説明

バッテリパックの充電状態を判定する方法

「N」個の個々のバッテリセルで構成されるバッテリパックの充電状態を判定する方法が提案され、本方法は次のステップを含み、すなわち、第1のステップ(S1)では、各個々のバッテリセルの充電状態SOCがすべてのi=1、Nについて決定される。第2のステップ(S2)では、個々のバッテリセルの充電状態の平均値(mean(SOC))が決定される。次いで第3のステップ(S3)では、式w=gw(mean(SOC))に基づいて重み(w)が決定され、関数gw(SOC)については次の事項が成り立ち、すなわち、関数値は、その独立変数が完全な放電の最小の充電状態SOCminに向かう場合には、wminの最小値に向かおうとし、関数値は、その独立変数が完全な充電の最大の充電状態SOCmaxに向かう場合には、wmaxの最大値に向かおうとし、関数gw()は連続的である。最後に、バッテリパック全体の充電状態SOCが、SOC=w/(wmax−wminmax(SOC)+(1−w/(wmax−wmin))min(SOC)に基づいて決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の個別バッテリセルで構成されるバッテリパックの充電状態を判定する方法に関する。Liイオンバッテリパックと、上述の方法に基づいて作動するバッテリマネジメントシステムとで構成されるバッテリシステム、ならびに、Liイオンバッテリパックと、対応するバッテリマネジメントシステムとで構成されるバッテリシステムを含む自動車も本発明の主題である。さらに、演算装置上で実行される場合に本発明の方法のすべてのステップを実施するコンピュータプログラムも、本発明の主題である。
【背景技術】
【0002】
たとえばハイブリッド自動車や電気自動車のような多様な用途で、バッテリに蓄えられた電気エネルギーがエネルギー源として利用される。このようなバッテリの作動のために決定的に重要なのは、バッテリがどのような状態であり、以後の動作のためにどれだけの容量を有しているか確認できることである。そのために、バッテリマネジメントシステムBMSによってバッテリの動作が管理される。このようなバッテリマネジメントシステムは、特に、各個々のセルについて、充電状態SOCすなわち「State−of−Charge」を判定する。充電状態は、完全な放電と完全な充電との間で変動することができる。
【0003】
ハイブリッド自動車や電気自動車では、直列または並列につながれた多数の電気化学セルで構成されるLiイオンまたはNiMHテクノロジーのバッテリパックが採用されている。バッテリマネジメントシステムはバッテリを監視する役目を果たし、安全性の監視に加えて、できる限り長い充電時間を確保するためのものである。
【0004】
個々のバッテリセルの充電状態は、バッテリパックの内部で状況に応じて大幅に相違している可能性がある。しかし上位の制御装置からは、または利用者に対する充電状態表示のためには、情報提供力のある代表的なただ1つの充電状態値を示すことが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術により、個々のバッテリセルの充電状態の平均値を出力することが知られている。この場合、平均の充電状態がまだ100%を下回っている場合に、すなわち完全に充電された最大の充電状態を下回っている場合に、個々のセルが過充電される可能性があるという問題がある。同様に、平均のSOCがまだ0%を上回っている場合に、すなわち完全に放電された最小の充電を上回っている場合に、個々のセルが過小充電される可能性もある。その場合、電気化学バッテリセルの過小充電や過充電が急速な老朽化や、バッテリセルの損傷につながる可能性があるという欠点がある。極端なケースでは、バッテリの発火や爆発につながる可能性がある。
【0006】
さらに、個々のバッテリセルの最大値と最小値を示すことが知られている。これら両方の値を評価することで、過充電や過小充電を回避することができる。しかしながら2つの値の取扱は、たとえば総充電状態を表示する際や、残存充電時間または利用可能な容量を表示または判定する際に、複雑さと結びついている。そのうえ、一方の値から他方の値に移行する際に跳ぶことを回避することができない。
【0007】
