説明

バケツ等の洗浄装置

【課題】 バケツやこれに近似した容器に付着している汚れをブラシローラにより洗浄する際に、効率よく洗浄液を供給する洗浄装置を提供すること。
【解決手段】 洗浄装置1は、一円筒形状の周囲と頭頂部にブラシを有し、鉛直方向に配置された回転軸の軸中に頭頂部へ水を案内する通路を有する内周洗浄用のブラシローラ20と、鉛直な回転軸を有する一対の外周洗浄用ブラシローラ30、40を有している。ブラシローラ30、40を相反する方向へ回転され、ブラシローラ20の回転軸をブラシローラ30、40に対して近接離間可能に支持する腕部材27とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケツ等の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水性塗料を満たしたバケツは、使用毎にバケツに付着している塗料を洗い落とすことが必要である。
【0003】
容器を洗浄する装置として、例えば特許文献1には、水平向きの一対の外周洗浄用ブラシローラの上側に内周洗浄用のブラシローラを並設し、バケツの外周面と内周面とを同時に洗浄するバケツ等の洗浄装置が開示されている。この洗浄装置を水性塗料用バケツに使用すると、バケツ内から洗い流された塗料が遠心力により跳ね飛ばされて直下の外周洗浄用ブラシローラを付着する。塗料は土砂とは異なり、回転ブラシに付着する。また、跳ね上げられた塗料は外周洗浄用ブラシローラ上に落下して、本来、塗料が付いていないバケツの外周を洗浄するブラシローラが塗料で汚染されてしまう。
【0004】
また、特許文献2や特許文献3には、回転ブラシを垂直に立設した洗浄装置が開示されている。特許文献2に示す洗浄装置は、容器としての長方形状の箱の底部中心を固定して回転させて、箱の側壁の内側、外側を洗浄ブラシで挟みながら洗浄する。特許文献3に開示される洗浄装置は、被洗浄箱を上載する回転枠体と保持部材の間でに保持して、回転枠体或いは保持部材を回転して被洗浄箱を回転させて、側壁を回転ブラシで洗浄する。洗浄液は、ノズルから被洗浄箱の内側に向けて吹き上げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3803923号公報
【特許文献2】実開昭52-19168号公報
【特許文献3】実開昭62-56189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブラシローラを垂直に立設しておけば、容器内部の汚れは重力により落下して、容器外部を洗浄するブラシローラを汚染することが抑止される。しかしながら、容器を起立状態にしておくため、洗浄液を吹きかけても容易に重力で落下してしまう。特許文献2には、如何にして洗浄液を吹きかけるかは開示されていない。一方、特許文献3には、ノズルで噴出することが示されているが、回転ブラシの洗浄箇所に洗浄液が供給されてはいない。
【0007】
本発明は、バケツやこれに近似した容器に付着している汚れをブラシローラにより洗浄する際に、効率よく洗浄液を供給する洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、円筒形状の周囲と頭頂部にブラシを有し、鉛直方向に配置された回転軸の軸中に前記頭頂部へ洗浄液を案内する通路を有する内周洗浄用のブラシローラと、互いの間に前記内周洗浄用のブラシローラが並設するように配置され、鉛直な回転軸を有する一対の外周洗浄用ブラシローラと、前記各回転軸を回転駆動するとともに、前記一対の外周洗浄用ブラシローラを相反する方向へ回転させる駆動系統と、前記内周洗浄用のブラシローラの回転軸を前記一対の外周洗浄用ブラシローラに対して相対的に近接離間可能に支持する支持部と、前記通路に対して水を供給する供給手段とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】洗浄装置の全体斜視図である。
【図2】洗浄装置の側面を示す一部断面図である。
【図3】洗浄装置を底部から見た図である。
【図4】内周用ブラシローラの構造を示す図である。
【図5】洗浄装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を用いて、本実施例の洗浄装置1を説明する。洗浄装置1は、水を洗浄液として水性塗料用バケツを洗浄する装置である。水受部2は直方体状の容器であり、底面2aには排出ホース3へと繋がれる開口2bが設けられている。底面2aの中央付近には円形の開口2cが設けられ、その縁を、リング状の堤2dが起立している。水受部2から下方に延設された脚部4は、その下端に転向自在輪5が装着されている。
【0011】
