説明

バックライト型極性有機発光素子

【課題】 基板及び該基板上に形成された有機エレクトロルミネセンスセルを備える有機発光素子(OLED)を提供する。
【解決手段】 有機エレクトロルミネセンスセルは、陽極として作用する第一電極、陰極として作用する第二電極、及び該陽極と該陰極との間に配置された少なくとも一つの発光層を備える。少なくとも一つの発光層は、全体的に秩序性のある結晶構造を有しかつ棒状の超分子からなる異方性導電層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国仮特許出願第60/438,714号(2003年1月7日出願)及び米国特許出願第10/643,257号(2003年8月18日出願)に基づく優先権を主張するものであり、それらの開示内容はすべて、この引用により本明細書に記載されたものとする。
【0002】
本発明は、総じて有機発光素子に関し、特に偏光源として使用できる有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
【背景技術】
【0003】
有機発光素子(OLED)は、その用途に於いて魅力的な特性を有している。OLEDは、視野角が広く、ある状態から他の状態へのスイッチング速度が高く、輝度が高く、色範囲が広く、寿命がかなり長く、そして、コストが比較的低い。OLEDは、ディスプレイ画素制御電子システムにうまく適合する。OLEDは、表示単位である画素が電気的に制御される新たなカラーディスプレイシステムの開発の基礎となりうる。
【0004】
OLEDは、種々の材料からなるいくつかの層を含む。Tang et al., Appl. Phys. Lett., Vol. 51, 913 (1987)を参照。少なくとも一つの層は有機化合物からなる。OLEDは、該素子に於ける少なくとも一つの材料の電界発光特性により、印加した電圧の作用により発光する。
【0005】
OLEDの動作は、一般的な発光の物理的メカニズムに基づく。そのようなメカニズムの一つは、電荷キャリア、例えば、トラップに捕捉された電荷キャリアの放射性再結合を伴う。上述したとおり、OLEDは少なくとも2以上の薄層を含み、その少なくとも一つは有機材料からなる。これらの層に接続された陽極及び陰極はそれぞれ、正孔及び電子のエミッターとして働く。前記層の一つは正孔伝導性を示す材料からなる一方、他の層は電子系の伝導性を有する。正孔を注入する電極(陽極)は、正孔伝導性を有する材料に接続される一方、電子を注入する電極(陰極)は、電子伝導性を有する材料と接続されている。この構成に於いて、陽極に印加される電位が陰極に印加される電位より高いとき、OLEDは正にバイアスされた通常のダイオードとしてふるまう。この印加電圧の極性で、陽極は正孔伝導性を有する層に正孔を注入する一方、陰極は電子伝導性を有する層に電子を注入する。注入されたキャリアは、内部電界の作用により、対向電極に向かって移動する。即ち、電子は陽極に向かって移動し、正孔は陰極に向かって移動する。注目すべきことに、同じ分子に集まった電子と正孔は、フレンケル励起子を形成する。従って、OLEDは、電子−正孔対(即ち励起子)の集中的な再結合を特徴とする空間領域をもたらし、これは、エレクトロルミネセンス(EL)ゾーンと呼ばれる。励起状態の再結合(これは、短い緩和時間の間、相当する励起エネルギーレベルから価電子帯への電子の遷移を伴う)は、光量子の放出を伴う。この薄膜OLEDの動作メカニズムから、電荷キャリアが両電極からELゾーンに供給されることを結論づけることができる。
【0006】
しばしば、OLEDに於けるある層、例えば、電子伝導性を有する層のみがEL発光可能である。そのような素子は、シングルへテロ接合OLEDと呼ばれる。典型的なシングルへテロ接合構造物は、通常、基板を有する。基板は、不透明又は透明なものとすることができ、可撓性のものか硬いものとすることができ、プラスチック、金属、又はガラスで形成することができる。一方、電子輸送層(n型)と正孔輸送層(p型)の両方を、EL活性とすることができ、あるいは、発光特性を有しかつ導電層間の界面に現れる特定の物質が添加(ドープ)されたものとすることができる。この種の素子はダブルヘテロ接合OLEDと呼ばれる。
【0007】
OLEDに於いて、透明基板は、陽極として働く透明な導電性のインジウム・スズ酸化物(ITO)層を支持する。この陽極層に続いて、p型層及びn型層が設けられ、その上方に、金属の陰極が、例えば、真空蒸着法により形成される。この構造には、所定の極性の使用電圧を印加することにより、適当な方向のバイアスがかけられる。そうして生じる内部電界により、OLED構造に於いて発光が生じる。その光線は、透明ITO電極及び基板層を介して素子から導出される。金属の陰極は、反射体として作用することができる。
【0008】
典型的なOLEDは、不透明な基板を用いて同様に提供することができる。ある知られたOLED構造は、EL活性なポリマーのフィルムを用いており、該フィルムは、不透明なシリコン基板上に形成され、それに、金(Au)又はアルミニウム(Al)からなる半透明の上部電極(陰極)が設けられる。そのような素子は、上部電極から光を放出する。
【0009】
明らかなとおり、OLEDは、ディスプレイの画素制御電子システムに容易に組み込むことができる。そのような組み込み系に於いて、基板の役割は、不透明なシリコン板により果たされる。その応用例に於いて、層の順番が逆になったOLEDを用いることが便利である。そのような構造物は、不透明基板を有し、その上に、金属の陰極、n型層、及びp型層が順次設けられる。しかし、p型層の上に直接、透明ITO電極を形成すると、ITO層の劣化を招来する可能性がある。このため、p型層を、例えば二酸化シリコン層などの保護層で覆うべきであり、その上に陽極(ITO)を設けることができる。明らかなとおり、保護層は、p型層上のITOの劣化の影響をなくすよう、十分に厚くするべきであり、一方、この層を介するトンネル現象により電流が流れるよう十分に薄くするべきである。保護層が付け加えられたこの逆構造物の不利な点は、印加する使用電圧を高くする必要がある点である。
【0010】
OLEDの更に有利な点は、デバイスに用いる有機薄膜のほとんどが透明でることに関連する。Gulovic et al., Transparent Organic Light Emitting Devices, Appl. Phys. Lett., Vol. 66, 2606 (1966)を参照。このため、ある垂直構造(それにより赤、緑及び青の光を放出する複数のOLED層が互いに上下に位置する)に基づく基本的に新しい画素デザインを実現することが可能である。この画素デザインは、組み立て技術を簡単にし、画素サイズを少なくとも3分の1に減らすことができる。そのような透明有機発光素子(TOLED)の開発は、高解像度液晶ディスプレイ技術に於いて大きな進歩である。そのようなTOLEDは、オフの状態では高い透過率(71%以上)を示し、オンの状態では高い効率(約1%の量子収率)で光を発生させる。これらのTOLEDは、正孔を注入する透明ITO電極を用いる。垂直構造に於いて、電子注入体の役割は、Mg−Au電極が担っている。この垂直TOLEDに於いて、一つの電極は垂直構造の下部に形成され、他の電極は、複数のOLEDの間及び該構造の上部に配置される。下部電極は通常接地され、他の電極は正又は負の印加電圧でバイアスをかけられる。この垂直構造に於いて、各OLEDはそれぞれ独立して制御される。透明な接触子及びガラス基板を用いることにより、そのような素子は、任意の色の組合せを生成させることができる。
【0011】
知られているとおり、正孔(p型)伝導性の層は、3,4,9,10−ピリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ビス−(1,2,5−チアジアゾロ)−p−キノビス−(1,3−ジチオール)(BTQBT)、及び幾つかの他の類似化合物ならびにそれらの誘導体を用いて得ることができる。
【0012】
電子(n型)伝導性を有する層は、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)から形成することができる。Kepler et al., Electron and Hole Mobility in Tris−(8−hydroxyquinolinolato−N1,O8)Aluminum, Appl. Phys. Lett. Vol. 66, 3618 (1995)を参照。
【0013】
既知のOLEDの特性研究は、素子構造に於いて正孔注入レベルの向上が必要なことを明らかにしている。米国特許第5,998,803号、Qui et al., Dependence of the Current and Power Efficiencies of Organic Light−Emitting Diodes on the Thickness of the Constituent Organic Layers, IEEE Trans. Electron Devices, Vol. ED−48, No. 9 (2001)参照。明らかなところによれば、CuPc層は、通常のOLEDに於いて有効な正孔注入体として作用しうる。かくして、p型層と陽極との間に正孔注入を増加させるCuPc層を設けたOLEDが知られている。Qui et al., Room−Temperature Ultraviolet Emission from an Organic Light−Emitting Diode, Appl. Phys. Lett. Vol. 79, No. 14, 2276 (2001)参照。この構造物は、基板、陽極、正孔注入促進層(正孔注入エンハンス層)、p型層、n型層、保護層、及び陰極を備える。正孔注入を促進する層をペリレン系結晶によって形成できることが知られている。米国特許第5,998,803号参照。
【0014】
正孔注入効率の増加は、プリセット・ダイレクト・バイアス電圧に於いて、注入電流の値がより高くなることにより明らかとなる。正孔注入レベルを増加させる層を用いれば、注入電流が10%以上増加するが、典型的な場合、そのような層を追加しない類似の素子に比べて、増加は50〜100%に達する。この層は隣接する層のエネルギーレベルの整合を確実にし、それによって正孔注入を促進すると考えられる。即ち、この追加のレベルによって、キャリア注入に対する有効ポテンシャル障壁が下がり、それによって注入の効率が上昇する。注目すべきことに、このことは、ターンオン電圧の上昇及び光線出力の低下によって明らかな様に、高い値のポテンシャル障壁は注入に対してかなりの障害となる。
【0015】
米国特許第5,885,498号は、高い効率と長い動作期間を特徴とするOLEDを開示し、これは、正極(陽極)、p型層、n型層、及び負極(陰極)を備えるものである。この素子に於いて、光は、アモルファス状の有機化合物からなるp型層から放出される。
【0016】
かくして、有機化合物、特に、ペリレン及びその誘導体に基づく材料が、(i)正孔(p型)伝導性を有する層、(ii)正孔注入のレベルを上げる層(薄膜結晶)、及び(iii)p型導電性を有するEL活性層(アモルファス)を得る為に使用される。
【0017】
OLEDの多層構造を形成するための薄層の製造方法が知られている。
【0018】
