説明

バッテリーパック

【課題】ガスケットの継ぎ目から内部に水が浸入しても、問題の発生を抑制するバッテリーパックを提供する。
【解決手段】電動車両に搭載するバッテリーパックを構成するトレー12において、トレー12の底部に形成したリブ21、23、25を用いて、バッテリーを載置する載置部22から仕切る水受け部24を、トレー12の側壁12bに接して設けると共に、水受け部24と接するトレー12の側壁12bの溝の部分にガスケット14の継ぎ目Jを配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に用いるバッテリーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源としてモータを用いる電気自動車やハイブリッド電気自動車等の電動車両には、モータに電力を供給するためのバッテリーパックが搭載されており、例えば、車両の床下に取り付けられている。バッテリーパックは、複数のバッテリー(二次電池)を収容するトレーとトレーの上方を覆うカバーとを有しており、トレーとカバーとの間には、それらの間をシールするためのガスケットが配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−153128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したバッテリーパックは、その周囲が数m以上となり、ガスケットも同等の大きさのリング形状となる。このような大きさのガスケットは、通常、押し出し成形により1本の線状のものを成形し、その端部を繋ぎ合わせることで、上述した大きさのリング形状としている。このようにしてガスケットを作製しているため、ガスケットには必ず継ぎ目ができてしまう。そのため、継ぎ目に段差や溝等のズレやバリ等が発生しないように品質管理を行い、継ぎ目によりシール性が悪化しないようにする必要がある。しかしながら、もし、量産時において継ぎ目に品質不良があった場合には、継ぎ目からバッテリーパックの内部へ水等が浸入するおそれがあり、その場合には、バッテリーが短絡する等の問題を引き起こすおそれがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、ガスケットの継ぎ目から内部に水が浸入しても、問題の発生を抑制するバッテリーパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する第1の発明に係るバッテリーパックは、
底部にバッテリーを載置するトレーと、
前記トレーの上方を覆うカバーと、
前記トレーの側壁の上端全周に沿って配置され、前記トレーと前記カバーとの間に挟み込まれて、前記トレーと前記カバーとの間をシールするシール部材とを有する電動車両に搭載するバッテリーパックにおいて、
前記バッテリーを載置する部分から仕切る水受け部を前記側壁に接して設けると共に、当該水受け部と接する前記側壁の前記上端の部分に前記シール部材の継ぎ目を配置したことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決する第2の発明に係るバッテリーパックは、
上記第1の発明に記載のバッテリーパックにおいて、
前記水受け部は、前記トレーの底部に立設すると共に前記側壁に当接する第1のリブに仕切られてなることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第3の発明に係るバッテリーパックは、
上記第1又は第2の発明に記載のバッテリーパックにおいて、
前記水受け部は、前記電動車両の車両後方側に配置することを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第4の発明に係るバッテリーパックは、
上記第1〜第3のいずれか1つの発明に記載のバッテリーパックにおいて、
前記水受け部の底部にスポンジ等の吸水部材を載置したことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第5の発明に係るバッテリーパックは、
上記第1〜第4のいずれか1つの発明に記載のバッテリーパックにおいて、
前記水受け部の底部に前記第1のリブより高さの小さい第2のリブを格子状に形成したことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第6の発明に係るバッテリーパックは、
上記第1〜第5のいずれか1つの発明に記載のバッテリーパックにおいて、
