バニシングドリルリーマ
【課題】加工穴の位置精度および加工径精度を高めることの可能なバニシングドリルリーマを提供する。
【解決手段】シャンク2に連なるドリル本体3に形成されたウェブの径外側に、軸方向から見て略扇状の3個の枝部7が軸方向に延びて形成される。この3個の枝部7のそれぞれ回転方向後方に、3個の分岐枝8が軸方向に延びて形成される。3個の枝部7の軸方向前端に3枚のドリル刃11が形成される。3個の分岐枝8の軸方向前端に3枚のリーマ刃12が形成される。このリーマ刃12の径方向最外端から連なる3枚の案内面14が分岐枝の径方向外側に形成される。穴あけ加工を行う際、3枚のドリル刃11がバニシングドリルリーマ1を回転方向に位相の異なる三方から支持するので、バニシングドリルリーマ1に作用する応力が均衡し、軸ブレが抑制される。この状態で、3枚のリーマ刃12により穴の内壁に精密な仕上げ加工が行なわれる。
【解決手段】シャンク2に連なるドリル本体3に形成されたウェブの径外側に、軸方向から見て略扇状の3個の枝部7が軸方向に延びて形成される。この3個の枝部7のそれぞれ回転方向後方に、3個の分岐枝8が軸方向に延びて形成される。3個の枝部7の軸方向前端に3枚のドリル刃11が形成される。3個の分岐枝8の軸方向前端に3枚のリーマ刃12が形成される。このリーマ刃12の径方向最外端から連なる3枚の案内面14が分岐枝の径方向外側に形成される。穴あけ加工を行う際、3枚のドリル刃11がバニシングドリルリーマ1を回転方向に位相の異なる三方から支持するので、バニシングドリルリーマ1に作用する応力が均衡し、軸ブレが抑制される。この状態で、3枚のリーマ刃12により穴の内壁に精密な仕上げ加工が行なわれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、リーマ付ドリルの一種であって、特に高速高送り用バニシングドリルリーマに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一本の工具に荒削り用の2枚のドリル刃と、仕上げ加工用の2枚のリーマ刃を備えたバニシングドリルリーマが知られている(特許文献1参照)。2枚のドリル刃は、回転方向に180°の位相差で設けられている。また、2枚のリーマ刃は、それぞれドリル刃より90°回転方向後方、かつ、ドリル刃より軸方向後方に設けられている。
このバニシングドリルリーマによってワークに穴あけ加工を行う際、先ず、ドリル刃によってワークに下穴があけられる。続いて、リーマ刃によって下穴の内壁が仕上げ加工される。これにより、高精度な穴加工が1工程に集約され、加工時間を短縮することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2572128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バニシングドリルリーマは、例えば予め鋳抜穴の形成されたアルミからなるワークに穴あけ加工をすることに用いられる。このとき、目標とする加工穴の中心と鋳抜穴の中心とがずれていると、特許文献1のバニシングドリルリーマは、穴あけ加工時の軸ブレが大きくなる。したがって、「穴あけ加工された加工穴の中心位置が目標とする加工穴の中心位置からずれる」、「加工穴の径が目標とする加工穴の径より大きくなる、又は小さくなる」等の問題が生じることが懸念されていた。この問題は、目標とする加工中心との鋳抜穴の中心と芯ずれが大きいほど、切削速度又は送り速度が大きいほど顕著に生じるおそれがあった。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工穴の位置精度および加工径精度を高めることの可能なバニシングドリルリーマを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明によると、シャンクの軸方向前方に連なるドリル本体に主幹部が形成される。主幹部の軸方向から見て略扇状の3個の枝部が主幹部の径外側で軸方向に延びて形成される。この3個の枝部のそれぞれ回転方向後方に、3個の分岐枝が軸方向に延びて形成される。分岐枝とその分岐枝の回転方向後方に位置する枝部との間には、軸方向に延びる切屑排出ポケットが形成される。
3個の枝部の軸方向前端に形成される3枚のドリル刃は、径外方向に向かい軸方向後方に傾斜するとともに、回転方向後方に向かい軸方向後方に傾斜する。
3個の分岐枝の軸方向前端に形成される3枚のリーマ刃は、径外方向に向かい軸方向前方に傾斜するとともに、回転方向後方に向かい軸方向前方に傾斜する。また、リーマ刃は、軸方向最先端がドリル刃の軸方向後端より軸方向後方に設けられ、かつ径方向最外端がドリル刃の径方向最外端より径方向外側に設けられる。
3個の分岐枝の径方向外側に形成される3枚の案内面は、横断面が主幹部の中心軸を中心とした円弧状に形成され、3枚のリーマ刃の径方向最外端から連なり軸方向に延びる。
【0006】
鋳抜穴のあけられたワークに穴あけ加工を行う際、先ず3枚のドリル刃により、鋳抜穴の径を拡げるように下穴があけられる。次いで、3枚のリーマ刃により、下穴の内壁に仕上げ加工がされる。
穴あけ加工の際、3枚のドリル刃には、バニシングドリルリーマに印加される荷重に対する応力及び切削抵抗が作用する。3枚のドリル刃は、バニシングドリルリーマを回転方向に位相の異なる三方から支持するので、バニシングドリルリーマに作用する力が均衡し、バニシングドリルリーマの軸ブレが抑制される。穴開け加工が進むと、3枚のドリル刃と3枚のリーマ刃から軸方向に延びる3枚の案内面とが、バニシングドリルリーマを軸方向と径方向に支持する。このように回転軸の安定した回転状態で、3枚のリーマ刃により下穴の内壁に精密な仕上げ加工が行なわれる。したがって、バニシングドリルリーマは、加工穴の位置精度と加工径精度を高めることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明によると、3枚のドリル刃は、それぞれ回転方向に略120°の位相差で設けられ、3枚のリーマ刃もまた、それぞれ回転方向に略120°の位相差で設けられる。これにより、穴あけ加工の際、バニシングドリルリーマに三方向から作用する力が均衡する。また、3枚のリーマ刃の傾斜角を小さくすることが可能になるので、リーマ刃に作用する切削抵抗を低減することができる。したがって、バニシングドリルリーマの軸ブレを抑制することができる。
【0008】
ところで、従来より、バニシングドリルリーマには、ドリル刃に切削液を供給する切削液供給路として、軸方向に通る孔が形成されていた。また、この軸方向に通る孔から、径外方向に分岐する孔を形成し、リーマ刃に切削液を供給していた。これらの孔は鋳造又は孔あけ加工等によって形成されるので、小径のバニシングドリルリーマ対し、小径の切削液供給路を形成することが困難であった。
そこで、請求項3に記載の発明では、枝部と分岐枝との間で軸方向に延びる切削液供給路は、軸方向前端に開口すると共に、径外方向に開口する。これにより、ドリル本体の径外方向から研削加工することで切削液供給路を形成することが可能になる。このため、小径のバニシングドリルリーマに対し、切削液供給路を容易に形成することができる。
また、切削液供給路を流れる切削液は、軸方向前端の開口からドリル刃に供給されると共に、径外方向の開口からリーマ刃に供給される。このため、リーマ刃に切削液を供給する孔を別途形成することなく、加工工数を低減することができる。
さらに、切削液供給路の径外側に壁を設けないので、ドリル本体の中心と切削液供給路との距離を遠くすることが可能になる。これにより、主幹部の径を大きくすることができる。したがって、バニシングドリルリーマの軸ブレが抑制され、加工穴の位置精度と加工径精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマを示す図である。
【図2】図1のII方向の矢視図であり、図1に示すバニシングドリルリーマを回転方向に90°回転した図である。
