説明

バスバー

【課題】バスバー本体の板厚を長手方向全域に亘って一定とすることができ、かつ、加工時の材料ロスを可及的に削減できるバスバーを提供する。
【解決手段】板厚Tおよび幅Wのバスバー本体は、板厚T/2および幅2×Wの長尺の第1導電性板状部材110が長手方向中心線Lで折り曲げ加工されて形成される。また、第1導電性板状部材110の長手方向所定位置には、曲げ加工後に第2導電性板状部材120の固着部121を固着させるための切り欠き111が設けられる。一方、端子部120は、第1導電性板状部材110とは別体の第2導電性板状部材120により形成され、前記切り欠き111を埋めるような形状の固着部121および固着部121に一体形成された延在部122を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対応するコイルを電気的に接続する為に、ステータに用いられるバスバーに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の回転機は、複数のコイルが内設されたステータと、該ステータの内部に配設されたロータとを備えている。
前記ステータは、内周面に複数のスロットが設けられたステータコアと、前記複数のスロットに装着された複数のコイルとを有している。該複数のコイルは、前記モータに対して回転磁界を発生させ得るように電気的に接続されている。
【0003】
具体的には、前記複数のコイルの巻き始め端部は、同相コイル同士がバスバーを介して同相の電力供給端子に接続される。前記バスバーは、前記ステータコアに沿うような形状のバスバー本体と、前記バスバー本体から突出された複数の端子部とを有しており、前記端子部が対応するコイルの巻き始め端部または電力供給端子に電気的に接続される。
【0004】
他方、前記複数のコイルのそれぞれの巻き終わり端部は、互いに電気的に接続されて、中性点とされる。斯かる中性点コイル接続も、通常、前記バスバーを介して行われる。
【0005】
前記バスバーとして、複数の被覆導線をリベットにより接合してなるコイル接続ワイヤを用いることが、本件出願人によって提案されている(下記特許文献1参照)。
斯かるコイル接続ワイヤは、複数の被覆導線によって前記バスバー本体を形成している為、前記バスバー本体の形状を前記ステータコアの形状に容易に合わせることができる点で有用である。
【0006】
しかしながら、前記コイル接続ワイヤは、隣接する被覆導線同士の一部をオーバーラップさせ、該オーバーラップ部分を前記リベットによって接合させている為、前記オーバーラップ部分においては板厚が2倍になり、径方向に関し大型化を招く。
【0007】
他の従来構成としては、図10に示すように、仕様に応じた板厚の導電性板状部材70から前記バスバー本体71および前記端子部72を一体的に抜き打ち加工してなるバスバーが知られている。
この一体形成型バスバーは、長手方向全域に亘って板厚が一定である為、径方向に関し大型化を招くという問題は生じないが、その一方で、前記導電性板状部材の加工時に材料ロスが生じる(図10の領域Q)。
【特許文献1】特許第3698423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、バスバー本体の板厚を長手方向全域に亘って一定とすることができ、かつ、加工時の材料ロスを可及的に削減できるバスバーの提供を、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るバスバーは、ステータコアに沿って配設される板厚Tおよび幅Wのバスバー本体と、前記ステータコアに装着されるコイルに対する接続端部として作用するように前記バスバー本体から突出された端子部とを備えたバスバーであって、板厚T/2および幅2×Wの長尺の第1導電性板状部材であって、前記端子部が設けられるべき長手方向位置に切り欠きが設けられた長尺の第1導電性板状部材と、前記第1導電性板状部材とは別体とされた第2導電性板状部材とを備え、前記第2導電性板状部材は、長手方向に沿った中心線で折り曲げ加工された後の前記第1導電性板状部材の前記切り欠きを埋めるような形状とされた固着部と、前記固着部に一体形成された延在部とを有しており、折り曲げ加工後の前記第1導電性板状部材と該第1導電性板状部材に固着された前記固着部とによって板厚Tおよび幅Wの前記バスバー本体が形成され、前記延在部によって前記端子部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成のバスバーによれば、板厚Tおよび幅Wのバスバー本体は、板厚T/2および幅2×Wの長尺の第1導電性板状部材が長手方向中心線(言い換えると、幅方向中心部を通る直線)で折り曲げ加工されて形成される。