説明

バックレール付き太陽電池モジュールおよびその設置方法

【課題】簡易な構成で、太陽電池モジュールの取付作業における作業性を向上させ、太陽電池モジュールの設置コストを低減することが可能なバックレール付き太陽電池モジュールおよびその設置方法を提供する。
【解決手段】第一長穴部31bおよび第二長穴部32bは、それぞれ第一開口部31a、第二開口部32aからバックレール20の長手方向Lに沿って互いに離間する方向に延びている。即ち、第一長穴部31bは、第一開口部31aからバックレール20の一方の端部20aに向かって延び、また、第二長穴部32bは、第二開口部32aからバックレール20の他方の端部20bに向かって延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置面に固定するためのバックレールを備えたバックレール付き太陽電池モジュールおよびその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や震災時の電力確保の目的から、環境負荷の少ない太陽光発電がますます注目されている。太陽光発電の普及拡大のために、太陽電池モジュールの低廉化とともに、太陽電池モジュールの設置工事を容易にすることが求められている。
【0003】
太陽電池モジュールを、例えば一般住宅などの屋根に設置する場合、設置面である屋根に予め架台を設けておくとともに、この架台に対して太陽電池モジュールの裏面(受光面と反対側)に形成したバックレールと称される取付金具を介して太陽電池モジュールをボルトなどで固定する取付構造が知られている。
【0004】
また、例えば、特許文献1には、隣接する太陽電池モジュールの相互に対向する両角部に配置され、隣接する太陽電池モジュールのフレームを連結して一体とする一対の連結部材と、建造物に等間隔に配置され、一体とされた太陽電池モジュールのフレームを支持して太陽電池モジュールを建造物に固定する複数の据付部材とを備えた太陽電池モジュールの取り付け装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−243062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽光発電は、通常、効率よく太陽光を受光する観点や汚れ防止の観点から、傾斜して設置される場合が多い。特に一戸建て住宅においては傾斜した屋根に設置されることが多い。しかしながら、傾斜した屋根での太陽電池モジュールの設置作業は、作業性が悪く、取付工程が複雑で時間がかかるという課題があった。
【0007】
例えば、屋根に設けた取付架台に対してバックレールを介して太陽電池モジュールを取り付ける場合、住宅の傾斜した屋根の上という作業環境が良くない場所において、ボルトなどの取付ネジを架台のネジ穴に位置合わせする作業自体が困難であり、多くの手間と時間を要する。これによって、太陽電池モジュールの取り付けコストが上昇し、一般住宅への太陽光発電の普及の妨げになっていた。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成で、太陽電池モジュールの取付作業における作業性を向上させ、太陽電池モジュールの設置コストを低減することが可能なバックレール付き太陽電池モジュールおよびその設置方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態では次のようなバックレール付き太陽電池モジュールおよびその設置方法を提供する。
即ち、本発明の一実施形態におけるバックレール付き太陽電池モジュールは、太陽電池モジュールを傾斜した設置面に対してネジ止めするためのバックレールを備えたバックレール付き太陽電池モジュールであって、
前記バックレールは前記太陽電池モジュールに接合されるとともに、それぞれ取付ネジを係合可能な第一係合穴および第二係合穴を有し、前記第一係合穴は、取付ネジの頭部及び軸部が貫通可能な第一開口部と、取付ネジの軸部のみが貫通可能であり、前記第一開口部に繋がる第一長穴部とからなり、前記第二係合穴は、取付ネジの頭部及び軸部が貫通可能な第二開口部と、取付ネジの軸部のみが貫通可能であり、前記第二開口部に繋がる第二長穴部とからなり、前記第一長穴部および前記第二長穴部は、それぞれ前記第一開口部、前記第二開口部から前記バックレールの長手方向に沿って互いに離間する方向に延びるか、または互いに接近する方向に延びることを特徴とする。
【0010】
前記バックレールは、第一係合穴および第二係合穴が形成された係合部と、太陽電池モジュールに接合される接合部とを有し、前記係合部と前記接合部との間には、取付ネジの頭部の高さよりも大きい段差が形成されていることを特徴とする。
【0011】
