説明

バナジウムを含まないディーゼル用酸化触媒及びその製造方法

本発明は、COの酸化に対して優れた活性と選択性を有し、NOの酸化に対する活性が抑制された触媒含有部品の製造方法に関する。本発明は、請求した方法によって製造した触媒にも関する。さらに、本発明は、請求した触媒を含む排出制御システムに関する。製造方法は、下記のステップを含む:a)担体材料に白金化合物を含浸処理する、b)白金化合物の分解点未満で、含浸処理された材料を乾燥する;c)含浸処理された担体材料をCO及び不活性ガスを含むガス流中にて焼成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COの酸化に対して優れた活性と選択性を有し、NOの酸化に対する活性が抑制された触媒の製造方法に関する。本発明は、本発明のその方法を用いて製造した触媒にも関する。そして、本発明は、本発明の触媒を含む触媒含有部品を備えた排気ガス浄化システムを指向している。
【背景技術】
【0002】
燃焼機関の排気ガス浄化における初期の段階では、ガソリンエンジンからの排気ガスのみが三元触媒(TWC)によって浄化されていた。窒素酸化物は、還元力を有する炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)によって還元される。このため、ガソリンエンジンは、常にほぼ理論空燃比の条件下(λ=1)において動かされる。このような条件は、そのように必ずしも正確に確保されるわけではなく、その結果、排気ガスにおける条件は、λ=1の付近で常に変動する。換言すると、触媒は、酸化性ガスの雰囲気又は還元性ガスの雰囲気に交互にさらされる。
【0003】
約15年間、触媒によってディーゼルエンジンからの排気ガスを後処理する努力もされてきた。ディーゼルエンジンからの排気ガスは、大気汚染物質としての一酸化炭素、未燃焼炭化水素、窒素酸化物、及びスス粒子を含む。未燃焼炭化水素は、パラフィン類、オレフィン類、アルデヒド類、及び芳香族化合物類を含む。ガソリンエンジンと異なり、ディーゼルエンジンは、常に過剰量の酸素の存在下で動いている。この結果、触媒は、決して還元的条件下にさらされない。これにより、下記のような結果を生じる。
1.触媒材料の酸素貯蔵能は、TWCを用いたときと同じような役割を果たさない。
2.貴金属粒子は、再び酸化状態0の金属へと必ずしも還元されるわけではない。
3.排気ガス中に存在する炭化水素(HC)及びCOと共に過剰量の酸素があるときに、窒素酸化物が完全には還元されない。
4.炭化水素及びCOは、酸素及びNOxの両方によって酸化され得る。
【0004】
ディーゼルの排気ガスは、ガソリンエンジンからの排気ガスよりかなり低温であり、3〜10容量%濃度の酸素を含有していることから、平均した触媒の触媒活性は、HC及びCOを酸化するのに必ずしも十分なものでないこととなる。部分負荷運転においては、ディーゼルエンジンの排気ガス温度が、100〜250℃の間の範囲にあり、全負荷運転のみにおいて、その温度が、550〜650℃の最高温度に達する。一方、ガソリンエンジンの排気ガス温度は、部分負荷運転において400〜450℃の間であり、全負荷において1000℃にまで上昇し得る。それゆえ、できるだけ低いCOライトオフ温度を達成することが目標となる。
【0005】
過去数年間においては、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)が急速に市場へ導入されてきた。このフィルターは、通常、DOCより下流側に取り付けられる。ススは、DPFにおいて捕集され酸化される。ススの酸化は、酸素よりもNO2による方がはるかに可能である。従って、DOCより下流側のガス流にNO2が多く含まれているほど、ススが継続的に反応する。以上のように、過去数年間においては、DOCにてできる限り多くのNOをNO2へ酸化するという動向があった。しかしながら、NO2は、NOよりかなり毒性の強いガスであり、その結果、このことは、非常に消極的な対応により窒素酸化物の排出管理自体を強めるという変化を生んでいる。DOCによってNO2濃度が増加していることも既に都心において検出可能である。従って、動向は、NOからNO2への酸化を制限することへ回帰しつつある。
【0006】
