説明

バッテリ装置のヒステリシス低減システム

【課題】電池のヒステリシスを低減するバッテリ装置のヒステリシス低減システムを提供する。
【解決手段】車両の制動時に回生システム30から回生した電力を充電する電池Aと、電池Aとは種類が異なる電池Bと、スイッチSW1を有し、電池Aから電池Bへの充電を行う充電回路11と、電池Aの状態に応じて、スイッチSW1を制御するECU20とを備え、ECU20は、電池Aの回生受入性が悪い場合、スイッチSW1をオンとし、充電回路11を介して、電池Aから電池Bへの充電を行い、電池Aの回生受入性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池のヒステリシスを低減するバッテリ装置のヒステリシス低減システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのみで走行する電気自動車(EV)やモータ及びエンジンで走行するハイブリッド車(HEV、PHEV)等の電動車両には、蓄電池(二次電池;以降、電池と呼ぶ。)を複数直列に接続した駆動用のバッテリ装置が搭載されている。バッテリ装置の電池としては、通常、1種類の電池が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−029071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池は、充放電状態によってヒステリシスを持つため、回生を受け入れない状態がある。そのため、回生による電力を充電できない場合があり、その結果、車両の航続距離(外部からの電気や燃料の補給無しに走行する距離)が短くなってしまう。又、回生を受け入れない状態になると、回生の制限がかかるため、ブレーキを踏んだときの回生量が一定ではなかった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、電池のヒステリシスを低減するバッテリ装置のヒステリシス低減システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する第1の発明に係るバッテリ装置のヒステリシス低減システムは、
車両の制動時に回生した電力を充電する第1の電池と、
前記第1の電池とは種類が異なる第2の電池と、
第1のスイッチを有し、前記第1の電池から前記第2の電池への充電を行う第1の充電回路と、
前記第1の電池の状態に応じて、前記第1のスイッチを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1の電池の回生受入性が悪い場合、前記第1のスイッチをオンとし、前記第1の充電回路を介して、前記第1の電池から前記第2の電池への充電を行い、前記第1の電池の回生受入性を改善することを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決する第2の発明に係るバッテリ装置のヒステリシス低減システムは、
上記第1の発明に記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
前記第1の電池は、前記第2の電池と比較して、入出力特性が良い種類の電池とし、
前記第2の電池は、前記第1の電池と比較して、ヒステリシスが小さい種類の電池とすることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第3の発明に係るバッテリ装置のヒステリシス低減システムは、
上記第1又は第2の発明に記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
前記制御手段は、前記第1の電池への充電の後、前記第1の電池から未放電である場合、前記第1の電池の回生受入性が悪い場合とすることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第4の発明に係るバッテリ装置のヒステリシス低減システムは、
上記第1又は第2の発明に記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
前記制御手段は、前記第1の電池に所定の第1の電流値を所定の時間供給し、当該所定の時間の前後における前記第1の電池の電圧の変化を検出し、当該電圧の変化が所定の電圧変化値より大きい場合、つまり、充電抵抗が所定の充電抵抗値より大きい場合、回生受入性が悪い場合とすることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第5の発明に係るバッテリ装置のヒステリシス低減システムは、
上記第3又は第4の発明に記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
