対応した略三角形状の耐摩耗性鋼板からなるライナープレートを着脱可能に固定してなることを特徴とする。
上記ライナープレートには外方へ突出するスタッドボルトが固着しており前記バケット側板の外側からナットにより着脱可能に固定してなる。
【発明の効果】
【0008】
この発明のバケット型ジョークラッシャでは、バケット側板の内側にジョー固定歯とジョー動歯の開口姿勢に対応した略三角形状の耐摩耗性鋼板からなるライナープレートを着脱可能に固定することで、バケット側板をライナープレートで保護することができ、ライナープレートが摩耗、損傷した場合にはそのライナープレートだけを新しいライナープレートに交換するだけで、簡単、且つ廉価に摩耗、損傷を解消することができる。
また、トッグル機構は、トッグルプレートとトッグルシートとの接触を最小限とすることで、ジョー動歯の動きに伴うトッグルプレートの変位を連続的に且つスムーズに行うことができ、テンションスプリングにも偏加重を与えることなく信頼性を高めることができる。
そして上下に防塵用のカバーを設けることでバケット型ジョークラッシャを倒立させてもトッグル機構はダストによる影響を受けることがない。
更にジョー動歯の歯板の伸びに対して、歯板を拘束するために別体の歯板固定爪部を設けることで、歯板固定爪部のボルトなどの緊締具のテンションの調整で伸びを吸収でき、また歯板固定爪部自体を簡単に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)はバケット型ジョークラッシャの側面図、(b)は内部を横断した平面図である。
【図2】(a)は破砕機構を開いた状態のバケット型ジョークラッシャの断面図、(b)はトッグル機構の拡大図である。
【図3】破砕機構の中間の状態のバケット型ジョークラッシャの断面図である。
【図4】破砕機構を閉じた状態のバケット型ジョークラッシャの断面図である。
【図5】破砕機構の中間の加圧状態のバケット型ジョークラッシャの断面図である。
【図6】(a)はバケットの入口開口を下向きにした状態、(b)は被破砕物にバケットの先端を貫入した状態の油圧ショベルの側面図である。
【図7】(a)はバケットで掬い込んだ状態、(b)はチルトアップした状態の油圧ショベルの側面図である。
【図8】(a)はバケットの出口開口を下向きにして上昇させた状態、(b)は建設機械の上部旋回体を反転して排出場所に破砕物を排出する状態の油圧ショベルの側面図である。
【図9】(a)から(c)は建設機械のブームやアームと衝合せずにバケットを回転しうる状態を示す側面図である。
【図10】バケット型ジョークラッシャの出口開口側から見た斜視図である。
【図11】ライナープレートの斜視図である。
【図12】(a)はバケット型ジョークラッシャに内蔵された油圧回路図、(b)はブロック図である。
【図13】(a)はカバーの一例を示す斜視図、(b)はカバーの別の例を差示す斜視図、(c)はカバーの異なる例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、この発明のバケット型ジョークラッシャの好適実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
本実施例のバケット型ジョークラッシャ1は、油圧ショベル20のアーム21(図6参照)に取付けられるバケット1が、バケット前方の投入口側に設けた掬込み部1Aと、掬込み部1Aの後方に設けたクラッシャー部1Bと、バケット後端の排出口とを有している。
クラッシャー部1Bには、バケット1内に固定されたジョー固定歯5と、該ジョー固定歯5に対峙して上部を偏心軸7に軸支し下部をトッグル機構8で支持するジョー動歯6とを有している(図2〜5参照))。
また、該ジョー動歯6の駆動装置としてピストン式油圧モータ9の出力軸に設けられた駆動プーリーP1と、前記偏心軸7に設けられた従動プーリーP2と、両プーリー間に掛け渡される無端ベルトBとからなっている(図1(a)参照)。
【0012】
[バケット]
バケット1は、前述の通り、掬込み部1Aとクラッシャー部1Bとからなっている。
