説明

バリアフィルム、及び有機エレクトロルミネッセンスデバイス

【課題】 高いガスバリア性能を持ち、かつ生産性が高いバリアフィルムの提供、及び該バリアフィルムを有する有機ELデバイスの提供。
【解決手段】 有機化合物層と無機化合物層とをそれぞれ少なくとも1層以上ずつ含むバリアフィルムにおいて、
前記有機化合物層が少なくとも窒素を含む環状化合物または硫黄を含む環状化合物または酸素を含む環状化合物を供給して形成された層であることを特徴とするバリアフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバリアフィルム、及び有機エレクトロルミネッセンスデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、エレクトロルミネッセンス(以下ELとも記す。)基板等で使用されている。特に液晶表示素子、EL素子などへの応用が進んでいる透明基材には、近年、軽量化、大型化という要求に加え、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重く割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。
【0003】
また、プラスチックフィルムは上記要求に応えるだけでなく、ロールトゥロール方式が可能であることからガラスよりも生産性が良くコストダウンの点でも有利である。
【0004】
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスに対しガスバリア性が劣るという問題がある。ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透し、例えば液晶セル内の液晶を劣化させ、表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまう。
【0005】
この様な問題を解決するためにフィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリア性フィルム基材とすることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしてはプラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(特許文献1参照)や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特許文献2参照)が知られており、いずれも1g/m2/day程度の水蒸気バリア性を有する。
【0006】
近年では、さらなるガスバリア性が要求される有機ELディスプレイや、液晶ディスプレイの大型化、高精細ディスプレイ等の開発によりフィルム基板へのガスバリア性能について水蒸気バリアで0.1g/m2/day程度まで要求が上がってきている。
【0007】
これに応えるためにより高いバリア性能が期待できる手段として、低圧条件下でグロー放電させて生じるプラズマを用いて薄膜を形成させるスパッタリング法やCVD法による成膜検討が行われている。また、有機化合物層/無機化合物層の交互積層構造を有するバリア膜を真空蒸着法により作製する技術が提案されている(特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、これらの薄膜形成法は低圧条件下で処理を行う必要があり、低圧を得るために、容器は高価な真空チャンバーを必要とし、さらに真空排気装置を設置する必要がある。また、真空中で処理するため大面積の基板に処理しようとすると、大きな真空容器を使用しなければならず、かつ、真空排気装置も大出力のものが必要となる。その結果、設備が極めて高価なものになると同時に、吸水率の高いプラスチック基板の表面処理を行う場合、吸水した水分が気化するため、真空引きに長時間を要し、処理コストが高くなるという問題点もあった。さらに、一回処理を行う毎に、真空容器の真空を壊して取り出し、次工程の準備を大気圧下で行う必要があるため、特に、水蒸気バリア性を得るために、有機化合物層、無機化合物層を多層化すればするほど、生産性が大きく損なわれていた。
【0009】
また、有機化合物層である発光層と、5員環化合物を含む有機保護膜と無機保護膜を含む積層構造の保護膜を有する有機EL素子が開示されている(特許文献4参照)。しかし、特許文献4に記載の発明では減圧下で発光層や保護層を形成しており前述と同様な問題点を有し、且つ、バリア性が低く目的のバリア性を満足するものではないという問題点があった。
【特許文献1】特公昭53−12953号公報
【特許文献2】特開昭58−217344号公報
【特許文献3】世界公開第00/026973号パンフレット
【特許文献4】特開2002−117973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高いガスバリア性能を持ち、かつ生産性が高いバリアフィルムの提供、及び該バリアフィルムを有する有機ELデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の各項に記載された構成により達成される。
【0012】
(1)
有機化合物層と無機化合物層とをそれぞれ少なくとも1層以上ずつ含むバリアフィルムにおいて、
前記有機化合物層が少なくとも窒素を含む環状化合物または硫黄を含む環状化合物または酸素を含む環状化合物を供給して形成された層であることを特徴とするバリアフィルム。
【0013】
(2)
有機化合物層と無機化合物層とをそれぞれ少なくとも1層以上ずつ含むバリアフィルムにおいて、
前記有機化合物層と前記無機化合物層との組み合わせを少なくとも1組以上有し、
前記有機化合物層が少なくとも窒素を含む環状化合物または硫黄を含む環状化合物または酸素を含む環状化合物を供給して形成された層であることを特徴とするバリアフィルム。
【0014】
(3)
前記環状化合物がそれぞれ六員環以上の環状化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のバリアフィルム。
