説明

バチルス・チューリンゲンシスの殺虫性結晶タンパク質をコードする遺伝子cry7Ba1

本発明は、バチルス・チューリンゲンシスからの殺虫性結晶タンパク質の遺伝子の単離、クローニングおよび使用を開示する。本発明では、バチルス・チューリンゲンシス・亜種・ヒュアゾンゲンシス YBT-978 株から新規な殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1を単離し、該遺伝子は鱗翅目昆虫に対して殺虫活性を示す新規な殺虫性結晶タンパク質Cry7Ba1をコードする。本発明はまた、新規な殺虫性結晶タンパク質の遺伝子配列を開示し、該遺伝子によってコードされる産物 Cry7Ba1を発現するよう微生物を形質転換するのに好適な発現ベクターを使用し、該タンパク質の鱗翅目害虫に対する殺虫活性を発揮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、微生物の遺伝子工学に関する。具体的には、本発明は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)からの殺虫性結晶タンパク質の分離およびクローニングに関する。本発明は、生物学的殺虫剤の遺伝子工学に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
バチルス・チューリンゲンシスは、様々な生態的環境に広く存在する桿状、グラム陽性、内生胞子形成細菌である。胞子形成相において、バチルス・チューリンゲンシスは、昆虫に対する特異的毒性および、鱗翅目(Lepidoptera)、双翅目(Diptera)、鞘翅目(Coleoptera)、膜翅目(Hymenoptera)、同翅目(Homoptera)等を含む、昆虫綱に属する10の目における500種以上の昆虫、ならびに原生動物門、類線形動物門、扁形動物門におけるいくらかの有害な変種に対して特異的生物活性を有する殺虫性結晶タンパク質(ICP)からなるパラスポラル(parasporal) 結晶を形成する(Schnepf, H E., Crickmore, N., Rie, J. V., Lereclus, D., Baum, J., Feitelson, J., Zeigler, D. R. & Dean, D. H. 1998. Bacillus thuringiensis and its pesticidal crystal proteins. Microbiol Mol Biol Rev 62, 775-806)。
【0003】
バチルス・チューリンゲンシスの野生型株は、典型的には、殺虫性結晶タンパク質をコードする遺伝子を有し、各株は通常、該遺伝子を複数コピー有する。 Schnepf et al.は、殺虫性結晶タンパク質をコードする最初の遺伝子を1981年にバチルス・チューリンゲンシス・亜種・クルスタキ(kurstaki)株 HD1からクローニングし、DNA 塩基配列に基づいて、最初のバチルス・チューリンゲンシス殺虫性結晶タンパク質のアミノ酸配列を推定した(Schnepf HE, Wong HC, Whiteley HR. The amino acid sequence of a crystal protein from Bacillus thuringiensis deduced from the DNA base sequence. J Biol Chem. 1985 May 25;260(10):6264-6272)。その後、殺虫性結晶タンパク質をコードする新たな遺伝子が、バチルス・チューリンゲンシスの研究と関連して活発に探索されてきた。様々な殺虫性結晶タンパク質をコードする多くの新たな遺伝子が同定され、クローニングされ、配列決定された。それゆえ、1995年に、バチルス・チューリンゲンシス・殺虫性結晶タンパク質・命名委員会が、Crickmoreを含む学者により、Annual Meeting of the Society for Invertebrate Pathologyにて設立された。1996年には、アミノ酸配列の相同性に基づくバチルス・チューリンゲンシス殺虫性結晶タンパク質についての新しい分類システムが正式に提案され、命名規則および分類の原理が設定され、そこでは以下のように明記されている: cry遺伝子は、パラスポラル(parasporal) 結晶タンパク質をコードするバチルス・チューリンゲンシス由来の殺虫性遺伝子であるか、または既知のcry遺伝子と明白な配列類似性を有する遺伝子である; cyt遺伝子は、溶血活性を示すバチルス・チューリンゲンシス由来のパラスポラル(parasporal) 結晶タンパク質をコードする遺伝子であるか、あるいは既知のCyt タンパク質と明白な配列類似性を有するタンパク質をコードする遺伝子である。それらは全長遺伝子から推定されるアミノ酸配列の相同性に基づいて4つのランクに分類される。各ランクの間の境界は、およそ 95%、78%および45%の配列同一性を表す。殺虫性結晶タンパク質の遺伝子は4つのランクに分類される。2005年8月までに、バチルス・チューリンゲンシス殺虫性結晶タンパク質の遺伝子の数は319に達し、48タイプからの変種(varieties)を表す((Crickmore, N., D. R. Zeigler, J. Feitelson, E. Schnepf, J. Van Rie, D. Lereclus, J. Baum, and D. H. Dean. 1998. Revision of the nomenclature for the Bacillus thuringiensis pesticidal crystal proteins. Microbiol. Mol. Biol. Rev. 62:807-813;例えば 、ワールドワイドウェブ上のインターネットサイト、lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/index.htmlを参照)。
【0004】
最初のうちは、バチルス・チューリンゲンシスに基づく殺虫剤はスクリーニングされた野生型株により産生された。分子生物学の発達により、野生型株を遺伝子工学手段により徐々に変化させるようになった。同時に、バチルス・チューリンゲンシス殺虫性結晶タンパク質の遺伝子を植物に形質転換し、農産物の害虫に耐性のトランスジェニック植物を作成するようになった。
【0005】
