説明

バリア性多層延伸フィルム

【課題】吸湿による寸法変化や屈曲等によりバリア性が低下しないバリア性多層延伸フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】ポリエステル系樹脂層(A層)及びポリアミド系樹脂層(B層)の少なくとも2層を有する多層積層体を二軸延伸することにより得られる二軸延伸多層フィルムの少なくとも片面に蒸着層(C層)を設けてなるバリア性多層延伸フィルムであって、
(A)層が、結晶性ポリエステルを含有し、
(B)層が、脂肪族ポリアミドを70〜99重量%、芳香族ポリアミドを1〜30重量%含有し、
(C)層が無機物を含有する
ことを特徴とする、バリア性多層延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素ガス又は水蒸気に対するバリア性に優れ、屈曲及び吸湿による蒸着膜のクラックの発生を防止することができるバリア性多層延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガスバリア性、強靭性、耐ピンホール性等を有する包装用フィルムとして、ポリエステル系フィルムやポリアミド系フィルム上に無機物を蒸着させ、蒸着層を形成させたものが知られている。
【0003】
しかし、ポリエステル系フィルムは硬いため、屈曲に弱く、その上に設けられた蒸着層も屈曲によりピンホールが生じ、バリア性が低下するという問題があった。
【0004】
一方、ポリアミド系フィルムは、耐ピンホール性には強いが、吸湿により寸法変化を起こし、その上に設けられた蒸着膜には、ポリアミドフィルムの寸法変化によりクラックが発生し、バリア性が低下するという問題点があった。
【0005】
このように、吸湿による寸法変化や屈曲等によりバリア性が低下しないバリア性多層延伸フィルムは存在しないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−160770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、吸湿による寸法変化や屈曲等によりバリア性が低下しないバリア性多層延伸フィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題に鑑み、鋭意研究を行った結果、ポリエステル系樹脂層(A層)及び特定のポリアミド系樹脂層(B層)の少なくとも2層を有する多層積層体を二軸延伸することにより得られる二軸延伸多層フィルムの少なくとも片面に蒸着層(C層)を設けることにより、上記課題が解決されたバリア性多層延伸フィルムが得られることを見出した。本発明はこのような知見に基づき、完成されたものである。すなわち、本発明は、以下のバリア性多層延伸フィルムに係る。
【0009】
項1.ポリエステル系樹脂層(A層)及びポリアミド系樹脂層(B層)の少なくとも2層を有する多層積層体を二軸延伸することにより得られる二軸延伸多層フィルムの少なくとも片面に蒸着層(C層)を設けてなるバリア性多層延伸フィルムであって、
(A)層が、結晶性ポリエステルを含有し、
(B)層が、脂肪族ポリアミドを70〜99重量%、芳香族ポリアミドを1〜30重量%含有し、
(C)層が無機物を含有する
ことを特徴とする、バリア性多層延伸フィルム。
【0010】
項2.(A)層の厚みが1〜20μm、(B)層の厚みが5〜49μmであり、二軸延伸多層フィルムの総膜厚が10〜50μmである、項1に記載のバリア性多層延伸フィルム。
【0011】
項3.(A)層に含まれる結晶性ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1又は2のいずれかに記載のバリア性多層延伸フィルム。
【0012】
項4.(B)層に含まれる脂肪族ポリアミド系樹脂が、ナイロン−6及びナイロン−6とナイロン−6,6との共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1〜3のいずれかに記載のバリア性多層延伸フィルム。
【0013】
項5.(B)層に含まれる芳香族ポリアミド系樹脂が、ポリメタキシレンアジパミド又はアモルファスナイロンである、項1〜4のいずれかに記載のバリア性多層延伸フィルム。
【0014】
項6.(C)層に含まれる無機物が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及びアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1〜5のいずれかに記載のバリア性多層延伸フィルム。
【0015】
項7.項1〜6のいずれかに記載のバリア性多層延伸フィルムの蒸着層上に、シール層をラミネートしてなる包装用フィルム。
【0016】
項8.項7に記載の包装用フィルムを袋状にして、シール層面同士をヒートシールして得られる包装用袋。
【0017】
項9.項8に記載の包装用袋に内容物を充填してなる包装物。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバリア性多層延伸フィルムは、優れた寸法安定性及び耐屈曲性を有している。このような優れた特徴を有する本発明のバリア性多層延伸フィルムは、包装用フィルムとして好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.バリア性多層延伸フィルム