【0015】
(4)
少なくとも前記有機化合物層が、少なくとも窒素を含む環状化合物または硫黄を含む環状化合物または酸素を含む環状化合物を、大気圧或いは大気圧近傍の環境下でプラズマ化して形成させたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【0016】
(5)
前記無機化合物層が、少なくとも珪素を含む化合物を、大気圧或いは大気圧近傍の環境下でプラズマ化して形成させたものであることを特徴とする請求項4に記載のバリアフィルム。
【0017】
(6)
前記無機化合物層は、複数の電源による異なる周波数を重畳した電界により、窒素を主成分とし前記珪素を含む化合物を含有する混合ガスをプラズマ化して形成することを特徴とする請求項5に記載のバリアフィルム。
【0018】
(7)
前記有機化合物層は、1台の電源による単一の周波数の電界により、希ガスを主成分とし前記六員環以上の環状化合物を含む化合物を含有する混合ガスをプラズマ化して形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のバリアフィルム。
【0019】
(8)
基材上に、少なくとも電極と有機化合物層とを有する有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて、前記電極と有機化合物層を覆うように形成された封止膜が、請求項1または3〜7のいずれか1項に記載のバリアフィルムであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【0020】
(9)
基材上に、少なくとも電極と有機化合物層とを有する有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて、前記電極と有機化合物層を覆うように形成された封止膜が、請求項2〜7のいずれか1項に記載のバリアフィルムであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【発明の効果】
【0021】
(1)〜(7)に記載の発明は、水蒸気及び酸素に対する高いバリア性をもつバリアフィルムであり、従来のバリアフィルムに比べ、数倍から数十倍の生産性で作製することが可能で、更に5員環状化合物に比し更にバリア性が高く、目的のバリア性を満足するものである。
【0022】
また、(8)〜(9)に記載の発明は、本発明のバリアフィルムをたとえば有機液晶表示素子に適用すれば、水蒸気及び酸素に対するバリア性の高い有機ELデバイスを安価に提供でき、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0024】
本発明者らは、鋭意検討の結果、有機化合物層と無機化合物層をそれぞれ少なくとも1層以上ずつ含むバリアフィルムにおいて、少なくとも窒素を含む六員環状化合物または硫黄を含む六員環状化合物または酸素を含む六員環状化合物を含有する混合ガスをプラズマ化する大気圧プラズマ法によって有機化合物層を形成し、少なくとも珪素を含む混合ガスをプラズマ化する大気圧プラズマ法によって珪素の酸化物(SiOX)を含む無機化合物層を形成することにより、公知のバリアフィルムよりも高いガスバリア性能を達成でき、かつ有機ELデバイスへ用いることで、優れた有機ELデバイスの環境耐性を達成できることを見いだしたのである。
【0025】
本発明のバリアフィルムは、少なくとも1層ずつの有機化合物層と無機化合物層とを有しているもので、有機化合物層が、単一の周波数の電界により少なくとも窒素を含む六員環状化合物、または硫黄を含む六員環状化合物、または酸素を含む六員環状化合物を含有する混合ガスをプラズマ化する大気圧プラズマ法によって形成され、無機化合物層が、複数の周波数の電界が重畳された電界により珪素を含む混合ガスをプラズマ化する大気圧プラズマ法によって形成されるものであることを特徴としている。
【0026】
先ず、上述した有機化合物層を形成する薄膜形成ガスと、添加ガスと、放電ガスの混合ガスについて説明する。
【0027】
有機化合物層の原料成分である有機化合物を含有する薄膜形成ガスとしては、公知の有機化合物を用いることができるが、分子内に少なくとも1つ以上の不飽和結合を有する環状構造化合物が好ましく用いることができ、窒素を含む六員環状化合物としては、例えば、ピラジン、ベンゾニトリル、アミノベンゼン、テトラヒドロ−2H−1,3オキサジン−2−オン、5,6−ジヒドロ−4H−1、3−オキサジン、2−メチル1−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン等を挙げることが出来る。
【0028】
また、硫黄を含む六員環状化合物としては、例えば、1,3,5−トリアチン、1,4−ジチアン、チアン、2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、等を挙げることが出来、また六員環以上のものとして1,4,5−オキサジチエパン、1,2,5,6−テトラチオケイン、1,2−ジチエパン、1,3−ジチエパン、等を挙げることが出来る。
【0029】
また、酸素を含む六員環状化合物としては、例えば、トリオキサン、テトラオキソカン、Lラクチド、1,4−ジオキサン等を挙げることが出来、六員環以上のものとして1,3,5,7テトラオキサシクロオクタン。
【0030】
薄膜形成ガスは、上述の有機化合物を含有し、プラズマにより基材上に化学的に堆積させて薄膜を形成するガスのことで、薄膜形成ガスに対する前述の有機化合物の含有量としては、0.001〜30.0体積%の範囲であることが好ましい。
【0031】
本発明で有用なオキセタン化合物としては、特には限定されないが、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ベンジルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシブチル−3−メチルオキセタンなどを挙げることができる。これらの化合物のうち、入手の容易性などの点から、オキセタンモノアルコール化合物として、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンが好ましい。