【図3】図2のIII方向の矢視図であり、図2に示すバニシングドリルリーマを回転方向に90°回転した図である。
【図4】図3のIV方向の矢視図であり、図3に示すバニシングドリルリーマを回転方向に90°回転した図である。
【図5】図1のV方向の矢視図である。
【図6】図1のVI方向の矢視図である。
【図7】図1のVII部分の拡大図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの模式図である。
【図9】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの穴あけ加工の動作を示す特性図である。
【図10】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの穴あけ加工の動作を示す特性図である。
【図11】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの穴あけ加工の動作を示す特性図である。
【図12】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの穴あけ加工の動作を示す特性図である。
【図13】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマのリーマ加工の動作を示す特性図である。
【図14】従来のバニシングドリルリーマによる加工穴径と、本発明の第1実施形態のバニシングドリルリーマによる加工穴径との比較を示す表である。
【図15】図14の表をグラフにしたものである。
【図16】図14の表をグラフにしたものである。
【図17】従来のバニシングドリルリーマによる穴位置精度と、本発明の第1実施形態のバニシングドリルリーマによる穴位置精度との比較を示す表である。
【図18】図17の表をグラフにしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの構成を図1〜図8に示す。本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、超硬合金から形成される。シャンク2の軸方向前方に連なるドリル本体3には、ドリル本体3の最大外径より外径の小さい小径部4が先端部から段部5まで形成されている。小径部4の軸方向の長さは、バニシングドリルリーマ1が加工する加工穴の深さに加え、ドリル刃11とリーマ刃12の再研磨加工を所定回数行うことの可能な長さに設定されている。
【0011】
図5に示すように、ドリル本体3には、軸方向から見て中心部に形成される主幹部としてのウェブ6と、このウェブ6の径外側に略扇状に形成される3個の枝部7と、3個の枝部7のそれぞれ回転方向後方に設けられる3個の分岐枝8が形成されている。ウェブ6、枝部7及び分岐枝8は、ドリル本体3の軸と平行に軸方向に延びている。
なお、図5ではウェブ6を破線によって概念的に区分し、図7では枝部7と分岐枝8を破線によって概念的に区分しているが、ウェブ6、枝部7及び分岐枝8は、ドリル本体3を研削加工することで、一体に形成されるものである。
【0012】
本実施形態では、ウェブ6の直径D1は、小径部4の直径D2の約1/3に形成されている。なお、ウェブ6の直径D1は、小径部4の直径D2の約1/3以上に形成してもよい。ウェブ6の直径D1を大きくすることで、バニシングドリルリーマ1の剛性が高くなる。但し、ウェブ6の直径D1を大きくすると、切屑排出ポケット9の容積が小さくなる。
3個の枝部7は回転方向に略均等間隔で設けられている。本実施形態では、3個の枝部7は、それぞれ回転方向に約120°の位相差で形成されている。
3個の分岐枝8は、3個の枝部7のそれぞれ回転方向後方に略同一の位相差で設けられている。分岐枝8の回転方向前側の面は、バニシングドリルリーマ1の半径方向と略一致するように形成されている。分岐枝8の回転方向後側の面は、ウェブ6の外径から分岐枝8の回転方向前側の面と平行に形成されている。
【0013】
分岐枝8と、その分岐枝8の回転方向後方に位置する枝部7との間には、それぞれ切屑排出ポケット9が形成されている。本実施形態では、3個の切屑排出ポケット9は、分岐枝8の回転方向後側の面と、その分岐枝8の回転方向後方に位置する枝部7の回転方向前側の面とのなす角θが約75°で形成されている。
枝部7と分岐枝8との間に、切削液供給路10が形成されている。切削液供給路10は、軸方向に延び、軸方向前端に開口すると共に、径外方向に開口している。切削液供給路10は、回転方向前側の面と、回転方向後側の面とが略平行に形成され、径内方向の面が円弧状に形成されている。
切削液供給路10は、軸方向後方で、シャンク2の軸方向後端部から通じる切削液供給孔13に連通している。これにより、切削液供給孔13から切削液供給路10に切削液が供給される。切削液供給路10に供給された切削液は、切削液供給路10内を旋回しながら軸方向に流れ、ドリル刃11とリーマ刃12と案内面14に供給される。
【0014】
3枚のドリル刃11は、それぞれ3個の枝部7の軸方向前端に形成される。ドリル刃11は、主幹部の中心から径外方向に向かい軸方向後方に傾斜すると共に、回転方向後方に向かい軸方向後方に傾斜するように形成される。
3枚のドリル刃11の軸方向の高さは、略同一に形成される。本実施形態では、3枚のドリル刃11の軸方向の高さは、1/100mm以下の精度で形成されている。
図8に示すように、ドリル刃11の先端角αは、110°≦α≦180°の範囲で形成される。α≦180°としたのは、切削抵抗を低減し、穴あけ時の加熱を防ぐためである。一方、110°≦αとしたのは、穴あけ時にドリル刃11から径内方向に作用する分力を小さくすることで、ワークに予め設けられた鋳抜穴の中心と目標とする加工中心とがずれている場合、バニシングドリルリーマ1の求心性を低減するためである。なお、本実施形態において、ドリル刃11の先端角αは、140°≦α≦160°の範囲が理想である。ただし、ドリル刃11の先端角αは、加工物の寸法に制約されるため、指示がある場合はその指示に従う。
【0015】
3枚のリーマ刃12は、それぞれ3個の分岐枝8の軸方向前端に形成される。リーマ刃12は、径外方向に向かい軸方向前方に傾斜するとともに、回転方向後方に向かい軸方向前方に傾斜して形成されている。また、リーマ刃12の径方向最外端は、ウェブ6の中心軸を中心とした円弧状に形成されている。
リーマ刃12のすくい角βは、0°<β≦30°の範囲で形成される。0°<βとしたのは、送り方向の切削抵抗を低減することで切削能力を高めると共に、切屑を径内側に導くことで切削面に切屑が入り込むことを抑制するためである。一方、β≦30°としたのは、刃欠けの危険度を低減するためである。なお、本実施形態において、リーマ刃12のすくい角βは、5°≦β≦15°の範囲が理想である。
【0016】
図7に示すように、バニシングドリルリーマ1を径方向から見たときのリーマ刃12の傾斜角γは、3°≦γ≦30°の範囲で形成される。3°≦γとしたのは、リーマ刃12の軸方向の長さが、穴あけ時の送り量より小さくなると、ドリル刃11で形成した下穴の内壁をリーマ刃12が切削することができなくなるからである。一方、γ≦30°としたのは、下穴の内壁に当接する面を広くすることで、下穴の内壁とリーマ刃12との溶着を抑制し、加工精度を高めるためである。リーマ刃12の傾斜角γを小さくすると、下穴の内壁の一定面積に対してリーマ刃が当接する面が広くなることで、切削抵抗が低減する。これにより、リーマ刃12と下穴の内壁との溶着が抑制され、加工精度が高まる。また、切削抵抗の低減により、軸ブレが抑制される。
なお、本実施形態において、リーマ刃12の傾斜角γは、5°≦γ≦15°の範囲でよく使用され、好ましくは7°≦γ≦13°の範囲である。
【0017】