窒素酸化物の排出を大幅に減少させることは、欧州基準VI(Euro VI standard)によっても規定されている。これを達成することは、NOx補足触媒、又は、アンモニアによる触媒の選択的還元によってのみ可能である。
【0007】
SCR(選択的触媒還元)は、燃焼エンジンや発電所の排気ガスからの窒素酸化物を選択的な触媒によって還元することを意味する。窒素酸化物NO及びNO2(通常、NOxと称される)のみが、反応のために通常NH3(アンモニア)と混合され、SCR触媒によって選択的に還元される。NO/NO2の比が1:1に近づくほど、SCR反応が効率的に進む。無害物質である水及び窒素だけがSCR反応において反応生成物として生じる。
【0008】
圧縮ガス用容器内においてアンモニアを輸送することは、動力車における使用において安全性上のリスクである。それゆえ、車両の排気ガスシステムにおいて、分解してアンモニアを生じるアンモニアの前駆体化合物が、通例使用されている。例えば、約32.5%の尿素の共融水溶液である商品名「AdBlue」の使用が、これに関して知られている。他のアンモニアの供給源としては、例えば、カルバミン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、又は尿素ペレットがある。
【0009】
しかしながら、多くのさらなる部品や制御システムが必要であるため、そのようなSCR触媒を組み込むことが困難であるという問題、又は、該組み込みが非常に高いコストにつながるという問題がある。従って、現在、微粒子捕集フィルターは、ディーゼル車においてSCR触媒より下流側に据え付けられており、微粒子の酸化にとって必要のない過剰量のNO2が排気ガスシステムから出て、環境中に排出される。従って、生成されるNO2の量をより正確に設定できることは、有利な点となる。
【0010】
NOからNO2への酸化は、従ってDPFの最適な効率のために必要な上流側の酸化触媒において起こる。
【0011】
従って、ディーゼルエンジンにおける触媒的な排気ガス浄化の基礎となるものは、疑いもなく、CO及びHCに対して十分な酸化作用を及ぼす上流側の酸化触媒である。これは、例えばCOライトオフ温度を減少させることにより達成される。しかしながら、NO酸化は、できるだけNO2を出さないようにするため、抑制される傾向にあるべきである。一方では、微粒子捕集フィルター(後に続くSCR触媒なしで)に十分なNO2が供給されるように、できるだけ多くのNO2が生成されるべきである。
【0012】
先行技術(例えば特許文献1を参照)においては、担体材料としてのTiO2と活性触媒成分としてのV25とを含む触媒がNOからNO2への酸化に対して比較的低い活性を有することが知られている。しかしながら、バナジウムは、毒性を有するものであり、排気ガスシステムを経て環境中に放出され得る。しかも、バナジウムは、CO酸化に対する活性をも減少させるものであり、従って、斯かる理由でも好ましいものではない。
【0013】
非特許文献1においては、例えば酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムといったとりわけPt(II)と反応性が低い担体材料がCOの酸化のための非常に低いライトオフ温度を可能にすることが明らかにされている。アルミニウムのBET表面積が大きいという理由により、好ましくは酸化アルミニウムがDOCの利用のために用いられる。
【0014】
可能な限りCOのライトオフ温度を低下させる1つの方法が、Umicoreからの特許文献2において把握できる。特許文献2には、Al/Si混合酸化物(5%Siが最も良好)上におけるPt含有DOC触媒が記載されている。
【0015】
+及びNa+ゼオライトを使用したさらなる改良が特許文献3に記載されており、COのライトオフ温度が約150℃になることが既に達成されている。
【0016】