【0032】
また、添加ガスについて説明すると、反応や膜質を制御するために導入される添加ガスとしては、水素、酸素、窒素酸化物、アンモニア、炭化水素類、アルコール類、有機酸類、重合開始剤または水分を該ガスに対して0.001体積%〜30体積%混合させて使用してもよい。炭化水素類としては、特に限定は無いが、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどが挙げることができ、特にメタンが好ましく用いることができる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどを挙げることができる。有機酸類としては、ギ酸、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などを挙げることができる。重合開始剤としては、公知のものを用いることができるが、たとえば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0033】
次に放電ガスについて説明する。放電ガスとは、プラズマ放電を起こすことの出来るガスであり、それ自身がエネルギーを授受する媒体として働くガスで、プラズマ放電を発生させるに必要なガスである。放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いても良い。希ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来る。
【0034】
有機化合物層の膜形成において用いる放電ガスは上述したヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を用いることができ、アルゴンガスが好ましい。
【0035】
以下に、上述した薄膜形成ガスと、添加ガスと、放電ガスとの混合ガスを用いて有機化合物層を形成する大気圧プラズマ成膜装置について説明する。
【0036】
図1は、第1の第1の大気圧プラズマ成膜装置10の一例を示す概略図である。
【0037】
第1の大気圧プラズマ成膜装置10は、対となる電極の一方に1台の電源を接続し、他方の電極をアースに接続したもので、両電極の放電空間に単一の周波数の電界を印加するようにしたものであり、放電ガスに希ガスを用いた場合に好適に用いられる。
【0038】
図1において、フィルム状の基材が巻き取られたロールRから長尺フィルム状の基材Fは搬送方向(図中、時計回り)に回転するロール電極21に巻回されながら搬送される。固定されている電極(固定電極)22は複数の角柱或いは角筒柱から構成され、ロール電極21に対向して設置される。ロール電極21に巻回された基材Fは、ニップローラ23a、23bで押圧され、また、ガイドローラ24で規制されて、プラズマ放電処理容器20によって確保された放電処理空間に搬送される。そして、放電処理空間内で放電プラズマ処理され、次いで、ガイドローラ25を介して次工程に搬送される。また、仕切板26はニップローラ23bに近接して配置され、基材Fに同伴する空気がプラズマ放電処理容器20内に進入するのを抑制する。
【0039】
プラズマ放電処理容器20には、上述した薄膜形成ガスと添加ガスと放電ガスとの混合ガスGを生成するガス発生装置40、第1の電源50、電極冷却ユニット70等が配置されている。
【0040】
なお、ガス発生装置40は、少なくとも、薄膜形成ガスとして少なくとも窒素を含む六員環状化合物または硫黄を含む六員環状化合物または酸素を含む六員環状化合物を含有するガスと、放電ガスとしてアルゴンガスと、の混合ガスを生成する。
【0041】
そして、混合ガスGは給気口27からプラズマ放電処理容器20に導入され、処理後の排ガスG’は排気口28から排気される。
【0042】
また、第1の電源50としては、特に限定はないが、神鋼電機製高周波電源(3kHz)、神鋼電機製高周波電源(5kHz)、春日電機製高周波電源(15kHz)、神鋼電機製高周波電源(50kHz)、ハイデン研究所製高周波電源(100kHz)等が使用できる。
【0043】
ハイデン研究所製高周波電源(100kHz)はパルスモードと呼ばれる発振のON/OFFを断続的に行う断続発振モードを有しているが、各電源から供給する電圧波形は他の電源の様な連続的なサイン波形でも、ハイデン研究所製高周波電源のような断続発振波形でも良い。
【0044】
また、電極冷却ユニット70の冷却剤としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が用いられ、ロール電極21、固定電極22内部を循環して、ロール電極21、及び固定電極22表面を所定の温度に調整する。
【0045】
第1の大気圧プラズマ成膜装置10による大気圧プラズマ処理について説明すると、プラズマ放電処理容器20内の所定位置にロール電極21及び固定電極22が配置されており、ロール電極21には第1の電源50が接続され、固定電極22はアースに接続されている。
【0046】
ガス発生装置40で発生させた混合ガスGは流量制御され、ガス充填手段41を介して給気口27よりプラズマ放電処理容器20内に供給され、プラズマ放電処理容器20内がプラズマ処理に用いる混合ガスGで充填される。
【0047】
第1の電源50によりロール電極21と固定電極22との対向領域である放電空間301に高周波電界を印加し、放電させ混合ガスGのプラズマを発生させる。
【0048】
基材Fは、ロール電極21に捲着されながらロール電極21と固定電極22との間を搬送される。そして、ロール電極21と固定電極22との間を搬送中に、発生した放電プラズマにより基材Fの表面に混合ガス中の薄膜形成ガスに応じた薄膜、即ち有機化合物層が形成される。
【0049】
