バラン実装構造
【課題】バラン実装デバイスの構造を複雑化・多層化することなく、実装基板に実装したときの特性変動の影響を抑制する。
【解決手段】不平衡信号伝送路50および不平衡信号伝送路50に対向する2つの平衡信号伝送路を有するバランと第1の基板10を備えるデバイス100と、該デバイス100が実装された実装基板200とを備えるバラン実装構造であって、実装基板200は、第2の基板210と、第2の基板210の一方の面上に形成された配線部201,202,206,207,209を備え、デバイス100は、第1の基板10の一方の面と第2の基板210の一方の面とが対向するように実装基板200上に実装されており、実装基板200の配線部202,207,209は、第1の基板10の一方の面に垂直な方向から見て、デバイス100の伝送路50の配線と垂直に重なり合うように配置されている。
【解決手段】不平衡信号伝送路50および不平衡信号伝送路50に対向する2つの平衡信号伝送路を有するバランと第1の基板10を備えるデバイス100と、該デバイス100が実装された実装基板200とを備えるバラン実装構造であって、実装基板200は、第2の基板210と、第2の基板210の一方の面上に形成された配線部201,202,206,207,209を備え、デバイス100は、第1の基板10の一方の面と第2の基板210の一方の面とが対向するように実装基板200上に実装されており、実装基板200の配線部202,207,209は、第1の基板10の一方の面に垂直な方向から見て、デバイス100の伝送路50の配線と垂直に重なり合うように配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線回路等に用いられるバラン(バランストランス・不平衡−平衡変換器)が基板上に実装されてなる、バラン実装デバイスと、該デバイスが実装された実装基板とを備えるバラン実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バランは、第1平衡信号伝送路と、第1平衡信号伝送路とは電気的に独立して設けられた第2平衡信号伝送路と、これら2つの平衡信号伝送路に対向して設けられた不平衡信号伝送路とを備え、不平衡信号伝送路は、一端が不平衡信号入出力端、他端が開放端となり、2つの平衡信号伝送路は、一端が平衡信号出入力端、他端が接地端となった構造を備える。この種のバランは、2つの平衡信号出入力端から平衡信号が入力されたときには、平衡信号伝送路から不平衡信号伝送路への電磁結合により、平衡信号を不平衡信号に変換して不平衡信号入出力端から不平衡信号を出力し、逆に不平衡信号入出力端から不平衡信号を入力したときには、不平衡信号伝送路から平衡信号伝送路への電磁結合により、不平衡信号を平衡信号に変換して2つの平衡信号出入力端から平衡信号を出力する。
【0003】
バランの2つの平衡信号伝送路はそれぞれ1/4波長以下のサイズで、不平衡信号伝送路は、2つの平衡信号伝送路を合計したサイズで作製される。信号の周波数が低いと、信号の波長が長くなるため、伝送路の長さも長くなる。このため、バランの各伝送路は、平面スパイラル状に形成されることが多い。
積層型バランは、不平衡信号伝送路と、2つの平衡信号伝送路とが、絶縁層(誘電体層)を介して上下(絶縁層の厚さ方向)に積層された構造を有する。従来の積層型バランは、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co−fired Ceramics)技術をベースとしたもの(例えば特許文献1)が知られている。
【特許文献1】特開2002−50910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の積層型バランは、不平衡信号伝送路の層および平衡信号伝送路の層のほか、入力部の端子層、接地(GND)層などを含む多数の層からなり、かつ実装のための端子部を側面に施す必要がある。また、GND層が必要となり、層数の多層化を招いている。このため、従来の積層型バランの製造は、非常に複雑で高度な製造技術が必要とされ、結果的に高コストとなっている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バラン実装デバイスの構造を複雑化・多層化することなく、実装基板に実装したときの特性変動の影響を抑制することが可能なバラン実装構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、バランを備えたデバイスと、該デバイスが実装された実装基板とを備えるバラン実装構造であって、前記デバイスは、第1の基板と、前記第1の基板の一方の面上に形成された第1絶縁樹脂層と、前記第1絶縁樹脂層上に設けられた第1配線層と、前記第1配線層および第1絶縁樹脂層上に形成された第2絶縁樹脂層と、前記第2絶縁樹脂層上に設けられた第2配線層と、前記第2配線層および第2絶縁樹脂層上に形成された第3絶縁樹脂層とを少なくとも備え、前記第1配線層または前記第2配線層の一方は、電気的に独立して設けられた2つの平衡信号伝送路を含み、前記第1配線層または前記第2配線層の他方は、不平衡信号伝送路を含み、前記2つの平衡信号伝送路および前記不平衡信号伝送路が、前記第2絶縁樹脂層を介して対向することでバランを構成しており、前記実装基板は、第2の基板と、第2の基板の一方の面上に形成された配線部を備え、前記デバイスは、前記第1の基板の一方の面と前記第2の基板の一方の面とが対向するように前記実装基板上に実装されており、前記実装基板の配線部は、前記第1の基板の一方の面に垂直な方向から見て、前記デバイスの前記第2配線層に形成された平衡信号伝送路または不平衡信号伝送路を構成する配線と垂直に重なり合うように配置されていることを特徴とするバラン実装構造を提供する。
【0007】
前記第2絶縁樹脂層上には、前記不平衡信号伝送路の一端である不平衡信号入出力端に接続されたデバイス側実装パッドと、前記2つの平衡信号伝送路の一端である平衡信号出入力端に接続されたデバイス側実装パッドと、前記2つの平衡信号伝送路の他端である接地端に接続されたデバイス側実装パッドとが設けられ、前記第3絶縁樹脂層は、前記デバイス側実装パッド上にそれぞれ形成されたバンプを露出させる開口部を有しており、前記バンプは、前記第3絶縁樹脂層の表面よりも突出して前記実装基板の配線部に接続された実装基板側実装パッドに導通されている。
前記デバイス側実装パッドは、前記不平衡信号伝送路および平衡信号伝送路を構成する配線よりも厚さが厚くなるように形成されてなることが好ましい。
前記実装基板側実装パッドは、前記配線部よりも厚さが厚くなるように形成されてなることが好ましい。
前記デバイス側実装パッドは、前記第2絶縁樹脂層上に局所的に形成された樹脂構造物の頂面上に形成され、前記デバイス側実装パッドには、前記樹脂構造物の側面を経由して形成された引き出し配線が接続されていることが好ましい。
【0008】
前記2つの平衡信号伝送路は、その一端である平衡信号出入力端が外周側に、他端である接地端が内周側に配置される平面スパイラル状の部分を有するように形成され、前記不平衡信号伝送路は、前記2つの平衡信号伝送路の平面スパイラル状の部分に重なり合う2つの平面スパイラル状の部分を有し、不平衡信号伝送路の一端である不平衡信号入出力端が一方の平面スパイラル状の部分の内周側に配置され、不平衡信号伝送路の他端である開放端が他方の平面スパイラル状の部分の内周側に配置され、2つの平面スパイラル状の部分を接続する中間部が2つの平面スパイラル状の部分の外周側に配置されるように形成され、前記デバイス側実装パッドのうち、前記不平衡信号入出力端または前記2つの接地端に接続される3つのデバイス側実装パッドは、前記平面スパイラル状の部分の内側のスペース内に配置され、前記実装基板の配線部は、前記平面スパイラル状の部分の内側のスペース内に配置された前記3つのデバイス側実装パッドに対応する3つの実装基板側実装パッドから引き出され、前記第1の基板の一方の面に垂直な方向から見て、前記平面スパイラル状の部分の配線と垂直に重なり合うように配置された3つの交差部を有することが好ましい。
前記3つの交差部は、前記平面スパイラル状の部分において重なり合いの長さが最も小さくなる位置に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バラン実装デバイスの構造を複雑化・多層化することなく、実装基板に実装したときの特性変動の影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明のバラン実装構造を構成する(a)バランを有するデバイスおよび(b)実装基板の一例を示す平面図である。図2は、図1のS−S線に沿うバラン実装構造の部分断面図である。
なお、以下の説明に用いる図面は模式的なものであって、大きさや縦横比率は、実際とは異なる場合がある。
【0011】
図1(a)は、デバイス(以下「バラン実装デバイス」ともいう。)100が実装基板200に対向する面において、バランを構成する伝送路50および端子部60,65,70,75,90を構成するバンプ81,82,86,87,89の配置を示す平面図である。また、図1(b)は、実装基板200がデバイス100に対向する面における配線部の配置を示す平面図である。図1(b)中、二点鎖線は、実装基板200上でデバイス100の伝送路50およびバンプ81,82,86,87,89に対応する位置を仮想的に示している。
【0012】
図3は、バランを有するデバイスの全体構成例を示す斜視図である。図4は、図3の接地端子部および不平衡信号入出力端子部を示す部分拡大斜視図である。図5は、図3に示すバランの模式的平面図である。図6は、図5のA−A線に沿う断面図である。図7は、図5のB−B線に沿う断面図である。図8は、図5のC−C線に沿う断面図である。図5〜図8では、バランの構造を説明するために、平衡信号伝送路30,35および不平衡信号伝送路50が直線状に展開して図示されている。
【0013】
本形態例のバラン実装構造に用いられるデバイス100は、図2、図3に示すように、第1の基板10(以下、単に「基板10」という。)と、基板10の一方の面(図2では下面)上に形成された第1絶縁樹脂層22と、第1絶縁樹脂層22上に設けられた2つの平衡信号伝送路30,35を含む第1配線層(符号略)と、第1配線層および第1絶縁樹脂層22の上に形成された第2絶縁樹脂層24と、第2絶縁樹脂層24上において2つの平衡信号伝送路30,35に対向して設けられた不平衡信号伝送路50を含む第2配線層(符号略)と、第2配線層および第2絶縁樹脂層24の上に形成された第3絶縁樹脂層26を備える。