また、第1導電性板状部材の長手方向所定位置には、曲げ加工後に第2導電性板状部材の固着部を固着させるための切り欠きが設けられる。一方、端子部は、第1導電性板状部材とは別体の第2導電性板状部材により形成され、前記切り欠きを埋めるような形状の固着部および固着部に一体形成された延在部を有している。ここで、固着部を折り曲げ加工後の第1導電性板状部材の切り欠きに固着することにより、折り曲げ加工後の前記第1導電性板状部材と該第1導電性板状部材に固着された前記固着部とによって板厚Tおよび幅Wのバスバー本体が形成され、バスバー本体から突出した延在部が端子部として形成される。こうして、バスバー本体がステータコアに沿って配設された際にステータコアに装着されるコイルに対する接続部として作用する。
【0011】
このように、バスバー本体と端子部とを別体として構成し、これらを組み合わせてバスバーを形成することにより、加工時の材料ロスを可及的に削減することができ、板材を曲げ加工等により形成することにより、シンプルな構成となり加工費および金型費も可及的に削減することができる。
【0012】
好ましくは、前記第1導電性板状部材は、折り曲げ加工後において当接する内表面同士の少なくとも一部が溶接によって接合されているように構成される。
【0013】
この場合、第1導電性板状部材において、折り曲げ加工後に当接する内表面同士の少なくとも一部が溶接によって接合されるため、形成されたバスバー本体の板厚Tを高精度に形成することができるとともに、バスバー本体の剛性を高めることができる。
【0014】
好ましくは、前記第2導電性板状部材は、板厚T/2でかつ幅が前記切り欠きと略同一とされた板状部材を幅方向に沿って折り曲げ加工することによって、実質的に板厚がTとされているように構成される。
【0015】
この場合、端子部は、幅が第1導電性板状体部材と略同一で板厚T/2の第2導電性板状部材を折り曲げ加工することにより、実質的に板厚Tとなるように形成される。したがって、板厚T/2の板状部材から第1および第2導電性板状部材すなわちバスバー全体を形成することができるため、材料ロスをより削減することができる。
【0016】
より好ましくは、前記第2導電性板状部材のうち板厚がTとされている部分の少なくとも一部は、溶接によって接合されているように構成される。
【0017】
この場合、第2導電性板状部材において、折り曲げ加工後に当接して実質的に板厚Tとなる部分の少なくとも一部が溶接によって接合されるため、形成された端子部の板厚Tを高精度に形成することができるとともに、端子部の剛性を高めることができる。
【0018】
さらに好ましくは、前記延在部は、対応するコイルの端部を挟持し得るような凹部を有しているように構成される。
【0019】
この場合、延在部に設けられた凹部にコイルの端部が挟持される。したがって、コイルの端子部への固定を容易に行うことができる。
【0020】
好ましくは、前記切り欠きは、折り曲げ加工前の前記中心線を基準にして非対称とされており、折り曲げ加工後における前記第1導電性板状部材の内表面のうち前記切り欠きと長手方向同一位置に位置する内表面の一部が、前記固着部の一側面と当接しているように構成される。
【0021】
この場合、第1導電性板状部材には、折り曲げ加工前の中心線(折り曲げ線)に対して非対称な切り欠きが設けられる。これにより、第1導電性板状部材を折り曲げ加工すると、板厚Tとなった第1導電性板状部材の切り欠き位置において、板厚方向に厚さT/2の段差が形成される。そして、段差が形成された第1導電性板状部材の内表面の一部が第2導電性板状部材の固着部の一側面に当接される。これにより、第1導電性板状部材と第2導電性板状部材との当接時の位置決めを容易に行うことができるとともに、互いに当接される面積を増やすことができるため、両者の境界接触性をより高めて、接合をより強固にすることができる。
【0022】
好ましくは、前記第1および第2導電性板状部材は、同一材料とされているように構成される。
【0023】
この場合、第1および第2導電性板状部材が同一材料から形成されるため、両者の固着時に親和性が良好であり、固着を強固にすることができる。
【0024】
好ましくは、前記固着部を折り曲げ加工後の前記第1導電性板状部材に固着させた後に、前記バスバー本体に絶縁性皮膜がコーティングされているように構成される。
【0025】
この場合、第1導電性板状部材を折り曲げ加工し、第2導電性板状部材の固着部を第1導電性部材の切り欠きに固着させてバスバー本体および端子部を形成した後、形成されたバスバー本体に絶縁性皮膜がコーティングされる。これにより、バスバー本体をステータの内部に配設されるロータに対して絶縁して、バスバー本体で生じる磁界のロータへの影響を防止することができる。