本発明のバリア性多層延伸フィルムは、ポリエステル系樹脂層(A層)及びポリアミド系樹脂層(B層)の少なくとも2層を有する多層積層体を二軸延伸することにより得られる二軸延伸多層フィルムの少なくとも片面に蒸着層(C層)を設けてなるバリア性多層延伸フィルムであって、
(A)層が、結晶性ポリエステルを含有し、
(B)層が、脂肪族ポリアミドを70〜99重量%、芳香族ポリアミドを1〜30重量%含有し、
(C)層が無機物を含有する
ことを特徴とする。
【0020】
以下、本発明のバリア性多層延伸フィルムの各構成について詳述する。なお、以下、バリア性多層延伸フィルムを単に多層延伸フィルムと略記することがある。
【0021】
(1)(A)層
本発明において、(A)層は、本発明の多層延伸フィルムに寸法安定性、耐熱性等の機能を付与するものである。特に寸法安定性が付与されることで、湿潤時のガスバリア性の低下を抑制することができる。
【0022】
(A)層は、結晶性ポリエステルを主成分として含有する。結晶性ポリエステルとしては、本発明の多層延伸フィルムに寸法安定性、耐熱性等の機能を付与できるものであれば特に限定されず、例えば、ジカルボン酸とジオールとを重縮合させることにより得られる樹脂等が挙げられる。
【0023】
ジカルボン酸としては、例えば、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステルや、5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、3−スルホフタル酸、5−スルホイソフタル酸ジアルキル、2−スルホイソフタル酸ジアルキル、4−スルホイソフタル酸ジアルキル、3−スルホイソフタル酸ジアルキル及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩等のスルホン基含有ジカルボン酸等が挙げられる。
【0024】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2、4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロへキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロへキシル)プロパン等のアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類、1,3−ジヒドロキシブタンスルホン酸、1,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸等のスルホン基含有ジオール等が挙げられる。
【0025】
この中でも特に、ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエチレンテレフタレート(PET);ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(99〜80モル%)及びイソフタル酸(1〜20モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート;ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸、ジオールに由来する成分が1,4−ブタンジオールであるポリブチレンテレフタレート(PBT);ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(99.5〜90モル%)及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸(0.5〜10モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート等が寸法安定性、保香性、耐熱性等の点から好適であり、より好ましくはテレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0026】
このような結晶性ポリエステルは商業的に入手可能であり、例えば、ベルペット−EFG6C、ベルペットPIFG5(いずれも(株)ベルポリエステルプロダクツ製)等を(A)層を構成する結晶性ポリエステルとして用いることができる。
【0027】
なお、(A)層に用いられる結晶性ポリエステルは1種のみでも良いし、必要に応じ2種以上をブレンドして用いてもよい。或いは(A)層を2層以上設けることも可能である。ただし、(A)層を2層以上設ける場合には、(A)層、(B)層、(A)層をこの順に形成することはなく、層間強度の向上等を目的として、少なくとも(A)層、(A)層、(B)層の少なくとも3層をこの順に設けることで得られる二軸延伸多層フィルムの少なくとも片面に(C)層を設ける。
【0028】
また、(A)層は、必要に応じ結晶性ポリエステルと相溶性のある樹脂を含有していても良いが、(A)層を構成する成分の総重量に対する結晶性ポリエステルの含有量は、50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。
【0029】