基板10は、例えばシリコン(Si)などの半導体基板や、ガラス基板などの絶縁性基板である。
【0014】
平衡信号伝送路30,35は、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35からなり、これら2つの平衡信号伝送路30,35が電気的に互いに独立して設けられている。
第1平衡信号伝送路30は、一端を第1平衡信号出入力端30aとし、他端を第1接地端30bとする。第1平衡信号出入力端30aは、第1平衡信号出入力引き出し配線31を介して第1平衡信号出入力端子部60に接続されている。また、第1接地端30bは、第1接地引き出し配線32を介して第1接地端子部70に接続されている。
同様に、第2平衡信号伝送路35は、一端を第2平衡信号出入力端35aとし、他端を第2接地端35bとし、第2平衡信号出入力端35aは、第2平衡信号出入力引き出し配線36を介して第2平衡信号出入力端子部65に接続され、第2接地端35bは、第2接地引き出し配線37を介して第2接地端子部75に接続されている。
【0015】
不平衡信号伝送路50は、一端を不平衡信号入出力端50aとし、他端を開放端50bとする。不平衡信号伝送路50は、不平衡信号入出力端50aと開放端50bとの間に、第1平衡信号伝送路30に対向した部分50cと、第2平衡信号伝送路35に対向した部分50dとを有する。不平衡信号入出力端50aは、不平衡信号入出力端子部90に接続されている。
【0016】
デバイス100において、2つの平衡信号伝送路30,35および不平衡信号伝送路50は、第2絶縁樹脂層24を介して対向することでバランを構成している。
実装基板200は、第2の基板210と、第2の基板210の一方の面(図2では上面)上に形成された配線部201,202,206,207,209を備える。実装基板200は、フレキシブルプリント基板(FPC)やリジッドプリント基板等が挙げられる。第2の基板210は、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙エポキシ基板、ポリテトラフルオロエチレン[テフロン(登録商標)等]、アルミナ基板等、種々の絶縁性基板を用いることができる。
図2に示すように、デバイス100は、第1の基板10の一方の面と第2の基板210の一方の面とが対向するように、実装基板200上に実装されている。
【0017】
本形態例のバラン実装構造は、図1、図2に示すように、実装基板200の配線部201,202,206,207,209が、第1の基板10の一方の面に垂直な方向から見て(図1(b)参照)、デバイス100の第2配線層(この例では不平衡信号伝送路50)の配線と重なり合う箇所では、配線部202,207,209がデバイス100の伝送路を構成する配線と垂直に重なり合うように配置されている。
これにより、バラン実装デバイスの構造を複雑化・多層化することなく、実装基板に実装したときの特性変動の影響を抑制することができる。
【0018】
本形態例のバラン実装デバイス100においては、図3に示すように、不平衡信号伝送路50の第1平衡信号伝送路30に対向した部分50cおよび第1平衡信号伝送路30が、内周にスペースE1を有するように平面スパイラル型に配置されるとともに、不平衡信号伝送路50の第2平衡信号伝送路35に対向した部分50dおよび第2平衡信号伝送路35が、内周にスペースE2を有するように平面スパイラル型に配置されている。
また、図3、図5、図6に示すように、不平衡信号伝送路50の第1平衡信号伝送路30に対向した部分50cと第2平衡信号伝送路35に対向した部分50dとの間は、中間部50eによって接続されている。
本形態例では、平面スパイラルの巻き方向(内周から外周への巻き方向)は、第1平衡信号伝送路30と第2平衡信号伝送路35とで互いに反対であり、かつ、不平衡信号伝送路50の2つの平面スパイラル状の部分50c,50dで互いに反対である。不平衡信号伝送路50においては、不平衡信号入出力端50aから開放端50bに向けて(あるいはその逆に)流れる電流の向きに沿って配線が巻き回される方向が、2つの平面スパイラル状の部分50c,50dについて互いに逆になっている。
伝送路30,35,50をスパイラル型に設けることにより、方形や楕円等の狭いスペースに長い伝送路を配置できる。このため、スパイラル型とすることによって、バランが占有するスペースを低減して、かつ長い伝送路を有するバランを実現できる。
なお、本発明においては、伝送路の形状は、平面スパイラルのほか、ミアンダ状、直線状等でも良い。
【0019】
2つの平衡信号伝送路30,35は、それぞれ平衡信号出入力端30a,35aが外周側に、接地端30b,35bが内周側に配置される平面スパイラル状の部分を有する。
不平衡信号伝送路50は、2つの平衡信号伝送路30,35の平面スパイラル状の部分に重なり合う2つの平面スパイラル状の部分50c,50dを有し、不平衡信号入出力端50aが一方の平面スパイラル状の部分50dの内周側に配置され、開放端50bが他方の平面スパイラル状の部分50cの内周側に配置され、2つの平面スパイラル状の部分50c,50dを接続する中間部50eが2つの平面スパイラル状の部分50c,50dの外周側に配置されるように形成されている。
また、第1接地端子部70は、平面スパイラル内周の第1スペースE1内に配置され、第2接地端子部75および不平衡信号入出力端子部90は、平面スパイラル内周の第2スペースE2内に配置されている。2つの平衡信号出入力端子部60,65は、平面スパイラルの外側に配置されている。
【0020】
2つの平衡信号伝送路30,35は、例えば銅めっき等のめっき金属などから構成することができる。2つの平衡信号伝送路30,35が同じ導体材料から、第1平衡信号伝送路30の伝送路長L1と第2平衡信号伝送路35の伝送路長L2とが等しいように形成されることが好ましい。ここで、伝送路長L1,L2は、スパイラルに沿った伝送路の長さである。2つの平衡信号伝送路30,35の幅Wおよび厚さTは、幅W同士および厚さT同士が互いに等しくなるように形成されることが好ましい。
【0021】
図6〜図8に示すように、第1絶縁樹脂層22の厚さh1は、基板10全面でなるべく均一にすることが好ましい。なお、第1絶縁樹脂層22の厚さh1は、基板10の上面と平衡信号伝送路30,35の下面との距離に対応する。
第1絶縁樹脂層22を構成する樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、感光性ポリイミド樹脂、感光性エポキシ樹脂などの感光性樹脂は、フォトリソグラフィーによりパターニングが可能なので好ましい。第1絶縁樹脂層22は、基板10上の全面に塗布されるので、熱硬化性樹脂などでも良い。
【0022】
不平衡信号伝送路50は、2つのスパイラル状の部分50c,50dが中間部50eにより接続され、少なくとも、一端の不平衡信号入出力端50aから他端の開放端50bまでの範囲で連なった1本の伝送路である。不平衡信号伝送路50の中間部50eは、平面スパイラルの外周端同士を接続する位置に設けられている。
【0023】
不平衡信号伝送路50は、例えば銅めっき等のめっき金属などから構成することができる。不平衡信号伝送路50は、2つの平衡信号伝送路30,35と同じ導体材料から形成されることが好ましい。また、不平衡信号伝送路50の幅Wおよび厚さTは、2つの平衡信号伝送路30,35の幅Wおよび厚さTと、それぞれ幅W同士および厚さT同士が等しくなるように形成されることが好ましい。
【0024】
中間部50eは、2つの平面スパイラル状の部分50c,50d同士の間隔gに対応する長さを有する。2つのスパイラル状の部分50c,50dの長さL1,L2は、それぞれ平衡信号伝送路30,35の伝送路長L1,L2に等しい。
不平衡信号伝送路50の不平衡信号入出力端50aから開放端50bまでの長さLは、2つのスパイラル状の部分50c,50dの長さL1,L2と、中間部50eの長さgとの和(L=L1+g+L2)に相当する。
なお、図5に示す伝送路長L1,L2は、平衡信号伝送路30,35と不平衡信号伝送路50とが、第2絶縁樹脂層24を介して上下に対向している部分の長さを表している。
【0025】
図6〜図8に示すように、平衡信号伝送路30,35上における第2絶縁樹脂層24の厚さdは、平衡信号伝送路30,35に沿う全長でなるべく均一にすることが好ましい。なお、第2絶縁樹脂層24の厚さdは、平衡信号伝送路30,35の上面と不平衡信号伝送路50の下面との距離に対応する。第1絶縁樹脂層22上における第2絶縁樹脂層24の厚さは、計算上は、平衡信号伝送路30,35の厚さTと、平衡信号伝送路30,35上における第2絶縁樹脂層24の厚さdとの和(T+d)に相当する。しかし、第2絶縁樹脂層24は、第1絶縁樹脂層22とその上に形成した平衡信号伝送路30,35による凹凸面の上に形成されるので、平衡信号伝送路30,35から離れた箇所では、必ずしも第2絶縁樹脂層24の厚さが均一でなくでも構わない。
【0026】
平衡信号伝送路30,35の上面と不平衡信号伝送路50の下面との距離dは、特に限定されるものではないが、d=5〜40μmが挙げられる。
第2絶縁樹脂層24を構成する樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、感光性ポリイミド樹脂、感光性エポキシ樹脂などの感光性樹脂は、フォトリソグラフィーによりパターニングが可能なので好ましい。
【0027】
不平衡信号伝送路50の上には、封止樹脂層26として、第3絶縁樹脂層26を設けることができる。不平衡信号伝送路50上における封止樹脂層26の厚さh2は、不平衡信号伝送路50の上面と封止樹脂層26の上面との距離に相当する。
封止樹脂層26を構成する樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、感光性ポリイミド樹脂、感光性エポキシ樹脂などの感光性樹脂は、フォトリソグラフィーによりパターニングが可能なので好ましい。封止樹脂層26は、デバイスの全面に塗布されるので、熱硬化性樹脂などでも良い。
【0028】
図3,図5,図7に示すように、平衡信号出入力引き出し配線31,36は、第2絶縁樹脂層24に形成された開口部24a,24cを貫通するビアを通じて、第2絶縁樹脂層24上に形成された平衡信号出入力電極パッド51,56(第1平衡信号出入力電極パッド51および第2平衡信号出入力電極パッド56)に接続されている。また、平衡信号出入力引き出し配線31,36は、第1絶縁樹脂層22上において、平衡信号出入力端30a,35aに接続されている。平衡信号出入力電極パッド51,56は、平衡信号出入力端子部60,65において平衡信号を出入力するための電極パッドである。