前記制御手段は、前記第1の電池の充電率が所定の第1の充電率以上である場合、又は、前記第1の電池の充電率が所定の第1の充電率以上であり、かつ、前記第1の電池の温度が所定の第1の温度以下である場合、所定の第2の電流値以上の電流を用いて、前記第1の電池から前記第2の電池への充電を行うことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第6の発明に係るバッテリ装置のヒステリシス低減システムは、
上記第1〜第5のいずれか1つの発明に記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
更に、第2のスイッチを有し、前記第2の電池から前記第1の電池への充電を行う第2の充電回路を設け、
前記制御手段は、前記第1の電池からの放電の後、前記第1の電池へ未充電である場合、前記第2のスイッチをオンとし、前記第2の充電回路を介して、前記第2の電池から前記第1の電池への充電を行うことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第7の発明に係るバッテリ装置のヒステリシス低減システムは、
上記第6の発明に記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
前記制御手段は、前記第1の電池の充電率が所定の第2の充電率以下である場合、又は、前記第1の電池の充電率が所定の第2の充電率以下であり、かつ、前記第1の電池の温度が所定の第2の温度以上である場合、所定の第3の電流値より小さい電流を用いて、前記第2の電池から前記第1の電池への充電を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1〜第4の発明によれば、第1の電池の回生受入性が悪い場合、第1の電池から第2の電池への充電を行うので、第1の電池の回生受入性を常に良くすることになり、回生による電力を第1の電池へ無駄なく充電することができ、航続距離を伸ばすことができる。又、ヒステリシスによる回生を受け入れない状態を防ぐことにより、ブレーキを踏んだときの回生量を一定にすることができる。
【0014】
第5の発明によれば、第1の電池の充電率が所定の第1の充電率以上である場合、又は、第1の電池の充電率が所定の第1の充電率以上であり、かつ、第1の電池の温度が所定の第1の温度以下である場合、所定の第2の電流値以上の電流を用いて、第1の電池から第2の電池への充電を行うので、第1の電池の入力特性のヒステリシスが解消されやすくなり、結果として、第1の電池の回生受入性を更に改善することができる。
【0015】
第6の発明によれば、第1の電池からの放電が行われた後であり、かつ、第1の電池への充電が行われる前の場合、第2の電池から第1の電池への充電を行うので、第1の電池の出力特性も常に良くすることができる。
【0016】
第7の発明によれば、第1の電池の充電率が所定の第2の充電率以下である場合、又は、第1の電池の充電率が所定の第2の充電率以下であり、かつ、第1の電池の温度が所定の第2の温度以上である場合、所定の第3の電流値より小さい電流を用いて、第2の電池から第1の電池への充電を行うので、第1の電池の出力特性のヒステリシスが解消されやすくなり、結果として、第1の電池の出力特性を更に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るバッテリ装置のヒステリシス低減システムを示す概略構成図である。
【図2】図1に示したバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおける制御を説明するフローチャートである。
【図3】図1に示したバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおける制御を説明するフローチャートであり、図2中のP点から分岐した部分のフローチャートである。
【図4】(a)、(b)は、図2、図3に示した制御で用いるマップである。
【図5】図2、図3に示した制御による充電(A→B)を示す図である。
【図6】図2、図3に示した制御による充電(B→A)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜図6を参照して、本発明に係るバッテリ装置のヒステリシス低減システムの実施形態を説明する。なお、本発明に係るバッテリ装置のヒステリシス低減システムは、電気自動車に限らず、ハイブリッド車等の電動車両にも適用可能である。
【0019】
(実施例1)
