説明

バリケード用クランプ

【課題】簡素な構造でポールを確実に保持することができ、しかも、着脱作業を容易に行うことができるバリケード用クランプを提供する。
【解決手段】支承部材1に、支承方向に一対のステー部11を並列して立設し、各ステー部11の先端部近傍にはヒンジ軸受11aを配設する。ステー部11の間には、ポールPを差し入れ可能な挿入部12を形成し、ヒンジ軸受11aにはそれぞれグリップアーム2を対称的にヒンジ連結し、グリップアーム2の胴部には枢支部を形成する。また、内側面には係止凹部22を形成し、係止凹部22同士を揺動近接させてポールPを挟持可能にするとともに、バー状のストップレバー3の一端部を一方のグリップアーム2の上端部23に揺動自在に保持し、ストップレバー3の他端部を他方のグリップアーム2の上端部23に係合可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場などに設置する移動用バリケードに使用するクランプの改良、更に詳しくは、簡素な構造でポールを確実に保持することができ、しかも、着脱作業を容易に行うことができるバリケード用クランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、道路工事や建設工事の現場においては、危険防止や部外者の侵入を阻止するために、立入り通行を阻止できる移動式のバリケードを臨時的に設置して立入り禁止区域を明示するという措置が採られる。
【0003】
ところで、この種のバリケードは一寸した衝撃で倒れては困るので、一般的には鋼材を溶接して形成されるハードル形のフレームが使用されている。それゆえに従来の工事用バリケードは、重たくて嵩張っているために運搬や格納・保管するのに大変不便であった。
【0004】
このような事情により、ポールなどの横架部材を一対の支持脚に組立・分解ができるような現場組立方式のバリケードが提案されており、このような従来のバリケードにおいては支持脚とポールとの固定の際に、別途クランプなどの連結部材を配設していた。
【0005】
しかしながら、このような連結部材はポールの着脱の度に、止着ボルトを締めたり緩めたりせねばならず非常に面倒であり、また、繰り返して使用しているうちにこの連結部材が故障してしまい、ポールを固定できなくなってバリケード全体が機能しなくなってしまうという不都合があった。
【0006】
そこで、本件出願人は、嘗て、バリケードの支持脚にクランプを一体に成形したバリケード用支持脚を発明し、登録を受けている(特許文献1参照)。
【0007】
かかるバリケードは、ポールを固定するためにクランプにおいて止着ボルトを締めたり緩めたりする必要がなく使い勝手が良いという点で優れた効果を有しているけれども、ポールを着脱する作業においてポールが落下するおそれがあり、作業員にとって取り扱いに注意を払う必要があり面倒であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3585850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の工事用バリケードに上記のような不都合があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、簡素な構造でポールを確実に保持することができ、しかも、着脱作業を容易に行うことができるバリケード用クランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0011】
即ち、本発明は、支持脚AにポールPを固定するためのバリケード用のクランプであって、支承部材1には支承方向に一対のステー部11・11を並列して立設して、かつ、前記各ステー部11の先端部近傍にはヒンジ軸受11aを配設する一方、これらステー部11・11の間には、前記ポールPを差し入れ可能な挿入部12を形成し、
これらヒンジ軸受11a・11aにはそれぞれグリップアーム2・2を対称的にヒンジ連結して、このグリップアーム2の胴部には枢支部21を形成して、かつ、内側面には係止凹部22を形成して、これら一対の係止凹部22・22同士を揺動近接させて前記ポールPを挟持可能にするとともに、
バー状のストップレバー3の一端部を一方のグリップアーム2の上端部23に揺動自在に保持して、かつ、当該ストップレバー3の他端部を他方のグリップアーム2の上端部23に係合可能にして、
グリップアーム2の上端部23・23を離間方向へ拡開することによって、挿入部12にポールPを挿入可能にする一方、係止凹部22・22の内側にポールPを挟持して両方の上端部23・23同士にストップレバー3を掛架して固定することによって上端部23・23の開閉動を制止する一方、
上端部23を離間方向へ拡開したとき、前記枢支部21を支点として下端部24をポールPを持ち上げて当該ポールPの取り外しを容易にするという技術的手段を採用したことによって、バリケード用クランプを完成させた。
【0012】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ストップレバー3は横長の枠状に形成されており、一端を一方のステー部11の外側面に保持して、かつ、このストップレバー3の他端を他方のステー部11の外側面に係合可能にするという技術的手段を採用することができる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、グリップアーム2の係止凹部22に滑り止め材22aを固定可能にするという技術的手段を採用することができる。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、一対のグリップアーム2・2を略同一の対称形状に作製するという技術的手段を採用することができる。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ヒンジ軸受11aおよび枢支部21に棒状の軸部材を貫通してヒンジ連結するという技術的手段を採用することができる。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、支承部材1の底面にバリケード用支持脚Aに固定可能な支持機構を備えているという技術的手段を採用することができる。