封止樹脂層26は、平衡信号出入力電極パッド51,56の少なくとも一部を露出するための開口部26a,26cを有する。
なお、第1平衡信号出入力引き出し配線31の長さL1a(第1平衡信号出入力端30aから第1平衡信号出入力電極パッド51までの長さ)と、第2平衡信号出入力引き出し配線36の長さL2a(第2平衡信号出入力端35aから第2平衡信号出入力電極パッド56までの長さ)は、振幅バランス特性および位相バランス特性を向上させるため、互いに等しいこと(L1a=L2a)が好ましい。
【0029】
図3〜図5に示すように、接地引き出し配線32,37は、第2絶縁樹脂層24に形成された開口部24b,24dを貫通するビアを通じて、第2絶縁樹脂層24上に形成された接地電極パッド52,57(第1接地電極パッド52および第2接地電極パッド57)に接続されている。また、接地引き出し配線32,37は、第1絶縁樹脂層22上において、接地端30b,35bに接続されている。接地電極パッド52,57は、接地端子部70,75においてバランの平衡信号伝送路30,35の他端を接地するための電極パッドである。
封止樹脂層26は、接地電極パッド52,57の少なくとも一部を露出するための開口部26b,26dを有する。
なお、第1接地引き出し配線32の長さL1b(第1接地端30bから第1接地電極パッド52までの長さ)と、第2接地引き出し配線37の長さL2b(第2接地端35bから第2接地電極パッド57までの長さ)は、振幅バランス特性および位相バランス特性を向上させるため、互いに等しいこと(L1b=L2b)が好ましい。
【0030】
図3〜図5、図8に示すように、不平衡信号伝送路50の不平衡信号入出力端50aは、第2絶縁樹脂層24上に設けられた不平衡信号入出力電極パッド59に接続されている。不平衡信号入出力電極パッド59は、不平衡信号入出力端子部90において不平衡信号を入出力するための電極パッドである。
封止樹脂層26は、不平衡信号入出力電極パッド59の少なくとも一部を露出するための開口部26eを有する。
【0031】
本形態例の場合、図1および図2に示すように、電極パッド51,52,56,57,59の上には、それぞれ、はんだバンプ(第1平衡信号出入力バンプ81、第1接地バンプ82、第2平衡信号出入力バンプ86、第2接地バンプ87、不平衡信号入出力バンプ89)が搭載される。これらのバンプ81,82,86,87,89は、封止樹脂層26の開口部26a,26b,26c,26d,26eの内側に配され、封止樹脂層26の表面より上方(図2では「下面より下方」)に突出している。
これらのバンプ81,82,86,87,89を用いることにより、デバイス100を実装基板200にフリップチップ実装することができる。なお、フリップチップ実装の安定性を高めるため、バランの伝送路30,35,50に接続されたバンプ81,82,86,87,89以外にもダミーのバンプを適宜設けて、実装基板200上でデバイス100をバランスよく支持できるようにするのが望ましい。
なお、電極パッド51,52,56,57,59がバンプ81,82,86,87,89を搭載するために用いられる場合、「実装パッド」という場合がある。
また、後述する実装基板200側の電極パッド211,212,216,217,219と区別するため、デバイス100側の電極パッド51,52,56,57,59を「デバイス側実装パッド」、実装基板200側の電極パッド211,212,216,217,219を「実装基板側実装パッド」という場合がある。
【0032】
バラン実装デバイス100を実装基板200にフリップチップ実装する場合、電極パッド51,52,56,57,59は、伝送路30,35,50や引き出し配線31,32,36,37よりも厚さが厚くなるように形成されることが好ましい。あるいは、図10に示すように、実装基板200A側の電極パッド217Aが配線部207よりも厚さが厚くなるように形成されることが好ましい。
これにより、電極パッド51,52,56,57,59上に設けたバンプ81,82,86,87,89を介してバラン実装デバイス100を実装基板200にフリップチップ実装したときに、実装基板200上の配線部201,202,206,207,209と、バラン実装デバイス100の伝送路30,35,50との距離をより大きく離し、配線部201,202,206,207,209と伝送路30,35,50との相互作用を抑制することができる。
なお、図10では、実装基板200A側の電極パッド217Aを1つのみ図示しているが、バンプ81,82,86,87,89が接触する高さ(基板10から垂直に離れた距離)が同等となるよう、他の電極パッド211,212,216,219も同様に厚さを厚くする。
デバイス100側と実装基板200側の両方で、デバイス側実装パッドおよび実装基板側実装パッドの厚さが伝送路30,35,50や引き出し配線31,32,36,37、配線部201,202,206,207,209を構成する配線よりも厚くなるように形成しても良い。
電極パッドを上記配線よりも厚く形成する方法としては、電極パッドにおいて、めっきを選択的に成長させる方法が挙げられる。
【0033】
また、図11に示すように、デバイス側実装パッド510は、第2絶縁樹脂層24上に局所的に形成された樹脂構造物24gの頂面上に形成して端子部500を構成しても良い。この場合、デバイス側実装パッド510から樹脂構造物24gの側面を経由する配線を引き出すことで実装パッド510を伝送路30,35,50に接続することができる。また、封止樹脂層26には、実装パッド510の少なくとも一部を露出する開口部26gを形成し、実装パッド510上にバンプ(図示せず)を形成する。
この手法によっても、デバイス側実装パッド51,52,56,57,59上に設けたバンプ81,82,86,87,89を介してバラン実装デバイス100を実装基板200にフリップチップ実装したときに、実装基板200上の配線部201,202,206,207,209と、バラン実装デバイス100の伝送路30,35,50との距離をより大きく離し、配線部201,202,206,207,209と伝送路30,35,50との相互作用を抑制することができる。
【0034】
多層樹脂体20は、第1絶縁樹脂層22と、第2絶縁樹脂層24と、封止樹脂層としての第3絶縁樹脂層26とによって構成された積層構造である。第1絶縁樹脂層22は、基板10上に形成されている。
これらの樹脂層22,24,26は、同じ樹脂を用いて同一の手法で形成することにより、同一の比誘電率を有するようにしても良い。
特に、上下の平衡信号伝送路30,35と不平衡信号伝送路50との間に介在される第2絶縁樹脂層24は、平衡信号伝送路30,35と不平衡信号伝送路50との間の電磁結合を制御するため、他の樹脂層22,26と異なる比誘電率を有する樹脂から構成しても良い。
【0035】
図1(b)に示すように、実装基板200においては、デバイス側実装パッド51,52,56,57,59とそれぞれ対応する位置に、バンプ81,82,86,87,89と導通される実装基板側実装パッド(電極パッド)211,212,216,217,219が設けられている。これらの電極パッド211,212,216,217,219からはそれぞれ配線部201,202,206,207,209が引き出される。
図2に示すように、バンプ87はデバイス100の封止樹脂層(第3絶縁樹脂層)26の表面よりも突出して、封止樹脂層26と実装基板200との間に間隙を保持しつつ、実装基板側実装パッド217に導通されている。図示しない他のバンプ81,82,86,89と実装基板側実装パッド211,212,216,219との間も、同様に導通される。
【0036】
図1(a)および図3に示すように、上記5つのデバイス側実装パッドのうち、不平衡信号入出力端50aまたは2つの接地端30b,50bに接続される3つのデバイス側実装パッド52,57,59は、平面スパイラル状の部分50c,50dの内側のスペースE1,E2内に配置されている。
また、上記5つの実装基板側実装パッド211,212,216,217,219から引き出される配線部201,202,206,207,209のうち、平面スパイラル状の部分50c,50dの内側のスペースE1,E2内に配置された3つのデバイス側実装パッド52,57,59に対応する3つの実装基板側実装パッド212,217,219から引き出される配線部202,207,209は、第1の基板10の一方の面に垂直な方向から(図1(b)参照)見て、平面スパイラル状の部分50c,50dの配線と重なり合うように配置された3つの交差部を有する。
【0037】
これらの交差部を有する配線部202,207,209は、平面スパイラル状の部分50c,50dの配線と垂直に重なり合うように配置されているので、バラン実装デバイスの構造を複雑化・多層化することなく、実装基板に実装したときの特性変動の影響を抑制することができる。
特性変動の影響をより効果的に抑制するため、図12に示すように、3つの交差部は、平面スパイラル状の部分50c,50dにおいて重なり合いの長さが最も小さくなる位置に配置することが好ましい。ここで、スパイラル配線の線幅がほぼ一定であれば、重なり合う線の本数が少ないほど、重なり合いの長さを短くすることができる。図12の場合、交差部を有する配線部202,207,209は、いずれも平面スパイラル状の部分50c,50dと配線3本の幅に相当する長さで重なり合っており、他の配線4本の幅に相当する長さで重なり合わせるよりも好ましい。
【0038】
図9に、図3に示すバランの模式的回路図を示す。
図9のバラン110において、不平衡信号伝送路50の不平衡信号入出力端50aに不平衡信号(単一信号)SSが入力されると、不平衡信号伝送路50と平衡信号伝送路30,35との電磁結合が生じる。この際、伝送される信号の波長をλとすると、第1平衡信号伝送路30の伝送路長L1および第2平衡信号伝送路35の伝送路長L2がそれぞれλ/4(以下)であることにより、平衡信号伝送路30,35の平衡信号出入力端30a,35aから平衡信号(差動信号)SD1,SD2が出力される。
同様に、平衡信号伝送路30,35の平衡信号出入力端30a,35aから平衡信号(差動信号)SD1,SD2を入力すると、平衡信号伝送路30,35と不平衡信号伝送路50との電磁結合により、不平衡信号伝送路50の不平衡信号入出力端50aから不平衡信号(単一信号)SSが出力される。
【0039】
このようなバラン110は、アンテナで受信した不平衡信号を復調するにあたって当該不平衡信号を平衡信号に変換したり、逆に平衡信号である変調信号をアンテナから送信するにあたって当該平衡信号を不平衡信号に変換したりするため、携帯電話などの無線通信機器に用いられる。