また、図8に示すように、リーマ刃12は、軸方向最先端がドリル刃11の軸方向最後端より軸方向後方に設けられ、かつ径方向最外端がドリル刃11の径方向最外端より径方向外側に設けられる。これにより、ドリル刃11で形成された下穴の内壁をリーマ刃12で仕上げ加工することが可能になる。
本実施形態では、リーマ刃12の軸方向最先端(回転方向最後端かつ径方向最外端)と、ドリル刃11の回転方向最前端かつ径方向最外端との軸方向の距離δが、約2mmで形成されている。但し、距離δについては、加工物の指示に従うことが多く、自由度がある。
また、本実施形態では、ウェブ6の中心軸からリーマ刃12の径方向最外端までの距離と、ウェブ6の中心軸からドリル刃11の径方向最外端までの距離との差εが約0.1mmで形成されている。但し、この距離の差εについては、0.01〜0.2mmの範囲で形成するのが主流であり、本実施形態では、約0.1mmで形成されている。
【0018】
3枚の案内面14は、それぞれ3個の分岐枝8の径方向外側に形成される。3枚の案内面14は、横断面がウェブ6の中心軸を中心とした円弧状に形成され、3枚のリーマ刃12の径方向最外端に連なり軸方向に延びている。これにより、案内面14は、リーマ刃12による仕上げ加工のされた加工穴の内壁に摺接し、バニシングドリルリーマ1を径方向に支持する。
【0019】
本実施形態のバニシングドリルリーマ1の動作を説明する。
本実施形態では、例えば、予め鋳抜穴の形成されたアルミからなるワークに穴あけ加工をする場合を説明する。図9〜図12では、ワーク20の鋳抜穴21の中心O1と目標とする加工穴の中心O2とがずれている。なお、図9〜図12において、バニシングドリルリーマ1の断面のハッチングは省略している。
先ず、図9に示すように、目標とする加工穴の中心O2から鋳抜穴21の中心O1がずれた方向と反対側がドリル刃11により削られる。このとき、バニシングドリルリーマ1には、ドリル刃11の先端角αと送り量に応じて、ドリル刃11に作用する応力Fの分力F1が径内方向の一方に作用する。また、バニシングドリルリーマ1には、ワーク20の切削面とドリル刃11との当接面積、及び切削速度に応じて切削抵抗F4が作用する。
【0020】
次に、図10に示すように、鋳抜穴21の径外側の全周がドリル刃11により削られると、バニシングドリルリーマ1は、ドリル刃11により三方から支持される。このとき、バニシングドリルリーマ1には、3枚のドリル刃11から径内方向に分力F1が作用する。また、バニシングドリルリーマ1には、3枚のドリル刃11から軸方向に分力F2が作用する。また、3枚のドリル刃11から回転方向と逆方向に切削抵抗F4が作用する。これにより、バニシングドリルリーマ1に三方向から作用する力が均衡するので、バニシングドリルリーマ1の軸ブレが低減される。
続いて、図11に示すように、鋳抜穴21の径がドリル刃11により拡げられ、ドリル刃11によって形成された下穴にドリル刃11の肩部111が入ると、バニシングドリルリーマ1は、3枚のドリル刃11により軸方向と径方向に三方から支持される。これにより、バニシングドリルリーマ1の軸ブレが確実に抑制される。
穴開け加工が進み、図12に示すように、3枚のドリル刃11と3枚のリーマ刃12から軸方向に延びる3枚の案内面14とが、バニシングドリルリーマ1を軸方向と径方向に支持する。このように軸ブレの抑制された回転状態で、3枚のリーマ刃12により下穴の内壁に精密な仕上げ加工が行なわれる。
【0021】
3枚のリーマ刃12により下穴の内壁に仕上げ加工がされる動作を図13(A)に示す。
図13(A)では、回転方向に略120°の位相差で形成された3枚のリーマ刃12の径方向最外端と、そのリーマ刃12に連なる案内面14を摸式的に示している。また、実線で示すリーマ刃12と案内面14が120°回転移動した状態を破線で表わしている。ここで、リーマ刃12は、120°回転するときの軸方向の変位量に対応する斜面の長さωが有効な切刃となる。なお、リーマ刃12により削れた切屑は、リーマ刃12の径内方向に導かれ、切削液供給路10もしくは切屑排出ポケット9から加工穴の外へ排出される。
【0022】
ここで、従来のバニシングドリルリーマとして、2枚のリーマ刃12により下穴の内壁に仕上げ加工がされる動作を図13(B)に示す。従来のバニシングドリルリーマは、2枚のリーマ刃が回転方向に180°の位相差で設けられているものとする。
従来のバニシングドリルリーマは、リーマ刃の有効な切刃の長さω1を、本実施形態のリーマ刃の有効な切刃の長さωと略同じにしている。このため、従来のバニシングドリルリーマは、リーマ刃の傾斜角γ1が本実施形態のリーマ刃の傾斜角γよりも大きくなっている。
つまり、本実施形態のバニシングドリルリーマは、リーマ刃12の位相差が120°であることで、リーマ刃12の傾斜角γを従来のリーマ刃の傾斜角γ1より小さくすることが可能となる。これにより、下穴の内壁の一定面積に対してリーマ刃の当接する面が広くなることで、切削抵抗が低減する。したがって、リーマ刃12と下穴の内壁との溶着が抑制され、加工精度を高めることができる。また、バニシングドリルリーマ1の軸ブレを抑制することができる。
【0023】
本実施形態のバニシングドリルリーマ1により形成した加工穴と、従来のバニシングドリルリーマにより形成した加工穴とを比較した試験結果を図14〜図18に示す。
図14〜図18では、従来のバニシングドリルリーマを「2枚刃(従来)」と表記し、本実施形態のバニシングドリルリーマ1を「3枚刃(新)」と表記している。
試験では、全長120mm、リーマ刃12の外径10φ(mm)のバニシングドリルリーマ1を使用した。
従来のバニシングドリルリーマとして、2枚のドリル刃と2枚のリーマ刃とを備えたものを使用した。この従来のバニシングドリルリーマは、2枚のドリル刃が回転方向に180°の位相差で設けられている。また、2枚のリーマ刃は、それぞれドリル刃より90°回転方向後方に設けられている。それ以外、従来のバニシングドリルリーマの構成は、本実施形態のバニシングドリルリーマ1の構成と同一である。
【0024】
試験には、ワークとしてアルミ材を使用し、このアルミ材に鋳抜穴相当の穴をあけていないもの(以下「ムク穴」という)と、鋳抜穴相当の穴として径8φ(mm)深さ17mmの穴をあけたものを用意した。アルミ材に鋳抜穴相当の穴をあけたものとしては、鋳抜穴相当の穴と目標とする加工中心とが一致するもの(芯ズレ0mm)と、鋳抜穴相当の穴と目標とする加工中心との芯ズレが0.2mm、0.4mm、0.6mmのものを用意した。
バニシングドリルリーマ1は、回転機のホルダにシャンク2を60mmクランプして使用し、上記のワークに対し、深さ20mmの加工穴をあけた。穴あけ加工は、切削液供給孔13から切削液を供給して行った。
穴あけ加工の条件として、送り速度f:0.1(mm/rev)において、切削速度V:100、V:150、V:200(m/min)を各10回行なった。また、送り速度f:0.2において、切削速度V:100、V:150、V:200を各10回行った。
【0025】
本実施形態のバニシングドリルリーマ1により形成した加工穴の径の拡大代の試験結果と、従来のバニシングドリルリーマにより形成した加工穴の径の拡大代の試験結果を図14の表に示す。また、この試験結果をグラフにしたものを図15および図16に示す。
ムク穴に穴あけ加工をした場合、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、従来のバニシングドリルリーマに対し、送り速度f:0.1では、拡大代のバラツキが非常に大きい。これは、ムク穴の場合、送り速度f:0.1のとき、切屑の排出性が悪く、軸ブレが生じたものと考えられる。
また、送り速度f:0.2では、拡大代の平均値が負の値になっている。これは、送り速度f:0.2のとき、切屑が大きくなるので、排出性は良くなるが、穴あけ時の摩擦熱により膨張したワークが、穴あけ加工後に収縮したものと考えられる。
【0026】