【0017】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、支承部材1およびグリップアーム2をプラスチック材料の射出成形により作製するという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にあっては、支持脚にポールを固定するためのバリケード用のクランプであって、支承部材には一対のステー部を並列して立設して、かつ、各ステー部の先端部近傍にはヒンジ軸受を配設する一方、これらステー部の間には、前記ポールを差し入れ可能な挿入部を形成し、これらヒンジ軸受にはそれぞれグリップアームを対称的にヒンジ連結して、このグリップアームの胴部には枢支部を形成して、かつ、内側面には係止凹部を形成し、これら一対の係止凹部同士を揺動近接させて前記ポールを挟持可能にするとともに、
バー状のストップレバーの一端部を一方のグリップアームの上端部に揺動自在に保持して、かつ、当該ストップレバーの他端部を他方のグリップアームの上端部に係合可能にしたことによって、
グリップアームの上端部を離間方向へ拡開することによって、挿入部にポールを挿入可能にする一方、係止凹部の内側にポールを挟持して両方の上端部同士にストップレバーを掛架して固定することによって上端部の開閉動を制止する一方、
上端部を離間方向へ拡開したとき、前記枢支部を支点として下端部がポールを持ち上げて当該ポールの取り外しを容易にすることができる。
【0019】
したがって、本発明のクランプによれば、簡素な構造でポールを確実に保持することができ、しかも、テコの作用により下端部の押し上げることによりポールを掴み上げて取り外しやすくすることができて、着脱作業を容易に行うことができることから、産業上における利用価値は頗る高いものがあると云える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態のクランプを表す全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態のクランプの支承部材を表す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態のクランプの使用状態を表す説明正面図である。
【図4】本発明の実施形態のクランプの使用状態を表す説明正面図である。
【図5】本発明の実施形態のクランプの使用状態を表す説明正面図である。
【図6】本発明の実施形態のクランプの使用状態を表す全体斜視図である。
【図7】本発明の実施形態のクランプのグリップアーム変形例を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると次のとおりである。
【0022】
本発明の実施形態を図1から図7に基いて説明する。図1中、符号1で指示するものは支承部材であり、また、符号2で指示するものはグリップアームであり、更にまた、符号3で指示するものはストップレバーである。本実施形態では、支承部材1およびグリップアーム2、ストップレバー3をプラスチック材料(例えばポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂)を射出成形により作製することができる。
【0023】
しかして、本発明は、支持脚AにポールPを固定するためのバリケード用のクランプであって、構成するにあっては、まず、前記支承部材1には一対のステー部11・11を並列して立設して、かつ、各ステー部11の先端部近傍にはヒンジ軸受11aを配設する一方、これらステー部11・11の間には、前記ポールPを差し入れ可能な挿入部12を形成する。本実施形態では、2組のステー部11・11を上向きに突成する(図2参照)。
【0024】
次に、これらヒンジ軸受11a・11aにはそれぞれグリップアーム2・2を対称的にヒンジ連結する。本実施形態では、ヒンジ軸受11aおよび枢支部21に棒状の軸部材を貫通させてヒンジ連結することにより、強固に連結することができる。
【0025】
このグリップアーム2の胴部には開孔した枢支部21を形成して、かつ、内側面には略円弧状の係止凹部22を形成する。そして、これら一対の係止凹部22・22同士を揺動近接させて、この間にポールPを挟持することができる。
【0026】
更に、バー状のストップレバー3の一端部を一方のグリップアーム2の上端部23に揺動自在に保持して、かつ、当該ストップレバー3の他端部を他方のグリップアーム2の上端部23に係合する。
【0027】
本実施形態では、ストップレバー3を横長の枠状に形成して、この枠体の内側にステー部11が入るようにして、一端を一方のステー部11の外側面に嵌合状態に保持して、かつ、このストップレバー3の他端を他方のステー部11の外側面に押圧させるように係合することができる。
【0028】
次いで、図3に示すように、グリップアーム2の上端部23・23を離間方向へ拡開することによって、挿入部12にポールPを上から差し入れて挿入することができる。
【0029】
そして、図4に示すように、係止凹部22・22の内側にポールPを挟持して両方の上端部23・23同士にストップレバー3を掛架して固定することによって上端部23・23の開閉動を制止して止着することができる。
【0030】
然る後、ポールPを取り外す場合にあっては、上端部23を離間方向へ拡開させたとき、前記枢支部21を支点としてテコの作用により下端部24がポールPを持ち上げて当該ポールPを底面から持ち上げて取り外しを容易にすることができる(図5参照)。