大きな異方性有機分子から無機基板上に薄層をエピタキシャル形成する方法が知られている。この堆積プロセス又は物質移動は、気体の状態に於いて、例えば、真空チャンバ内の蒸着により行われる。気相エピタキシーの方法により、有機分子からなる層が、基板(グラファイト、アルカリハロゲン化物及び他の適当な材料からなる)上に形成される。Uyeda et al., J. Appl. Phys. 43(12), 5181 (1972); Ashida, Bull. Chem. Soc. Jpn. 39(12), 2625−2631, 2632−2638 (1966); Saijo et al., J. Crystal Growth 40 118−124 (1977); Ashida et al., J. of Crystal Growth 8, 45−56 (1971); Murata et al., J. Microsc., 108(3), 261−275 (1976); Fryer, Acta Cryst. A35, 327−332 (1979); Ashida et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 39(12), 2616−2624 (1966); Saito et al., J. Crystal Growth 67, 91 (1984); 及び Saito et al., Appl. Surf. Sci. 22/23, 574−581 (1985)参照。
【0019】
アルカリハロゲン化物の基板上に、溶液、融液、又は気相から、合成高分子又は生体高分子をエピタキシャル形成及び重合させる方法が知られている。例えば、無機鉱物を基板として用いることが知られている。McPherson et al., J. Cryst. Growth. 85, 206 (1988)参照。米国特許第4,016,331号には、熱可塑性ポリマー材料の薄い基板(その延伸、加熱、又は一方向への機械的ラビングにより高度に配向されている)上に、有機薄膜を気相エピタキシャル形成する方法が記載されている。
【0020】
無機単結晶のいくつかの不利な点のため、それを基板としてフィルムのエピタキシャル形成に用いることは制限される。例えば、ごく限られた数の単結晶基板材料しかエピタキシャル形成に適当であることが知られておらず、基板の結晶表面が、反応性を有する可能性があり、酸化物に覆われる可能性があり、及び/又は水分吸収分子を含む可能性がある。そのような基板は、光に対し非透過性の可能性があり、不要な電子及び/又は熱的性質等を有する可能性がある。
【0021】
基板を含む層構造を製造する方法が知られており、この方法では、基板の少なくとも一つの表面の少なくとも一部を、一軸配向した結晶性有機化合物からなる第一の層(「種層」又は「配向層」)と、第一の層上に形成された一軸配向した結晶性有機化合物からなる第二の層とで覆う。米国特許第4,940,854号、米国特許第5,176,786号及び欧州特許第0352931号参照。エピタキシャル形成時、第二の層は、第一の層の配向の影響をうける。簡単にいえば、第二の層はエピタキシャル層である。この知られた方法による多層被覆の形成に使用される有機化合物は、多環式芳香族炭化水素及び複素環式化合物である。多環式芳香族炭化水素及び複素環式化合物は、文献に記載されるものである。Morrison and Boyd, ”Organic Chemistry”, Third Edition, Allyn and Bacon. Inc. (Boston, 1974)参照。公知の方法に用いられる多環式芳香族炭化水素には、ナフタレン類、フェナントレン類、ペリレン類、アントラセン類、コロネン類、及びそれらの誘導体がある。この知られた方法に於いて使用される、ヘテロ原子がS、N又はOである複素環式芳香族化合物は、例えば、フタロシアニン類、ポルフィリン類、カルバゾール類、ピレン類、プテリン類、及びそれらの誘導体である。
【0022】
この公知の方法によれば、エピタキシーの方法によって気相(ガス)から配向層上に該有機化合物のエピタキシャル層が形成されると、エピタキシャル層の結晶構造は、配向層の結晶構造に依存するようになる。
【0023】
この公知の方法に使用されるリアクターチャンバーは、二つの作業領域、バッファガスを送るための手段、及びチャンバー内で真空を生成させるための手段(排気手段)を備える。また、チャンバー内には、バッファガス類を送るための手段及びリアクターチャンバー内の作業領域間で温度勾配を保持するための手段が設けられ、第一作業領域内の温度は、第二作業領域内の温度より高くなっている。基板を第二作業領域に入れ、第一作業領域に有機化合物源を配置する。10−6Torrから10−10Torrまでの範囲の圧力になるまでチャンバーを排気する。次いで、チャンバーにバッファガスを充填し、該バッファガスの蒸気圧を0.001Torr〜10,000Torrの範囲に維持する。供給源から基板に有機化合物を移行させるため、チャンバーの第一作業領域内の温度を最高400°C(該有機化合物の気化に十分な温度)にまで上げ、第二作業領域内の温度を20°C〜100°Cの範囲に下げる。エピタキシャル層形成の全プロセスに於いて、必要な温度スケジュール及び真空レベルを一定に保つ必要がある。
【0024】
基板上の温度は、任意の温度とすることができるが、供給源の温度より低くする必要がある。基板上の温度は、供給源の温度の90%を超えないことが望ましいが、供給源の温度の25%以下であることがより好ましい。
【0025】
上述した利点にもかかわらず、この公知の方法には、かなり不利な点がある。この従来の方法に於いて、フラットな有機分子の必要な配向と必要な結晶学的パラメータとを備える有機エピタキシャル層を形成するには、基板上に配向層をまず形成することが不可欠であり、それは、本質的に困難で技術的に骨の折れる作業を必要とする。更に、配向層の物理学的(結晶学的)性質及び配向層に於けるフラットな分子の配向は、層形成プロセス時の基板温度にどうしても左右される。有機化合物のそれぞれについて特有の許容温度範囲が存在するため、化合物ごとに固有の技術を開発する必要がある。
【0026】
この従来の方法では、エピタキシャル層形成のすべての期間中、リアクターチャンバー内の温度及び真空レベルを一定に維持する必要がある。温度及び真空にバラツキがあると、エピタキシャル層に欠陥が生じることになる。即ち、分子層の結晶学的パラメーター及び配向が変わる。そのように技術的パラメーターが不安定になりやすいこともまた、この公知の方法の欠点につながりうる。特に、その欠点は、1〜10マイクロメートルの厚みの相対的に厚いエピタキシャル層を形成するときに現れる。
【0027】
従来法で用いる技術的装置は非常に複雑である。従来法のリアクターチャンバーは必ず、高い真空(最高10−10Torr)を保持しなければならず、また、非常に近いところに配置された作業領域に於いて顕著な温度差を保持しなければならない。更に、技術的装備は、予備加熱システム、基板冷却システム、高真空を達成するための複雑な排気システム、バッファガスを送るシステム、温度及び圧力をモニターするためのシステム、ならびに技術的プロセスに対する制御システムを備える必要がある。強調すべきことに、真空が必要であるため、プロセスは高価なものになり、基板のサイズは制約される。
【0028】
また、公知の方法の不利な点は、基板を作るのに任意の材料を使えるわけではないということである。基板として使用できるのは、高真空、必要な圧力降下及び顕著な温度差の下、その物性、機械特性、光学特性及び他の特性を維持できる材料のみである。更に、基板と成長する結晶の格子サイズがあっていることが必要であるため、堆積に適当な化合物の範囲は限られてくる。
【0029】
蒸着の大きな欠点は、基板表面の欠陥が形成する層の構造に強く影響することである。気体からの分子を堆積させると、基板表面の欠陥は、増強され、あるいは修飾される。
【0030】
溶液から層(又は膜)を堆積させる方法が知られている。米国特許第5,646,284号、第5,656,751号、第5,710,273号参照。この方法は、可溶性の化合物に限られ、また殆どの溶媒が高度に有害な液体であり、このことは製造を困難で高価なものにする。更に、基板表面のぬれ性が低いため、コーティングが妨げられる。
【0031】
薄い結晶膜(又は薄い結晶層)を製造する他の方法として、オプティバ−プロセス(Optiva−Process)が知られている。米国特許第5,739,296号及び第6,049,428号ならびにP. Lazarev et al., ”X−ray Diffraction by Large Area Organic Crystalline Nano−films”, Molecular Materials, 14(4), 303−311 (2001),及びBobrov, ”Spectral Properties of Thin Crystal Film Polarizers”, Molecular Materials, 14(3), 191−203 (2001)参照。このプロセスは、化学改質工程と4つの秩序化工程とを、結晶膜形成時に含む。以下、この多段階プロセスを「カスケード結晶化プロセス」と呼ぶ。該化学改質工程は、両親媒性を分子に付与するため、イオノゲン(親水性)基を分子の周辺部に付加する。両親媒性分子は互いに積み重なって超分子となる。これが第一の秩序化工程である。特定の濃度を選ぶことによって、超分子は液晶状態となり、リオトロピック液晶を形成する。これが第二の秩序化工程である。せん断力(又はメニスカス力)を作用させながらリオトロピック液晶を基板上に堆積させる。これにより、得られる固体結晶膜の結晶軸方向を、せん断力(又はメニスカス力)の方向によって特定の方向にする。このせん断力に支援された方向づけ堆積工程が、第三の秩序化工程であり、基板表面上に於ける結晶構造又は多結晶構造の全体的な秩序化をもたらしている。カスケード結晶化プロセスの最後の第四工程は、乾燥/結晶化であり、これにより、リオトロピック液晶は固体結晶膜に変換される。本願に於いて、用語「カスケード結晶化プロセス」は、これらの化学改質工程及び4つの秩序化工程を合わせて一つのプロセスとして説明するのに使用する。
【0032】
この方法により形成される層は、全体的な秩序を有する。この全体的な秩序は、基板表面全体にわたって層の結晶軸の方向が、堆積プロセスによって制御され、基板表面の影響が制限されていることを意味する。カスケード結晶化プロセスの主な利点は、層の表面欠陥に対する依存性が低いことである。この低い依存性は、リオトロピック液晶の粘弾性特性による。弾性のある液晶層は、欠陥領域の発達を防ぎ、堆積された層の部分に欠陥が侵入するのを阻害する。リオトロピック液晶の弾性は、欠陥領域の影響下で分子が再配向しないよう作用する。堆積された材料の分子は、横方向の超分子にまとめられ、拡散及び移動の自由度が制限される。
【0033】
異方性結晶層は、押出し機でリオトロピック液晶を押出すことにより形成することもできる。
【0034】
この方法の欠点は、得られる層に硫酸塩基/亜硫酸塩基が存在することである。そのような親水性基が存在すると、結晶層の電子特性が妨げられる。親水性基は、材料の光学特性及び電子特性を変化させる。
【0035】
【特許文献1】米国特許第5,998,803号
【特許文献2】米国特許第5,998,803号
【特許文献3】米国特許第5,885,498号
【特許文献4】米国特許第4,016,331号
【特許文献5】米国特許第4,940,854号
【特許文献6】米国特許第5,176,786号
【特許文献7】欧州特許第0352931号
【特許文献8】米国特許第5,646,284号
【特許文献9】米国特許第5,656,751号
【特許文献10】米国特許第5,710,273号