しかし、バチルス・チューリンゲンシス殺虫剤の開発およびかかる殺虫剤の使用頻度の上昇により、標的害虫における耐性が科学者により徐々に発見されるようになってきた。学者は、標的害虫におけるバチルス・チューリンゲンシス殺虫剤に対する耐性を熱心に研究するようになった。バチルス・チューリンゲンシス殺虫性結晶タンパク質は殺虫性効果を与えるために以下のプロセスを経なければならない:結晶の可溶化およびプロトキシン(protoxin) 結晶の活性化、中腸の上皮裏打ち上の受容体への毒素断片の結合、および穴を開けるための膜への挿入、ここで、活性スペクトルおよび毒性は主に毒素断片の昆虫の中腸の上皮裏打ち上の特異的受容体の認識および相互作用に依存する。さらに、昆虫におけるバチルス・チューリンゲンシス殺虫剤に対する耐性の発達は殺虫剤受容体の認識および結合と密接に関連している。それゆえ、新たな、特に新規な殺虫性結晶タンパク質の遺伝子のクローニングと適用が、標的害虫におけるバチルス・チューリンゲンシス殺虫剤に対する耐性の防止および制御の鍵となってきており、また、様々な昆虫の制御戦略の中心問題となってきている。近年、殺虫性結晶タンパク質の新規遺伝子の探索およびクローニングがバチルス・チューリンゲンシスの研究においてもっとも活発な領域となってきている。本発明の重要性はその点にある。中国において1996年に、新しい亜種、バチルス・チューリンゲンシスの亜種の1つであるYBT-978 株が分離され特徴決定されており、それはヒュアゾンゲンシス(huazhongensis)亜種、血清型 H40に属する(株のソースについては、Dai J et al. 1996. Bacillus thuringiensis subsp. huazhongensis, serotype H40, isolated from soils in the People’s Republic of China. Letters in Applied Microbiology. 22(1): 42-45を参照)。パラスポラル(parasporal) 結晶タンパク質が、コナガ(Plutella xylostella)を含む昆虫に対して高度に有効な殺虫活性を有することが、該パラスポラル(parasporal) 結晶タンパク質の抽出、およびバイオアッセイにかけることによって見いだされた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の内容
本発明の目的は、バチルス・チューリンゲンシスから高い毒性効力を有する殺虫性結晶タンパク質の遺伝子を単離およびクローニングすること、ならびにその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術的構想は 図 1に示す通りである。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明により、バチルス・チューリンゲンシス・亜種・ヒュアゾンゲンシス、血清型 H40、株 YBT-978から (株のソースについては、Dai J et al. 1996 Bacillus thuringiensis subsp. huazhongensis, serotype H40, isolated from soils in the People’s Republic of China. Letters in Applied Microbiology. 22(1): 42-45を参照)新規な殺虫性結晶タンパク質遺伝子を単離した。該遺伝子のコード領域は 3465塩基からなり、配列番号1に示すヌクレオチド配列を有する。本発明のcry7Ba1遺伝子は、Cry7Ba1 タンパク質をコードし、該タンパク質は1154 アミノ酸残基からなり、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する。本発明の遺伝子cry7Ba1は微生物においてCry7Ba1 タンパク質として発現され、このタンパク質は、鱗翅目の昆虫に対する殺虫活性を有する。
【0009】
本発明のCry7Ba1 タンパク質と既に開示されているタンパク質のいずれかとの最高の相同性は58.2%である。さらに、本発明のCry7Ba1 タンパク質のN-末端半分の配列 (配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸 1〜658) と既に開示されているタンパク質のいずれかとの最高の相同性は37.1%である。
【0010】
本発明は、殺虫活性を有する新規な殺虫性結晶タンパク質遺伝子である前記遺伝子配列を提供する。該遺伝子は、鱗翅目の害虫に対する殺虫活性を付与するため、ならびに、遺伝子改変された殺虫剤およびトランスジェニック植物に対する害虫における耐性を克服および遅延させるために、微生物および/または植物を形質転換するのに利用できる。
【0011】
以下の説明および実施例により、より詳細に技術的解決手段を開示する:
【0012】
DNAに対して用いられる標準的手順および試薬は、「Guide for Molecular Cloning Experiments」 (J. Sambrook et al (2002). Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd Edition. Translated by Jin Dong-yan et al. Science Press. Beijing参照)にしたがうものであることに注意されたい。
【0013】
1.バチルス・チューリンゲンシス YBT-978における結晶タンパク質 Cry7Ba1のN-末端アミノ酸の配列決定
本発明では、殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1のソース株としてバチルス・チューリンゲンシス YBT-978を用いる。バチルス・チューリンゲンシス YBT-978は、その起源がDai J et al. 1996に記載されているバチルス・チューリンゲンシス 血清型 H40の標準的株である。この株は典型的な菱形状の結晶を形成することが出来、結晶タンパク質 Cry7Ba1の主な成分の分子量は約 130 kDaである。Cry7Ba1のN-末端アミノ酸配列の配列決定の具体的工程は以下の通りである:
【0014】
(1)細菌株の培養および培養操作