図1は、本実施例のバッテリ装置のヒステリシス低減システムを示す概略構成図であり、図2、図3は、図1に示したバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおける制御を説明するフローチャートであり、図4(a)、(b)は、図2、図3に示した制御で用いるマップであり、図5〜図6は、図2、図3に示した制御を説明する図である。
【0020】
本実施例のバッテリ装置のヒステリシス低減システムは、第1の電池Aと第2の電池Bを有するバッテリ装置10と、各電池A、Bの監視を行うと共に、後述する充電回路11(第1の充電回路)及び逆充電回路12(第2の充電回路)の制御を行うECU(Electronics Control Unit)20とを有している。バッテリ装置10には、回生電力を生成する回生システム30が接続されており、ECU20は、各電池A、Bの状態に応じて、後述する充電回路11及び逆充電回路12のスイッチSW1、SW2の制御を行い、電池A−B間での充放電を行い、ヒステリシスを低減するようにしている。回生システム30は、電気自動車の場合には発電機(又は駆動用モータ兼発電機)等が該当する。
【0021】
電池Aは、1つの蓄電池から構成してもよく、又、同種の蓄電池であれば、複数の蓄電池から構成してもよい。同様に、電池Bも、1つの蓄電池から構成してもよく、又、同種の蓄電池であれば、複数の蓄電池から構成してもよい。但し、電池Aと電池Bとは互いに異なる種類の蓄電池から構成しなければならない。具体的には、回生システム30と直接接続する電池Aとしては、ヒステリシスは大きいが、入出力特性が良いものを選択する。一方、後述する充電回路11及び逆充電回路12を介して、電池Aと接続する電池Bとしては、入出力特性は良くないが、ヒステリシスが小さい又は無いものを選択する。
【0022】
ヒステリシスは大きいが、入出力特性が良い電池Aとしては、以下に示すものがある。
(1)正極:各種酸化リチウム、負極:チタン酸リチウムの電池
(2)正極:リン酸鉄リチウム、負極:カーボンの電池
(3)ニッケル水素電池
(4)鉛蓄電池
その他に、オリビン構造(リン酸鉄等)を持つ活物質はヒステリシスがあると考えられる。
【0023】
一方、入出力特性は良くないが、ヒステリシスが小さい又は無い電池Bとしては、以下に示すものがある。
(1)正極:各種酸化リチウム、負極:カーボンの電池
(2)アルカリマンガン電池
【0024】
そして、バッテリ装置10において、電池Aは、回生システム30と直接接続されており、回生システム30からの回生電力は、電池Aに直接充電される。電池Bは、一方の極が充電回路11及び逆充電回路12を介して、電池Aの一方の極と接続されており、他方の極が共用線CLを介して、電池Aの他方の極と接続されており、充電回路11及び共用線CLを介して、電池Aから電池Bへ充電し、逆充電回路12及び共用線CLを介して、電池Bから電池Aへ充電する。つまり、電池Aと電池Bは、充電回路11、逆充電回路12及び共用線CLを介して、並列に接続されており、互いに充放電が可能な構成である。
【0025】
充電回路11は、充電回路11をオン/オフするスイッチSW1と、流れる電流の逆流を防止するダイオードDI1と、流れる電流量を調整する可変抵抗器VR1と、電流値を測定する電流計AM1とを有している。なお、電池Aの入力特性を良好に保つためには、電池Aから電池Bへ大きいパルス電流を送って、電池Bに充電する構成とすることが望ましく、例えば、充電回路11にパルス電流を生成するパルスジェネレータ等を設けるようにしてもよい。
【0026】
又、逆充電回路12は、逆充電回路12をオン/オフするスイッチSW2と、流れる電流の逆流を防止するダイオードDI2と、流れる電流量を調整する可変抵抗器VR2と、電流値を測定する電流計AM2と、電圧を上昇させる昇圧コンバータVCとを有している。駆動用のバッテリ装置10は、通常、高電圧としているが、昇圧コンバータVCを設けることにより、電池Bとしては、電池Aより数を減らして、低電圧としてもよい。
【0027】
ECU20は、電池A、Bの充放電状態、温度及び電圧を監視すると共に、電池A、Bの電圧に基づいて、SOC(State of Charge;充電率)を算出している。そして、充放電状態、温度、電圧及びSOCに応じて、スイッチSW1又はスイッチSW2のスイッチングを行うことにより、充電回路11又は逆充電回路12を選択し、電池Aから電池Bへの充電、又は、電池Bから電池Aへの充電を選択しており、このような制御を行うことにより、電池Aのヒステリシスを低減し、電池Aの回生受入性を常に良くするようにしている。
【0028】