【0026】
好ましくは、、前記バスバー本体が囲繞される樹脂ケースをさらに備えているように構成される。
【0027】
この場合、樹脂ケースにバスバー本体が囲繞される。したがって、樹脂ケースによりバスバー本体の位置決めを行うことができると同時にバスバー本体をステータの内部に配設されるロータに対して絶縁して、バスバー本体で生じる磁界のロータへの影響を防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るバスバーによれば、バスバー本体と端子部とを別体として構成し、これらを組み合わせてバスバーを形成することにより、加工時の材料ロスを可及的に削減することができ、板材を曲げ加工等により形成することにより、シンプルな構成となり加工費および金型費も可及的に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係るバスバーの好ましい実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係るバスバーを備えたステータの概略図である。図1(a)はステータ全体の概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面図(バスバー断面図)である。
【0030】
本発明に係るバスバー1は、回転機のステータ100に備えられるコイル2の対応端部を電気的に接続するために使用される。図1に示すように、ステータ100は、内周面に周方向に沿った複数のスロット102が設けられたステータコア101と、前記複数のスロット102に装着される複数のコイル103とを具備する。ここで、図1のステータ100は、u相、v相およびw相の3相モータ用であり、複数のコイル103は、それぞれ、周方向に沿ってu相コイル103u、v相コイル103v、w相コイル103wを構成する。なお、複数のコイル103は、無酸素銅等の導電性部材が絶縁性皮膜によって被覆されている被覆導線によって構成される。
【0031】
本実施形態に係るバスバー1(1u,1v,1w,1n)は、ステータコア110に沿って配設されるバスバー本体11(11u,11v,11w,11n)と、前記ステータコア110に装着されるコイル103(103u,103v,103w)の巻き始め端部に対する接続端部またはコイル103の巻き終わり端部に対する接続端部として作用するように前記バスバー本体11から突出された端子部12(12u,12v,12w,12n)とを備えている。本実施形態においては、各端子部12とコイル103の端部は、接続導線13(13u,13,13w,13n)を介して電気的に接続され、バスバー1u,1v,1wがu相コイル103u、v相コイル103vおよびw相コイル103wのうちの同相コイルの各巻き始め端部同士を電気的に接続し、バスバー1nが各相のコイル103の各巻き終わり端部同士を電気的に接続する。バスバー1u,1v,1wは、各交流電源からの互いに位相が異なる(120°ずつずれた)交流電流をそれぞれのコイル103u,103v,103wに通電させる。一方、バスバー1nは、各相のコイル103u,103v,103wの共通点である中性点となる。
【0032】
続いて、本実施形態のバスバー1についてより詳細に説明する。図2〜図4は図1のバスバーの形成工程を示す図である。図2(a)はバスバーを形成する第1導電性板状部材および第2導電性板状部材の展開図であり、図2(b)は図2(a)における第1導電性板状部材のC−C断面図および第2導電性板状部材のB方向側面図であり、図3(a)は折り曲げ加工後の第1導電性板状部材および第2導電性板状部材の組み付け図であり、図3(b)は図3(a)におけるD−D断面図であり、図4(a)は形成されたバスバーを示す図であり、図4(b)は図4(a)におけるE−E断面図である。
【0033】
ここでは、1つのバスバー1の形成について説明するが、バスバー1u,1v,1w,1nのいずれにも適用される。図2に示すように、本実施形態のバスバー1は、板厚T/2および幅2×Wの長尺の第1導電性板状部材110であって、前記端子部12が設けられるべき長手方向位置に切り欠き111(111a,111b)が設けられた長尺の第1導電性板状部材110と、前記第1導電性板状部材110とは別体とされた第2導電性板状部材120とを備えている。そして、前記第2導電性板状部材120は、図2および図3に示すように、長手方向に沿った中心線Lで折り曲げ加工された後の前記第1導電性板状部材110の前記切り欠き111を埋めるような形状とされた固着部121と、前記固着部121に一体形成された延在部122とを有しており、図3に示すように、折り曲げ加工後の前記第1導電性板状部材110と該第1導電性板状部材110に固着された前記固着部121とによって、図4に示す、板厚Tおよび幅Wの前記バスバー本体11が形成され、前記延在部122によって前記端子部12が形成されていることを特徴とするものである。
