説明

バネ機構

【課題】 共振の弊害を危惧させずして、所定の伸縮機能を発揮する。
【解決手段】 相対移動する固定側Bと可動側Aとの間に配設されると共に固定側Bに連結される一方体1と可動側Aに連結される他方体2とで形成されて外力の入力で伸縮する伸縮体Tが圧縮弾性体を有し、圧縮弾性体が弾性係数を異にしながら直列する一方弾性体S1および他方弾性体S2からなり、伸縮体Tにあって一方体1と他方体2とが相対移動しない中立状態時に上記の一方弾性体S1および他方弾性体S2が伸長状態にあって均衡する一方で、伸縮体Tが中立状態から最伸長状態および最収縮状態になるまでの各前段領域において一方弾性体S1および他方弾性体S2の両方が圧縮されて反力を具有し、伸縮体Tが中立状態から最伸長状態および最収縮状態になるま での各後段領域において一方弾性体S1あるいは他方弾性体S2の一方のみが圧縮されて反力を具有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バネ機構に関し、たとえば、試験装置における反力源としての利用に向くバネ機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、試験装置における反力源としての利用に向くバネ機構としては、これまでの好ましい提案がなかったが、たとえば、特許文献1に開示のバネ構造を利用すると、バネ機構の長尺化を回避できず、試験装置における設置性を低下させる不具合を招く。
【0003】
そこで、バネ機構として、たとえば、図5に示す提案をなし得るが、このバネ機構は、相対移動する一方側たる固定側Bと他方側たる可動側Aとの間に配設される伸縮体Tを有する。
【0004】
そして、この伸縮体Tは、固定側Bに連結されるハウジングたる筒体1と可動側Aに連結される出没体たるロッド体2とで伸縮可能に形成されながら可動側Aあるいは固定側Bからの外力の入力で伸縮作動すると共に、内部に、つまり、筒体1内に圧縮バネSを有してなる。
【0005】
そしてまた、このバネ機構にあっては、図5(A)に示すように、筒体1内にあって伸長状態にある圧縮バネSのそれ以上の伸長が阻止された状態になるときに、外力作用が無い限りにおいて、伸縮体Tにあって筒体1に対してロッド体2が出没しない中立状態に維持される。
【0006】
その一方で、このバネ機構にあっては、図5(B)に示すように、ロッド体2が筒体1内に大きいストロークで没入して伸縮体Tが最収縮状態になるとき、および、図5(C)に示すように、ロッド体2が筒体1内から大きいストロークで突出して伸縮体Tが最伸長状態になるときには、圧縮バネSが共に圧縮過程を踏みながら最圧縮状態になって、設定の反力を具有する。
【0007】
それゆえ、このバネ機構にあっては、これが試験装置における反力源とされる場合には、水平方向の入力で伸縮体Tが伸縮して、可動側Aと固定側Bとの間における移動に伴う反力を具有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11‐197986号公報(要約,図4,図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来例とされる図5に示す提案にあっては、所定の入力に対する反力源として機能することに基本的に問題がある訳ではないが、その利用にあって、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0010】
すなわち、上記した図5に示すバネ機構にあっては、圧縮バネSが一本のコイルスプリングからなるから、この圧縮バネSの伸縮時におけるバネ特性が比例特性になり、中立状態にある伸縮体Tが伸縮する全ストローク領域においてバネ定数が一定になる。
【0011】
その結果、先ず、圧縮弾性体たる圧縮バネSが一本仕様とされるので、圧縮弾性体における固有振動数が一定になり、いわゆる共振によるいたずらな振動や騒音の発生が危惧される。
【0012】
そして、たとえば、中立状態にある伸縮体Tが伸縮を開始する当初には大きなバネ定数を要するが、伸縮の終盤にあっては、被試験体における破壊などを回避するために、大きなバネ定数を要しない場合の利用に向かない。
【0013】