なお、放電プラズマにより表面に有機化合物層が堆積形成された基材F’は、ガイドローラ25を介して、例えば無機化合物層を形成する、不図示の次工程に搬送される。
【0050】
なお、第1の電源50よりロール電極21に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が0.5kV〜10kV程度で、1kHz以上で200kHz以下に調整される。ここで電源の電圧波形に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良いが、連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0051】
また、放電プラズマ処理時の基材への影響を最小限に抑制するために、放電プラズマ処理時の基材Fの温度を常温(15℃〜25℃)〜200℃未満の温度に調整することが好ましく、更に好ましくは常温〜100℃に調整することである。上記の温度範囲に調整する為、必要に応じてロール電極21と固定電極22とは電極の冷却手段である電極冷却ユニット70で冷却しながら放電プラズマ処理される。
【0052】
次に、上述した無機化合物層を形成する薄膜形成ガスと、添加ガスと、放電ガスについて説明する。
【0053】
無機化合物層とは、おもに水蒸気、酸素等のガスを遮断する効果を具備した膜であり、少なくともその層が金属酸化物、金属窒化酸化物、金属窒化物、または珪素含有化合物を主成分としているもので、層中の金属原子(Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等)の含有率が原子数濃度として5%を超えている層であり、好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上の膜である。
【0054】
無機化合物層の金属原子濃度については、XPS表面分析装置により測定することが出来る。また本発明に係る無機化合物層は、上記金属元素からなる金属酸化物、金属窒化酸化物、金属窒化物等のセラミック成分を主成分とすることが好ましく、炭素含有率は1%以下であることが好ましい。膜厚は、特に限定はしないが、概ね1〜10000nmであり、特に好ましくは5〜1000nmである。
【0055】
無機化合物層の原料(薄膜形成成分)としては、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等を挙げることが出来る。
【0056】
本発明に有用な有機金属化合物は下記の一般式(I)で示すものが好ましい。
【0057】
一般式(I)
R1xMR2yR3z
式中、Mは金属(Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等)、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン配位基、β−ケトカルボン酸エステル配位基、β−ケトカルボン酸配位基及びケトオキシ基(ケトオキシ配位基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることが出来る。R2のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることが出来る。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3のβ−ジケトン配位基、β−ケトカルボン酸エステル配位基、β−ケトカルボン酸配位基及びケトオキシ基(ケトオキシ配位基)から選ばれる基としては、β−ジケトン配位基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸エステル配位基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることが出来、β−ケトカルボン酸配位基として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることが出来、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることが出来る。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属示化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0058】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン配位基、β−ケトカルボン酸エステル配位基、β−ケトカルボン酸配位基及びケトオキシ基(ケトオキシ配位基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0059】
具体的な有機金属化合物について以下に示す。
【0060】
有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジ(2,4−ペンタンジオナート)、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等、ハロゲン化珪素化合物としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることが出来る。これらを2種以上同時に混合して使用することも出来る。
【0061】
またチタン化合物としては、有機チタン化合物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有機チタン化合物としては、例えば、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、トリエチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジ(2,4−ペンタンジオナート)、エチルチタントリ(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、チタントリス(アセトメチルアセタート)、トリアセトキシチタン、ジプロポキシプロピオニルオキシチタン等、ジブチリロキシチタン、チタン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロチタン、テトラクロロチタン等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いることが出来る。またこれらを2種以上同時に混合して使用することも出来る。