さらに、高い充電状態については個別バッテリセルの最大値を出力し、低い充電状態については個別バッテリセルの最小値を出力することが知られている。しかしその場合、バッテリパック充電状態が、閾値部分で不連続に跳ぶという欠点があり、このことは、充電状態表示の予測不能な挙動もしくは検証不可能な挙動につながり、または、充電状態表示が跳ぶことにつながったりする可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、「N」個の個々のバッテリセルで構成されるバッテリパックの充電状態を判定する方法が提案され、この方法は次のステップを含んでいる。すなわち、最初に、各個々のバッテリセルの充電状態SOCがすべてのi=1、Nについて決定され、バッテリ充電状態は、完全な放電の最小の充電状態SOCminと、完全な充電の最大の充電状態SOCmaxとの間で変動する。第2のステップでは、個々のバッテリセルの充電状態の平均値mean(SOC)が決定される。次いで、バッテリパックのバッテリセルの最大のバッテリ充電状態max(SOC)の重み「w」、または、バッテリパックのバッテリセルの最小のバッテリ充電状態(min(SOC))の重み(1−w)の決定が、式w=gw(mean(SOC))を用いて行われ、関数gw(SOC)については次の事項が成り立つ。すなわち、
1.関数値は、その独立変数が完全な放電の最小の充電状態SOCminに向かう場合には、wminの最小値に向かおうとし、
2.関数値は、その独立変数が完全な充電の最大の充電状態SOCmaxに向かう場合には、wmaxの最大値に向かおうとし、及び、
3.関数gw()は連続的である。
最後に、バッテリパック全体の充電状態SOCが、重みの値wと、バッテリパックのバッテリセルの最大のバッテリ充電状態max(SOC)と、バッテリパックのバッテリセルの最小のバッテリ充電状態min(SOC)と、の関数として、次式に基づいて算出される。
SOC=w/(wmax−wminmax(SOC)+(1−w/(wmax−wmin))min(SOC
【0009】
本発明にかかる方法は、有利に、バッテリパックの全体について、情報提供力のある代表的なただ1つの充電状態の簡単な判定を可能にする。個々の最大の充電状態と最小の充電状態とが、高い充電状態については最大の個別セル充電状態が優先され、低い充電状態については最小の個別セル充電状態が優先されるように、重みづけされる。このとき最小値と最大値との間の移行は、重み関数gw()の特別な構成によって切れ目なく連続的に行われる。
【0010】
従属請求項に記載された方策は、独立請求項に記載された方法の好ましい発展例や改良を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下においては0−100の範囲内の充電状態値が利用され、値「0」は完全な放電の充電状態「0%」に相当しており、「100」は完全な充電の充電状態「100%」に相当する。しかしながら、このような区分に限定をするものではない。たとえば0−1の値範囲なども使用できることは、当業者には明らかである。その場合、下記の関数も対応して再スケーリングされる。
【0012】
第1の実施例における重み関数gw()は双曲線正接関数を含んでいる。重み関数については、0から100の範囲内のすべての充電状態値SOCについて次式
gw(SOC)=[0.5(1+tanh(α(SOC−50)))]
が成り立つのが好ましく、但し、「α」はα>0で可変であり、「p」は自然数の要素である。
【0013】
重み関数の特別な構成は、最小値「0」から最大値「1」への移行を、50%の充電状態に相当する値「50」を中心とした充電状態の平均的な値領域で可能にする。このとき関数は、この平均値に対して点対称である。変数「α」は、最小値と最大値との間の移行部の所望の幅の調整を可能にする。変数「α」の大きい値は、より小さい値よりも、最小値と最大値の間の迅速な転換を可能にする。指数値p=1が特に好ましい。しかしながら指数値をこれよりも大きく選択し、総充電状態における最大の個別セル充電状態と、最小の個別セル充電状態との間の重みづけの転換を加速させることもできる。
【0014】
第2の実施例では、重み関数gw()はシグモイド関数を含んでいる。その場合、重み関数については、0から100の範囲内のすべての充電状態値SOCについて次式
gw(SOC)=[1/(1+e−α*(SOC−50))]
が成り立つのが好ましく、但し、「α」はα>0で可変であり、「p」は自然数の要素である。
【0015】
