説明

バッテリ併用型エンジン駆動溶接機

【課題】 エンジン溶接機とバッテリ溶接機との同時使用、商用電源から充電しながらのバッテリ溶接機としての使用、商用電源なしでバッテリ溶接機として使用、そしてエンジン溶接機としての使用、の4つの場合を簡単に切り換えできるバッテリ併用型エンジン駆動溶接機を提供すること。
【解決手段】 バッテリ併用型エンジン駆動溶接機におけるエンジン溶接機の出力の一部を交流補助電源として利用し、さらにこの交流補助電源の一部をバッテリ溶接機のバッテリを充電するための電源として利用するものにおいて、商用電源または交流補助電源から給電されてバッテリに充電する手段と、補助電源の電圧有無、バッテリを充電するための主電源電圧の有無、商用電源電圧の有無、バッテリ溶接モード押ボタンが押されたか否かにより、ハイブリッド溶接モード、エンジン溶接モード、バッテリ溶接モード(充電あり)、およびバッテリ溶接モード(充電なし)を選択するバッテリ併用型エンジン駆動溶接機制御装置をそなえたバッテリ併用型エンジン駆動溶接機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン溶接機とバッテリ溶接機とを併用したバッテリ併用型エンジン駆動溶接機に係り、とくにエンジン溶接機としてもバッテリ溶接機としても独立して使用できるようにしたバッテリ併用型エンジン駆動溶接機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のバッテリ併用型エンジン駆動溶接機は、通常はエンジン溶接機とバッテリ溶接機とを併用しているが、使用条件によってはバッテリ溶接機のみ、あるいはエンジン溶接機としてのみ使用することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、エンジン溶接機とバッテリ溶接機とを並列に接続して供給する場合を大出力モードとし、各々の溶接機の溶接用直流出力を独立に供給する場合を小出力モードとして、それらのモードを選択する切替スイッチを設けている。
【0004】
また、特許文献2では、バッテリ併用型エンジン駆動溶接機として使用する場合は、エンジンスイッチとバッテリスイッチとをオンにし、エンジン溶接機として使用する場合はエンジンスイッチのみをオンにし、バッテリ溶接機として使用する場合はバッテリスイッチのみをオンにする構成となっている。そして、バッテリ併用型エンジン駆動溶接機として使用して停止するときは、停止時にエンジンスイッチだけをオフにしてバッテリスイッチを切り忘れることが多い。そこで、エンジンスイッチだけをオフにすればバッテリスイッチも連動してオフになるように工夫されている。
【特許文献1】特開平4-135070号公報
【特許文献2】特開平5-277729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の場合、種々のスイッチを作業者が手動操作するもので、操作自体が煩雑である。とくに充電装置の2つの入力電源スイッチは作業者が誤って同時に投入することがあると、エンジン溶接機の単相巻線と商用電源とが並列に入り危険である。
【0006】
また特許文献2の場合、スイッチの切り忘れは防止できるが、全体の操作としては作業者が全てを手動で設定するものであり、煩雑さは解消されていない。しかも、バッテリ溶接機として使用したときにバッテリの充電ができない問題がある。
【0007】
本発明は、上述の点を考慮してなされたもので、エンジン溶接機とバッテリ溶接機との同時使用、商用電源から充電しながらのバッテリ溶接機としての使用、商用電源なしでバッテリ溶接機として使用、そしてエンジン溶接機としての使用、の4つの場合を簡単に切り換えできるバッテリ併用型エンジン駆動溶接機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本発明では、