【0034】
上記構成のバスバー1によれば、図2(a)に示すように、板厚Tおよび幅Wのバスバー本体11は、板厚T/2および幅2×Wの長尺の第1導電性板状部材110が長手方向中心線(言い換えると、幅方向中心部を通る直線)Lで折り曲げ加工されて形成される。図2(b)は、折り曲げ途中の状態を示す折り曲げ線に垂直な平面/断面図である。また、第1導電性板状部材110の長手方向所定位置には、曲げ加工後に第2導電性板状部材120の固着部121を固着させるための切り欠き111が設けられる。
【0035】
一方、端子部12は、第1導電性板状部材110とは別体の第2導電性板状部材120により形成され、前記切り欠き111を埋めるような形状の固着部121および固着部121に一体形成された延在部122を有している(図3参照)。
【0036】
本実施形態においては、図2に示すように、第2導電性板状部材120は、板厚T/2でかつ幅が前記切り欠き111と略同一とされた板状部材を図2(b)に示すように、幅方向に沿って折り曲げ加工することによって、実質的に板厚がTとされているように構成される(図3(b)参照)。本実施形態において、固着部121は、切り欠き111の形状に対応した板厚を有しており、延在部122は、実質的に板厚Tとされている。
【0037】
ここで、本実施形態において、端子部12の延在部122は、図3(b)に示すように、対応するコイル103の端部を挟持し得るような凹部123を有しているように構成される。この場合、図1(b)に示すように、延在部122に設けられた凹部123にコイル103の端部(から延びた接続導線13)が挟持される。本実施形態において、凹部123は、下向きに(バスバー本体11側に向けて)開口されているように形成される。このように、凹部123を設けることにより、コイル103の端子部12への固定を容易に行うことができる。このような凹部123を形成することを含めて、第2導電性板状部材120は、図2(a)に破線(山折り)および一点鎖線(谷折り)で示すような、折り曲げ線において折り曲げ加工される。
【0038】
第1導電性板状部材110および第2導電性板状部材について折り曲げ加工を行った後、当該折り曲げ加工後の第2導電性板状部材120の固着部121を折り曲げ加工後の第1導電性板状部材110の切り欠き111内に溶接等により固着することにより、折り曲げ加工後の第1導電性板状部材110と該第1導電性板状部材110に固着された固着部121とによって、図4に示すように、板厚Tおよび幅Wのバスバー本体11が形成され、バスバー本体11から上方かつ内周面側に突出した延在部122が端子部12として形成される。
【0039】
なお、第1導電性板状部材110と第2導電性板状部材120との固着方法は、特に限定されないが、接着によるものであっても溶接によるものであってもよい。ここで、溶接の際は、圧力を加えて(圧接して)もよいし、いわゆるろう付けによって(融接して)もよい。
【0040】
ここで、本実施形態においては、第1および第2導電性板状部材110,120は、同一材料とされているように構成される。したがって、両者の固着時に親和性が良好であり、固着を強固にすることができる。
【0041】
以上のように形成されたバスバー1のバスバー本体11をステータコア101に沿うように板厚方向に湾曲させて、バスリングが形成される。こうして、図1(a)に示すように、バスバー本体11がステータコア101に沿って配設された際にステータコア101に装着されるコイル103に対する接続部として作用する。なお、バスリングは、1つのバスバー1から形成することとしてもよいし、バスバー1をバスバー本体11の長手方向に複数延設して形成することとしてもよい。
【0042】
なお、ステータコア101にバスバー本体11を配設する際には、図1に示すように、バスバー本体11の周囲が絶縁されるように構成されるとともに、バスバー本体11が囲繞される樹脂ケース14をさらに備えているように構成される。
【0043】
本実施形態においてより具体的には、まず、各相のバスバー本体11u,11v,11w,11nの隣り合うバスバー本体間(11u−11v間、11v−11w間、11w−11n間)に隣り合うバスバー本体11を互いに絶縁する絶縁シート15が介挿される。その上で、絶縁シート15がそれぞれ介挿された状態のバスバー本体11u,11v,11w,11nが上方が開口された1つの樹脂ケース14に収容され、樹脂ケース14の開口部を樹脂等を流し込んで成型する(樹脂ケース14の上方開口部を埋める絶縁皮膜16が形成される)。
