説明

バニシング加工方法

【課題】簡便且つ短時間にバニシング加工条件の設定をすることができるバニシング加工方法を提供する。
【解決手段】金属材料2に対するバニシング量Dvとバニシング加工前の加工前表面粗さ値とローラ1の回転数Nとローラ1が移動する速度である送り速度fとを含むデータベースを作成し、データベースに格納されたデータに基づいてバニシング加工後の加工後表面粗さ値及びバニシング加工前後の寸法変化量Dsに対する応答曲面を作成し、かかる応答曲面から要求表面粗さ値及び要求寸法を用いて金属材料2の加工前寸法及び加工前表面粗さ値並びにローラ1の回転数N及び送り速度fを導出し、導出した加工前寸法及び加工前表面粗さ値を有する金属材料2に対して導出した回転数N及び送り速度fでバニシング加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バニシング加工方法に関し、特に、加工条件等を最適に設定できるバニシング加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製品の耐摩耗性や疲労強度を向上させるための表面仕上げ法としてバニシング加工がある。バニシング加工とは、ローラ等のツールによって、材料表面を塑性変形させることにより表面の凹凸を均一にし、加工硬化によって材料の表面硬度を上昇させる方法である。この方法は、他の方法と比べて、短時間で表面粗さを小さくし、且つ、仕上げ面の硬度を向上できる等の利点を有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、円柱材料に対するローラバニシング加工において、ローラ間の径をツール径と呼び、バニシング加工前の円柱材料の径とツール径との差をバニシング量(又はバニシ量)と呼ぶ。そして、ローラバニシング加工を実施する際には、加工後に要求される材料の寸法や表面粗さに応じて、バニシング量、ローラの回転数、ローラの送り速度等の加工条件を適宜調節しなければならない。従来、これらの設定は、熟練者によって人手で行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−220225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の熟練者によるバニシング加工の条件設定では、コスト及び時間がかかるという問題があった。また、発明者らの研究によって、バニシング加工前の金属製品の表面粗さによってもバニシング加工による寸法変化量やバニシング加工後の表面粗さが変わってくるという知見が得られており、最適なバニシング加工の条件の設定は熟練者であっても困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、簡便且つ短時間にバニシング加工条件の設定をすることができるバニシング加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、回転するローラで金属材料の表面を押し潰すバニシング加工を行って、前記金属材料の表面粗さ値及び寸法を要求表面粗さ値及び要求寸法にするバニシング加工方法であって、バニシング加工後の加工後表面粗さ値に対するバニシング量とバニシング加工前の加工前表面粗さ値との関係を示す第一応答曲面を作成する第一応答曲面作成工程と、前記第一応答曲面上の複数の任意の点を選択する任意点選択工程と、前記任意点選択工程で選択した各点のバニシング量及び加工前表面粗さ値について、前記加工後表面粗さ値に対する前記ローラの回転数と前記ローラが移動する速度である送り速度との関係を示す第二応答曲面をそれぞれ作成する第二応答曲面作成工程と、前記各第二応答曲面における前記加工後表面粗さ値の最大値に対するバニシング量及び加工前表面粗さ値との関係を示す第三応答曲面を作成する第三応答曲面作成工程と、前記各第二応答曲面における前記加工後表面粗さ値の最小値に対するバニシング量及び加工前表面粗さ値との関係を示す第四応答曲面を作成する第四応答曲面作成工程と、前記第三応答曲面と前記第四応答曲面とによって囲まれる空間について、前記加工後表面粗さ値が前記要求表面粗さ値以下となるバニシング量及び加工前表面粗さ値を選択する第一条件選択工程と、前記第一条件選択工程で選択したバニシング量及び加工前表面粗さ値について、前記加工後表面粗さ値に対する回転数及び送り速度の関係を示す第五応答曲面を作成する第五応答曲面作成工程と、前記第五応答曲面について前記加工後表面粗さ値が前記要求表面粗さ値以下となる回転数及び送り速度を選択する第二条件選択工程と、バニシング加工前後の寸法変化量に対する、前記バニシング量、前記加工前表面粗さ値、前記回転数及び前記送り速度のうちの二条件の関係を示す第六応答曲面を作成する第六応答曲面作成工程と、前記第六応答曲面の前記二条件に前記第一条件選択工程又は前記第二条件選択工程で選択した数値を代入して寸法変化量を決定し、決定した寸法変化量と前記要求寸法とを足した値を前記金属材料の加工前寸法として算出する第三条件算出工程と、前記第二条件選択工程で選択した回転数及び送り速度並びに前記第一条件選択工程で選択したバニシング量で、前記第三条件算出工程で算出した前記加工前寸法及び前記第一条件選択工程で選択した前記加工前表面粗さ値を有する金属材料にバニシング加工を実施するバニシング加工工程と、を有することを特徴とするバニシング加工方法が提供される。
【0008】