【特許文献11】米国特許第5,739,296号
【特許文献12】米国特許第6,049,428号
【非特許文献1】Tang et al., Appl. Phys. Lett., Vol. 51, 913 (1987)
【非特許文献2】Gulovic et al., Transparent Organic Light Emitting Devices, Appl. Phys. Lett., Vol. 66, 2606 (1966)
【非特許文献3】Kepler et al., Electron and Hole Mobility in Tris−(8−hydroxyquinolinolato−N1,O8)Aluminum, Appl. Phys. Lett. Vol. 66, 3618 (1995)
【非特許文献4】Qui et al., Dependence of the Current and Power Efficiencies of Organic Light−Emitting Diodes on the Thickness of the Constituent Organic Layers, IEEE Trans. Electron Devices, Vol. ED−48, No. 9 (2001)
【非特許文献5】Qui et al., Room−Temperature Ultraviolet Emission from an Organic Light−Emitting Diode, Appl. Phys. Lett. Vol. 79, No. 14, 2276 (2001)
【非特許文献6】Uyeda et al., J. Appl. Phys. 43(12), 5181 (1972)
【非特許文献7】Ashida, Bull. Chem. Soc. Jpn. 39(12), 2625−2631, 2632−2638 (1966)
【非特許文献8】Saijo et al., J. Crystal Growth 40 118−124 (1977)
【非特許文献9】Ashida et al., J. of Crystal Growth 8, 45−56 (1971)
【非特許文献10】Murata et al., J. Microsc., 108(3), 261−275 (1976)
【非特許文献11】Fryer, Acta Cryst. A35, 327−332 (1979)
【非特許文献12】Ashida et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 39(12), 2616−2624 (1966)
【非特許文献13】Saito et al., J. Crystal Growth 67, 91 (1984)
【非特許文献14】Saito et al., Appl. Surf. Sci. 22/23, 574−581 (1985)
【非特許文献15】McPherson et al., J. Cryst. Growth. 85, 206 (1988)
【非特許文献16】Morrison and Boyd, ”Organic Chemistry”, Third Edition, Allyn and Bacon. Inc. (Boston, 1974)
【非特許文献17】P. Lazarev et al., ”X−ray Diffraction by Large Area Organic Crystalline Nano−films”, Molecular Materials, 14(4), 303−311 (2001)
【非特許文献18】Bobrov, ”Spectral Properties of Thin Crystal Film Polarizers”, Molecular Materials, 14(3), 191−203 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本発明は、全体的に秩序性のある結晶構造を有する異方性導電層を形成する方法を提供する。本発明の方法によれば、異方性結晶層がカスケード結晶化プロセスによって形成される。この異方性結晶層は、当該層の偏光軸に沿って3.4±0.3Aの分子間間隔を有する全体的に秩序性のある結晶構造を特徴とし、かつ棒状の超分子によって形成されている。棒状の超分子は、共役π系及びイオノゲン基を有する少なくとも一種の多環式有機化合物からなる。その後、形成した異方性結晶層に外部からの作用を付与し、該異方性結晶層からイオノゲン基を除去する。この外部からの作用の時間、性質及び強さは、該異方性結晶層からのイオノゲン基の部分的除去を確実にしながら、外部からの作用の終了後に結晶構造が維持されるよう、選択される。
【0037】
更に本発明は、有機発光素子(OLED)を提供する。該OLEDは、基板と、該基板上に形成された有機エレクトロルミネセンスセルとを含む。該有機エレクトロルミネセンスセルは、陽極として作用する第一電極、陰極として作用する第二電極、及び該陽極と該陰極との間に配置された少なくとも一つの発光層を含む。該発光層は、異方性導電層であり、それは、光軸の一つの方向に3.4±0.3Aの分子間間隔を有する全体的に秩序性のある結晶構造を有する。該発光層は、棒状の超分子からなり、それは、共役π系を有する少なくとも一種の多環式有機化合物からなる。
【0038】
本発明は、以下の記載及び請求の範囲を図面とともに読むことによってよりよく理解されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本願明細書に用いる以下の用語は以下のとおりの意味を有する。
【0040】
「下部電極」は、基板上に直接設けられた電極をさす。
【0041】
「上部電極」は、有機エレクトロルミネセンスセルの頂上に設けられた、基板に対して遠位の電極をさす。
【0042】
「正孔注入層」は、電圧が有機エレクトロルミネセンスセルに印加されるとき、陽極から正孔が注入される層をさす。
【0043】
「正孔輸送層」は、陽極と発光層との間にあって、正孔移動度が高く、正孔に対する親和性が高い層をさす。当業者に明らかなとおり、正孔注入層と正孔輸送層は、単一の層とすることができ、あるいは、異なる化合物からなる別個の層とすることができる。
【0044】
「電子注入層」は、OLEDに電圧が印加されるとき、陰極から電子が注入される層をさす。
【0045】
「電子輸送層」は、陰極と発光層との間にあって、電子移動度が高く、電子に対する親和性が高い層をさす。当業者に明らかなとおり、電子注入層と電子輸送層は、単一の層とすることができ、あるいは、異なる化合物からなる別個の層とすることができる。
【0046】
本発明は、全体的に秩序性のある結晶構造を有する異方性導電層を形成する方法を提供する。本発明の方法によれば、異方性結晶層がカスケード結晶化プロセスによって形成される。この異方性結晶層は、該層の偏光軸に沿って3.4±0.3Aの分子間間隔を有する全体的に秩序性のある結晶構造を特徴とし、かつ棒状の超分子によって形成されている。棒状の超分子は、共役π系及びイオノゲン基を有する少なくとも一種の多環式有機化合物からなる。その後、形成した異方性結晶層に外部からの作用を付与し、該異方性結晶層からイオノゲン基を除去する。この外部からの作用の時間、性質及び強さは、該異方性結晶層からのイオノゲン基の部分的除去を確実にしながら、外部からの作用の終了後に結晶構造が維持されるよう、選択される。
【0047】
該異方性結晶層は、押出し機でリオトロピック液晶を押出すことにより形成することもできる。
【0048】
この方法によって製造される異方性結晶層は、全体的な秩序を有し、言い換えれば、そのような層は、全体的に秩序性のある結晶構造を有する。「全体的な秩序」は、異方性結晶層の結晶軸の方向が基板表面全体にわたって堆積プロセスにより制御されていることを意味する。形成された異方性結晶層に加えられる外部からの作用は、この層の全体的な秩序を乱すものではない。従って、該異方性結晶層は、独立した結晶内に均質な結晶構造が形成された多結晶層と異なる。そのような結晶のスクエアは、基板のスクエアよりもずっと小さい。上述した異方性結晶層に於いて、その結晶構造に対し基板表面がもたらす影響は制限される。異方性結晶層は、必要に応じて、基板表面の一部に形成することができ、あるいは、表面全体に形成することができる。いずれの場合も、異方性結晶層は全体的な秩序を特徴とする。
【0049】
少なくとも一種の有機化合物からなるリオトロピック液晶を用いて異方性結晶層形成するための方法が知られている。米国特許第5,739,296号及び第6,049,428号ならびにP. Lazarev, et al., ”X−ray Diffraction by Large Area Organic Crystalline Nano−films”, Molecular Materials, 14(4), 303−311 (2001); Y. Bobrov, ”Spectral Properties of Thin Crystal Film Polarizers” Molecular Materials, 14(3), 191−203 (2001)参照。この方法は、簡便で経済上有効であり、しかも、層の異方性及び結晶性の程度を確実に高くし、任意の形状の薄い結晶膜(曲面上への多層コーティングを含む)を得ることを可能にし、更に、生態学的に安全で、労力とエネルギーを節約できる。この知られた方法を用いることにより、単結晶膜を得ることもできる。
【0050】
異方性結晶層を形成するためのこの知られた方法(以下、「カスケード結晶化プロセス」と呼ぶ)は、以下の順序の技術的操作を特徴とする。
(1)目的とする化合物の化学改質、
(2)リオトロピック液晶の形成、
(3)少なくとも一種の有機化合物からなるリオトロピック液晶の基板への付与(塗布)、
(4)該リオトロピック液晶に外から液化作用を付与して、その粘度を下げること、
(5)該リオトロピック液晶に外から配向作用を付与して、そのコロイド溶液の粒子に、ある支配的な配向を付与すること、
(6)該リオトロピック液晶の粘度を少なくとも初期のレベルに戻すよう、外からの液化作用及び/又はさらなる外部からの作用の付与を停止すること、及び
(7)乾燥。
【0051】
以上の操作が完了すれば、カスケード結晶化プロセスにより、光軸の一つの方向に3.4±0.3Aの分子間間隔を有する異方性結晶層が得られる。
【0052】
イオノゲン(親水性)基は、スルホン酸基、COO、PO、カチオン基、カルボキシ基等とすることができる。イオノゲン基は、最初の有機物質に両親媒性を付与するため使用される。
【0053】
異方性結晶層への外部からの作用は、熱分解温度まで該結晶層を局所的又は全体的に加熱することにより付与される。熱分解温度は、有機化合物にそれぞれ特有なものであり、実験によって測定することができる。本明細書で使用する用語「熱分解温度」は、イオノゲン基が分解及び離脱される温度をさす。
【0054】
より正確には、熱分解の温度は、デリバトグラフ分析のデータに基づいて規定することができる。デリバトグラフ分析(損失重量)のデータを図1に示す。図1には熱分析曲線が描かれており、これは、インダントロンのサンプルを加熱する過程に於ける該サンプルの重量変化を示している。その温度は、室温(21.6°C)から最高1000°Cまで、一定の昇温速度(4.9〜5°C/分に等しい)で上昇させた。デリバトグラフ分析、即ち、有機化合物サンプルの損失重量の温度依存性の解析は、スルホン酸基、硫酸基、又は亜硫酸基をそれから除去した結果として、この場合、熱分解温度が330°C〜350°Cの範囲にあることを示している。イオノゲン基の除去は、極性溶媒に対するその溶解性を調べることにより確認される。指定温度範囲に於けるその加熱工程の後、該当するサンプルの溶解度は下がる。