【0044】
この場合、第1導電性板状部材110を折り曲げ加工するとともに、第2導電性板状部材120の固着部121を第1導電性部材110の切り欠き111に固着させてバスバー本体11および端子部12を形成した後、形成されたバスバー本体11の周囲が絶縁される。これにより、各相のバスバー本体間を絶縁するとともに、バスバー本体11をコイル103に対して絶縁して、各相のバスバー本体間およびバスバー本体11およびコイル103間の相互誘導作用を防止することができる。
【0045】
以上のように、バスバー本体11と端子部12とを別体として構成し、これらを組み合わせてバスバー1を形成することにより、加工時の材料ロスを可及的に削減することができ、板材を曲げ加工等により形成することにより、シンプルな構成となり加工費および金型費も可及的に削減することができる。
【0046】
また、端子部12も第1導電性板状体部材110と同一の板厚T/2を有する第2導電性板状部材120を折り曲げ加工して形成することにより、板厚T/2の板状部材から第1および第2導電性板状部材110,120すなわちバスバー1全体を形成することができるため、材料ロスをより削減することができる。
【0047】
本実施形態において、第1導電性板状部材110は、折り曲げ加工後において当接する内表面S(図2(b)参照)同士の少なくとも一部が溶接によって接合されているように構成される。また、第2導電性板状部材120のうち板厚がTとされている部分の少なくとも一部は、溶接によって接合されているように構成される。
【0048】
この場合、第1導電性板状部材110において、折り曲げ加工後に当接する内表面S同士の少なくとも一部が溶接によって接合されるため、形成されたバスバー本体11の板厚Tを高精度に形成することができるとともに、バスバー本体11の剛性を高めることができる。同様に、第2導電性板状部材120において、折り曲げ加工後に当接して実質的に板厚Tとなる部分の少なくとも一部が溶接によって接合されるため、形成された端子部12の板厚Tを高精度に形成することができるとともに、端子部12の剛性を高めることができる。なお、溶接位置は、特に限定されないが、第1導電性板状部材110においては、第2導電性板状部材120との固着部分近傍(すなわち切り欠き111近傍)および隣り合う切り欠き11の長手方向中間部分近傍を溶接することが好ましい。なお、溶接は、圧接および融接等、種々の態様を採用可能である。
【0049】
ここで、本実施形態における切り欠き111および固着部121の形状についてより詳しく説明する。
【0050】
本実施形態において、切り欠き111は、折り曲げ加工前の前記中心線Lを基準にして非対称とされる一方、第2導電性板状部材120は、折り曲げ加工した際、固着部において板厚がT/2となる領域S2が生じるように構成されて、折り曲げ加工後における前記第1導電性板状部材110の内表面Sのうち前記切り欠き110と長手方向同一位置に位置する内表面の一部S1が、前記固着部121の一側面S2と当接しているように構成される。
【0051】
より具体的には、切り欠き111は、折り曲げ加工前の平面視(図2(a))において、第1導電性板状部材110の第1側辺112aおよび第2側辺112bにそれぞれ開くように形成された第1切り欠き111aおよび第2切り欠き111bを含んでおり、第1切り欠き111aは、第2切り欠き111bより幅方向(中心線Lに垂直な方向)の切り欠き長さが大きくなるように形成されている。
【0052】
この場合、第1導電性板状部材110には、折り曲げ加工前の中心線(折り曲げ線)Lに対して非対称な切り欠き111(111a,111b)が設けられる。これにより、第1導電性板状部材110を折り曲げ加工すると、板厚Tとなった第1導電性板状部材110の切り欠き位置において、板厚方向に厚さT/2の段差が形成される。そして、段差が形成された第1導電性板状部材110の内表面の一部S1が第2導電性板状部材120の固着部121の一側面S2に当接される。
【0053】
これにより、第1導電性板状部材110と第2導電性板状部材120との当接(固着)時の位置決めを容易に行うことができるとともに、互いに当接される面積を増やすことができるため、両者の境界接触性をより高めて、固着をより強固にすることができる。
【0054】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0055】