前記任意点選択工程は、前記第一応答曲面の各頂点と前記第一応答曲面内を格子状に複数に分割した交点とを選択する工程であってもよい。
【0009】
前記第一条件選択工程は、前記第三応答曲面と前記第四応答曲面とによって囲まれる空間について、前記加工後表面粗さ値が前記要求表面粗さ値となる平面又は前記要求表面粗さ値以下となる空間の重心点又は中心点のバニシング量及び加工前表面粗さ値を選択する工程であってもよい。
【0010】
前記第二条件選択工程は、前記第五応答曲面について前記加工後表面粗さが前記要求表面粗さ値となる曲線又は前記要求表面粗さ値以下となる曲面の重心点又は中心点の回転数及び送り速度を選択する工程であってもよい。
【0011】
前記表面粗さ値は、例えば、算術平均粗さ値又は最大高さ粗さ値である。
【0012】
前記第一応答曲面作成工程よりも前に、前記第一乃至第六応答曲面を作成するためのデータを計測し、計測したデータを格納したデータベースを作成するデータベース作成工程を有していてもよい。
【0013】
前記バニシング加工工程の前に、前記金属材料を前記第三条件算出工程で算出した前記加工前寸法及び前記第一条件選択工程で選択した前記加工前表面粗さ値を有する素材に加工する成型加工工程を有していてもよい。
【0014】
また、本発明によれば、回転するローラで金属材料の表面を押し潰すバニシング加工を行って、前記金属材料の表面粗さ値及び寸法を要求表面粗さ値及び要求寸法にするバニシング加工方法であって、少なくとも、前記金属材料に対する、バニシング量と、バニシング加工前の加工前表面粗さ値と、前記ローラの回転数と、前記ローラが移動する速度である送り速度と、を含むデータベースを作成し、前記データベースに格納されたデータに基づいて、バニシング加工後の加工後表面粗さ値及びバニシング加工前後の寸法変化量に対する応答曲面を作成し、前記応答曲面から、前記要求表面粗さ値及び前記要求寸法を用いて、前記金属材料の加工前寸法及び加工前表面粗さ値並びに前記ローラの回転数及び送り速度を導出し、導出した前記加工前寸法及び前記加工前表面粗さ値を有する金属材料に対して、導出した前記回転数及び前記送り速度でバニシング加工を行う、ことを特徴とするバニシング加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係るバニシング加工方法によれば、所定のパラメータに基づく応答曲面を作成し、該応答曲面からバニシング加工条件を決定することができるので、簡便且つ短時間にバニシング加工条件の設定をすることができる。したがって、熟練者に頼ることなくバニシング加工の条件設定を行うことができる。
【0016】
また、バニシング加工の条件を特定し、バニシング加工前の金属材料を所定の寸法及び粗さ値を有する形状に成型加工することにより、バニシング加工の条件設定や変更を行う回数を低減することができ、最適なバニシング加工の条件を維持したままバニシング加工を行うことができ、安定したバニシング加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】バニシング加工の原理を説明するための模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るバニシング加工方法に使用するバニシング工具を示す図であり、(a)は、バニシング量及びツール径、(b)は回転数、(c)は送り速度、を説明するための図である。
【図3】加工前表面粗さ値のバニシ量(直径)及び実際の直径変化量に対する分布図である。
【図4】金属材料のバニシング加工前後の表面形状の模式図であり、(a)は加工前表面粗さ値Raが1〜3[μm]の場合、(b)は加工前表面粗さ値Raが5〜7[μm]の場合、を示している。
【図5】(a)はステンレス鋼、(b)はチタン合金、のバニシング量と加工前表面粗さ値に対する寸法変化量の応答曲面を示し、(c)はステンレス鋼、(d)はチタン合金、のバニシング量と加工前表面粗さ値に対する加工後表面粗さ値の応答曲面を示している。
【図6】本発明の実施形態に係るバニシング加工方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係るバニシング加工方法に使用する応答曲面を示す模式図であり、(a)は第一応答曲面作成工程、(b)は任意点選択工程、(c)は第二応答曲面作成工程、(d)は第三応答曲面作成工程及び第四応答曲面作成工程、(e)及び(f)は第一条件選択工程、(g)は第五応答曲面作成工程、(h)は第二条件選択工程、(i)は第六応答曲面作成工程、を示している。
【図8】本発明の他の実施形態に係るバニシング加工方法に使用する応答曲面を示す図であり、(a)は第一条件選択工程、(b)は第二条件選択工程、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るバニシング加工方法について、図1乃至図8を用いて説明する。最初に、バニシング加工の原理について説明する。ここで、図1は、バニシング加工の原理を説明するための模式図である。図2は、本発明の実施形態に係るバニシング加工方法に使用するバニシング工具を示す図であり、(a)は、バニシング量及びツール径、(b)は回転数、(c)は送り速度、を説明するための図である。図3は、加工前表面粗さ値のバニシ量(直径)及び実際の直径変化量に対する分布図である。図4は、金属材料のバニシング加工前後の表面形状の模式図であり、(a)は加工前表面粗さ値Raが1〜3[μm]の場合、(b)は加工前表面粗さ値Raが5〜7[μm]の場合、を示している。図5は、(a)はステンレス鋼、(b)はチタン合金、のバニシング量と加工前表面粗さ値に対する寸法変化量の応答曲面を示し、(c)はステンレス鋼、(d)はチタン合金、のバニシング量と加工前表面粗さ値に対する加工後表面粗さ値の応答曲面を示している。