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、共振によるいたずらな振動発生や騒音発生を危惧させずして、伸縮を開始する当初には大きなバネ定数を具有するが、伸縮の終盤にあっては、大きなバネ定数を具有しないようにして、たとえば、試験装置における反力源としての利用に向き、その試験装置の汎用性の向上を期待するのに最適となるバネ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成するために、この発明によるバネ機構の構成を、基本的には、相対移動する一方側と他方側との間に配設されて一方側に連結される一方体と他方側に連結される他方体とで伸縮可能に形成されると共に一方側あるいは他方側からの外力の入力で伸縮する伸縮体と、この伸縮体に配設される圧縮弾性体とを有してなるバネ機構において、上記の圧縮弾性体が弾性係数を異にしながら直列する一方弾性体および他方弾性体からなり、上記の伸縮体にあって一方体と他方体との間における相対移動を生じない中立状態時に上記の一方弾性体および他方弾性体が伸長状態にあって均衡する一方で、上記の伸縮体が中立状態から最伸長状態および最収縮状態になるまでの各前段領域において一方弾性体およびあるいは他方弾性体が圧縮されて反力を具有し、上記の伸縮体が中立状態から最伸長状態および最収縮状態になるまでの各後段領域において一方弾性体およびあるいは他方弾性体が圧縮されて反力を具有するとする。
【発明の効果】
【0015】
それゆえ、この発明にあっては、バネ機構において、伸縮体が中立状態から最伸長状態に向けて伸長するとき、あるいは、中立状態から最収縮状態に向けて収縮するときに、ストローク開始領域たる前段領域で、圧縮弾性体を構成する一方弾性体およびあるいは他方弾性体が圧縮されて設定の反力を具有する。
【0016】
そして、この発明にあっては、伸縮体が最伸長状態に向けて伸長するとき、あるいは、最収縮状態に向けて収縮するときに、ストローク終了領域たる後段領域で、圧縮弾性体を構成する一方弾性体およびあるいは他方弾性体が圧縮されて設定の反力を具有する。
【0017】
このとき、この発明にあっては、圧縮弾性体を構成する一方弾性体と他方弾性体とが弾性係数を異にするから、一方弾性体および他方弾性体の両方が同時に圧縮する場合の特性と、一方弾性体あるいは他方弾性体の一方が圧縮する場合の特性とを異にでき、したがって、バネ機構の伸縮時における固有振動数を異にすることが可能になる。
【0018】
その結果、この発明によれば、バネ機構にあって、共振によるいたずらな振動発生や騒音発生を危惧させずして所定の伸縮機能を発揮でき、設定如何によって、中立状態から伸縮する前段領域では大きいバネ定数を具有するが、後段領域では小さいバネ定数を具有し、伸縮ストロークの後半などに過度の入力があったときにその入力をキャンセルでき、たとえば、試験装置における反力源としての利用に向く。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明によるバネ機構が横置きにされて伸縮しない中立状態にある状態を示す縦断面図である。
【図2】図1のバネ機構が最収縮状態になった状態を図1と同様に示す図である。
【図3】図1のバネ機構が最伸長状態になった状態を図1と同様に示す図である。
【図4】一方弾性体と他方弾性体の荷重変位特性を示す図である。
【図5】従来例とされるバネ機構を横置き状態にして示す図であって、(A)は、バネ機構が中立状態にある状態を図1と同様に示し、(B)は、バネ機構が最収縮状態になった状態を図2と同様に示し、(C)は、バネ機構が最伸長状態になった状態を図3と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるバネ機構は、以下の説明では、圧縮弾性体としての圧縮バネを有するとし、このバネ機構が、図示しないが、一方側たる固定側から他方側たる可動側に外力を入力する試験装置における反力源として利用される場合を例にする。
【0021】
以上の前提の下に説明するが、この発明によるバネ機構は、試験装置における反力源として利用されるとき、相対移動する固定側と可動側との間に配設されて、設定の外力の入力を可能にすると共に、入力が設定値を超える状況になると、その入力をキャンセルするように機能する。
【0022】