従来のバニシングドリルリーマは、芯ズレ0〜0.6(mm)において、芯ズレが大きくなるに従い拡大代のバラツキが大きくなっている。送り速度f:0.1、切削速度V:100〜200の場合、最小値−0.005(mm)、最大値0.011(mm)である。また、送り速度f:0.2、切削速度V:100〜200の場合、最小値−0.004(mm)、最大値0.026(mm)である。
【0027】
これに対し、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、芯ズレ0〜0.6(mm)において、芯ズレと送り速度に関わらず、拡大代のバラツキが小さい。送り速度f:0.1、切削速度V:100〜200の場合、最小値−0.004(mm)、最大値0.004(mm)である。また、送り速度f:0.2、切削速度V:100〜200の場合、最小値−0.004(mm)、最大値0.005(mm)である。
【0028】
次に、本実施形態のバニシングドリルリーマ1により形成した加工穴の位置度の試験結果と、従来のバニシングドリルリーマにより形成した加工穴の位置度の試験結果を図17の表に示す。また、この試験結果をグラフにしたものを図18に示す。
従来のバニシングドリルリーマは、芯ズレ0〜0.6(mm)において、芯ズレが大きくなるに従い位置度の狂いが大きくなる。また、従来のバニシングドリルリーマは、切削速度と位置度の狂いとの関係は低いものと考えられる。
従来のバニシングドリルリーマは、送り速度f:0.1、切削速度V:100〜200の場合、位置度の狂いは最大0.056(mm)である。また、送り速度f:0.2、切削速度V:100〜200の場合、位置度の狂いは最大0.081(mm)である。
【0029】
これに対し、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、送り速度f:0.1の場合、切削速度が速くなるに従い位置度の狂いが僅かに大きくなっている。一方、送り速度f:0.2の場合、切削速度と位置度の狂いとの関係は低いものと考えられる。また、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、芯ズレ0〜0.6(mm)において、芯ズレの大きさと位置度との関係は低いものと考えられる。
本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、送り速度f:0.1、切削速度V:100〜200において、位置度の狂いは最大0.038(mm)である。また、送り速度f:0.2、切削速度V:100〜200において、位置度の狂いは最大0.051(mm)である。
【0030】
本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、従来のバニシングドリルリーマに対し、以下の作用効果を奏する。
従来、2枚のドリル刃を備えたバニシングドリルリーマを用いて、予め鋳抜穴の形成されたワークに穴あけ加工をする場合、目標とする加工穴の中心と鋳抜穴の中心とがずれていると、2枚のドリル刃に作用する力が不均衡になる。このため、鋳抜穴の中心と加工穴の中心との芯ズレが大きくなるに従い、加工穴の拡大代のバラツキと位置度の狂いが共に大きくなる。また、送り速度が大きくなるに従い、加工穴の拡大代のバラツキと位置度の狂いが大きくなる。
【0031】
これに対し、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、3枚のドリル刃11がバニシングドリルリーマ1を三方で支持する。これにより、3枚のドリル刃11に作用する応力F1、F2が均衡すると共に、切削抵抗F4が均衡する。このため、バニシングドリルリーマ1の軸ブレが抑制される。穴開け加工が進むと、3枚のドリル刃と3枚のリーマ刃から軸方向に延びる3枚の案内面とが、バニシングドリルリーマ1を軸方向と径方向に支持する。このように軸ブレの少ない回転状態で、3枚のリーマ刃により仕上げ加工がされるので、精度の高い加工穴が形成される。したがって、本実施形態のバニシングドリルリーマは、従来のバニシングドリルリーマと比較して、鋳抜穴の中心と加工中心との芯ズレの大きさに関わらず、拡大代のバラツキと位置度の狂いを小さくすることができる。
【0032】
ところで、従来のバニシングドリルリーマは、例えば4mm以下のバニシングドリルリーマに対し、切削液供給路として、軸方向に通る0.4mm以下の孔を鋳造又は孔あけ加工等によって形成することが困難であった。また、この軸方向に通る孔から径外方向に分岐する孔を形成することで、リーマ刃に切削液を供給していた。
これに対し、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、切削液供給路10を軸方向前端に開口すると共に、径外方向に開口するように形成した。これにより、ドリル本体3の径外側から研削加工することで、切削液供給路10を形成することが可能となる。このため、例えば4mm以下の小径のバニシングドリルリーマ1に対し、切削液供給路10を容易に形成することができる。
また、切削液供給路10を流れる切削液は、軸方向前端の開口からドリル刃11に供給されると共に、径外方向の開口からリーマ刃12に供給される。このため、リーマ刃12に切削液を供給する孔を別途形成することなく、加工工数を低減することができる。
さらに、切削液供給路10の径外側に壁を設けることなく、ドリル本体3の径外側に切削液供給路10を形成することで、ドリル本体3の中心と切削液供給路10との距離を遠くすることが可能になる。これにより、ウェブ6の径を大きくすることで、バニシングドリルリーマ1の剛性を高くすることができる。したがって、穴あけ時のバニシングドリルリーマ1の軸ブレが抑制され、加工穴の位置精度と加工径精度を高めることができる。
【0033】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、3個の枝部と3個の分岐枝を備え、3枚のドリル刃、3枚のリーマ刃および3枚の案内面を有するバニシングドリルリーマについて説明した。これに対し、バニシングドリルリーマは、枝部と分岐枝を3個以上備えてもよく、また、ドリル刃、リーマ刃および案内面を3枚以上有するものであってもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ・・・バニシングドリルリーマ
2 ・・・シャンク
3 ・・・ドリル本体
4 ・・・小径部
5 ・・・段部
6 ・・・ウェブ(主幹部)
7 ・・・枝部
8 ・・・分岐枝
9 ・・・切屑排出ポケット
10 ・・・切削液供給路
11 ・・・ドリル刃
12 ・・・リーマ刃
13 ・・・切削液供給孔
14 ・・・案内面
111・・・肩部
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、リーマ付ドリルの一種であって、特に高速高送り用バニシングドリルリーマに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一本の工具に荒削り用の2枚のドリル刃と、仕上げ加工用の2枚のリーマ刃を備えたバニシングドリルリーマが知られている(特許文献1参照)。2枚のドリル刃は、回転方向に180°の位相差で設けられている。また、2枚のリーマ刃は、それぞれドリル刃より90°回転方向後方、かつ、ドリル刃より軸方向後方に設けられている。