【0019】
バニシング加工とは、例えば、回転するローラ1によって円柱形状の金属材料2の表面を塑性変形させることにより表面の凹凸を均一にし、加工硬化によって材料の表面硬度を上昇させる方法である。具体的に説明すると、図1に示すように、領域aでは、ローラ1が金属材料2の表面に押し付けられ徐々に加圧される。そして、領域bでは、接触圧力が金属材料2の降伏点を越えて塑性変形を起こす。領域cでは、ローラ1が加工面から離脱し、金属材料2は微小な距離Drだけ弾性回復する。この際、ローラ1が通った箇所は、表面の凹凸がならされて粗さが小さくなる。図中のDvは、ローラ1が金属材料2の表面から押し付けられる距離で、バニシング量(又はバニシ量)と呼ぶ。バニシング加工された表面は、加工硬化による硬度の上昇と表面層の引張残留応力が圧縮残留応力へと変化する。また、バニシング加工を実施する前の表面からバニシング加工を実施して距離Drだけ弾性回復した後の表面までの距離Dsを寸法変化量と呼ぶ。
【0020】
図2(a)に示すように、ローラ1は、バニシングツール3に付属している。バニシングツール3は、ローラ1のツール径Dtを調整することでバニシング量Dvを変更することができる。また、バニシングツール3は、図2(b)及び(c)に示すように、ミーリングチャック4に固定された円柱形状の金属材料2の全面にバニシング加工を施すために、回転数N[rpm]で回転し、送り速度f[mm/rev]で往復運動をする。
【0021】
加工方法には、バニシング量Dvを一定にする方法とツール径Dtを一定にする方法との2つの方法がある。バニシング量Dvを一定にする方法での加工は、金属材料2に対してツール径Dtを調整し、全ての金属材料2に対して同じバニシング量Dvで加工を行う。ツール径Dtを一定にする方法での加工は、金属材料2によってツール径Dtを調整せずに加工を行うため、バニシング量Dvは金属材料2の寸法によって異なる。
【0022】
生産現場で用いる場合、ツール径Dtを一定にする方法で加工を行う方が、金属材料2の寸法によってツール径Dtを調整せずに済むために、バニシング量Dvを一定にする方法よりも生産性が高い。そこで、本実施形態では、ツール径Dtを一定にし、バニシング量Dvを変化させて、バニシング加工を行う。
【0023】
ここで、図3に示すように、金属材料2が、加工前表面粗さ値として算術平均粗さ値(以下、Ra)が1〜3[μm]であるものとRaが5〜7[μm]のものを使用して、バニシング加工におけるバニシ量(直径)[mm]と実際の直径変化量[mm]の関係を調べた。その結果、加工前表面粗さ値が大きいと直径変化量が大きくなるとことが分かった。なお、図3において、加工前表面粗さ値Raが1〜3[μm]のデータを□で表示し、加工前表面粗さ値Raが5〜7[μm]のデータを◆で表示している。
【0024】
バニシング加工は、ローラ1を金属材料2の表面に押し付けることによって表面を滑らかにする加工法である。図4(a)及び(b)に示すように、ローラ1が押し付けられた山部分は、谷部分の隙間へと塑性流動を起こすと考えられる。図4(a)に示したRa5〜7の金属材料2の表面の谷部分は、図4(b)に示したRa1〜3のものよりも広いため、変形できる領域が大きい。そのため、Ra5〜7の加工後表面S2と加工前表面S1との距離である寸法変化量Dsは、Ra1〜3の加工後表面S3と加工前表面S1との距離である寸法変化量Dsより大きくなる。従って、図3に示したように、加工前表面粗さが大きいと寸法変化量が大きくなるものと考えられる。
【0025】
図5(a)及び(b)に示すように、ステンレス鋼(例えば、SUS304)、チタン合金(例えば、Ti−6Al−4V)ともに、加工前表面粗さ値が大きいほど寸法変化量が大きい傾向にあることが理解できる。また、バニシング量3〜5の範囲で比較すると、同じ加工前表面粗さ値のときに、同じバニシング量で加工を行っても、ステンレス鋼とチタン合金では寸法変化量に違いがある。これは、表面の凹凸が完全に埋まった後の寸法変化には、材料特性が関わってくるために、このような違いが出ると推測される。なお、図示した応答曲面は、バニシング量を1〜10、加工前後表面粗さを1〜5、寸法変化量を0〜10に各パラメータの基準で正規化している。
【0026】
また、図5(c)及び(d)に示すように、ステンレス鋼(例えば、SUS304)と、チタン合金(例えば、Ti−6Al−4V)のバニシング量と加工前表面粗さ値とに対する加工後表面粗さ値の応答曲面は、ほぼ同様の変化をしている。バニシング加工によって表面の凹凸を埋めていく原理が材料の種類に関係なく同じためであると推測される。図示した応答曲面によれば、加工後表面粗さ値の向上効果が小さい曲面部分(図の奥側)と向上効果が大きい平面部分(図の手前側)で構成されていることが理解できる。加工前表面粗さ値が大きくても、バニシング量を大きくすることによって、加工後表面粗さ値を小さくすることができる。言い換えれば、バニシング量が一定であっても、加工前表面粗さ値を調整することによって、加工後表面粗さ値を調整することができる。なお、図示した応答曲面は、バニシング量を1〜10、加工前後表面粗さを1〜5、寸法変化量を0〜10に各パラメータの基準で正規化している。