すなわち、このバネ機構は、図1に示すように、可動側Aと固定側Bとの間に配設される伸縮体Tを有し、この伸縮体Tが圧縮弾性体たる圧縮バネ、すなわち、一方弾性体たるコイルスプリングからなる一方バネS1と、他方弾性体たるコイルスプリングからなる他方バネS2とを有してなる。
【0023】
そして、このバネ機構にあって、伸縮体Tは、固定側Bに連結されて一方体とされるハウジングたる筒体1と、可動側Aに連結されて他方体とされる出没体たるロッド体2とで伸縮可能に形成されると共に、可動側Aあるいは固定側Bからの外力の入力で伸縮する。
【0024】
ところで、伸縮体Tは、基本的には、筒体1とロッド体2とからなりながら、後述する一方バネS1および他方バネS2を収装するものであれば足りるから、筒型ダンパのようないわゆる筒型に形成されることは必須でない。
【0025】
つまり、このバネ機構が試験装置における反力源とされる場合であって、この反力源を構成する伸縮体Tが、図示しないが、固定側Bに収装される設定の場合には、固定側Bが直接ハウジングたる筒体1に代えられるとしても良く、この場合には、筒体1を部品として用意しなくても済む利点がある。
【0026】
一方、このバネ機構にあって、ハウジングたる筒体1は、内部に作動流体を収容するものでないから、作動流体を収容する油圧緩衝器におけるシリンダ体のように液密構造に形成される必要はない。
【0027】
とは言え、たとえば、雨水や埃などがいたずらに入り込むことを許容するのも妥当ではなく、したがって、この雨水や埃などの遮断を目的とするいわゆる密封性が保障されて良いことはもちろんである。
【0028】
ちなみに、筒体1にあっては、図中で右端部となるボトム部1aを有することは必須ではないが、この筒体1を固定側Bに連結するためのブラケット1bを有することから、このブラケット1bの連結部としてボトム部1aを有する。
【0029】
そして、この筒体1にあっては、図中で右側部となるボトム側部1cの内周に後述する一方バネS1の基端を環座状に形成のバネ受3の配設下に担持する係止部1dを有するが、この係止部1dは、結果として、一方バネS1の基端を担持すれば足りる。
【0030】
つまり、図示するところでは、係止部1dが筒体1における厚肉部(符示せず)と薄肉部(符示せず)との境部となる段差部からなるが、これに代えて、図示しないが、筒体1の内周に形成の環状溝に嵌装されるストップリングからなるとしても良い。
【0031】
ちなみに、上記のバネ受3は、外周部から図中で左側に延びる筒部からなる規制部3aを有しており、この規制部3aは、一方バネ体S1の図中で左端部となる先端部(符示せず)を除いてこの一方バネ体S1を収装させながら一方バネS1における圧縮ストロークL1を規制する規制手段を構成するが、このことについては、後述する。
【0032】
また、この筒体1にあっては、図中で左端部となるヘッド部1eが内側フランジ状に形成されて、後述する他方バネS2の基端を環座状に形成のバネ受4の配設下に担持するが、このヘッド部1eの機能からすると、図示しないが、筒体1の図中で左端となる開口端を閉塞するように螺着されたり溶接されたりするキャップ部材における環座状になる内周側部がヘッド部1eに代えられても良い。
【0033】
ちなみに、上記のバネ受4にあっても、内周側部から図中で右側に延びる筒部からなる規制部4aを有しており、この規制部4aは、前記したバネ受3における規制部3aと同様に機能するもので、他方バネS2の図中で右端部となる先端部(符示せず)を除いてこの他方バネS2を巻装させながら他方バネS2における圧縮ストロークL2を規制する規制手段を構成するが、このことについては、後述する。
【0034】
なお、上記の規制部3aから突出する一方バネS1における圧縮ストロークL1は、この一方バネS1における伸縮可能な長さであり、また、上記の規制部4aから突出する他方バネS2における圧縮ストロークL2もまた、この他方バネS2における伸縮可能な長さであるが、図示する実施形態では、L2>L1に設定されている。
【0035】
ハウジングたる筒体1が以上のように形成されるとき、出没体たるロッド体2は、図中で左端部を構成するブラケット2aが可動側Aに連結され、また、詳しくは後述するが、外力の入力がなく、したがって、この伸縮体Tが伸縮しない中立状態にあるときに、図中で左側部となる突出部2bを除いて図中で右側となる先端側(符示せず)が筒体1内に臨在される。