前記バックレールは、1つの太陽電池モジュールの裏面に、前記設置面の傾斜方向と平行に2本形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一実施形態における太陽電池モジュールの設置方法は、太陽電池モジュールを、傾斜した設置面に対してネジ止めするためのバックレールを備え、前記バックレールは前記太陽電池モジュールに接合されるとともに、それぞれ取付ネジを係合可能な第一係合穴および第二係合穴を有し、前記第一係合穴は、取付ネジの頭部及び軸部が貫通可能な第一開口部と、取付ネジの軸部のみが貫通可能であり、前記第一開口部に繋がる第一長穴部とからなり、前記第二係合穴は、取付ネジの頭部及び軸部が貫通可能な第二開口部と、取付ネジの軸部のみが貫通可能であり、前記第二開口部に繋がる第二長穴部とからなり、前記第一長穴部および前記第二長穴部は、それぞれ前記第一開口部、前記第二開口部から前記バックレールの長手方向に沿って互いに離間する方向に延びるバックレール付き太陽電池モジュールの設置方法であって、
傾斜した設置面の上側のネジ穴に第一の取付ネジを仮止めしておく工程と、前記第一の取付ネジの頭部を前記第一開口部に貫通させてから、前記太陽電池モジュールを傾斜した設置面の下側に向けてスライドさせ、前記第一の取付ネジの軸部を前記第一長穴部に貫通させる工程と、第二の取付ネジの軸部を前記第二長穴部に貫通させて、該第二の取付ネジを前記第二係合穴に引掛けておく工程と、前記第二の取付ネジを傾斜した設置面の下側のネジ穴に係合させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態のバックレール付き太陽電池モジュールおよびその設置方法によれば、第一長穴部および第二長穴部は、第一開口部、第二開口部からバックレールの長手方向に沿って互いに離間する方向に延びている。即ち、第一長穴部は、第一開口部からバックレールの一方の端部に向かって延び、また、第二長穴部は、第二開口部からバックレールの他方の端部に向かって延びている。これによって、取付時に一方の架台のネジ穴に予め取付ネジを仮止めしておき、この取付ネジにバックレールの第一係合穴を引掛けてスライドさせるだけで、バックレールの一方の側の取付ができる。また、バックレールの第二係合穴に取付ネジを引掛けるだけで、この取付ネジと他方の架台のネジ穴との位置合わせが完了する。
【0014】
このため、従来のようにバックレールのネジ穴と架台のネジ穴とが合致するように太陽電池モジュールを動かしつつ位置合わせするといった面倒で手間のかかる作業が不要となる。よって、バックレール付き太陽電池モジュールの設置面への取付を容易に、かつ短時間で完了させることができ、太陽電池モジュールの取付に係る作業性を大幅に向上させ、かつ設置コストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】太陽電池の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるバックレール付き太陽電池モジュールを示す断面図である。
【図3】バックレール付き太陽電池モジュールの住宅への取付例を示す斜視図である。
【図4】バックレールと架台との取付部分を示す要部拡大斜視図である。
【図5】バックレールと架台との取付部分を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるバックレール付き太陽電池モジュールの設置方法を段階的に示した断面図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるバックレール付き太陽電池モジュールの設置方法を段階的に示した断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態におけるバックレールを示す平面図である。
【図9】本発明の他の実施形態におけるバックレールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るバックレール付き太陽電池モジュールおよびその設置方法の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明に用いられる各図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法及び比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
本発明の技術範囲は、以下に述べる実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0017】
まず最初に、太陽電池の構造の一例を説明する。図1は、太陽電池の層構造を示す断面図である。