エンジン溶接機とバッテリ溶接機とを併用するバッテリ併用型エンジン駆動溶接機であって、前記エンジン溶接機の出力の一部を交流補助電源として利用し、さらにこの交流補助電源の一部を前記バッテリ溶接機のバッテリを充電するための電源として利用するものにおいて、商用電源または前記交流補助電源から給電されて前記バッテリに充電する充電手段と、前記補助電源の電圧があるとき出力信号を生じる第1の検出回路と、前記バッテリを充電するための主電源電圧があるとき出力信号を生じる第2の検出回路と、商用電源電圧があるとき出力信号を生じる第3の検出回路と、バッテリ溶接モード押ボタンが押されたとき出力信号を生じる第4の検出回路とをそなえ、前記第1および第2の検出回路の出力信号があるときハイブリッド溶接モードとし、前記第1の検出回路の出力信号のみがあるときはエンジン溶接モードとし、第1の検出回路の出力信号がなく第2ないし第4の検出回路の出力信号があるとき前記充電手段により充電しながら溶接するバッテリ溶接モードとし、前記第1の検出回路および前記第3の検出回路の出力信号がなく前記第4の検出回路の出力信号があるとき充電なしで溶接するバッテリ溶接モードとするバッテリ溶接機制御装置と
をそなえたことを特徴とするバッテリ併用型エンジン駆動溶接機、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述のように、バッテリ併用型エンジン駆動溶接機における各種電源条件に応じて最適運転モードを自動的に選択するようにしたため、煩雑な操作を要せずに的確な運転を行うことができる。これにより、従来問題となっていた誤操作に起因する諸問題を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の一実施例の構成を示す説明図である。この図1に示すように、エンジンEにより駆動される溶接機Gは2つの出力を有する。その一方は、制御整流器11および直流リアクトル12を介して溶接出力端子10に直流溶接出力として供給される。他方は、インバータ21およびブレーカ22を介して交流補助電源端子20に交流出力として供給される。
【0012】
また、この実施例では、溶接機Gの出力の外にバッテリBによる溶接出力が供給される。そして、バッテリBの充電対策として、インバータ21からの交流補助電源出力、および商用電源ACが選択的に充電トランス32に引き入れられて利用される。これら電源条件、すなわち交流補助電源、商用電源、これら両者に基く充電用主電源の状態に応じて、バッテリ溶接機制御装置34がIGBTを用いたチョッパ35を制御し、バッテリBから溶接出力端子10への出力供給を制御する。
【0013】
この実施例におけるインバータ21の出力側から交流補助電源電圧S1を、
充電トランス32の入力側から主電源電圧S2を、さらに商用電源ACから商用電源電圧S3を取り出して、図2により後述する電圧検出回路に与えて電圧信号を形成する。
【0014】
すなわち、バッテリ溶接機制御回路34には、図2に示す電圧検出回路が電圧S1,S2,S3から形成した交流補助電源電圧信号S01、バッテリ溶接機主電源電圧信号S02および商用電源電圧信号S03が与えられ、また制御電源としてバッテリBから、あるいは溶接出力端子10に溶接出力が供給されているときは、直流リアクトル36、チョッパ35のクランプダイオードおよびダイオードD1を介する経路により給電が行われる。
【0015】
そして、インバータ21の出力端にはリレーRy1が接続されており、リレーRy1が付勢されるとインバータ21の出力をこのリレーRy1の接点を介して充電トランス32に給電するようにしている。交流補助電源がなくリレーRy1が消勢されると、リレー接点は商用電源ACに接続される。
【0016】
このとき商用電源ACが活きていれば、充電トランス32には商用電源ACからリレー接点およびブレーカ31を介して給電される。そして、充電トランス32の1次側に設けられたリレーRy2により、交流補助電源および商用電源の何れか一方が活きていればバッテリ溶接機制御装置34の制御電源が供給される。
【0017】
充電トランス32の2次側には制御整流器33が設けられており、バッテリ溶接機制御装置34が電圧信号S01,S02,S03および押しボタンスイッチPBの開閉に応じて制御整流器33の動作制御を行い、併せてコンタクタMCおよびチョッパ35の制御を行い、バッテリBから溶接出力を供給する。
【0018】
すなわち、押しボタンスイッチPBを押すと、バッテリ溶接機制御装置34に押しボタンスイッチPBの図示左側接点によってオン信号が与えられ、かつ図示右側接点によって制御電源が供給される。そして、コンタクタMCを閉じてバッテリBの出力をチョッパ35および直流リアクトル36を介して溶接出力端子10に供給する。