【0036】
そして、このロッド体2は、図中で右端部となる先端部(符示せず)にフランジ部2cを有し、このフランジ部2cは、図示する伸縮体Tの中立状態時に、前記した筒体1におけるボトム側部1cを形成する厚肉部の内側に臨在されて、前記したバネ受3を担持する。
【0037】
また、このロッド体2は、上記した突出部2bの図中での右端部となり、上記した先端側の図中での左端部となるいわゆる境界部に前記したフランジ部2cに比較すれば小径となるフランジ部2dを有する。
【0038】
ちなみに、このフランジ部2dにはこのロッド体2における先端側の外周に配設されるカラー部材5の図中で左端となる後端が当接されるが、このカラー部材5が機能するところについては、後述する。
【0039】
出没体たるロッド体2が以上のように形成されるのに対して、このバネ機構において、圧縮弾性体は、一方弾性体と他方弾性体とからなるとし、先ず、圧縮弾性体が単一の弾性体からなる場合に危惧される共振の可能性を低減しあるいは無くすことを考慮している。
【0040】
つぎに、このバネ機構において、圧縮弾性体が一方弾性体と他方弾性体とからなるとき、この両方の弾性体における弾性係数、すなわち、バネ定数を異にする設定にすることで、上記した共振の可能性を低減することが可能になり、また、一定のバネ定数でない、つまり、異なったバネ定数に基づく反力の具有を期待できる。
【0041】
以上のことから、この発明にあっては、基本的には、圧縮弾性体が一方弾性体と他方弾性体とからなり、具体的には、一方弾性体がコイルスプリングからなる一方バネS1とされ、他方弾性体も同じくコイルスプリングからなる他方バネS2とされる。
【0042】
そして、この一方バネS1と他方バネS2にあっては、基本的には、コイルスプリングにおける線径,巻径あるいは巻ピッチのいずれか一つがあるいは複数が大小されることで弾性係数を異にする。
【0043】
そしてまた、図示するところでは、一方バネS1における巻径が他方バネS2における巻径より小さくなり、これによって、一方バネS1におけるバネ定数が他方バネS2におけるバネ定数に勝るとするが、これに代えて、上記した巻径の関係が逆転されて、バネ定数の関係が逆転されても良いことはもちろんである。
【0044】
なお、図示するところでは、一方バネS1における線径および巻ピッチと他方バネS2における線径および巻ピッチとが同一とされているが、これに代えて、異なるとしても良いことはもちろんである。
【0045】
また、上記の一方バネS1と他方バネS2との間には、環座状に形成のセパレータ6が配設されて、直列配置される一方バネS1と他方バネS2との間における上記の巻径の差から生じる連続時のギャップを解消するが、その一方で、後述するカラー部材5に他方バネS2の先端を係止させる。
【0046】
と言うのも、図示する実施形態では、一方バネS1におけるバネ定数が他方バネS2におけるばね定数に勝る一方で、他方バネS2が初期荷重を具有し、したがって、この他方バネS2が初期荷重を具有することから、後述するカラー部材5が伸長状態にある他方バネS2を上記のセパレータ6の利用下に挟持している。
【0047】
そして、このセパレータ6にあっては、外周側部が前記したバネ受3における筒部たる規制部3aの先端に対向し、内周側部が前記したバネ受4における筒部たる規制部4aの先端に対向する。
【0048】
以上のように形成された一方バネS1と他方バネS2は、前記した伸縮体にあって、図1に示すように、筒体1とロッド体2との間における相対移動を生じない中立状態時に、共に伸長状態にあって、上記のセパレータ6を挟んだ状態で均衡する。
【0049】
一方、上記のセパレータ6は、図1に示すように、伸縮体Tが中立状態にあるときに、ロッド体2の先端側の外周に巻装される前記したカラー部材5に干渉する。
【0050】
すなわち、カラー部材5は、伸縮体Tが図示する中立状態にあるときに、ロッド体2における前記したフランジ部2dに基端が担持されながら先端側が上記したセパレータ6の内周側を通過して一方バネS1の先端部の内側に臨在される長さを有するように形成される。
【0051】
