説明

バネ部品の製造装置および製造方法

【課題】タクトタイムの変動を減少させるためのバネ部品の製造装置を提供する。
【解決手段】レーザ照射によりバネ部品を製造するバネ部品の製造装置1において、バネ部品4に対して所定のレーザ照射を行う複数のレーザ照射装置を備えたレーザ照射部9を備え、レーザ照射装置は、それぞれ予め異なるレーザ照射条件が設定されてなるとともに、それぞれのレーザ照射位置が重ならないように配置されてなり、レーザ照射部は、バネ部品に必要なバネ荷重調整量に応じて決められた調整最小量の2の(n−1)乗倍(nは正の整数)となるレーザ照射条件を有するレーザ照射装置の組み合わせで構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バネ部品の製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気記憶装置は、磁気ディスクの回転により浮上するヘッドスライダをトラックに位置決めして磁気ディスク上に情報の記録/再生を行っている。
このような磁気記憶装置は、ヘッドスライダをトラックに位置決めするためのアクチュエータを有する。このアクチュエータは、電磁変換素子を持つヘッドスライダと、これを搭載するサスペンションと、サスペンションを支持するアーム等を備える。そして、サスペンションは、ステンレス製のバネ部材であるロードビームと、このロードビームの端部に設けられ、ヘッドスライダを搭載するフレキシャ部とを有する。
そして、このヘッドスライダには、2つの力が作用している。
第1の力は、サスペンションにより加わる荷重である。
第2の力は、磁気ディスクの回転により発生する空気流が、ヘッドスライダの磁気ディスク面側にあるABS(Air Bearing Surface)面のレール部分を通過することにより発生する磁気ディスク面からヘッドスライダを離そうとする揚力である。
これらの2つの力のバランスによりヘッドスライダは一定の浮上量を保った状態で、所定のトラック位置に位置決めして、記録再生が行われる。
このような磁気記憶装置では、ヘッドスライダの浮上量は、磁気ヘッドの特性に影響する。そのため、サスペンションの製造段階において、サスペンションに加わる荷重を所定の規格範囲内に調整することで、目標の浮上量を得ることが行われる。
このサスペンションの荷重調整の方法としては、例えば、ロードビームにレーザを照射する方法が用いられている。ロードビームを変形することで、荷重を増減させ、所定の規格範囲内に調整する方法である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−260358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レーザを照射して荷重調整を行うためには、調整量に応じた照射量をサスペンション上に付与する必要がある。このため、サスペンション上を1台のレーザ照射装置が複数回往復運動してレーザ照射を行う。この結果、レーザ照射装置の空走時間が増え、工場での運用に際して、調整量の大小によりタクトタイムが変動してしまう。
【0004】
本発明は、バネ部品を製造する際のタクトタイムの変動を減少させるためのバネ部品の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のバネ部品の製造装置は、レーザ照射によりバネ部品を製造するものである。そのため、バネ部品の製造装置は、前記バネ部品に対して所定のレーザ照射を行う複数のレーザ照射装置を備えたレーザ照射部を備え、前記レーザ照射装置は、それぞれ予め異なるレーザ照射条件が設定されてなるとともに、それぞれのレーザ照射位置が重ならないように配置されてなり、前記レーザ照射部は、バネ部品に必要なバネ荷重調整量に応じて決められた調整最小量の2の(n−1)乗倍(nは正の整数)となるレーザ照射条件を有するレーザ照射装置の組み合わせで構成されている。
【0006】
この構成により、バネ部品のバネ荷重の調整に関して、最小数のレーザ照射装置の組み合わせのみで、最小調整量を維持しながら必要な荷重調整量を確保することが出来る。この結果、バネ部品の調整量の大小に関わらずバネ部品上を複数回往復運動してレーザを照射する必要がないため、タクトタイム一定での荷重調整が可能となる。
【0007】
また、前記レーザ照射部は、複数のレーザ照射装置が前記バネ部品の表面および裏面に対してそれぞれレーザ照射が行えるようにバネ部品の表裏両面側にそれぞれ配置されている。
この構成により、バネ部品の荷重の増減が可能となる。