【0040】
また、図9のバラン110は、インピーダンスを変換するトランスとしての機能も兼ね備えている。インピーダンス変換においては、不平衡信号伝送路50の入出力インピーダンスZS、および平衡信号伝送路30,35の出入力インピーダンスZD1,ZD2が、設計仕様のインピーダンスであることが要求される。例えば、ZS=50Ωであり、ZD1+ZD2=100Ω、150Ω、200Ω等である。
【0041】
本形態例のバラン接続構造によれば、実装基板200側で不平衡信号が伝送される配線をデバイス100に内蔵されたバランの不平衡信号伝送路50に、平衡信号が伝送される配線をバランの平衡信号伝送路30,35にそれぞれ接続し、実装基板200の配線に伝送される信号を、不平衡信号から平衡信号に、または平衡信号から不平衡信号に変換することができる。
【0042】
本形態例のバラン実装デバイス100は、WLP技術を応用した製造方法によって製造することができる。
まず、シリコン(Si)ウエハ等の基板10の上に第1絶縁樹脂層22を形成した後、第1絶縁樹脂層22の上に平衡信号伝送路30,35を形成する。
次に、平衡信号伝送路30,35上および第1絶縁樹脂層22上に第2絶縁樹脂層24を形成し、第2絶縁樹脂層24には、ビアを形成するための開口部24a,24b,24c,24dを形成する。
次に、第2絶縁樹脂層24上に不平衡信号伝送路50、電極パッド51,52,56,57,59、引き出し配線31,32,36,37を形成するとともに、引き出し配線31,32,36,37の端部が開口部24a,24b,24c,24dに充填されて平衡信号伝送路30,35にそれぞれ接続されるように形成する。
【0043】
次に、電極パッド51,52,56,57,59の少なくとも一部を露出する開口部26a,26b,26c,26d,26eを有する封止樹脂層26を形成した後、電極パッド51,52,56,57,59上にバンプ81,82,86,87,89を形成する。
基板10がウエハである場合には、さらにダイシングをすることで、バラン実装デバイスのチップが得られる。
【0044】
バラン実装デバイス100を実装基板200に実装するには、バラン実装デバイス100のバンプ81,82,86,87,89を実装基板200の電極パッド211,216,212,217,219に合わせ、リフロー(加熱)によりバンプ81,82,86,87,89のはんだを溶融させることで、バラン実装デバイス100を電極パッド211,216,212,217,219上に固着することができる。
【0045】
伝送路30,35,50、引き出し配線31,32,36,37や、電極パッド51,52,56,57,59の形成は、例えば銅(Cu)めっき等の金属めっきを用いることが好ましい。
第2絶縁樹脂層24や第3絶縁樹脂層26に開口部を形成するには、スピンコートや電着法、ドライフィルム接着などにより全面に感光性樹脂層を形成した後、フォトリソグラフィー工程によりパターニングする方法等が挙げられる。
このように、ウエハレベルパッケージ(WLP)技術を応用した製造方法によれば、バラン実装デバイス100の製造の際のプロセス温度は、最高でも300℃未満とすることができる。
【0046】
本形態例のバラン実装デバイスは、第2絶縁樹脂層24の下側(基板10に近い側)に平衡信号伝送路30,35が設けられ、第2絶縁樹脂層24の上側(基板10から遠い側)に不平衡信号伝送路50が設けられたものであるが、本発明においては、第2絶縁樹脂層24の下側(基板10に近い側)に不平衡信号伝送路50が設けられ、第2絶縁樹脂層24の上側(基板10から遠い側)に平衡信号伝送路30,35が設けられたバラン実装デバイスを実現することも可能である。
この場合は、2つの平衡信号出入力端30a,35aおよび2つの接地端30b,35bは第2絶縁樹脂層24上に形成され、それを第2絶縁樹脂層24上の電極パッドと接続する際に、ビアを経由する必要はない。その代わりに、不平衡信号伝送路50の不平衡信号入出力端50aを第2絶縁樹脂層24上の電極パッドと接続するために、ビアを経由した引き出し配線が設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、種々の高周波回路に用いることができる。例えば、携帯電話、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、WiMAX(登録商標)等の無線通信機器を構成する回路に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のバラン実装構造を構成する(a)バランを有するデバイスおよび(b)実装基板の一例を示す平面図である。
【図2】図1のS−S線に沿うバラン実装構造の部分断面図である。
【図3】バランを有するデバイスの全体構成例を示す斜視図である。
【図4】図3の接地端子部および不平衡信号入出力端子部を示す部分拡大斜視図である。
【図5】図3に示すバランの模式的平面図である。
【図6】図5のA−A線に沿う断面図である。
【図7】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図5のC−C線に沿う断面図である。
【図9】図3に示すバランの模式的回路図である。
【図10】バラン実装構造の一改変例を示す部分断面図である。
【図11】実装基板側実装パッドが形成された樹脂構造物の一例を示す断面図である。
【図12】実装基板の一改変例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
10…第1の基板、22…第1絶縁樹脂層、24…第2絶縁樹脂層、26…第3絶縁樹脂層(封止樹脂層)、26a,26b,26c,26d,26e,26g…開口部、
30…第1平衡信号伝送路、30a…第1平衡信号出入力端、30b…第1接地端、
31…第1平衡信号出入力引き出し配線、32…第1接地引き出し配線、
35…第2平衡信号伝送路、35a…第2平衡信号出入力端、35b…第2接地端、
36…第2平衡信号出入力引き出し配線、37…第2接地引き出し配線、
50…不平衡信号伝送路、50a…不平衡信号入出力端、50b…開放端、
50c…第1平衡信号伝送路に対向した部分(平面スパイラル状の部分)、50d…第2平衡信号伝送路に対向した部分(平面スパイラル状の部分)、50e…中間部、
51,52,56,57,59,510…デバイス側実装パッド(電極パッド)、
81,82,86,87,89…バンプ、100…デバイス(バラン実装デバイス)、110…バラン、200,200A…実装基板、201,206…配線部、202,207,209…交差部を有する配線部、210…第2の基板、211,212,216,217,217A,219…実装基板側実装パッド(電極パッド)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線回路等に用いられるバラン(バランストランス・不平衡−平衡変換器)が基板上に実装されてなる、バラン実装デバイスと、該デバイスが実装された実装基板とを備えるバラン実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バランは、第1平衡信号伝送路と、第1平衡信号伝送路とは電気的に独立して設けられた第2平衡信号伝送路と、これら2つの平衡信号伝送路に対向して設けられた不平衡信号伝送路とを備え、不平衡信号伝送路は、一端が不平衡信号入出力端、他端が開放端となり、2つの平衡信号伝送路は、一端が平衡信号出入力端、他端が接地端となった構造を備える。この種のバランは、2つの平衡信号出入力端から平衡信号が入力されたときには、平衡信号伝送路から不平衡信号伝送路への電磁結合により、平衡信号を不平衡信号に変換して不平衡信号入出力端から不平衡信号を出力し、逆に不平衡信号入出力端から不平衡信号を入力したときには、不平衡信号伝送路から平衡信号伝送路への電磁結合により、不平衡信号を平衡信号に変換して2つの平衡信号出入力端から平衡信号を出力する。
【0003】
バランの2つの平衡信号伝送路はそれぞれ1/4波長以下のサイズで、不平衡信号伝送路は、2つの平衡信号伝送路を合計したサイズで作製される。信号の周波数が低いと、信号の波長が長くなるため、伝送路の長さも長くなる。このため、バランの各伝送路は、平面スパイラル状に形成されることが多い。
積層型バランは、不平衡信号伝送路と、2つの平衡信号伝送路とが、絶縁層(誘電体層)を介して上下(絶縁層の厚さ方向)に積層された構造を有する。従来の積層型バランは、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co−fired Ceramics)技術をベースとしたもの(例えば特許文献1)が知られている。
【特許文献1】特開2002−50910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の積層型バランは、不平衡信号伝送路の層および平衡信号伝送路の層のほか、入力部の端子層、接地(GND)層などを含む多数の層からなり、かつ実装のための端子部を側面に施す必要がある。また、GND層が必要となり、層数の多層化を招いている。このため、従来の積層型バランの製造は、非常に複雑で高度な製造技術が必要とされ、結果的に高コストとなっている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バラン実装デバイスの構造を複雑化・多層化することなく、実装基板に実装したときの特性変動の影響を抑制することが可能なバラン実装構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、バランを備えたデバイスと、該デバイスが実装された実装基板とを備えるバラン実装構造であって、前記デバイスは、第1の基板と、前記第1の基板の一方の面上に形成された第1絶縁樹脂層と、前記第1絶縁樹脂層上に設けられた第1配線層と、前記第1配線層および第1絶縁樹脂層上に形成された第2絶縁樹脂層と、前記第2絶縁樹脂層上に設けられた第2配線層と、前記第2配線層および第2絶縁樹脂層上に形成された第3絶縁樹脂層とを少なくとも備え、前記第1配線層または前記第2配線層の一方は、電気的に独立して設けられた2つの平衡信号伝送路を含み、前記第1配線層または前記第2配線層の他方は、不平衡信号伝送路を含み、前記2つの平衡信号伝送路および前記不平衡信号伝送路が、前記第2絶縁樹脂層を介して対向することでバランを構成しており、前記実装基板は、第2の基板と、第2の基板の一方の面上に形成された配線部を備え、前記デバイスは、前記第1の基板の一方の面と前記第2の基板の一方の面とが対向するように前記実装基板上に実装されており、前記実装基板の配線部は、前記第1の基板の一方の面に垂直な方向から見て、前記デバイスの前記第2配線層に形成された平衡信号伝送路または不平衡信号伝送路を構成する配線と垂直に重なり合うように配置されていることを特徴とするバラン実装構造を提供する。