そして、このカラー部材5にあっては、ロッド体2における図中で左側となる基端側のフランジ部2dに近隣する部位にフランジ部5aを有すると共に、一方バネS1の先端部の内側に位置する言わば先端部(符示せず)に上記のフランジ部5aに比較して小径となるフランジ部5bを有してなる。
【0052】
そしてまた、フランジ部5aは、伸縮体Tが図示する中立状態にあるときに、前記したバネ受4のいわゆる背後側に当接され、また、フランジ部5bは、同じく伸縮体Tが図示する中立状態にあるときに、前記したセパレータ6の正面、つまり、一方バネS1の先端が当接される正面に当接される。
【0053】
バネ受3,バネ受4,カラー部材5およびセパレータ6が以上のように形成されるとき、この発明のバネ機構を構成する伸縮体Tは、以下のように作動する。
【0054】
先ず、図1に示す中立状態にある伸縮体Tにあって、ロッド体2が筒体1内に没入する収縮作動時には、一方バネS1の基端が筒体1における係止部1dに担持されて言わば固定されるから、ロッド体2のフランジ部2dに係止されるカラー部材5におけるフランジ部5aがバネ受4を図中で右行させ、したがって、他方バネS2が圧縮されると共に、この他方バネS2に直列する一方バネS1も同時に圧縮される。
【0055】
このとき、この実施形態にあっては、他方バネS2におけるバネ定数が一方バネS1におけるバネ定数より小さいから、バネ受4に連設の規制部4aの図中で右端となる先端がセパレータ6に先に着座するまで長さL2分の他方バネS2における圧縮が進行する。
【0056】
つまり、図示しないが、中立状態にある伸縮体Tが収縮作動を開始すると、他方バネS2の圧縮で言わば前段となる収縮作動が具現化され、圧縮された他方バネS2は、設定の反力を具有する。
【0057】
上記の収縮作動に引き続いて、伸縮体Tがさらに収縮すると、バネ受4に連設の規制部4aが他方バネS2の圧縮ストロークを規制する規制手段として機能する、つまり、他方バネS2のさらなる圧縮を阻止しながら、セパレータ6を図中で右行させるように押し進めるようになり、したがって、図2に示すように、このセパレータ6に先端が当接されている一方バネS1が圧縮されると共に、この一方バネS1における長さL1分に相当する圧縮の進行でセパレータ6がバネ受3に連設の規制部3aの先端に当接し、このセパレータ6のさらなる前進、つまり、一方バネS1のさらなる圧縮が阻止される。
【0058】
その結果、このバネ機構にあっては、伸縮体Tの中立状態からの収縮作動時には、前段で一方バネS1と他方バネS2とが圧縮することによる反力を具有し、後段で一方バネS1のみが圧縮することによる反力を具有する。
【0059】
上記に対して、図1に示す中立状態にある伸縮体Tにあって、ロッド体2が筒体1内から突出する伸長作動時には、ロッド体2の移動に起因してフランジ部2cに係止されるバネ受3が図中で左行するようになり、このとき、カラー部材5は、ロッド体2の移動に追随しないが、他方バネS2の基端がバネ受4を介してであるが、筒体1におけるヘッド部1eに担持されて言わば固定されているから、セパレータ6が図中で左行して、バネ受3を左行させ、一方バネS1と他方バネS2を圧縮させ、設定の反力を具有させる。
【0060】
そして、セパレータ6がバネ受4に連設の規制部4aにおける図中で右端となる先端に当接すると、この規制部4aが他方バネS2のそれ以上の圧縮を規制する規制手段として機能し、したがって、他方バネS2のそれ以上の圧縮が阻止され、以降は、一方バネS1のみが圧縮を開始して、設定の反力を具有する。
【0061】
つまり、図示しないが、中立状態にある伸縮体Tが伸長作動を開始すると、一方バネS1と他方バネS2の圧縮で言わば前段となる収縮作動が具現化され、圧縮された一方バネS1と他方バネS2は、設定の反力を具有する。
【0062】
上記の伸長作動に引き続いて、伸縮体Tがさらに伸長すると、一方のバネS1が圧縮されると共に、バネ受3に連設の規制部3aの図中で左端となる先端がセパレータ6に当接し、このとき、規制部3aが一方バネS1の圧縮を阻止する規制手段として機能し、一方バネS1の圧縮が阻止される。
【0063】
その結果、このバネ機構にあっては、伸縮体Tの中立状態からの伸長作動時には、前段で一方バネS1と他方バネS2が圧縮することによる反力を具有し、後段で一方バネS1のみが圧縮することによる反力を具有する。