【0019】
このバッテリBから溶接出力端子10に給電する際に、交流補助電源もしくは商用電源が活きていてバッテリBに充電を行う場合とこれら両電源からの給電がなく充電しない場合とがある。
【0020】
図2は、バッテリ溶接機制御装置34に与える3つの電圧信号S01,S02,S03を形成する電圧検出回路の構成を示している。この回路は、交流補助電源電圧検出用、バッテリ溶接機主電源電圧検出用および商用電源電圧検出用に3つの回路が用意されており、各別に電圧信号S01,S02およびS03を形成し、バッテリ溶接機制御装置34に与える。
【0021】
そして、何れも同一回路構成であり、ダイオードDによる半波整流回路、抵抗R1,R2およびコンデンサCを有し半波整流回路の出力が与えられる平滑回路、平滑回路の出力が与えられるフォトカプラPC、ならびにフォトカプラPCに接続された抵抗R3によって構成される。
【0022】
例えば、交流補助電源電圧検出用回路は、インバータ21の出力側から得られる交流電圧信号S1が与えられてダイオードDにより半波整流して抵抗R1,R2およびコンデンサCによる平滑回路により直流電圧を形成し、フォトカプラPCに与える。フォトカプラPCは、その出力側から平滑回路の直流電圧に応じた電圧信号S01をバッテリ溶接機制御装置34に与える。商用電源電圧検出回路およびバッテリ溶接機主電源電圧検出回路も同様に電圧信号S02,S03を検出し、バッテリ溶接機制御装置34に与える。
【0023】
図3は、図1におけるバッテリ溶接機制御装置34の動作内容を示すフローチャートである。バッテリ溶接機制御装置34は、3つの電源の状況、すなわち交流補助電源、商用電源の状態およびこれら2つの電源の状態に基くバッテリ溶接機主電源の状態に応じて4つの溶接モード、すなわちエンジン溶接モード、ハイブリッド溶接モード、バッテリ溶接モード(充電あり)およびバッテリ溶接モード(充電無し)を選択する。
【0024】
エンジン溶接モードはエンジン溶接機の出力のみを利用するものであり、バッテリ溶接モードは充電による補充の有無の違いはあっても、基本的にバッテリの出力のみを利用するものであるが、ハイブリッド溶接モードは両者の出力をともに利用する点が特徴である。
【0025】
そして、ハイブリッド溶接モードを有するバッテリ併用型エンジン駆動溶接機の利点は、小型軽量にも拘らず大出力が得られることにある。可搬式のエンジン溶接機は、300Aクラスのディーゼルエンジン機と150Aクラスのガソリンエンジン機とに大別され、バッテリ併用型エンジン駆動溶接機は小型のガソリンエンジン機でありながら、バッテリの助力で大型のディーゼルエンジン機の能力を発揮することができる。
【0026】
図3に示した動作では、まず交流補助電源の電圧有無の判断を行う(ステップS11)。有れば、ステップS12によりバッテリ溶接機主電源の電圧有無を判断する。ブレーカ31(図1)がオフになっていて主電源電圧が無ければ、ステップS13によりエンジン溶接モードを選択し、溶接終了後にステップS11に戻る。
【0027】
一方、主電源の電圧が有れば、ステップS14に移行してコンタクタMCをオンとし、ステップS15によるハイブリッド溶接モードを選択する。ハイブリッド溶接モードでは、エンジン溶接機とバッテリ溶接機とを同時出力し、しかも溶接中断時にはバッテリBの充電を行い、バッテリの充電電力を回復させる。
【0028】
溶接終了後は、ステップS16により交流補助電源の電圧有無を判断し、有ればハイブリッド溶接モードを継続するが、無ければコンタクタMCをオフにしてステップS11に戻る。
【0029】
次にステップS11での判断で、交流補助電源の電圧が無い場合は、ステップS21に移行する。そして、商用電源の電圧有無を判断する(ステップS21)。商用電源の電圧が有れば、ステップS22に移行し、主電源の電圧有無を判断する。主電源の電圧が有れば、ステップS23によりコンタクタMCをオンしてステップS24に移行し、押しボタンスイッチがオンかどうかを判断する。そして、オンになればステップS25に移行してバッテリ溶接モード(充電あり)を選択する。この溶接モードでの溶接において、中断時間が停止タイマ(図示せず)による規定時間を超えるまでステップS26によりバッテリ溶接モードS25を継続する。そして、超えたらステップS28に移行してコンタクタMCをオフにし、ステップS11に戻る。