【0027】
上述したように、本発明者らは、鋭意研究した結果、加工前表面粗さ値が金属材料の寸法変化量と加工後表面粗さ値に影響を与えるパラメータであるとの知見を得た。また、図5の各図に示したように、寸法変化量及び加工後表面粗さ値は、バニシング量及び加工前表面粗さ値と相関関係があることも把握することができた。本発明は、かかる知見に基づくものであり、ツール径Dtを一定にしてバニシング加工した場合であっても、所望の要求値を満たす寸法及び加工後表面粗さを有する金属材料が得られるようにしたものである。すなわち、本発明は、金属材料2のバニシング加工後に要求される寸法及び表面粗さ値から、バニシング加工前に必要な寸法及び表面粗さを決定し、バニシング加工するようにしたものである。
【0028】
ここで、本発明の実施形態に係るバニシング加工方法の手順を説明する。図6は、本発明の実施形態に係るバニシング加工方法を説明するためのフローチャートである。また、図7は、本発明の実施形態に係るバニシング加工方法に使用する応答曲面を示す模式図であり、(a)は第一応答曲面作成工程、(b)は任意点選択工程、(c)は第二応答曲面作成工程、(d)は第三応答曲面作成工程及び第四応答曲面作成工程、(e)及び(f)は第一条件選択工程、(g)は第五応答曲面作成工程、(h)は第二条件選択工程、(i)は第六応答曲面作成工程、を示している。
【0029】
本発明の実施形態に係るバニシング加工方法は、図6及び図7に示したように、回転するローラ1で金属材料2の表面を押し潰すバニシング加工を行って、金属材料2の表面粗さ値及び寸法を要求表面粗さ値及び要求寸法にするバニシング加工方法であって、バニシング加工後の加工後表面粗さ値に対するバニシング量Dvとバニシング加工前の加工前表面粗さ値との関係を示す第一応答曲面Aを作成する第一応答曲面作成工程(Step1)と、第一応答曲面A上の複数の任意の点P1〜P15を選択する任意点選択工程(Step2)と、任意点選択工程で選択した各点P1〜P15のバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値について、加工後表面粗さ値に対するローラ1の回転数Nとローラ1が移動する速度である送り速度fとの関係を示す第二応答曲面B(B1〜B15)をそれぞれ作成する第二応答曲面作成工程(Step3)と、各第二応答曲面B1〜B15における加工後表面粗さ値の最大値に対するバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値との関係を示す第三応答曲面Amaxを作成する第三応答曲面作成工程(Step4)と、各第二応答曲面B1〜15における加工後表面粗さ値の最小値に対するバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値との関係を示す第四応答曲面Aminを作成する第四応答曲面作成工程(Step5)と、第三応答曲面Amaxと第四応答曲面Aminとによって囲まれる空間AR1について、加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値以下となるバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値を選択する第一条件選択工程(Step6)と、第一条件選択工程で選択したバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値について、加工後表面粗さ値に対する回転数N及び送り速度fの関係を示す第五応答曲面C1を作成する第五応答曲面作成工程(Step7)と、第五応答曲面C1について加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値以下となる回転数N及び送り速度fを選択する第二条件選択工程(Step8)と、バニシング加工前後の寸法変化量Dsに対する、バニシング量Dv、加工前表面粗さ値、回転数N及び送り速度fのうちの二条件の関係を示す第六応答曲面Mを作成する第六応答曲面作成工程(Step9)と、第六応答曲面Mの二条件に第一条件選択工程又は第二条件選択工程で選択した数値を代入して寸法変化量Dsを決定し、決定した寸法変化量Dsと要求寸法とを足した値を金属材料2の加工前寸法として算出する第三条件算出工程(Step10)と、第二条件選択工程で選択した回転数N及び送り速度f並びに第一条件選択工程で選択したバニシング量Dvで、第三条件算出工程で算出した加工前寸法及び第一条件選択工程で選択した加工前表面粗さ値を有する金属材料2にバニシング加工を実施するバニシング加工工程(Step12)と、を有する。
【0030】
また、図6に示したように、第一応答曲面作成工程(Step1)よりも前に、第一応答曲面A〜第六応答曲面Mを作成するためのデータを計測し、計測したデータを格納したデータベースを作成するデータベース作成工程(Step0)を有していてもよい。
【0031】