結晶性ポリエステルと相溶性のある樹脂としては非晶性ポリエステル等が例示できる。非晶性ポリエステルとはJIS K 7121に基づく示差走査熱量測定において融解熱量が観察されないポリエステルである。このような特性を有するポリエステルであれば特に限定されないが、具体例として、ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸、ジオールに由来する成分がエチレングリコール(20〜80モル%)及びシクロヘキサンジメタノール(80〜20モル%)であるポリエステル;ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸(20〜80モル%)及びイソフタル酸(80〜20モル%)、ジオールに由来する成分がエチレングリコールであるポリエステルが好適である。このような非晶性ポリエステルは商業的に入手可能であり、例えば、Eastar Copolyester 6763(イーストマンケミカル製)等を非晶性ポリエステルとして用いることができる。
【0030】
また、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、(A)層に公知の無機又は有機添加剤等を適宜配合することができる。無機又は有機添加剤としては、アンチブロッキング剤、核剤、撥水剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、染料等を適宜配合することができる。
【0031】
(2)(B)層
本発明において、(B)層は、本発明の多層延伸フィルムに耐屈曲性、耐衝撃性等の機能を付与するものである。特に耐屈曲性が付与されることで、屈曲後のガスバリア性の低下を抑制することができる。
【0032】
(B)層は、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドを含有する。
【0033】
(2−1)脂肪族ポリアミド
脂肪族ポリアミドとしては、脂肪族ナイロン及びその共重合体が挙げられる。具体的には、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン−2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン−8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)等を例示でき、これらのうち、2種以上の脂肪族ポリアミドを混合しても良い。
【0034】
好ましい脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン-6,6、ナイロン−6/6,6(ナイロン6とナイロン6,6との共重合体)が挙げられ、より好ましくはナイロン−6、ナイロン−6/6,6であり、さらに好ましくはナイロン−6である。2種以上の脂肪族ポリアミドとしてはナイロン−6とナイロン−6/6,6の組み合わせ(重量比で50:50〜95:5程度)が好ましい。
【0035】
(2−2)芳香族ポリアミド
芳香族ポリアミドとしては、例えば、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。好ましくは、ポリメタキシレンアジパミド(MXD−ナイロン)等の結晶性芳香族ポリアミドである。具体例としては、S−6007、S−6011(いずれも三菱ガス化学(株)製)が例示される。
【0036】
或いは、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)が挙げられる。好ましくはヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸−ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の共重合体等である。具体例としては、シーラーPA(三井・デュポンポリケミカル(株)製)等が例示される。
【0037】
本発明の(B)層として、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの好ましい組み合わせは、ナイロン−6とMXD−ナイロンの組み合わせ、ナイロン−6と非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)の組み合わせが挙げられる。
【0038】
(2−3)含有量
本発明の多層延伸フィルムにおける(B)層では、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドの含有量は、脂肪族ポリアミドが70〜99重量%、好ましくは85〜97重量%、芳香族ポリアミドが1〜30重量%、好ましくは3〜15重量%の割合で含有されるように調整する。脂肪族ポリアミドが99重量%より多い場合、芳香族ポリアミドが1重量%より少ない場合には、二軸延伸性が低下し、フィルムの成形が困難となる。一方、脂肪族ポリアミドが70重量%より少ない場合、芳香族ポリアミドが30重量%より多い場合には、耐屈曲性が低下する。
【0039】
(B)層は、上記ポリアミド系樹脂からなるものであってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、公知の耐屈曲性改良剤、無機又は有機添加剤等を配合することができる。耐屈曲性改良剤としては、ポリオレフィン類、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等が挙げられ、0.5〜10重量%程度の範囲で適宜配合することができる。無機又は有機添加剤としては、アンチブロッキング剤、核剤、撥水剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。例えば、アンチブロッキング剤であれば、シリカ、タルク、カオリン等を100〜5000ppm程度の範囲で適宜配合することができる。なお、(B)層を1層のみではなく、2層以上設けることも可能である(例えば後述の実施例3の態様)。