【0055】
この方法に於いて、異方性結晶層の加熱は、種々の方法によって行うことができ、例えば、同心円状の電気ヒーター、及び/又はマイクロ波照射、及び/又は抵抗ヒーター、及び/又はその代わりなる電界又は磁界、及び/又は加熱した液体及び/又は気体の流れを用いることによって、行うことができる。加熱は、基板側及び形成された結晶膜側の両方から行うことができる。特定した両方の側から同時に加熱を行うことも可能である。
【0056】
異方性結晶層の熱分解によって、機械的強度は増加し、該層の基板への接着性は向上する。
【0057】
イオノゲン基、特にスルホン酸基の離脱は、外部からの作用をマイクロ波照射及び/又はレーザー照射によって付与することにより、達成することができる。この作用の周波数、強度、及び時間は、該異方性結晶層からのイオノゲン基の部分の部分的除去を確実にしながら、該層の結晶構造が維持されるよう、選択される。照射周波数(又は相当する光子エネルギー)は、該有機化合物の少なくとも一つの吸収帯(該イオノゲン基の結合エネルギー)と共鳴状態となるよう選択される。照射の周波数(又は相当する光子のエネルギー)は、最初の有機化合物に於ける他の結合のかく乱によってイオノゲン基の離脱が達成されることのないように、設定すべきである。照射の周波数及び外部からの作用の時間は、最初の有機化合物のそれぞれについて実験により選択される。かくして、最初の有機化合物に両親媒性を付与する基、即ちスルホン酸基又は他の任意のイオノゲン(親水性)基(例えば、COO、PO、カチオン基、カルボキシ基等の除去が可能になるように、照射の周波数、強度、及び時間は選択すべきである。
【0058】
上述したイオノゲン基、特にスルホン酸基は、異方性結晶層の材料に於いて、活性な電荷キャリア(電子及び/又は正孔)に対し、非常に有効なトラップである。従って、そのような基を除くことにより、電子及び正孔の活性が高まり、その結果、異方性結晶層の電気伝導率が高くなる。
【0059】
ここに開示する方法の可能な態様に於いて、導電性材料からなる層を基板上に更に形成し、次いで、この導電層上に異方性結晶層を形成する。ここに開示する方法の他の可能な異なる態様に於いて、少なくとも一つの異方性導電層を基板上にあらかじめ形成し、次いで、異方性結晶層を、その一以上の異方性導電層上に形成する。
【0060】
異方性結晶層への外部からの作用は、バッファガス又は不活性ガス雰囲気(例えばHe、Ar、Xe、及び他の非反応性ガス(例えば窒素及びCO))中で付与することができる。ここに挙げたガス類は、可能な例として示されるもので、他の類似するガス類及び化合物類を選ぶことを制限しようとするものではない。
【0061】
本方法は、有用な電気特性及び光学特性を有する異方性導電層を提供することができる。この目的のため、最初の有機化合物は更に、少なくとも一つのドーパント及び/又は化合物を含むことができ、該ドーパント又は化合物は、リオトロピック液晶有機物質の分子又は該分子のフラグメントの平面的な(フラットな)構造を壊すことなく、かつ形成される異方性導電層の導電性のタイプ(型)及びサイズ(大きさ)を変えるものである。該ドーパント及び/又は化合物は、ドナー混合物とすることができ、これは、電子型の導電性を有する異方性導電層の形成を促進する。また、該ドーパント及び/又は化合物は、アクセプター混合物とすることができ、これは、正孔型の導電性を有する異方性導電層の形成を促進する。その他、最初の有機物質に添加したドーパントは、活性な電荷キャリア−電子及び正孔の動力学的特性を変えることができる。適合するドーパント及び化合物を選ぶことによって、外部電界に於ける電子及び正孔の両方のドリフト活性を高めることができる。また、ドーパント及び/又は化合物は、異方性導電層の発光特性を変えることもできる。従って、上述したドーパント及び/又は化合物は、赤外及び/又は可視及び/又は紫外部分のスペクトルに於いて光量子の放出を伴う異方性導電層に於いて、発光性電子−正孔再結合中心を形成することができる。
【0062】
ここに開示する方法の一態様に於いて、リオトロピック液晶の調製に使用する有機化合物は、一般構造式{K}(M)を有する少なくとも一つの芳香族化合物を含む。式中、Kは色素であり、該色素の構造は、一つの又は二つ以上の同じ又は異なるイオノゲン基であって、リオトロピック液晶相の形成のための極性溶媒への溶解性を確かなものにするイオノゲン基を含み、Mは対イオンであり、かつnは色素分子中の対イオンの数であり、該対イオンが複数個の分子によって共有されている場合、該数は分数となり得る。
【0063】
本発明は更に、有機発光素子(OLED)を提供する。一般的に、該OLEDは、基板と、該基板上に形成された有機エレクトロルミネセンスセルとを含む。該有機エレクトロルミネセンスセルは、陽極として作用する第一電極、陰極として作用する第二電極、及び該陽極と該陰極との間に配置された少なくとも一つの発光層を含む。該少なくとも一つの発光層は、異方性導電層であり、それは、光軸の一つの方向に3.4±0.3Aの分子間間隔を有する全体的に秩序性のある結晶構造を有する。該発光層は、棒状の超分子からなり、それは、共役π系を有する少なくとも一種の多環式有機化合物からなる。ここに開示する有機発光素子は、偏光源であり、液晶表示装置のバックライトに利用できる。
【0064】
シングルへテロ構造OLED又はダブルへテロ構造OLEDを例として、特定の示される層の形成配列及び順序に本発明を限定することなく、本発明を具体化するOLEDの作製方法について説明する。例えば、本発明のシングルへテロ構造OLEDは、可撓性基板(これは、透明であることが好ましい)、第一電極(これは、典型的にインジウムスズ酸化物(ITO)陽極層である)、正孔輸送層、電子輸送層、第二電極層(例えば、Mg/Agの金属陰極層)、及び金属保護層(例えば、Agの層からなり、Mg/Ag陰極層を空気酸化から保護するためのもの)を含む。ダブルへテロ構造は、更に、発光材料を含む層を有する。このさらなる層は、他の層と区別するため、以下、「独立した発光層」と呼ぶ。というのも、この独立した発光層を必要とすることなく、正孔輸送層及び電子輸送層を形成して電界発光(エレクトロルミネセンス放射)を生成させることができるからである。
【0065】
一態様に於いて、OLEDは、下部電極(これは、陽極又は陰極である)、上部電極(これは、下部電極が陽極ならば、陰極であり、下部電極が陰極ならば、陽極である)、及び少なくとも二つの層を有する電界発光媒体(エレクトロルミネセンス媒体)(その一つは、陽極に隣接する少なくとも一つの正孔注入/正孔輸送材料からなり、もう一つは、陰極に隣接する少なくとも一つの電子注入/電子輸送層からなる)を含む。
【0066】
他の態様に於いて、該上部電極は陰極であり、該下部電極(基板上に直接設けられた
もの)は陽極である。該陰極と該陽極との間には、該陰極に隣接して電子注入/電子輸送層があり、該陽極に隣接して正孔注入/正孔輸送層がある。
【0067】
他の態様に於いて、該上部電極は陽極であり、該下部電極(基板上に直接設けられたもの)は陰極である。該陰極と該陽極との間には、該陽極に隣接して正孔注入/正孔輸送層があり、該陰極に隣接して電子注入/電子輸送層がある。
【0068】
さらなる態様に於いて、該上部電極は陰極であり、基板上に直接設けられた該下部電極は陽極である。該OLEDは、更に、該陰極に隣接する電子輸送層と、該陽極に隣接する正孔注入層及び該正孔注入層に隣接する少なくとも一つの正孔輸送層からなる正孔注入/正孔輸送層とを含む。該電子輸送層と該正孔輸送層との間に於いて、該OLEDは更にエミッター層を含み、そこに於いて、正孔と電子は再結合して光を生成させる。
【0069】
他の態様に於いて、該OLEDは、陽極に隣接する正孔注入層及び少なくとも二つの正孔輸送層を含み、そのうち第一の正孔輸送層は該正孔注入層に隣接し、第二の正孔輸送層は第一の正孔輸送層に隣接する。
【0070】
一態様に於いて、該正孔注入層及び該少なくとも二つの正孔輸送層は、別々に設けられたものである。
【0071】
一態様に於いて、該OLEDは、電子注入層及び少なくとも一つの電子輸送層を含む。
【0072】
一態様に於いて、電界発光媒体(エレクトロルミネセンス媒体)は、該陽極に隣接する正孔注入/正孔輸送層、該陰極に隣接する電子注入/電子輸送層、及び該正孔注入/正孔輸送層と該電子注入/電子輸送層との間にあるエミッター層を備える。
【0073】
他の態様に於いて、該OLEDは更に、該上部電極に隣接するさらなる層を含むことができる。好ましい態様に於いて、当該層はインジウムスズ酸化物からなる。
【0074】
OLED構造物が他にもあることは、当業者に明らかなことである。
【0075】
一態様に於いて、典型的なOLEDの形成は、ガラス基板上に設けられる半透明の下部電極から始める。一態様に於いて、該電極は陽極である。他の態様に於いて、該電極は陰極である。また他の態様に於いて、上部電極は半透明である。
【0076】
陽極は、典型的に約800Åの厚みであり、高い仕事関数を有する金属、金属酸化物及びそれらの混合物からなる一層を有することができる。好ましくは、陽極は、導電性もしくは半導電性の金属酸化物又は複合金属酸化物(例えば、酸化インジウム亜鉛スズ、酸化インジウム亜鉛、二酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化ニッケル又はインジウムスズ酸化物)、高い仕事関数を有する金属(例えば、金又は白金)、及び金属酸化物と高い仕事関数を有する金属の混合物からなる群より選ばれる材料からなる。一態様に於いて、陽極は、該陽極と第一の正孔注入/正孔輸送層との間に設けられる誘電体の薄層(厚み約5〜15Å)を更に伴う。例えば、そのような誘電体には、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化シリコン、及び二酸化シリコンがあるが、これらに限定されるものではない。他の態様に於いて、陽極は、正孔注入/正孔輸送層に隣接する有機導電性材料の薄層からなる。そのような有機導電性材料には、ポリアニリン、PEDOT−PSS、及びそれらの導電性又は半導電性の有機塩があるが、それらに限定されるものではない。
【0077】
半透明の陰極は、典型的に70〜150Åの厚みである。一態様に於いて、陰極は、一以上の金属(そのうち少なくとも一つは低い仕事関数を有する)の単一の層からなる。そのような金属には、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、サマリウム、セシウム、及びそれらの組合せがあるが、それらに限定されるものではない。好ましくは、低い仕事関数の金属は、バインダー金属、例えば銀又はインジウムと混合される。他の態様に於いて、陰極は、電子注入/電子輸送層に隣接する誘電体の層を更に含む。該誘電体には、フッ化リチウム、フッ化セシウム、塩化リチウム、及び塩化セシウムがあるが、それらに限定されるものではない。好ましくは、該誘電体はフッ化リチウム又はフッ化セシウムである。好ましい態様に於いて、陰極は、アルミニウムとフッ化リチウム、マグネシウムと銀の混合物、又はリチウムとアルミニウムの混合物からなる。他の一態様に於いて、陰極は、マグネシウム、銀及びフッ化リチウムを含む。
【0078】