【0007】
前記第2絶縁樹脂層上には、前記不平衡信号伝送路の一端である不平衡信号入出力端に接続されたデバイス側実装パッドと、前記2つの平衡信号伝送路の一端である平衡信号出入力端に接続されたデバイス側実装パッドと、前記2つの平衡信号伝送路の他端である接地端に接続されたデバイス側実装パッドとが設けられ、前記第3絶縁樹脂層は、前記デバイス側実装パッド上にそれぞれ形成されたバンプを露出させる開口部を有しており、前記バンプは、前記第3絶縁樹脂層の表面よりも突出して前記実装基板の配線部に接続された実装基板側実装パッドに導通されている。
前記デバイス側実装パッドは、前記不平衡信号伝送路および平衡信号伝送路を構成する配線よりも厚さが厚くなるように形成されてなることが好ましい。
前記実装基板側実装パッドは、前記配線部よりも厚さが厚くなるように形成されてなることが好ましい。
前記デバイス側実装パッドは、前記第2絶縁樹脂層上に局所的に形成された樹脂構造物の頂面上に形成され、前記デバイス側実装パッドには、前記樹脂構造物の側面を経由して形成された引き出し配線が接続されていることが好ましい。
【0008】
前記2つの平衡信号伝送路は、その一端である平衡信号出入力端が外周側に、他端である接地端が内周側に配置される平面スパイラル状の部分を有するように形成され、前記不平衡信号伝送路は、前記2つの平衡信号伝送路の平面スパイラル状の部分に重なり合う2つの平面スパイラル状の部分を有し、不平衡信号伝送路の一端である不平衡信号入出力端が一方の平面スパイラル状の部分の内周側に配置され、不平衡信号伝送路の他端である開放端が他方の平面スパイラル状の部分の内周側に配置され、2つの平面スパイラル状の部分を接続する中間部が2つの平面スパイラル状の部分の外周側に配置されるように形成され、前記デバイス側実装パッドのうち、前記不平衡信号入出力端または前記2つの接地端に接続される3つのデバイス側実装パッドは、前記平面スパイラル状の部分の内側のスペース内に配置され、前記実装基板の配線部は、前記平面スパイラル状の部分の内側のスペース内に配置された前記3つのデバイス側実装パッドに対応する3つの実装基板側実装パッドから引き出され、前記第1の基板の一方の面に垂直な方向から見て、前記平面スパイラル状の部分の配線と垂直に重なり合うように配置された3つの交差部を有することが好ましい。
前記3つの交差部は、前記平面スパイラル状の部分において重なり合いの長さが最も小さくなる位置に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バラン実装デバイスの構造を複雑化・多層化することなく、実装基板に実装したときの特性変動の影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明のバラン実装構造を構成する(a)バランを有するデバイスおよび(b)実装基板の一例を示す平面図である。図2は、図1のS−S線に沿うバラン実装構造の部分断面図である。
なお、以下の説明に用いる図面は模式的なものであって、大きさや縦横比率は、実際とは異なる場合がある。
【0011】
図1(a)は、デバイス(以下「バラン実装デバイス」ともいう。)100が実装基板200に対向する面において、バランを構成する伝送路50および端子部60,65,70,75,90を構成するバンプ81,82,86,87,89の配置を示す平面図である。また、図1(b)は、実装基板200がデバイス100に対向する面における配線部の配置を示す平面図である。図1(b)中、二点鎖線は、実装基板200上でデバイス100の伝送路50およびバンプ81,82,86,87,89に対応する位置を仮想的に示している。
【0012】
図3は、バランを有するデバイスの全体構成例を示す斜視図である。図4は、図3の接地端子部および不平衡信号入出力端子部を示す部分拡大斜視図である。図5は、図3に示すバランの模式的平面図である。図6は、図5のA−A線に沿う断面図である。図7は、図5のB−B線に沿う断面図である。図8は、図5のC−C線に沿う断面図である。図5〜図8では、バランの構造を説明するために、平衡信号伝送路30,35および不平衡信号伝送路50が直線状に展開して図示されている。
【0013】
本形態例のバラン実装構造に用いられるデバイス100は、図2、図3に示すように、第1の基板10(以下、単に「基板10」という。)と、基板10の一方の面(図2では下面)上に形成された第1絶縁樹脂層22と、第1絶縁樹脂層22上に設けられた2つの平衡信号伝送路30,35を含む第1配線層(符号略)と、第1配線層および第1絶縁樹脂層22の上に形成された第2絶縁樹脂層24と、第2絶縁樹脂層24上において2つの平衡信号伝送路30,35に対向して設けられた不平衡信号伝送路50を含む第2配線層(符号略)と、第2配線層および第2絶縁樹脂層24の上に形成された第3絶縁樹脂層26を備える。
基板10は、例えばシリコン(Si)などの半導体基板や、ガラス基板などの絶縁性基板である。
【0014】
平衡信号伝送路30,35は、第1平衡信号伝送路30および第2平衡信号伝送路35からなり、これら2つの平衡信号伝送路30,35が電気的に互いに独立して設けられている。
第1平衡信号伝送路30は、一端を第1平衡信号出入力端30aとし、他端を第1接地端30bとする。第1平衡信号出入力端30aは、第1平衡信号出入力引き出し配線31を介して第1平衡信号出入力端子部60に接続されている。また、第1接地端30bは、第1接地引き出し配線32を介して第1接地端子部70に接続されている。
同様に、第2平衡信号伝送路35は、一端を第2平衡信号出入力端35aとし、他端を第2接地端35bとし、第2平衡信号出入力端35aは、第2平衡信号出入力引き出し配線36を介して第2平衡信号出入力端子部65に接続され、第2接地端35bは、第2接地引き出し配線37を介して第2接地端子部75に接続されている。
【0015】
不平衡信号伝送路50は、一端を不平衡信号入出力端50aとし、他端を開放端50bとする。不平衡信号伝送路50は、不平衡信号入出力端50aと開放端50bとの間に、第1平衡信号伝送路30に対向した部分50cと、第2平衡信号伝送路35に対向した部分50dとを有する。不平衡信号入出力端50aは、不平衡信号入出力端子部90に接続されている。
【0016】
デバイス100において、2つの平衡信号伝送路30,35および不平衡信号伝送路50は、第2絶縁樹脂層24を介して対向することでバランを構成している。
実装基板200は、第2の基板210と、第2の基板210の一方の面(図2では上面)上に形成された配線部201,202,206,207,209を備える。実装基板200は、フレキシブルプリント基板(FPC)やリジッドプリント基板等が挙げられる。第2の基板210は、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙エポキシ基板、ポリテトラフルオロエチレン[テフロン(登録商標)等]、アルミナ基板等、種々の絶縁性基板を用いることができる。
図2に示すように、デバイス100は、第1の基板10の一方の面と第2の基板210の一方の面とが対向するように、実装基板200上に実装されている。
【0017】
本形態例のバラン実装構造は、図1、図2に示すように、実装基板200の配線部201,202,206,207,209が、第1の基板10の一方の面に垂直な方向から見て(図1(b)参照)、デバイス100の第2配線層(この例では不平衡信号伝送路50)の配線と重なり合う箇所では、配線部202,207,209がデバイス100の伝送路を構成する配線と垂直に重なり合うように配置されている。
これにより、バラン実装デバイスの構造を複雑化・多層化することなく、実装基板に実装したときの特性変動の影響を抑制することができる。
【0018】
本形態例のバラン実装デバイス100においては、図3に示すように、不平衡信号伝送路50の第1平衡信号伝送路30に対向した部分50cおよび第1平衡信号伝送路30が、内周にスペースE1を有するように平面スパイラル型に配置されるとともに、不平衡信号伝送路50の第2平衡信号伝送路35に対向した部分50dおよび第2平衡信号伝送路35が、内周にスペースE2を有するように平面スパイラル型に配置されている。
また、図3、図5、図6に示すように、不平衡信号伝送路50の第1平衡信号伝送路30に対向した部分50cと第2平衡信号伝送路35に対向した部分50dとの間は、中間部50eによって接続されている。
本形態例では、平面スパイラルの巻き方向(内周から外周への巻き方向)は、第1平衡信号伝送路30と第2平衡信号伝送路35とで互いに反対であり、かつ、不平衡信号伝送路50の2つの平面スパイラル状の部分50c,50dで互いに反対である。不平衡信号伝送路50においては、不平衡信号入出力端50aから開放端50bに向けて(あるいはその逆に)流れる電流の向きに沿って配線が巻き回される方向が、2つの平面スパイラル状の部分50c,50dについて互いに逆になっている。
伝送路30,35,50をスパイラル型に設けることにより、方形や楕円等の狭いスペースに長い伝送路を配置できる。このため、スパイラル型とすることによって、バランが占有するスペースを低減して、かつ長い伝送路を有するバランを実現できる。
なお、本発明においては、伝送路の形状は、平面スパイラルのほか、ミアンダ状、直線状等でも良い。
【0019】
2つの平衡信号伝送路30,35は、それぞれ平衡信号出入力端30a,35aが外周側に、接地端30b,35bが内周側に配置される平面スパイラル状の部分を有する。
不平衡信号伝送路50は、2つの平衡信号伝送路30,35の平面スパイラル状の部分に重なり合う2つの平面スパイラル状の部分50c,50dを有し、不平衡信号入出力端50aが一方の平面スパイラル状の部分50dの内周側に配置され、開放端50bが他方の平面スパイラル状の部分50cの内周側に配置され、2つの平面スパイラル状の部分50c,50dを接続する中間部50eが2つの平面スパイラル状の部分50c,50dの外周側に配置されるように形成されている。
また、第1接地端子部70は、平面スパイラル内周の第1スペースE1内に配置され、第2接地端子部75および不平衡信号入出力端子部90は、平面スパイラル内周の第2スペースE2内に配置されている。2つの平衡信号出入力端子部60,65は、平面スパイラルの外側に配置されている。