さらなる改良が特許文献4に記載されており、Ptの平均酸化状態が2.5未満であり非常に微細に分散されたPt粒子が、火炎への噴射による焼成によって生じることが記載されている。燃焼排気ガスがCO、窒素酸化物、及び残余炭化水素などの様々な種類の成分を含むことを覚えておくべきである。加えて、燃焼排気ガスは、燃焼態様の影響を受けて異なる量の酸素を含みもする。従って、混合ガスは、還元性又は酸化性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,157,007 A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第706817 A1号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第800856 B1号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1129764 B1号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】SAE 2005/01−0476(Rhodia)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
白金前駆体を火炎中に噴射することによって結果としてCO酸化に関して優れた活性を有する触媒を得ることになるが、NOからNO2への酸化に関する酸化活性は、斯かる方法によって制御することができない。従って、COのライトオフ温度をできるだけ低くする触媒への要望があり、同時に、NOからNO2への酸化の低い活性及び選択性への要望が依然としてある。
【0020】
それゆえ、本発明の課題は、そのような触媒を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、用いた触媒のCO変換率を示す。
【図2】図2は、用いた触媒のプロピレン(炭化水素、HC)の変換率を示す。
【図3】図3は、NOからNO2への酸化物の収量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
課題は、次のステップを有する、触媒の製造方法によって達成される。
(a)担体材料に白金化合物を含浸させる。
(b)白金化合物の分解点未満で含浸処理した担体材料を乾燥させる。
(c)CO及び不活性ガスを含むガス流中にて含浸処理された担体材料を焼成する。
【0023】
不活性ガスとして、好ましくはN2、He、Ne、又はArが使用され、特に好ましくはN2が使用される。
【0024】
ガス流は、ガス流の全容積に対して、好ましくは0.5〜3容量%のCOを含み、より好ましくは1容量%のCOを含む。それゆえ、ガス流は、ガス流の全容積に対して、好ましくは97〜99.5容量%の不活性ガス、特にN2を含み、より好ましくは99容量%の不活性ガスを含む。
【0025】
驚くべきことに発見されたこととしては、白金化合物を含浸させた担体材料を、大半をしめる不活性ガス、特にN2と、非常に小割合のCOとを含むガス流中にて加熱することによって、COからCO2への高い酸化活性を示し、しかし同時にNOからNO2への酸化に関して非常に低い活性及び選択性を有する触媒を得る結果となることである。このような作用は、特にSCR触媒がなく下流側にDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)が後に続く、具体的にはディーゼル酸化触媒(DOC)としての使用にとって、非常に望ましいものである。
【0026】
より好ましくは、含浸処理後の担体材料の焼成(第1の焼成)は、10分間以内、さらに好ましくは6分間以内、特に好ましくは5分間以内の加熱により行う。焼成温度は、好ましくは400〜650℃、特に好ましくは450〜600℃である。そして、さらなる焼成(第2の焼成)は、必要であれば短い休止時間をあけた後に、10〜40分間、好ましくは20分間にわたって、同じ条件下にて行う。
【0027】
本発明においては、含浸処理され乾燥された担体材料が薄層で又は微細に分散されて存在することが好ましい。これにより、熱エネルギーが焼成中に最適に使用され、従って、完全な焼成が10分間未満の短い時間で行われることが確保される。
【0028】
本発明の好ましい実施形態においては、それゆえ、含浸処理され乾燥された担体材料は、焼成の前に触媒支持体に塗布される。特に好ましくは、含浸処理され乾燥された担体材料は、ウォッシュコート塗料の態様で触媒支持体に塗布され、そして白金化合物の分解温度未満にて再び乾燥される。
【0029】