【0040】
(3)(C)層
本発明において、(C)層は、本発明の多層延伸フィルムに、ガスバリア性、防湿性、保香性等の機能を付与するものである。
【0041】
(C)層は、無機物を含有する。無機物は、(A)層や(B)層の上に蒸着により、酸素、水蒸気等に対するガスバリア性を有する層を形成できるものであれば特に制限はなく、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、アルミニウム等の金属等が挙げられる。なかでも、透明性、金属異物検査が可能となる等の点から、金属酸化物が好ましく、酸化ケイ素がより好ましい。
【0042】
この(C)層の形成方法は、種々あるが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等が挙げられる。なかでも、生産性に優れるため、真空蒸着法が好ましい。
【0043】
真空蒸着法における加熱手段は、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導過熱方式等が挙げられるが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると、電子線加熱方式が好ましい。なお、(C)層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を採用してもよい。また、(C)層の透明性を向上させるために、蒸着時に、酸素等の各種ガス等を吹き込む反応蒸着を用いてもよい。
【0044】
(4)接着層
本発明では、上記の(A)層と(B)層との層間強度を向上させる目的で、接着層が形成されていてもよい。接着層を介在させることにより、両者の接着後の層間強度を飛躍的に向上させることができる。接着層としては特に限定されず、本発明の多層延伸フィルムにおける(A)層と(B)層との間に形成され、例えば不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された酸変性樹脂を用いることができる。
【0045】
不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された酸変性樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン、変性スチレン系エラストマー等が挙げられる。
【0046】
変性ポリオレフィンは、公知の製法で得られ、例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとをラジカル発生剤の存在下で加熱混合して得られる。
【0047】
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)等が例示できる。
【0048】
ポリオレフィンとしては、オレフィン類の単独重合体、相互共重合体、他の共重合可能なモノマー(例えば、他のビニル系モノマー)との共重合体を例示できる。具体的には、例えば、ポリエチレン(例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等)、ポリプロピレン、ポリブテン、これらの相互共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を例示できる。
【0049】
変性ポリオレフィンとして、好ましくは無水マレイン酸変性ポリオレフィンである。具体的には、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(例えば、三井化学(株)製のアドマーSF731、SE800等や、三菱化学(株)製のモディック等)が例示される。
【0050】
変性スチレン系エラストマーは、公知の製法で得られ、例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体とスチレン系エラストマーとをラジカル重合剤の存在下で加熱混合して得られる。
【0051】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物やスチレン−イソプレン共重合体の水素添加物等を例示できる。
【0052】
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)等が例示できる。
【0053】
変性スチレン系エラストマーとして、好ましくは無水マレイン酸で変性したスチレン−ブタジエン共重合体水素添加物である。具体的には、無水マレイン酸で変性したスチレン−ブタジエン共重合体水素添加物(例えば、クレイトンポリマー製のクレイトンFG1901や旭化成ケミカルズ(株)製のタフテックM1913等)が例示できる。
【0054】
(5)層構成
本発明の多層延伸フィルムは、(A)層と(B)層の少なくとも2層を有する多層積層体を二軸延伸することにより得られる二軸延伸多層フィルムの少なくとも片面に(C)層を有するものである。ここで、(A)層及び(B)層は、1層のみではなく、2層以上設けることも可能である。(A)層を2層以上設ける場合には、複数ある(A)層は、使用する樹脂や厚みは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。(B)層が複数ある場合も同様である。ただし、(A)層を2層以上設ける場合には、上述したように、(A)層、(B)層、(A)層をこの順に形成することはなく、少なくとも(A)層、(A)層、(B)層の少なくとも3層をこの順に設けることで得られる二軸延伸多層フィルムの少なくとも片面に(C)層を設ける。また、その他にも、接着層(D層)やガスバリア層(E層)、シール層(F層)等を必要に応じて設けることもできる。