【0020】
2つの平衡信号伝送路30,35は、例えば銅めっき等のめっき金属などから構成することができる。2つの平衡信号伝送路30,35が同じ導体材料から、第1平衡信号伝送路30の伝送路長L1と第2平衡信号伝送路35の伝送路長L2とが等しいように形成されることが好ましい。ここで、伝送路長L1,L2は、スパイラルに沿った伝送路の長さである。2つの平衡信号伝送路30,35の幅Wおよび厚さTは、幅W同士および厚さT同士が互いに等しくなるように形成されることが好ましい。
【0021】
図6〜図8に示すように、第1絶縁樹脂層22の厚さh1は、基板10全面でなるべく均一にすることが好ましい。なお、第1絶縁樹脂層22の厚さh1は、基板10の上面と平衡信号伝送路30,35の下面との距離に対応する。
第1絶縁樹脂層22を構成する樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、感光性ポリイミド樹脂、感光性エポキシ樹脂などの感光性樹脂は、フォトリソグラフィーによりパターニングが可能なので好ましい。第1絶縁樹脂層22は、基板10上の全面に塗布されるので、熱硬化性樹脂などでも良い。
【0022】
不平衡信号伝送路50は、2つのスパイラル状の部分50c,50dが中間部50eにより接続され、少なくとも、一端の不平衡信号入出力端50aから他端の開放端50bまでの範囲で連なった1本の伝送路である。不平衡信号伝送路50の中間部50eは、平面スパイラルの外周端同士を接続する位置に設けられている。
【0023】
不平衡信号伝送路50は、例えば銅めっき等のめっき金属などから構成することができる。不平衡信号伝送路50は、2つの平衡信号伝送路30,35と同じ導体材料から形成されることが好ましい。また、不平衡信号伝送路50の幅Wおよび厚さTは、2つの平衡信号伝送路30,35の幅Wおよび厚さTと、それぞれ幅W同士および厚さT同士が等しくなるように形成されることが好ましい。
【0024】
中間部50eは、2つの平面スパイラル状の部分50c,50d同士の間隔gに対応する長さを有する。2つのスパイラル状の部分50c,50dの長さL1,L2は、それぞれ平衡信号伝送路30,35の伝送路長L1,L2に等しい。
不平衡信号伝送路50の不平衡信号入出力端50aから開放端50bまでの長さLは、2つのスパイラル状の部分50c,50dの長さL1,L2と、中間部50eの長さgとの和(L=L1+g+L2)に相当する。
なお、図5に示す伝送路長L1,L2は、平衡信号伝送路30,35と不平衡信号伝送路50とが、第2絶縁樹脂層24を介して上下に対向している部分の長さを表している。
【0025】
図6〜図8に示すように、平衡信号伝送路30,35上における第2絶縁樹脂層24の厚さdは、平衡信号伝送路30,35に沿う全長でなるべく均一にすることが好ましい。なお、第2絶縁樹脂層24の厚さdは、平衡信号伝送路30,35の上面と不平衡信号伝送路50の下面との距離に対応する。第1絶縁樹脂層22上における第2絶縁樹脂層24の厚さは、計算上は、平衡信号伝送路30,35の厚さTと、平衡信号伝送路30,35上における第2絶縁樹脂層24の厚さdとの和(T+d)に相当する。しかし、第2絶縁樹脂層24は、第1絶縁樹脂層22とその上に形成した平衡信号伝送路30,35による凹凸面の上に形成されるので、平衡信号伝送路30,35から離れた箇所では、必ずしも第2絶縁樹脂層24の厚さが均一でなくでも構わない。
【0026】
平衡信号伝送路30,35の上面と不平衡信号伝送路50の下面との距離dは、特に限定されるものではないが、d=5〜40μmが挙げられる。
第2絶縁樹脂層24を構成する樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、感光性ポリイミド樹脂、感光性エポキシ樹脂などの感光性樹脂は、フォトリソグラフィーによりパターニングが可能なので好ましい。
【0027】
不平衡信号伝送路50の上には、封止樹脂層26として、第3絶縁樹脂層26を設けることができる。不平衡信号伝送路50上における封止樹脂層26の厚さh2は、不平衡信号伝送路50の上面と封止樹脂層26の上面との距離に相当する。
封止樹脂層26を構成する樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、感光性ポリイミド樹脂、感光性エポキシ樹脂などの感光性樹脂は、フォトリソグラフィーによりパターニングが可能なので好ましい。封止樹脂層26は、デバイスの全面に塗布されるので、熱硬化性樹脂などでも良い。
【0028】
図3,図5,図7に示すように、平衡信号出入力引き出し配線31,36は、第2絶縁樹脂層24に形成された開口部24a,24cを貫通するビアを通じて、第2絶縁樹脂層24上に形成された平衡信号出入力電極パッド51,56(第1平衡信号出入力電極パッド51および第2平衡信号出入力電極パッド56)に接続されている。また、平衡信号出入力引き出し配線31,36は、第1絶縁樹脂層22上において、平衡信号出入力端30a,35aに接続されている。平衡信号出入力電極パッド51,56は、平衡信号出入力端子部60,65において平衡信号を出入力するための電極パッドである。
封止樹脂層26は、平衡信号出入力電極パッド51,56の少なくとも一部を露出するための開口部26a,26cを有する。
なお、第1平衡信号出入力引き出し配線31の長さL1a(第1平衡信号出入力端30aから第1平衡信号出入力電極パッド51までの長さ)と、第2平衡信号出入力引き出し配線36の長さL2a(第2平衡信号出入力端35aから第2平衡信号出入力電極パッド56までの長さ)は、振幅バランス特性および位相バランス特性を向上させるため、互いに等しいこと(L1a=L2a)が好ましい。
【0029】
図3〜図5に示すように、接地引き出し配線32,37は、第2絶縁樹脂層24に形成された開口部24b,24dを貫通するビアを通じて、第2絶縁樹脂層24上に形成された接地電極パッド52,57(第1接地電極パッド52および第2接地電極パッド57)に接続されている。また、接地引き出し配線32,37は、第1絶縁樹脂層22上において、接地端30b,35bに接続されている。接地電極パッド52,57は、接地端子部70,75においてバランの平衡信号伝送路30,35の他端を接地するための電極パッドである。
封止樹脂層26は、接地電極パッド52,57の少なくとも一部を露出するための開口部26b,26dを有する。
なお、第1接地引き出し配線32の長さL1b(第1接地端30bから第1接地電極パッド52までの長さ)と、第2接地引き出し配線37の長さL2b(第2接地端35bから第2接地電極パッド57までの長さ)は、振幅バランス特性および位相バランス特性を向上させるため、互いに等しいこと(L1b=L2b)が好ましい。
【0030】
図3〜図5、図8に示すように、不平衡信号伝送路50の不平衡信号入出力端50aは、第2絶縁樹脂層24上に設けられた不平衡信号入出力電極パッド59に接続されている。不平衡信号入出力電極パッド59は、不平衡信号入出力端子部90において不平衡信号を入出力するための電極パッドである。
封止樹脂層26は、不平衡信号入出力電極パッド59の少なくとも一部を露出するための開口部26eを有する。
【0031】
本形態例の場合、図1および図2に示すように、電極パッド51,52,56,57,59の上には、それぞれ、はんだバンプ(第1平衡信号出入力バンプ81、第1接地バンプ82、第2平衡信号出入力バンプ86、第2接地バンプ87、不平衡信号入出力バンプ89)が搭載される。これらのバンプ81,82,86,87,89は、封止樹脂層26の開口部26a,26b,26c,26d,26eの内側に配され、封止樹脂層26の表面より上方(図2では「下面より下方」)に突出している。
これらのバンプ81,82,86,87,89を用いることにより、デバイス100を実装基板200にフリップチップ実装することができる。なお、フリップチップ実装の安定性を高めるため、バランの伝送路30,35,50に接続されたバンプ81,82,86,87,89以外にもダミーのバンプを適宜設けて、実装基板200上でデバイス100をバランスよく支持できるようにするのが望ましい。
なお、電極パッド51,52,56,57,59がバンプ81,82,86,87,89を搭載するために用いられる場合、「実装パッド」という場合がある。
また、後述する実装基板200側の電極パッド211,212,216,217,219と区別するため、デバイス100側の電極パッド51,52,56,57,59を「デバイス側実装パッド」、実装基板200側の電極パッド211,212,216,217,219を「実装基板側実装パッド」という場合がある。
【0032】
バラン実装デバイス100を実装基板200にフリップチップ実装する場合、電極パッド51,52,56,57,59は、伝送路30,35,50や引き出し配線31,32,36,37よりも厚さが厚くなるように形成されることが好ましい。あるいは、図10に示すように、実装基板200A側の電極パッド217Aが配線部207よりも厚さが厚くなるように形成されることが好ましい。
これにより、電極パッド51,52,56,57,59上に設けたバンプ81,82,86,87,89を介してバラン実装デバイス100を実装基板200にフリップチップ実装したときに、実装基板200上の配線部201,202,206,207,209と、バラン実装デバイス100の伝送路30,35,50との距離をより大きく離し、配線部201,202,206,207,209と伝送路30,35,50との相互作用を抑制することができる。
なお、図10では、実装基板200A側の電極パッド217Aを1つのみ図示しているが、バンプ81,82,86,87,89が接触する高さ(基板10から垂直に離れた距離)が同等となるよう、他の電極パッド211,212,216,219も同様に厚さを厚くする。
デバイス100側と実装基板200側の両方で、デバイス側実装パッドおよび実装基板側実装パッドの厚さが伝送路30,35,50や引き出し配線31,32,36,37、配線部201,202,206,207,209を構成する配線よりも厚くなるように形成しても良い。
電極パッドを上記配線よりも厚く形成する方法としては、電極パッドにおいて、めっきを選択的に成長させる方法が挙げられる。
【0033】
また、図11に示すように、デバイス側実装パッド510は、第2絶縁樹脂層24上に局所的に形成された樹脂構造物24gの頂面上に形成して端子部500を構成しても良い。この場合、デバイス側実装パッド510から樹脂構造物24gの側面を経由する配線を引き出すことで実装パッド510を伝送路30,35,50に接続することができる。また、封止樹脂層26には、実装パッド510の少なくとも一部を露出する開口部26gを形成し、実装パッド510上にバンプ(図示せず)を形成する。