バチルス・チューリンゲンシス YBT-978を5 ml LB (1% NaCl、1% ペプトン、0.5% 酵母抽出物、pH 7.0)に植菌耳(inoculation loop)を用いて無菌条件下で接種し、振盪機で200 rpmで30℃で一晩インキュベートする。次いで、350 μlの培養液を無菌条件下で 35 ml ICPM 培地 (0.6% ペプトン、0.5% グルコース、0.1% CaCO3、0.1% MgSO4.7H2O、0.05% KH2PO4、pH 7.0)に移し、振盪機で 200 rpmで無性芽およびパラスポラル(parasporal) 結晶が完全に離れ落ちるまで30℃でインキュベートする。培養液を回収し、1分間 8000 rpmで遠心分離する。上清を捨てる。0.5% NaCl 溶液および滅菌脱イオン水を用いて沈殿を3回別々にすすぐ。
【0015】
(2) 結晶タンパク質のSDS-PAGE 電気泳動およびPVDF ブロッティングメンブレンのトランスファー
すすいだ沈殿を、脱イオン水に沈殿:脱イオン水 = 1:5 v/vの比で再懸濁し、等量の 2x ローディングバッファーに添加する。混合し、沸騰浴中で3〜5分間インキュベートし、 12000 rpm で5 分間遠心分離し、上清をSDS-PAGE 電気泳動に供する。2x ローディングバッファーの処方およびSDS-PAGE 電気泳動の実施手順については、Laemmliによる方法 (Laemmli, UK. 1970. Digestion of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Nature (London) 227:680-685)を参照されたい。
【0016】
次いで、ゲル上のタンパク質サンプルをPVDF メンブレン に Trans-Blot SD Semi-Dry Transfer Cell (BIO-RAD)を用いて標準的方法 (Cook RG. 1994. Amino acid sequence analysis of blotted proteins, p.207-220. In. B.S. DunBar (ed.), Protein Blotting: A practical approach. Oxford University Press, New Yorkを参照)によりトランスファーする。
【0017】
3)結晶タンパク質のN-末端アミノ酸配列の決定
タンパク質 N-末端アミノ酸シークエンサー (モデル番号:ABI 491 タンパク質 配列、ABI Procise)を用いてN-末端アミノ酸配列を配列決定する。配列決定の結果は、N-末端-MDIRNQNKYEVVYPA-C-末端 (配列番号3)である。
【0018】
2.殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1の5’末端 DNA 断片の配列の獲得
アダプター-ライゲーション PCRを用いて増幅を行う。アダプター-ライゲーション PCRの原理と工程はSlebert P. D. et al. (Slebert P D et al. 1995. An improved PCR method for walking in uncloned genomic DNA. Nucleic Acids Research 23:1087-1088)に記載されている。具体的な工程は以下の通りである:
【0019】
1)バチルス・チューリンゲンシス YBT-978からのトータルDNAの抽出
バチルス・チューリンゲンシス YBT-978を植菌耳を用いて無菌条件下で5 ml LB 培地に接種し、一晩30℃ で振盪機で 200 rpmで培養する。次いで、50 μl の培養液を無菌条件下で5 mlの新しいLB 培地に移し、同じ条件下で対数増殖期までインキュベートする。5000 rpmで3 分間の遠心分離の後に細菌を収集する。1 ml STEで1回すすぐ。100 μl 溶液 I および10 μl リゾチーム (50 mg/ml) を添加し、30 分間以上作用させる。 200 μl 2% SDSを添加し、50-60℃の水浴で30 分間インキュベートする。200 μl 5 mol/L NaClを添加し、混合する。500 μl フェノール/クロロホルム/イソペンチルアルコール (25:24:1 v/v)を添加し、5 分間12000 rpmで遠心分離する。上清を収集し、抽出を1−2回繰り返す。上層 DNA 溶液をエッペンドルフチューブに移し、等量の 95% エタノールを添加する。室温で5 分間放置し、5 分間12000 rpmで遠心分離する。200 μl 70% エタノールを用いて沈殿を1回すすぎ、沈殿を凍結乾燥し、凍結乾燥した沈殿を50 μl TE 溶液に溶解する。
【0020】
2)トータルDNAの制限エンドヌクレアーゼによる酵素消化およびアダプターとのライゲーション
(1)バチルス・チューリンゲンシスから調製したトータルDNAをHpaI 酵素による酵素的消化に37℃で一晩供する(酵素消化系は、約 1 μg トータルDNAを含む50 μl); (2) 50 μl 酵素消化産物を250 μl フェノール:クロロホルム:イソペンチルアルコール (25:24:1 v/v)に添加し、12000 rpmで5 分間遠心分離し、上層 DNA 溶液をエッペンドルフチューブに移し、等量の 95% エタノールを添加し、室温で5 分間放置し、次いで12000 rpm で5 分間遠心分離する。沈殿を200 μl 70% エタノールで1回すすぎ、次いで凍結乾燥し、50 μl 滅菌水に溶解する; (3)等量の長いアダプターおよび短いアダプターを混合し(50 μM) (長いアダプターの配列は:
【化1】

(配列番号4);
短いアダプターの配列は、5 ACCGGATC-NH2-3’)、4 μl 溶液とし、これを70℃で10 分間インキュベートする; (4) 4 μl アダプター 溶液 (25 μM)、10 μlトータルDNA 酵素消化産物溶液 (約 0.5 μg DNA含有)、8U T4 リガーゼ、2 μl T4 リガーゼバッファー; および水を添加し、20 μlの系とする。16℃で12 時間ライゲーションする; (5) 60℃で5 分間加熱後、ライゲーション系をPCR 増幅の鋳型として用いた;
【0021】
3)ネステッド(Nested)PCR および配列決定
2ラウンドの PCR 増幅を上記ライゲーション産物を用いて行う。
【0022】
配列決定したN-末端アミノ酸配列に基づき、130P1および130P2と略称する合成遺伝子特異的プライマーを設計する。さらに、AP1 およびAP2と略称する合成アダプタープライマーを長いアダプター配列に基づき設計する。プライマーの配列は以下の通り:
130P1: 5-ATGGATATHMGNAATCARAAYAARTAYG-3 (配列番号5)
130P2: 5-AATAAATATGARGTWGTNTAYCCNGC-3 (配列番号6)