【0055】
具体的な層構成として、(A)層/(B)層/(C)層、(B)層/(A)層/(C)層、(A)層/(B)層/(B)層/(C)層、(A)層/(A)層/(B)層/(C)層、(B)層/(A)層/(A)層/(C)層、(A)層/(D)層/(B)層/(C)層、(B)層/(D)層/(A)層/(C)層、(A)層/(D)層/(B)層/(B)層/(C)層、(A)層/(A)層/(D)層/(B)層/(C)層、(B)層/(D)層/(A)層/(A)層/(C)層、(A)層/(E)層/(B)層/(C)層、(A)層/(B)層/(E)層/(C)層、(A)層/(B)層/(E)層/(B)層/(C)層、(B)層/(E)層/(A)層/(C)層、(E)層/(B)層/(A)層/(C)層、(B)層/(E)層/(B)層/(A)層/(C)層、(A)層/(E)層/(B)層/(B)層/(C)層、(A)層/(B)層/(E)層/(B)層/(C)層、(A)層/(B)層/(B)層/(E)層/(C)層、(B)層/(B)層/(E)層/(A)層/(C)層、(B)層/(E)層/(B)層/(A)層/(C)層、(B)層/(B)層/(A)層/(E)層/(C)層、(A)層/(B)層/(C)層/(F)層、(B)層/(A)層/(C)層/(F)層、(A)層/(B)層/(B)層/(C)層/(F)層等が挙げられる。
【0056】
ここで、ガスバリア層とは酸素、窒素、二酸化炭素等のガスの透過性の低い層である。具体例として、エチレン−ビニルアルコール系共重合体や芳香族ポリアミド等が挙げられる。
【0057】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体とは、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られるものである。エチレン−ビニルアルコール系共重合体のエチレン含有量は20〜70モル%、好ましくは25〜50モル%が好ましい。エチレン含有量が20モル%を下回ると熱安定性が悪く成形性が悪くなり、押出溶融成形においてゲル等の異物が発生しやすくなったり、延伸成形においてフィルムが破れやすくなったりする傾向がある。エチレン含有量が70モル%を上回ると充分なバリア性を得られなくなる。また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体において、ガスバリア性が著しく低下しないような公知の他の成分が共重合されていたり、ブレンドされていたりしても良い。また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体は組成が異なるエチレン−ビニルアルコール系共重合体をブレンドしているものであっても良い。エチレン−ビニルアルコール系共重合体の市販品としては、「エバール」((株)クラレ製)、「ソアノール」(日本合成化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0058】
芳香族ポリアミドとしては、例えば、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。好ましくは、ポリメタキシレンアジパミド(MXD−ナイロン)等の結晶性芳香族ポリアミドである。具体例としては、S6007、S6011(何れも三菱ガス化学(株)製)が例示される。
【0059】
また、シール層としては、シール性を有する樹脂フィルムであればよく、例えば、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)等のポリエチレン;CPP(無延伸ポリプロピレン)等のポリプロピレン;EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EAA(エチレン−アクリル酸共重合体)、EMAA(エチレン−メタクリル酸共重合体)、EMA(エチレン−メチルアクリレート共重合体)、EEA(エチレン−エチルアクリレート共重合体)、EMMA(エチレン−メチルメタアクリレート共重合体)、アイオノマー等のポリオレフィンによって構成される層を採用することができる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0060】
シール層を形成する方法としては、ラミネート法を採用することができ、ドライラミネート法や押出ラミネート法等を例示できる。ドライラミネート法は本発明の多層延伸フィルムに接着剤を塗布し、接着剤上にシール層のフィルムをラミネートして、多層延伸フィルムとシール層を積層させる方法である。また、押出ラミネート法は、シール層を構成する前記樹脂を押出機から溶出させ、本発明の多層延伸フィルム上にシール層として積層する方法や、本発明の多層延伸フィルムとシール層のフィルムの間に押出機からポリエチレン等の樹脂を溶出させ、多層延伸フィルムとシール層をラミネートして積層させる方法である。押出ラミネート法でシール層を積層する場合、本発明の多層延伸フィルムには事前にアンカーコート処理を施しておくことが好ましい。
【0061】
以上のような層構成を有する本発明の多層延伸フィルムの総膜厚は、用途にあわせて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常10〜50μm程度、好ましくは12〜25μm程度である。