【0008】
また、前記バネ部品を1からn番目のレーザ照射装置全てに対応して一定速度で、前記レーザ照射装置が配置されている所定の方向に沿って移動する移動機構を備え、前記バネ部品は、前記移動機構によるバネ部品の移動により、各レーザ照射装置を順次通過することで各レーザ照射装置の所定の照射位置上に沿ってレーザ照射される構成である。
この構成により、バネ部品上を複数回往復運動せずに、バネ部品のレーザ照射による荷重調整が可能となる。
【0009】
また、前記バネ部品を前記1からn番目の各レーザ照射装置に対応して設定した速度で、前記レーザ照射装置が配置されている所定の方向に沿って移動する移動機構を備え、前記バネ部品は、前記移動機構によるバネ部品の移動により、各レーザ照射装置を順次通過することで各レーザ照射装置の所定の照射位置上に沿ってレーザ照射される構成である。
この構成により、バネ部品上を複数回往復運動せずに、バネ部品のレーザ照射による荷重調整が可能となる。
【0010】
また、バネ部品の一端を固定端として支持する固定部を有し、前記レーザ照射装置は、バネ部品の複数のレーザ照射位置に対応して配置され、かつバネ部品の固定端より最も遠い照射位置から順次固定端側に近づく照射位置にレーザ照射を行うように配置されている構成である。
この構成により、バネ部品の固定端より最も遠い照射位置から順次固定端側に近づく照射位置に向けて、順次レーザを照射するので、調整のための荷重の調整精度を向上できる。
【0011】
また、前記バネ部品の荷重を測定する荷重計と、前記荷重計により測定された荷重と目標荷重との差に基づいて荷重調整量を求め、その調整量に応じた前記レーザ照射装置の組み合わせを選択し、選択されたレーザ照射装置によりバネ部品へのレーザ照射を制御する制御部と、を備える構成である。
この構成により、バネ部品の荷重を測定した結果を基に必要なレーザ照射装置を選択してバネ部品に照射できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、バネ部品の調整量の大小に関わらず同一工程内での調整が可能となるため、タクトタイム一定での荷重調整が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施例)
図1に磁気記憶装置の説明図を示す。
図1(a)に磁気記憶装置41の概要を示す。
磁気記憶装置41は、磁気ディスク42と、磁気ディスク42を回転するためのスピンドルモータ43と、磁気ディスク42に対して情報の書き込みまたは読み出しを行う磁気ヘッドを搭載するアクチュエータ51とを有する。
【0014】
アクチュエータ51は、アクチュエータブロック52とアクチュエータブロック52を駆動する駆動部35とを有する。そして、アクチュエータブロック52は、磁気ヘッドを備えるヘッドスライダ31を搭載するサスペンション4とそのサスペンション4を支持するアーム34とを有する。そして、アクチュエータブロック52の側面には、磁気ヘッドと接続されるフレキシブルプリント基板36が取り付けられている。このフレキシブルプリント基板36は固定部材37を経由して制御回路(図示なし)に接続されている。 そして、制御回路が駆動部35によりアクチュエータブロック52を回転駆動して、磁気ディスク42上の所定トラックに磁気ヘッドを位置付けることで、情報の書き込み読み出しを行う。
【0015】
図1(b)にサスペンション4の説明図を示す。
サスペンション4は、ロードビーム32、フレキシャ38、スペーサ部33を有する。
ロードビーム32は、バネ部品であり、フレキシャ38が接合されている。
また、フレキシャ38には、ヘッドスライダ31を搭載するためのジンバル部39が先端に設けられている。
ロードビーム32の荷重は、ロードビーム32に形成されているピボット40によりジンバル部39に搭載されているヘッドスライダ31に作用する。そして、この荷重がヘッドスライダ31の浮上力と釣り合うことで、磁気ヘッドは、所定の浮上位置を維持することができる。
スペーサ部33は、ロードビーム32に溶接され、またアクチュエータブロック52のアーム34とかしめられる。
【0016】
図2にバネ部品の製造装置の構成図を示す。
バネ部品の製造装置1は、サスペンション4の製造工程の中のサスペンション4のバネ荷重を調整するための装置である。また、バネ部品の製造装置1は、荷重調整部2と制御部3を有する。
【0017】
荷重調整部2は、サスペンション4の荷重を測定し、規格範囲外ならば、荷重を調整する。