薄膜太陽電池(太陽電池)100は、表面を構成する基板Wと、基板W上に設けられた透明導電膜からなる上部電極101と、アモルファスシリコンで構成されたトップセル102と、トップセル102と後述するボトムセル104との間に設けられた透明導電膜からなる中間電極103と、マイクロクリスタルシリコンで構成されたボトムセル104と、透明導電膜からなるバッファ層105と、金属膜からなる裏面電極106とが積層されている。
【0018】
つまり、薄膜太陽電池100はタンデム型太陽電池となっている。このようなタンデム構造の薄膜太陽電池100では、短波長光をトップセル102で、長波長光をボトムセル104でそれぞれ吸収することで発電効率の向上を図ることができる。
【0019】
トップセル102のp層(102p)、i層(102i)、n層(102n)の3層構造が、例えばアモルファスシリコンで形成されている。また、ボトムセル104のp層(104p)、i層(104i)、n層(104n)の3層構造が、例えばマイクロクリスタルシリコンで構成されている。
【0020】
このように構成した薄膜太陽電池100は、太陽光に含まれる光子というエネルギー粒子がi層に当たると光起電力効果により、電子と正孔(hole)が発生し、電子はn層、正孔はp層に向かって移動する。この光起電力効果により発生した電子を上部電極101と裏面電極106により取り出して、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0021】
また、トップセル102とボトムセル104との間に中間電極103を設けることにより、トップセル102を通過してボトムセル104に到達する光の一部が中間電極103で反射して再びトップセル102側に入射するため、セルの感度特性が向上し、発電効率の向上に寄与する。
【0022】
また、ガラス基板W側から入射した太陽光は、各層を通過して裏面電極106で反射される。薄膜太陽電池100には光エネルギーの変換効率を向上させるために、上部電極101に入射した太陽光の光路を伸ばすプリズム効果と光の閉じ込め効果を目的としたテクスチャ構造をとることが好ましい。
【0023】
図2は、本実施形態におけるバックレール付き太陽電池モジュールを示す断面図である。の構成を示す
図2(a)に示すように、バックレール付き太陽電池モジュール10は、太陽電池100と、この太陽電池の裏面(太陽光の受光面の反対面)100Bに形成されたバックレール20とを備えている。バックレール20は、太陽電池100の裏面側100Bに、例えば設置される設置面の傾き方向に平行に2本形成されている。また、2本のバックレール20,20の間には、太陽電池100で得られた電力を取り出すための配線等が収容されるジャンクションボックス15が形成されている。
【0024】
図2(b)は、バックレールの長手方向に対して直角な断面を示す断面図である。バックレール20は、太陽電池100の裏面100Bに接合される2つの接合部21,21と、この2つの接合部21,21の間に形成され、接合部21,21に対して高さhの段差をもって広がる係合部22とを備えている。接合部21,21と係合部22とは、側壁部23,23によって接続されている。
このような断面形状をもつバックレール20は、例えばSUS、Al、Feなどの金属板を屈曲させて形成する。
【0025】
バックレール20の接合部21,21は、例えば、接着層25を介して太陽電池100の裏面100Bに接合される。接着層25は、例えば、耐候性の両面接着テープ、樹脂系接着剤などから構成されていればよい。これによって、バックレール20は、太陽電池100に対して強固に接合される。一方、バックレール20の係合部22は、取り付け面である屋根等の架台に係着される。
【0026】
このようなバックレール20の寸法例を図2(b)に示す。バックレール20の厚み(板厚)tは、例えば、1.2〜2.0mm程度である。接合部21,21の幅W1は、それぞれ例えば10〜20mm程度である。係合部22の幅W2は、例えば20〜30mm程度である。接合部21,21と係合部22との段差である高さh(即ち側壁部23,23の幅)は、それぞれ例えば25〜35mm程度である。
【0027】
図3は、バックレール付き太陽電池モジュールの取付例を示す説明図である。
バックレール付き太陽電池モジュール10は、例えば住宅(家屋)50の傾斜した屋根(設置面)51に複数並べて設置される。バックレール付き太陽電池モジュール10を設置する屋根は、その住宅の全ての屋根のうち、最も日射時間が長い屋根が選択されればよい。
【0028】
バックレール付き太陽電池モジュール10を設置する屋根(設置面)51には、予め取付架台(以下、架台と称する)53が設置される。架台53は、例えば、断面コ字状の細長い金属部材であればよく、長手方向が屋根51の稜線と平行になるように、複数本配列されていればよい。このような架台53には、所定の間隔ごとにネジ穴55が形成されている。