このバニシングドリルリーマによってワークに穴あけ加工を行う際、先ず、ドリル刃によってワークに下穴があけられる。続いて、リーマ刃によって下穴の内壁が仕上げ加工される。これにより、高精度な穴加工が1工程に集約され、加工時間を短縮することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2572128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バニシングドリルリーマは、例えば予め鋳抜穴の形成されたアルミからなるワークに穴あけ加工をすることに用いられる。このとき、目標とする加工穴の中心と鋳抜穴の中心とがずれていると、特許文献1のバニシングドリルリーマは、穴あけ加工時の軸ブレが大きくなる。したがって、「穴あけ加工された加工穴の中心位置が目標とする加工穴の中心位置からずれる」、「加工穴の径が目標とする加工穴の径より大きくなる、又は小さくなる」等の問題が生じることが懸念されていた。この問題は、目標とする加工中心との鋳抜穴の中心と芯ずれが大きいほど、切削速度又は送り速度が大きいほど顕著に生じるおそれがあった。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工穴の位置精度および加工径精度を高めることの可能なバニシングドリルリーマを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明によると、シャンクの軸方向前方に連なるドリル本体に主幹部が形成される。主幹部の軸方向から見て略扇状の3個の枝部が主幹部の径外側で軸方向に延びて形成される。この3個の枝部のそれぞれ回転方向後方に、3個の分岐枝が軸方向に延びて形成される。分岐枝とその分岐枝の回転方向後方に位置する枝部との間には、軸方向に延びる切屑排出ポケットが形成される。
3個の枝部の軸方向前端に形成される3枚のドリル刃は、径外方向に向かい軸方向後方に傾斜するとともに、回転方向後方に向かい軸方向後方に傾斜する。
3個の分岐枝の軸方向前端に形成される3枚のリーマ刃は、径外方向に向かい軸方向前方に傾斜するとともに、回転方向後方に向かい軸方向前方に傾斜する。また、リーマ刃は、軸方向最先端がドリル刃の軸方向後端より軸方向後方に設けられ、かつ径方向最外端がドリル刃の径方向最外端より径方向外側に設けられる。
3個の分岐枝の径方向外側に形成される3枚の案内面は、横断面が主幹部の中心軸を中心とした円弧状に形成され、3枚のリーマ刃の径方向最外端から連なり軸方向に延びる。
【0006】
鋳抜穴のあけられたワークに穴あけ加工を行う際、先ず3枚のドリル刃により、鋳抜穴の径を拡げるように下穴があけられる。次いで、3枚のリーマ刃により、下穴の内壁に仕上げ加工がされる。
穴あけ加工の際、3枚のドリル刃には、バニシングドリルリーマに印加される荷重に対する応力及び切削抵抗が作用する。3枚のドリル刃は、バニシングドリルリーマを回転方向に位相の異なる三方から支持するので、バニシングドリルリーマに作用する力が均衡し、バニシングドリルリーマの軸ブレが抑制される。穴開け加工が進むと、3枚のドリル刃と3枚のリーマ刃から軸方向に延びる3枚の案内面とが、バニシングドリルリーマを軸方向と径方向に支持する。このように回転軸の安定した回転状態で、3枚のリーマ刃により下穴の内壁に精密な仕上げ加工が行なわれる。したがって、バニシングドリルリーマは、加工穴の位置精度と加工径精度を高めることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明によると、3枚のドリル刃は、それぞれ回転方向に略120°の位相差で設けられ、3枚のリーマ刃もまた、それぞれ回転方向に略120°の位相差で設けられる。これにより、穴あけ加工の際、バニシングドリルリーマに三方向から作用する力が均衡する。また、3枚のリーマ刃の傾斜角を小さくすることが可能になるので、リーマ刃に作用する切削抵抗を低減することができる。したがって、バニシングドリルリーマの軸ブレを抑制することができる。
【0008】
ところで、従来より、バニシングドリルリーマには、ドリル刃に切削液を供給する切削液供給路として、軸方向に通る孔が形成されていた。また、この軸方向に通る孔から、径外方向に分岐する孔を形成し、リーマ刃に切削液を供給していた。これらの孔は鋳造又は孔あけ加工等によって形成されるので、小径のバニシングドリルリーマ対し、小径の切削液供給路を形成することが困難であった。
そこで、請求項3に記載の発明では、枝部と分岐枝との間で軸方向に延びる切削液供給路は、軸方向前端に開口すると共に、径外方向に開口する。これにより、ドリル本体の径外方向から研削加工することで切削液供給路を形成することが可能になる。このため、小径のバニシングドリルリーマに対し、切削液供給路を容易に形成することができる。
また、切削液供給路を流れる切削液は、軸方向前端の開口からドリル刃に供給されると共に、径外方向の開口からリーマ刃に供給される。このため、リーマ刃に切削液を供給する孔を別途形成することなく、加工工数を低減することができる。
さらに、切削液供給路の径外側に壁を設けないので、ドリル本体の中心と切削液供給路との距離を遠くすることが可能になる。これにより、主幹部の径を大きくすることができる。したがって、バニシングドリルリーマの軸ブレが抑制され、加工穴の位置精度と加工径精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマを示す図である。
【図2】図1のII方向の矢視図であり、図1に示すバニシングドリルリーマを回転方向に90°回転した図である。
【図3】図2のIII方向の矢視図であり、図2に示すバニシングドリルリーマを回転方向に90°回転した図である。
【図4】図3のIV方向の矢視図であり、図3に示すバニシングドリルリーマを回転方向に90°回転した図である。
【図5】図1のV方向の矢視図である。
【図6】図1のVI方向の矢視図である。
【図7】図1のVII部分の拡大図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの模式図である。
【図9】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの穴あけ加工の動作を示す特性図である。
【図10】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの穴あけ加工の動作を示す特性図である。
【図11】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの穴あけ加工の動作を示す特性図である。
【図12】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの穴あけ加工の動作を示す特性図である。
【図13】本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマのリーマ加工の動作を示す特性図である。
【図14】従来のバニシングドリルリーマによる加工穴径と、本発明の第1実施形態のバニシングドリルリーマによる加工穴径との比較を示す表である。
【図15】図14の表をグラフにしたものである。
【図16】図14の表をグラフにしたものである。
【図17】従来のバニシングドリルリーマによる穴位置精度と、本発明の第1実施形態のバニシングドリルリーマによる穴位置精度との比較を示す表である。
【図18】図17の表をグラフにしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるバニシングドリルリーマの構成を図1〜図8に示す。本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、超硬合金から形成される。シャンク2の軸方向前方に連なるドリル本体3には、ドリル本体3の最大外径より外径の小さい小径部4が先端部から段部5まで形成されている。小径部4の軸方向の長さは、バニシングドリルリーマ1が加工する加工穴の深さに加え、ドリル刃11とリーマ刃12の再研磨加工を所定回数行うことの可能な長さに設定されている。
【0011】
図5に示すように、ドリル本体3には、軸方向から見て中心部に形成される主幹部としてのウェブ6と、このウェブ6の径外側に略扇状に形成される3個の枝部7と、3個の枝部7のそれぞれ回転方向後方に設けられる3個の分岐枝8が形成されている。ウェブ6、枝部7及び分岐枝8は、ドリル本体3の軸と平行に軸方向に延びている。
