説明

バタフライ型バルブ

【課題】バタフライ型バルブの組立工程における作業性を向上させ、摺動抵抗及び漏洩量の調整を簡便に行い得るようにする。
【解決手段】先に弁体3を弁箱1内に軸着し、しかる後に閉止位置に位置づけた弁体3に対し厚み方向から複数に分割されたシール材5のピース51をそれぞれ添接し、各ピース51を弁箱1の内周面に密接させた状態で弁体3に固定するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライ型バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流量や流体圧を調節するためのバルブの一種として、バタフライ型バルブ(例えば、下記特許文献を参照)が周知である。バタフライ型バルブは、弁体(バタフライプレート)を弁箱(フローボディ)内にバタフライ動作可能に配設してなり、弁体のバタフライ動作を通じて流路を開閉するものである。一般に、弁体の外周縁部にはシリコンゴム、ネオプレーンゴム等のシール材が装着されており、弁体を閉止位置に位置づけたときにシール材が弁箱の内周面に密接して流路を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−026235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、バタフライ型バルブの組立工程では、予め弁体にシール材を装着しておき、その弁体を弁箱に収容して軸着する手順をとっており、弁箱に組み付けた弁体のシール材を弁箱の内周面に適合させる摺り合わせ作業を実施して、適切な摺動抵抗及び漏洩量(換言すれば、シール性能)を得るようにしていた。摺り合わせ作業では、全閉時の弁箱内周に対するシール材の当り(接触状況)をチェックし、当りが強い箇所をサンドペーパ等で少し削り、再度当りをチェックすることを繰り返す。因みに、弁体を反復操作してシール材を弁箱内周になじませるようにすることもある。
【0005】
しかしながら、弁箱や弁体、軸の寸法誤差等により、シール材の外周が弁箱の内周に対して偏倚することがあり、その場合には所望の摺動抵抗、漏洩量を確保することが困難であった。加えて、シール材の摺り合わせ作業によって摺動抵抗と漏洩量と同時に調整すること自体がそもそも容易ではない。摺動抵抗を低減するべくシール材の摺動面を削ると漏洩量が増加する傾向にあるため、摺動抵抗と漏洩量とをともに最適化することは原理的に難しかった。
【0006】
以上に鑑みてなされた本発明は、バタフライ型バルブの組立工程における作業性を向上させ、簡便に摺動抵抗及び漏洩量の調整を行い得るようにすることを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、流体が流通する通路に介設される弁箱と、前記弁箱内にバタフライ動作可能に配設され流体の流通を阻止するための閉止位置において外周縁の略全域が弁箱の内周面に近接するように構成された弁体と、複数のピースに分割され前記閉止位置に位置させた前記弁体の外周縁部に当該弁体の厚み方向から添接可能なシール材と、前記シール材の各ピースをそれぞれ弁箱の内周面に密接させた状態で前記弁体に固定するシール固定機構とを具備してなるバタフライ型バルブを構成した。
【0008】
即ち、先に弁体を弁箱内に軸着しておき、しかる後に閉止位置に位置づけた弁体に対し厚み方向、即ち弁箱の内周面に平行な方向から複数のシール材のピースをそれぞれ装着するという手順で組み立てられるようにした。このようなものであれば、シール材を弁体に装着する際に、各ピースと弁箱の内周面との相対位置関係を適宜に調節可能であり、シール材の外周が弁箱の内周に対して偏倚する問題を実効的に解消できる。故に、シール材の摺り合わせ作業によらず、簡便に摺動抵抗、漏洩量の調整を行い得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バタフライ型バルブの組立工程における作業性が向上し、簡便に摺動抵抗及び漏洩量の調整を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態のバタフライ型バルブを示す分解斜視図。
【図2】同バタフライ型バルブの弁体及び軸を示す縦断面図。
【図3】同バタフライバルブのシール固定構造を示す、ナット孔を通る面で切った要部断面図。
【図4】同バタフライバルブのシール固定構造を示す、透孔を通る面で切った要部断面図。
【図5】本発明の変形例の一を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態のバタフライ型バルブは、略円筒状の流路を内包する弁箱1内に略円盤状の弁体3をバタフライ動作可能に組み付けてなり、弁体3のバタフライ動作を通じて流路を開閉するものである。
【0012】
より具体的に述べると、既存のバタフライ型バルブと同様、図1に示すように、弁箱1には対向する二方向から周壁を貫通する軸受孔を穿ってあり、それら軸受孔にそれぞれ軸2を挿通し、軸2の先端部を弁箱1に収容した弁体3に固定することで弁体3を回動可能に軸支させている。図2に示すように、弁体3には、軸2の先端部を挿入可能な挿入穴311と、弁体3の厚み方向に貫通して挿入穴311の中心軸に略直交する貫通孔312とを有する軸固定部31を設けておく。挿入穴311の存在により、軸固定部31は弁体3の厚み方向に膨出している。他方、軸2の先端部にも、軸固定部31の貫通孔312に対応する貫通孔21を穿つ。そして、軸2の先端部を弁体3の挿入穴311に挿入し、双方の貫通孔21、33を重ね合わせた状態でこれら貫通孔21、33にボルト41を貫入し、ナット42を螺合緊締して、軸2を弁体3に一体的に固定する。
【0013】
弁体3を操作して閉止位置に位置づけたとき、弁体3の外周縁の略全域が弁箱1の内周面に近接して流路を遮蔽する。弁体3の外周縁部には、例えばゴム製のシール材5を装着し、閉止位置においてシール材5を弁箱1の内周面に密接させて流路を封止する。
