説明

バナナ処理方法

【課題】バナナを処理する方法、特に緑色期間もしくは黄色期間またはその双方を向上するバナナを処理する方法を提供する。
【解決手段】シクロプロペン分子カプセル化剤複合体を含む液体組成物とバナナとを接触させ、当該接触の期間が1秒〜4分であることを含む、バナナを処理する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バナナ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮が緑色のうちにバナナを収穫し次いで輸送するのは一般的である。また、バナナが販売されるであろう場所の近くに到着した後、バナナを密封容積中に置いてエチレンガスに曝露させることが一般的である。エチレンに曝露した後、通常は、より速く熟する。バナナが熟するにつれて、皮は徐々に黄色くなり、皮はしばらくの間黄色いままであり、次いで皮には黒い斑点が生じ、最終的にはバナナは望まれない過熟となる。
バナナは様々な問題を生じやすい。そのような問題の1つは、場合によって輸送中に起こる早期の熟成である。バナナは輸送時間よりも長い緑色期間(green life)(すなわち、バナナが緑色のままである期間)を有することが望まれる。ある場合には、ある出来事がバナナの緑色期間をより短くすることができる。例えば、輸送中にバナナの容器の内部がエチレンガスに曝露される場合には、バナナの多くがその目的地に到着する前に熟し、これらのバナナの多くは廃棄される必要があるであろう。この早期の熟成はバナナ産業に多大な損失を生じさせる。
【0003】
バナナが収穫前にストレスをかけられた場合には、早期の熟成の問題は悪化する。ストレスは、例えば、洪水もしくは病気(例えば、ブラックシガトカ(black Sigatoka)など)、または他のストレス因子またはそれらの組み合わせをはじめとする様々な原因から生じうる。ストレスをかけられたバナナは通常はより短い緑色期間を有するであろうことが考えられている。一般に、ストレスが観察される場合には、バナナは早期に収穫され、このことが緑色期間を延ばすのを助けるが、この早期の収穫はバナナのサイズおよび作物収穫高の低下を引き起こす。
【0004】
別の一般的な問題はバナナが比較的短い黄色期間(yellow life)を有することである。すなわち、小売りの状況でバナナが陳列される間、消費者に対しては、バナナはその「黄色期間」中(すなわち、皮が黄色に変わり始める時からバナナが過熟になるまで)であることが望まれる。黄色期間は多くの場合非常に短いので、多くのバナナは販売される前にその黄色期間の終わりに到達し、廃棄されなければならず、このことはバナナ産業に対する損失も引き起こす。
【0005】
米国特許出願公開第2005/0261132号は、植物または植物の部分を、金属錯化剤を含む液体組成物で処理することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0261132号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バナナを処理する方法、特に緑色期間もしくは黄色期間またはその双方を向上するバナナを処理する方法を提供することが望まれる。また、収穫中にストレスをかけられたバナナを処理し、それによりそのようなバナナを早期に収穫する必要性を克服しうるために使用されうる方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様においては、シクロプロペン分子封入剤複合体を含む液体組成物とバナナとを接触させ、当該接触の期間が1秒〜4分であることを含む、バナナを処理する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において使用される場合、「バナナ」はMusa属のあらゆる種類、例えば、バナナおよびプランテン(plantains)などを意味する。
本明細書において使用される場合、バナナが「処理される」と称される場合には、バナナが本発明の液体組成物と接触させられることを意味する。
【0010】
本発明の実施は1種以上のシクロプロペンの使用を伴う。本明細書において使用される場合、「シクロプロペン」は式
【化1】

のあらゆる化合物であり、
式中、R、R、RおよびRのそれぞれは独立して、Hおよび式:
【化2】