かかるデータベース作成工程(Step0)は、例えば、所望の形状を有する金属材料2に対して、バニシング量Dv、ツール径Dt、加工前表面粗さ値、加工後表面粗さ値、ローラ1の回転数N、送り速度f等のパラメータに関するデータを予め取得しておく工程である。このデータベースに格納されたパラメータの数値を用いて後述する応答曲面が作成される。また、金属材料2が類似する素材や形状を有する場合には、取得済みのデータを適宜補完してデータを算出するようにしてもよい。また、本実施形態において、表面粗さ値とは、例えば、算術平均粗さ値Raや最大高さ粗さ値Rzを意味し、十点平均粗さ値や中心線平均粗さ値等の他の粗さ値であってもよい。データベースには、これらの表面粗さ値の各データを格納しておき、要求表面粗さ値が、どの粗さ値(例えば、算術平均粗さ値Ra、最大高さ粗さ値Rz等)であるかによって使い分けをする。
【0032】
前記第一応答曲面作成工程(Step1)は、加工後表面粗さ値に対するバニシング量Dvとバニシング加工前の加工前表面粗さ値との関係を示す第一応答曲面Aを作成する工程である。ここで、第一応答曲面Aを作成する際に選択されるパラメータは、影響度の高いものから選択することが好ましい。影響度が高いということは、応答曲面の勾配が大きいことを意味する。したがって、制約条件を設定したときに考慮すべき範囲が、影響度の低いパラメータを選んだときよりも狭くなり、任意点選択工程(Step2)において、任意の点を決定しやすくすることができる。また、上述したパラメータについてデータを取得し、要因効果図を作成したところ、加工前表面粗さ>バニシング量Dv>回転数N>送り速度fの順で影響度が大きいことが把握できた。そこで、第一応答曲面Aの作成には、パラメータとして、加工前表面粗さ及びバニシング量Dvを選択している。
【0033】
具体的には、図7(a)に示したように、加工後表面粗さ値(Z軸)を応答値とするバニシング量Dv(X軸)と加工前表面粗さ値(Y軸)との第一応答曲面Aを作成する。その際、回転数N及び送り速度fには、任意の値を指定しておけばよい。なお、図示した第一応答曲面Aは平面形状に模式化したものであり、実際には曲面形状に作成される(以下、図7の各図において同じ)。
【0034】
前記任意点選択工程(Step2)は、第二応答曲面Bを作成するために、第一応答曲面Aから任意の点P1〜P15を選択する工程である。具体的には、図7(b)に示したように、第一応答曲面Aの各頂点P1,P5,P11,P15と第一応答曲面A内を格子状に複数に分割した交点P2〜P4,P6〜P10,P12〜P14とを選択するようにすればよい。ここでは、任意の点として、P1〜P15の15点を選択しているが、これに限定されるものではなく、第一応答曲面Aの形状に応じて、選択する点数を増減してもよいし、選択する点が粗密を有していてもよいし(例えば、平面部では選択する点数を少なくし、曲面部では選択する点数を多くする等)、無作為に複数の点を選択してもよい。
【0035】
前記第二応答曲面作成工程(Step3)は、各点P1〜P15のバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値ごとに第二応答曲面B1〜B15を作成する工程である。具体的には、図7(c)に示したように、点P1のバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値について、加工後表面粗さ値(Z軸)に対するローラ1の回転数N(X軸)と送り速度f(Y軸)との関係を示す第二応答曲面B1を作成し、同様の処理を点P2〜P15について繰り返す。したがって、第二応答曲面作成工程(Step3)においては、任意点選択工程(Step2)で選択した点の個数だけ第二応答曲面Bが作成される。
【0036】
前記第三応答曲面作成工程(Step4)は、各第二応答曲面B1〜B15に基づいて第三応答曲面Amaxを作成する工程である。具体的には、図7(d)に示したように、各第二応答曲面B1〜B15における加工後表面粗さ値の最大値から、加工後表面粗さ値を応答値とするバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値の近似曲面を算出して第三応答曲面Amaxを作成する。すなわち、かかる第三応答曲面Amaxは、第一応答曲面Aを決定するパラメータであるローラ1の回転数N及び送り速度fを変化させた場合に応答値が最大となる曲面である。
【0037】
前記第四応答曲面作成工程(Step5)は、各第二応答曲面B1〜B15に基づいて第四応答曲面Aminを作成する工程である。具体的には、図7(d)に示したように、第二応答曲面B1〜B15における加工後表面粗さ値の最小値から、加工後表面粗さ値を応答値とするバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値の近似曲面を算出して第四応答曲面Aminを作成する。すなわち、かかる第四応答曲面Aminは、第一応答曲面Aを決定するパラメータであるローラ1の回転数N及び送り速度fを変化させた場合に応答値が最小となる曲面である。
【0038】
前記第一条件選択工程(Step6)は、第三応答曲面Amax及び第四応答曲面Aminを用いて所望の要求表面粗さ値の条件を満たすバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値を決定する工程である。具体的には、図7(e)に示したように、第三応答曲面Amaxと第四応答曲面Aminとによって囲まれる空間AR1を決定し、図7(f)に示したように、空間AR1内において、加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値以下となる空間AR2を決定する。この空間AR2内の範囲は、加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値以下となる点の集合であり、どの点を選択しても所望の要求表面粗さ値の条件を満たす。したがって、この空間AR2から任意の点を選択することによって、加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値以下となるバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値を選択することができる。また、任意の点として、空間AR2の重心点又は中心点を選択するようにしてもよい。