この手法によっても、デバイス側実装パッド51,52,56,57,59上に設けたバンプ81,82,86,87,89を介してバラン実装デバイス100を実装基板200にフリップチップ実装したときに、実装基板200上の配線部201,202,206,207,209と、バラン実装デバイス100の伝送路30,35,50との距離をより大きく離し、配線部201,202,206,207,209と伝送路30,35,50との相互作用を抑制することができる。
【0034】
多層樹脂体20は、第1絶縁樹脂層22と、第2絶縁樹脂層24と、封止樹脂層としての第3絶縁樹脂層26とによって構成された積層構造である。第1絶縁樹脂層22は、基板10上に形成されている。
これらの樹脂層22,24,26は、同じ樹脂を用いて同一の手法で形成することにより、同一の比誘電率を有するようにしても良い。
特に、上下の平衡信号伝送路30,35と不平衡信号伝送路50との間に介在される第2絶縁樹脂層24は、平衡信号伝送路30,35と不平衡信号伝送路50との間の電磁結合を制御するため、他の樹脂層22,26と異なる比誘電率を有する樹脂から構成しても良い。
【0035】
図1(b)に示すように、実装基板200においては、デバイス側実装パッド51,52,56,57,59とそれぞれ対応する位置に、バンプ81,82,86,87,89と導通される実装基板側実装パッド(電極パッド)211,212,216,217,219が設けられている。これらの電極パッド211,212,216,217,219からはそれぞれ配線部201,202,206,207,209が引き出される。
図2に示すように、バンプ87はデバイス100の封止樹脂層(第3絶縁樹脂層)26の表面よりも突出して、封止樹脂層26と実装基板200との間に間隙を保持しつつ、実装基板側実装パッド217に導通されている。図示しない他のバンプ81,82,86,89と実装基板側実装パッド211,212,216,219との間も、同様に導通される。
【0036】
図1(a)および図3に示すように、上記5つのデバイス側実装パッドのうち、不平衡信号入出力端50aまたは2つの接地端30b,50bに接続される3つのデバイス側実装パッド52,57,59は、平面スパイラル状の部分50c,50dの内側のスペースE1,E2内に配置されている。
また、上記5つの実装基板側実装パッド211,212,216,217,219から引き出される配線部201,202,206,207,209のうち、平面スパイラル状の部分50c,50dの内側のスペースE1,E2内に配置された3つのデバイス側実装パッド52,57,59に対応する3つの実装基板側実装パッド212,217,219から引き出される配線部202,207,209は、第1の基板10の一方の面に垂直な方向から(図1(b)参照)見て、平面スパイラル状の部分50c,50dの配線と重なり合うように配置された3つの交差部を有する。
【0037】
これらの交差部を有する配線部202,207,209は、平面スパイラル状の部分50c,50dの配線と垂直に重なり合うように配置されているので、バラン実装デバイスの構造を複雑化・多層化することなく、実装基板に実装したときの特性変動の影響を抑制することができる。
特性変動の影響をより効果的に抑制するため、図12に示すように、3つの交差部は、平面スパイラル状の部分50c,50dにおいて重なり合いの長さが最も小さくなる位置に配置することが好ましい。ここで、スパイラル配線の線幅がほぼ一定であれば、重なり合う線の本数が少ないほど、重なり合いの長さを短くすることができる。図12の場合、交差部を有する配線部202,207,209は、いずれも平面スパイラル状の部分50c,50dと配線3本の幅に相当する長さで重なり合っており、他の配線4本の幅に相当する長さで重なり合わせるよりも好ましい。
【0038】
図9に、図3に示すバランの模式的回路図を示す。
図9のバラン110において、不平衡信号伝送路50の不平衡信号入出力端50aに不平衡信号(単一信号)SSが入力されると、不平衡信号伝送路50と平衡信号伝送路30,35との電磁結合が生じる。この際、伝送される信号の波長をλとすると、第1平衡信号伝送路30の伝送路長L1および第2平衡信号伝送路35の伝送路長L2がそれぞれλ/4(以下)であることにより、平衡信号伝送路30,35の平衡信号出入力端30a,35aから平衡信号(差動信号)SD1,SD2が出力される。
同様に、平衡信号伝送路30,35の平衡信号出入力端30a,35aから平衡信号(差動信号)SD1,SD2を入力すると、平衡信号伝送路30,35と不平衡信号伝送路50との電磁結合により、不平衡信号伝送路50の不平衡信号入出力端50aから不平衡信号(単一信号)SSが出力される。
【0039】
このようなバラン110は、アンテナで受信した不平衡信号を復調するにあたって当該不平衡信号を平衡信号に変換したり、逆に平衡信号である変調信号をアンテナから送信するにあたって当該平衡信号を不平衡信号に変換したりするため、携帯電話などの無線通信機器に用いられる。
【0040】
また、図9のバラン110は、インピーダンスを変換するトランスとしての機能も兼ね備えている。インピーダンス変換においては、不平衡信号伝送路50の入出力インピーダンスZS、および平衡信号伝送路30,35の出入力インピーダンスZD1,ZD2が、設計仕様のインピーダンスであることが要求される。例えば、ZS=50Ωであり、ZD1+ZD2=100Ω、150Ω、200Ω等である。
【0041】
本形態例のバラン接続構造によれば、実装基板200側で不平衡信号が伝送される配線をデバイス100に内蔵されたバランの不平衡信号伝送路50に、平衡信号が伝送される配線をバランの平衡信号伝送路30,35にそれぞれ接続し、実装基板200の配線に伝送される信号を、不平衡信号から平衡信号に、または平衡信号から不平衡信号に変換することができる。
【0042】
本形態例のバラン実装デバイス100は、WLP技術を応用した製造方法によって製造することができる。
まず、シリコン(Si)ウエハ等の基板10の上に第1絶縁樹脂層22を形成した後、第1絶縁樹脂層22の上に平衡信号伝送路30,35を形成する。
次に、平衡信号伝送路30,35上および第1絶縁樹脂層22上に第2絶縁樹脂層24を形成し、第2絶縁樹脂層24には、ビアを形成するための開口部24a,24b,24c,24dを形成する。
次に、第2絶縁樹脂層24上に不平衡信号伝送路50、電極パッド51,52,56,57,59、引き出し配線31,32,36,37を形成するとともに、引き出し配線31,32,36,37の端部が開口部24a,24b,24c,24dに充填されて平衡信号伝送路30,35にそれぞれ接続されるように形成する。
【0043】
次に、電極パッド51,52,56,57,59の少なくとも一部を露出する開口部26a,26b,26c,26d,26eを有する封止樹脂層26を形成した後、電極パッド51,52,56,57,59上にバンプ81,82,86,87,89を形成する。
基板10がウエハである場合には、さらにダイシングをすることで、バラン実装デバイスのチップが得られる。
【0044】
バラン実装デバイス100を実装基板200に実装するには、バラン実装デバイス100のバンプ81,82,86,87,89を実装基板200の電極パッド211,216,212,217,219に合わせ、リフロー(加熱)によりバンプ81,82,86,87,89のはんだを溶融させることで、バラン実装デバイス100を電極パッド211,216,212,217,219上に固着することができる。
【0045】
伝送路30,35,50、引き出し配線31,32,36,37や、電極パッド51,52,56,57,59の形成は、例えば銅(Cu)めっき等の金属めっきを用いることが好ましい。
第2絶縁樹脂層24や第3絶縁樹脂層26に開口部を形成するには、スピンコートや電着法、ドライフィルム接着などにより全面に感光性樹脂層を形成した後、フォトリソグラフィー工程によりパターニングする方法等が挙げられる。
このように、ウエハレベルパッケージ(WLP)技術を応用した製造方法によれば、バラン実装デバイス100の製造の際のプロセス温度は、最高でも300℃未満とすることができる。
【0046】
本形態例のバラン実装デバイスは、第2絶縁樹脂層24の下側(基板10に近い側)に平衡信号伝送路30,35が設けられ、第2絶縁樹脂層24の上側(基板10から遠い側)に不平衡信号伝送路50が設けられたものであるが、本発明においては、第2絶縁樹脂層24の下側(基板10に近い側)に不平衡信号伝送路50が設けられ、第2絶縁樹脂層24の上側(基板10から遠い側)に平衡信号伝送路30,35が設けられたバラン実装デバイスを実現することも可能である。
この場合は、2つの平衡信号出入力端30a,35aおよび2つの接地端30b,35bは第2絶縁樹脂層24上に形成され、それを第2絶縁樹脂層24上の電極パッドと接続する際に、ビアを経由する必要はない。その代わりに、不平衡信号伝送路50の不平衡信号入出力端50aを第2絶縁樹脂層24上の電極パッドと接続するために、ビアを経由した引き出し配線が設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、種々の高周波回路に用いることができる。例えば、携帯電話、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、WiMAX(登録商標)等の無線通信機器を構成する回路に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のバラン実装構造を構成する(a)バランを有するデバイスおよび(b)実装基板の一例を示す平面図である。
【図2】図1のS−S線に沿うバラン実装構造の部分断面図である。
【図3】バランを有するデバイスの全体構成例を示す斜視図である。
【図4】図3の接地端子部および不平衡信号入出力端子部を示す部分拡大斜視図である。
【図5】図3に示すバランの模式的平面図である。
【図6】図5のA−A線に沿う断面図である。
【図7】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図5のC−C線に沿う断面図である。
【図9】図3に示すバランの模式的回路図である。
【図10】バラン実装構造の一改変例を示す部分断面図である。
【図11】実装基板側実装パッドが形成された樹脂構造物の一例を示す断面図である。