の化学基からなる群から選択され、nは0〜12の整数である。各Lは二価の基である。好適なL基には、例えば、H、B、C、N、O、P、S、Siまたはその混合物から選択される1種以上の原子を含む基が挙げられる。L基内の原子は互いに単結合、二重結合、三重結合またはその混合で結合されうる。各L基は線状、分岐、環式またはその組み合わせであり得る。いずれか1つのR基(すなわち、R、R、RおよびRのいずれか1つ)においては、ヘテロ原子の総数(すなわち、HでもCでもない原子)は0〜6である。独立して、いずれか1つのR基においては、非水素原子の総数が50以下である。各Zは一価の基である。各Zは独立して、水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、クロラート、ブロマート、ヨーダート、イソシアナト、イソシアニド、イソチオシアナト、ペンタフルオロチオ、および化学基G(Gは3〜14員環系である)からなる群から選択される。
【0011】
、R、RおよびR基は独立して、好適な基から選択される。R、R、RおよびR基は互いに同じであってもよく、または任意の数のそれらは互いに異なっていてもよい。R、R、RおよびRの1以上として使用するのに好適な基には、例えば、脂肪族基、脂肪族オキシ基、アルキルホスホナト基、環式脂肪族基、シクロアルキルスルホニル基、シクロアルキルアミノ基、複素環式基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シリル基、他の基およびこれらの混合または組み合わせがある。R、R、RおよびRの1以上として使用するのに好適な基は、置換されていてもよく、または非置換であってもよい。独立して、R、R、RおよびRの1以上として使用するのに好適な基は、シクロプロペン環に直接結合されていてもよく、または介在基、例えば、ヘテロ原子含有基などを介してシクロプロペン環に結合されていてもよい。
【0012】
好適なR、R、RおよびR基には、例えば脂肪族基がある。ある好適な脂肪族基には、例えば、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基が挙げられる。好適な脂肪族基は、線状、分岐、環式またはその組み合わせでありうる。独立して、好適な脂肪族基は置換されていてよく、または非置換であってもよい。
【0013】
本明細書において使用される場合、対象の化学基の1以上の水素原子が置換基で置き換えられている場合には、対象の化学基が「置換されている」と称される。このような置換基はあらゆる方法、限定されないが、対象の化学基の非置換形態を製造し次いで置換を行うなどにより製造されうることが意図される。好適な置換基には、例えば、アルキル、アルケニル、アセチルアミノ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシイミノ、カルボキシ、ハロ、ハロアルコキシ、ヒドロキシ、アルキルスルホニル、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ジアルキルアミノおよびこれらの組み合わせが挙げられる。存在する場合には、単独であってよく、または他の好適な置換基との組み合わせであってよいさらなる好適な置換基は
【化3】

であり、式中、mは0〜8であり、LおよびZは上に定義されている。対象の単一の化学基に1より多い置換基が存在する場合には、それぞれの置換基は異なる水素原子を置き換えることができるか、または1つの置換基が他の置換基に結合でき、当該他の置換基が対象の化学基に結合するか、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0014】
好適なR、R、RおよびR基には、例えば、置換および非置換の脂肪族オキシ基、例えば、アルケノキシ、アルコキシ、アルキノキシおよびアルコキシカルボニルオキシなどがある。
【0015】
また、好適なR、R、RおよびR基には、例えば、置換および非置換のアルキルホスホナト、置換および非置換のアルキルホスファト、置換および非置換のアルキルアミノ、置換および非置換のアルキルスルホニル、置換および非置換のアルキルカルボニル、並びに置換および非置換のアルキルアミノスルホニル、例えば、アルキルホスホナト、ジアルキルホスファト、ジアルキルチオホスファト、ジアルキルアミノ、アルキルカルボニルおよびジアルキルアミノスルホニルなどがある。
【0016】
また、好適なR、R、RおよびR基には、例えば、置換および非置換のシクロアルキルスルホニル基およびシクロアルキルアミノ基、例えば、ジシクロアルキルアミノスルホニルおよびジシクロアルキルアミノなどがある。
また、好適なR、R、RおよびR基には、例えば、置換および非置換の複素環式基(すなわち、芳香族または非芳香族で、環内に少なくとも1つのヘテロ原子を有する環式基)がある。