ここで、図2、図3のフローチャート、図4(a)、(b)のマップ、図5〜図6の制御例を参照して、本実施例のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおける制御を説明する。なお、図4(a)は、電池Aにおいて、電池Aから電池Bへの充電を行うときのSOCを温度との関係から決定するマップであり、図4(b)は、電池Aにおいて、電池Bから電池Aへの充電を行うときのSOCを温度との関係から決定するマップである。
【0029】
電池Aの温度及び電圧を測定する(ステップS1)。
【0030】
電池Aへの充電(回生システム30から電池Aへの回生充電及び後述する電池Bから電池Aへの充電)の後、電池Aから未放電であるか確認し、電池Aへの充電後、未放電である場合、次のステップS3へ進み、そのような場合でなければ、制御を終了する(ステップS2)。つまり、ECU20は、電池Aの充放電状態を監視しており、電池Aへの充電後、未放電である場合、例えば、フラグを立てて、電池Aの回生受入性が悪い場合としている。
【0031】
一方、電池Aを実測して、その測定結果により、電池Aの状態を監視し、電池Aの回生受入性が悪い場合としてもよい。例えば、電池Aに所定の電流値(第1の電流値;一例として、10A)を所定の時間(一例として、5秒)供給し、当該所定の時間の前後における電池Aの電圧の変化を検出し、当該電圧の変化が所定の電圧変化値より大きい場合、つまり、充電抵抗が所定の充電抵抗値より大きい場合、例えば、フラグを立てて、回生受入性が悪い場合としてもよい。
【0032】
前回のスイッチング、つまり、スイッチSW1又はスイッチSW2のスイッチングから一定時間(一例として、1時間)経過しているか確認し、一定時間経過していれば、次のステップS4へ進み、一定時間経過していなければ、制御を終了する(ステップS3)。これは、頻繁にスイッチングを繰り返すこと、つまり、頻繁に充放電を繰り返すことを避けるためである。この一定時間は、電池の特性に合わせて設定すればよい。
【0033】
前回のスイッチングから一定時間経過していれば、測定した電池Aの電圧からSOCを算出し、算出した電池AのSOCが70%(第1の充電率)以上であれば、次のステップS5へ進み、70%未満であれば、ステップS12へ進む(ステップS4)。この70%は、一例となる数値ではあるが、電池Aから電池Bへの充電を開始するときのSOCの下限値となる。
【0034】
電池AのSOCが70%以上であれば、電池Bの電圧を測定する(ステップS5)。
【0035】
測定した電池Bの電圧からSOCを算出し、算出した電池BのSOCが80%以上であれば、制御を終了し、80%未満であれば、次のステップS7へ進む(ステップS6)。この80%は、一例となる数値であり、充電前において、電池Bへの過充電を避けるための判断値である。
【0036】
電池BのSOCが80%未満であれば、図4(a)に示すマップ1に基づいて、つまり、温度との関係に基づいて、電池Aのスイッチングを行うSOC(X%)を決定する(ステップS7)。例えば、測定した電池Aの温度が25℃であれば、電池Aのスイッチングを行うSOCをX=90%に決定する。このX%は、一例として、上述したように、第1の充電率が70%である場合には、70%より大きい範囲で設定される。
【0037】
決定した電池AのSOC(X%)を用い、算出した電池AのSOCがX%以下であれば、制御を終了し、X%を越えれば、次のステップS9へ進む(ステップS8)。
【0038】
電池AのSOCがX%を越えれば、充電回路11へのスイッチングを行い、電池Aから電池Bへの充電を行う(ステップS9)。電池AのSOCがX%を越えた領域が、回生可能ではあるが、その温度においては、回生受入性が悪い領域であり、本実施例では、この領域での回生受入性を改善するために、電池Aから電池Bへ電力を移動している。従って、図5に示すように、スイッチSW1をオンとすることにより、充電回路11と共用線CLを介して、電池Aと電池Bを接続し、C2で示す充電経路により、電池Aから電池Bへの充電を行っている。
【0039】
なお、電池Aは、高SOC(一例として、上述したSOC70%(第1の充電率)以上のとき)、低温(一例として、40℃(第1の温度)以下のとき)である場合に、大電流(一例として、10A(第2の電流値)以上のとき)で放電を行うと、つまり、電池Aから電池Bへの充電を行うと、入力特性のヒステリシスが解消されやすくなり、結果として、入力特性がより改善される。一方、上記条件、即ち、高SOC、低温、大電流を満たしていなくても、上述したように、電池Aの充電後に放電を行っても、つまり、電池Aの充電後に電池Aから電池Bへの充電を行っても、入力特性のヒステリシスが改善されて、入力特性が改善されることになる。
【0040】
電池BのSOCが90%以上であれば、制御を終了し、90%未満であれば、ステップS11へ進む(ステップS10)。つまり、電池Aから電池Bへの充電は、電池BのSOCが90%以上になるまで行われる。この90%は、一例となる数値であり、充電中において、電池Bへの過充電を避けるための判断値である。