扉6は、水受部2の上方空間を閉鎖する扉であって、蝶番10により水受部2に対して持ち上げ状に開閉可能となっている。中央にビニール板等からなる透明な透視板7が固定されており、扉6が閉鎖状態のときに水受部2内を目視できるようになっている。扉6が閉鎖位置にあるときに、後述する回転ブラシ20の直上に当たる位置に、固定ブラシ8が扉6に固定されている。
【0012】
水受部2の内側には、バケツ等の被処理物wの内周面を擦りつつ回転する内周用のブラシローラ20と、外周面を擦りつつ回転する二つの外周用のブラシローラ30、40とを有している。ブラシローラ20、30、40は、夫々鉛直方向に向いた回転軸52、54、56に取付けられている。
【0013】
内周用のブラシローラ20は、外周ブラシ23のみならず頭頂部にも頭頂ブラシ21を有しており、尾部にはキャップ21が取付けられている。キャップ22は、底面2aのリング状の堤2dよりも大きな縁を有しており、堤2dに被さるものであるが、これについては後述する。外周用ブラシローラ30、40は外周にのみブラシ毛が植毛されている。内周用ブラシローラ20は、外周用ブラシローラ30、40間の前側に位置しており、被処理物wは底を上にして内周用ブラシローラ20に被せられ、内周用ブラシローラ20と外周用ブラシローラ30、40に、その側面が挟まれる。また、内周用ブラシローラ20のブラシ20aと、固定ブラシ8との間に、被処理物wの底が挟まれることにより、洗浄が行われる。尚、図面では、理解の容易化のために、水受部2の内における内周用ブラシローラ20の位置を破線Aで示し、内周用ブラシローラ20を取り出して記述している。
【0014】
回転軸52は、円形の開口2cから水受部2の内側に延在するものであり、操作者がペダル9をイ方向に踏み込むことにより、ロ方向に平行移動する。回転軸54、56は、水受部2内の固定位置で回転する。
【0015】
内周用ブラシローラ20はそれぞれ外周面の直径の異なる複数のものが用意されるが、被処理物w(円筒、底面正方形、長方形の直方体など)の大きさに対応させて、内周用ブラシローラ20の外周面の直径が被処理物wの底面内に内包されるものが使用される。尚、図中、11は開閉継ぎ手、12は起動スイッチである。13は給水用のホースである。また、72は水受部2の背面をなす透明板である。
【0016】
図2において、給水ホース13は、電磁バルブ73を介してロータリージョイント74に接続している。ロータリージョイント74は、回転軸53に接続して水を供給する。給水ホース13からは、さらに、分岐パイプ70を介して外周用ブラシローラ30、40の背面に鉛直方向に伸びた散水パイプ71に接続されている。散水パイプ71は、長さ方向に外周用ブラシローラ30、40に向けた孔を多数設けたものであって、外周用ブラシローラ30、40に水を供給する。
【0017】
外周用ブラシローラ30、40に対する内周用ブラシローラ20の相対的な近接離間を操作者が入力する入力機構として、ペダル9、第1ロッド64、第2ロッド65および第3ロッド66及びユニバーサルジョイント67が設けられる。ペダル9を固定された第1ロッド64は支持軸16を中心として揺動可能であり、第1ロッド64の揺動は支持軸16の反対側に設けられた第2ロッド65および第3ロッド66へ伝達される。第3ロッド66の先端には、ユニバーサルジョイント67が設けられている。
【0018】
外周用ブラシローラ30、40との外径間隔がブラシの根元に至る過程で可及的に狭くなるように、正面視において倒立台形状となっている。図2の破線b、bは外周用ブラシローラ30、40の外周面を上側に延長した仮想線であり、両線の間隔Lは上にいくに従って広くなっている。このような外周形状とすることにより、内周用ブラシローラ20の頭頂部22が上記ブラシ30、40の頭頂側で可及的に接近するよう配設される。この結果、被処理物wが直方体状のバケツの場合に、内部の隅角部に貯まる汚れ対して集中的に掻きだす作用が行われる。
【0019】
図3において、ユニバーサルジョイント67は、腕部材27に接続されている。腕部材27は支持軸60を中心に矢印リ方向に振動可能となっている。スプリング68は、腕部材27を図の位置に引き付けておくものである。腕部材27とスプリング68は、内周用ブラシローラ20の回転軸52を外周洗浄用ブラシローラ30、40に対して相対的に近接離間可能に支持する支持機構を構成するものである。
【0020】
ユニバーサルジョイント67は、腕部材27の動き(矢印リ方向)と第3ロッド66の動き(矢印チ方向)のずれを吸収するために用いられている。腕部材27には、内周用ブラシローラ20の回転軸52が取付けられている。尚、図において、ロータリージョイント74へ、水の接続する系統については、理解の容易化のために削除してある。
【0021】
次に回転軸52、54、56の駆動系統について説明する。