前記水受け部の底部に、下方側への排水のみを許容するワンウェイバルブを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バッテリーパックのトレーに水受け部を設け、当該水受け部と接する側壁の上端の部分に、ガスケットの継ぎ目を配置したので、量産時においてガスケットの継ぎ目に万が一品質不良があっても、継ぎ目から侵入した水を水受け部で受けることで、バッテリー等の電気部品への影響を抑制して、短絡等の大きな問題が発生しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るバッテリーパックの実施形態の一例(実施例1)として、その外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示したバッテリーパックのカバーを外した状態を示す斜視図である。
【図3】図2に示したバッテリーパックの水受け部を拡大して示す斜視図である。
【図4】図1に示したバッテリーパックの水受け部の断面図である。
【図5】バッテリーパックの水受け部の他の一例(実施例2)を示す断面図である。
【図6】バッテリーパックの水受け部の他の一例(実施例3)を示す断面図である。
【図7】バッテリーパックの水受け部の他の一例(実施例4)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るバッテリーパックの実施形態について、図1〜図7を参照して、その詳細な説明を行う。
【0015】
(実施例1)
図1は、本実施例のバッテリーパックを示す斜視図であり、図2は、図1に示したバッテリーパックのカバーを外した状態の斜視図である。又、図3は、図1に示したバッテリーパックの水受け部を拡大して示す斜視図であり、図4は、図1に示したバッテリーパックにおいて、水受け部に該当する部分のA−A線矢視断面図である。なお、図1、図2において、“Fr”は車両前方を示している。
【0016】
本実施例において、バッテリーパック10は、複数のバッテリー11を内部に収容するものであり、電気自動車やハイブリッド電気自動車等の電動車両に搭載されるものである。
【0017】
バッテリーパック10は、樹脂製のトレー12と樹脂製のカバー13とを有しており、複数のバッテリー11をトレー12の底部12aに載置すると共に、トレー12の上方をカバー13で覆うことにより、複数のバッテリー11を内部に収容している。トレー12の側壁12bの上端には、その全周に沿ってフランジ12cが形成されており、フランジ12cの全周に沿って溝12dが形成されている。そして、この溝12dの全周に沿ってガスケット14(シール部材)が配設されている。このガスケット14は、トレー12のフランジ12cにカバー13をボルトで締結することにより、トレー12とカバー13との間に挟み込まれ、防水や防塵のため、トレー12とカバー13との間をシール(封止)することになる。
【0018】
このガスケット14は、中空の円筒部と円筒部の表面の一部から径方向外側に突設された突設部とを有している。この突設部が溝12dに沿って配置されて、円筒部がトレー12とカバー13との間に挟み込まれて、トレー12とカバー13との間をシールすることになる。なお、ガスケットは、このような形状に限る必要はなく、例えば、Oリング等でもよい。
【0019】
又、トレー12自体の補強と収容するバッテリー11の保持のため、トレー12の内側の底部12aには、複数のリブ21が車幅方向に沿って立設されており、複数のリブ21により、バッテリーを載置する載置部22が複数に仕切られている。そして、リブ21自体にホルダーナット27が複数設けられており、このホルダーナット27を用いて、バッテリー11を保持、固定している。なお、ここでは、一例として、車幅方向に沿って形成したリブ21を例示しているが、車幅方向に限らず、他の方向に沿って形成してもよく、例えば、車両前後方向に沿って形成してもよい。
【0020】
又、トレー12の周囲には、その補強のため、金属製の閉断面構造のフレーム15が配置されており、このフレーム15に設けた金属製の取付金具16を用いて、車両の床下へ(例えば、車両のサイドメンバへ)、車両下方側からバッテリーパック10を取り付けている。
【0021】
前述したように、バッテリーパック10の周囲の長さは長く、そのため、押し出し成形で製作したガスケット14をリング状とする場合には、継ぎ目Jができてしまう。そして、その継ぎ目Jに品質不良があった場合には、継ぎ目Jからバッテリーパック10の内部へ水が浸入するおそれがある。
【0022】