なお、図5ではウェブ6を破線によって概念的に区分し、図7では枝部7と分岐枝8を破線によって概念的に区分しているが、ウェブ6、枝部7及び分岐枝8は、ドリル本体3を研削加工することで、一体に形成されるものである。
【0012】
本実施形態では、ウェブ6の直径D1は、小径部4の直径D2の約1/3に形成されている。なお、ウェブ6の直径D1は、小径部4の直径D2の約1/3以上に形成してもよい。ウェブ6の直径D1を大きくすることで、バニシングドリルリーマ1の剛性が高くなる。但し、ウェブ6の直径D1を大きくすると、切屑排出ポケット9の容積が小さくなる。
3個の枝部7は回転方向に略均等間隔で設けられている。本実施形態では、3個の枝部7は、それぞれ回転方向に約120°の位相差で形成されている。
3個の分岐枝8は、3個の枝部7のそれぞれ回転方向後方に略同一の位相差で設けられている。分岐枝8の回転方向前側の面は、バニシングドリルリーマ1の半径方向と略一致するように形成されている。分岐枝8の回転方向後側の面は、ウェブ6の外径から分岐枝8の回転方向前側の面と平行に形成されている。
【0013】
分岐枝8と、その分岐枝8の回転方向後方に位置する枝部7との間には、それぞれ切屑排出ポケット9が形成されている。本実施形態では、3個の切屑排出ポケット9は、分岐枝8の回転方向後側の面と、その分岐枝8の回転方向後方に位置する枝部7の回転方向前側の面とのなす角θが約75°で形成されている。
枝部7と分岐枝8との間に、切削液供給路10が形成されている。切削液供給路10は、軸方向に延び、軸方向前端に開口すると共に、径外方向に開口している。切削液供給路10は、回転方向前側の面と、回転方向後側の面とが略平行に形成され、径内方向の面が円弧状に形成されている。
切削液供給路10は、軸方向後方で、シャンク2の軸方向後端部から通じる切削液供給孔13に連通している。これにより、切削液供給孔13から切削液供給路10に切削液が供給される。切削液供給路10に供給された切削液は、切削液供給路10内を旋回しながら軸方向に流れ、ドリル刃11とリーマ刃12と案内面14に供給される。
【0014】
3枚のドリル刃11は、それぞれ3個の枝部7の軸方向前端に形成される。ドリル刃11は、主幹部の中心から径外方向に向かい軸方向後方に傾斜すると共に、回転方向後方に向かい軸方向後方に傾斜するように形成される。
3枚のドリル刃11の軸方向の高さは、略同一に形成される。本実施形態では、3枚のドリル刃11の軸方向の高さは、1/100mm以下の精度で形成されている。
図8に示すように、ドリル刃11の先端角αは、110°≦α≦180°の範囲で形成される。α≦180°としたのは、切削抵抗を低減し、穴あけ時の加熱を防ぐためである。一方、110°≦αとしたのは、穴あけ時にドリル刃11から径内方向に作用する分力を小さくすることで、ワークに予め設けられた鋳抜穴の中心と目標とする加工中心とがずれている場合、バニシングドリルリーマ1の求心性を低減するためである。なお、本実施形態において、ドリル刃11の先端角αは、140°≦α≦160°の範囲が理想である。ただし、ドリル刃11の先端角αは、加工物の寸法に制約されるため、指示がある場合はその指示に従う。
【0015】
3枚のリーマ刃12は、それぞれ3個の分岐枝8の軸方向前端に形成される。リーマ刃12は、径外方向に向かい軸方向前方に傾斜するとともに、回転方向後方に向かい軸方向前方に傾斜して形成されている。また、リーマ刃12の径方向最外端は、ウェブ6の中心軸を中心とした円弧状に形成されている。
リーマ刃12のすくい角βは、0°<β≦30°の範囲で形成される。0°<βとしたのは、送り方向の切削抵抗を低減することで切削能力を高めると共に、切屑を径内側に導くことで切削面に切屑が入り込むことを抑制するためである。一方、β≦30°としたのは、刃欠けの危険度を低減するためである。なお、本実施形態において、リーマ刃12のすくい角βは、5°≦β≦15°の範囲が理想である。
【0016】
図7に示すように、バニシングドリルリーマ1を径方向から見たときのリーマ刃12の傾斜角γは、3°≦γ≦30°の範囲で形成される。3°≦γとしたのは、リーマ刃12の軸方向の長さが、穴あけ時の送り量より小さくなると、ドリル刃11で形成した下穴の内壁をリーマ刃12が切削することができなくなるからである。一方、γ≦30°としたのは、下穴の内壁に当接する面を広くすることで、下穴の内壁とリーマ刃12との溶着を抑制し、加工精度を高めるためである。リーマ刃12の傾斜角γを小さくすると、下穴の内壁の一定面積に対してリーマ刃が当接する面が広くなることで、切削抵抗が低減する。これにより、リーマ刃12と下穴の内壁との溶着が抑制され、加工精度が高まる。また、切削抵抗の低減により、軸ブレが抑制される。
なお、本実施形態において、リーマ刃12の傾斜角γは、5°≦γ≦15°の範囲でよく使用され、好ましくは7°≦γ≦13°の範囲である。
【0017】
また、図8に示すように、リーマ刃12は、軸方向最先端がドリル刃11の軸方向最後端より軸方向後方に設けられ、かつ径方向最外端がドリル刃11の径方向最外端より径方向外側に設けられる。これにより、ドリル刃11で形成された下穴の内壁をリーマ刃12で仕上げ加工することが可能になる。
本実施形態では、リーマ刃12の軸方向最先端(回転方向最後端かつ径方向最外端)と、ドリル刃11の回転方向最前端かつ径方向最外端との軸方向の距離δが、約2mmで形成されている。但し、距離δについては、加工物の指示に従うことが多く、自由度がある。
また、本実施形態では、ウェブ6の中心軸からリーマ刃12の径方向最外端までの距離と、ウェブ6の中心軸からドリル刃11の径方向最外端までの距離との差εが約0.1mmで形成されている。但し、この距離の差εについては、0.01〜0.2mmの範囲で形成するのが主流であり、本実施形態では、約0.1mmで形成されている。
【0018】
3枚の案内面14は、それぞれ3個の分岐枝8の径方向外側に形成される。3枚の案内面14は、横断面がウェブ6の中心軸を中心とした円弧状に形成され、3枚のリーマ刃12の径方向最外端に連なり軸方向に延びている。これにより、案内面14は、リーマ刃12による仕上げ加工のされた加工穴の内壁に摺接し、バニシングドリルリーマ1を径方向に支持する。
【0019】
本実施形態のバニシングドリルリーマ1の動作を説明する。
本実施形態では、例えば、予め鋳抜穴の形成されたアルミからなるワークに穴あけ加工をする場合を説明する。図9〜図12では、ワーク20の鋳抜穴21の中心O1と目標とする加工穴の中心O2とがずれている。なお、図9〜図12において、バニシングドリルリーマ1の断面のハッチングは省略している。
先ず、図9に示すように、目標とする加工穴の中心O2から鋳抜穴21の中心O1がずれた方向と反対側がドリル刃11により削られる。このとき、バニシングドリルリーマ1には、ドリル刃11の先端角αと送り量に応じて、ドリル刃11に作用する応力Fの分力F1が径内方向の一方に作用する。また、バニシングドリルリーマ1には、ワーク20の切削面とドリル刃11との当接面積、及び切削速度に応じて切削抵抗F4が作用する。
【0020】
次に、図10に示すように、鋳抜穴21の径外側の全周がドリル刃11により削られると、バニシングドリルリーマ1は、ドリル刃11により三方から支持される。このとき、バニシングドリルリーマ1には、3枚のドリル刃11から径内方向に分力F1が作用する。また、バニシングドリルリーマ1には、3枚のドリル刃11から軸方向に分力F2が作用する。また、3枚のドリル刃11から回転方向と逆方向に切削抵抗F4が作用する。これにより、バニシングドリルリーマ1に三方向から作用する力が均衡するので、バニシングドリルリーマ1の軸ブレが低減される。
続いて、図11に示すように、鋳抜穴21の径がドリル刃11により拡げられ、ドリル刃11によって形成された下穴にドリル刃11の肩部111が入ると、バニシングドリルリーマ1は、3枚のドリル刃11により軸方向と径方向に三方から支持される。これにより、バニシングドリルリーマ1の軸ブレが確実に抑制される。