クラッシャー部1Bにはジョー固定歯5とジョー動歯6とからなる破砕機構を内蔵しており、破砕機構の投入側となる掬込み部1Aに砕石やスラグその他の被破砕物を掬い込むための入口開口部3を有し、破砕機構の排出側となる他方に出口開口部4を有し、入口開口部3から出口開口部4まで貫通する破砕通路Wを有する公知形状からなっている。
【0013】
このバケット1の底面30は、図1及び図10で示すように、掬い込み部1Aの底面となる底面前部31が先端が上方位置にあって徐々に下降する傾斜面となっている。
また、本実施例では、掬込み部1Aの底面上に、バケットの投入口先端から後述のジョー固定歯の歯板の先端に連なるように湾曲面からなる掬い面部1aが設けられた二重底構造となっている。
バケット1はブラケットとアームとの枢着個所を支点にして回転するので、上記掬い面部1aによってスムーズに被破砕物を掬い上げ破砕機構に投入することができる。
【0014】
次に、クラッシャー部1Bの底面は、前記底面前部31につながって後方に延びる底面本体32であって、前記傾斜面の下端から上方に折れ曲がる前方脚部33を設けて略水平に延びる底上げ面を有している。
【0015】
前方脚部33は、本実施例では断面略V形状からなっており、また底面本体32の後端には断面略横倒コ字状の後方脚部34が突設されており、前方脚部33と後方脚部34とはほぼ同じ高さとなっている。
本実施例では前方脚部33と後方脚部34とは底面30の左右両側の底面縁部に沿って設けられた枠体からなっている。
そして、底面の後端は上向きに傾斜して排出口となる出口開口部4の左右の縁部となっている。
また、前方脚部33と後方脚部34の形状は前記実施例に限定されるものではなく、下方に突出する形状であればよい。
【0016】
[ライナー材]
そして、前記前方脚部33には、その底部を覆うように断面略く字状に曲折された耐摩耗性を有する前方ライナー材43が固着されており、また後方脚部34には、その底部を覆うように扁平面からなる後方ライナー材44がそれぞれ固着されている。
ライナー材の形状は前方脚部33や後方脚部34の底部を覆うものであればよく、その形状は前記実施例に限定されない。
これによりバケット1の底面30は4点で支持され、それ以外の底面前部31及び底面本体32はいずれも水平面に対して中空位置に保持されているので、底面30が被破砕物と接触しにくくなり、被破砕物の掬い込みに際しても擦れて摩耗や損傷を生ずることがない。
【0017】
[ジョー固定歯]
前記バケット1内で底面側に沿ってジョー固定歯5が固定されている。
該ジョー固定歯5は、その表側に突条及び溝が破砕方向に延びる断面凹凸状の一方の歯部(図示せず)を有している。
【0018】
[ジョー動歯]
前記バケット1内でジョー固定歯5と対峙してジョー動歯6が配置されており、ジョー固定歯5とジョー動歯6の間の空間が被破砕物が移動する破砕通路Wとなっている。
前記ジョー動歯6は、ジョー固定歯5の歯部に対向する表側にその突条及び溝に噛み合うようにピッチをずらして破砕方向に延びる突条及び溝からなる他方の歯部(図示せず)を有している。
【0019】
ここで、上記ジョー動歯6は、ベースフレーム6A上にマンガン製の歯板6Bを取り付けた構造からなっている(図2(b)参照)。
上記歯板6Bをベースフレーム6Aに掛止める歯板固定爪部60がジョー動歯6と別体に形成されている。
該歯板固定爪部60は鉤部61と該鉤部61に一体に形成された基部62とを有している。
部61が掛け止められた状態で前記基部62が前記ベースフレーム6Aにボルト等の緊締具63で着脱可能に緊締されている。
【0020】
バケット型クラッシャは、自走式クラッシャや固定式クラッシャに比べて軽量化された歯板6Bが用いられているが、歯板6Bは素材であるマンガンの特性上伸びが生じ、伸びによる荷重が歯板6Bと接触する歯板固定爪部60に加わる。
そこで、歯板6Bの伸びをボルト等の緊締具のテンションの調整や歯板固定爪部60を損傷、破損させることで吸収することができる。
損傷、破損した歯板固定爪部60は緊締具を取り外すことで容易に交換できる。
【0021】
前記ジョー動歯6は、上部がバケット内で正逆方向に回転可能に軸支された偏心軸7に固定され、下部が荷重受部82を介してトッグル機構8を構成するトッグルプレート81に支持されており、バケット1の入口開口部3を、ジョー固定歯5とジョー動歯6との空間を投入口として広く開口し、バケット1の出口開口部4に向かって徐々に狭くして先端が排出口となるように略テーパ状に配置している。