そのため、荷重調整部2は、サスペンション4、固定部5、搬送部6、荷重計7−1、荷重計駆動部8−1、レーザ照射部9、荷重計7−2、荷重計駆動部8−2を有する。
固定部5は、サスペンション4のスペーサ部33を保持する。保持された状態では、ロードビーム32の裏面側が上を向き、表面側が下を向くように配置される。ロードビーム32の表面側とは、ヘッドスライダ31の搭載面である。ロードビーム32の裏面側とは、ヘッドスライダ31を搭載していない面である。
搬送部6は、固定部5をX方向に駆動することで、サスペンション4が、荷重測定およびレーザ照射を受けられるようにしている。
【0018】
荷重計7−1および荷重計7−2は、例えば押下により発生したサスペンション4のひずみを測定することで荷重を計測する計測器である。また、荷重計7−1、7−2は、所定の位置に設置されている。測定結果は、制御部3に通知する。
そして、固定部5に搭載されたサスペンション4が搬送部6にセットされると、荷重計7−1まで、搬送される。搬送された結果、サスペンション4は、荷重計7−1の上部に位置づけされる。次に、荷重計7−1が荷重計駆動部8−1により上昇してサスペンション4の荷重を測定する。サスペンション4の荷重とは、ロードビーム32によるヘッドスライダ31へのバネ圧のことである。
また、固定部5に搭載されたサスペンション4が搬送部6によりレーザ照射を終了して搬送されてくると、荷重計7−2まで搬送される。搬送された結果、サスペンション4は、荷重計7−2の上部に位置づけされる。次に、荷重計7−2が荷重計駆動部8−2により上昇してサスペンション4の荷重を測定する。
【0019】
荷重計駆動部8−1は、サスペンション4に接触するようにZ方向(図2に示すX方向、Y方向で構成される面に垂直方向)に荷重計7−1を移動させる。荷重計駆動部8−2は、サスペンション4に接触するようにZ方向に荷重計7−2を移動させる。
レーザ照射部9は、レーザ出力をサスペンション4のロードビーム32の所定位置に調整量をあわせて所定熱量で走査しながら照射する。
【0020】
図3は、サスペンションの測定の説明図である。
図3(a)は、荷重計7の初期位置とサスペンション4の位置関係を示す。
L1が荷重計7の初期位置を示す。サスペンション4は、荷重計7の上部にセットされている。
図3(b)は、荷重計7が荷重計駆動部8によりL1からL2までの所定距離H、上昇した位置を示す。この位置は、サスペンション4のヘッドスライダ31が目標の浮上位置まで上昇した位置を示す。そして、このときの荷重計7の値を取得する。この移動距離Hは、スペーサ部33の位置と荷重計のL1の位置を基に予め計算された値である。
【0021】
図4にレーザ照射部の説明図を示す。
レーザ照射部9は、表面照射部91および裏面照射部92を有する。ここで表面とは、サスペンション4のヘッドスライダ31の搭載側の面を指す。裏面とは、サスペンション4のヘッドスライダ31を搭載していない面を指す。
【0022】
表面照射部91は、サスペンション4のヘッドスライダ31の搭載面側である表面を照射する。荷重が増加する方向の照射である。そして、表面照射部91は、レーザ照射装置10−1〜レーザ照射装置10−Nを有する。
レーザ照射装置10−1〜レーザ照射装置10−Nは、固定部5の搬送方向であるX方向に向けてレーザ照射装置10−1からレーザ照射装置10−Nの順番で配置されている。Nは、正の整数である。
レーザ照射装置10−1のレーザ照射調整量は、m×1(g)、レーザ照射装置10−2のレーザ照射調整量は、m×2(g)、・・・レーザ照射装置10−Nのレーザ照射調整量m×(2の(n−1)乗)(g)である。ここで、nは、正の整数である。mは、荷重調整量の最小調整単位の数である。
このような構成にしている理由は、サスペンション4の最小調整量と最大調整量をもとに、レーザ照射装置10の構成を最小調整量の2の(n−1)乗倍とすることで、最小限の構成で、最小調整量から最大調整量までの範囲の調整量を実現できるからである。
【0023】
また、このような構成の複数のレーザ照射装置10−1〜10−Nを使用することで、一回の操作で、所定の照射量を得ることができる。このため、レーザ照射装置10−1〜10−Nにより、所定の照射量を得るために、従来技術のようにサスペンション4上を複数回操作する必要がなくなる。このため、搬送部6を往復運動させることがなくなり、走査時間が減少する。
この結果、サスペンション4の調整量にかかわらず、サスペンション4上を1回の走査でレーザを照射するため、荷重調整量の大小により、製品製造のタクトタイムが変動することを防止することができる。