【0029】
バックレール付き太陽電池モジュール10は、屋根(設置面)51の傾斜方向Qに対して2本のバックレール20が平行に延びるように取り付けられる。これによって、後述するバックレール20の第一長穴部31bおよび第二長穴部32bは、屋根(設置面)51の傾斜方向Qに沿って延びるように配される。
【0030】
図4は、バックレール付き太陽電池モジュールと架台との締結部分を示す斜視図である。また、図5は、バックレール付き太陽電池モジュールと架台との締結部分を示す平面図である。
バックレール20の係合部22には、第一係合穴31、および第二係合穴32がバックレール20の長手方向Lに沿って所定の間隔で互いに離間して配置されている。バックレール20は、第一係合穴31、第二係合穴32に取付ネジ56を貫通させて架台53に固定される。取付ネジ56は、例えば、六角形のボルト57とこれに螺合される六角形のナット58とからなる六角ボルトナットであればよい。
【0031】
第一係合穴31は、係着に用いるボルト57の六角形の頭部57aが貫通可能な開口径を有する円形の第一開口部31aと、この第一開口部31aに繋がり、バックレール20の長手方向に沿って延びる第一長穴部31bとから構成される略鍵穴状の開口である。第一長穴部31bは、その開口径がボルト57のねじ山形成部分である軸部57bは貫通可能であり、頭部57aは貫通できないサイズに形成されている。特に、第一長穴部31bの開口径は、ボルト57の軸部57bが長手方向Lに沿って容易に摺動可能であり、かつボルト57の頭部57aとは接触面積が多くなるようなサイズであることが好ましい。
【0032】
同様に、第二係合穴32も、ボルト57の頭部57aが貫通可能な開口径を有する円形の第二開口部32aと、この第二開口部32aに繋がり、バックレール20の長手方向に沿って延びる第二長穴部32bとから構成される。第二長穴部32bも、その開口径がボルト57の軸部57bは貫通可能であり、頭部57aは貫通できないサイズに形成されている。また、図2(b)に示す接合部21,21と係合部22との段差をなす高さhは、ボルト57の頭部57aの高さBよりも十分に高くなるように設定される。
【0033】
そして、第一長穴部31bおよび第二長穴部32bは、それぞれ第一開口部31a、第二開口部32aからバックレール20の長手方向Lに沿って互いに離間する方向に延びている。即ち、第一長穴部31bは、第一開口部31aからバックレール20の一方の端部20aに向かって延び、また、第二長穴部32bは、第二開口部32aからバックレール20の他方の端部20bに向かって延びている。
【0034】
このような第一係合穴31や第二係合穴32の寸法例を図5の下部に例示する。なおこの寸法例は、取付ネジ56としてJIS等に記載された六角ボルトナットを適用する場合である。
第一開口部31a、第二開口部32aの直径r1は、例えば8〜12mm程度に設定される。第一長穴部31b、第二長穴部32bの直径(幅)r2は、例えば4〜6mm程度に設定される。また、第一開口部31a、第二開口部32aのそれぞれの中心点と、第一長穴部31b、第二長穴部32bの端部におけるそれぞれの中心点との距離W3は、例えば10〜14mm程度に設定される。
【0035】
図5に示すように、第一係合穴31、第二係合穴32は、互いに平行に延びる架台53a,53bにそれぞれ係着される。そして、第一係合穴31の第一長穴部31bの端部31bEにおいて、架台53aに形成されたネジ穴55aに開口が合致し、この位置でネジ止めされる。同様に、第二係合穴32の第二長穴部32bの端部32bEにおいて、架台53bに形成されたネジ穴55bに開口が合致し、この位置でネジ止めされる。
【0036】
即ち、互いに隣接して配された架台53aのネジ穴55a中心点と、架台53bのネジ穴55b中心点との間隔W4は、第一長穴部31bの端部31bEの中心点と、第二長穴部32bの端部32bEの中心点との間隔と合致する。こうした間隔W4は、例えば、1000〜1200mm程度に設定される。なお、1本のバックレール20の全長W5は、例えば1300〜1500mm程度に設定される。
【0037】
以上のような構成のバックレール付き太陽電池モジュールの作用、および設置方法について説明する。なお、以下の設置方法では、図2に示す2本の平行なバックレール20,20を備えたバックレール付き太陽電池モジュール10を、2本の平行な架台53a,53bに係着させる工程を説明する。この時、2本の架台53a,53bは傾斜した屋根(設置面)51に設置されているものとし、架台53aが傾斜した設置面の上側、架台53aが傾斜面の下側あるものと想定する。そして、2本のバックレール20,20は、その長手方向が屋根(設置面)51の傾斜方向Qに沿って延びるように配される(図3参照)。