AP1: 5-GCTCGAGTCGACCGTGGTA-3 (配列番号7)
AP2: 5-GTACGCGTGTGTGAGCTCC-3 (配列番号8)
(H=A、C、またはT; M-Aまたは C; N=A、G、C、または T; R=Aまたは G; Y=CまたはT; W=AまたはT)。
【0023】
(A)第1ラウンド PCR
25 μl 反応系は以下を含む: 2.5 μl 10 x PCR 反応バッファー、1 μl dNTP (各2.5 mM)、0.5 μl アダプタープライマー AP1 (20 mM)、0.5 μl 特異的プライマー 130P1 (20 mM)、1 μl 鋳型 (上記ライゲーション産物)、0.5 μl ExTaq 酵素。滅菌脱イオン水を添加し、それを25 μlとする。PCR条件は以下の通り: 94℃、1分間、1 サイクル; 94℃、1分間、52℃、1分間、72℃、1.5 分間、25 サイクル; 72℃、5 分間、1 サイクル。第1ラウンド PCR 産物を50倍希釈して第2ラウンドPCRのための増幅鋳型を得る。
【0024】
(B) 第2ラウンド PCR
50 μl 反応系は以下を含む: 5 μl 10 x PCR 反応バッファー、2 μl dNTP (各2.5 mM)、1 μl アダプタープライマー AP2 (20 mM)、1 μl 特異的プライマー 130P2 (20 mM)、1 μl 鋳型 (第1ラウンドPCR産物)、1 μl ExTaq 酵素。滅菌脱イオン水を添加してそれを50 μlとする。PCR 反応条件は上記と同一であり、ただし、アニーリング温度は 56℃とする。
【0025】
(C)第2ラウンドのPCR産物をPCR 産物回収キット (Veta-Gene Companyから購入)により回収し、T-ベクターにライゲーションする。ライゲーション産物を用いて大腸菌 E.DH5αを形質転換する。 PCR 増幅をAP2および130P2をプライマーとして、シングルコロニー 細菌を鋳型として用いて行って形質転換体をスクリーニングする。そして陽性の形質転換体 T-ベクターにおける外来断片を配列決定する。配列決定の結果は、配列番号1におけるヌクレオチドの位置19から491の配列である。
【0026】
130S1および130A1-2と略称する特異的プライマーを上記配列決定結果に基づき設計する。それらを用いて結晶タンパク質に対する遺伝子および様々な陽性形質転換体を含むBAC ゲノムライブラリーをスクリーニングし、増幅産物のサイズは434 bpである。プライマーの配列は以下の通りである:
130S1-2: TTCTAATACAACATCAAAGTATCCACTC (配列番号9)
130A1-2: GGTATCGTTCCAATACTAATTCTAAAC (配列番号10)。
【0027】
3.バチルス・チューリンゲンシス YBT-978の殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1のクローニング
1)バチルス・チューリンゲンシス YBT-978 細菌株のゲノム BAC ライブラリーの構築
BAC ライブラリー ベクター pBeloBAC11 (図2に示す)を用いてLuo and Wing (2003) に開示の方法にしたがってバチルス・チューリンゲンシス YBT-978のゲノム BAC ライブラリーを構築する(Luo and Wing. 2003. An improved method for plant BAC library construction, p.3-19. In Grotewold, Erich, Plant functional genomic: methods and protocols. Scientific and medical publishers,/Humana Press, Totowa, USA参照)。即ち、バチルス・チューリンゲンシス YBT-978 をLB 培地で対数増殖期まで培養し、次いで細菌を清浄な滅菌した50 ml 遠心管中での10000 rpmで1分間の遠心分離により収集する。 1 ml TE バッファー (1 mM EDTA、10 mM Tris塩基、pH 8.0) を収集した細菌に添加し、これを振動器上で軽く分散させる。約 40 ml TE バッファーを添加し、5 分間放置し、10000 rpm で1分間の遠心分離により細菌を収集する。細菌を含む50 ml 遠心管を50℃の温水中で放置し、1.5 ml TE25S (0.3 M スクロース、25 mM EDTA、25 mM Tris塩基、pH 8.0)を添加し、次いでよく混合し、1.5 ml 2%温めたゲル (これは低融点ゲルであり、包埋ブロックを作るための特別のものである、0.1 g のかかるゲルを5 ml TE25Sに溶解する)を添加する。自動ピペットを用いてよく混合し、混合物を包埋ブロックを作るための型に添加し、それを次いで冷蔵庫中 4℃で冷却し、包埋ブロックを固める。残りの工程には、包埋ブロック中のYBT-978 のHindIIIによる酵素消化および酵素消化産物の回収、BAC ライブラリー ベクター pBeloBAC11の調製、酵素消化産物のベクターとのライゲーションおよび形質転換した DH10BおよびBAC ライブラリーの質の確認が含まれるが、それらはLuo and Wing (2003)により報告される方法と同一である。
【0028】
2) BAC ゲノムライブラリーのスクリーニングおよび殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1のクローニング
(A) BAC ゲノムライブラリーのスクリーニング
PCR 増幅を、130S1および130A1をプライマーとして用い、BAC ライブラリーシングルコロニー細菌を鋳型として用いて行う。反応系は25 μlであり、その処方は上記と同一である。反応条件も上記と同一であるが、ただし、アニーリング温度を55℃とする。陽性クローン EMB0491を選択する。組換えプラスミド pBMB0491を J. Sambrook et al. に開示の方法にしたがって抽出する(J. Sambrook et al (2002). Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd Edition. Translated by Jin Dong-yan et al. Science Press. Beijing)。酵素消化の結果はpBMB0491 がYBT-978 ゲノムの約 60 kb 断片を含むことを示す。
【0029】