【0064】
そして、上記したところでは、中立状態にある伸縮体Tが収縮作動する場合および伸長作動する場合のいずれにあっても、一方バネS1と他方バネS2との間に配設されているセパレータ6がバネ受3に連設の規制部3aあるいはバネ受4に連設の規制部4aに干渉して各バネS1,S2における圧縮を規制していわゆる移行させるから、図4に示すように、折れ点Pを発現させる特性になる。
【0065】
ところで、図示した実施形態にあっては、他方バネS2が初期荷重を具有し、したがって、一方バネS1が初期荷重を具有するか否かに係わりなく、また、一方バネS1が具有する初期荷重が他方バネS2の初期荷重に比較して極めて小さいなど場合には、中立状態にある伸縮体Tにおいて、セパレータ6の位置が安定されないと、この発明におけるバネ機構が目指すところ、すなわち、前述したように、異なる特性の反力の発生を可能にすること、および、共振を阻止するために異なるバネ定数のバネを直列配置する意味がなくなる。
【0066】
そこで、図示する実施形態にあっては、ロッド体2の外周にカラー部材5を配設すると共に、このカラー部材5における図中で左端部となる基端部に設けたフランジ部5aを他方バネS2の基端を担持するバネ受4の背面に当接させ、このカラー部材5における図中で右端部となる先端部に設けたフランジ部5bをセパレータ6の正面に当接させる。
【0067】
これによって、他方バネS2は、図示する伸縮体Tの中立状態時にカラー部材5におけるフランジ部5a,5b間に挟持されて初期荷重を具有する状態に維持される。
【0068】
そして、この状態から、たとえば、中立状態にある伸縮体Tが伸長作動する場合には、前述したように、一方バネS1におけるバネ定数の方が他方バネS2におけるバネ定数に勝るから、他方バネS2の先端がセパレータ6を従えたまま後退して圧縮し、圧縮に伴う設定の反力を具有する。
【0069】
一方、これまでに説明したところでは、バネ受3およびバネ受4が筒部たる規制部3aおよび規制部4aを有するとしたが、これに代えて、図示しないが、たとえば、バネ受4が規制手段として機能する規制部4aを有しないとしても良い。
【0070】
このバネ受4が規制部4aを有しないとする場合には、前記した中立状態にある伸縮体Tが収縮作動をする場合であれ、伸長作動する場合であれ、いずれにしても、他方バネS2は、一方バネS1とバランスするまで圧縮されて反力を具有し、その後に一方バネS1が圧縮されるから、図4に示す特性に比較すると、図示しないが、最初、すなわち、前段は、緩い傾斜の特性が表出され、折れ点Pを境に、後半、すなわち、後段は、急な傾斜の特性が表出される。
【0071】
すなわち、前記したところでは、圧縮弾性体を構成する一方バネS1と他方バネS2とにあって、他方バネ体S2が初期荷重を具有するが、これに代えて、一方バネS1および他方バネS2が初期荷重を具有しない場合、圧縮時には、前段では、一方バネS1および他方バネS2が同時に圧縮されて直列バネとして作用する。
【0072】
そして、他方バネS2の圧縮が規制手段によって阻止された後は、一方バネS1のみが圧縮することになり、バネ定数が大きくなる。
【0073】
上記に対して、図示する実施形態のように、他方バネS2が初期荷重を具有する場合、圧縮時の前段では、他方バネS2が圧縮せず、一方バネS1のみが圧縮されて反力を具有する。
【0074】
一方、一方バネS1において、圧縮されることで反力が他方バネS2の反力と一致することになると、他方バネS2も圧縮を開始し、したがって、一方バネS1と他方バネS2とが同時作動して直列バネとして作用する。
【0075】
このとき、他方バネS2が圧縮する前段の場合におけるバネ定数に比較して、全体として見るとき、バネ定数が小さくなり、前記した図4に示す特性になる。
【0076】
つまり、この発明のバネ機構にあっては、前記した図1に示すところに代えて、バネ受3,バネ受4およびカラー部材5の構成を変更することで、目的に応じた特性を表出させることが可能になる。
【0077】
前記したところでは、この発明のバネ機構が試験装置における反力源として利用される場合を例にし説明したが、この発明が意図するところからすれば、このバネ機構が免震装置あるいは制振装置においてダンパと併用されるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