【0062】
また、各層の膜厚は、通常、(A)層は1〜20μm程度、好ましくは2〜15μm程度である。(A)層の厚みが1μm以上であることによって、寸法安定性、耐熱性等の優れた機能が本発明の多層延伸フィルムに付与され得る。また、20μm以下であることにより、耐屈曲性の優れたフィルムを得ることができる。なお、(A)層を複数形成する場合には、(A)層の厚みは、複数の(A)層の合計厚みである。
【0063】
(B)層の厚みは5〜49μm程度、好ましくは8〜23μm程度である。(B)層の厚みが5μm以上であることによって、耐屈曲性、耐衝撃性等の優れた機能が付与され、49μm以下であれば充分な衝撃強度を付与しつつ、製品コストを抑えることができる。なお、(B)層を複数形成する場合には、(B)層の厚みは、複数の(B)層の合計厚みである。
【0064】
さらに、(C)層の厚みは10〜200nm程度、好ましくは20〜150nm程度である。(C)層の厚みが10nm以上であることによって、ガスバリア性、防湿性、保香性を付与することができ、200nm以下であることによって、優れたガスバリア性、防湿性、保香性を付与しつつ、耐クラック性に優れた蒸着層を得ることができる。
【0065】
なお、接着層を設ける場合には、接着層の厚みは0.5〜5μm程度、好ましくは0.5〜2.5μm程度である。接着層の厚みが0.5μm以上であれば膜厚のコントロールがしやすく、5μm以下であれば充分な接着強度を付与しつつ、生産コストを抑えることができる。
【0066】
本発明の多層延伸フィルムの好ましい態様を以下に例示する。
【0067】
例1.(A)層が、PETからなり(膜厚2〜15μm);(B)層が、ナイロン−6及びアモルファスナイロンからなり、ナイロン−6の含有量が85〜97重量%、アモルファスナイロンの含有量が3〜15重量%(膜厚8〜23μm)であり;(C)層が、酸化ケイ素からなり(膜厚20〜150nm);(A)層、(B)層、(C)層の順に積層されている。
【0068】
例2.(A)層が、PETからなり(膜厚2〜15μm);(B)層が、ナイロン−6及びアモルファスナイロンからなり、ナイロン−6の含有量が85〜97重量%、アモルファスナイロンの含有量が3〜15重量%(膜厚5〜20μm)である(B−1)層と、MXD−ナイロン及びナイロン−6からなり、MXD−ナイロンの含有量が50〜98重量%、ナイロン−6の含有量が2〜50重量%(膜厚1〜10μm)である(B−2)層とからなり;(C)層が、酸化ケイ素からなり(膜厚20〜150nm);(A)層、(B−1)層、(B−2)層、(C)層の順に積層されている。
【0069】
2.製造方法
本発明の多層延伸フィルムは、上記の層構成となるように各層を二軸延伸によって積層する。本発明の多層延伸フィルムの製造方法は、例えば、各層の樹脂を200℃〜300℃の温度で押出し、各層の順になるように、Tダイスより冷却水が循環する20℃〜40℃のチルロール上に共押出せしめ、フラット状の多層フィルムを得る。得られたフィルムは、例えば50〜100℃のロール延伸機により2〜4倍に縦延伸し、更に90〜150℃の雰囲気のテンター延伸機により3〜5倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより100〜240℃雰囲気中で熱処理して得ることができる。本発明の多層延伸フィルムは、同時二軸延伸、逐次二軸延伸をしても良く、得られた多層延伸フィルムは、必要ならばその両表面又は片表面にコロナ放電処理を施すこともできる。
【0070】
コロナ放電処理としては、例えば、接地された金属ロールと、それに数ミリの間隔で置かれたナイフ状の電極の間に数千ボルトの高電圧をかけてコロナ放電を発生させる方法等が挙げられる。この放電中の電極とロールとの間を高速でフィルムを通過させる。この時にフィルムの表面はコロナ放電処理され、接着剤、インク、塗料などに対する親和性が向上する。ここで、放電電流を制御することにより処理の程度が設定できる。コロナ放電処理後の表面のぬれ張力は、JIS K 6768の方法に従い測定した値が46mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上である。
【0071】
3.本発明の多層延伸フィルムの特徴
本発明の多層延伸フィルムは、優れた寸法安定性及び耐屈曲性を有しており、包装用フィルムとして好適に用いられる。
【0072】
[酸素透過度]
本発明の多層延伸フィルムは、乾燥及び湿潤時における酸素透過を抑制できる。具体的には、20℃×65%RH及び20℃×90%RHの条件下でJIS K 7126に準拠して測定した酸素透過度が、それぞれ10ml/m・day・MPa以下及び20ml/m・day・MPa以下であるという特徴を有している。酸素透過度の評価は、試験例1に記載の通りである。
【0073】
[屈曲後の酸素透過度]
本発明の多層延伸フィルムは、屈曲後の酸素透過度に優れている。具体的には、常温(20℃)×10回のゲルボフレックス試験後の、20℃×65%RHの条件下でJIS K 7126に準拠して測定した酸素透過度が80ml/m・day・MPa以下であるという特徴を有している。屈曲評価は、試験例1に記載の通りである。
【0074】
本発明の多層延伸フィルムは、上記の特徴を有しているため、包装用フィルムとして好適に用いられる。本発明の多層延伸フィルムを包装用フィルムとする場合、該フィルムの(C)層側に、シール層をラミネートして、包装用フィルムを製造する。これを、最外層を外側に向けて袋状にして、シール層面同士をヒートシールして袋状に加工して包装用袋を製造する。ヒートシールする方法は、公知の方法を採用することができる。