(B)殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1の取得
HindIIIを用いて陽性クローンにおけるYBT-978 ゲノム 断片を完全に酵素消化する。酵素消化産物をHindIIIで完全に酵素消化されたクローニングベクター pUC18 (図 3参照)とライゲーションする。そしてライゲーション産物を用いて大腸菌DH5αを形質転換する。130S1-2 および130A1-2と番号付けしたプライマーを再びプライマーとして用い、形質転換体シングルコロニー細菌を鋳型として用いて、 PCR 増幅を行って陽性形質転換体 EMB0493をスクリーニングする。組換えプラスミド pBMB0492を EMB0493から抽出する。酵素消化の結果は、pBMB0492 がYBT-978 ゲノムの約 16 kb 断片を含むことを示す。さらなる分析により、殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1が5kb XhoI 断片に位置することが示された。
【0030】
(C)殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1および殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1の配列分析
殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1が位置している5kb XhoI 断片のヌクレオチド配列を分析し、5235 bpを含む配列を得、このなかで3465 bp がコード領域である。コード配列を配列番号1に示す。
【0031】
該コード配列は 1154 アミノ酸からなるポリペプチド、即ち、殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1をコードしている可能性があり、その分子量は130558 Daであると推定される。
【0032】
このポリペプチドをサーチし、その他の既知の、ウェブ、ncbi.nlm.nih.gov上の、GenBank 遺伝子データベースにおけるCryおよびCyt タンパク質のアミノ酸配列と比較すると、すべての公表されたタンパク質のなかで殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1に最も近いのは、殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ab2 (GenBank 登録番号: U04368)、Cry7Ab1 (GenBank 登録番号: U04367)および CryAa1 (GenBank 登録番号: M64478)であることが判明し、それぞれ相同性は 58.2%、57.9% および 57.1% である。N-末端半分(配列番号2の位置 1〜658 アミノ酸)における配列相同性は非常に低く、それぞれ 37.1%、37.0%および36.4%の相同性である。該半分は殺虫活性を担う部分であり、殺虫活性を示すのに必要十分である(Schnepf H E, Crickmore N, Rie J V, Lereclus D, Baum J, Feitelson J, Zeigler D R, Dean D H. 1998. B. thuringiensis and its pesticidal crystal proteins. Microbiol Mol Biol Rev, 62:775-806)。このことから、この殺虫性遺伝子が新規な殺虫性遺伝子であることが理解できる。それゆえ、国際バチルス・チューリンゲンシス遺伝子命名委員会は、該殺虫性結晶タンパク質遺伝子をcry7Ba1と命名し、cry7B遺伝子のモデル遺伝子であると決定された。さらに、配列はC-末端半分(即ち、配列番号2の位置 659〜1154 アミノ酸)にて公知のタンパク質と高度に類似であり、相同性はそれぞれ87.9%、86.9% および87.9%に達する。この部分の配列は、パラスポラル(parasporal) 結晶を形成するための機能的構造ドメインであり、殺虫活性とは関係がない。
【0033】
上記配列分析から、すべての開示されているタンパク質のなかで、本発明の殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1ともっとも近いものの相同性は58.2%であることが理解され、80%を超えない。殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1とのあるタンパク質のアミノ酸配列の相同性 が80%を超えると、そのタンパク質は本発明の殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1の範囲に含まれるとみなされる。同様に、すべての開示されたタンパク質のなかで、本発明の殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1のN-末端半分(配列番号2の位置 1〜658 アミノ酸)に最も近いものの相同性は37.1%であり、50%を超えない。殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1のN-末端半分 (配列番号2の位置 1〜658 アミノ酸)とあるタンパク質のアミノ酸配列の相同性 が50%を超えると、そのタンパク質は本発明の殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1 の範囲に含まれるとみなされる。
【0034】
4.バチルス・チューリンゲンシス YBT-978の殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1の殺虫活性