一態様に於いて、OLEDは、電子注入/電子輸送層と正孔注入/正孔輸送層との間に、エミッター層を有し、そこに於いて、電子注入/電子輸送層からの電子は、正孔注入/正孔輸送層からの正孔と再結合する。エミッター層の組成に応じて、OLEDは異なる色の可視光を発する。エミッター層は、典型的に、少なくとも一つのホスト化合物単独からなるか、少なくとも一つのホスト化合物と少なくとも一つのドーパント化合物との組合せからなる。
【0079】
エミッター層は200〜400Åの厚みとすることができる。
【0080】
一態様に於いて、有機発光素子は、電子の輸送と発光が同時に可能な少なくとも一つの有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの層を含む。他の態様に於いて、有機発光素子は、正孔の輸送と発光を同時に行う少なくとも一つの有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの層を含む。さらなる態様に於いて、有機発光素子は、発光と、電子の輸送及び正孔の輸送の両方とを同時に行う少なくとも一つの有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの層を含む。
【0081】
一態様に於いて、有機発光素子は、陰極と発光層との間に配置された少なくとも一つの電子輸送層、及び/又は、陽極と発光層との間に配置された少なくとも一つの正孔輸送層を更に含む有機エレクトロルミネセンスセルを少なくとも含む。
【0082】
また、有機発光素子は、他の太陽電池、OLED、及びその他の光起電素子に広く用いられる有機化合物を用いることもできる。従って、有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの発光層は、インダントロン(Vat Blue 4)、又は1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジベンゾイミダゾール(Vat Red 14)、又は3,4,9,10−ピリレンテトラカルボン酸ジベンゾイミダゾール、又はキナクリドン(Pigment Violet 19)又は3,4,9,10−ピリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)又はビス−(1,2,5−チアジアゾロ)−p−キノビス−(1,3−ジチオール)(BTQBT)又はトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)のいずれかを用いて形成することができる。
【0083】
有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの発光層を形成するリオトロピック液晶は、種々のフタロシアニン類をベースとして調製することができる。該フタロシアニン類には、例えば、無金属フタロシアニン(HPc)、一価又は二価の金属を有するフタロシアニン類(例えばLiPc、MgPc)、金属ハロゲン化物又は金属水酸化物を有するフタロシアニン類(例えばAlClPc、AlOHPc)、四価の金属を有するフタロシアニン類(TiOPc、SiClPc、Si(OH)Pc)、又は金属の中心イオンがフタロシアニン環に於いてスルホン酸(又はアミド)、カルボン酸、アルキル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ等で置換又は交換されたフタロシアニン類がある。他のフタロシアニン類、例えば、VOPc、CrPc、FePc、CoPc、NiPc、CuPc、ZnPc、SnClPc、PbPc、Ge(OH)Pc、InBrPc等、又はそれらの混合物を用いることもできる。
【0084】
有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの発光層は、種々の色素、又は3,3’−ジクロロベンジジン又は2,7−ジアミノフルオレノン、又は2,6−ジアミノアントラキノン、又は2,7−ジアミノアントラキノン、又は(p−アミノフェニル)フェニルアミン、又はトリス(p−アミノフェニル)アミン、又は2,7−ジアミノジベンゾチオフェンスルホン、又は2,7−ジアミノジベンゾチオフェン、又は2−(p−アミノフェニル)−6−アミノベンゾキサゾール、又はビス(p−アミノフェニル)アミン、又はN−メチルビス(p−アミノフェニル)アミン、又は2,5−ビス(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、又は1,6−ジアミノピレン、又は1,5−ジアミノナフタレン、又は他の類似有機化合物、及びそれらの混合物を用いて、形成することができる。有機発光素子の有効性の観点から、高い正孔活性を有する有機物質を用いることが好ましい。本発明の有機発光素子に於いて、正孔輸送層は、そのような物質から形成することができる。この目的のため、有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの正孔輸送層は、トリフェニルアミン四量体を混合物の主成分として用い、そして、5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン又は9,10−ジフェニルアントラセンを添加物として0.1〜10%の量で用いて、形成することができる。また、4,4’−ビス−[(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]−ビフェニル又はN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンを、有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの正孔輸送層を形成するのに用いることができる。
【0085】
好ましくは、有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの正孔輸送層の材料を、芳香族第三級アミン類からなる群より選ぶこともできる。有機発光素子の有効性の観点から、電子活性の高い材料を用いることが好ましい。電子輸送層が、そのような材料から形成される。光起電素子に広く用いられている有機化合物を本発明の有機発光素子に使用することができる。有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの電子輸送層は、トリス−(8−キノリナト−N1,08)−アルミニウム又は銅フタロシアニン(CuPc)又は酸化亜鉛(ZnO1−x)を用いて形成することができる。
【0086】
本発明の有機発光素子に於いて、効果的な電子注入体を用いることが好ましい。この目的のため、少なくとも一つの電極(陰極)は、電子の仕事関数が小さい材料からなるべきであり、そのような電極を電子注入のために電界発光セルで使用すべきである。本発明の有機発光素子に於いて、少なくとも一つの電極は、不透明であってもよく、そして、アルミニウム又は銀又は金又はCa/AlもしくはMg/AgもしくはLi/Alの合金又は他の適当な金属及びそれらの合金からなってもよい。また、有機発光素子が実効性の高い正孔注入体を有することも重要である。従って、少なくとも一つの電極(陽極)は、電子の仕事関数が大きい材料からなり、かつ、そのような電極を正孔注入のため電界発光セルに用いることが好ましい。可能なそのような態様の有機発光素子に於いて、少なくとも一つの電極は透明でありかつITOからなる。
【0087】
ここに記載される厚みの範囲に本発明が限定されるものでは全くないが、ITO陽極層の厚みは、約1000Å(1Å=10−8cm)〜約4000Å以上とすることができる。正孔輸送層の厚みは、約50Å〜約1000Å以上とすることができる。発光材料を含む層の厚みは、約50Å〜約200Åとすることができる。電子輸送層の厚みは、約50Å〜約1000Åとすることができる。各金属層の厚みは、約50Å〜約100Å以上とすることができ、あるいは、陰極層が透明でなくともよい場合、それより実質的に厚くすることができる。
【0088】
種々の有機物質及び無機物質から形成される種々の形の基板を、本発明の有機発光素子に用いることができる。少なくとも一つの基板は、透明又は不透明、硬質又は可撓性とすることができ、ガラス、石英、プラスチック、金属、又は半導体から形成することができる。また、少なくとも一つの基板は、平坦な表面、凸状の表面、凹状の表面、又は種々の形の表面を有することができる。少なくとも一つの基板は、その表面の少なくとも一部上に於いて、異方性を有する。該異方性は、基板そのものの材料又は基板表面に付与された材料のいずれかから基板の表面に形成されたレリーフ(浮き出し)もしくはテクスチャー(組織)又は化学結合のいずれかによって、生じうる。種々の金属を基板として用いることができる。少なくとも一つの基板を、アルミニウム、コバルト、銅、モリブデン、ニッケル、白金、タンタル、又は他の金属及びそれらの合金から形成することができる。また、少なくとも一つの基板を、ポリマー物質、ガラス、金属、セラミックス、金属セラミックス、又は他の類似する材料及びそれらの異なる組合せによって形成することができる。
【0089】
有機発光素子のコントラスト比を増加させるため、少なくとも一つの有機エレクトロルミネセンスセルは、吸収性が高くかつ反射性が低い層を更に含むことができ、該層は、陰極と有機電子輸送層との間に配置される。少なくとも一つの吸収性が高くかつ反射性が低い層は、4.0eV未満の仕事関数を有し、かつ、バルクの状態でほぼ黒色である導電性材料から形成することができ、その様な導電性材料としては、例えば六ホウ化カルシウム(CaB)及び/又は窒化ランタン(LaN)及び/又は酸化亜鉛(ZnO)が挙げられる。そのような吸収性が高くかつ反射性が低い層を用いる場合、外部光源からの光は、得られる有機発光素子内に吸収され、それが、コントラスト比の増加をもたらす。
【0090】
有機発光素子を形成するため、薄い有機正孔輸送層が用いられる。形成時に、そのような薄い層に多孔性の部位が形成されうる。この場合、電流導通路が薄い正孔輸送層に形成され、得られる有機発光素子の多層構造に不均一な電流分布が生じることになる。この不均一な電流によって、多層構造の局所的な留め部及び/又は局所的な過熱が生じうる。留意すべきことは、これらの作用が、素子に不具合のない動作時間を減らすことである。従って、一態様に於いて、有機発光素子の少なくとも一つの有機エレクトロルミネセンスセルは、無機抵抗層を更に含み、該無機抵抗層は、陽極と有機正孔輸送層との間に配置される。種々の無機材料を無機抵抗層の形成に用いることができる。他の態様に於いて、本発明の素子は、少なくとも一つの無機抵抗層を含み、該無機抵抗層は、アモルファスシリコン、又はアモルファスのインジウムスズ酸化物、又はアモルファスのインジウムジルコニウム酸化物、又は他の種類の薄膜抵抗層からなり、そのシート抵抗(面積抵抗)は、10オーム/cm〜10オーム/cmである。
【0091】
本発明の有機発光素子の有効性の観点から、発光性電子−正孔再結合中心の濃度が高い材料を発光層の形成に用いることが好ましい。従って、一態様に於いて、本発明の素子は、光起電素子に広く利用されている発光材料を用いることができる。かくして、そのような可能な態様の本発明の素子に於いて、少なくとも一つの有機エレクトロルミネセンスセルに於ける少なくとも一つの発光層は、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、PPV共重合体類、ポリアニリン類、ポリ−3−アルキルチオフェン類、ポリ−3−オクチルチオフェン類、及びポリパラフェニレン類からなる群より選ばれる有機発光ホスト高分子材料から形成される。