【0039】
前記第五応答曲面作成工程(Step7)は、第一条件選択工程(Step6)で選択したバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値について第五応答曲面C1を作成する工程である。具体的には、図7(g)に示したように、第一条件選択工程(Step6)で選択したバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値に対して、データベースに格納されたデータを使用し、加工後表面粗さ値(Z軸)を応答値とするローラ1の回転数N(X軸)及び送り速度f(Y軸)の第五応答曲面C1を作成する。
【0040】
前記第二条件選択工程(Step8)は、第五応答曲面C1について所望の要求表面粗さ値の条件を満たすローラ1の回転数N及び送り速度fを決定する工程である。具体的には、図7(h)に示したように、第五応答曲面C1内において加工後表面粗さが要求表面粗さ値以下となる応答曲面C2を決定する。この応答曲面C2内の範囲は、加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値以下となる点の集合であり、どの点を選択しても所望の要求表面粗さ値の条件を満たす。したがって、この応答曲面C2から任意の点を選択することによって、加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値以下となる回転数N及び送り速度fを選択することができる。また、任意の点として、応答曲面C2の重心点又は中心点を選択するようにしてもよい。
【0041】
前記第六応答曲面作成工程(Step9)は、バニシング加工前後の寸法変化量Dsに対する第六応答曲面Mを作成する工程である。ここで、第六応答曲面Mは、上述した第一条件選択工程(Step6)で決定したバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値、第二条件選択工程(Step8)で決定したローラ1の回転数N及び送り速度fから、寸法変化量Dsを決定するための一工程である。いま、第一条件選択工程(Step6)及び第二条件選択工程(Step8)により、バニシング量Dv、加工前表面粗さ値、回転数N及び送り速度fが全て決定していることから、これらのパラメータのうちどの二つのパラメータ(二条件)を選択しても、同じ結果を得ることができる。つまり、第六応答曲面Mを作成するために、この四つのパラメータから任意の2つのパラメータを形式的に選択すればよい。具体的には、図7(i)に示したように、第六応答曲面Mは、例えば、寸法変化量Ds(Z軸)を応答値とするバニシング量Dv(X軸)及び加工前表面粗さ値(Y軸)の応答曲面である。勿論、第六応答曲面Mは、寸法変化量Dsを応答値とする回転数N及び送り速度fの応答曲面であってもよい。
【0042】
前記第三条件算出工程(Step10)は、寸法変化量Dsを決定して加工前寸法を算出する工程である。具体的には、第六応答曲面Mをバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値に基づいて作成した場合には、第一条件選択工程(Step6)で決定したバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値を第六応答曲面Mに適用して寸法変化量Dsを決定する。また、第六応答曲面Mを回転数N及び送り速度fに基づいて作成した場合には、第二条件選択工程(Step8)で決定した回転数N及び送り速度fを第六応答曲面Mに適用して寸法変化量Dsを決定する。このようにして寸法変化量Dsが決定すれば、これに要求寸法を加えることによって、加工前寸法を算出することができる。
【0043】
上述した第一条件選択工程(Step6)によって加工前表面粗さ値が決定し、第三条件算出工程(Step10)によって加工前寸法を決定することができる。すなわち、この加工前表面粗さ値及び加工前寸法を満たすように金属材料2を成型すれば、第一条件選択工程(Step6)で決定したバニシング量Dvと、第二条件選択工程(Step8)で決定したローラ1の回転数N及び送り速度fによってバニシング加工することによって、要求表面粗さ値及び要求寸法を満足する金属材料2を得ることができる。
【0044】
そこで、図6に示したように、バニシング加工工程(Step12)の前に、金属材料2を第三条件算出工程(Step10)で算出した加工前寸法及び第一条件選択工程(Step6)で選択した加工前表面粗さ値を有する形状に加工する成型加工工程(Ste11)を有していてもよい。かかる成型加工によって、第三条件算出工程(Step10)で算出した加工前寸法及び第一条件選択工程(Step6)で選択した加工前表面粗さ値を有する金属材料2を容易に入手することができる。かかる成型加工工程(Ste11)において、コンピュータ等の制御装置を用いて、第三条件算出工程(Step10)で算出した加工前寸法及び第一条件選択工程(Step6)で選択した加工前表面粗さ値を自動的に入力し、加工装置を制御するようにしてもよい。