含浸処理された担体材料の乾燥は、本発明において、60〜100℃、より好ましくは70〜90℃、最も好ましくは80℃にて行う。しかしながら、白金化合物は異なる分解点を有するため、それに従って温度が適用されることから、用いられる白金化合物によってその温度が変わる。乾燥は、好ましくは減圧下において、特に好ましくは高真空下において行う。
【0030】
含浸処理のために、貴金属(Pt)は、例えば塩化物塩、硝酸塩、又は硫酸塩などの塩の溶液として通常存在する。一般的に、白金の通常の塩及び錯塩の全て、例えば、ヘキサクロロ白金酸、テトラクロロ白金酸、ジニトロジアミン白金(II)、テトラアミン白金(II)クロライド、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウム、ジクロロ(エチレンジアミン)白金、硝酸テトラアンミン白金(II)、テトラアンミン白金(II)水酸化物、メチルエタノールアミン白金(II)水酸化物、硝酸白金、ヘキサヒドロキソ白金エタノールアミン(エタノールアミン白金)及びその類似物が適当である。ヘキサヒドロキソ白金エタノールアミン(PtEA)が特に好ましい。
【0031】
金属酸化物又は混合金属酸化物が好ましくは担体材料として用いられる。金属酸化物又は混合金属酸化物は、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、酸化ジルコニウム、酸化チタン、Al/Si混合酸化物からなる群より選ばれるか、又は、それらの組み合わせである。
【0032】
触媒支持体をコーティングするために必要なコーティング技術は、当業者によって知られている。従って、例えば含浸され乾燥された金属酸化物又は混合酸化物は、水性の塗料分散液中にて処理される。斯かる分散液には、例えばシリカゾルなどの結合剤を加えることができる。分散液の粘度は、適当な添加剤によって設定され、結果として、必要量の塗料を1回の作業工程によって流路の壁面に塗布することが可能になる。これが可能でない場合には、塗布が数回繰り返され、新たに塗布された各塗料が中間乾燥処理により固定される。そして、最終的に塗料は、上述した温度範囲内において10分間未満、好ましくは6分間未満、特に好ましくは5分間未満にて焼成(第1の焼成)される。次に、第2の焼成ステップは、必要であれば短い休止時間をあけた後、10〜40分間、好ましくは20分間にわたって、同じ条件下にて行う。
【0033】
ディーゼルエンジンの排気ガスの浄化のためには、触媒支持体の容積に対して50〜500g/lの塗布量が好ましい。触媒成分は、触媒的に活性な成分が約0.01〜7g/l、好ましくは2〜4g/lの濃度で、金属酸化物に存在するように調整されることが好ましい。
【0034】
金属製若しくはセラミック製のモノリス体、不織布、又は金属発泡体が、触媒支持体として用いられ得る。当業者に知られた他の触媒成形体又は触媒支持体も、本発明において適当なものである。ウォッシュコート塗料によって提供された平行な開孔通路を複数有する金属製若しくはセラミック製のモノリス体が特に好ましい。これを利用して、ウォッシュコート懸濁液による、均一であって、特に薄い塗膜が確保され、従って、焼成が援助される。
【0035】
金属製のハニカム体は、しばしばシート状金属又は金属箔から形成される。ハニカム体は、例えば、構造化されたシート又は箔の層の配置を変えることにより作製される。好ましくは、これらの配置は、波形状のシートと平坦なシートとを交互に置いた1層で構成され、波形が、例えば、正弦曲線状、台形状、Ω字状、Z字状に形成され得る。適当な金属製のハニカム体及びそれらの製造方法は、例えば、EP 0 049 489 A1又はDE 28 56 030 A1に記載されている。
【0036】
触媒支持体の分野においては、金属製ハニカム体は、比較的急速に加熱されるという利点を有しており、従って、金属基材に基づいた触媒支持体は、通常、低温始動条件下においてより良好な反応挙動を示す。
【0037】
ハニカム体は、好ましくは30〜1500cpsi、より好ましくは200〜600cpsi、特に400cpsiのセル密度を有する。
【0038】