【0041】
電池AのSOCが50%未満であれば、制御を終了し、50%以上であれば、ステップS9へ戻る(ステップS11)。つまり、電池Aから電池Bへの充電は、電池AのSOCが50%未満になるまで行われる。この50%は、一例となる数値ではあるが、放電中において、電池Aの過放電、出力特性の悪化を避けるための下限値となる。又、放電により電池Aの容量が減りすぎると、走行ができなくなってしまうため、走行のための最低限の容量を確保する意味もある。
【0042】
ステップS4において、算出した電池AのSOCが70%未満であれば、更に、電池Aからの放電(電池Aから駆動用モータへの放電及び前述した電池Aから電池Bへの放電)の後、電池Aへ未充電であるか確認し、電池Aからの放電後、未充電である場合、次のステップS13へ進み、そのような場合でなければ、制御を終了する(ステップS12)。つまり、ECU20は、電池Aの充放電状態を監視しており、電池Aの放電後、未充電である場合、例えば、フラグを立てるようにしている。
【0043】
電池AのSOCが30%(第2の充電率)以下かどうか確認し、電池AのSOCが30%以下であれば、次のステップS14へ進み、30%を越えるときは、制御を終了する(ステップS13)。この30%は、一例となる数値ではあるが、電池Bから電池Aへの充電を開始するときのSOCの上限値となる。
【0044】
電池AのSOCが30%以下であれば、電池Bの電圧を測定する(ステップS14)。
【0045】
測定した電池Bの電圧からSOCを算出し、算出した電池BのSOCが10%以下であれば、制御を終了し、10%を越えるときは、次のステップS16へ進む(ステップS15)。この10%は、一例となる数値であり、電池Bからの過放電を避けるための判断値である。
【0046】
電池BのSOCが10%を越えるときは、図4(b)に示すマップ2に基づいて、つまり、温度との関係に基づいて、電池Aのスイッチングを行うSOC(Y%)を決定する(ステップS16)。例えば、測定した電池Aの温度が25℃であれば、電池Aのスイッチングを行うSOCをY=10%に決定する。このY%は、一例として、上述したように、第2の充電率が30%である場合には、30%より小さい範囲で設定される。
【0047】
決定した電池AのSOC(Y%)を用い、算出した電池AのSOCがY%以上であれば、制御を終了し、Y%未満であれば、次のステップS18へ進む(ステップS17)。
【0048】
電池AのSOCがY%未満であれば、逆充電回路12へのスイッチングを行い、電池Bから電池Aへの充電を行う(ステップS18)。ここでは、電池AのSOCが低い場合、逆に、電池Bから電池Aへの電力の移動を行っている。従って、図6に示すように、スイッチSW2をオンとすることにより、逆充電回路11と共用線CLを介して、電池Aと電池Bを接続し、C3で示す充電経路により、電池Bから電池Aへの充電を行っている。
【0049】
なお、電池Aは、低SOC(一例として、上述したSOC30%(第2の充電率)以上のとき)、高温(一例として、40℃(第2の温度)以上のとき)である場合に、低電流(一例として、10A(第3の電流値)以下のとき)で充電を行うと、つまり、電池Bから電池Aへの充電を行うと、出力特性のヒステリシスが解消されやすくなり、結果として、出力特性がより改善される。一方、上記条件、即ち、低SOC、高温、低電流を満たしていなくても、上述したように、電池Aの放電後に充電を行っても、つまり、電池Aの放電後に電池Bから電池Aへの充電を行っても、出力特性のヒステリシスが改善されて、出力特性が改善されることになる。
【0050】
電池BのSOCが10%以下であれば、制御を終了し、10%を越えるときは、ステップS20へ進む(ステップS19)。つまり、電池Bから電池Aへの充電は、電池BのSOCが10%以下になるまで行われる。この10%は、一例となる数値であり、電池Bからの過放電を避けるための判断値である。
【0051】
電池AのSOCが50%を越えるときは、制御を終了し、50%以下であれば、ステップS18へ戻る(ステップS20)。つまり、電池Bから電池Aへの充電は、電池AのSOCが50%を越えるまで行われる。この50%は、一例となる数値ではあるが、充電中において、電池Aへの過充電、入力特性の悪化を避けるための上限値となる。
【0052】
本実施例では、以上の制御を定期的に(例えば、5分おきに)実施しており、これにより、電池A、Bの状態に基づいて、電池Aの電力を電池Bへ移動しておき、これにより、電池Aのヒステリシスを低減し、電池Aの回生システム30からの回生受入性を常に良くしている。その結果、回生された電力を有効に充電し、そして、使用することになり、車両の航続距離が長くなる。