シグモイド関数は双曲線正接関数に比べて、その値範囲が「0」と「1」の所望の値の間で直接的に変化し、最初にシフトをさせなくてよいという利点がある。双曲線正接関数は値「−1」と「1」の間で変化する。この重み関数の特別な構成は、最小値「0」から最大値「1」への移行を、50%の充電状態に相当する値「50」を有する充電状態の平均の値範囲で可能にする。このとき関数は、この平均値に対して点対称である。変数「α」は、最小値と最大値の間の移行の所望の幅の調整を可能にする。変数「α」の大きい値は、より小さい値よりも迅速な転換を可能にする。指数値p=1が特に好ましい。しかしながら指数値をこれよりも大きく選択し、総充電状態における最大の個別セル充電状態と、最小の個別セル充電状態との間の重みづけの転換を加速させることもできる。
【0016】
第3の実施例では、重み関数は、充電状態のさまざまな区域値について定義された個々の線形関数で成り立っている。重み関数gw(SOC)については、0から100の範囲内のすべてのSOCについて次式
SOC[0;X]: gw(SOC)=0;
SOC[X;Y]: gw(SOC)=(SOC−X)/(Y−X);
SOC[Y;100]: gw(SOC)=1
が成り立つのが好ましい。
【0017】
区域的な線形関数としての重み関数の特別な構成は、重み関数に関わる要請事項を非常に簡単に実現することを可能とする。このとき充電状態値X及びYの量が、最小値と最大値の間の移行部の位置と大きさを規定する。
【0018】
値X及びYは、平均の充電状態を中心として対称に選択されるのが好ましい。このことは、充電状態の妥当性のある表現と出力とを可能にする。
【0019】
1つの好ましい実施例では、値Xは20%の充電状態に相当しており、すなわちX=20が成り立つ。このとき値Yは80%の充電状態に相当しており、すなわちY=80が成り立つ。このことは、中間領域で線形に減少または増加する充電状態の表現を保証し、完全な放電及び充電の極値領域は、危険を回避するために、すでに早期にそのようなものとして出力される。当然ながら、相応に再スケーリングをすれば0から100に代えて0から1の値を使用することもできる。また、同じく式を相応に再スケーリングすれば、パーセント値を直接使用することもできる。
【0020】
バッテリパックの制御ユニットのような演算装置上で実行される場合に先に説明した方法のすべてのステップを実行するコンピュータプログラムも、同じく提供される。制御ユニットは、バッテリパックから切り離されて配置されていてもよい。
【0021】
同様に、特にLiイオンバッテリのためのバッテリマネジメントシステムも提案され、バッテリシステムは、充電状態を決定する上記の方法を含んでいる。
【0022】
上記に応じて、複数の個別バッテリセルと、Liイオンバッテリのためのバッテリマネジメントシステムとで構成されるLiイオンバッテリパックを含むバッテリシステムが提供され、バッテリシステムは充電状態を決定する上記の方法を含んでいる。
【0023】
さらに、本発明に基づく対応するバッテリシステムを含む駆動システムを装備した自動車が提供される。
【0024】
本発明の実施例が図面に示されており、以下の記述において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による方法のフローチャートである。
【図2】本発明の第1の実施例に基づく重み関数のグラフである。
【図3】本発明の第1の実施例に基づいて算出されたバッテリパックの充電状態である。
【図4】本発明の第3の実施例に基づく重み関数のグラフである。
【図5】本発明の第3の実施例に基づいて算出されたバッテリパックの充電状態である。
【0026】
図1には、バッテリパックの充電状態を決定するための本発明にかかる方法のフローチャートが示されている。バッテリパックは、以下においてはLiイオンバッテリセルで構成されているが、複数の電気化学セルで構成されるこれ以外のバッテリ型式に適用することもできる。
【0027】
図1では、符号「A」は「すべてのi=1、NについてのSOCiの決定」を表しており、符号「B」は「すべてのSOCiの平均値mean(SOCi)の決定」を表しており、符号「C」は「gw(SOC):gw(SOC→0%)→0;gw(SOC→100%)→1;かつgw()連続的、による重みw=gw(mean(SOCi))の決定」を表しており、符号「D」は「SOC=wmax(SOC)+(1−w)min(SOC)による、バッテリパックの総充電状態SOCの決定」を表している。
【0028】
充電状態を判定する本発明の方法は、「N」個の個々のバッテリセルで構成されるバッテリパックを対象としている。
【0029】
第1のステップでは、各個々のバッテリセルの充電状態SOCがすべてのi=1、Nについて決定され、バッテリ充電状態は、完全な放電の最小の充電状態SOCminと、完全な充電の最大の充電状態SOCmaxとの間で変動する。最小の充電状態は、たとえば値「0」または「0%」を有することができ、最大の充電状態は値「1」、「100」または「100%」を有することができる。