本発明の触媒が塗布される触媒支持体は、いかなる金属又は合金を利用しても形成され、また、例えば押出、金属箔の巻回、積層、又は折り重ねによって作製される。排気ガス浄化の分野においては、主な構成成分が鉄、クロム、及びアルミニウムである温度耐性の合金が知られている。内部における突起の有無にかかわらず排気ガスが撹拌されて自由に流れるモノリス状の触媒支持体、又は、大きな内部表面積を有し本発明の触媒が非常によく吸着する金属発泡体は、本発明の触媒のために好ましい。しかしながら、金属箔に割れ目、孔、目打ち、及び押し付け跡がある触媒支持体も用いられ得る。
【0039】
同様に、セラミック材料で作製された触媒支持体を用いることができる。セラミック材料は、コーディエライト、ムライト、又はα−アルミナといった表面積の小さい不活性材料であることが好ましい。しかしながら、使用される触媒支持体は、γ−アルミナといった表面積の大きな担体材料で構成されたものであってもよい。
【0040】
例えば金属製細孔発泡材料などの金属発泡体も、触媒支持体として用いることができる。本発明の範囲内において、“金属製細孔発泡材料”との用語は、必要であれば添加物を含み互いに管路によってつながった複数の細孔を有し金属又は合金によって作られた発泡材料を意味するものであり、その結果、例えばガスが発泡材料を通って導かれることとなる。
【0041】
金属製細孔発泡材料は、細孔及び空洞を有するため非常に密度が小さいが、十分な剛性及び強度を有している。金属発泡体の製造は、例えば、金属粒子及び金属水素化物を用いて行われる。両方の粒子は、通常、共に混合され、そして、加熱プレス又は押出により、成形した材料へと圧縮される。成形した材料は、次に、金属の融点を超える温度へ加熱される。金属水素化物は、水素ガス及び混合泡を放出する。
【0042】
しかしながら、それでもなお、例えば、固体成分を加えることにより予め発泡性にされた溶融金属の中にガスを吹き込むといった、金属発泡体を製造できる他の可能性がある。例えばアルミニウム合金においては、10〜20容量%の炭化ケイ素又は酸化アルミニウムが、安定化のために加えられる。さらに、10ppi〜約50ppiの細孔直径を有する金属細孔発泡構造を特別な精密鋳造技術によって作ることができる。
【0043】
本発明のさらなる目的物は、本発明の方法を使用して得ることができる触媒である。斯かる触媒は、CO(HC)の酸化に関する非常に優れた活性及び選択的酸化能と、NOの酸化に関する低い活性及び選択性とによって特徴付けられる。
【0044】
上記の触媒は、それゆえ酸化触媒として用いることができる。具体的には、酸化触媒は、CO(及びHC)の選択的酸化のために用いられる。
【0045】
触媒は、触媒支持体上に、好ましくは金属製又はセラミック製のモノリス成形体、不織布、又は金属発泡体上に、コーティング物として存在することが好ましい。
【0046】
本発明の範囲には、本発明の触媒を含む触媒含有部品も含まれる。それゆえ、斯かる触媒含有部品は、触媒が設置された筺体を備えている。筺体には、処理される排気ガスのための吸気口及び排気口がある。
【0047】
触媒含有部品(又は本発明の触媒)は、排気ガスシステムにおける部品として用いることができる。本発明の好ましい実施形態においては、触媒含有部品(本発明の触媒)は、ディーゼル微粒子捕集フィルターより上流側に設置される。NOからNO2への酸化における触媒の低い活性によって、例えば、微粒子捕集フィルターに確実に十分なNO2が供給されてスス粒子が酸化され、NO2自体が減少する。その結果、環境中に放出され得る過剰のNO2が残されることは、ほとんどない。このようにして、下流側におけるSCR触媒を省くことができ、コストを抑制することができる。
【0048】
従って、本発明の目的物は、本発明の触媒、さらにディーゼル微粒子捕集フィルターを含む排気ガスシステムでもある。ディーゼル微粒子捕集フィルターは、本発明の触媒より下流側に配置される。排気ガスシステムは、SCR触媒を含まないことが好ましい。
【0049】
本発明は、実施例を用いてさらに詳細に記載されているが、本実施例が発明の範囲を制限するものとして見なされない。さらに参照例が図1〜3に示されている。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
1.含浸処理
まず、ランタンにより安定化された酸化アルミニウム(製品名「Puralox SCF a-140 L3」Sasol社製)の水吸収量を、粉体の秤量、水中での懸濁、ろ過、そして湿潤状態での再度の秤量によって測定した。その量は、50.18質量%であった。