穴開け加工が進み、図12に示すように、3枚のドリル刃11と3枚のリーマ刃12から軸方向に延びる3枚の案内面14とが、バニシングドリルリーマ1を軸方向と径方向に支持する。このように軸ブレの抑制された回転状態で、3枚のリーマ刃12により下穴の内壁に精密な仕上げ加工が行なわれる。
【0021】
3枚のリーマ刃12により下穴の内壁に仕上げ加工がされる動作を図13(A)に示す。
図13(A)では、回転方向に略120°の位相差で形成された3枚のリーマ刃12の径方向最外端と、そのリーマ刃12に連なる案内面14を摸式的に示している。また、実線で示すリーマ刃12と案内面14が120°回転移動した状態を破線で表わしている。ここで、リーマ刃12は、120°回転するときの軸方向の変位量に対応する斜面の長さωが有効な切刃となる。なお、リーマ刃12により削れた切屑は、リーマ刃12の径内方向に導かれ、切削液供給路10もしくは切屑排出ポケット9から加工穴の外へ排出される。
【0022】
ここで、従来のバニシングドリルリーマとして、2枚のリーマ刃12により下穴の内壁に仕上げ加工がされる動作を図13(B)に示す。従来のバニシングドリルリーマは、2枚のリーマ刃が回転方向に180°の位相差で設けられているものとする。
従来のバニシングドリルリーマは、リーマ刃の有効な切刃の長さω1を、本実施形態のリーマ刃の有効な切刃の長さωと略同じにしている。このため、従来のバニシングドリルリーマは、リーマ刃の傾斜角γ1が本実施形態のリーマ刃の傾斜角γよりも大きくなっている。
つまり、本実施形態のバニシングドリルリーマは、リーマ刃12の位相差が120°であることで、リーマ刃12の傾斜角γを従来のリーマ刃の傾斜角γ1より小さくすることが可能となる。これにより、下穴の内壁の一定面積に対してリーマ刃の当接する面が広くなることで、切削抵抗が低減する。したがって、リーマ刃12と下穴の内壁との溶着が抑制され、加工精度を高めることができる。また、バニシングドリルリーマ1の軸ブレを抑制することができる。
【0023】
本実施形態のバニシングドリルリーマ1により形成した加工穴と、従来のバニシングドリルリーマにより形成した加工穴とを比較した試験結果を図14〜図18に示す。
図14〜図18では、従来のバニシングドリルリーマを「2枚刃(従来)」と表記し、本実施形態のバニシングドリルリーマ1を「3枚刃(新)」と表記している。
試験では、全長120mm、リーマ刃12の外径10φ(mm)のバニシングドリルリーマ1を使用した。
従来のバニシングドリルリーマとして、2枚のドリル刃と2枚のリーマ刃とを備えたものを使用した。この従来のバニシングドリルリーマは、2枚のドリル刃が回転方向に180°の位相差で設けられている。また、2枚のリーマ刃は、それぞれドリル刃より90°回転方向後方に設けられている。それ以外、従来のバニシングドリルリーマの構成は、本実施形態のバニシングドリルリーマ1の構成と同一である。
【0024】
試験には、ワークとしてアルミ材を使用し、このアルミ材に鋳抜穴相当の穴をあけていないもの(以下「ムク穴」という)と、鋳抜穴相当の穴として径8φ(mm)深さ17mmの穴をあけたものを用意した。アルミ材に鋳抜穴相当の穴をあけたものとしては、鋳抜穴相当の穴と目標とする加工中心とが一致するもの(芯ズレ0mm)と、鋳抜穴相当の穴と目標とする加工中心との芯ズレが0.2mm、0.4mm、0.6mmのものを用意した。
バニシングドリルリーマ1は、回転機のホルダにシャンク2を60mmクランプして使用し、上記のワークに対し、深さ20mmの加工穴をあけた。穴あけ加工は、切削液供給孔13から切削液を供給して行った。
穴あけ加工の条件として、送り速度f:0.1(mm/rev)において、切削速度V:100、V:150、V:200(m/min)を各10回行なった。また、送り速度f:0.2において、切削速度V:100、V:150、V:200を各10回行った。
【0025】
本実施形態のバニシングドリルリーマ1により形成した加工穴の径の拡大代の試験結果と、従来のバニシングドリルリーマにより形成した加工穴の径の拡大代の試験結果を図14の表に示す。また、この試験結果をグラフにしたものを図15および図16に示す。
ムク穴に穴あけ加工をした場合、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、従来のバニシングドリルリーマに対し、送り速度f:0.1では、拡大代のバラツキが非常に大きい。これは、ムク穴の場合、送り速度f:0.1のとき、切屑の排出性が悪く、軸ブレが生じたものと考えられる。
また、送り速度f:0.2では、拡大代の平均値が負の値になっている。これは、送り速度f:0.2のとき、切屑が大きくなるので、排出性は良くなるが、穴あけ時の摩擦熱により膨張したワークが、穴あけ加工後に収縮したものと考えられる。
【0026】
従来のバニシングドリルリーマは、芯ズレ0〜0.6(mm)において、芯ズレが大きくなるに従い拡大代のバラツキが大きくなっている。送り速度f:0.1、切削速度V:100〜200の場合、最小値−0.005(mm)、最大値0.011(mm)である。また、送り速度f:0.2、切削速度V:100〜200の場合、最小値−0.004(mm)、最大値0.026(mm)である。
【0027】
これに対し、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、芯ズレ0〜0.6(mm)において、芯ズレと送り速度に関わらず、拡大代のバラツキが小さい。送り速度f:0.1、切削速度V:100〜200の場合、最小値−0.004(mm)、最大値0.004(mm)である。また、送り速度f:0.2、切削速度V:100〜200の場合、最小値−0.004(mm)、最大値0.005(mm)である。
【0028】
次に、本実施形態のバニシングドリルリーマ1により形成した加工穴の位置度の試験結果と、従来のバニシングドリルリーマにより形成した加工穴の位置度の試験結果を図17の表に示す。また、この試験結果をグラフにしたものを図18に示す。
従来のバニシングドリルリーマは、芯ズレ0〜0.6(mm)において、芯ズレが大きくなるに従い位置度の狂いが大きくなる。また、従来のバニシングドリルリーマは、切削速度と位置度の狂いとの関係は低いものと考えられる。
従来のバニシングドリルリーマは、送り速度f:0.1、切削速度V:100〜200の場合、位置度の狂いは最大0.056(mm)である。また、送り速度f:0.2、切削速度V:100〜200の場合、位置度の狂いは最大0.081(mm)である。
【0029】
これに対し、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、送り速度f:0.1の場合、切削速度が速くなるに従い位置度の狂いが僅かに大きくなっている。一方、送り速度f:0.2の場合、切削速度と位置度の狂いとの関係は低いものと考えられる。また、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、芯ズレ0〜0.6(mm)において、芯ズレの大きさと位置度との関係は低いものと考えられる。
本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、送り速度f:0.1、切削速度V:100〜200において、位置度の狂いは最大0.038(mm)である。また、送り速度f:0.2、切削速度V:100〜200において、位置度の狂いは最大0.051(mm)である。
【0030】
本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、従来のバニシングドリルリーマに対し、以下の作用効果を奏する。