【0024】
また、レーザ照射装置10−1は、照射エリアの中のフレキシャ39側に最も近い位置に照射する。レーザ照射装置10−Nは、照射エリアの中のスペーサ部33に最も近い位置に照射する。Nが増えるごとに、照射エリアの中のフレキシャ39側に最も近い位置から照射エリアの中のスペーサ部33に最も近い位置へ照射位置を移動していく。
このような構成にしている理由は、他の部分のレーザ照射によりロードビーム32が屈曲した部分にレーザを照射すると、レーザのフォーカスが変わり、照射量が変動するためである。
【0025】
一方、裏面照射部92は、サスペンション4のヘッドスライダ31の搭載面の反対面である裏面を照射するため、荷重が減少する方向の照射である。そして、裏面照射部92は、レーザ照射装置20−1〜レーザ照射装置20−Nを有する。
レーザ照射装置20−1〜レーザ照射装置20−Nは、固定部5の搬送方向に向けてレーザ照射装置20−1からレーザ照射装置20−Nの順番で配置されている。
レーザ照射装置20−1のレーザ照射調整量は、m×1(g)、レーザ照射装置20−2のレーザ照射調整量は、m×2(g)、・・・レーザ照射装置20−Nのレーザ照射調整量m×(2の(n−1)乗)(g)である。ここで、nは、正の整数である。mは、調整量の最小調整単位の数である。
このような構成にしている理由は、表面照射部91と同一の理由による。
【0026】
レーザ照射装置20−1は、照射エリアの中のフレキシャ側に最も近い位置に照射する。レーザ照射装置20−Nは、照射エリアの中のスペーサ部に最も近い位置に照射する。Nが増えるごとに、照射エリアの中のフレキシャ側に最も近い位置から照射エリアの中のスペーサ部33に最も近い位置へ照射位置を移動していく。
このような構成にしている理由は、表面照射部91と同一の理由による。
【0027】
対向したレーザ照射装置10とレーザ照射装置20との間を搬送部6によりサスペンション4を通過させるために、2つの搬送方法がある。
【0028】
第1の搬送方法は、サスペンション4について、搬送部6により対向したレーザ照射装置10とレーザ照射装置20との間を一定速度かつ一方向に移動させる方法である。この搬送により、サスペンション4の所定の照射位置がレーザにより照射される時間は、ほぼ同一となる。このため、所定のレーザ照射調整量を得るには、レーザ照射調整量に応じたレーザ出力の異なるレーザ照射装置10−1〜10−Nおよびレーザ照射装置20−1〜20−Nを使用する。
【0029】
第2の搬送方法は、サスペンション4について、搬送部6により対向したレーザ照射装置10とレーザ照射装置20との間を各レーザ照射装置10−1〜10−N、各レーザ照射装置20−1〜20−Nに対応した速度で、かつ一方向に移動する方法である。この搬送の場合のレーザ照射装置10−1〜10−Nの各出力は、同一とする。また、レーザ照射装置20−1〜20−Nの各出力は同一とする。このため、この方式では、例えばレーザ照射装置10−1の速度からレーザ照射装置10−Nまで、順次速度を下げることで、レーザ照射量を順次増加させて、所定のレーザ照射調整量を実現する方法である。
【0030】
この結果、レーザ光は、サスペンション4の表面および裏面に集光し走査される。これにより、レーザ照射装置10およびレーザ照射装置20とサスペンション4の修正位置との相対位置関係が一定であるため、安定した荷重調整が出来る。
【0031】
また、サスペンション4が搬送部6により対向したレーザ照射装置10とレーザ照射装置20との間を移動する方式ではなく、サスペンション4を所定位置に停止させ、レーザ照射装置10またはレーザ照射装置20がサスペンション4上を走査する方式の構成も可能である。
【0032】
図5にレーザ照射装置の配置の説明図を示す。
サスペンション4の表面のロードビーム32の所定の4箇所に表面照射部91によりレーザを照射する場合の例である。このため、サスペンション4の搬送方向およびサスペンション4の長手方向にずらしてレーザ照射装置10−1〜10−4を表面照射部91に配置する。
図5に示すようにサスペンション4は、搬送部6により表面照射部91を通過することで、4箇所に照射を受ける。
【0033】
図6にサスペンションの照射位置の説明図を示す。
サスペンション4上の表面の4箇所に照射する例である。
ロードビーム32を幅方向へ走査してレーザを照射する。照射すると、一旦照射部分は、熱膨張する。しかし、照射完了し、しばらくすると温度が低下するので、収縮し、照射した側に折れ曲がる。そして、照射量の増加に対応して、折れ曲がり量も増加する。
【0034】