プラネタリーミキサー中において、300gの乾燥したPuralox粉体に対して、撹拌しつつ、エタノールアミン白金(ヘキサヒドロキソ白金エタノールアミン)の13.59%溶液の110.4gを滴下して徐々に加えた。粉体は、真空乾燥棚において80℃にて2日間乾燥させ、その結果、絶乾した粉体には、5質量%の白金が含まれることになる。
【0051】
2.ウォッシュコートの製造、塗布
この真空乾燥粉体の500g(含浸処理の2回分から)に2500gの水を継ぎ足し、
製品名「Ultra-Turrax」撹拌機により粉砕処理し、そしてビーズミル(4000 rpm、1.2mm ZrO2ビーズ)により粉砕処理した。
このウォッシュコートを400−cpsiのコーディエライトハニカムに、浸漬及び吹きつけによって塗布した。そして、いずれの場合でもハニカムを真空乾燥棚において80℃にて再び乾燥させた。
真空下において80℃にて乾燥することは、必ずしも完全に行う必要がないことから、まず、60g/lのウォッシュコートをハニカムに充填することを塗布の繰り返しによって行った。酸化アルミニウムが乾燥すると、白金が3.0g/l充填されたことに相当する。同様にして連続して塗布され真空乾燥されただけのハニカムを、次に500℃にて3時間焼成し、白金含有量を分析(蒸解法及びICP分析)によって測定した。このハニカム(直径3cm、長さ8.8cm)は、3.68gのウォッシュコートで塗布され、33.4gであった。Pt含有量が5質量%であることから、ハニカムは、完全に乾燥されると0.55質量%のPtを含むこととなる。3.68gのウォッシュコートが完全に乾燥されておらず未だに水を含んでいるため、0.44質量%の白金が分析から検出された。
ハニカムにおいて3.5g/lの白金が存在するはずであるため、どれだけの白金がハニカム上に塗布されているかを算出するために、真空乾燥後のハニカムの質量、及び、焼成後のハニカムの質量、及び、白金の含有量を使用した。ハニカム容量に対して3.5gPt/lを最終的に得るために、80℃で真空乾燥された絶乾でないハニカムがどれだけの質量を有していなければならないかを計算するために、既にハニカム上にある白金量と、真空乾燥後のウォッシュコート充填量とを用いることができた。続いて、ハニカムはこの質量になるまで塗布され、その結果、最終的には、各ハニカムは、ハニカム容量に対して白金含有量が3.5g/lであった。
【0052】
3.窒素中に1容量%のCOを含む混合ガスの存在下における真空乾燥したハニカムの焼成
塗布によりコートされたハニカムを、封入のためにセラミック繊維の布を使い、石英ガラス管に入れた。窒素ガス中に1容量%COを含む混合ガスを焼成装置に入れて、触媒を覆った。石英ガラス管の前には、ハニカムの前の混合ガスを490℃まで直ちに急速に加熱する加熱装置があった。石英ガラス管の周囲には、IRの放射によりハニカムを急速に加熱することもできるIRオーブンがあった。
この構造において、窒素中に1容量%のCOを含むガス流を、ハニカムの前で室温から450℃まで50秒間のうちに加熱し、そしてさらに、PID制御器によって490℃までさらに1分間のうちに加熱した。同時に、IRオーブンによる100℃/分の600℃への加熱を開始した。ハニカムにおける熱電温度計を使った測定を、ハニカムにおいて最後に500℃の温度で行った。この温度には、6分間で達した。これらの条件下において、この6分間の後、490℃のガス吸入温度で且つ600℃のIRオーブン温度でさらに20分間焼成を続けた。
【0053】
(比較例1)
1.含浸処理
まず、ランタンで安定化された酸化アルミニウムの水吸収量を、粉体の秤量、水への分散、ろ過、及び湿潤状態での再度の秤量によって測定した。その量は、50.18質量%であった。
プラネタリーミキサー中において、400gの乾燥したPuralox粉体に対して、撹拌しつつ、エタノールアミン白金(ヘキサヒドロキソ白金エタノールアミン)の13.87%の144.2gを滴下して徐々に加えた。粉体は、乾燥器において80℃にて3時間乾燥させた。そして、粉体を焼成オーブン中で空気中にて500℃にて3時間(加熱速度2℃/分)焼成した。
【0054】
2.ウォッシュコートの製造、塗布