【0045】
前記バニシング加工工程(Step12)は、例えば、成型加工工程(Ste11)により得られた所定の金属材料2に対して既に決定しているバニシング量Dv、回転数N及び送り速度fによりバニシング加工を行う工程である。本実施形態においては、加工前の金属材料2が所定の加工前寸法及び加工前表面粗さ値を有していることから、バニシング量Dv、回転数N及び送り速度fの条件を都度調整する必要がなく、バニシング加工の条件設定や変更を行う回数を低減することができ、最適なバニシング加工の条件を維持したままバニシング加工を行うことができ、安定したバニシング加工を行うことができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、所定のパラメータ(例えば、バニシング量Dv、加工前表面粗さ値、回転数N、送り速度f等)に基づく応答曲面(例えば、第一応答曲面A〜第六応答曲面M)を作成し、かかる応答曲面からバニシング加工条件を決定することができるので、熟練者に頼ることなく、簡便且つ短時間にバニシング加工条件の設定をすることができる。なお、上述したデータベース作成工程(Step0)から第三条件算出工程(Step10)までは、図示しないコンピュータによって実行することが可能であり、かかるコンピュータを使用した場合には、より簡便且つ短時間にバニシング加工条件の設定をすることができる。
【0047】
上述した本実施形態は、回転するローラ1で金属材料2の表面を押し潰すバニシング加工を行って、金属材料2の表面粗さ値及び寸法を要求表面粗さ値及び要求寸法にするバニシング加工方法であって、少なくとも、金属材料2に対する、バニシング量Dvと、バニシング加工前の加工前表面粗さ値と、ローラ1の回転数Nと、ローラ1が移動する速度である送り速度fと、を含むデータベースを作成し、データベースに格納されたデータに基づいて、バニシング加工後の加工後表面粗さ値及びバニシング加工前後の寸法変化量Dsに対する応答曲面(例えば、第一応答曲面A〜第六応答曲面M)を作成し、かかる応答曲面から、要求表面粗さ値及び要求寸法を用いて、金属材料2の加工前寸法及び加工前表面粗さ値並びにローラ1の回転数N及び送り速度fを導出し、導出した加工前寸法及び加工前表面粗さ値を有する金属材料2に対して、導出した回転数N及び送り速度fでバニシング加工を行うものであると言い換えることもできる。
【0048】
次に、本発明の他の実施形態に係るバニシング加工方法について図8を用いて説明する。ここで、図8は、本発明の他の実施形態に係るバニシング加工方法に使用する応答曲面を示す図であり、(a)は第一条件選択工程、(b)は第二条件選択工程、を示している。
【0049】
図8(a)に示したように、第一条件選択工程(Step6)においては、第三応答曲面Amaxと第四応答曲面Aminとによって囲まれる空間AR1において加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値となる平面Sを決定するようにしてもよい。すなわち、加工後表面粗さ値の条件として、特定の数値である要求表面粗さ値を使用するようにしてもよい。この平面S内の範囲は、加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値となる点の集合であり、どの点を選択しても所望の要求表面粗さ値の条件を満たす。したがって、この平面Sから任意の点を選択することによって、加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値となるバニシング量Dv及び加工前表面粗さ値を選択することができる。また、任意の点として、平面Sの重心点又は中心点を選択するようにしてもよい。
【0050】
図8(b)に示したように、第二条件選択工程(Step8)においては、第五応答曲面C1において加工後表面粗さが要求表面粗さ値となる曲線L(直線の場合を含む)を決定するようにしてもよい。すなわち、加工後表面粗さ値の条件として、特定の数値である要求表面粗さ値を使用するようにしてもよい。この曲線Lは、加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値となる点の集合であり、どの点を選択しても所望の要求表面粗さ値の条件を満たす。したがって、この曲線Lから任意の点を選択することによって、加工後表面粗さ値が要求表面粗さ値となる回転数N及び送り速度fを選択することができる。また、任意の点として、曲線Lの重心点又は中心点を選択するようにしてもよい。
【0051】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、金属材料2の形状は筒形状、曲面形状、平面形状等であってもよく、筒形状の内面及び曲面形状や平面形状の面上をバニシングするようにしてもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 ローラ
2 金属材料
A 第一応答曲面
Amax 第三応答曲面
Amin 第四応答曲面
AR1,AR2 空間
B,B1〜B15 第二応答曲面
C1 第五応答曲面
Ds 寸法変化量
Dv バニシング量
f 送り速度
M 第六応答曲面