【0062】
また錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物としては、例えば、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いることができる。また、これらのを2種以上同時に混合して使用してもよい。なお、これらを用いて形成された酸化錫膜は表面比抵抗値を1×1012Ω/□以下に下げることができるため、帯電防止層としても有用である。
【0063】
また、その他の有機金属化合物としては、例えば、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、バリウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、ベリリウムアセチルアセトナート、ビスマスヘキサフルオロペンタンジオネート、ジメチルカドミウム、カルシウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、クロムトリフルオロペンタンジオネート、コバルトアセチルアセトナート、銅ヘキサフルオロペンタンジオネート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート−ジメチルエーテル錯体、ガリウムエトキシド、テトラエトキシゲルマン、テトラメトキシゲルマン、ハフニウムt−ブドキシド、ハフニウムエトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウム2,6−ジメチルアミノヘプタンジオネート、フェロセン、ランタンイソプロポキシド、酢酸鉛、テトラエチル鉛、ネオジウムアセチルアセトナート、白金ヘキサフルオロペンタンジオネート、トリメチルシクロペンタジエニル白金、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート、ストロンチウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、タンタルメトキシド、タンタルトリフルオロエトキシド、テルルエトキシド、タングステンエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシドオキシド、マグネシウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、などが挙げられる。
【0064】
無機化合物層を形成する場合の添加ガスについては有機化合物層の成膜と同様なものを使用できる。
【0065】
無機化合物層を形成する場合の放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いても構わない。放電ガス量は、放電空間内に供給する薄膜形成ガス量に対して70〜99.99体積%含有することが好ましい。
【0066】
無機化合物層を形成させるための方法としては、塗布などのウェットプロセスや、真空成膜法(蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、イオンプレーティングなど)および大気圧プラズマ法などのドライプロセス等を挙げることができる。形成方法に特に制限はないが、緻密でガスバリア性が高い無機化合物層を形成するには、ドライプロセスが好ましく、更に好ましくは前述した有機化合物層を形成するものと同様な大気圧プラズマ法で、以下に説明する。
【0067】
図2は、第2の大気圧プラズマ成膜装置30の一例を示す概略図である。
【0068】
第2の大気圧プラズマ成膜装置30は、対となる電極の一方に1台の電源を接続し、他方の電極に異なる周波数の他の電源を接続したもので、両電極の放電空間に異なる周波数を重畳した電界を印加するようにしたものであり、放電ガスに窒素ガスを用いた場合に好適に用いられる。
【0069】
図1の第1の大気圧プラズマ成膜装置10との違いは、基本的には供給する混合ガスと、固定電極22に第2の電源60を付加したのみなので、異なる部分のみ説明する。
【0070】
ガス発生装置40で前述した薄膜形成ガスと添加ガスと放電ガスとの混合ガスG2を生成し、放電空間に供給する。
【0071】
プラズマ放電処理容器20には、更に第2の電源60が配置されている。
【0072】
第2の電源60としては、特に限定はないが、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等が使用できる。
【0073】
第2の大気圧プラズマ成膜装置30による大気圧プラズマ処理について説明すると、プラズマ放電処理容器20内の所定位置にロール電極21及び固定電極22が配置されており、固定電極22には第2の電源60が接続され、ロール電極21には第1の電源50が接続されている。
【0074】
ロール電極21と固定電極22との対向領域である放電空間301に、第1の電源50及び第2の電源60により周波数の異なる電界が重畳された高周波電界を印加し、放電させ、混合ガスG2のプラズマを発生させる。
【0075】
第2の電源60より固定電極22に印加される電圧の値は適宜決定されるが、例えば、電圧が0.1kV〜10kV程度で、電源周波数は電源周波数は100kHz以上200MHz以下に調整される。ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと前述したパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良い。
【0076】