【0017】
また、好適なR、R、RおよびR基には、例えば、介在するオキシ基、アミノ基、カルボニル基またはスルホニル基を介してシクロプロペン化合物に結合されている置換および非置換の複素環式基があり;このようなR、R、RおよびR基の例としては、ヘテロサイクリルオキシ、ヘテロサイクリルカルボニル、ジヘテロサイクリルアミノおよびジヘテロサイクリルアミノスルホニルがある。
【0018】
また、好適なR、R、RおよびR基には、例えば、置換および非置換のアリール基がある。好適な置換基は上に記載されているものである。ある実施形態においては、少なくとも1つの置換基がアルケニル、アルキル、アルキニル、アセチルアミノ、アルコキシアルコキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルボニル、アルキルカルボニルオキシ、カルボキシ、アリールアミノ、ハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、トリアルキルシリル、ジアルキルアミノ、アルキルスルホニル、スルホニルアルキル、アルキルチオ、チオアルキル、アリールアミノスルホニルおよびハロアルキルチオの1種以上である、1以上の置換アリール基が使用される。
【0019】
また、好適なR、R、RおよびR基には、例えば、介在するオキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルホニル基、チオアルキル基またはアミノスルホニル基を介してシクロプロペン化合物に結合されている置換および非置換の複素環式基があり;このようなR、R、RおよびR基の例としては、ジへテロアリールアミノ、ヘテロアリールチオアルキルおよびジへテロアリールアミノスルホニルがある。
【0020】
また、好適なR、R、RおよびR基には、例えば、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、クロラト、ブロマト、ヨーダト、イソシアナト、イソシアニド、イソチオシアナト、ペンタフルオロチオ;アセトキシ、カルボエトキシ、シアナト、ニトラト、ニトリト、ペルクロラト、アレニル;ブチルメルカプト、ジエチルホスホナト、ジメチルフェニルシリル、イソキノリル、メルカプト、ナフチル、フェノキシ、フェニル、ピペリジノ、ピリジル、キノリル、トリエチルシリル、トリメチルシリル;およびこれらの置換類似体がある。
【0021】
本明細書において使用される場合、化学基Gは3〜14員環系である。化学基Gとして好適な環系は置換されていても、または非置換であってもよく;それらは芳香族(例えば、フェニルおよびナフチルなど)、または脂肪族(不飽和脂肪族、部分飽和脂肪族または飽和脂肪族が挙げられる)であってよく;並びにそれらは炭素環式または複素環式であってもよい。複素環式G基においては、ある好適なヘテロ原子は、例えば、窒素、硫黄、酸素およびその組み合わせである。化学基Gとして好適な環系は単環式、二環式、三環式、多環式、スピロまたは縮合であり得る;環系が二環式、三環式または縮合である好適な化学基Gにおいては、1つの化学基Gにおける様々な環は全て同じ種類でありうるか、または2以上の種類のもの(例えば、芳香環が脂肪族環と縮合されうる)であり得る。
【0022】
ある実施形態においては、Gは飽和または不飽和3員環、例えば、置換または非置換のシクロプロパン、シクロプロペン、エポキシドまたはアジリジン環などを含む環系である。
【0023】
ある実施形態においては、Gは4員複素環式環を含む環系であり;その実施形態のいくつかにおいては、複素環式環は1つだけのヘテロ原子を含む。独立して、いくつかの実施形態においては、Gは5以上のメンバーを有する複素環式環を含む環系であり;その実施形態のいくつかにおいては、複素環式環は1〜4つのヘテロ原子を含む。独立して、ある実施形態においてにおいては、Gにおける環は非置換であり;別の実施形態においては、環系は1〜5つの置換基を含み;Gが置換基を含む実施形態のいくつかにおいては、それぞれの置換基は独立して、上記の置換基から選択される。また好適なものは、Gが炭素環式環系である実施形態である。
【0024】