【0053】
又、上述した制御により、電池Aの回生受入性を常に良くしておくので、回生の制限を抑制することができ、その結果、ブレーキを踏んだときの回生量を一定とすることができる。なお、回生システム30からの回生が行われているときには、図1に示すように、スイッチSW1、SW2を共にオフとし、C1で示す充電経路により、電池Aへの充電を行っている。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るバッテリ装置のヒステリシス低減システムは、電気自動車に搭載された駆動用バッテリ装置に好適なものであるが、電気自動車に限らず、ハイブリッド車等の電動車両にも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 バッテリ装置
11 充電回路
12 逆充電回路
20 ECU
30 回生システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制動時に回生した電力を充電する第1の電池と、
前記第1の電池とは種類が異なる第2の電池と、
第1のスイッチを有し、前記第1の電池から前記第2の電池への充電を行う第1の充電回路と、
前記第1の電池の状態に応じて、前記第1のスイッチを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1の電池の回生受入性が悪い場合、前記第1のスイッチをオンとし、前記第1の充電回路を介して、前記第1の電池から前記第2の電池への充電を行い、前記第1の電池の回生受入性を改善することを特徴とするバッテリ装置のヒステリシス低減システム。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
前記第1の電池は、前記第2の電池と比較して、入出力特性が良い種類の電池とし、
前記第2の電池は、前記第1の電池と比較して、ヒステリシスが小さい種類の電池とすることを特徴とするバッテリ装置のヒステリシス低減システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
前記制御手段は、前記第1の電池への充電の後、前記第1の電池から未放電である場合、前記第1の電池の回生受入性が悪い場合とすることを特徴とするバッテリ装置のヒステリシス低減システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
前記制御手段は、前記第1の電池に所定の第1の電流値を所定の時間供給し、当該所定の時間の前後における前記第1の電池の電圧の変化を検出し、当該電圧の変化が所定の電圧変化値より大きい場合、回生受入性が悪い場合とすることを特徴とするバッテリ装置のヒステリシス低減システム。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
前記制御手段は、前記第1の電池の充電率が所定の第1の充電率以上である場合、又は、前記第1の電池の充電率が所定の第1の充電率以上であり、かつ、前記第1の電池の温度が所定の第1の温度以下である場合、所定の第2の電流値以上の電流を用いて、前記第1の電池から前記第2の電池への充電を行うことを特徴とするバッテリ装置のヒステリシス低減システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
更に、第2のスイッチを有し、前記第2の電池から前記第1の電池への充電を行う第2の充電回路を設け、
前記制御手段は、前記第1の電池からの放電の後、前記第1の電池へ未充電である場合、前記第2のスイッチをオンとし、前記第2の充電回路を介して、前記第2の電池から前記第1の電池への充電を行うことを特徴とするバッテリ装置のヒステリシス低減システム。
【請求項7】
請求項6に記載のバッテリ装置のヒステリシス低減システムにおいて、
前記制御手段は、前記第1の電池の充電率が所定の第2の充電率以下である場合、又は、前記第1の電池の充電率が所定の第2の充電率以下であり、かつ、前記第1の電池の温度が所定の第2の温度以上である場合、所定の第3の電流値より小さい電流を用いて、前記第2の電池から前記第1の電池への充電を行うことを特徴とするバッテリ装置のヒステリシス低減システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−31248(P2013−31248A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164002(P2011−164002)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】