【0022】
[トッグル機構]
本実施例で、トッグル機構8は、トッグルプレート81と、該トッグルプレート81の受部としての可動側トッグルシートとなる第1荷重受け部82及び固定側トッグルシートとなる第2荷重受け部83と、テンションロッド84とからなっている。
トッグルプレート81は、前記第1荷重受け部82及び第2荷重受け部83と接する支柱本体の両端が断面円弧状、より好ましくは断面略半円形状に形成されている。
【0023】
また、第1荷重受け部82は、ジョー動歯6の下端に固定されており、前記トッグルプレート81の他方の端部の円弧と同じ向きでより大径の曲率に設定された断面円弧状で前記他方の端部と断面上で点接触する接触面を有している。
図示例では、トッグルプレート81の中央を中心にした端部の回転軌跡に沿った湾曲面からなっている。
ここで、トッグルプレート81の他方の端部と第1荷重受け部82の接触面とはいずれも熱処理を施しており耐摩耗性を有している。
【0024】
第2荷重受け部83は、バケットフレームに設けられており、前記トッグルプレート81の一方の端部より大径の曲率に設定された断面円弧状で前記一方の端部と断面上で点接触する接触面を有している。
図示例では、ジョー動歯6の変位と一体に変位する第2荷重受け部83に対してトッグルプレート81の他端が連動して転動しうるように一方の端部より大きい曲率で第1荷重受け部82の接触面より小さい曲率に設定された湾曲面からなっている。
【0025】
ここでも、トッグルプレート81の一方の端部と第2荷重受け部83の接触面とはいずれも熱処理を施しており耐摩耗性を有している。
これにより、トッグルプレート81の両端部は第1荷重受け部82及び第2荷重受け部83に対して線接触(断面上では点接触)しながらトッグルプレート81の中央を回転中心としてスムーズに転動させることができる。
【0026】
このトッグルプレート81は、ジョー動歯6に固定されたリングLに先端のU字状のフック部84aが掛け止められたテンションロッド84とバネ85を介して、前記接触個所が受面(接触面)から離脱しないよう拘束されると共に、ジョー動歯6の垂直面より偏心軸7側へ上り勾配に取りつけることにより、偏心軸7の回転(正回転)によりジョー動歯6の下部を固定歯5に接近乃至離間方向に入口開口部側で略円形に動いて往復揺動するジョー動歯6を、被破砕物をはさんでジョー固定歯5に押しつけるように動作させる。
なお、下部荷重受け部83の下面の調整板86の取付枚数を増減させることにより、ジョー動歯6とジョー固定歯5の下端の間隙を調整し、被破砕物の破砕寸法を増減することができる。
【0027】
また、トッグルプレート81の一方の端部と第2荷重受け部83との接触面を覆うようにトッグルプレート81に通して固定した防塵用の固定側カバーC1を設け、同様にトッグルプレート81の他方の端部と第1荷重受け部82との接触面を覆うようにトッグルプレート81に通して固定した防塵用の可動側カバーC2を設けておけば、バケット型ジョークラッシャを上下転倒させてもトッグル機構はダストによる影響を受けることがない。
【0028】
ここで、図2(a)は、出口開口部4を最も開いた状態の図であり、図3は開き始めの中間状態の図であり、図4は出口開口部4を閉じた状態の図であり、図5は閉じ始めの中間圧縮状態の図である。
【0029】
[ライナープレート]
前記クラッシャー部1Bのバケット側板には、その内側に耐摩耗材の一例として高マンガン鋳鋼製のライナープレート22が着脱可能に取り付けられている(図11参照)。
即ち、クラッシャー部1Bのバケット側板は、破砕機構が稼働中は常時、破砕物がぶつかりもまれて摩耗損傷する。
摩耗部分はメンテナンス時に耐摩耗の肉盛り溶接で補修することもできるが、バケット全体の寿命に大きな影響を与える。
一方、バケット型ジョークラッシャ1は建設機械のアーム先端に取り付けるため、全体の重量が制約されている。
そこで、クラッシャー部1Bの側板で破砕機構となるジョー固定歯5とジョー動歯6の開口姿勢(待機姿勢)の側面を完全に覆うように対応して略三角形状のライナープレート22が側板に着脱可能に取り付けられる。