また、以下の説明では、2本の平行なバックレール20,20のうち、一方のバックレール20のみ着目して説明するが、もう一方のバックレール20も同時に各工程を行うものである。
【0038】
図6、7は、本発明のバックレール付き太陽電池モジュールの設置方法を段階的に示した断面図である。まず、傾斜した屋根の上側の架台53aに形成されているネジ穴55aに、第一の取付ネジ56aを仮止めしておく。具体的には、ボルト57の軸部57bにナット58を締め付けずに緩く留めておく(図6(a)参照)。
【0039】
次に、バックレール20の第一係合穴31を架台53aのネジ穴55aに接近させ、ボルト57の頭部57aを第一開口部31aに貫通させる。そして、そのままバックレール付き太陽電池モジュール10全体を屋根の下側方向にスライドさせる。これによって、ボルト57の軸部57bが第一長穴部31b内を摺動し、第一長穴部31bの端部31bEに達する(図6(b)参照)。なお、この時点では、第一の取付ネジ56aの締め付けは行わないでおく。
【0040】
次に、バックレール20の第二係合穴32に第二の取付ネジ56bを引掛けておく(図6(c)参照)。具体的には、バックレール付き太陽電池モジュール10の取付傾斜面の下側となる部分を少し持ち上げる。そして、第二係合穴32の第二開口部32aにボルト57の頭部57aを貫通させ、そのままボルト57の軸部57bが第二長穴部32b内を摺動するようにスライドさせ、ボルト57を第二長穴部32bの端部32bEに引掛けておく。この時、第二長穴部32bは、第二開口部32aから取付傾斜面の下側となる方向に向けて延びているので、取付作業中にボルト57を第二係合穴32に引掛けた状態にしておくことができる。
【0041】
図6(c)に示す状態から、下側を持ち上げたバックレール付き太陽電池モジュール10を架台53bに接近させると、第二係合穴32に引掛けておいたボルト57の軸部57bが、ちょうど架台53bのネジ穴55bに合致する(図7(a)参照)。これは、バックレール20の第一長穴部31bの端部31bEの中心点と、第二長穴部32bの端部32bEの中心点との間隔W4が、架台53aのネジ穴55a中心点と、架台53bのネジ穴55b中心点との間隔と合致するように形成されているからである。そして、ボルト57の軸部57bを架台53bのネジ穴55bに貫通させる。そして、ボルト57の軸部57bにナット58を取り付ける。
【0042】
そして、取付傾斜面の上側の第一の取付ネジ56aと、下側の第二の取付ネジ56bを共に締結する(締め付ける)。これによって、バックレール20の係合部22は、架台53a,53bに固定され、バックレール付き太陽電池モジュール10が傾斜した屋根などの取付面に確実に設置される。
【0043】
以上のように、本発明のバックレール付き太陽電池モジュール、およびその設置方法によれば、一方の架台53aのネジ穴55aに予め第一の取付ネジ56aを仮止めしておき、この第一の取付ネジ56aにバックレール20の第一係合穴31を引掛けてスライドさせるだけで、バックレール20の一方の側の取付ができる。そして、バックレール20の第二係合穴32に第二の取付ネジ56bを引掛けるだけで、第二の取付ネジ56bと他方の架台53bのネジ穴55bとの位置合わせが完了する。
【0044】
このため、従来のようにバックレールのネジ穴と架台のネジ穴とが合致するように太陽電池モジュールを動かしつつ位置合わせするといった面倒で手間のかかる作業が不要となる。よって、バックレール付き太陽電池モジュール10の設置面への取付を容易に、かつ短時間で完了させることができ、太陽電池モジュールの取付に係る作業性を大幅に向上させ、かつ設置コストを低減することが可能になる。
【0045】
上述した実施形態では、第一長穴部および第二長穴部は、それぞれ第一開口部、第二開口部からバックレールの長手方向に沿って互いに離間する方向に延びるように形成されていたが、逆に、第一長穴部および第二長穴部が互いに接近する方向に延びていてもよい。
図8は、本発明の別な実施形態のバックレールを示す平面図である。この実施形態におけるバックレール60は、係合部62に第一係合穴71、および第二係合穴72がバックレール60の長手方向Lに沿って所定の間隔で互いに離間して配置されている。バックレール60は、第一係合穴71、第二係合穴72は取付ネジ(不図示)を介して架台53に係着される。
【0046】
そして、第一長穴部71bおよび第二長穴部72bは、それぞれ第一開口部71a、第二開口部72aからバックレール60の長手方向Lに沿って互いに接近する方向に延びている。即ち、第一長穴部71bは、第一開口部71aからバックレール60の他方の端部60bに向かって延び、また、第二長穴部72bは、第二開口部72aからバックレール60の一方の端部60bに向かって延びている。
【0047】