ある実施形態においては、それぞれのGは独立して、置換もしくは非置換の、フェニル、ピリジル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、ピロリル、フリル、チオフェニル、チアゾリル、ピラゾリル、1,3−ジオキソラニル、またはモルホリニルである。これらの実施形態には、例えば、Gが非置換もしくは置換のフェニル、シクロペンチル、シクロヘプチルまたはシクロヘキシルである実施形態が挙げられる。これらの実施形態のいくつかにおいては、Gはシクロペンチル、シクロヘプチル、シクロヘキシル、フェニルまたは置換フェニルである。Gが置換フェニルである実施形態には、例えば、1、2または3つの置換基がある実施形態がある。独立して、Gが置換フェニルである実施形態には、例えば、置換基が独立してメチル、メトキシ、およびハロから選択される実施形態もある。
【0025】
およびRが組み合わされて1つの基にされ、その基が二重結合によってシクロプロペン環の3位炭素原子に結合している実施形態も意図される。このような化合物のいくつかは米国特許出願公開第2005/0288189号に記載されている。
【0026】
ある実施形態においては、R、R、RおよびRの1以上が水素である1種以上のシクロプロペンが使用される。ある実施形態においては、RもしくはRまたはRとRの両方が水素である。独立して、ある実施形態においては、RもしくはRまたはRとRの両方が水素である。ある実施形態においては、R、RおよびRが水素である。
【0027】
ある実施形態においては、R、R、RおよびRの1以上は二重結合を有しない構造である。独立して、ある実施形態においては、R、R、RおよびRの1以上は三重結合を有しない構造である。独立して、ある実施形態においては、R、R、RおよびRの1以上はハロゲン原子置換基を有しない構造である。独立して、ある実施形態においては、R、R、RおよびRの1以上はイオン性の置換基を有しない構造である。
【0028】
ある実施形態においては、R、R、RおよびRの1以上は水素または(C−C10)アルキルである。ある実施形態においては、R、R、RおよびRのそれぞれは水素または(C−C)アルキルである。ある実施形態においては、R、R、RおよびRのそれぞれは水素または(C−C)アルキルである。ある実施形態においては、R、R、RおよびRのそれぞれは水素またはメチルである。ある実施形態においては、Rは(C−C)アルキルであり、R、RおよびRのそれぞれは水素である。ある実施形態においては、Rはメチルであり、R、RおよびRのそれぞれは水素であり、このシクロプロペンは本明細書において「1−MCP」と称される。
【0029】
ある実施形態において、1気圧で、50℃以下;または25℃以下;または15℃以下の沸点を有するシクロプロペンが使用される。独立して、ある実施形態においては、1気圧で、−100℃以上;または−50℃以上;または−25℃以上;または0℃以上の沸点を有するシクロプロペンが使用される。
【0030】
本発明に適用可能なシクロプロペンは任意の方法によって製造されうる。シクロプロペンのいくつかの好適な製造方法は米国特許第5,518,988号および第6,017,849号に開示される方法である。
【0031】
本発明の組成物は少なくとも1種の分子封入剤(molecular encapsulating agent)を含む。好適な分子封入剤には、例えば、有機分子封入剤および無機分子封入剤が挙げられる。好適な有機分子封入剤には、例えば、置換シクロデキストリン、非置換シクロデキストリンおよびクラウンエーテルが挙げられる。好適な無機分子封入剤には、例えば、ゼオライトが挙げられる。好適な分子封入剤の混合物も好適である。本発明のある実施形態においては、封入剤にはアルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン、ガンマ−シクロデキストリンまたはこれらの混合物がある。本発明のある実施形態においては、特に、シクロプロペンが1−メチルシクロプロペンの場合には、封入剤はアルファ−シクロデキストリンである。好ましい封入剤は使用されるシクロプロペン(単一種または複数種)の構造に応じて変化するであろう。任意のシクロデキストリン、またはシクロデキストリンの混合物、シクロデキストリンポリマー、修飾シクロデキストリン、またはその混合物も本発明に従って使用されうる。いくつかのシクロデキストリンは、例えば、ミシガン州エイドリアンのWacker Biochem Inc.および他の供給者から入手可能である。
【0032】
少なくとも1種の分子封入剤が1種以上のシクロプロペンを封入する。分子封入剤の分子中に封入されたシクロプロペンまたは置換シクロプロペン分子は、本明細書において「シクロプロペン分子封入剤複合体」と称される。シクロプロペン分子封入剤複合体は任意の手段によって製造されうる。製造の一方法においては、例えば、米国特許第6,017,849号に開示される方法を用いて、シクロプロペンを分子封入剤の溶液またはスラリーと接触させ、次いで、複合体を単離することによって、このような複合体は製造される。例えば、1−MCPが分子封入剤に封入されている複合体を製造する一方法においては、水中のアルファ−シクロデキストリンの溶液に1−MCPガスが吹き込まれ、複合体がまず沈殿し、次いでろ過により単離される。ある実施形態においては、複合体は上記方法により製造され、単離後、乾燥され、固体形態で、例えば、有用な組成物への後の添加のために粉体として貯蔵される。