【0030】
本実施例ではライナープレート22は、図示例の場合、前記開口姿勢のジョー固定歯5とジョー動歯6の長手方向の中央と前記歯の基端となる投入口側の略中間位置を基端とし、徐々に幅狭となって排出口まで伸びている。
また、図示例の場合、基端側は同じ幅となり略コ字状となっている。
このライナープレート22には、外向きに水平に突出するスタッドボルト23が一体に固着(溶着)されており、クラッシャー部1Bの側板には上記スタッドボルト23に対応する位置にボルト孔24が穿設されている。
【0031】
そこで、前記側板の内壁面側にライナープレート22をあてがい、スタッドボルト23をボルト孔24に通して、側板の外側に突出させ、突出部分をナット25で緊締することでライナープレート23を側板2の内壁面に着脱可能に固着することができる。
これにより破砕機構で被破砕物が側板に押し付けられてもバケットの側板が傷むことなく高寿命化を図ることができる。
【0032】
[カバー]
前述のように、バケットの側板2の外側前方に偏心軸7と油圧モータ9の出力軸が突出しており、偏心軸7には従動プーリーP2が連結され、同時に破砕エネルギーを蓄えるためのフェイスホイール状のカウンターウエイトWが取り付けられている。
また、前記側板2の外側後方には、油圧モータ9の出力軸に連結された駆動プーリーP1が連結されており、無端ベルトBによりベルト伝動されている。
【0033】
そして、図13に明瞭なように、プーリーP1、P2と無端ベルトBの保護及び保安のためにカバー10が取り付けられている。
カバー10は、前方が大径の従動プーリーP2を覆うため大径の略半円形状からなり、中間部分が徐々に幅が狭まり、後方が小径の駆動プーリーP1を覆うため小径で逆向きの略半円形状からなってバケットの側板2と平行に離間する外壁部と、該外壁部10Aとバケットの側板2との間を塞ぐ周壁部10Bとからなっている。
【0034】
バケットの反対側の側板2’には、前記偏心軸7の他方端が外方へ突出しており、前記従動プーリーP2と同じ大きさのフライホイールP3が連結され同時にカウンターウエイトWが取り付けられる。
本実施例では、上記フライホイールP3の保護及び保安のために、同様のカバー10’が取り付けられている。
上記カバー10’は、反対側のカバー10と同一形状であってもよいし、フライホイールP3を覆うだけの短い形状であってもよい。
【0035】
そして、前記カバー10には、バケットの入口開口3側となる周壁部10Bには、傾斜面が形成されている。
即ち、カバー10の外壁面10Aの前方の輪郭より前方のバケットの側板2に周壁部10Bの先端が接して取り付けられ、該先端から外壁面10Aの先端縁部までが徐々に隆起する傾斜面に設定されている。
従来のカバーは周壁部が側板2に対して略直角に立ち上げる垂直面であるため、特に正面に向かう前面部分では、バケットから外れた被破砕物の衝撃を周壁部が直角に当たるため、周壁部や外壁部の角部が変形したり損傷する虞れがあったが、本実施例では周壁部10Bを傾斜面とすることで、被破砕物の衝撃を緩和して、カバー10の変形や損傷を防ぐことができる。
【0036】
図13(a)は、カバー10の前方の周壁部10Bを一連の傾斜面に設定した場合を示すもので、外壁面10Aの先端縁部の形状を略円弧形状とし、周壁部10Bの先端を前記外壁面10Aの先端縁部と略同心大径の略円弧形状に設定してカバー10の外壁面10Aより前方に離間した位置で側板2に接するように取付け、一連の略C字状の傾斜面11とした構造を示す。
図13(b)は、カバー10の前方の周壁部10Bを複数の傾斜面の組合せ形状とした場合を示すもので、周壁部10Bの先端縁部をカバー10の外壁面10Aより前方に離間した位置で側板2に接するように取付け、周壁部の先端縁部と外壁面の先端縁部とを複数の略四角形の傾斜面12でつないだ形状となっている。
図13(c)は、四角形に替えて、略三角形や梯形の傾斜面の組合せ形状としたものであり、前方の周壁部10Bを略三角形や略梯形の傾斜面13の組合せで形成した形状となっている。
【0037】
前記傾斜面11〜13は、側板2から外方に向かって傾斜すればよく、更に上方に向かっても傾斜するもの、あるいは下方に向かっても傾斜するものであってもよい。
また、稜線部分は角を立てず湾曲面とすることが好ましい。