そこで、本実施例においては、図2〜図4に示すように、トレー12の底部12aにおいて、車幅方向に形成されたリブ21に直交する方向(車両前後方向)にリブ25を立設し、電気接続箱17を載置する載置部26との仕切を設けている。同様に、リブ21に直交する方向にリブ23を立設し、バッテリー11を載置する載置部22との仕切を設けている。このようにして、リブ21、リブ23、リブ25及びトレー12の側壁12bに囲まれた水受け部24を設けるようにしている。なお、ここでのリブ21、リブ23、リブ25は本発明で言う第1のリブに相当する。ここで、電気接続箱17は、バッテリー11と車両側(モータ)とを電気的に接続するものであり、その内部には、フューズ等の電気補器が配置されており、接続部18を介して、車両側と電気的に接続されている。
【0023】
このように、水受け部24は、底部12aに立設するリブ21と、底部12aに立設すると共に側壁12bに当接するリブ23及びリブ25と側壁12bとからなり、側壁12bに接して設けられた領域であり、又、載置部22や載置部26から仕切られた領域である。この水受け部24は、例えば、電気接続箱17を載置する載置部26のスペースを有効に利用し、この領域を分割するように設けるようにしてもよい。又、この水受け部24には電気部品等は配置しないようにしている。
【0024】
このような構成の水受け部24に対応して、水受け部24に接する範囲の溝12dの部分にガスケット14の継ぎ目Jが配置されている。そのため、もし、継ぎ目Jから水の浸入があっても、侵入した水は水受け部24に浸入し、侵入した水は底部24aに止まり、その移動が抑制されることになる。その結果、バッテリーパック10内部の電気部品、特に、バッテリー11側への水の侵入を抑制し、短絡等の問題を抑制することができる。
【0025】
なお、水受け部24は、車両の後方側に配置することが望ましい。これは、バッテリーパック10が車両の床下に取り付けられており、走行時には、路面からの水の跳ね上げがあるからである。水受け部24を車両の後方側に配置することにより、路面から跳ね上げられた水の侵入を抑制することができる。又、継ぎ目Jの配置位置の目印を兼ねて、側壁12bの内壁面に溝を設けて、継ぎ目Jから侵入した水を、この溝により水受け部24側へ誘導するようにしてもよい。
又、本実施例においては、トレー12の側壁12bの上端全周に沿って溝が形成される構成としたが、トレー12の側壁12bの上端にこの溝が形成されていない構成においても本発明は適用可能である。この場合、ガスケット14はトレー12の側壁12bの上端全周に沿って配置され、トレー12とカバー13に挟み込まれて、トレー12とカバー13との間をシールし、水受け部24と接する側壁12bの上端の部分にガスケット14の継ぎ目Jが配置される。
【0026】
次に、実施例1の変形例となる実施例2〜実施例4を、図5〜図7を参照して説明する。なお、図5〜図7において、実施例1と同等の構成には同じ符号を付しており、以下の実施例2〜実施例4においては、実施例1の水受け部24を前提として説明を行う。
【0027】
(実施例2)
図5は、本実施例を示す水受け部の断面図である。図5に示すように、本実施例では、水受け部24の底部24aにスポンジ等の吸水部材31を載置している。そのため、もし、継ぎ目Jから水の浸入があっても、侵入した水は水受け部24に浸入し、更に、水受け部24に侵入した水は底部24aに載置した吸水部材31に吸水されて、その移動が抑制されることになる。その結果、バッテリーパック10内部の電気部品、特に、バッテリー11側への水の侵入を抑制し、短絡等の問題を抑制することができる。
【0028】
なお、吸水部材31は、スポンジ等に限らず、他の材料でもよい。例えば、紙、布、不織布等であってもよいし、おむつ等に使用する高分子吸収剤等を用いてもよい。
【0029】
(実施例3)
図6は、本実施例を示す水受け部の断面図である。図6に示すように、本実施例では、水受け部24の底部24aにリブ21、リブ23、リブ25よりも高さの小さい複数のリブ41(第2のリブ)を格子状に設け、水受け部24を更に小さな領域(小領域)に仕切るようにしている。そのため、もし、継ぎ目Jから水の浸入があっても、侵入した水は水受け部24に浸入し、更に、水受け部24に侵入した水は底部24aのリブ41で仕切られた小領域に止まり、その移動が抑制されることになる。その結果、バッテリーパック10内部の電気部品、特に、バッテリー11側への水の侵入を抑制し、短絡等の問題を抑制することができる。
【0030】
なお、複数のリブ41で格子状に仕切られた小領域は、上方から見て、四角形又は菱形に仕切られるが、三角形や五角形、六角形等の多角形に仕切るようにしてもよい。
【0031】
又、本実施例は、上記実施例2と組み合わせてもよい。例えば、リブ41で仕切られた小領域各々の底部にスポンジ等の吸水部材31を載置すればよい。
【0032】
(実施例4)