【0030】
第2のステップでは、個々のバッテリセルの充電状態の平均値mean(SOC)が決定される。平均値は、通常、式mean(SOC)=1/NΣi=1,NSOCから算出される。
【0031】
次いで第3のステップで、式w=gw(mean(SOC))に基づいて、バッテリパックのバッテリセルの最大のバッテリ充電状態max(SOC)の重み「w」、または、バッテリパックのバッテリセルの最小のバッテリ充電状態(min(SOC))の重み(1−w)の決定が行われ、関数gw(SOC)については次の事項が成り立ち、すなわち、
関数値は、その独立変数が完全な放電の最小の充電状態SOCminに向かう場合には、値「0」の最小値に向かおうとし、
関数値は、その独立変数が完全な充電の最大の充電状態SOCmaxに向かう場合には、値「1」の最大値に向かおうとし、及び、
関数gw()は連続的である。
【0032】
換言すると、重みづけをするために、次のような特性、すなわち、
− gw(SOC→0%) →0 (1)
− gw(SOC→100%) →1 (2)
− gw()は連続的 (3)
を有する、充電状態SOCに依存する数学的な関数gw=f(SOC)が利用される。
【0033】
上の例では、wmax=1かつwmin=0と設定されていた。ここでも当業者には明らかなように、最小値と最大値のそれぞれの値「0」と「1」はこれに限定されるものではなく、最小値についての「0%」、または、最大値についての「100%」もしくは「100」といった他の値を使用することもできる。
【0034】
続いて第4のステップでは、バッテリパック全体の充電状態SOCが、重みの値wと、バッテリパックのバッテリセルの最大のバッテリ充電状態max(SOC)と、バッテリパックのバッテリセルの最小のバッテリ充電状態min(SOC)と、の関数として算出される。これは次式に従って行われる。
SOC=wmax(SOC)+(1−w)min(SOC) (4)
【0035】
この式も、やはりwmax=1及びwmin=0について限定をするものではない。
【0036】
最後のステップは次のように記述することもできる:バッテリパック全体の充電状態SOCの決定は、重みの値wと、バッテリパックのバッテリセルの最大のバッテリ充電状態max(SOC)と、バッテリパックのバッテリセルの最小のバッテリ充電状態min(SOC)と、の関数として行われ、このとき、最大値に向かおうとする重み「w」についてはSOC≦max(SOC)が成り立ち、最小値に向かおうとする重み「w」についてはSOC≧min(SOC)が成り立つ。バッテリパック全体の充電状態SOCは、重みの値wと、バッテリパックのバッテリセルの最大のバッテリ充電状態max(SOC)と、バッテリパックのバッテリセルの最小のバッテリ充電状態min(SOC)とから、線形回帰として算出することができる。
【0037】
第1の実施例において、重み関数について好適に適用可能な関数は次式である。
gw(SOC)=0.5(1+tanh(α(SOC−50%))) (5)
【0038】
この式は所与の要請事項を満たすものであり、最小値「0」から最大値「1」への移行部を、SOCの50%を中心とする領域に有している。この移行部の幅はパラメータαを通じて調整可能である。たとえばα=1/20については、図2に示すような関数gw(SOC)の推移が得られる。この図は1−gw(SOC)の推移も追加的に示している。この関数はその特徴的な推移から、「S字」関数またはフェルミ関数とも呼ぶことができる。このとき「α」の大きい値は、最小値と最大値の間のより迅速な移行をもたらす。
【0039】
この関数gw(SOC)を用いて、セルの個々のSOCからパック全体SOCのSOCの算出を次のように行うことができる。
w=gw(mean(SOC)) (6)
SOC=wmax(SOC)+(1−w)min(SOC) (7)
但し、mean(SOC)は個々のセルSOCの平均値、max(SOC)は最大値、min(SOC)は最小値である。
【0040】
上の実施例では、重み関数は式(5)の平方またはその他の累乗であってもよい。累乗の選択は、総パック充電状態における最大の個別充電状態及び最小の個別充電状態の重みづけの迅速な移行を可能にする。
【0041】