上記実施例では、側板2に対して傾斜する傾斜面を示したが、被破砕物がぶつかる方向に対して傾斜していればよいので、側板2に対して直角となる垂直面であっても、周壁部10Bの上部又は下部であれば傾斜面として用いることができ、これらを組み合わせて前方の周壁部10Bとすることができる。
【0038】
また、カバー10の外壁面10Aの中途位置には、前部が略半円形で後部が略方形状の隆起部15が形成されている。
該隆起部15の半円形状の稜線15Aに対する厚み方向の面15aが円弧状に湾曲し、方形状の上下の稜線15Bが、内側から外方へ向かって漸次傾斜する傾斜面15bに形成されている。
前記各傾斜面により被破砕物をカバー10の外方へガイドすることができるので、被破砕物がカバー10の周壁面10Bに直接に衝合せず、変形や破損を防止することができる。
上記構成は、カバー10’においても同様の構成とすることができる。
【0039】
[駆動構造]
前記偏心軸7は、バケット1の一方の側板2の入口開口部3寄りで外方へ突出し、該突出部分にフライホイールとなる大径の従動プーリーP2が固定されている。
前記偏心軸7は、従動プーリーP2の回転軸に、該回転軸の中心から偏心した位置により大径の断面円形の偏心部7aが一体に取り付けられた公知構造からなっている。
なお、従動プーリーP2同軸で対応する側板2’の外側には対となるフライホイールP3が取り付けられている。
図中Wは、従動プーリーP2やフライホイールP3に固着されたカウンターウエイトである。
【0040】
また、前記一方の側板2に沿って、前記偏心軸7から出口開口部4側に離間した位置で側板2の内側にピストン式油圧モータ9が固定されている(図1(b)参照)。
このバケット型ジョークラッシャに内蔵され、ピストン式油圧モータ9を備えた油圧回路は、油圧ショベル20の公知の油圧回路(図示せず)と接続されている。
【0041】
本実施例で一例を示すバケット型ジョークラッシャに内蔵される油圧回路は、図12(a)に示すように、正回転側のポートと逆回転側のポートを有するピストン式の油圧モータ9に、油圧ショベル20に装備されたアタッチメント用の油圧回路のポンプ側のポートPとタンク側のポートTとを接続している。
油圧モータ9が正回転すると偏心軸7を介してジョー動歯6が破砕方向に動く。
この油圧回路に第1、第2油圧パイロット切換弁V1,V2と、絞りC1、C2、C4及びチェック付き逆止弁C3、C5を有する破砕制御回路が設けられている。
オペレータが油圧ショベル20に設けられた図示しない破砕作業用のペダルを踏み込むと、ペダル踏み初期はPポートから入るラインの油圧が低い為、第1油圧パイロット切換弁V1はスプリングの付勢力で図示の逆転位置(a)になっており、オイルは油圧モータ9の逆回転側のポートM2に供給される。
【0042】
これにより油圧モータ9が逆回転を始めると、油圧モータ9から出たオイルはM1ポートからチェック付き逆止弁C5に流れ、第1油圧パイロット切換弁V1を通り、Tポートに戻る。
前記チェック付き逆止弁C5を通過したオイルは、その流れる量が制限されるので、油圧モータ9の逆回転は、正回転に比べ遅く回転させることができる。
【0043】
また、Pポートから図中点線で示すパイロットラインに入るオイルは、絞りC1,C2により徐々に圧力が上がり、一定の圧力に達すると第2油圧パイロット切換弁V2を図示のドレンへの通過位置(c)から遮断位置(d)に切り替え、第1油圧パイロット切換弁V1のパイロットポートに圧油を送って第1油圧パイロット切換弁V1を正転位置(b)に切換え、オイルを油圧モータ9の正回転側のポートM1に供給し、油圧モータ9は正回転する。
オイルは油圧モータ4からM2ポートを通り第1油圧パイロット切換弁V1を通り、Tポートに戻る。
【0044】
これにより、破砕作業に際して、ペダル踏み込み初期のみ油圧モータ9を逆回転させ、以後は油圧モータ9を正回転させることができる。
初期の逆回転の回数は1回転未満から数回転程度が好ましいが、この発明では特に限定されない。
前記パイロット圧を調整することで第1油圧パイロット切換弁V1の位置の切換のタイミングを変更してもよく、被破砕物の種類や形状などの条件に対応して適宜実験的に定めることができる。
【0045】