cry7Ba1が位置している5 kb XhoI 断片を、大腸菌-バチルス・チューリンゲンシス シャトルベクター pHT304 (図 4参照、ベクターの起源については、Arantes O and Lereclus D. 1991. Construction of cloning vectors for B. thuringiensis. Gene 108:115-119参照) に移し、組換えプラスミド pBMB0495 (図5参照)を得る。次いで、pBMB0495 をバチルス・チューリンゲンシス CryB 株の非結晶生成(acrystalliferous) 突然変異体に (株の起源については、Wu D, Federici BA. 1993. A 20-kilodalton protein preserves cell viability and promotes CytA crystal formation during sporulation in Bacillus thuringiensis. J. Bacteroil., 175:5276-5280参照) よく確立された エレクトロポーレーション法 (Wu Lan, Sun Ming, Yu Ziniu. A New Resolution Vector with cry1Ac10 Gene Based on Bacillus thuringiensis Transposon Tn4430. Acta Microbiologica Sinica. 2000, 40:264-269) を用いて形質転換し、組換え細菌 BMB-0502を得る。
【0035】
(1)殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1の発現
LB 培地 (エリスロマイシンを終濃度20 μg/mlで添加するとよい)中で一晩インキュベートすることによりBMB0502を活性化する。次いで、それをICPM 培地 (エリスロマイシンを終濃度20 μg/mlで添加するとよい)に移し、無性芽が完全に成熟し、離れ落ちるまでインキュベートする。細菌を収集し、0.5% NaCl および滅菌脱イオン水 で別々に 3回すすぐ。細菌を水と細菌: 滅菌脱イオン水 の比= 1:5にて再び混合し、次いで等量の 2x ローディングバッファーを添加し、よく混合する。沸騰水浴中で 3〜5 分間インキュベートし、次いで12000 rpmで 5 分間遠心分離する。上清を用いてSDS-PAGE 電気泳動を行う。2x ローディングバッファーの処方およびSDS-PAGE 電気泳動の実施手順については、Laemmli による方法を参照されたい(Laemmli, UK. 1970. Digestion of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Nature (London) 227:680-685)。図 6に示すように、BMB0502は130 kDa 結晶タンパク質を形成することができ、そのサイズは出発株YBT-978と同一であり、一方、陰性対照 BMB0503 (シャトルベクター pHT304のみを含む)は、対応するバンドを形成しない。
【0036】
(2)殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1の結晶形態
LB 培地 (エリスロマイシンを終濃度20 μg/mlで添加するとよい)中で一晩インキュベートすることによりBMB0502を活性化する。次いで、それをICPM 培地 (エリスロマイシンを終濃度 20 μg/mlで添加するとよい)に移し、無性芽がほぼ成熟し、離れ落ちるまでインキュベートする。細菌を収集し、滅菌脱イオン水で1回すすぐ。細菌と水とを細菌: 滅菌脱イオン水の比 = 1:5にて再び混合する。透過型電子顕微鏡 (TEM)のためのサンプルを調製し、Epon812で包埋する。超薄切片を作り、透過観察を行い、80 kvで撮像する。MBM0502は両錐形状のパラスポラル(parasporal) 結晶を形成することが出来、これを図7に示す。
【0037】
(3)殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1の殺虫効果の評価
殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1の殺虫効果を、コナガ(Plutella xylostella)の三齢幼虫を用いて評価する。BMB0502をLB 培地 (エリスロマイシンを終濃度20 μg/mlで添加するとよい)中で一晩インキュベートすることにより活性化する。次いでそれをICPM 培地 (エリスロマイシンを終濃度 20 μg/mlで添加するとよい)に移し、無性芽がほぼ成熟し離れ落ちるまでインキュベートする。細菌を収集し、滅菌脱イオン水で1回すすぎ、パラスポラル(parasporal) 結晶混合物を得る。標準的アッセイ手順を用いてバイオアッセイを行う (Shen Ju-qun, Wang Mian-ju, Yu Zi-niu (1990). Standard Procedure and Method for Bacillus thuringiensis formulations. Chinese Journal of Biological Control (Suppl.): 12-16を参照)。バイオアッセイを各サンプルにつき1回繰り返す。LC50を計算する。結果は、殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1はコナガ(Plutella xylostella) に対して非常に高い毒性を発揮することを示した(表1に示す)。これは本発明においてクローニングしたCry7Ba1 タンパク質が鱗翅目の昆虫に対して非常に高い殺虫活性を示すことを意味する。
【0038】
表1 ;本発明においてクローニングしたCry7Ba1 タンパク質のコナガ(Plutella xylostella)に対するバイオアッセイの実験結果
【表1】

【0039】
図面の説明
図 1: 本発明の技術的フローチャート。
図 2:本発明の実施例のBAC ベクター pBleoBAC11の構築チャート。
図 3:本発明において構築したクローニング ベクター pUC18の構築チャート。
図 4:本発明の実施例において構築したシャトルベクターの構築チャート。
図 5:本発明の実施例において構築した組換えプラスミド pBMB0495。
図 6:本発明においてクローニングしたバチルス・チューリンゲンシス Cry7Ba1 パラスポラル(parasporal) 結晶タンパク質のSDS-PAGE 電気泳動分析。
M: 分子量マーカー
1: YBT-978 株のパラスポラル(parasporal) 結晶タンパク質
2: BMB0502 株のパラスポラル(parasporal) 結晶タンパク質
3: 対照 BMB0503 株。
図 7:本発明に含まれるバチルス・チューリンゲンシス YBT-978およびBMB0502 株により産生されたパラスポラル(parasporal) 結晶の形態(線標準は1 μmを表す)
A、B: YBT-978 株のパラスポラル(parasporal) 結晶形態;
C、D: BMB0502 株のパラスポラル(parasporal) 結晶形態。
【0040】
本発明の具体的態様