既に焼成されたこの粉体の140gに700gの水を継ぎ足し、製品名「Ultra-Turrax」攪拌機により粉砕処理し、そしてビーズミル(4000 rpm、1.2mm ZrO2ビーズ)により粉砕処理した。
このウォッシュコートを400−cpsiのコーディエライトハニカムに浸漬及び吹きつけによって塗布した。そして、いずれの場合でもハニカムを再び乾燥させ、500℃にて3時間焼成した。
この塗布は、70g/lのウォッシュコートがハニカムに充填されるまで繰り返し行った。粉体が5質量%の白金含有量を有していることから、これは、ハニカムも3.5g/lの白金含有量を有していることを意味している。
【0055】
(比較例2)
1.エタノールアミン白金を含浸させ真空乾燥させたハニカムを実施例1に記載されたようにして製造した。
2.空気中における真空乾燥したハニカムの焼成。
塗布によりコートされたハニカムを、封入のためにセラミック繊維の布を使い、石英ガラス管に入れた。
焼成装置において、空気を入れて触媒を覆った。
石英ガラス管の前には、ハニカムの前の空気を490℃まで直ちに急速に加熱する加熱装置があった。石英ガラス管の周囲には、IRの放射によりハニカムを急速に加熱することもできるIRオーブンがあった。
この構造において、空気流を、ハニカムの前で室温から450℃まで50秒間のうちに加熱し、そしてさらに、PID制御器によって490℃の吸入温度までさらに1分間のうちに加熱した。同時に、IRオーブンによる100℃/分の600℃への加熱を開始した。従って、ハニカムにおける熱電温度計を使った測定を、ハニカムにおいて最後に500℃の温度で行った。この温度には、6分間で達した。これらの条件下において、この6分間の後、490℃のガス吸入温度で且つ600℃のIRオーブン温度でさらに20分間焼成を続けた。
【0056】
(比較例3)
1.エタノールアミン白金を含浸させ真空乾燥させたハニカムを実施例1に記載されたようにして製造した。
2.空気中における2000ppmプロピレン存在下での真空乾燥したハニカムの焼成。
塗布によりコートされたハニカムを、封入のためにセラミック繊維の布を使い、石英ガラス管に入れた。ガス流を導入して触媒を覆うことにより、空気中に2000ppmのプロピレンを含む混合ガスを満たした焼成装置のなかで、真空乾燥されたハニカムの焼成を行った。
石英ガラス管の前には、ハニカムの前の混合ガスを490℃まで直ちに急速に加熱する加熱装置があった。石英ガラス管の周囲には、IRの放射によりハニカムを急速に加熱することもできるIRオーブンがあった。
この構造において、ガス流を、ハニカムの前で室温から450℃まで50秒間のうちに加熱し、そしてさらに、PID制御器によって490℃の吸入温度までさらに1分間のうちに加熱した。同時に、IRオーブンによる100℃/分の600℃への加熱を開始した。従って、ハニカムにおける熱電温度計を使った測定を、ハニカムにおいて最後に500℃の温度で行った。この温度には、6分間で達した。これらの条件下において、この6分間の後、490℃のガス吸入温度で且つ600℃のIRオーブン温度でさらに20分間焼成を続けた。
【0057】
(比較例4)
触媒の比較試験
実施例1及び比較例で製造された触媒ハニカムを下記の条件下において反応器中にて、CO、プロピレン、及びNOの酸化のために試験した。
【0058】
【表1】

【0059】
ガス流は、触媒の前で加熱した。試験のために、まず、触媒をこれらのガス条件において390℃にて30分間置き、次に10℃ずつ冷却した。各温度を8分間維持し生成したガス成分を7〜8分間に同定した。250℃未満においては、特にCOライトオフ温度をより正確に測定すべく、冷却を5℃ごとに行った(50% CO変換)。
【0060】
図1は、用いた触媒のCO変換率を示す。
【0061】
2中においてCOの存在下で焼成した触媒は、非常に低いNO酸化力を伴って同時に最適なCOライトオフ温度を有していることが明らかである(図3を参照)。
【0062】
図2は、用いた触媒のプロピレン(炭化水素、HC)の変換率を示す。ここで、窒素中でCOの存在下で焼成した触媒は、非常に優れている。
【0063】
NOからNO2への酸化物の収量が図3に示されている。窒素中にてCOと共に焼成した触媒が酸化反応において比較的良好であるということだけでなく、同じ試験における同じ条件において驚くべきことにはるかに少ないNOしか有毒なNO2へ酸化していないということが明らかである。