上記実施例では、油圧ショベルに装備されたアタッチメント用の油圧回路として一方向に循環するモードを用いた場合を例に説明したが、この発明では上記油圧回路に限定されない。
例えば、方向切替弁により正転、逆転の双方向に切り替えて循環するモードを用いてもよい。
油圧回路では、破砕作業時に、ペダルを踏み込むと、自動的に最初に油圧モータ9を逆回転させ、次いですぐに正回転させつづける構成であれば、どのような回路構成であってもよい。
これにより、図8(b)に示すようにバケットの開口がほぼ真上を向いた位置でスラグ等の硬い被破砕物のチョーク状態から破砕処理をスタートするバケット型ジョークラッシャにおいて、シングルトッグル機構から生じるジョー動歯6の運動特性を利用した破砕を行うことができる。
【0046】
また、作業中にスラグ等に含有された金属等、硬い異物を噛み込んでジョー動歯が停止した場合にも、まずモータ9を止めて破砕処理を停止する。
次いで、油圧ショベルのアームを上方向に移動させ、同時にバケット1を反転させる(図6参照)。
これによりバケット1内の破砕通路W内に残留した被破砕物が落下する。
次いで、オペレータは、破砕作業用の操作ペダルを踏み込むことで、油圧モータ9が最初に逆回転するので、これにより噛み込んだ異物を除去することにも利用してもよい。
【0047】
このように構成されたピストン式油圧モータ9の出力軸が前記側板2から外方へ突出し、該突出部分に小径の駆動プーリーP1が固定されている。
これにより、従動プーリーP2と駆動プーリーP1とは側板2の外側に並んで配置され、従動プーリーP2と駆動プーリーP1の間に無端ベルトBが掛け渡されており、無端ベルトBには平ベルトが使用された平ベルト伝動構造となっている。
【0048】
上記構成からなっているので、破砕機構は、まずバケット1内に組み込んだ油圧モータ9の出力軸に接続された駆動プーリーP1から平ベルトBを使って、偏心軸7に取り付けた従動ホイールP2を回転させる。
偏心軸7は偏心して回転するもので、ジョー動歯6の排出側に設けたトッグル機構8に組合せ、ジョー動歯6の排出側に往復揺動運動を与える。
【0049】
破砕機構の破砕通路Wは、入口(供給)側から出口(排出)側に向かって徐々に容積が狭くなっている。
往復揺動運動を得る目的で、重力で下に移動する被破砕物に対し、破砕のための圧縮荷重を与えることになる。
【0050】
被破砕物が硬いスラグである場合には、偏心軸7は常に破砕時の強い衝撃荷重を受けるが、フライホイールの従動プーリーP2は、ジョー動歯6の復帰時のエネルギーを蓄え、これを圧縮破砕時に放出することで、大きな負荷変動を緩和する。
また、無端ベルトBには平ベルトを採用することで、スラグ中に含有する金属などの硬い異物を噛み込んだ時に受ける大きな衝撃負荷を一瞬の伸びやスリップで緩和することができる。
【0051】
更に、ベルト駆動を作用することは、駆動用油圧モータの出力軸への負荷を低減し、軸廻りからの油漏れのリスクを低くしている。
ベルト駆動は、高速で回転する油圧モータ9の出力軸の回転数を偏心軸7で本実施例では約1/4から1/5の範囲で減速することで逆に油圧モータ9の出力軸トルクを4から5倍に上げたことになり、駆動廻りの設計をコンパクトにできる。
【0052】
この発明では、被破砕物としては特に限定されないが、スラグの破砕処理に適するので、スラグ破砕機として用いてもよい。
本実施例では、バケットを建設機械のブームやアームと干渉しない回転軌跡を有するように外周形状を設定したので、作業性に優れる(図9(a)から(c)参照)が、この発明では上記形状に限定しなくてもよい。
【0053】
また、上記実施例ではモータとして油圧モータを用いた場合について説明したが、油圧回路は実施例の構造に限定されない。また、油圧モータに替えて電動モータを用い、それを制御する電気回路を用いてもよい。
電動モータ9の場合も、オペレータが建設機械で破砕作業用のペダル又はスイッチを投入すると、電動モータは最初は偏心軸7を逆回転させ、続いてすぐに偏心軸を正回転させて破砕作業を行う破砕制御回路を設ければよい(図12(b)参照)。
【0054】