従来、2枚のドリル刃を備えたバニシングドリルリーマを用いて、予め鋳抜穴の形成されたワークに穴あけ加工をする場合、目標とする加工穴の中心と鋳抜穴の中心とがずれていると、2枚のドリル刃に作用する力が不均衡になる。このため、鋳抜穴の中心と加工穴の中心との芯ズレが大きくなるに従い、加工穴の拡大代のバラツキと位置度の狂いが共に大きくなる。また、送り速度が大きくなるに従い、加工穴の拡大代のバラツキと位置度の狂いが大きくなる。
【0031】
これに対し、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、3枚のドリル刃11がバニシングドリルリーマ1を三方で支持する。これにより、3枚のドリル刃11に作用する応力F1、F2が均衡すると共に、切削抵抗F4が均衡する。このため、バニシングドリルリーマ1の軸ブレが抑制される。穴開け加工が進むと、3枚のドリル刃と3枚のリーマ刃から軸方向に延びる3枚の案内面とが、バニシングドリルリーマ1を軸方向と径方向に支持する。このように軸ブレの少ない回転状態で、3枚のリーマ刃により仕上げ加工がされるので、精度の高い加工穴が形成される。したがって、本実施形態のバニシングドリルリーマは、従来のバニシングドリルリーマと比較して、鋳抜穴の中心と加工中心との芯ズレの大きさに関わらず、拡大代のバラツキと位置度の狂いを小さくすることができる。
【0032】
ところで、従来のバニシングドリルリーマは、例えば4mm以下のバニシングドリルリーマに対し、切削液供給路として、軸方向に通る0.4mm以下の孔を鋳造又は孔あけ加工等によって形成することが困難であった。また、この軸方向に通る孔から径外方向に分岐する孔を形成することで、リーマ刃に切削液を供給していた。
これに対し、本実施形態のバニシングドリルリーマ1は、切削液供給路10を軸方向前端に開口すると共に、径外方向に開口するように形成した。これにより、ドリル本体3の径外側から研削加工することで、切削液供給路10を形成することが可能となる。このため、例えば4mm以下の小径のバニシングドリルリーマ1に対し、切削液供給路10を容易に形成することができる。
また、切削液供給路10を流れる切削液は、軸方向前端の開口からドリル刃11に供給されると共に、径外方向の開口からリーマ刃12に供給される。このため、リーマ刃12に切削液を供給する孔を別途形成することなく、加工工数を低減することができる。
さらに、切削液供給路10の径外側に壁を設けることなく、ドリル本体3の径外側に切削液供給路10を形成することで、ドリル本体3の中心と切削液供給路10との距離を遠くすることが可能になる。これにより、ウェブ6の径を大きくすることで、バニシングドリルリーマ1の剛性を高くすることができる。したがって、穴あけ時のバニシングドリルリーマ1の軸ブレが抑制され、加工穴の位置精度と加工径精度を高めることができる。
【0033】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、3個の枝部と3個の分岐枝を備え、3枚のドリル刃、3枚のリーマ刃および3枚の案内面を有するバニシングドリルリーマについて説明した。これに対し、バニシングドリルリーマは、枝部と分岐枝を3個以上備えてもよく、また、ドリル刃、リーマ刃および案内面を3枚以上有するものであってもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ・・・バニシングドリルリーマ
2 ・・・シャンク
3 ・・・ドリル本体
4 ・・・小径部
5 ・・・段部
6 ・・・ウェブ(主幹部)
7 ・・・枝部
8 ・・・分岐枝
9 ・・・切屑排出ポケット
10 ・・・切削液供給路
11 ・・・ドリル刃
12 ・・・リーマ刃
13 ・・・切削液供給孔
14 ・・・案内面
111・・・肩部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンクの軸方向前方に連なるドリル本体に形成される主幹部と、
前記主幹部の軸方向から見て前記主幹部の径外側に略扇状に形成され、軸方向に延びる3個の枝部と、
3個の前記枝部のそれぞれ回転方向後方に設けられ、軸方向に延びる3個の分岐枝と、を備え、
前記分岐枝と該分岐枝の回転方向後方に位置する前記枝部との間には、軸方向に延びる切屑排出ポケットが形成され、
3個の前記枝部は、該枝部の軸方向前端に、径外方向に向かい軸方向後方に傾斜するとともに、回転方向後方に向かい軸方向後方に傾斜して形成される3枚のドリル刃を有し、
3個の前記分岐枝は、該分岐枝の軸方向前端に、径外方向に向かい軸方向前方に傾斜するとともに、回転方向後方に向かい軸方向前方に傾斜して形成され、軸方向最先端が前記ドリル刃の軸方向後端より軸方向後方に設けられ、かつ径方向最外端が前記ドリル刃の径方向最外端より径方向外側に設けられる3枚のリーマ刃を有し、
3個の前記分岐枝は、該分岐枝の径方向外側で、横断面が前記主幹部の中心軸を中心とした円弧状に形成され、3枚の前記リーマ刃の径方向最外端から連なり軸方向に延びる3枚の案内面を有することを特徴とするバニシングドリルリーマ。
【請求項2】
3枚のドリル刃は、それぞれ回転方向に略120°の位相差で設けられ、
3枚のリーマ刃は、それぞれ回転方向に略120°の位相差で設けられることを特徴とする請求項1に記載のバニシングドリルリーマ。
【請求項3】
前記枝部と前記分岐枝との間に、軸方向に延びる切削液供給路が形成され、
前記切削液供給路は軸方向前端に開口すると共に、径外方向に開口することを特徴とする請求項1または2に記載のバニシングドリルリーマ。
【請求項1】
シャンクの軸方向前方に連なるドリル本体に形成される主幹部と、
前記主幹部の軸方向から見て前記主幹部の径外側に略扇状に形成され、軸方向に延びる3個の枝部と、
3個の前記枝部のそれぞれ回転方向後方に設けられ、軸方向に延びる3個の分岐枝と、を備え、
前記分岐枝と該分岐枝の回転方向後方に位置する前記枝部との間には、軸方向に延びる切屑排出ポケットが形成され、
3個の前記枝部は、該枝部の軸方向前端に、径外方向に向かい軸方向後方に傾斜するとともに、回転方向後方に向かい軸方向後方に傾斜して形成される3枚のドリル刃を有し、
3個の前記分岐枝は、該分岐枝の軸方向前端に、径外方向に向かい軸方向前方に傾斜するとともに、回転方向後方に向かい軸方向前方に傾斜して形成され、軸方向最先端が前記ドリル刃の軸方向後端より軸方向後方に設けられ、かつ径方向最外端が前記ドリル刃の径方向最外端より径方向外側に設けられる3枚のリーマ刃を有し、
3個の前記分岐枝は、該分岐枝の径方向外側で、横断面が前記主幹部の中心軸を中心とした円弧状に形成され、3枚の前記リーマ刃の径方向最外端から連なり軸方向に延びる3枚の案内面を有することを特徴とするバニシングドリルリーマ。
【請求項2】
3枚のドリル刃は、それぞれ回転方向に略120°の位相差で設けられ、
3枚のリーマ刃は、それぞれ回転方向に略120°の位相差で設けられることを特徴とする請求項1に記載のバニシングドリルリーマ。
【請求項3】
前記枝部と前記分岐枝との間に、軸方向に延びる切削液供給路が形成され、
前記切削液供給路は軸方向前端に開口すると共に、径外方向に開口することを特徴とする請求項1または2に記載のバニシングドリルリーマ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−91258(P2012−91258A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239637(P2010−239637)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000237499)富士精工株式会社 (21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000237499)富士精工株式会社 (21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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