以下は本発明を示す実施例である。実施例は単に本発明を説明するものであり、決して本発明を限定するものではないことに注意されたい。関与する様々な実験手順は本発明の分野における標準的技術である。具体的に説明されていない内容については、当業者であれば本発明の内容を実施するために本出願日前に入手可能であった様々な参考書籍、科学文献、関連マニュアルおよびハンドブックを参照することが出来る。
【0041】
実施例 1:バチルス・チューリンゲンシス YBT-978の殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1のクローニング
Luo and Wing (2003) に開示の方法にしたがって (Luo and Wing. 2003. An improved method for plant BAC library construction, p.3-19. In Grotewold, Erich, Plant functional genomic: methods and protocols. Scientific and medical publishers,/Humana Press, Totowa, USAを参照されたい)、BAC ライブラリー ベクター pBeloBAC11を用いてバチルス・チューリンゲンシス YBT-978 株のゲノム BAC ライブラリーを構築した (細菌株の起源については、Dai J et al. 1996. Bacillus thuringiensis subsp. huazhongensis, serotype H40, isolated from soils in the People’s Republic of China. Letters in Applied Microbiology. 22(1): 42-45を参照)。130S1-2および130A1-2と番号づけたプライマーをプライマーとして用い、BAC ライブラリーシングルコロニー細菌を鋳型として用いてPCR 増幅を行った。陽性クローン EMB0491を選択した。HindIII を用いて陽性クローンにおけるYBT-978 ゲノム断片を完全に酵素消化した。酵素消化産物をHindIIIによって完全に酵素消化しておいたクローニング ベクター pUC18にライゲーションして、大腸菌 DH5αを形質転換した。130S1-2および130A1-2と番号づけたプライマーを再びプライマーとして用い、形質転換体シングルコロニー細菌を鋳型として用いてPCR 増幅を行って、陽性形質転換体 EMB0493をスクリーニングした。組換えプラスミド pBMB0492をEMB0493から抽出した。酵素消化の結果は、pBMB0492が YBT-978 ゲノムの約 16 kbの断片を含むことを明らかにした。さらなる分析により、殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1が 5kb XhoI 断片に位置することが示された。
【0042】
実施例 2:バチルス・チューリンゲンシス YBT-978の殺虫性結晶タンパク質遺伝子cry7Ba1についての配列分析
殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1が位置している5kb XhoI 断片のヌクレオチド配列を分析した。結果は、それは5235 bpを含む配列であり、そのなかの3465 bpがコード配列であるというものであった。コード配列を配列番号1に示す。
【0043】
該コード配列は、分子量が130558 Daと推定される1154 アミノ酸からなるポリペプチドをコードしている可能性があった。
【0044】
このポリペプチドをその他の既知の Cry およびCyt タンパク質のアミノ酸配列と比較すると、このポリペプチドはCry7Ab2、Cry7Ab1およびCryAa1に最も近く、その相同性はそれぞれ58.2%、57.9% および57.1%であることが判明した。N-末端半分 (配列番号1の位置 1〜658 アミノ酸)の配列の相同性は非常に低く、それぞれ相同性は37.1%、37.0% および 36.4%であった。ポリペプチドはCry7A 殺虫性結晶タンパク質と類似していたので、それは国際バチルス・チューリンゲンシス遺伝子命名委員会によりcry7Ba1と命名された。
【0045】
実施例 3 :殺虫性結晶タンパク質遺伝子 cry7Ba1の発現
cry7Ba1が位置している5 kb XhoI 断片を、大腸菌-バチルス・チューリンゲンシス シャトルベクター pHT304 (ベクターの起源については、Arantes O and Lereclus D. 1991. Construction of cloning vectors for Bacillus thuringiensis. Gene 108:115-119を参照されたい)に移し、組換えプラスミド pBMB0495を得た。次いで、pBMB0495 を、バチルス・チューリンゲンシス CryB 株の非結晶生成突然変異体(株の起源については、Wu D, Federici BA. 1993. A 20-kilodalton protein preserves cell viability and promotes CytA crystal formation during sporulation in Bacillus thuringiensis. J. Bacteroil., 175:5276-5280を参照されたい)によく確立されたエレクトロポーレーション法 (Wu Lan, Sun Ming, Yu Ziniu. A New Resolution Vector with cry1Ac10 Gene Based on Bacillus thuringiensis Transposon Tn4430. Acta Microbiologica Sinica. 2000, 40:264-269)を用いて移し、組換え細菌 BMB-0502を得た。
【0046】