特に、電動モータを使用する場合、正回転のみで破砕処理を行おうとすると、チョークによるオーバーロードにより、電動機定格の200〜300%の過負荷をかけることになりサーマルリレーやフューズの切断をしないと停止できず、これを頻繁に繰り返すと故障の原因となるため、過負荷リレー等で機械を保護する必要があったが、破砕作業時に、最初に逆回転させ、続いて正回転させることで、そのような不具合を防ぐことができる。
その他、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々に設計変更しうる。
【符号の説明】
【0055】
1 バケット
2 側板
3 入口開口部
4 出口開口部
5 固定歯
6 ジョー動歯
7 偏心軸
8 トッグル機構
9 ピストン式油圧モータ
10 カバー
20 油圧ショベル
21 アーム
81 トッグルプレート
82 第1荷重受け部
83 第2荷重受け部
84 テンションロッド
85 バネ
B 無端ベルト
P1 駆動プーリー
P2 従動プーリー
W 破砕通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のアームに取付けられたバケットが、バケット前方の投入口側に設けた掬込み部と、該掬込み部の後方に設けたクラッシャー部と、バケット後端の排出口とを有しており、前記クラッシャー部に、バケット内に固定されたジョー固定歯と、該ジョー固定歯に対峙して上部を偏心軸に軸支し下部をトッグル機構で支持するジョー動歯とを設け、前記ジョー固定歯とジョー動歯とを上部の空間を投入口として広く開口し下部に向かって徐々に狭くして下部が排出口となるように配置し、前記ジョー動歯の往復揺動によりスラグその他の被破砕物を破砕するバケット型ジョークラッシャにおいて、
クラッシャー部の左右のバケット側板の内側に、ジョー固定歯とジョー動歯の開口姿勢に対応した略三角形状の耐摩耗性鋼板からなるライナープレートを着脱可能に配置してなることを特徴とするバケット型ジョークラッシャ。
【請求項2】
ライナープレートには外方へ突出するスタッドボルトが固着しており前記バケット側板の外側からナットにより着脱可能に固定してなることを特徴とする請求項1に記載のバケット型ジョークラッシャ。
【請求項3】
バケットに、建設機械の油圧回路と接続して偏心軸を正逆回転させる油圧モータを備えた油圧回路を設けており、
該油圧回路は、被破砕物の破砕時に、自動的に前記油圧モータにより偏心軸を逆回転させ続いて正回転させる破砕制御手段を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のバケット型ジョークラッシャ。
【請求項4】
トッグル機構が、両端が断面円弧状に形成されたトッグルプレートと、バケットフレームに設けられて前記トッグルプレートの一方の端部より大径の曲率に設定された断面円弧状で前記一方の端部と断面上で点接触する接触面を有する固定側トッグルシートと、ジョー動歯に設けられて前記トッグルプレートの他方の端部より大径の曲率に設定された断面円弧状で前記他方の端部と断面上で点接触する接触面を有する可動側トッグルシートとからなっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のバケット型ジョークラッシャ。
【請求項5】
トッグルプレートの一方の端部と固定側トッグルシートとの接触面を覆う防塵用の固定側カバーと、トッグルプレートの他方の端部と可動側トッグルシートとの接触面を覆う防塵用の可動側カバーとを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のバケット型ジョークラッシャ。
【請求項6】
ジョー動歯がベースフレーム上に歯板を取り付けた構造からなっており、
該歯板をベースフレームに掛止める歯板固定爪部がジョー動歯と別体に形成されており、該歯板固定爪部は鉤部と該鉤部に一体に形成された基部とを有しており、
排出口側となる前記ジョー動歯の先端で、前記歯板の先端に鉤部が掛け止められた状態で前記基部が前記ベースフレームにボルト等の緊締具で着脱可能に緊締されてなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のバケット型ジョークラッシャ。
【請求項1】
