説明

バスバー及び電気接続箱

【課題】配線基板の小型化と導電パターンの配索性向上とを達成可能とする。
【解決手段】配線基板2上で配線基板2と平行に支持されるバスバー3の前方には、配線基板2上に実装されたリレー等の実装部品に合わせて逆L字状の分岐片8,8・・が、夫々一対ずつ突設されている。この分岐片8は、下端にプレスフィット端子9が形成されて、実装部品の導電パターン上に形成されたスルーホール14,14にプレスフィット端子9先端の圧接部10を夫々圧入することで、バスバー3から配線基板2上の回路への送電を可能としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される電気接続箱に送電経路として使用されるバスバーと、そのバスバーが用いられる電気接続箱とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用の電気接続箱は、車載バッテリの電源と、電気負荷となるエンジン用電子制御ユニットやエアバッグ用電子制御ユニット等との間を導通/遮断して、各電子制御ユニットへの電力供給を制御する周知の装置で、マイコンやリレー等の電子部品が搭載されて所定の回路が形成される配線基板には、電子制御ユニットを繋ぐワイヤハーネスのコネクタが接続される基板コネクタの他、電源からの接続端子と接続されて電源が供給されるバスバーが設けられている。
このバスバーの形状としては、特許文献1に示すものが知られている。図2に示すように、特許文献1に開示されるバスバー21は、長手方向の一端部に、配線基板20のバスバー接続端子部に直接ネジ止め及び半田付けされる基板接続用端子22を備えて、他端部が配線基板20と平行に支持される倒L字状を呈している。23,23・・は、長手方向の端縁に一体形成されたヒューズ接続用のヒューズ端子、24は、基板接続用端子22からの立ち上がり部に突設されて電源からの接続端子が接続される電源端子である。
【0003】
【特許文献1】特開2006−42586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなバスバー21を用いた場合、図3(B)に示すように、配線基板20には、コーナーに設けたバスバー接続端子部25から配線基板20上に搭載されるリレー等の実装部品28,28・・に送電するために、まず配線基板20の一辺側の略全長に亘って導電パターン26を形成し、そこから各回路に向けて分配部27,27・・を形成することになる。よって、配線基板20上の占有部分が大きく、配線基板20上のレイアウトに制約を受けて他の導電パターンの配索性が低くなる。配索性を上げようとすれば配線基板20の大型化に繋がってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、配線基板の小型化と導電パターンの配索性向上とを共に達成することができるバスバー及び電気接続箱を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、配線基板上で配線基板と平行に支持され、端部に電源端子を有するバスバーであって、プレスフィット端子を下端に備えた複数の分岐片を一体に形成して、配線基板上の回路に設けたスルーホールにプレスフィット端子を圧入することで、分岐片を介して前記配線基板上の回路と直接電気的接続可能としたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、ヒューズが搭載された配線基板において、バスバーのより合理的な利用を可能とするために、分岐片を一方の端縁に並設し、他方の端縁に、ヒューズを接続可能なヒューズ端子を形成したものである。
【0007】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、自動車用の電気接続箱であって、配線基板上の回路の所定位置にスルーホールを有し、請求項1又は2に記載のバスバーを配線基板と平行に組み付けてその分岐片のプレスフィット端子を対応するスルーホールに圧入することで、分岐片を介してバスバーを回路と直接電気的接続させたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1及び3に記載の発明によれば、バスバーから配線基板上の回路へ直接電気的接続可能となるため、配線基板に各回路への送電用の導電パターンを形成する必要がなくなる。よって、配線基板の小型化、ひいては電気接続箱のコンパクトが達成可能となる。逆に、同じ大きさの配線基板であればレイアウトに余裕ができるため、パターンの配索性が向上することになる。
また、分岐片及びプレスフィット端子の採用により、ネジや半田で配線基板と接続しなくても済むため、フロー工程が省略できる等、製造工程が簡略化してコストダウンも期待できる。特に、フロー工程の省略により、基板コネクタのハウジングに耐熱性樹脂を用いる必要がなくなって、安価なポリアミド系樹脂等を採用できるため、一層のコストダウンに繋がることになる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、バスバーの端縁にヒューズ端子を設けたことで、配線基板上に形成されるヒューズ用回路の一部をバスバー側で形成できる。よって、ヒューズを搭載したものでも配線基板を大型化させることなく合理的なレイアウトが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のバスバーが使用される自動車用の電気接続箱の一例を示す斜視図である。電気接続箱1は、車載バッテリの電源と、電気負荷となるエンジン用電子制御ユニットやエアバッグ用電子制御ユニット等との間を導通/遮断して、各電子制御ユニットへの電力供給を制御する周知の装置で、マイコンや半導体リレー等の電子部品が搭載されて所定の回路が形成される平面矩形状の配線基板2に、外部から電源が供給されるバスバー3と、電子制御ユニットを繋ぐワイヤハーネスのコネクタが接続される基板コネクタ4,4等が組み付けられている。これらの構成部は、ワイヤハーネスやヒューズの接続部等を除いて全体が図示しない上下カバーによって覆われる。