【0033】
分子封入剤の量は、シクロプロペンのモル数に対する分子封入剤のモル数の比率によって有用に特徴づけられうる。ある実施形態においては、シクロプロペンのモル数に対する分子封入剤のモル数の比率は0.1以上;または0.2以上;または0.5以上;または0.9以上である。独立して、このような実施形態のいくつかにおいては、シクロプロペンのモル数に対する分子封入剤のモル数の比率は2以下;または1.5以下である。
【0034】
本発明の実施は、1種以上の液体組成物を伴う。液体組成物は25℃で液体である。ある実施形態においては、液体組成物はバナナを処理するために組成物が使用される温度において液体である。バナナは多くの場合建物の外または温度制御されていない建物の中で処理されるので、バナナは1℃〜45℃の範囲の温度で処理される場合があり;好適な液体組成物はその範囲全体にわたって液体である必要はないが、好適な液体組成物は1℃〜45℃の少なくともいずれかの温度において液体である。
【0035】
液体組成物が1より多い物質を含む場合には、その液体組成物は溶液もしくは分散物またはその組み合わせであってよい。液体組成物において、分散物の形態の別の物質中に、ある物質が分散される場合には、分散物は、例えば、スラリー、懸濁物、ラテックス、エマルション、ミニエマルション、マイクロエマルションまたはこれらのあらゆる組み合わせをはじめとするあらゆる種類のものであってよい。
【0036】
ある実施形態においては、液体組成物中のシクロプロペンの量は0.1マイクログラム/リットル以上;または0.2マイクログラム/リットル以上;または0.5マイクログラム/リットル以上;または1マイクログラム/リットル以上;または2マイクログラム/リットル以上;または4マイクログラム/リットル以上である。独立して、ある実施形態においては、液体組成物中のシクロプロペンの量は、1,000マイクログラム/リットル以下;または500マイクログラム/リットル以下;または200マイクログラム/リットル以下;または100マイクログラム/リットル以下である。
【0037】
ある実施形態においては、本発明の組成物は金属キレート剤を含まない。ある実施形態においては、本発明の1以上の組成物は1種以上の金属キレート剤を含む。
【0038】
金属キレート剤は、そのそれぞれの分子が単一の金属原子と2以上の配位結合を形成できる化合物である。金属キレート剤は金属原子との配位結合に関与する電子供与原子を含むので、いくつかの金属キレート剤は金属原子と配位結合を形成する。好適なキレート剤には、有機キレート剤および無機キレート剤が挙げられる。好適な無機キレート剤には、例えば、リン酸塩、例えば、ピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸などがある。好適な有機キレート剤には、大環状(macrocyclic)構造および非−大環状構造を有するものがある。好適な大環状有機キレート剤には、例えば、ポルフィン化合物、環状ポリエーテル(クラウンエーテルとも称される)、並びに窒素原子と酸素原子との双方を有する大環状化合物がある。
【0039】
非大環状構造を有するいくつかの好適な有機キレート剤には、例えば、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、芳香族複素環式塩基、フェノール、アミノフェノール、オキシム、シッフ塩基、硫黄化合物、およびこれらの混合物がある。ある実施形態においては、キレート剤には、1種以上のアミノカルボン酸、1種以上のヒドロキシカルボン酸、1種以上のオキシム、またはそれらの混合物が挙げられる。いくつかの好適なアミノカルボン酸には、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、N−ジヒドロキシエチルグリシン(2−HxG)、エチレンビス(ヒドロキシフェニルグリシン)(EHPG)、およびこれらの混合物が挙げられる。いくつかの好適なヒドロキシカルボン酸には、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、5−スルホサリチル酸、およびこれらの混合物が挙げられる。いくつかの好適なオキシムには、例えば、ジメチルグリオキシム、サリチルアルドキシムおよびこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態においては、EDTAが使用される。