このような構成のバックレール60を備えたバックレール付き太陽電池モジュールを傾斜した取付面に設置する場合、まず傾斜面の下側の架台に第二の取付ネジを仮止めしてから第二係合穴72に第一の取付ネジを係合させる。そして、傾斜面の上側となる第一係合穴71に第一の取付ネジを引掛けておくだけで、第一の取付ネジが傾斜面の上側の架台のネジ穴に位置決めされる。この後、第二の取付ネジと第一の取付ネジとを締め付けるだけで、容易にバックレール60を架台53に接合させることができる。
【0048】
図9は、本発明の別な実施形態のバックレールを示す断面図である。この実施形態におけるバックレール80は、長手方向に直角な断面の形状において、側壁部83,83が傾斜してなる。即ち、太陽電池100の裏面100Bに接合される2つの接合部81,81と、この2つの接合部81,81の間に形成され、接合部81,81に対して段差をもって広がる係合部82とを結ぶ側壁部83,83は、係合部82から接合部81,81に向けて広がるように形成されている。このような断面形状をとることによって、バックレール80は、より一層安定して太陽電池100を支えることができる。
【符号の説明】
【0049】
10…バックレール付き太陽電池モジュール、 20…バックレール、 21…接合部、 22…係合部、 23…側壁部、 31…第一係合穴、 31a…第一開口部、 31b…第一長穴部、 32…第二係合穴、 32a…第二開口部、 32b…第二長穴部、 53…架台、 100…太陽電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールを傾斜した設置面に対してネジ止めするためのバックレールを備えたバックレール付き太陽電池モジュールであって、
前記バックレールは前記太陽電池モジュールに接合されるとともに、それぞれ取付ネジを係合可能な第一係合穴および第二係合穴を有し、
前記第一係合穴は、取付ネジの頭部及び軸部が貫通可能な第一開口部と、取付ネジの軸部のみが貫通可能であり、前記第一開口部に繋がる第一長穴部とからなり、
前記第二係合穴は、取付ネジの頭部及び軸部が貫通可能な第二開口部と、取付ネジの軸部のみが貫通可能であり、前記第二開口部に繋がる第二長穴部とからなり、
前記第一長穴部および前記第二長穴部は、それぞれ前記第一開口部、前記第二開口部から前記バックレールの長手方向に沿って互いに離間する方向に延びるか、または互いに接近する方向に延びることを特徴とするバックレール付き太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記バックレールは、第一係合穴および第二係合穴が形成された係合部と、太陽電池モジュールに接合される接合部とを有し、前記係合部と前記接合部との間には、取付ネジの頭部の高さよりも大きい段差が形成されていることを特徴とする請求項1記載のバックレール付き太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記バックレールは、1つの太陽電池モジュールの裏面に、前記設置面の傾斜方向と平行に2本形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のバックレール付き太陽電池モジュール。
【請求項4】
太陽電池モジュールを傾斜した設置面に対してネジ止めするためのバックレールを備え、
前記バックレールは前記太陽電池モジュールに接合されるとともに、それぞれ取付ネジを係合可能な第一係合穴および第二係合穴を有し、
前記第一係合穴は、取付ネジの頭部及び軸部が貫通可能な第一開口部と、取付ネジの軸部のみが貫通可能であり、前記第一開口部に繋がる第一長穴部とからなり、
前記第二係合穴は、取付ネジの頭部及び軸部が貫通可能な第二開口部と、取付ネジの軸部のみが貫通可能であり、前記第二開口部に繋がる第二長穴部とからなり、
前記第一長穴部および前記第二長穴部は、それぞれ前記第一開口部、前記第二開口部から前記バックレールの長手方向に沿って互いに離間する方向に延びるバックレール付き太陽電池モジュールの設置方法であって、
傾斜した設置面の上側のネジ穴に第一の取付ネジを仮止めしておく工程と、
前記第一の取付ネジの頭部を前記第一開口部に貫通させてから、前記太陽電池モジュールを傾斜した設置面の下側に向けてスライドさせ、前記第一の取付ネジの軸部を前記第一長穴部に貫通させる工程と、
第二の取付ネジの軸部を前記第二長穴部に貫通させて、該第二の取付ネジを前記第二係合穴に引掛けておく工程と、
前記第二の取付ネジを傾斜した設置面の下側のネジ穴に係合させる工程と、を備えたことを特徴とするバックレール付き太陽電池モジュールの設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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