【0064】
全領域において、空気中でプロピレンとともに焼成した触媒は、少なくとも、空気中で単に焼成した触媒よりも優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)担体材料に白金化合物を含浸処理するステップ、
b)白金化合物の分解点未満で、含浸処理された担体材料を乾燥するステップ、
c)含浸処理された担体材料をCO及び不活性ガスを含むガス流中にて焼成するステップ、
を有する触媒の製造方法。
【請求項2】
第1の焼成を10分間以内に行い、第2の焼成を同じ条件下で10〜40分間行う請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ガス流が、0.5〜3容量%のCOを含む請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記ガス流が、97〜99.5容量%の不活性ガスを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
2、He、Ne、又はアルゴン、好ましくはN2を前記不活性ガスとして用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記焼成を400〜650℃の温度で行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記焼成の前に、含浸処理し乾燥した担体材料を触媒支持体に塗布する請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
含浸処理し乾燥した担体材料を、ウォッシュコート塗料の形態で触媒支持体に塗布し、次に前記白金化合物の分解温度未満で乾燥する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒支持体として、金属製若しくはセラミック製のモノリス体、不織布、又は金属発泡体を用いる請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記担体材料として金属酸化物を用いる請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、酸化ジルコニウム、酸化チタン、Al/Si混合酸化物からなる群より選ばれたものであるか、又は、それらを組み合わせたものである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法を使用して得られた触媒。
【請求項13】
触媒支持体上にコーティング物として存在する請求項12記載の触媒。
【請求項14】
COの酸化に対して選択的酸化能を有する請求項12又は13に記載の触媒。
【請求項15】
バナジウムを含まない請求項12〜14のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1項に記載の触媒を含む排気ガス浄化システム。
【請求項17】
ディーゼル微粒子捕集フィルターを備えた請求項16記載の排気ガス浄化システム。
【請求項18】
前記ディーゼル微粒子捕集フィルターが請求項12〜15のいずれか1項に記載の触媒より下流側に設置されている請求項17に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項19】
SCR触媒を含まない請求項17又は18に記載の排気ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−516227(P2012−516227A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546703(P2011−546703)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000486
【国際公開番号】WO2010/086148
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(508131358)ズード−ケミー アーゲー (30)
【Fターム(参考)】