第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。
【0077】
なお、ロール電極21と第1電源50との間には、第1フィルタ51が設置されており、第1電源50からロール電極22への電流を通過しやすくし、第2電源60からの電流をアースして、第2電源60から第1電源50への電流が通過しにくくなるようになっており、固定電極22と第2電源60との間には、第2フィルター61が設置されており、第2電源60から固定電極22への電流を通過しやすくし、第1電源50からの電流をアースして、第1電源50から第2電源60への電流を通過しにくくするようになっている。
【0078】
また、第1の高周波電源50は周波数ω1、電極の放電面の単位面積当たり出力電流I1、固定電極22とロール電極22との間に電界強度V1の印加を可能とし、第2の高周波電源60は周波数ω2、電極の放電面の単位面積当たり出力電流I2、固定電極22とロール電極22との間に電界強度V2の印加を可能としている。
【0079】
そして、両電源により固定電極22とロール電極21との対向領域301に周波数ω1と周波数ω2が重畳された高周波電界を発生させる。
【0080】
放電ガスを窒素とした場合、窒素ガスに対して放電を開始させる放電開始電界強度をIVとすると、安定して放電が開始し、放電開始後も薄膜形成ガス等を安定して励起できるように、各電源の関係はω2>ω1、及び、V1≧IV>V2またはV1>IV≧V2の関係を有し、窒素の放電開始電界強度は3.7kV/mmの為、少なくとも第1の高周波電源50から印可する電界強度V1は3.7kV/mm、またはそれ以上とし、第2の高周波電源60から印可する電界強度V2は3.7kV/mm、またはそれ未満とすることが好ましい。
【0081】
また、電流は電極の放電面の単位面積当たり、I1<I2となることが好ましい。電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
【0082】
このような2つの電源から高周波電界を印加することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界の高い周波数および高い出力密度によりプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成することが重要な点である。
【0083】
なお、第1の高周波電源50と第2の高周波電源60とに関する周波数ω1、ω2、印加する電界強度V1、V2、の関係はω1>ω2、及び、V1≦IV<V2またはV1<IV≦V2としても良い。
【0084】
以上の説明において有機化合物層及び無機化合物層の成膜は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行われるが、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20kPa〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0085】
また、放電空間とは放電を行う対となる電極の対向領域で、実質的に放電を行う領域を指す。
【0086】
また、放電開始電界強度とは、薄膜形成方法に使用される放電空間および反応条件(ガス種類など)において放電を起こすことの出来る最低電界強度のことを指す。
【0087】
図3は、上述の円筒型のロール電極21の一例を示す概略図である。
【0088】
ロール電極21の構成について説明すると、図3(a)において、ロール電極21は、金属等の導電性母材21a(以下、「電極母材」ともいう。)に対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体21b(以下、単に「誘電体」ともいう。)を被覆した組み合わせで構成されている。
また、図3(b)に示すように、金属等の導電性母材21Aにライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体21Bを被覆した組み合わせでロール電極21を構成してもよい。
【0089】
ロール電極21は、導電性母材21aを第1の大気圧プラズマ成膜装置10ではアースに接続し、第2の大気圧プラズマ成膜装置30ではフィルタを介して第2の高周波電源60に接続してある。
【0090】
ライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等が好ましく用いられるが、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易いので、更に好ましく用いられる。金属等の導電性母材21a、21Aとしては、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工の観点からステンレスが好ましい。また、溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、更に好ましく用いられる。尚、本実施の形態においては、ロール電極の母材21a、21Aは、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材を使用している(不図示)。
【0091】
図4は、角柱型の固定電極22の一例を示す概略図である。
【0092】
図4(a)において、角柱或いは角筒柱の固定電極22は上記記載のロール電極21と同様に、金属等の導電性母材22aに対しセラミックスを溶射後、無機材料を用いて封孔処理したセラミック被覆処理誘電体22bを被覆した組み合わせで構成されている。また、図4(b)に示す様に、角柱或いは角筒柱型の固定電極22は金属等の導電性母材22Aへライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体22Bを被覆した組み合わせで構成してもよい。
【0093】
図5はバリアフィルムの層構成の一例を示す模式図である。
【0094】
バリアフィルム1は、基材2と、無機化合物層3と、有機化合物層4とを有している。