【0092】
本発明の他の態様に於いて、有機発光素子の有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの発光層は、クマリン、ジシアノメチレンピラン類及びチオピラン類、ポリメチン、オキサベンズアントラセン、キサンテン、ピリリウム及びチアピリリウム、カルボスチリル、ならびにペリレン蛍光色素類からなる群より選ばれる蛍光色素を含む有機物質から形成される。
【0093】
本発明の有機発光素子の有効性の観点から、多層構造内にポテンシャル障壁がないことが重要である。ポテンシャル障壁は、多層構造への活性な電荷キャリアの注入を妨げうるからである。特に、電子注入の増加が可能な本発明の素子の態様に於いて、少なくとも一つの有機エレクトロルミネセンスセルは二重層構造を更に含み、該二重層構造は、有機材料の副層及び金属の副層から形成され、この二重層は、発光層と電子輸送層との間に配置される。そして、少なくとも一つの有機材料の副層は、有機発光層に接して形成することができ、アルカリフッ化物、例えばフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウムで形成することができる。少なくとも一つの金属の副層は、電子輸送層に接して形成することができ、アルミニウムで形成することができる。正孔の注入を増加させるため可能な本発明の素子の態様に於いて、少なくとも一つの有機エレクトロルミネセンスセルは、正孔注入促進層を更に含み、この層は、正孔輸送層と陽極との間に配置される。そして、少なくとも一つの正孔注入促進層は、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(1,2,5−チアジアゾロ)−p−キノビス(1,3−ジチオール)、又は他の適当な硬質有機材料のいずれかから形成することができる。
【0094】
図2は、一つの有機発光素子を模式的に示しており、これは、基板1、その上に形成された第一電極(陽極)2、発光層3、及び第二電極(陰極)4を備える。発光層3は、棒状の超分子によって形成され、それは、共役π系を有する少なくとも一種の多環式有機化合物からなり、その化合物からは、公知の方法の一つによって、該層の結晶構造を維持しながらイオノゲン基の一部が少なくとも除去されている。該陽極は、電子の仕事関数が高い材料であって、有効な正孔の注入に使用されるITOから形成される。そのような電極は透明である。基板はガラスからなり、やはり透明である。該陰極は、電子の仕事関数が小さい材料から形成することができ、そのようなOLEDに於いて、電子の効果的な注入に使用される。例えば、陰極は、アルミニウム、銀若しくは金から形成することができ、又はCa/Al又はMg/Ag又はLi/Al等の合金から形成することができ、又は他の適宜な金属及びそれらの合金から形成することができる。該有機発光素子には、一定の変位電圧5が印加される。該OLEDは、透明な陽極及び透明な基板を介して光を放射する。層3は、発光すると同時に電子を輸送する層であることができる。異なる態様のOLEDも可能であり、そこでは、層3は、発光すると同時に正孔を輸送している。他の態様に於いて、層3は、発光層と、電子輸送層と、正孔輸送層との3者を同時に兼ねている。
【0095】
図3は、一つの有機発光素子を模式的に示しており、該素子は、陰極4と発光層との間に配置された電子輸送層7、及び陽極2と発光層3との間に配置された正孔輸送層8を更に含む。そのような素子に於いて少なくとも一つの層は、棒状の超分子によって形成することができ、それは、共役π系を有する少なくとも一種の多環式有機化合物からなり、その化合物からは、公知の方法の一つによって、該層の結晶構造を維持する条件下でイオノゲン基の一部が少なくとも除去されている。ある具体例に於いて、該多環式有機化合物はディスク状である。さらなる態様に於いて、少なくとも一つの層は、少なくとも一つの有機色素を用いて形成されており、該有機色素は、その構造式中に、リオトロピック液晶相を形成するための極性溶媒への溶解性を付与する少なくとも一つのイオノゲン(親水性)基を有する。また、該素子の所定のデザインに於いて、種々の色素、3,3’−ジクロロベンジジン又は2,7−ジアミノフルオレノン、又は2,6−ジアミノアントラキノン、又は2,7−ジアミノアントラキノン、又は(p−アミノフェニル)フェニルアミン、又はトリス(p−アミノフェニル)アミン、又は2,7−ジアミノジベンゾチオフェンスルホン、又は2,7−ジアミノジベンゾチオフェン、又は2−(p−アミノフェニル)−6−アミノベンゾキサゾール、又はビス(p−アミノフェニル)アミン、又はN−メチルビス(p−アミノフェニル)アミン、又は2,5−ビス(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、又は1,6−ジアミノピレン、又は1,5−ジアミノナフタレン、又は他の類似有機化合物、及びそれらの混合物を用いて形成された層を用いることもできる。図3に示すようなOLEDに於いて、正孔輸送層は、例えば、トリフェニルアミン四量体を混合物の主成分として用い、そして、5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン又は9,10−ジフェニルアントラセンを添加物として0.1〜10%の量で用いて、形成することができる。更に、そのようなOLEDに於いて、電子輸送層は、トリス−(8−キノリナト−N1,08)−アルミニウム又は銅フタロシアニン(CuPc)又は酸化亜鉛(ZnO1−x)を用いて形成することができる。
【0096】
図4は、一つの有機発光素子を模式的に示しており、該素子は、陰極4と電子輸送層7との間に配置される高吸収性で低反射性の層(吸収性が高くかつ反射性が低い層)9を更に含む。少なくとも一つの高吸収性で低反射性の層は、4.0eV未満の仕事関数を有しかつバルクの形態でほぼ黒色である導電性材料、例えば、六ホウ化カルシウム(CaB)及び/又は窒化ランタン(LaN)及び/又は酸化亜鉛(ZnO)から製造することができる。
【0097】
図5は、一つの有機発光素子を模式的に示しており、該素子は、陽極2と有機正孔輸送層8との間に配置される無機抵抗層10を更に含む。有機発光素子のそのような可能な態様に於いて、少なくとも一つの無機抵抗層は、アモルファスシリコン、又はアモルファスのインジウムスズ酸化物、又はアモルファスのインジウムジルコニウム酸化物、又は他の種類の薄膜抵抗層のいずれかからなり、そのシート抵抗(面積抵抗)は、10オーム/cm〜10オーム/cmである。
【0098】
図6は、一つの有機発光素子を模式的に示しており、該素子は、二重層界面構造11を更に含む。該二重層界面構造11は、有機材料の副層112及び金属の副層111から形成され、この二重層は、発光層3と電子輸送層7との間に配置される。そのような可能な態様の有機発光素子に於いて、有機材料の少なくとも一つの副層112は、有機発光層3に接して形成され、かつ、例えばフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウムなどのアルカリフッ化物から形成される。また、少なくとも一つの金属の副層111は、電子輸送層に接して形成することができ、アルミニウムから形成することができる。
【0099】
図7は、一つの有機発光素子を模式的に示しており、該素子は、正孔注入促進層12を更に含み、この層は、正孔輸送層8と陽極2との間に配置される。そして、該正孔注入促進層は、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(1,2,5−チアジアゾロ)−p−キノビス(1,3−ジチオール)、又は他の適当な硬質有機材料のいずれかから生成させることができる。
【実施例】
【0100】
本実施例では、有機化合物から形成されるリオトロピック液晶に基づく本発明の有機発光素子の作製を例示する。該有機化合物の分子又はフラグメントは、平面的な構造を有しかつ少なくとも一種のイオノゲン(親水性)基を含んでいる。該イオノゲン(親水性)基は、超分子複合体を形成するための極性溶媒に対する溶解性を該有機化合物に付与している。基板として、0.5mmの厚さのガラス板を用いた。該基板を、スピンコーティング法によって形成したインジウムスズ酸化物(ITO)の薄層で被覆した。ITO層の厚さは通常500〜800Åであった。この検討例に於いて、ITO層は陽極であった。陽極の形成には、他の材料を使用することも可能であった。重要なことは、この材料が、高い電子の仕事関数を有するべきだということである。ITO層の更に重要な性質は、その透明性である。従って、素子内で生成した光は、透明なITO層及び透明な基板を通って進む。異方性結晶層はITO層の上に形成した。有機色素であるスルホ−インダントロンに基づくリオトロピック液晶から異方性結晶層を生成させる例を検討する。例えば、この層を発光層として使用した。発光層から生成した光は、使用したドーパントによって異なった。ドーパントとして用いた蛍光色素は、クマリン、ジシアノメチレンピラン類及びチオピラン類、ポリメチン、オキサベンズアントラセン、キサンテン、ピリリウム及びチアピリリウム、カルボスチリル、ならびにペリレン蛍光色素類からなる群より選ばれたものであった。
【0101】
スルホン酸基を有するインダントロンの9.5%水溶液を用いて室温で六方晶相を形成した。この色素は、溶液に於いてその分子の超分子複合体を形成し、それらの複合体は、膜の結晶構造の基礎となった。清浄化の後、ITO層上に原料ペーストを塗布した。このペーストを塗布する方法には、ペーストを落とす方法と、塗りつける方法があった。この方法の両方は、所定の方法に対し、ほぼ同様の結果をもたらした。
【0102】
次の配向付与のため、リオトロピック液晶の粘度を低下させるよう液晶に更に作用を付与した。ここで、溶液は、ネマチック相、又はネマチック相と六方晶相との混合相を作成した。この系の粘度は、1780MPa/ceκから250MPa/ceκまで低下した。系の粘度を低下させるための予め設定した流動化条件下に於いて、前記性質の異方性結晶層を受け入れた。特定の外からの流動化作用ため、基板ホルダー側から塗布層を加熱することが、所定の具体例に於いて好ましかった。基板ホルダーを加熱して、インダントロンのペーストを塗布した層の温度を56°Cにした。しかし、塗布層の加熱、電磁放射、又はその他の手段によってもよい結果が同様に得られた。流動化作用で特異な方法は、加熱したマイヤーロッドを用いるものであった。これは、層の粘度を局所的に下げる操作と同時に配向付与を実現することを目的とする。
【0103】
次の操作は、リオトロピック液晶の超分子を配向させるプロセスであった。外部からの特定の配向作用のため、種々の配向手段を用いた。所定の例に於いて、円筒状の配向用マイヤーロッドNo.4でツイストしたワイヤーを有するものを用い、ウェット層の厚みを9.5mmに設定した。配向作用を発現させるため、マイヤーロッドの移動速度を13mm/秒とした。マイヤーロッド作用時に生じる移動応力によって系の粘度は更に低下した。
【0104】
配向の後、基板ホルダーの加熱を停止し、加熱したマイヤーロッドを取り外した。
【0105】
異方性結晶層の形成の次の操作は、乾燥であった。好ましくは、溶媒をゆっくり除去し、層の初期配向構造を乱さないようにした。この例では、乾燥を、室温で60%の湿度に於いて行った。
【0106】