【0075】
得られた包装用袋に内容物を充填して包装物を得る。包装する内容物の種類に限定は無いが、特に、スープ、蒟蒻、漬物等の水物系の食品や、餅、ウィンナー、調味料等の重量のある食品、詰め替え用のシャンプー、リンス、ボディソープ、洗剤などの重量のある液体を包装する場合や米、氷等の袋の容積が大きいものの包装、醤油、酢などの臭気のきついものに、本発明の効果が顕著に発揮される。包装用袋の形態としては、例えば、3方シール形、封筒形、カゼット形、平底形等の袋状形態、スタンディングパウチ、スパウトパウチ、詰替えパウチ等が例示される。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
(A)層には、ポリエチレンテレフタレート「ベルペット−EFG6C」((株)ベルポリエステルプロダクツ製)を用いた。また、(B)層には、脂肪族ポリアミド ナイロン−6「UBEナイロン−1022B」(宇部興産(株)製)90重量%及びアモルファスナイロン「シーラーPA」(三井・デュポンポリケミカル(株)製)10重量%を配合した樹脂を用いた。
【0078】
2台の押出機を用い、(A)層の樹脂を280℃、(B)層の樹脂を260℃の温度でそれぞれ溶融させ、(A)層/(B)層の順になるように、280℃のTダイスより冷却水が循環する30℃のチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の2層シートを得た。この2層シートを、65℃のロール延伸機により3.0倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmの2層フィルムを得た。各層の厚みは、(A)層が3μm、(B)層が12μmであった。
【0079】
得られたフィルムの(B)層側に、真空蒸着装置にて1×10−4Torrの真空下、酸化ケイ素からなる(C)層を厚さ60nmで形成し、本発明の多層延伸フィルムを得た。
【0080】
[実施例2]
得られた2層シートの(B)層側ではなく、(A)層側に酸化ケイ素からなる(C)層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、本発明の多層延伸フィルムを得た。
【0081】
[実施例3]
(A)層には、ポリエチレンテレフタレート「ベルペット−EFG6C」((株)ベルポリエステルプロダクツ製)を用いた。また、(B)層として、脂肪族ポリアミド ナイロン−6「UBEナイロン−1022B」(宇部興産(株)製)90重量%及びアモルファスナイロン「シーラーPA」(三井・デュポンポリケミカル(株)製)10重量%を配合した樹脂からなる(B−1)層と、芳香族ポリアミド MXDナイロン「S6007」(三菱ガス化学(株)製)70重量%及び脂肪族ポリアミド ナイロン−6「UBEナイロン−1022B」(宇部興産(株)製)30重量%を配合した樹脂からなる(B−2)層を用いた。
【0082】
各層を構成する樹脂を、(A)層/(B−1)層/(B−2)層の順になるように積層し、実施例1と同様にして厚さ15μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、(A)層が3μm、(B−1)層が10μm、(B−2)層が2μmであった。
【0083】
得られたフィルムの(B−2)層側に、真空蒸着装置にて1×10−4Torrの真空下、酸化ケイ素からなる(C)層を厚さ60nmで形成し、本発明の多層延伸フィルムを得た。
【0084】
[実施例4]
さらに、(D)層として、変性ポリオレフィン「アドマー SF731」(三井化学(株)製)を用い、(A)層/(D)層/(B)層の順になるように積層し、実施例1と同様にして厚さ15μmの3層フィルムを得た。この際、(D)層の押出温度は220℃とした。各層の厚みは、(A)層が3μm、(D)層が1μm、(B)層が11μmであった。
【0085】
得られたフィルムの(B)層側に、真空蒸着装置にて1×10−4Torrの真空下、酸化ケイ素からなる(C)層を厚さ60nmで形成し、本発明の多層延伸フィルムを得た。
【0086】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート「ベルペット−EFG6C」((株)ベルポリエステルプロダクツ製)を用いて、(A)層からなる単層延伸フィルムを得た。得られたフィルムに、実施例1と同様にして酸化ケイ素からなる(C)層を設け、比較用の延伸フィルムを得た。
【0087】
[比較例2]
脂肪族ポリアミド ナイロン−6「UBEナイロン−1022B」(宇部興産(株)製)90重量%及びアモルファスナイロン「シーラーPA」(三井・デュポンポリケミカル(株)製)10重量%を配合した樹脂を用いて、(B)層からなる単層延伸フィルムを得た。得られたフィルムに、実施例1と同様にして酸化ケイ素からなる(C)層を設け、比較用の延伸フィルムを得た。
【0088】
[比較例3]
(B)層に、脂肪族ポリアミド ナイロン−6「UBEナイロン−1022B」(宇部興産(株)製)のみを用いた以外は実施例1と同様に、延伸フィルムを作製しようとしたが、延伸時の破れが多発し、多層延伸フィルムを得ることができなかった。
【0089】
[比較例4]
(B)層に、脂肪族ポリアミド ナイロン−6「UBEナイロン−1022B」(宇部興産(株)製)60重量%及びアモルファスナイロン「シーラーPA」(三井・デュポンポリケミカル(株)製)40重量%を配合した樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較用の延伸フィルムを得た。