図7(a)は、本実施例を示す水受け部の断面図である。図7(a)に示すように、本実施例では、水受け部24の底部24aに、下方側への排水のみを許容するワンウェイバルブ51を設けている。このワンウェイバルブ51は、底部24aに設けた少なくとも1つ(図7(a)では2つ)の水抜き穴51aと、水抜き穴51aを下方側から覆うと共に、その外縁部分が底部24a側に密着する樹脂製の円弧断面の密着板51bと、密着板51bを底部24a側に固定する固定軸51cとを有している。
【0033】
ワンウェイバルブ51は、通常は、図7(a)に示すように、水抜き穴51aを塞ぐように、密着板51bの外縁部分が底部24a側に密着しており、外部からの水等の侵入を防止している。
【0034】
一方、もし、継ぎ目Jから水の浸入があった場合には、侵入した水は水受け部24に浸入し、水受け部24に溜まることになる。そして、水受け部24の水が、ある程度の量になると、溜まった水の重さにより、図7(b)に示すように、樹脂製の密着板51bが弾性変形し、密着板51bと底部24側との間に隙間が生じ、その隙間から溜まった水を車両下方へ排水することになる。その結果、バッテリーパック10内部の電気部品、特に、バッテリー11側への水の侵入を抑制し、短絡等の問題を抑制することができる。
【0035】
なお、本実施例も、上記実施例2、3と組み合わせてもよい。例えば、ワンウェイバルブ51の周囲を除いて、底部24aにスポンジ等の吸水部材31を載置すればよい。又、リブ41で仕切られた小領域の一つにワンウェイバルブ51を設け、リブ41に小さな連通孔を設けて、各々の小領域同士を連通し、排水時には、これらの連通孔を通って、ワンウェイバルブ51から排水するようにしてもよい。更に、リブ41で仕切られた小領域各々の底部にスポンジ等の吸水部材31を載置すると共に、リブ41に小さな連通孔を設けて、各々の小領域同士を連通し、排水時には、これらの連通孔を通って、ワンウェイバルブ51から排水するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係るバッテリーパックは、電気自動車やハイブリッド電気自動車等の電動車両に好適なものである。
【符号の説明】
【0037】
10 バッテリーパック
11 バッテリー
12 トレー
13 カバー
14 ガスケット
21、23、25 リブ(第1のリブ)
22、26 載置部
24 水受け部
31 吸水部材
41 リブ(第2のリブ)
51 ワンウェイバルブ
J 継ぎ目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部にバッテリーを載置するトレーと、
前記トレーの上方を覆うカバーと、
前記トレーの側壁の上端全周に沿って配置され、前記トレーと前記カバーとの間に挟み込まれて、前記トレーと前記カバーとの間をシールするシール部材とを有する電動車両に搭載するバッテリーパックにおいて、
前記バッテリーを載置する部分から仕切る水受け部を前記側壁に接して設けると共に、当該水受け部と接する前記側壁の前記上端の部分に前記シール部材の継ぎ目を配置したことを特徴とするバッテリーパック。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリーパックにおいて、
前記水受け部は、前記トレーの底部に立設すると共に前記側壁に当接する第1のリブに仕切られてなることを特徴とするバッテリーパック。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバッテリーパックにおいて、
前記水受け部は、前記電動車両の車両後方側に配置することを特徴とするバッテリーパック。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のバッテリーパックにおいて、
前記水受け部の底部に吸水部材を載置したことを特徴とするバッテリーパック。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のバッテリーパックにおいて、
前記水受け部の底部に前記第1のリブより高さの小さい第2のリブを格子状に形成したことを特徴とするバッテリーパック。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のバッテリーパックにおいて、
前記水受け部の底部に、下方側への排水のみを許容するワンウェイバルブを設けたことを特徴とするバッテリーパック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−65419(P2013−65419A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202546(P2011−202546)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】