その結果、得られた異方性結晶層は、0.3〜0.4ミクロンの厚みを有し、高度の異方性を有した。その二色比は、入射T=40%に於いてKd=28であった(一方、従来法のKdは20を超えなかった)。これらパラメーターの再現性は、層の表面及びグループ間の両方に於いて良好であった。光学的手法及びX線回折法によって、得られた異方性結晶層の結晶構造が申し分のないものであることがわかった。異方性結晶層のX線解析により、行った技術的操作の結果、形成した層は、光軸の一つの方向に3.4±0.3Åの分子間間隔を有することがわかった。
【0107】
形成した異方性結晶層に外部からの作用を付与した。その目的は、該層からイオノゲン基を除くことであり、外部からの作用が終了した後の層の結晶構造は保持された。この外部からの作用の時間、性質及び強度は、層の結晶構造を保持しながら、すべてのイオノゲン基の一部を異方性結晶層から除くように選択した。最初の有機物質に於いて、スルホ−基及び他の任意のイオンゲン(親水性)基(例えば、COO、PO、カチオン基、カルボキシ基等)の両方を、該最初の有機物質に両親媒性を付与するものとして用いた。異方性結晶層への外部からの作用は、異方性結晶層を熱分解温度まで局所的に加熱することである。この温度は、それぞれの有機材料について実験を行うことにより求めた。検討例に於いて、熱分解温度は約350°Cであった。異方性結晶層の加熱は、基板部に配置された熱源により行った。異方性結晶層への熱的外部作用は、10分間、窒素の雰囲気中で行った。その局所的な外部作用の領域は、直径1cmの円であった。別のタイプの外部からの作用は、異方性結晶層の少なくとも一部を高周波及び/又はレーザー放射によって処理することであり、その周波数は、該有機化合物の少なくとも一つの吸収帯と共鳴するものであった。外部からの作用の結果、異方性結晶層の処理された部分は極性溶媒に不溶性となった。次いで、処理した異方性層をマスク層で被覆した。該マスク層は、イオン基を除去した層の領域の上に開口部を有した。マスクの材料は極性溶媒に溶解するものであった。マスクの開口部を介して金属ダストを到達させ、上部接触陰極とした。該金属としてアルミニウムを用いた。この層の厚みは約50Å〜100Åであった。素子で発生した光に対し95%以上の反射係数を有する反射体として被覆金属が働くよう、本実施例に於いて、この層の厚みを選択した。更に、作製した多層構造を、極性溶媒、例えば水で洗浄した。この洗浄に於いてマスク層を除去した。マスク層上に形成されていた金属層も除去された。最後に、外部からの作用を受けておらず、イオノゲン基が除去されなかった異方性結晶層を除去した。前記技術操作の結果、金属からなる上部接触陰極及びITOからなる下部接触陽極を有する有機発光素子が形成された。得られた素子に正の変位電圧を印加した結果、陰極から電子が異方性結晶層に注入され、陽極から正孔が注入された。印加電圧の作用の下、注入された活性な電荷キャリアは互いに向かって移動し、異方性結晶層で再結合し、光量子の放出が起こった。
【0108】
本発明の一態様に於いて、基板及び該基板に最も近い電極は透明である。本発明の他の態様に於いて、基板は実質的に不透明であり、該基板から最も離れた電極は透明である。
【0109】
上述のように、バックライト型極性有機発光素子を説明してきた。本発明の特定の態様について以上に示してきたものは、例示と説明を目的とするものであり、本発明を完全に網羅するものでもなく、また、本発明を開示したそのものずばりの形態に限定しようとするものでもない。上述した開示に照らして多くの変更・修飾、具体例及び変形例が可能であることは明らかである。本発明の技術的範囲は、添付した請求の範囲及びその均等の範囲によって規定すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】多関数熱分析(損失重量)のデータを示す図である。
【図2】本発明の一態様に従う発光層を備える有機発光素子を示す模式図である。
【図3】本発明の一態様に従って電子輸送層及び正孔輸送層を更に備える有機発光素子を示す模式図である。
【図4】本発明の一態様に従って高吸収性で低反射性の層を更に備える有機発光素子を示す模式図である。
【図5】本発明の一態様に従って無機抵抗層を更に備える有機発光素子を示す模式図である。
【図6】本発明の一態様に従って二重層界面構造を更に備える有機発光素子を示す模式図である。
【図7】本発明の一態様に従って正孔注入促進層を更に備える有機発光素子を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体的に秩序性のある結晶構造を有する異方性導電層を形成する方法であって、
異方性結晶層をカスケード結晶化プロセスによって形成すること、及び前記異方性結晶層に外からの作用を付与し、前記異方性結晶層からイオノゲン基を除去することを含み、
前記異方性結晶層は、前記層の偏光軸に沿って3.4±0.3Aの分子間間隔を有する全体的に秩序性のある結晶構造を特徴とし、かつ棒状の超分子によって形成されており、
前記棒状の超分子は、共役π系およびイオノゲン基を有する少なくとも一種の多環式有機化合物からなり、
前記外部からの作用の時間、性質および強さは、前記異方性結晶層からのイオノゲン基の部分的除去を確実にしながら、外部からの作用の終了後に結晶構造が維持されるように選択されることを特徴とする。
【請求項2】
前記外部からの作用は、前記異方性結晶層を熱分解温度まで局所的又は全体的に加熱することにより、付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱は、マイクロ波照射、同心円状の電気ヒーター、抵抗ヒーター、それらの代わりとなる電界、それらの代わりとなる磁界、ならびに加熱した液体及び/又は気体の流れからなる群より選ばれる一つ又はいくつかの手段によって、行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記外部からの作用は、前記有機化合物の少なくとも一つの吸収帯と共鳴する周波数を有するマイクロ波及び/又はレーザー光の照射により前記異方性結晶層の少なくとも一部を処理することによって付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イオノゲン基は、スルホン酸基、COO、PO、カチオン基、及びカルボキシ基からなる群より選ばれるものであって、前記有機化合物に両親媒性を付与するために用いられるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの異方性結晶層が基板上に形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記基板は、平坦な表面、凸状の表面、又は凹状の表面を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記外部からの作用は、前記基板を加熱することによって付与される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
さらなる導電性材料の一層を少なくとも前記基板上に最初に形成し、更に、前記異方性結晶層を前記さらなる導電層上に形成する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも一つの前記異方性導電層を前記基板上に最初に形成し、更に、前記異方性結晶層を前記異方性導電層の頂部に形成する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記外部からの作用はバッファガスの雰囲気中で付与される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記バッファガスはHe、Ar、Xe、及び他の任意の不活性ガス、N、CO、ならびに他の任意の非反応性ガスからなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有機化合物は、前記リオトロピック液晶有機化合物の分子の平面的な分子構造又はそのフラグメントの平面的な構造を破壊することなく前記異方性導電層の導電性のタイプ及びサイズを変える、少なくとも一種のドーパント物質及び/又は化合物を更に含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機化合物は、前記リオトロピック液晶有機化合物の分子の平面的な分子構造又はそのフラグメントの平面的な構造を破壊することなく発光性電子−正孔再結合中心を形成して赤外、可視及び紫外のスペクトル領域を含むスペクトル領域の一つ又はいくつかに於いて光量子を放出させる、少なくとも一種のドーパント物質及び/又は化合物を更に含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
リオトロピック液晶を調製するための前記有機化合物は、一般構造式{K}(M)(式中、Kは色素であり、該色素の構造は、一つの又は二つ以上の同じ又は異なるイオノゲン基であって、リオトロピック液晶相の形成のための極性溶媒への溶解性を確かなものにするイオノゲン基を含み、Mは対イオンであり、かつnは前記色素分子中の対イオンの数であり、前記対イオンが複数個の分子によって共有されている場合、前記数は分数となり得る)を有する少なくとも一種の芳香族化合物からなる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
基板、及び
前記基板上に形成された有機エレクトロルミネセンスセル
を備える有機発光素子であって、
前記有機エレクトロルミネセンスセルは、
陽極として作用する第一電極、
陰極として作用する第二電極、及び
前記陽極と前記陰極との間に配置された少なくとも一つの発光層を備え、
ここで、前記少なくとも一つの発光層は、前記層の偏光軸に沿って3.4±0.3Aの分子間間隔を有する全体的に秩序性のある結晶構造を有する異方性導電層であり、かつ、共役π系を有する少なくとも一種の多環式有機化合物からなる棒状の超分子によって形成されている、
有機発光素子。
【請求項17】
前記有機エレクトロルミネセンスセルに於ける少なくとも一つの層が、電子輸送と発光とを同時に行うものである、請求項16に記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記有機エレクトロルミネセンスセルに於ける少なくとも一つの層が、正孔輸送と発光とを同時に行うものである、請求項16又は17に記載の有機発光素子。
【請求項19】
前記有機エレクトロルミネセンスセルに於ける少なくとも一つの層が、発光と電子輸送及び正孔輸送との両方を同時に行うものである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項20】
前記有機エレクトロルミネセンスセルが、前記陰極と前記発光層との間に配置された電子輸送層及び/又は前記陽極と前記発光層との間に配置された少なくとも一つの正孔輸送層を更に備える、請求項16〜19のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項21】