【0040】
酸であるキレート剤が使用される実施形態においては、酸は中性形態でもしくは塩の形態で、またはこの組み合わせで存在しうる。塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたはこれらの混合物をはじめとする対イオンを有しうる。ある実施形態においては、マグネシウムもしくはカルシウムまたはこれらの混合物が使用される。
【0041】
ある追加の好適なキレート剤はポリマーである。いくつかの好適なポリマー系キレート剤には、例えば、ポリエチレンイミン、ポリメタクリロイルアセトン、ポリ(アクリル酸)、およびポリ(メタクリル酸)が挙げられる。ある実施形態においては、ポリ(アクリル酸)が使用される。
好適な金属錯化剤の混合物も好適である。
【0042】
独立して、水を含む液体組成物が使用され、かつ液体組成物が1種以上の金属錯化剤を含む実施形態においては、金属錯化剤の量は、その液体組成物中の金属錯化剤のモル濃度(すなわち、金属錯化剤のモル数/液体組成物のリットル)によって有用に特徴づけられうる。このような液体組成物のいくつかにおいては、金属錯化剤の濃度は0.00001mM(すなわちミリモーラー)以上;または0.0001mM以上;または0.001mM以上;または0.01mM以上;または0.1mM以上である。独立して、本発明の液体組成物が水を含むある実施形態においては、金属錯化剤の濃度は100mM以下;または10mM以下;または1mM以下である。
【0043】
ある実施形態においては、本発明の液体組成物は水性である。本明細書において使用される場合、組成物が組成物の重量を基準にして50重量%以上の水を含む場合には、組成物は水性である。ある実施形態においては、本発明の液体組成物は、組成物の重量を基準にして75重量%以上;または85重量%;または95重量%以上の量で水を含む。
【0044】
ある実施形態においては、本発明の組成物は非イオン性界面活性剤をほとんどまたは全く含まない。すなわち、組成物は非イオン性界面活性剤を含まないか、または非イオン性界面活性剤が存在する場合には、非イオン性界面活性剤の量は組成物の重量を基準にして0.1重量%以下;または0.01重量%以下;または0.002重量%以下である。非イオン性界面活性剤には、例えば、アルキルポリオキシアルキレン非イオン性界面活性剤、アリールポリオキシアルキレン非イオン性界面活性剤およびポリオキシアルキレンブロックコポリマー非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0045】
ある実施形態においては、本発明の組成物は任意の種類(すなわち、非イオン性、アニオン性、またはカチオン性)の界面活性剤をほとんどまたは全く含まず;「ほとんどまたは全くない」は上に定義される。
【0046】
本発明の実施において処理されるバナナは、Musa属のあらゆる種類でありうる。本発明のある実施形態においては、Musa属の食用可能な果実が処理される。ある実施形態においては、プランテン、またはプランテンではないバナナが処理される。ある実施形態においては、プランテンではないバナナが処理される。ある実施形態においては、M.acuminata Colla種またはハイブリッドM.X paradisiaca L.が処理される。ある実施形態においては、次の様々なバナナの1種以上の種類が処理される:Sucrier、Lady Finger、Gros Michel、Cavendish(例えば、ドワーフCavendish、ジャイアントCavendish、Pisang masak hijau、Robusta、またはValeryなど)、Bluggoe、Ice Cream、Mysore、Salembale、Rasabale、Pachabale、Chandrabale、Silk、Red、Fehi、Golden Beauty、またはOrinoco。ある実施形態においては、例えば、Frenchプランテン、Hornプランテン、Maaricongo、Common Dwarf、Pelipita Saba、Harton、Dominico−HartonまたはCurrareをはじめとするさまざまなプランテンの1種以上が処理される。
【0047】