図6(a)に、レーザ照射装置10−1によるサスペンション4の照射位置Eとレーザ照射前のサスペンション4の折れ曲がり状態を示す。
レーザ照射装置10−1の照射位置Eは、ロードビーム32の端部にあるスペーサ部33より最も遠い部位にレーザ照射する位置である。レーザ照射位置Eへのレーザ照射調整量m(g)である。
図6(e)に、図6(a)の状態でサスペンション4にレーザが照射された位置を示す。
【0035】
図6(b)は、レーザ照射装置10−2のサスペンション4の照射位置Fとレーザ照射前のサスペンション4の折れ曲がり状態を示す。サスペンション4は、レーザ照射装置10−1の照射後の状態であり、照射された部分よりサスペンション4のフレキシャ39側に曲がりを生じている。
レーザ照射位置Fは、レーザ照射装置1が照射した位置より、スペーサ部33に向けて所定距離、離れた位置である。レーザ照射位置Fへのレーザ照射調整量2m(g)である。
図6(f)は、図6(b)の状態でサスペンション4にレーザが照射された位置を示す。
【0036】
図6(c)は、レーザ照射装置10−3のサスペンション4の照射位置Gとレーザ照射前のサスペンション4の折れ曲がり状態を示す。サスペンション4は、レーザ照射装置10−2の照射後の状態であり、照射された部分よりサスペンション4のフレキシャ39側に曲がりを生じている。
レーザ照射位置Gは、レーザ照射装置10−2が照射した位置より、スペーサ部33に向けて所定距離、離れた位置である。レーザ照射位置Gへのレーザ照射調整量4m(g)である。
図6(g)は、図6(c)の状態でサスペンション4にレーザが照射された位置を示す。
【0037】
図6(d)は、レーザ照射装置10−4のサスペンション4の照射位置Hとレーザ照射前のサスペンション4の折れ曲がり状態を示す。サスペンション4は、レーザ照射装置10−3の照射後の状態であり、照射された部分よりサスペンション4のフレキシャ39側に曲がりを生じている。
レーザ照射位置Hは、レーザ照射装置10−3が照射した位置より、スペーサ部33に向けて所定距離、離れた位置である。そして、スペーサ部33より最も近い部位にレーザ照射する位置でもある。レーザ照射位置Hのレーザ照射調整量8m(g)である。
図6(h)は、図6(d)の状態でサスペンション4にレーザが照射された位置を示す。
図6(i)は、レーザ照射装置10−4によりサスペンション4の照射位置Hにレーザ照射されたあとのサスペンション4の折れ曲がり状態を示す。
【0038】
このようにレーザ照射装置10−1〜レーザ照射装置10−4まで順番にずらして構成しているのは、照射をするときに、レーザ光のフォーカスの変動が小さいように、ロードビーム32上のフラット部分にレーザを付与するためである。
【0039】
図7は、制御部の構成図を示す。
制御部3は、荷重調整部2を制御して、サスペンション4の荷重量を調整する。
制御部3は、プロセッサ61、メモリ62、入出力制御部63、表示部64を有する。
プロセッサ61は、荷重調整部2の全体を制御する。
メモリ62は、荷重の規格値、荷重とレーザ照射量との対応テーブル、プロセッサにより動作をする荷重制御部2を制御するための制御プログラムを格納する。制御プログラムとしては、搬送部6を制御する搬送制御プログラム、荷重計7を駆動してサスペンションの荷重を測定する荷重測定プログラム、荷重計7により測定された荷重と規格値の目標荷重とを比較し、その差に基づいて荷重調整量を求め、その調整量に応じた前記レーザ照射装置の組み合わせを選択する荷重調整プログラムと、選択されたレーザ照射装置によりサスペンション4へのレーザ照射を制御するレーザ照射プログラムと、処理プロセスを管理するプロセス制御プログラム等を有する。
入出力制御部63は、表面照射部91と裏面照射部92、搬送部6、荷重計7、荷重計駆動部8等との入出力を制御する。
表示部64は、バネ部品の製造装置1の操作画面や初期状態のサスペンション4の荷重計7の測定内容と、再測定の際のサスペンション4の荷重計7の測定内容等を表示する。
【0040】
図8は、荷重調整工程の説明図を示す。
予め、バネ荷重調整前のサスペンション4が製造される。そして、サスペンション4の製造工程の一部として製造されたサスペンション4について荷重調整処理が行われる。
荷重調整処理について説明を行う。
【0041】
まず、固定部5にセットされた測定対象のサスペンション4が搬送部6上の初期位置にロボット等によりセットされる。搬送部6は、ロードされたサスペンション4を検出すると初期位置から荷重計7の位置まで搬送する(S1ステップ)。