【0090】
実施例1〜4及び比較例1〜4の各層の厚みを表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
[試験例1]
実施例1〜4及び比較例1〜4において得られた多層延伸フィルムについて、乾燥時の酸素透過度、湿潤時の酸素透過度及び屈曲後の酸素透過度について評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
[酸素透過度]
酸素透過度(ガスバリア性)の測定は、MODERN CONTROL社製のOX−TRAN 200型を使用し、JIS K 7126に準拠して測定した。なお、20℃、65%RHにおける酸素透過度を乾燥時の酸素透過度、20℃、90%RHにおける酸素透過度を湿潤時の酸素透過度としてそれぞれ測定した。
【0094】
[屈曲試験]
屈曲試験は、理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて行った。その方法は、折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋した多層延伸フィルムをゲルボフレックステスターに装着し、捻り角度440°で15cmの屈曲直線運動を常温(20℃)、65%RH条件下で10回繰り返し行った。
【0095】
その後の酸素透過度について、上記と同様に、MODERN CONTROL社製のOX−TRAN 200型を使用し、JIS K 7126に準拠して、20℃、65%RHの条件下で測定した。
【0096】
【表2】

【0097】
表2に示されるように、実施例1〜4は、いずれも乾燥時の酸素透過度、湿潤時の酸素透過度及び屈曲後の酸素透過度に優れる結果となった。
【0098】
これに対し、(A)層を設けない比較例1の多層延伸フィルムは、湿潤時の酸素透過度が劣っていた。また、(B)層を設けない比較例2、(B)層における芳香族ポリアミドの量が多い比較例4では、屈曲後の酸素透過度が劣っていた。なお、(B)層に芳香族ポリアミドを含有しない比較例3では、延伸フィルムを作製できなかった。
【0099】
以上の結果より、(A)層及び(B)層を有する二軸延伸多層フィルムの少なくとも片面に(C)層を設けてなるバリア性多層延伸フィルムにおいて、(A)層が、結晶性ポリエステル、(B)層が、脂肪族ポリアミドを70〜99重量%、芳香族ポリアミドを1〜30重量%、(C)層が無機物を含有する多層延伸フィルムは、乾燥時の酸素透過度、湿潤時の酸素透過度及び屈曲後の酸素透過度に優れることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂層(A層)及びポリアミド系樹脂層(B層)の少なくとも2層を有する多層積層体を二軸延伸することにより得られる二軸延伸多層フィルムの少なくとも片面に蒸着層(C層)を設けてなるバリア性多層延伸フィルムであって、
(A)層が、結晶性ポリエステルを含有し、
(B)層が、脂肪族ポリアミドを70〜99重量%、芳香族ポリアミドを1〜30重量%含有し、
(C)層が無機物を含有する
ことを特徴とする、バリア性多層延伸フィルム。
【請求項2】
(A)層の厚みが1〜20μm、(B)層の厚みが5〜49μmであり、二軸延伸多層フィルムの総膜厚が10〜50μmである、請求項1に記載のバリア性多層延伸フィルム。
【請求項3】
(A)層に含まれる結晶性ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びスルホイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のバリア性多層延伸フィルム。
【請求項4】
(B)層に含まれる脂肪族ポリアミド系樹脂が、ナイロン−6及びナイロン−6とナイロン−6,6との共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載のバリア性多層延伸フィルム。
【請求項5】
(B)層に含まれる芳香族ポリアミド系樹脂が、ポリメタキシレンアジパミド又はアモルファスナイロンである、請求項1〜4のいずれかに記載のバリア性多層延伸フィルム。
【請求項6】
(C)層に含まれる無機物が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及びアルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載のバリア性多層延伸フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のバリア性多層延伸フィルムの蒸着層上に、シール層をラミネートしてなる包装用フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の包装用フィルムを袋状にして、シール層面同士をヒートシールして得られる包装用袋。
【請求項9】
請求項8に記載の包装用袋に内容物を充填してなる包装物。

【公開番号】特開2010−131992(P2010−131992A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253680(P2009−253680)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】