例えば、第1導電性板状部材110の切り欠き111を折り曲げ加工前の前記中心線Lを基準にして非対称とする構成は、第1導電性板状部材110の両側辺112a,112bのそれぞれに切り欠き111を設けることに限られない。図5〜7は本発明に係るバスバーのための第1導電性板状部材の他の例を示す図である。図5〜7(a)は展開図であり、図5〜7(b)はそれぞれ図5〜7(a)の第1導電性板状部材の折り曲げ途中におけるF−F断面図、G−G断面図、H−H断面図であり、図5〜7(c)はそれぞれ図5〜7(a)の第1導電性板状部材における折り曲げ加工後のF−F断面図、G−G断面図、H−H断面図である。
【0056】
図5,6に示す例において、切り欠き111は、折り曲げ加工前の平面視(図5,6(a))において、第1導電性板状部材110の一側辺112aに開くように形成されている。図5の例においては、切り欠き111の幅方向長さ(中心線Lに垂直な方向の長さ)がTを超えない(中心線Lを越えない)長さに構成されるため、折り曲げ加工することにより、両側辺側に第2導電性板状部材120の固着部121が取り付けられる形状となる。一方、図6の例においては、切り欠き111の幅方向長さ(中心線Lに垂直な方向の長さ)がTを超えて2Tを超えない(中心線Lを越える)長さに構成されるため、折り曲げ加工することにより、中心線Lの側(折り目側)に第2導電性板状部材120の固着部121が取り付けられる形状となる。
【0057】
続いて、図7に示す例において、切り欠き111は、折り曲げ加工前の平面視(図7(a))において、第1導電性板状部材110の平面内部に位置し、かつ中心線Lから当該切り欠き111の幅方向(中心線Lに垂直な方向)の端部までの長さが第1側辺112a側と第2側辺112b側とで異なる(図7(a)においては第1側辺112a側に長くなる)ように形成されている。図7の例においては、折り曲げ加工することにより、中心線Lの側(折り目側)に第2導電性板状部材120の固着部121が取り付けられる形状となる。
【0058】
また、端子部12に設けられた凹部123は、下向きに限られず、上向きに(バスバー本体11が存在するのとは反対方向に向けて)形成されることとしてもよい。加えて、第1導電性板状部材110の切り欠き111における第2導電性板状部材120の固着部121の内表面S2と当接する内表面の一部S1は、本実施形態においてはバスバー1の内周面側(すなわち、端子部12がバスバー1の内周面側に突出している方向)に向けられているが、バスバー1の外周面側(すなわち、端子部12がバスバー1の内周面側に突出しているのとは反対方向)に向けられることとしてもよい。
【0059】
図8は本発明に係るバスバーのための第1および第2導電性板状部材の他の例を示す断面図である。図8(a)は凹部123が上向き開口かつ第1導電性板状部材110の内表面の一部S1がバスバー1の外周面側に向けられた例であり、図8(b)は凹部123が上向き開口かつ第1導電性板状部材110の内表面の一部S1がバスバー1の内周面側に向けられた例である。いずれの例においても、第2導電性板状部材120は、上記実施形態と同様に、板厚T/2の板材から形成可能に構成されている。
【0060】
また、バスバー本体11の絶縁方法についても上記実施形態に限られず、種々の方法が採用可能である。図9は本発明に係るバスバーにおけるバスバー本体への被覆方法についての他の例を示す断面図である。図9(a)および図9(b)ともに図1(b)と同様の断面図を示すものである。
【0061】
図9(a)の例において、各相のバスバー本体11は、それぞれの両側面に絶縁フィルム17が貼着されて構成され、さらに1つの樹脂ケース14に収納されるように構成される。この場合、樹脂ケース14の開口側は、図1(b)と同様に、樹脂等を流し込んで樹脂皮膜を形成することとしてもよい。また、延在部122が他の相のバスバー本体11と接触しないように、バスバー本体11から樹脂ケース14を越えるまでの間の延在部122の下面(バスバー本体11に対向する面)にも絶縁フィルム17を貼着することとしてもよい。一方、図9(b)の例において、各相のバスバー本体11は、バスバー本体11ごとにその周囲を直接絶縁コーティングして絶縁皮膜18を形成するように構成される。直接コーティングする方法としては、流動浸漬法や静電粉体塗装法等が挙げられる。なお、図1(b)、図9(a)、図9(b)はいずれも各相のバスバー本体11間が間隙を有して記載されているが、これらの間隙はあってもなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係るバスバーを備えたステータの概略図である。
【図2】図1のバスバーの形成工程を示す図である。