水受部2の下方に固定されたモータ50の出力軸51にプーリー59を固定し、一方、外周用ブラシローラ30、40の回転軸54、56にもプーリー55、57を固定する。また、腕部材27の上下向き支持軸60にもプーリー58が固定されており、プーリー59、58、55、57に無端状の伝達チェーン60が巻き掛けられている。また、内周用ブラシローラ20の回転軸52に固定されたプーリー53には、プーリー58との間には別に無端状の伝動チェーン62が巻き掛けてある。尚、プーリー58は、2重のプーリーであり、夫々伝動チェーン60、62が巻きつけられている。プーリー57は、プーリー55よりも外径が大きなものとなっており、このため、回転軸56は回転軸54よりもゆっくり回るようになっている。また、回転軸52の回転は、回転軸54の回転よりも速くなるように設定されている。
【0022】
モータ50が矢印ハ方向へ回転することで、二つの回転軸54(外周用ブラシローラ30)、回転軸56(外周用ブラシローラ40)は夫々矢印ホ方向、矢印へ方向(ホ方向の逆転方向)、そして回転軸52(内周用ブラシローラ20)は外周用ブラシローラの一つ(図示例では外周用ブラシローラ40)と同一の矢印ト方向へ回転駆動される。
【0023】
ペダル9をイ方向に押し下げると内周用ブラシローラ20は外周用ブラシローラ30、40に対し離反し、ペダル9を離すとスプリング68により近接する。ペダル9の押下に連動するリミットスイッチ(図示せず)が設けられており、モータ50の回転を停止させ、また、電磁バルブ73を閉鎖させて内周用ブラシローラ20の頭頂からの水の噴出を止める。尚、図中72は、腕部材27の摺動台である。
【0024】
図4において、内周用ブラシローラ20の断面を示す。内周用ブラシローラ20はブラシ回転軸52と、これに取り外し可能に固定される頭頂ブラシ21と外周ブラシ23とを有し、頭頂ブラシ21と外周ブラシ23はボルト24を介して回転軸52から抜き取り可能となされる。回転軸52は、中空の軸であって内部に給水ホース13から給水される水の通路25が設けられている。ボルト24も中空であって、通路25と連通する通路26を有している。これら通路25、26を通る水は、ボルト24の頭頂から内周用ブラシローラ20外に出る。
【0025】
内周用ブラシローラ20の尾部にはキャップ22が設けられている。キャップ22は、底面2aに設けられた堤2dに被さるように配置されている。キャップ22と堤2dにより、水受部2の底面2aの上に落下した水が、回転軸52に沿って底面2aの下に落下しないようにするシールを構成する。このような構成となるのは、図1の矢印ロ方向で示したように、回転軸52が平行に移動するから、これに対応するシール構造としたからである。
【0026】
回転軸52は、腕部材27の軸受28により支持されている。腕部材27は、ペダル9(図1)を矢印イ方向で示したように押下されことに連動して、図4の紙面手前側に移動する。尚、53は回転軸52に固定されたプーリーであり、回転軸52の下端に接続されるロータリージョイント74(図2)は省略してある。
【0027】
次に上記のように構成した実施例の使用例及び各部の作動について説明する。
給水ホース40で水を供給する。水は散水パイプ71から外周用ブラシローラ30、40に注がれる。起動スイッチ12によりモータ50が回転すると、これにより外周側ブラシローラ30、40及び内周側ブラシローラ20を回転させる。このときに電磁バルブ73が水を回転軸52内に供給する。図5において、図5A図がこの初期状態である。次に、扉6が開かれ、ペダル9が押し下げられると、電磁バルブ73が閉鎖し、かつモータ50の回転が停止される。内周用ブラシローラ20は、外周側ブラシローラ30、40から離反した状態となる(図5B)。
【0028】
被処理物wの天地を逆にして、底が内周用ブラシローラ20の頭頂部に当たるとよう供給する。次に、ペダル9から足を離してこれを解放状態とする。これにより、内周用ブラシローラ20はスプリング68により外周側ブラシローラ30、40側に押し付けるものとなる(図5C)。そして、扉6を閉めることにより、被処理物wの内外周面及び被処理物wの底の表裏面が、ブラシローラ20、30、40及び固定ブラシ8に押圧された状態となる。このときペダル9から足を離してこれを解放状態されているため、内周用ブラシローラ20の頭頂部から水が注がれるとともに、ブラシローラ20、30、40の回転が開始される(図5D)。
【0029】