図3は、式(5)から(7)の一例としての適用例であり、充電曲線をパーセントで示している。ここでバッテリパックは6個の個別セルで構成されており、その充電状態はおよそ+/−10%だけ変動し、図3では数字「1」から「6」で表されている。つまり数字「1」についての曲線は、バッテリセル1の充電状態に対応している。さらに、SOCの記号が付された総充電状態の曲線も示されている。図示した時間的推移の開始時には、セル5はほぼ100%の充電状態に達している。判定される総充電状態SOCは最大値をとる。その約1300秒後、平均の充電状態はおよそ50%になっている。総充電状態SOCは、最大の個別セル充電状態と、最小の個別セル充電状態との平均値に相当している。その後の経過で個別セル充電状態はさらに低下していき、その結果、総充電状態SOCは、本例ではセル3である、もっとも低いセルの充電状態値をとる。
【0042】
第2の実施例(図面には示さず)では、重み関数は0から100の範囲内のすべての充電状態値SOCについてシグモイド関数から形成され、好ましくは次式
gw(SOC)=[1/1(1+e−α*(SOC−50))] (8)
から形成され、但し、「α」はα>0で可変であり、「p」は自然数の要素である。同じくパラメータ「p」及び「α」は量に応じて、重み関数の最小値と最大値とのより迅速な移行またはよりゆっくりした移行を可能にする。シグモイド関数は双曲線正接関数と比べて、「0」と「1」の間の所望の値領域をすでに供給しているという利点があり、一方、双曲線正接関数は最初にシフトをさせなければならない。これらの関数はそれ以外の点では非常に似ているので、重み関数及びその結果として得られる総パック充電状態SOCのこれ以上の記述は行わない。
【0043】
図4は、代替的な重み係数gwを示すと同時に、値1−gwを示している。ここでは重み関数gwは次のように選択されている。すなわち、
SOC[0−20%]: gw(SOC)=0 (9)
SOC[20−80%]: gw(SOC)=(SOC−20)1/60 (10)
SOC[80−100%]: gw(SOC)=1 (11)
【0044】
この関数は、重み関数に関して求められる要請事項を同じく満たしている。図5は、6個の個別セルと総パックSOCについて、同じく充電曲線をパーセントで表している。図面から明らかなように、この改変された重み関数gwも、総パックSOC、SOCを決定するために適している。同じく高い充電状態については最大の個別充電状態が優先されており、低い充電状態については最少の充電状態が優先されており、移行部は連続的に延びている。
【0045】
一般に、式(9)−(11)では中間領域の下限値と上限値とを変えることができ、x%とy%の値を取ることができ、但し、下限と上限については次式が成り立つ。すなわち、0<x<50かつ50<y<100:
SOC[0;X]: gw(SOC)=0; (12)
SOC[X;Y]: gw(SOC)=(SOC−X)/(Y−X); (13)
SOC[Y;100]: gw(SOC)=1 (14)
【0046】
このとき中間領域は、充電状態の平均値50%に対して常に対称に選択される。下限と上限の選択に応じて、最小値と最大値の間での重み関数の移行がより迅速に行われるか(xとyとの比較的小さい差分)、または、よりゆっくりと行われる(xとyとの比較的大きい差分)。上の例も、やはり重みづけの「0」及び「1」の最小値と最大値に限定されるものではない。関数(7)の相応の再スケーリングをすれば、これらを別様に選択することができる。
【0047】
本方法は、Liイオンバッテリパックのためのバッテリマネジメントシステムで適用されるのが好ましい。
【0048】
特別に好ましい実施例では、バッテリマネジメントシステムは、自動車の駆動装置としての役目をするLiイオンバッテリで利用される。このときバッテリマネジメントシステムは、車両の制御ユニット上で稼働させることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
「N」個の個々のバッテリセルで構成されるバッテリパックの充電状態を判定する方法において、前記方法は、
(S1)各個々のバッテリセルの充電状態(SOC)(S1)をすべてのi=1、Nについて決定するステップであって、バッテリ充電状態は、完全な放電の最小の充電状態(SOCmin)と、完全な充電の最大の充電状態(SOCmax)と、の間で変動する、前記決定ステップと、
(S2)前記個々のバッテリセルの前記充電状態の平均値(mean(SOC))を決定するステップと、
(S3)前記バッテリパックのバッテリセルの前記最大のバッテリ充電状態(max(SOC))の重み(w)、または、前記バッテリパックのバッテリセルの前記最小のバッテリ充電状態(min(SOC))の重み(1−w)を、