【0010】
バスバー3は、配線基板2上に固着される絶縁体のハウジング5の上方で配線基板2と平行に支持される導電金属製の板体で、長手方向の一端側には、電源からの接続端子が接続される電源端子6が突設されている。また、バスバー3の後方(配線基板2の端縁側を後方、中央側を前方として説明する。)の端縁には、図示しないヒューズ端子と対になる複数のヒューズ端子7,7・・が等間隔で一体形成される一方、前方の端縁には、配線基板2上に実装されたリレー等の実装部品に合わせて逆L字状の分岐片8,8・・が、夫々一対ずつ突設されている。この分岐片8は、下端にプレスフィット端子9が形成されて、図3(A)に示す実装部品12への導電パターン13上に形成されたスルーホール14,14にプレスフィット端子9先端の圧接部10を夫々圧入することで、バスバー3から配線基板2上の回路への送電を可能としたものである。
【0011】
プレスフィット端子9の圧接部10の形状としては、中央の空間を挟んで一対の弾性部が膨出形成され、スルーホールへの圧入状態で弾性部が弾性変形してスルーホール内周面と電気的接続するいわゆるニードルアイ形状や、中央の傾斜状の連結部を挟んで一対の当接部が膨出形成され、スルーホールへの圧入状態で当接部が弾性変形してスルーホール内周面と電気的接続するいわゆるN型形状等の周知のものが採用される。11は、圧接部10の上方に設けられて圧入時の治具当てとなる受け部である。
【0012】
以上の如く構成された電気接続箱1は、バスバー3の電源端子6から供給された電気は、ヒューズ端子7,7・・に装着された図示しないヒューズを介して配線基板2上の回路に流れる一方、各分岐片8を介して配線基板2上の導電パターン13,13・・へ直接供給されて、実装部品12等へ流れることになる。よって、配線基板2においては、従来設けていたバスバー接続端子部から各回路への送電用の導電パターンが不要となり、例えば実装部品12を迂回するように他の導電パターン15を形成する等、バスバー3の下方でも他の回路の取り回しが可能となる。
【0013】
このように、上記形態のバスバー3及び電気接続箱1によれば、プレスフィット端子9を下端に備えた複数の分岐片8を一体に形成して、配線基板2上の回路に設けたスルーホール14にプレスフィット端子9を圧入することで、分岐片8を介して配線基板2上の回路と直接電気的接続可能としたことで、配線基板2に各回路への送電用の導電パターンを形成する必要がなくなる。よって、配線基板2の小型化、ひいては電気接続箱1のコンパクトが達成可能となる。逆に、同じ大きさの配線基板であればレイアウトに余裕ができるため、パターンの配索性が向上することになる。これらの効果は図3(B)の導電パターンと比較すると明らかである。
また、分岐片8及びプレスフィット端子9の採用により、ネジや半田で配線基板2と接続しなくても済むため、フロー工程が省略できる等、製造工程が簡略化してコストダウンも期待できる。特に、フロー工程の省略により、基板コネクタのハウジングに耐熱性のあるSPS樹脂を用いる必要がなくなって、安価なポリアミド系樹脂等を採用できるため、一層のコストダウンに繋がることになる。
【0014】
そして、ここでは、バスバー3における分岐片8を一方の端縁に並設し、他方の端縁に、ヒューズを接続可能なヒューズ端子7を形成しているため、配線基板2上に形成されるヒューズ用回路の一部をバスバー3側で形成できる。よって、ヒューズを搭載したものでも配線基板2を大型化させることなく合理的なレイアウトが可能となる。
【0015】
なお、分岐片は、上記形態に限らず、配線基板上の回路に合わせて長さや太さ、数等は適宜変更可能で、さらには逆L字状でなく、バスバーの端縁から真下に下がるように形成したり、バスバーから切り起こすように形成したり等の変更も考えられる。
また、ヒューズ端子は必ずしもバスバーに設ける必要はなく、配線基板に余裕があればバスバーのヒューズ端子は省略し、配線基板側でヒューズ用回路を形成しても差し支えない。この場合、分岐片は一方の端縁に並設する形態に限らず、両端縁に適宜配することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】バスバー及び電気接続箱の一例を示す斜視図である。
【図2】従来のバスバーが組み付けられる配線基板の説明図である。
【図3】配線基板の導電パターンの説明図で、(A)が上記形態のバスバーを用いた場合、(B)が図2で示す従来のバスバーを用いた場合を夫々示す。
【符号の説明】
【0017】
1・・電気接続箱、2・・配線基板、3・・バスバー、6・・電源端子、7・・ヒューズ端子、8・・分岐片、9・・プレスフィット端子、10・・圧接部、13,15・・導電パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板上で前記配線基板と平行に支持され、端部に電源端子を有するバスバーであって、
プレスフィット端子を下端に備えた複数の分岐片を一体に形成して、前記配線基板上の回路に設けたスルーホールに前記プレスフィット端子を圧入することで、前記分岐片を介して前記配線基板上の回路と直接電気的接続可能としたことを特徴とするバスバー。
【請求項2】
分岐片を一方の端縁に並設し、他方の端縁に、ヒューズを接続可能なヒューズ端子を形成した請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
配線基板上の回路の所定位置にスルーホールを有し、請求項1又は2に記載のバスバーを前記配線基板と平行に組み付けてその分岐片のプレスフィット端子を対応する前記スルーホールに圧入することで、前記分岐片を介して前記バスバーを前記回路と直接電気的接続させてなる自動車用の電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−227169(P2007−227169A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47266(P2006−47266)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】