この状態の下で、二つの外周用ブラシローラ30、40は被処理物wの周壁に圧接したブラシ毛でその周壁の外面を擦る。これと同時に、ブラシ毛を介して被処理物wに自身の回転力を伝達する。さらに、内周用ブラシローラ20がその周壁内面に圧接したブラシ毛でこの周壁内面を擦ると共に、その内底面に圧接したブラシ毛でこの内底面を擦りながら且つブラシ毛を介して被処理物wに自身の回転力を伝達する。この際、二つの外周用ブラシローラ30、40の回転方向を外向きの相反する逆方向とているので、外周用ブラシローラ40がブレーキ作用を呈するように被処理物wに伝達される。しかしながらブレーキ作用を呈する外周用ブラシローラ40の回転数は、外周用ブラシローラ30より遅いので、ブレーキ作用よりも被処理物wを回転させる作用が勝ることから、被処理物wは自身が回転することになる。
【0030】
この際、被処理物wが直方体である場合は、図5Eに示すように被処理物wの角部が外周用のブラシローラ30、40の隙間に入り込むようになり、図5Fに示すように被処理物wの辺部では内周用のブラシローラ20がスプリング68に抗して、外周用ブラシローラ30、40から離反した位置に移動する。図5Eと図5Fの状態を繰り返して、被処理物wは洗浄される。
【0031】
一方、内周用のブラシローラ20の頭頂部から吐出した水は、遠心力により頭頂部から内周用のブラシローラ20の外周へ拡散し、重力により内周用のブラシローラ20の周を伝わりながら落下する。このため、ブラシローラ20の摩擦による被処理物wの汚れの剥離と、洗い流しが同時に行われることになる。特に、水性塗料用として使用された被処理物wは、底の角隅に対して塗料が集まり固化しつつある状態であるので、吐出した水が内周用のブラシローラ20の頭頂部から、遠心力でブラシ毛を伝わって、底の角隅に到達し、掻き落とすとともに洗い出しを行うことができる。
【0032】
また、洗い落とされた汚水は、重力により底面2aに落下する。遠心力により振り飛ばされるものもあるが、これによる外周用ブラシローラ30、40への汚染は軽微である。
【0033】
被処理物wが数回転した後(或いは装置に装着して所定時間が経過した後)再びペダル9を踏み降ろし、内周用ブラシローラ20を前進させる。この後、被処理物wを持って引き出して、1つの被処理物wの洗浄処理が終了する。
【0034】
上記した本実施によれば、被処理物に付着した汚れを掻きだして直ちに洗い流すことができる。被処理物が円筒のバケツに限らず、直方体など凡そ直角な隅角部を備えたものであっても、内周用ブラシローラが前後に揺動しながら被処理物を回転させ、かつ内周用ブラシローラの掻き落とし作用が行われる個所に水を供給ことができる点で著効を奏する。また、汚染された水は、重力により落下するため、外周用ブラシローラをさらに汚染することが抑制させる。
【0035】
前記実施例においては、内周用ブラシローラ20を外周用のブラシローラ30、40から近接離間させたが、外周用のブラシローラ30、40側の方を動かしても良い。
【符号の説明】
【0036】
w 被処理物
8 固定ブラシ
20 内周用ブラシローラ
30 外周用ブラシローラ
40 外周用ブラシローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の周囲と頭頂部にブラシを有し、鉛直方向に配置された回転軸の軸中に前記頭頂部へ洗浄液を案内する通路を有する内周洗浄用のブラシローラと、
互いの間に前記内周洗浄用のブラシローラが並設するように配置され、鉛直な回転軸を有する一対の外周洗浄用ブラシローラと、
前記各回転軸を回転駆動するとともに、前記一対の外周洗浄用ブラシローラを相反する方向へ回転させる駆動系統と、
前記内周洗浄用のブラシローラの回転軸を前記一対の外周洗浄用ブラシローラに対して相対的に近接離間可能に支持する支持機構とを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
請求項1の洗浄装置において、操作者の入力により前記支持機構に対して前記内周洗浄用のブラシローラを前記外周洗浄用ブラシローラからさらに離間させる入力機構と、前記入力手段に操作者の入力があったときには、前記駆動装置による前記内周洗浄用のブラシローラの回転を停止することを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
請求項2の洗浄装置において、前記入力手段に操作者の入力があったときには、前記通路への洗浄液の供給停止するバルブを有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項4】
請求項1の洗浄装置において、前記駆動系統は、前記外周洗浄用ブラシローラのうち、前記内周洗浄用のブラシローラに対して正転方向となる外周洗浄用ブラシローラの回転数を、他の一方の外周洗浄用ブラシローラの回転数よりも遅くしたことを特徴とする請求項2又は3記載のバケツ等の洗浄方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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