【0014】
しかして、本実施形態では、弁箱1内に弁体3を軸着した後、その弁体3にシール材5を装着する組立手順をとるものとしている。そして、シール材5の装着並びにシール材5と弁箱1の内周との間の摺動抵抗及び漏洩量の調整作業を簡便ならしめるべく、シール材5を複数のピース51に分割するとともに、各ピース51をそれぞれ弁箱1の内周面に密接させた状態で弁体3に固定し得るシール固定機構8を構成している。
【0015】
図1、図3及び図4に示すように、シール固定機構8は、弁体3の一方側の面において外周縁に沿って設けたシール添接部32と、弁体3の同じ側の面に重ね合わせる押さえ板6と、押さえ板6を弁体3に対して止着する止着具7とを要素とする。シール添接部32は、軸固定部31を除いた略半周状に設定され、シール材5の厚みに近い寸法分だけ厚み方向に凹んでいる。また、弁体3のシール添接部32よりも内方の部位に、ナット孔33を周方向に間欠的に複数形成している。シール材5は、本実施形態では二個のピース51に分割され、それぞれがシール添接部32に対応して略半円弧状をなす。押さえ板6は、シール材5のピース51と比較して内方に幅を拡げた略半円弧状の薄板体であって、シール材5と同じく複数のピース61に分割している。ピース61の外周縁近傍には、比較的微細な透孔62を周方向に間欠的に複数穿っている。加えて、弁体3に形成したナット孔33に対応する各所にも、貫通孔63を穿ってある。
【0016】
弁体3を閉止位置に位置づけると、弁体3の表裏面と弁箱1の内周面とが略垂直に交差し、弁体3の厚み方向が弁箱1の内周面に略平行となる。この状態で、弁体3にシール材5を装着する。順を追って述べると、シール材5の各ピース51を、弁体3のシール添接部32に、弁体3の厚み方向から添接する。次に、押さえ板6の各ピース61を、弁体3のシール添接部32が設けられている側の面に同方向から当接させ、弁体3と押さえ板6とでシール材5を挟み込む。しかる後、止着具たるボルト7を同方向から押さえ板6の貫通孔63に挿通して弁体3のナット孔33に螺合緊締し、シール材5を挟圧する。
【0017】
シール材5及び押さえ板6をボルト7を介して弁体3に止着したとき、シール材5の外周縁は弁体3及び押さえ板6の外周縁よりも外方に突出する。同時に、押さえ板6に穿たれた透孔62が弁体3のシール添接部32に連通しており、シール材5の内周縁もこの透孔62近傍に位置する。これにより、先細の器具9を弁体3の厚み方向から透孔62に差し入れてシール材5の各ピース51(の内周縁等)に係わり合わせ、これをこじるように操作して各ピース51の弁体3に対する固定位置を(特に、径方向に)調節することができる。つまり、シール材5の弁体3に対する相対位置を、シール材5の外周と弁箱1の内周とが適切に密接するように調節することが可能であって、シール材5の外周が弁箱1の内周に対して偏倚する問題を実効的に解消できる。
【0018】
因みに、弁箱1の内周面に、閉止位置に回動した弁体3の外周縁部が着座する弁座(図示せず)を設けても構わないが、その場合には上述したシール材5の装着作業や固定位置の調節作業の妨げとならないものとする。
【0019】
本実施形態によれば、流体が流通する通路に介設される弁箱1と、前記弁箱1内にバタフライ動作可能に配設され流体の流通を阻止するための閉止位置において外周縁の略全域が弁箱1の内周面に近接するように構成された弁体3と、複数のピース51に分割され前記閉止位置に位置させた前記弁体3の外周縁部に当該弁体3の厚み方向から添接可能なシール材5と、前記シール材5の各ピース51をそれぞれ弁箱1の内周面に密接させた状態で前記弁体3に固定するシール固定機構8とを具備してなるバタフライ型バルブを構成した。そして、先に弁体3を弁箱1内に軸着しておき、しかる後に閉止位置に位置づけた弁体3に対し厚み方向からシール材5の各ピース51をそれぞれ装着するという手順で組み立てられるようにしたため、シール材5の各ピース51と弁箱1の内周面との相対位置関係を適宜に調節可能であり、シール材5の外周が弁箱1の内周に対して偏倚する問題を実効的に解消できる。従って、簡便に摺動抵抗及び漏洩量を適切な大きさに調整でき、シール材5の摺り合わせ作業も必須でなくなる。
【0020】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、押さえ板6の形状は、上記実施形態の態様に限定されず、図5に示すように、(弁体3の軸固定部31を収めることのできる切欠64を形成した)一枚の薄円板体とすることができる。
【0021】
その他各部の具体的構成は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、流路を開閉するバルブとして利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…弁箱
3…弁体
5…シール材
51…ピース
8…シール固定構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する通路に介設される弁箱と、
前記弁箱内にバタフライ動作可能に配設され流体の流通を阻止するための閉止位置において外周縁の略全域が弁箱の内周面に近接するように構成された弁体と、
複数のピースに分割され前記閉止位置に位置させた前記弁体の外周縁部に当該弁体の厚み方向から添接可能なシール材と、
前記シール材の各ピースをそれぞれ弁箱の内周面に密接させた状態で前記弁体に固定するシール固定機構と
を具備してなることを特徴とするバタフライ型バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−219876(P2012−219876A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84822(P2011−84822)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】