【図3】図1のバスバーの形成工程を示す図である。
【図4】図1のバスバーの形成工程を示す図である。
【図5】本発明に係るバスバーのための第1導電性板状部材の他の例を示す図である。
【図6】本発明に係るバスバーのための第1導電性板状部材の他の例を示す図である。
【図7】本発明に係るバスバーのための第1導電性板状部材の他の例を示す図である。
【図8】本発明に係るバスバーのための第1および第2導電性板状部材の他の例を示す断面図である。
【図9】本発明に係るバスバーにおけるバスバー本体への被覆方法についての他の例を示す断面図である。
【図10】従来のバスバーにおいて当該バスバーを形成するための板状部材の打ち抜き態様を説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
1(1u,1v,1w,1n)…バスバー
11(11u,11v,11w,11n)…バスバー本体
12(12u,12v,12w,12n)…端子部
14…樹脂ケース
15…絶縁シート
17…絶縁フィルム
18…絶縁皮膜
101…ステータコア
103(103u,103v,103w,103n)…コイル
110…第1導電性板状部材
111(111a,111b)…切り欠き
120…第2導電性板状部材
121…固着部
122…延在部
123…凹部
L…第1導電性板状部材の長手方向中心線
S1,S2…当接面
T…バスバー本体の板厚
W…バスバー本体の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアに沿って配設される板厚Tおよび幅Wのバスバー本体と、前記ステータコアに装着されるコイルに対する接続端部として作用するように前記バスバー本体から突出された端子部とを備えたバスバーであって、
板厚T/2および幅2×Wの長尺の第1導電性板状部材であって、前記端子部が設けられるべき長手方向位置に切り欠きが設けられた長尺の第1導電性板状部材と、
前記第1導電性板状部材とは別体とされた第2導電性板状部材とを備え、
前記第2導電性板状部材は、長手方向に沿った中心線で折り曲げ加工された後の前記第1導電性板状部材の前記切り欠きを埋めるような形状とされた固着部と、前記固着部に一体形成された延在部とを有しており、
折り曲げ加工後の前記第1導電性板状部材と該第1導電性板状部材に固着された前記固着部とによって板厚Tおよび幅Wの前記バスバー本体が形成され、
前記延在部によって前記端子部が形成されていることを特徴とするバスバー。
【請求項2】
前記第1導電性板状部材は、折り曲げ加工後において当接する内表面同士の少なくとも一部が溶接によって接合されていることを特徴とする請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
前記第2導電性板状部材は、板厚T/2でかつ幅が前記切り欠きと略同一とされた板状部材を幅方向に沿って折り曲げ加工することによって、実質的に板厚がTとされていることを特徴とする請求項1または2に記載のバスバー。
【請求項4】
前記第2導電性板状部材のうち板厚がTとされている部分の少なくとも一部は、溶接によって接合されていることを特徴とする請求項3に記載のバスバー。
【請求項5】
前記延在部は、対応するコイルの端部を挟持し得るような凹部を有していることを特徴とする請求項4に記載のバスバー。
【請求項6】
前記切り欠きは、折り曲げ加工前の前記中心線を基準にして非対称とされており、
折り曲げ加工後における前記第1導電性板状部材の内表面のうち前記切り欠きと長手方向同一位置に位置する内表面の一部が、前記固着部の一側面と当接していることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のバスバー。
【請求項7】
前記第1および第2導電性板状部材は、同一材料とされていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のバスバー。
【請求項8】
前記固着部を折り曲げ加工後の前記第1導電性板状部材に固着させた後に、前記バスバー本体に絶縁性皮膜がコーティングされていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のバスバー。
【請求項9】
前記バスバー本体が囲繞される樹脂ケースをさらに備えていることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載のバスバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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