【0030】
また、作業者が溶接作業を終了して強制的にバッテリ溶接モードS25を終了する場合は、再び押しボタンを押し、これをステップS27により判断し、オンの場合はステップS28に移行してコンタクタMCをオフにし、ステップS11に戻る。
【0031】
ステップS11においては、交流補助電源の電圧がなくてステップS21に移行したところ、商用電源の電圧が無い場合は、ステップS31に移行する。そして、押しボタンスイッチがオンか否かを判断する。オンになると、ステップS32に移行してコンタクタMCをオンにしバッテリ溶接モード(充電なし)に移行する。
【0032】
この運転時に、溶接中断時間が規定値以上になるまではステップS33によるバッテリ溶接モードを継続する。一方、溶接中断時間が規定時間以上になるとコンタクタMCをオフにしてステップS11に戻る。
【0033】
また、作業者が溶接作業を終了して強制的にバッテリ溶接モードS33を終了する場合は、再び押しボタンを押し、これをステップS35により判断し、オンの場合はステップS36に移行してコンタクタMCをオフにし、ステップS11に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す説明図。
【図2】図1の実施例に用いられる電圧検出回路の構成を示す回路図。
【図3】図1の実施例の動作を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0035】
E エンジン、G 溶接機、B バッテリ,D ダイオード、R 抵抗、
C コンデンサ、PB 押しボタンスイッチ、PC フォトカプラ、
Ry リレー、MC コンタクタ、AC 商用電源、S 電圧信号、
11 制御整流器、12,36 直流リアクトル、21 インバータ、
22,31ブレーカ、32 充電トランス、33 制御整流器、
34 バッテリ溶接機制御装置、35 チョッパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン溶接機とバッテリ溶接機とを併用するバッテリ併用型エンジン駆動溶接機であって、前記エンジン溶接機の出力の一部を交流補助電源として利用し、さらにこの交流補助電源の一部を前記バッテリ溶接機のバッテリを充電するための電源として利用するものにおいて、
商用電源または前記交流補助電源から給電されて前記バッテリに充電する充電手段と、
前記補助電源の電圧があるとき出力信号を生じる第1の検出回路と、
前記バッテリを充電するための主電源電圧があるとき出力信号を生じる第2の検出回路と、
商用電源電圧があるとき出力信号を生じる第3の検出回路と、
バッテリ溶接モード押ボタンが押されたとき出力信号を生じる第4の検出回路とをそなえ、
前記第1および第2の検出回路の出力信号があるときハイブリッド溶接モードとし、前記第1の検出回路の出力信号のみがあるときはエンジン溶接モードとし、第1の検出回路の出力信号がなく第2ないし第4の検出回路の出力信号があるとき前記充電手段により充電しながら溶接するバッテリ溶接モードとし、前記第1の検出回路および前記第3の検出回路の出力信号がなく前記第4の検出回路の出力信号があるとき充電なしで溶接するバッテリ溶接モードとするバッテリ溶接機制御装置と
をそなえたことを特徴とするバッテリ併用型エンジン駆動溶接機。
【請求項2】
請求項1記載のバッテリ併用型エンジン駆動溶接機において、
前記バッテリ溶接機制御装置は、
前記バッテリ溶接モードにおける溶接中断時間が所定時間を経過したとき出力信号を形成する停止タイマをそなえ、
前記停止タイマの出力信号があると前記バッテリ溶接モードを停止するようにしたバッテリ併用型エンジン駆動溶接機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−26679(P2006−26679A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208251(P2004−208251)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000109819)デンヨー株式会社 (88)
【Fターム(参考)】