【0031】
本実施形態では、支承部材1の底面にバリケード用支持脚Aに固定可能な支持機構を適宜備えており、例えば、底面からボルトを鉛直方向に貫通させて螺着するものや、バリケードの一部に巻き付けて固定するものなどがある。
【0032】
以上のように構成されるクランプによって、一対の支持脚A・Aがポールの端部をそれぞれ挟持することによってポールを横架することができ、図6に示すようなバリケードを完成させることができる。
【0033】
本発明は概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施例に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、支承部材1やグリップアーム2はアルミなどの軽金属でキャスティング成形にしても良く、また、支承部材1のステー部11は、上向きのものに限らず、水平方向に開口しているものや、一対の片方の長さが違うようなレイアウトにしても、グリップアーム2により挟持できるようにすることができる。
【0034】
また、図7に示すように、グリップアーム2の係止凹部22に滑り止め材22aを固定可能することができ、摩擦抵抗力を増大させて、ポールがズレたりして抜け落ちることを防止し、より強固に挟持することができる。具体的には、係止凹部22にスリットを設けると共に、このスリット部分にゴム等のタック性あるいは弾性を有する材料などで作製した滑り止め材22aを嵌着する。
【0035】
更にまた、図示しないが、グリップアーム2に滑り止め材22aを使用する場合、金属製プレートなどを張り付けても良く、凹部カーブに沿う形状であって、エッジ部分には歯形状の凹凸を形成した金属製プレートなどを採用することができる。
【0036】
更にまた、一対のグリップアーム2・2を略同一の対称形状に作製することもできる。このように同一形状に作製することによって、グリップアーム2を成形するための金型が1つで良いので、大幅に製造コストをダウンさせることもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0037】
1 支承部材
11 ステー部
11a ヒンジ軸受
12 挿入部
2 グリップアーム
21 枢支部
22 係止凹部
22a 滑り止め材
23 上端部
24 下端部
3 ストップレバー
A 支持脚
P ポール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持脚(A)にポール(P)を固定するためのバリケード用のクランプであって、
支承部材(1)には支承方向に一対のステー部(11・11)が並列して立設されており、かつ、前記各ステー部(11)の先端部近傍にはヒンジ軸受(11a)が配設されている一方、これらステー部(11・11)の間には、前記ポール(P)を差し入れ可能な挿入部(12)が形成されており、
これらヒンジ軸受(11a・11a)にはそれぞれグリップアーム(2・2)が対称的にヒンジ連結されており、このグリップアーム(2)の胴部には枢支部(21)が形成され、かつ、内側面には係止凹部(22)が形成されており、これら一対の係止凹部(22・22)同士が揺動近接して前記ポール(P)を挟持可能であるとともに、
バー状のストップレバー(3)の一端部が一方のグリップアーム(2)の上端部(23)に揺動自在に保持されており、かつ、当該ストップレバー(3)の他端部が他方のグリップアーム(2)の上端部(23)に係合可能であって、
グリップアーム(2)の上端部(23・23)を離間方向へ拡開することによって、挿入部(12)にポール(P)が挿入可能である一方、係止凹部(22・22)の内側にポール(P)を挟持して両方の上端部(23・23)同士にストップレバー(3)を掛架して固定することによって上端部(23・23)の開閉動を制止する一方、
上端部(23)を離間方向へ拡開したとき、前記枢支部(21)を支点として下端部(24)がポール(P)を持ち上げて当該ポール(P)の取り外しを容易にしたことを特徴とするバリケード用クランプ。
【請求項2】
ストップレバー(3)は横長の枠状に形成されており、一端が一方のステー部(11)の外側面に保持されており、かつ、このストップレバー(3)の他端が他方のステー部(11)の外側面に係合可能であることを特徴とする請求項1記載のバリケード用クランプ。
【請求項3】
グリップアーム(2)の係止凹部(22)に滑り止め材(22a)が固定可能であることを特徴とする請求項1または2記載のバリケード用支持脚。
【請求項4】
一対のグリップアーム(2・2)が略同一の対称形状に作製されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の記載のバリケード用クランプ。
【請求項5】
ヒンジ軸受(11a)および枢支部(21)に棒状の軸部材が貫通してヒンジ連結されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のバリケード用クランプ。
【請求項6】
支承部材(1)の底面にバリケード用支持脚(A)に固定可能な支持機構を備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のバリケード用クランプ。
【請求項7】
支承部材(1)およびグリップアーム(2)がプラスチック材料の射出成形により作製されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載のバリケード用クランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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