次に、サスペンション4の荷重を測定する(S2ステップ)。次に、荷重が規格の範囲内か否かをチェックする(S3ステップ)。
規格の範囲内ならば調整は不要のため、固定部5にセットされたサスペンション4の排出指示を行うとロボット等により排出される(S4ステップ)。そして、製造されたサスペンション4は、アクチュエータ51の製造に用いられる。
規格範囲外ならば、調整が必要である。
次に、規格より小さいか否かをチェックする(S5ステップ)。
規格より小さい場合には、荷重を加える方向に荷重の調整量を計算する(S6ステップ)。
調整量は、規格値と取得した荷重値との差分から求める。
【0042】
次に、調整量から使用する表面照射部91のレーザ照射装置10を決定する(S7ステップ)。
次に、サスペンション4を所定方向に搬送部6により搬送する。そして、決定されたレーザ照射装置10は、サスペンション4が到着すると、サスペンション4の表面側を走査し、レーザを照射する(S8ステップ)。
次に、荷重調整されたサスペンション4の荷重を再測定する(S9ステップ)。
測定結果が規格内か否かをチェックする(S10ステップ)。
測定結果が規格内の場合は、S4ステップへ行き、サスペンション4をアンロードする。
測定結果が規格外の場合には、不良品として廃棄して処理を終了する(S11ステップ)。
一方、S3ステップでのチェック結果が、規格より大きい場合には、荷重を減ずる方向に荷重の調整量を計算する(S12ステップ)。
調整量は、規格値と取得した荷重値との差分から求める。
【0043】
次に、調整量から使用する裏面照射部92のレーザ照射装置20を決定する(S13ステップ)。
次に、サスペンション4を所定方向に駆動して、決定されたレーザ照射装置20によりサスペンション4の裏面側を走査し、レーザを照射する(S14ステップ)。
次に、荷重調整されたサスペンション4の荷重を再測定するため、S9ステップへ行く。
測定結果が規格内の場合は、S4ステップへ行く。
測定結果が規格外の場合には、不良品として廃棄するため、S11ステップへ行く。
【0044】
図9に荷重修正の具体例を示す。
サスペンション4の荷重の測定値が規格より小さい場合の例である。
レーザ照射装置4は、4台からなる。そして、例えば荷重規格値を1.35〜1.65gとする。またレーザ最小調整量を0.1gとする。このため、レーザ照射装置10−1の調整量を0.1gとする。レーザ照射装置10−2の調整量は、0.2gとする。レーザ照射装置10−3の調整量は、0.4gとする。レーザ照射装置10−4の調整量は、0.8gとする。
そして、荷重計7により測定された結果が0.5gのとき、0.85g〜1.15gが調整範囲となるので、平均値をとる。平均値は、1gである。そのため、調整荷重を1gと決定する。
次に、レーザ照射装置10を選択する。測定値が規格値より小さいため、荷重修正のためには、表面照射部91により照射する必要がある。
具体的には、レーザ照射装置10−2、レーザ照射装置10−4が選択される。そしてレーザ照射装置10−1、レーザ照射装置10−3は、使用されない。
【0045】
この場合の照射の処理は、次のようである。
サスペンション4が搬送部6により搬送され、レーザ照射装置10−1の位置を通過する。このとき、レーザは、照射されない。そして、さらに搬送され、レーザ照射装置10−2の位置を通過する。このとき、レーザが照射され、0.2g調整される。そして、さらに搬送されてレーザ照射装置10−3の位置を通過する。このとき、レーザは、照射されない。そして、さらに搬送され、レーザ照射装置10−4の位置を通過する。このとき、レーザが照射され、0.8g調整される。この結果、調整量1gが達成される。
裏面照射部20−1〜裏面照射部20−4は、使用されない。
【0046】
このような処理により、荷重調整に関して、最小のレーザ照射装置数の組み合わせのみで、設定された最小調整量(分解能)を維持しながら必要な荷重調整量を確保することが出来る。
【0047】
また、レーザ照射装置10とレーザ照射装置20を対向させ配置することで荷重の正負方向の調整が出来る。
また、レーザ照射装置10およびレーザ照射装置20とサスペンション4の修正位置との相対位置関係が一定であるため、安定した荷重調整が出来る。
また、サスペンション4の調整量の大小に関わらず同一工程内での調整が可能となるため、タクトタイム一定での荷重調整が可能となる。
また、サスペンション4のフレキシャ39の方向からスペーサ部33の方向に順次照射していくため、ロードビーム32のフラット部分に照射できるため、荷重調整精度を向上できる。