前記有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの発光層が、インダントロン(Vat Blue 4)、又は1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸(PTCDA)、ビス−(1,2,5−チアジアゾロ)−p−キノビス−(1,3−ジチオール)(BTQBT)、アルミニウムジベンゾイミダゾール(Vat Red 14)、3,4,9,10−ピリレンテトラカルボン酸ジベンゾイミダゾール、又はキナクリドン(Pigment Violet 19)、及び3,4,9,10−ピリレンテトラカルボン酸二無水物トリス(8−ヒドロキシキノリン)(Alq3)からなる群より選ばれる有機化合物の一つを用いて形成されたものである、請求項16〜20のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項22】
前記有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの発光層が、無金属フタロシアニン類(HPc)、一価又は二価の金属を有するフタロシアニン類、金属ハロゲン化物又は金属水酸化物を有するフタロシアニン類、四価の金属を有するフタロシアニン類、及び金属の中心イオンがスルホン酸(又はアミド)、カルボン酸、アルキル、アリール、ハロゲン化物、又はニトロで置換されたフタロシアニン類からなる群より選ばれる少なくとも一つのフタロシアニンを用いて形成されたものである、請求項16〜20のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項23】
前記有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの発光層が、種々の色素類、3,3’−ジクロロベンジジン、2,7−ジアミノフルオレノン、2,6−ジアミノアントラキノン、2,7−ジアミノアントラキノン、(p−アミノフェニル)フェニルアミン、トリス(p−アミノフェニル)アミン、2,7−ジアミノジベンゾチオフェンスルホン、2,7−ジアミノジベンゾチオフェン、2−(p−アミノフェニル)−6−アミノベンゾキサゾール、ビス(p−アミノフェニル)アミン、N−メチルビス(p−アミノフェニル)アミン、2,5−ビス(p−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,6−ジアミノピレン、及び1,5−ジアミノナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも一つの有機化合物又はそれらの混合物を用いて形成されたものである、請求項16〜20のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項24】
前記有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの正孔輸送層が、トリフェニルアミン四量体と5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン又は9,10−ジフェニルアントラセンの0.1〜10%溶液との混合物を用いて形成されたものである、請求項18〜20のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項25】
前記有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの正孔輸送層が、4,4’−ビス−[(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]−ビフェニル又はN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンを用いて形成されたものである、請求項18〜20のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項26】
前記有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの正孔輸送層が、芳香族第三級アミン類からなる群より選ばれる材料から形成されたものである、請求項18〜20のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項27】
前記陰極が、電子の仕事関数が小さい材料からなるものである、請求項16〜26のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項28】
前記陰極が、不透明でありかつアルミニウム、銀、金、ならびにCa/Al、Mg/Ag及びLi/Alの合金を含むリストのいずれかの材料からなるものである、請求項16〜27のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項29】
前記陽極が、電子の仕事関数が大きい材料からなるものである、請求項16〜28のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項30】
前記陽極が透明でありかつITOからなるものである、請求項16〜29のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項31】
前記基板が、透明又は不透明、硬質又は可撓性であり、ガラス、石英、プラスチック、金属、及び半導体からなる群より選ばれるいずれかの材料からなるものである、請求項16〜30のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項32】
前記基板は、平坦な表面、凸状の表面又は凹状の表面を有するものである、請求項16〜31のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項33】
前記基板は、その表面の少なくとも一部上に於いて、異方性を有するものであり、
前記異方性は、化学結合によって、又は前記基板そのものの材料若しくは前記基板の表面に付与された材料のいずれかから前記基板の表面に形成されたレリーフもしくはテクスチャーによって、生じたものである、請求項16〜32のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項34】
前記基板は、アルミニウム、コバルト、銅、モリブデン、ニッケル、白金、タンタル、及びそれらの合金からなる群より選ばれるいずれかの材料からなるものである、請求項16〜33のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項35】
前記基板は、ポリマー材料、ガラス、金属、セラミックス、金属セラミックス、及びそれらの任意の組合せからなる群より選ばれるいずれかの材料からなるものである、請求項16〜34のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項36】
前記有機エレクトロルミネセンスセルが、前記陰極と前記電子輸送層との間に配置された吸収性が高くかつ反射性が低い層を更に含む、請求項16〜35のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項37】
前記吸収性が高くかつ反射性が低い層は、4.0eV未満の仕事関数を有し、バルクの形態でほぼ黒色である導電性材料からなり、
かつ、六ホウ化カルシウム(CaB)、窒化ランタン(LaN)、及び酸化亜鉛(ZnO)からなる群より選ばれるいずれか一つ又はいくつかの材料からなるものである、請求項36に記載の有機発光素子。
【請求項38】
前記有機エレクトロルミネセンスセルが、前記陽極と前記正孔輸送層との間に配置された無機抵抗層を更に含む、請求項16〜37のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項39】
前記無機抵抗層は、アモルファスシリコン、アモルファスのインジウムスズ酸化物、アモルファスのインジウムジルコニウム酸化物、及び10オーム/cm〜10オーム/cmのシート抵抗を有する薄膜抵抗層からなる群より選ばれる材料から形成されたものである、請求項38に記載の有機発光素子。
【請求項40】
前記有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの発光層は、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、PPV共重合体類、ポリアニリン類、ポリ−3−アルキルチオフェン類、ポリ−3−オクチルチオフェン類、及びポリパラフェニレン類からなる群より選ばれる有機発光ホスト高分子材料から形成されたものである、請求項16〜39のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項41】
前記有機エレクトロルミネセンスセルの少なくとも一つの発光層は、クマリン、ジシアノメチレンピラン類、チオピラン類、ポリメチン、オキサベンズアントラセン、キサンテン、ピリリウム及びチアピリリウム、カルボスチリル、ならびにペリレン蛍光色素類からなる群より選ばれる蛍光色素を含む有機物質から形成されたものである、請求項16〜40のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項42】
前記有機エレクトロルミネセンスセルは二重層構造を更に含み、前記二重層構造は、有機材料の副層及び金属の副層から形成されており、かつ前記二重層構造は、前記発光層と前記電子輸送層との間に配置されている、請求項16〜41のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項43】
前記有機材料の副層は、前記有機発光層に接して形成されており、かつアルカリフッ化物、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、及びフッ化セシウムからなる群より選ばれるいずれかの材料からなるものである、請求項42に記載の有機発光素子。
【請求項44】
前記金属の副層はアルミニウムからなり、かつ前記電子輸送層に接して形成されている、請求項42又は43に記載の有機発光素子。
【請求項45】
前記有機エレクトロルミネセンスセルは、前記正孔輸送層と前記陽極との間に配置された正孔注入促進層を更に含む、請求項16〜44のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項46】
前記正孔注入促進層は、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物又はビス(1,2,5−チアジアゾロ)−p−キノビス(1,3−ジチオール)から形成されている、請求項45に記載の有機発光素子。
【請求項47】
前記基板及び前記基板に最も近い電極が透明である、請求項16〜46のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項48】
前記基板が実質的に不透明であり、かつ前記基板から最も離れた電極が透明である、請求項16〜47のいずれか1項に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−516814(P2006−516814A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500803(P2006−500803)
【出願日】平成16年1月6日(2004.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/000229
【国際公開番号】WO2004/064112
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】