【0095】
図では無機化合物層3と有機化合物層4とを1層ずつ交互に配置した場合を示したが、その配置は無機化合物層の間に有機化合物層が挟まれていれば良く、順番や数は問わない。
【0096】
即ち、基材と反対側の表面に無機化合物層を有し、基材と最外表層の無機化合物層6との間に、有機化合物層と無機化合物層との組み合わせを少なくとも1組以上有していれば、組み合わせ数は1でも複数でも良い。また、各層間に接着性を上げるための接着層5を設けても良い。
【0097】
基材2は、特に制限はないが、透明の樹脂基材であることが好ましく、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等を挙げることが出来る。これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することも出来る。
【0098】
基材2は、上記の記載に限定されないが、フラットパネルディスプレイ(有機ELデバイス、液晶、FED、SED、PDP等)用途や、電子材料用途で用いる場合には、ガラス転移温度が150℃以上のものが好ましく、ポリエーテルスルフォンや、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂、特開2003−192787号公報などに開示されている透明ポリイミド、特開2001−139676号公報や特開2002−179784号公報などに開示されている共重合ポリカーボネート、特開2004−196841号公報に開示されている透明フィルムなどを好ましく使用することが出来る。中でもゼオノア(日本ゼオン(株)製)、ノルボルネン系樹脂フィルムのゼオノア(日本ゼオン(株)製)やARTON(ジェイエスアール(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人化成(株)製)、ポリエーテルスルフォンフィルムのスミライト(住友ベークライト(株)製)などの市販品を好ましく使用することが出来る。フィルム形状のものの膜厚としては10〜1000μmが好ましく、より好ましくは40〜500μmである。
【0099】
接着層5とは、おもに有機化合物層4と無機化合物層3との間に設けられ、有機化合物層4と無機化合物層3の接着性をあげる効果を具備した膜であり、無機化合物層中に含有される無機成分と有機化合物層と親和性のよい有機成分を有する膜であることが好ましく、炭素成分を1〜50%含有する金属酸化物、金属窒化酸化物、または金属窒化物であることが好ましい。膜厚は、特に限定はしないが、概ね0.1〜1000nmであり、特に好ましくは1〜500nmである。
【0100】
接着層5の原料(薄膜形成成分)としては、上記の有機化合物層形成のために用いられる有機化合物と無機化合物層を形成するために用いられる有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等を適宜混合して使用することや、シランカップリング剤等のカップリング剤などが好ましく使用することができる。
【0101】
本発明に係るシランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられるが、これに限定はされない。
【0102】
接着層5を形成させるための方法としては、塗布などのウェットプロセスや、真空成膜法(蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、イオンプレーティングなど)および大気圧プラズマ法などのドライプロセス等を挙げることができる。形成方法に特に制限はないが、ロール状の元巻きからウエブ状の基材を繰り出して有機化合物層と無機化合物層と接着膜とを連続して形成し、ロール状に巻き上げるためには特に大気圧プラズマ法が好ましい。
【0103】
本発明に係る接着膜を形成するための大気圧プラズマ法は、無機化合物層4を形成するものと同様な大気圧プラズマ成膜装置、或いは、特開平10−154598号公報や特開2003−49272号公報、WO02/048428号パンフレット、特開2004−68143号公報などに記載されている成膜方法を用いることができる。
【0104】
バリアフィルムは、基材2の少なくとも1面に上述した有機化合物層4と無機化合物層3を有しているものであれば良く、用途に特に限定は無く、基材上に直接、または不図示の機能膜(接着膜、ハードコート膜、反射防止膜、帯電防止膜、耐キズ膜、潤滑膜、平滑膜、反射膜など)を介して、本発明のバリアフィルムを形成すればバリアフィルム基材として用いることができる。
【0105】
次に、上述したバリアフィルム、或いはバリアフィルム基材でガスバリア性を高めた有機ELデバイスについて説明する。
【0106】
図6は有機ELデバイスの一例の概念断面図である。
【0107】
有機ELデバイス5は少なくとも電極55と発光層である有機化合物層56とが形成された基材57を有しており、上述したバリアフィルム58が、有機化合物層56を覆うようにして封止している。
【0108】
図7は有機ELデバイスの他の一例の概念断面図である。
【0109】
また他の形態の有機ELデバイス6は少なくとも陽極62と陰極63と発光層である有機化合物層56とが形成された基材64を有しており、上述したバリアフィルム65が有機ELデバイスの少なくとも発光層である有機化合物層を覆うように貼り合わされている。
【0110】
また他の形態として、有機ELデバイスは上述したバリアフィルム基材上に少なくとも電極と発光層である有機化合物層とが形成され、上述したバリアフィルムが、有機ELデバイスを覆うようにして封止されている。
【0111】
また他の形態として、有機ELデバイスは上述したバリアフィルム基材上に少なくとも電極と発光層である有機化合物層とが形成され、上述したバリアフィルム基材が有機ELデバイスの少なくとも電極と発光層である有機化合物層を覆うように貼り合わされている。
【実施例】
【0112】
以下本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は、何ら下記実施例に限定されるものではない。