また、荷重調整最小量の2の0乗倍から2の(n−1)乗倍(nは正の整数)までの各照射量を有するn個の照射位置の定まったレーザ照射装置を使用することで、簡単にレーザ照射条件を設定できるので、1台のレーザ照射装置に対して、照射量、照射位置等に関する複雑な条件パラメータを組み合わせてレーザ照射条件を設定する必要がなくなる。
【0048】
また、バネ部品の製造装置1は、機械な加工により既に曲げ加工がなされているサスペンション4に対して荷重調整を行う場合に限らず、曲げ加工がされていないサスペンション4について所定のバネ荷重を得るように曲げ加工を行う場合にも使用可能である。
【0049】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)レーザ照射によりバネ部品を製造するバネ部品の製造装置において、前記バネ部品に対して所定のレーザ照射を行う複数のレーザ照射装置を備えたレーザ照射部を備え、前記レーザ照射装置は、それぞれ予め異なるレーザ照射条件が設定されてなるとともに、それぞれのレーザ照射位置が重ならないように配置されてなり、前記レーザ照射部は、バネ部品に必要なバネ荷重調整量に応じて決められた調整最小量の2の(n−1)乗倍(nは正の整数)となるレーザ照射条件を有するレーザ照射装置の組み合わせで構成されてなることを特徴とするバネ部品の製造装置。
(付記2)付記1に記載のバネ部品の製造装置において、前記レーザ照射部は、複数のレーザ照射装置が前記バネ部品の表面および裏面に対してそれぞれレーザ照射が行えるようにバネ部品の表裏両面側にそれぞれ配置されてなることを特徴とするバネ部品の製造装置。
(付記3)付記1または付記2に記載のバネ部品の製造装置において、前記バネ部品を前記1からn番目のレーザ照射装置全てに対応して一定速度で、前記レーザ照射装置が配置されている所定の方向に沿って移動する移動機構を備え、前記バネ部品は、前記移動機構によるバネ部品の移動により、各レーザ照射装置を順次通過することで各レーザ照射装置の所定の照射位置上に沿ってレーザ照射されることを特徴とするバネ部品の製造装置。
(付記4)付記1または付記2に記載のバネ部品の製造装置において、前記バネ部品を前記1からn番目の各レーザ照射装置に対応して設定した速度で、前記レーザ照射装置が配置されている所定の方向に沿って移動する移動機構を備え、前記バネ部品は、前記移動機構によるバネ部品の移動により、各レーザ照射装置を順次通過することで各レーザ照射装置の所定の照射位置上に沿ってレーザ照射されることを特徴とするバネ部品の製造装置。
(付記5)付記2に記載のバネ部品の製造装置において、バネ部品の一端を固定端として支持する固定部を有し、前記レーザ照射装置は、バネ部品の複数のレーザ照射位置に対応して配置され、かつバネ部品の固定端より最も遠い照射位置から順次固定端側に近づく照射位置にレーザ照射を行うように配置されていることを特徴とするバネ部品の製造装置。
(付記6)付記1に記載のバネ部品の製造装置において、前記バネ部品の荷重を測定する荷重計と、前記荷重計により測定された荷重と目標荷重との差に基づいて荷重調整量を求め、その調整量に応じた前記レーザ照射装置の組み合わせを選択し、選択されたレーザ照射装置によりバネ部品へのレーザ照射を制御する制御部と、を備えることを特徴とするバネ部品の製造装置。
(付記7)付記1記載のバネ部品の製造装置を使用して、レーザ照射によりバネ荷重を調整してバネ部品を製造することを特徴とするバネ部品の製造方法。
(付記8)前記バネ部品が磁気ディスク装置のヘッドスライダを搭載するサスペンションであることを特徴とする付記1記載のバネ部品の製造装置。
(付記9)バネ部品のバネ荷重をレーザ照射装置によるレーザ照射により調整する荷重調整方法であって、前記バネ部品の荷重を測定するステップと、測定された荷重と目標荷重との差に基づいて荷重調整量を取得するステップと、荷重調整最小量の2の0乗倍から2の(n−1)乗倍(nは正の整数)までの各照射量を有する前記複数のレーザ照射装置の中から前記取得した荷重調整量に応じたレーザ照射装置を選択するステップと、選択されたレーザ照射装置により前記バネ部品にレーザを照射するステップと、を有することを特徴とするバネ部品の製造方法。
(付記10)前記レーザを照射するステップは、前記バネ部品の複数のレーザ照射位置に対応して配置されたレーザ照射装置により、バネ部品上を所定方向に向けて所定の照射位置に順次照射することを特徴とする付記9記載のバネ部品の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】磁気記憶装置の説明図