バナナは通常、成長した偽茎からバナナの房を切断することにより収穫される。収穫後、房は多くの場合ハンド(hands)と呼ばれるより小さな結合したグループに分けられる。バナナは、房、ハンド、より小さな集合体、または個々のバナナとして本発明に従って処理されうる。
【0048】
本発明のある実施形態においては、バナナは収穫後20週以内で処理される。
本発明のある実施形態においては、バナナは収穫後(すなわち、房が偽茎から分離された後)36時間以下で処理される。ある実施形態においては、収穫から処理までの時間は24時間以下;または10時間以下;または3時間以下;または1時間以下;または20分以下である。
【0049】
本発明の実施において、バナナは何らかの方法で液体組成物と接触させられうる。例えば、バナナは浸漬、噴霧、ドレンチング(drenching)、ブラシ適用、またはこれらの組み合わせによって液体組成物と接触させられうる。ある実施形態においては、接触は浸漬により行われる。浸漬が使用される場合に、バナナは果実部分を覆うのに充分深く、液体組成物中に沈められる。浸漬操作において、バナナは少なくとも1秒;または少なくとも2秒;または少なくとも5秒;または少なくとも10秒の間沈められたままである。独立して、浸漬操作を行うある実施形態においては、バナナは5分以下;または4分以下;または2分以下の間沈められたままである。
【0050】
ある実施形態においては、収穫前にストレスをかけられたバナナが処理される。ある場合には、ストレスは、例えば、洪水または病気によって引き起こされる。このような実施形態のいくつかにおいて、もしストレスをかけられなかったら通常収穫されたであろう成長段階で、ストレスをかけられたバナナを収穫し、かつ本発明の方法に従ってそのストレスをかけられたバナナを処理することが意図される。独立して、ストレスをかけられたバナナに関連するある実施形態においては、35マイクログラム/リットル〜100マイクログラム/リットルのシクロプロペン濃度の液体組成物を使用して、ストレスをかけられたバナナを処理することが意図される。
【0051】
バナナがストレスをかけられないある実施形態においては、バナナは35マイクログラム/リットル未満のシクロプロペン濃度を有する液体組成物と接触させられる。バナナがストレスをかけられたある実施形態においては、バナナは35マイクログラム/リットルより多いシクロプロペン濃度を有する液体組成物と接触させられる。
【0052】
本明細書および特許請求の範囲の目的のために、ここで示される範囲および比率の限界は組み合わせ可能であると理解される。例えば、60〜120、および80〜110の範囲が特定のパラメータについて示されている場合には、60〜110、および80〜120の範囲も意図されると理解される。さらに独立した例として、特定のパラメータが1、2および3の好適な最小値を有することを開示する場合で、かつそのパラメータが9および10の好適な最大値を有することを開示する場合には、次の範囲の全てが意図される:1〜9、1〜10、2〜9、2〜10、3〜9、および3〜10。
本明細書および特許請求の範囲の目的のために、ここで開示されるそれぞれの操作は、他に示されない限りは、25℃で行われるものと理解される。
【実施例】
【0053】
次の実施例は、バナナの皮の色はチキータブランドインターナショナルインクによって公表された七段階評定指標(http://www.chiquita.com/chiquita/Discover/cbripen.asp)に従って評定される:ステージ1(暗緑色);ステージ2(全て明緑色);ステージ3(黄色よりも緑色が多い);ステージ4(緑色よりも黄色が多い);ステージ5(緑色の先端部および首部分);ステージ6(全て黄色;あるとしたら明緑色の首部分、緑色の先端部はない);ステージ7(茶色の斑点のある黄色)。消費者は概して、ステージ5またはステージ6のバナナを食べるのを好む。
【0054】
比較例1
コスタリカで成長し処理された12週齢のバナナ果実。そのバナナは浸漬された(噴霧ではない)。すべての1−MCP処理の溶液は0.6ml/lのNuFilm 17(登録商標)96%(エラストマー形成性添加剤、Miller Chemical and Fertilizer Co.)を含んでいた。対照のサンプルは浸漬されなかった。アルファ−シクロデキストリン中の1−MCP封入複合体の粉体が水に添加されて、1リットルあたり20マイクログラムの1−MCPの濃度を与える水溶液中に他のサンプルは浸漬された。バナナはゼロ時間(入れおよび出し)、5分または20分間浸漬された。
【0055】