w=gw(mean(SOC))
を用いて、決定するステップであって、関数gw(SOC)については次の事項が成り立ち、すなわち、
−関数値は、その独立変数が前記完全な放電の前記最小の充電状態(SOCmin)に向かう場合には、「wmin」の最小値に向かおうとし、
−関数値は、その独立変数が前記完全な充電の前記最大の充電状態(SOCmax)に向かう場合には、「wmax」の最大値に向かおうとし、及び、
−関数gw()は連続的である、前記決定ステップと、
(S4)前記バッテリパック全体の前記充電状態(SOC)を、前記重みの値(w)と、前記バッテリパックのバッテリセルの前記最大のバッテリ充電状態(max(SOC))と、前記バッテリパックのバッテリセルの前記最小のバッテリ充電状態(min(SOC))と、の関数として、
SOC=w/(wmax−wminmax(SOC)+(1−w/(wmax−wmin))min(SOC
に基づいて決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
重み関数gw(SOC)は、
双曲線正接関数を含んでおり、または、
シグモイド関数を含んでおり、または、
区域的な線形関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重み関数gw(SOC)については、0から100の範囲内のすべての充電状態値(SOC)について次式が成り立つ、
gw(SOC)=[0.5(1+tanh(α(SOC−50)))]
但し、「α」はα>0で可変であり、「p」は自然数の要素であり、wmax=1かつwmin=0である、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記重み関数gw(SOC)については、0から100の範囲内のすべての充電状態値(SOC)について次式が成り立つ、
gw(SOC)=[1/(1+e−α*(SOC−50))]
但し、「α」はα>0で可変であり、「p」は自然数の要素であり、wmax=1かつwmin=0である、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
p=1である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記重み関数gw(SOC)については、0から100の範囲内のすべてのSOCについて次式が成り立つ、
− SOC[0;X]: gw(SOC)=0;
− SOC[X;Y]: gw(SOC)=(SOC−X)/(Y−X);
− SOC[Y;100]: gw(SOC)=1
請求項2に記載の方法。
【請求項7】
値X及びYは平均の充電状態を中心として対称に選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
値XはX=20で20%の充電状態に相当し、YはY=80で80%の充電状態に相当する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
演算装置上で実行される場合に請求項1から8のいずれか1項に記載の方法のすべてのステップを実施するコンピュータプログラム。
【請求項10】
複数の個別バッテリセルと、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を含むLiイオンバッテリのためのバッテリマネジメントシステムと、を備えるバッテリシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のバッテリシステムを含む駆動システムを備える自動車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−513809(P2013−513809A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543549(P2012−543549)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066343
【国際公開番号】WO2011/079977
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(311017728)エス・ビー リモーティブ カンパニー リミテッド (9)
【出願人】(311017740)エス・ビー リモーティブ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (9)
【Fターム(参考)】