たとえば、試験装置における反力源としての利用や、免震装置あるいは制振装置においてダンパと併用される利用に向く。
【符号の説明】
【0079】
1 一方体を構成するハウジングたる筒体
1a ボトム部
1b,2a ブラケット
1c ボトム側部
1d 係止部
1e ヘッド部
2 他方体を構成する出没体たるロッド体
2b 突出部
2c,2d,5a,5b フランジ部
3,4 バネ受
3a,4a 規制部
5 カラー部材
6 セパレータ
A 他方側を構成する可動側
B 一方側を構成する固定側
S1 圧縮弾性体を構成する一方弾性体たる一方バネ
S2 圧縮弾性体を構成する他方弾性体たる他方バネ
T 伸縮体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対移動する一方側と他方側との間に配設されて一方側に連結される一方体と他方側に連結される他方体とで伸縮可能に形成されると共に一方側あるいは他方側からの外力の入力で伸縮する伸縮体と、この伸縮体に配設される圧縮弾性体とを有してなるバネ機構において、上記の圧縮弾性体が弾性係数を異にしながら直列する一方弾性体および他方弾性体からなり、上記の伸縮体にあって一方体と他方体との間における相対移動を生じない中立状態時に上記の一方弾性体および他方弾性体が伸長状態にあって均衡する一方で、上記の伸縮体が中立状態から最伸長状態および最収縮状態になるまでの各前段領域において一方弾性体およびあるいは他方弾性体が圧縮されて反力を具有し、上記の伸縮体が中立状態から最伸長状態および最収縮状態になるまでの各後段領域において一方弾性体およびあるいは他方弾性体が圧縮されて反力を具有してなることを特徴とするバネ機構。
【請求項2】
相対移動する一方側と他方側との間に配設されて一方側に連結される一方体と他方側に連結される他方体とで伸縮可能に形成されると共に一方側あるいは他方側からの外力の入力で伸縮する伸縮体と、この伸縮体に配設される圧縮弾性体とを有してなるバネ機構において、上記の圧縮弾性体が弾性係数を異にしながら直列する一方弾性体および他方弾性体からなり、上記の伸縮体にあって一方体と他方体との間における相対移動を生じない中立状態時に上記の一方弾性体および他方弾性体が伸長状態にあって均衡する一方で、上記の伸縮体が中立状態から最伸長状態および最収縮状態になるまでの各前段領域において一方弾性体あるいは他方弾性体の一方が圧縮されて反力を具有し、上記の伸縮体が中立状態から最伸長状態および最収縮状態になるまでの各後段領域において一方弾性体および他方弾性体の両方が圧縮されて反力を具有してなることを特徴とするバネ機構。
【請求項3】
一方弾性体あるいは他方弾性体が初期荷重を具有してなる請求項1または請求項2に記載のバネ機構。
【請求項4】
一方弾性体およびあるいは他方弾性体が圧縮ストロークを規制する規制手段を有してなる請求項1,請求項2または請求項3に記載のバネ機構。
【請求項5】
上記の一方体がハウジングたる筒体とされ、上記の他方体が出没体たるロッド体とされ、上記の一方弾性体たる一方バネおよび他方弾性体たる他方バネがコイルスプリングからなり、一方バネにおけるバネ定数が他方バネにおけるバネ定数に勝る請求項1,請求項2,請求項3または請求項4記載のバネ機構。
【請求項6】
上記の一方バネおよび他方バネにあってコイルスプリングにおける線径,巻径あるいは巻ピッチのいずれか一つがあるいは複数が大小され、一方バネと他方バネとの間に環座状に形成のセパレータが配設されてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5に記載のバネ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−163491(P2011−163491A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28751(P2010−28751)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【出願人】(599100590)オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】