1−MCP処理の後、処理後果実は棚の上で乾燥させられ、箱に再び入れられた。その箱は14℃で7日間貯蔵された。箱は20−21℃で6時間調整された後、20℃で24時間処理チャンバー内で1リットルあたり100マイクロリットルのエチレンの連続流れを用いて処理された。エチレン処理した後、箱は周囲条件(20℃、95%RH)で保たれた。バナナはエチレンへの曝露から5、7、10および12日後に検査された。
4つの処理数および処理あたり2つの箱を用いて、完全無作為計画が使用された。それぞれの処理からの集団がエチレン処理後、2日ごとに評価された。
5分間または20分間浸漬されたバナナは正常に熟さなかった。それらは12日後でも緑色のままであった。
対照のバナナと素早い入れおよび出しで浸漬されたされたバナナとの間では熟成において有意な違いは観察されなかった。
【0056】
実施例2
バナナ(Cavendish Musa spp.)は以下に示される水溶液中に浸漬された。1−MCPを含む溶液は、1リットルあたり20マイクログラムの1−MCP濃度を与えるように、アルファ−シクロデキストリン中の1−MCPの封入複合体の粉体を水に添加することにより調製された。浸漬の時間は15秒であった。
バナナはコスタリカで成長し試験された12週齢のものであった。浸漬後、バナナは棚の上で乾燥させられ、箱に入れられた。箱は14℃で9日間貯蔵され、次いで20〜21℃で6時間調整され、次いで21℃のチャンバー内で24時間、1リットルあたり100マイクロリットルのエチレンの連続流れに曝露させられ;次いで、周囲条件(20℃および80%相対湿度(RH))に保たれた。
【0057】
10の処理数および処理あたり1つの箱を用いて、無作為計画が使用された。それぞれの処理からの集団はエチレン処理後、1日ごとに評価された。皮の色は上述のように評価された。シュガースポットの程度は、次のようにシュガースポットを示すバナナのパーセンテージに従って評定された:1(なし);2(0〜5%);3(5〜10%);4(10〜25%);5(25〜50%);6(50〜100%)。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
鉱油に浸漬されたバナナは試験の週において熟さなかった。NP−7での処理は、1−MCPの存在または非存在にかからわず、熟成に影響を及ぼさなかった。1−MCPを有する水、および1−MCPを有するNuFilm(商標)は望ましく熟成を遅らせた。Tween(商標)80で処理されたバナナは、1−MCPの存在または非存在にかからわず、適切に熟成しなかった。水だけで処理されたバナナは最も高い割合のシュガースポットを有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロプロペン分子封入剤複合体を含む液体組成物とバナナとを接触させ、当該接触の期間が1秒〜4分であることを含む、バナナを処理する方法。
【請求項2】
液体組成物が水性である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体組成物が、液体組成物の全重量を基準にして0〜0.1重量%の非イオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
液体組成物が金属キレート剤を0.1〜100ミリモル/リットルの濃度で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
接触がバナナを液体組成物中に浸漬することにより行われる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
浸漬が5〜60秒の期間を有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
液体組成物中のシクロプロペンの量が5〜100マイクログラム/リットルである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
シクロプロペンが1−メチルシクロプロペンである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分子封入剤がアルファ−シクロデキストリンである請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2010−46059(P2010−46059A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−185595(P2009−185595)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】