【0113】
(比較例の作製)
比較例1〜3のバリアフィルムは、材料欄に記す有機化合物を供給し真空中でプラズマにより有機化合物層を形成し、有機化合物層の上に真空蒸着により酸化珪素よりなる無機物層を形成した。
【0114】
(実施例の作製)
実施例1〜4のバリアフィルムは、図1のプラズマ成膜装置と同様な成膜装置を用い材料欄に記す有機化合物を供給し有機化合物層を形成し、有機化合物層の上に図2のプラズマ成膜装置と同様な成膜装置を用い酸化珪素よりなる無機物層を形成した。
【0115】
ここで、プラズマ発生に際しては、周波数100kHzの電圧でかつ5W/cm2の電力を供給し、電極間には材料欄に記す材料を含有した混合ガスを流した。
【0116】
(資料の測定)
水蒸気透過率はJIS K 7129Bで規定の方法に準拠して測定を行った。
【0117】
酸素透過率はJIS K 7126Bで規定の方法に準拠して測定を行った。
【0118】
【表1】

【0119】
(評価結果)
以上、実施例3及び4に示すように、有機化合物層を5員環の有機化合物を用い大気圧プラズマで形成し無機化合物層を酸化珪素を用い大気圧プラズマで形成したバリアフィルムは、比較例1に示す有機化合物層を有しないバリアフィルム及び比較例2〜3に示す有機化合物層を5員環の有機化合物を用い真空中のプラズマで形成し無機化合物層を酸化珪素を用い真空蒸着で形成したバリアフィルムに比べ良好な酸素透過率と水蒸気透過率とを示し。実施例1及び2に示すように、有機化合物層を6員環の有機化合物を用い大気圧プラズマで形成し無機化合物層を酸化珪素を用い大気圧プラズマで形成したバリアフィルムは更に良好な酸素透過率と水蒸気透過率とを示すことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】第1の第1の大気圧プラズマ成膜装置10の一例を示す概略図である。
【図2】第2の大気圧プラズマ成膜装置30の一例を示す概略図である。
【図3】円筒型のロール電極21の一例を示す概略図である。
【図4】角柱型の固定電極22の一例を示す概略図である。
【図5】バリアフィルムの層構成の一例を示す模式図である。
【図6】有機ELデバイスの一例の概念断面図である。
【図7】有機ELデバイスの他の一例の概念断面図である。
【符号の説明】
【0121】
1 バリアフィルム
2 基材
3 無機化合物層
4 有機化合物層
5 有機ELデバイス
10 第1の大気圧プラズマ成膜装置
21 ロール電極
22 固定電極
30 第2の大気圧プラズマ成膜装置
40 ガス発生装置
50 第1の電源
60 第2の電源
301放電空間
G 混合ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物層と無機化合物層とをそれぞれ少なくとも1層以上ずつ含むバリアフィルムにおいて、
前記有機化合物層が少なくとも窒素を含む環状化合物または硫黄を含む環状化合物または酸素を含む環状化合物を供給して形成された層であることを特徴とするバリアフィルム。
【請求項2】
有機化合物層と無機化合物層とをそれぞれ少なくとも1層以上ずつ含むバリアフィルムにおいて、
前記有機化合物層と前記無機化合物層との組み合わせを少なくとも1組以上有し、
前記有機化合物層が少なくとも窒素を含む環状化合物または硫黄を含む環状化合物または酸素を含む環状化合物を供給して形成された層であることを特徴とするバリアフィルム。
【請求項3】
前記環状化合物がそれぞれ六員環以上の環状化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のバリアフィルム。
【請求項4】
少なくとも前記有機化合物層が、少なくとも窒素を含む環状化合物または硫黄を含む環状化合物または酸素を含む環状化合物を、大気圧或いは大気圧近傍の環境下でプラズマ化して形成させたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリアフィルム。
【請求項5】
前記無機化合物層が、少なくとも珪素を含む化合物を、大気圧或いは大気圧近傍の環境下でプラズマ化して形成させたものであることを特徴とする請求項4に記載のバリアフィルム。
【請求項6】
前記無機化合物層は、複数の電源による異なる周波数を重畳した電界により、窒素を主成分とし前記珪素を含む化合物を含有する混合ガスをプラズマ化して形成することを特徴とする請求項5に記載のバリアフィルム。
【請求項7】
前記有機化合物層は、1台の電源による単一の周波数の電界により、希ガスを主成分とし前記六員環以上の環状化合物を含む化合物を含有する混合ガスをプラズマ化して形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のバリアフィルム。
【請求項8】
基材上に、少なくとも電極と有機化合物層とを有する有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて、前記電極と有機化合物層を覆うように形成された封止膜が、請求項1または3〜7のいずれか1項に記載のバリアフィルムであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項9】
基材上に、少なくとも電極と有機化合物層とを有する有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて、前記電極と有機化合物層を覆うように形成された封止膜が、請求項2〜7のいずれか1項に記載のバリアフィルムであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−321127(P2006−321127A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146392(P2005−146392)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】