N 回転数
P1〜P15 点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するローラで金属材料の表面を押し潰すバニシング加工を行って、前記金属材料の表面粗さ値及び寸法を要求表面粗さ値及び要求寸法にするバニシング加工方法であって、
バニシング加工後の加工後表面粗さ値に対するバニシング量とバニシング加工前の加工前表面粗さ値との関係を示す第一応答曲面を作成する第一応答曲面作成工程と、
前記第一応答曲面上の複数の任意の点を選択する任意点選択工程と、
前記任意点選択工程で選択した各点のバニシング量及び加工前表面粗さ値について、前記加工後表面粗さ値に対する前記ローラの回転数と前記ローラが移動する速度である送り速度との関係を示す第二応答曲面をそれぞれ作成する第二応答曲面作成工程と、
前記各第二応答曲面における前記加工後表面粗さ値の最大値に対するバニシング量及び加工前表面粗さ値との関係を示す第三応答曲面を作成する第三応答曲面作成工程と、
前記各第二応答曲面における前記加工後表面粗さ値の最小値に対するバニシング量及び加工前表面粗さ値との関係を示す第四応答曲面を作成する第四応答曲面作成工程と、
前記第三応答曲面と前記第四応答曲面とによって囲まれる空間について、前記加工後表面粗さ値が前記要求表面粗さ値以下となるバニシング量及び加工前表面粗さ値を選択する第一条件選択工程と、
前記第一条件選択工程で選択したバニシング量及び加工前表面粗さ値について、前記加工後表面粗さ値に対する回転数及び送り速度の関係を示す第五応答曲面を作成する第五応答曲面作成工程と、
前記第五応答曲面について前記加工後表面粗さ値が前記要求表面粗さ値以下となる回転数及び送り速度を選択する第二条件選択工程と、
バニシング加工前後の寸法変化量に対する、前記バニシング量、前記加工前表面粗さ値、前記回転数及び前記送り速度のうちの二条件の関係を示す第六応答曲面を作成する第六応答曲面作成工程と、
前記第六応答曲面の前記二条件に前記第一条件選択工程又は前記第二条件選択工程で選択した数値を代入して寸法変化量を決定し、決定した寸法変化量と前記要求寸法とを足した値を前記金属材料の加工前寸法として算出する第三条件算出工程と、
前記第二条件選択工程で選択した回転数及び送り速度並びに前記第一条件選択工程で選択したバニシング量で、前記第三条件算出工程で算出した前記加工前寸法及び前記第一条件選択工程で選択した前記加工前表面粗さ値を有する金属材料にバニシング加工を実施するバニシング加工工程と、
を有することを特徴とするバニシング加工方法。
【請求項2】
前記任意点選択工程は、前記第一応答曲面の各頂点と前記第一応答曲面内を格子状に複数に分割した交点とを選択する工程である、ことを特徴とする請求項1に記載のバニシング加工方法。
【請求項3】
前記第一条件選択工程は、前記第三応答曲面と前記第四応答曲面とによって囲まれる空間について、前記加工後表面粗さ値が前記要求表面粗さ値となる平面又は前記要求表面粗さ値以下となる空間の重心点又は中心点のバニシング量及び加工前表面粗さ値を選択する工程である、ことを特徴とする請求項1に記載のバニシング加工方法。
【請求項4】
前記第二条件選択工程は、前記第五応答曲面について前記加工後表面粗さが前記要求表面粗さ値となる曲線又は前記要求表面粗さ値以下となる曲面の重心点又は中心点の回転数及び送り速度を選択する工程である、ことを特徴とする請求項1に記載のバニシング加工方法。
【請求項5】
前記表面粗さ値は、算術平均粗さ値又は最大高さ粗さ値である、ことを特徴とする請求項1に記載のバニシング加工方法。
【請求項6】
前記第一応答曲面作成工程よりも前に、前記第一乃至第六応答曲面を作成するためのデータを計測し、計測したデータを格納したデータベースを作成するデータベース作成工程を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のバニシング加工方法。
【請求項7】
前記バニシング加工工程の前に、前記金属材料を前記第三条件算出工程で算出した前記加工前寸法及び前記第一条件選択工程で選択した前記加工前表面粗さ値を有する素材に加工する成型加工工程を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のバニシング加工方法。
【請求項8】
回転するローラで金属材料の表面を押し潰すバニシング加工を行って、前記金属材料の表面粗さ値及び寸法を要求表面粗さ値及び要求寸法にするバニシング加工方法であって、
少なくとも、前記金属材料に対する、バニシング量と、バニシング加工前の加工前表面粗さ値と、前記ローラの回転数と、前記ローラが移動する速度である送り速度と、を含むデータベースを作成し、
前記データベースに格納されたデータに基づいて、バニシング加工後の加工後表面粗さ値及びバニシング加工前後の寸法変化量に対する応答曲面を作成し、
前記応答曲面から、前記要求表面粗さ値及び前記要求寸法を用いて、前記金属材料の加工前寸法及び加工前表面粗さ値並びに前記ローラの回転数及び送り速度を導出し、
導出した前記加工前寸法及び前記加工前表面粗さ値を有する金属材料に対して、導出した前記回転数及び前記送り速度でバニシング加工を行う、ことを特徴とするバニシング加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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