【図2】バネ部品の製造装置の構成図
【図3】サスペンションの測定の説明図
【図4】レーザ照射部の説明図
【図5】レーザ照射装置の配置の説明図
【図6】サスペンションの照射位置の説明図
【図7】制御部の構成図
【図8】荷重調整工程の説明図
【図9】荷重修正の具体例
【符号の説明】
【0051】
1 バネ部品の製造装置
2 荷重調整部
3 制御部
4 サスペンション
5 固定部
6 搬送部
7 荷重計
8 荷重計駆動部
9 レーザ照射部
10、20 レーザ照射装置
31 ヘッドスライダ
32 ロードビーム
33 スペーサ部
34 アーム
35 駆動部
36 フレキシブルプリント板
37 固定部材
38 フレキシャ
39 ジンバル
40 ピボット
41 磁気記憶装置
42 磁気ディスク
43 スピンドルモータ
51 アクチュエータ
52 アクチュエータブロック
61 プロセッサ
62 メモリ
63 入出力制御部
64 表示部
91 表面照射部
92 裏面照射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ照射によりバネ部品を製造するバネ部品の製造装置において、
前記バネ部品に対して所定のレーザ照射を行う複数のレーザ照射装置を備えたレーザ照射部を備え、
前記レーザ照射装置は、それぞれ予め異なるレーザ照射条件が設定されてなるとともに、それぞれのレーザ照射位置が重ならないように配置されてなり、
前記レーザ照射部は、バネ部品に必要なバネ荷重調整量に応じて決められた調整最小量の2の(n−1)乗倍(nは正の整数)となるレーザ照射条件を有するレーザ照射装置の組み合わせで構成されてなることを特徴とするバネ部品の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバネ部品の製造装置において、
前記レーザ照射部は、複数のレーザ照射装置が前記バネ部品の表面および裏面に対してそれぞれレーザ照射が行えるようにバネ部品の表裏両面側にそれぞれ配置されてなることを特徴とするバネ部品の製造装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のバネ部品の製造装置において、
前記バネ部品を前記1からn番目のレーザ照射装置全てに対応して一定速度で、レーザ照射装置が配置されている所定の方向に沿って移動する移動機構を備え、
前記バネ部品は、前記移動機構によるバネ部品の移動により、各レーザ照射装置を順次通過することで各レーザ照射装置の所定の照射位置上に沿ってレーザ照射されることを特徴とするバネ部品の製造装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のバネ部品の製造装置において、
前記バネ部品を前記1からn番目の各レーザ照射装置に対応して設定した速度で、レーザ照射装置が配置されている所定の方向に沿って移動する移動機構を備え、
前記バネ部品は、前記移動機構によるバネ部品の移動により、各レーザ照射装置を順次通過することで各レーザ照射装置の所定の照射位置上に沿ってレーザ照射されることを特徴とするバネ部品の製造装置。
【請求項5】
請求項2に記載のバネ部品の製造装置において、
バネ部品の一端を固定端として支持する固定部を有し、
前記レーザ照射装置は、バネ部品の複数のレーザ照射位置に対応して配置され、かつバネ部品の固定端より最も遠い照射位置から順次固定端側に近づく照射位置にレーザ照射を行うように配置されていることを特徴とするバネ部品の製造装置。
【請求項6】
請求項1に記載のバネ部品の製造装置において、
前記バネ部品の荷重を測定する荷重計と、
前記荷重計により測定された荷重と目標荷重との差に基づいて荷重調整量を求め、その調整量に応じた前記レーザ照射装置の組み合わせを選択し、選択されたレーザ照射装置によりバネ部品へのレーザ照射を制御する制御部と、
を備えることを特徴とするバネ部品の製造装置。
【請求項7】
請求項1記載のバネ部品の製造装置を使用して、レーザ照射によりバネ荷重を調整してバネ部品を製造することを特徴とするバネ部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−181683(P2009−181683A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22355(P2008−22355)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】