建設機械のアームに取付けられたバケットが、バケット前方の投入口側に設けた掬込み部と、該掬込み部の後方に設けたクラッシャー部と、バケット後端の排出口とを有しており、前記クラッシャー部に、バケット内に固定されたジョー固定歯と、該ジョー固定歯に対峙して上部を偏心軸に軸支し下部をトッグル機構で支持するジョー動歯とを設け、前記ジョー固定歯とジョー動歯とを上部の空間を投入口として広く開口し下部に向かって徐々に狭くして下部が排出口となるように配置し、前記ジョー動歯の往復揺動によりスラグその他の被破砕物を破砕するバケット型ジョークラッシャにおいて、
クラッシャー部の左右のバケット側板の内側に、ジョー固定歯とジョー動歯の開口姿勢に対応した略三角形状の耐摩耗性鋼板からなるライナープレートを着脱可能に配置してなることを特徴とするバケット型ジョークラッシャ。
【請求項2】
ライナープレートには外方へ突出するスタッドボルトが固着しており前記バケット側板の外側からナットにより着脱可能に固定してなることを特徴とする請求項1に記載のバケット型ジョークラッシャ。
【請求項3】
バケットに、建設機械の油圧回路と接続して偏心軸を正逆回転させる油圧モータを備えた油圧回路を設けており、
該油圧回路は、被破砕物の破砕時に、自動的に前記油圧モータにより偏心軸を逆回転させ続いて正回転させる破砕制御手段を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のバケット型ジョークラッシャ。
【請求項4】
トッグル機構が、両端が断面円弧状に形成されたトッグルプレートと、バケットフレームに設けられて前記トッグルプレートの一方の端部より大径の曲率に設定された断面円弧状で前記一方の端部と断面上で点接触する接触面を有する固定側トッグルシートと、ジョー動歯に設けられて前記トッグルプレートの他方の端部より大径の曲率に設定された断面円弧状で前記他方の端部と断面上で点接触する接触面を有する可動側トッグルシートとからなっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のバケット型ジョークラッシャ。
【請求項5】
トッグルプレートの一方の端部と固定側トッグルシートとの接触面を覆う防塵用の固定側カバーと、トッグルプレートの他方の端部と可動側トッグルシートとの接触面を覆う防塵用の可動側カバーとを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のバケット型ジョークラッシャ。
【請求項6】
ジョー動歯がベースフレーム上に歯板を取り付けた構造からなっており、
該歯板をベースフレームに掛止める歯板固定爪部がジョー動歯と別体に形成されており、該歯板固定爪部は鉤部と該鉤部に一体に形成された基部とを有しており、
排出口側となる前記ジョー動歯の先端で、前記歯板の先端に鉤部が掛け止められた状態で前記基部が前記ベースフレームにボルト等の緊締具で着脱可能に緊締されてなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のバケット型ジョークラッシャ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−66252(P2012−66252A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2629(P2012−2629)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【分割の表示】特願2011−537761(P2011−537761)の分割
【原出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(598126128)株式会社伊藤商会 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【分割の表示】特願2011−537761(P2011−537761)の分割
【原出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(598126128)株式会社伊藤商会 (5)
【Fターム(参考)】
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