BMB0502と命名された上記組換え細菌をLB 培地 (エリスロマイシンを終濃度20 μg/mlで添加するとよい)中で一晩インキュベートすることにより活性化した。次いでそれをICPM 培地 (エリスロマイシンを終濃度20 μg/mlで添加するとよい)に移し、インキュベーションを無性芽が完全に成熟して離れ落ちるまで行った。細菌を収集し、0.5% NaClおよび滅菌脱イオン水で別々に 3回すすいだ。細菌を、細菌: 滅菌脱イオン水の比 = 1:5にて水と再び混合し、次いで等量の 2x ローディングバッファーを添加し、よく混合した。混合物を沸騰水浴中で3〜5 分間処理し、12000 rpmで5 分間遠心分離した。SDS-PAGE 電気泳動を上清について行った。2x ローディングバッファーの処方および SDS-PAGE 電気泳動の実施手順については、Laemmli (Laemmli, UK. 1970. Digestion of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Nature (London) 227:680-685)に記載の方法を参照されたい。図6に示すように、BMB0502は130 kDa 結晶タンパク質を形成し、そのサイズは出発株のYBT-978と同一であり、一方陰性対照 BMB0503 (シャトルベクター pHT304のみを含む) はかかる対応するバンドを形成しなかった。
【0047】
実施例 4: 殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1の殺虫効果
殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1の殺虫効果を コナガ(Plutella xylostella)の三齢幼虫を用いて評価した。BMB0502 をLB 培地 (エリスロマイシンを終濃度20 μg/mlで添加するとよい)中で一晩インキュベートすることにより活性化した。次いでそれを、ICPM 培地 (エリスロマイシンを終濃度20 μg/mlで添加するとよい)に移し、インキュベーションを、無性芽がほぼ成熟し離れ落ちるまで行った。細菌を収集し、滅菌脱イオン水で1回すすぎ、パラスポラル(parasporal) 結晶混合物を得た。バイオアッセイを標準的アッセイ手順 (Shen Ju-qun, Wang Mian-ju, Yu Zi-niu (1990). Standard Procedure and Method for Bacillus thuringiensis formulations. Chinese Journal of Biological Control (Suppl.): 12-16を参照)を用いて行った。バイオアッセイは各サンプルについて1回繰り返した。LC50 を計算した。結果は殺虫性結晶タンパク質 Cry7Ba1がコナガ(Plutella xylostella)に対して非常に高い毒性を発揮することを示した。これは、本発明においてクローニングしたCry7Ba1 タンパク質が鱗翅目の昆虫に対して非常に高い殺虫活性を示すことを意味するものであった。実施例を行うことによって達成された効果を表1に示した。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の技術的フローチャート。
【図2】本発明の実施例のBAC ベクター pBleoBAC11の構築チャート。
【図3】本発明において構築したクローニング ベクター pUC18の構築チャート。
【図4】本発明の実施例において構築したシャトルベクターの構築チャート。
【図5】本発明の実施例において構築した組換えプラスミド pBMB0495。
【図6】本発明においてクローニングしたバチルス・チューリンゲンシス Cry7Ba1 パラスポラル(parasporal) 結晶タンパク質のSDS-PAGE 電気泳動分析。 M: 分子量マーカー 1: YBT-978 株のパラスポラル(parasporal) 結晶タンパク質 2: BMB0502 株のパラスポラル(parasporal) 結晶タンパク質 3: 対照 BMB0503 株。
【図7】本発明に含まれるバチルス・チューリンゲンシス YBT-978およびBMB0502 株により産生されたパラスポラル(parasporal) 結晶の形態(線標準は1 μmを表す) A、B: YBT-978 株のパラスポラル(parasporal) 結晶形態; C、D: BMB0502 株のパラスポラル(parasporal) 結晶形態。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス・チューリンゲンシス由来の単離殺虫性結晶タンパク質遺伝子であって、配列番号2に示すアミノ酸配列に対して少なくとも80% の相同性を有するCry7Ba1 タンパク質をコードする遺伝子。
【請求項2】
配列番号1に示すヌクレオチド配列を含む、請求項 1のバチルス・チューリンゲンシス由来の単離殺虫性結晶タンパク質遺伝子。
【請求項3】
配列番号2の番号1〜658の部分配列に対して少なくとも50%の相同性を有するアミノ酸配列を含むCry7Ba1 タンパク質をコードする、バチルス・チューリンゲンシス由来の単離殺虫性結晶タンパク質遺伝子。
【請求項4】
請求項 1または3の殺虫性結晶タンパク質遺伝子を含む組換えDNAコンストラクト。
【請求項5】
請求項 4の組換えDNAコンストラクトを含む微生物。
【請求項6】
配列番号2に示すアミノ酸配列に対して少なくとも 80% の相同性を有するアミノ酸配列を含むバチルス・チューリンゲンシス殺虫性結晶タンパク質。
【請求項7】
配列番号2に示すアミノ酸配列を含む請求項 5のバチルス・チューリンゲンシス殺虫性結晶タンパク質。
【請求項8】
配列番号2の番号1〜658の部分配列に対して少なくとも50% の相同性を有するアミノ酸配列を含むバチルス・チューリンゲンシス殺虫性結晶タンパク質。
【請求項9】
配列番号2に示すアミノ酸配列の殺虫性断片。
【請求項10】
請求項 9のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列で形質転換された植物細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−511075(P2009−511075A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535871(P2008−535871)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/CN2006/002724
【国際公開番号】WO2007/045160
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(508119105)ホワチョン・アグリカルチュラル・ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】HUAZHONG AGRICULTURAL UNIVERSITY
【Fターム(参考)】