【図12】実装基板の一改変例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
10…第1の基板、22…第1絶縁樹脂層、24…第2絶縁樹脂層、26…第3絶縁樹脂層(封止樹脂層)、26a,26b,26c,26d,26e,26g…開口部、
30…第1平衡信号伝送路、30a…第1平衡信号出入力端、30b…第1接地端、
31…第1平衡信号出入力引き出し配線、32…第1接地引き出し配線、
35…第2平衡信号伝送路、35a…第2平衡信号出入力端、35b…第2接地端、
36…第2平衡信号出入力引き出し配線、37…第2接地引き出し配線、
50…不平衡信号伝送路、50a…不平衡信号入出力端、50b…開放端、
50c…第1平衡信号伝送路に対向した部分(平面スパイラル状の部分)、50d…第2平衡信号伝送路に対向した部分(平面スパイラル状の部分)、50e…中間部、
51,52,56,57,59,510…デバイス側実装パッド(電極パッド)、
81,82,86,87,89…バンプ、100…デバイス(バラン実装デバイス)、110…バラン、200,200A…実装基板、201,206…配線部、202,207,209…交差部を有する配線部、210…第2の基板、211,212,216,217,217A,219…実装基板側実装パッド(電極パッド)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バランを備えたデバイスと、該デバイスが実装された実装基板とを備えるバラン実装構造であって、
前記デバイスは、第1の基板と、前記第1の基板の一方の面上に形成された第1絶縁樹脂層と、前記第1絶縁樹脂層上に設けられた第1配線層と、前記第1配線層および第1絶縁樹脂層上に形成された第2絶縁樹脂層と、前記第2絶縁樹脂層上に設けられた第2配線層と、前記第2配線層および第2絶縁樹脂層上に形成された第3絶縁樹脂層とを少なくとも備え、前記第1配線層または前記第2配線層の一方は、電気的に独立して設けられた2つの平衡信号伝送路を含み、前記第1配線層または前記第2配線層の他方は、不平衡信号伝送路を含み、前記2つの平衡信号伝送路および前記不平衡信号伝送路が、前記第2絶縁樹脂層を介して対向することでバランを構成しており、
前記実装基板は、第2の基板と、第2の基板の一方の面上に形成された配線部を備え、前記デバイスは、前記第1の基板の一方の面と前記第2の基板の一方の面とが対向するように前記実装基板上に実装されており、
前記実装基板の配線部は、前記第1の基板の一方の面に垂直な方向から見て、前記デバイスの前記第2配線層に形成された平衡信号伝送路または不平衡信号伝送路を構成する配線と垂直に重なり合うように配置されていることを特徴とするバラン実装構造。
【請求項2】
前記第2絶縁樹脂層上には、前記不平衡信号伝送路の一端である不平衡信号入出力端に接続されたデバイス側実装パッドと、前記2つの平衡信号伝送路の一端である平衡信号出入力端に接続されたデバイス側実装パッドと、前記2つの平衡信号伝送路の他端である接地端に接続されたデバイス側実装パッドとが設けられ、
前記第3絶縁樹脂層は、前記デバイス側実装パッド上にそれぞれ形成されたバンプを露出させる開口部を有しており、
前記バンプは、前記第3絶縁樹脂層の表面よりも突出して前記実装基板の配線部に接続された実装基板側実装パッドに導通されていることを特徴とする請求項1に記載のバラン実装構造。
【請求項3】
前記デバイス側実装パッドは、前記不平衡信号伝送路および平衡信号伝送路を構成する配線よりも厚さが厚くなるように形成されてなることを特徴とする請求項2に記載のバラン実装構造。
【請求項4】
前記実装基板側実装パッドは、前記配線部よりも厚さが厚くなるように形成されてなることを特徴とする請求項2または3に記載のバラン実装構造。
【請求項5】
前記デバイス側実装パッドは、前記第2絶縁樹脂層上に局所的に形成された樹脂構造物の頂面上に形成され、前記デバイス側実装パッドには、前記樹脂構造物の側面を経由して形成された引き出し配線が接続されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のバラン実装構造。
【請求項6】
前記2つの平衡信号伝送路は、その一端である平衡信号出入力端が外周側に、他端である接地端が内周側に配置される平面スパイラル状の部分を有するように形成され、
前記不平衡信号伝送路は、前記2つの平衡信号伝送路の平面スパイラル状の部分に重なり合う2つの平面スパイラル状の部分を有し、不平衡信号伝送路の一端である不平衡信号入出力端が一方の平面スパイラル状の部分の内周側に配置され、不平衡信号伝送路の他端である開放端が他方の平面スパイラル状の部分の内周側に配置され、2つの平面スパイラル状の部分を接続する中間部が2つの平面スパイラル状の部分の外周側に配置されるように形成され、
前記デバイス側実装パッドのうち、前記不平衡信号入出力端または前記2つの接地端に接続される3つのデバイス側実装パッドは、前記平面スパイラル状の部分の内側のスペース内に配置され、
前記実装基板の配線部は、前記平面スパイラル状の部分の内側のスペース内に配置された前記3つのデバイス側実装パッドに対応する3つの実装基板側実装パッドから引き出され、前記第1の基板の一方の面に垂直な方向から見て、前記平面スパイラル状の部分の配線と垂直に重なり合うように配置された3つの交差部を有することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のバラン実装構造。
【請求項7】
前記3つの交差部は、前記平面スパイラル状の部分において重なり合いの長さが最も小さくなる位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のバラン実装構造。
【請求項1】
バランを備えたデバイスと、該デバイスが実装された実装基板とを備えるバラン実装構造であって、
前記デバイスは、第1の基板と、前記第1の基板の一方の面上に形成された第1絶縁樹脂層と、前記第1絶縁樹脂層上に設けられた第1配線層と、前記第1配線層および第1絶縁樹脂層上に形成された第2絶縁樹脂層と、前記第2絶縁樹脂層上に設けられた第2配線層と、前記第2配線層および第2絶縁樹脂層上に形成された第3絶縁樹脂層とを少なくとも備え、前記第1配線層または前記第2配線層の一方は、電気的に独立して設けられた2つの平衡信号伝送路を含み、前記第1配線層または前記第2配線層の他方は、不平衡信号伝送路を含み、前記2つの平衡信号伝送路および前記不平衡信号伝送路が、前記第2絶縁樹脂層を介して対向することでバランを構成しており、
前記実装基板は、第2の基板と、第2の基板の一方の面上に形成された配線部を備え、前記デバイスは、前記第1の基板の一方の面と前記第2の基板の一方の面とが対向するように前記実装基板上に実装されており、
前記実装基板の配線部は、前記第1の基板の一方の面に垂直な方向から見て、前記デバイスの前記第2配線層に形成された平衡信号伝送路または不平衡信号伝送路を構成する配線と垂直に重なり合うように配置されていることを特徴とするバラン実装構造。
【請求項2】
前記第2絶縁樹脂層上には、前記不平衡信号伝送路の一端である不平衡信号入出力端に接続されたデバイス側実装パッドと、前記2つの平衡信号伝送路の一端である平衡信号出入力端に接続されたデバイス側実装パッドと、前記2つの平衡信号伝送路の他端である接地端に接続されたデバイス側実装パッドとが設けられ、
前記第3絶縁樹脂層は、前記デバイス側実装パッド上にそれぞれ形成されたバンプを露出させる開口部を有しており、
前記バンプは、前記第3絶縁樹脂層の表面よりも突出して前記実装基板の配線部に接続された実装基板側実装パッドに導通されていることを特徴とする請求項1に記載のバラン実装構造。
【請求項3】
前記デバイス側実装パッドは、前記不平衡信号伝送路および平衡信号伝送路を構成する配線よりも厚さが厚くなるように形成されてなることを特徴とする請求項2に記載のバラン実装構造。
【請求項4】
前記実装基板側実装パッドは、前記配線部よりも厚さが厚くなるように形成されてなることを特徴とする請求項2または3に記載のバラン実装構造。
【請求項5】
前記デバイス側実装パッドは、前記第2絶縁樹脂層上に局所的に形成された樹脂構造物の頂面上に形成され、前記デバイス側実装パッドには、前記樹脂構造物の側面を経由して形成された引き出し配線が接続されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のバラン実装構造。
【請求項6】
前記2つの平衡信号伝送路は、その一端である平衡信号出入力端が外周側に、他端である接地端が内周側に配置される平面スパイラル状の部分を有するように形成され、
前記不平衡信号伝送路は、前記2つの平衡信号伝送路の平面スパイラル状の部分に重なり合う2つの平面スパイラル状の部分を有し、不平衡信号伝送路の一端である不平衡信号入出力端が一方の平面スパイラル状の部分の内周側に配置され、不平衡信号伝送路の他端である開放端が他方の平面スパイラル状の部分の内周側に配置され、2つの平面スパイラル状の部分を接続する中間部が2つの平面スパイラル状の部分の外周側に配置されるように形成され、
前記デバイス側実装パッドのうち、前記不平衡信号入出力端または前記2つの接地端に接続される3つのデバイス側実装パッドは、前記平面スパイラル状の部分の内側のスペース内に配置され、
前記実装基板の配線部は、前記平面スパイラル状の部分の内側のスペース内に配置された前記3つのデバイス側実装パッドに対応する3つの実装基板側実装パッドから引き出され、前記第1の基板の一方の面に垂直な方向から見て、前記平面スパイラル状の部分の配線と垂直に重なり合うように配置された3つの交差部を有することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のバラン実装構造。
【請求項7】
前記3つの交差部は、前記平面スパイラル状の部分において重なり合いの長さが最も小さくなる位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のバラン実装構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−124336(P2010−124336A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297330(P2008−297330)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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