説明

バリ取り装置

【課題】従来のバリ取り装置は、プーリー、ブレーキモーター、減速機、駆動プーリー、ベルト、テンション機構やそれらを制御するための制御装置が必要であったので、大型化し多額の製造コストを必要であった。
【解決手段】本発明は、小型機械部品2を収容する箱体3と、スライドレール13と、スライドレール13上を箱体3とともに移動するスライドブロック14と、ピストンロッド6を移動させることにより箱体3を前進移動または後退移動させるエアシリンダ7と、エアシリンダ7と箱体3の間に設けられた後退停止コイルバネ9と、箱体3の後退停止コイルバネ9が設けられた側と反対側に設けられた前進停止コイルバネ8とを有し、箱体3は前進後退移動を繰り返し行い、箱体3の前進移動中に前進停止コイルバネ8のバネ力により箱体3の前進移動を停止させ、箱体3の後退移動中には後退停止コイルバネ9のバネ力により箱体3の後退移動を停止させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型機械部品の突出したバリを除去するバリ取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の小型機械部品の突出したバリを除去するバリ取り装置が知られている。
【0003】
この種のバリ取り装置として、バレル内に製品を入れ、バレルを回転して、内部の製品相互のぶつかり合いと、製品とバレルのぶつかり合いにより、製品の突出したバリを除去するものがあった(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−55433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のバリ取り装置は、バレルを回転するためのモーターとその制御装置が必要であり、また、蓋付きバレルは、一般市販品にはなく、特注若しくは市販品の大幅な改造が必要であり、さらには、バレルが回転可能な高さへの回転軸とモーターを設置するための大きな枠組みが必要なために、製作費の高いものとなる問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、安価でかつ、少なくとも従来と同様の
小型機械部品のバリ取り機能を持つバリ取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様に係るものは、小型機械部品の突出したバリを除去するバリ取り装置であって、小型機械部品を収容する箱体と、1本または平行に配置された複数本のスライドレールと、箱体の下部に設けられ、スライドレール上をスライドレールに接しながら箱体とともに移動するスライドブロックと、箱体と直接的または間接的に結合したピストンロッドを移動させ、該移動により箱体を前進移動または後退移動させるエアシリンダと、該エアシリンダと箱体の間に設けられた後退停止コイルバネと、箱体の後退停止コイルバネが設けられた側と反対側に設けられた前進停止コイルバネと、を有し、箱体のエアシリンダによる前進移動および後退移動を繰り返し行い、箱体の前進移動中に前進停止コイルバネのバネ力により箱体の前進移動を停止させ、箱体の後退移動中には後退停止コイルバネのバネ力により箱体の後退移動を停止させるものである。
【0008】
本発明によれば、箱体はエアシリンダによる前進移動および後退移動を繰り返し行い、箱体の前進移動中に前進停止コイルバネのバネ力により箱体の前進移動が急停止し、箱体の後退移動中には後退停止コイルバネのバネ力により箱体の後退移動が急停止するので、前進と後退の急停止した際に、小型機械部品は慣性により相互にぶつかり合い、かつ、小型機械部品と箱体の内面も同様にぶつかり合うことによって、突出したバリを除去することができる。さらに、本発明による小型機械部品のバリ取り装置は、モーターに比べて小型で安価なエアシリンダを駆動装置として使用し、また、一般市販品であるエアシリンダ、コイルバネ、箱体、及びスライドレールとスライドブロックからなるスライドガイドを使用し、これらの一般市販品と一般市販材料に簡単な加工を加えたものを組み合わせることにより、安価で、少なくとも従来と同等の機能をもつバリ取り装置とすることができる。また、仮に、前進停止コイルバネと後退停止コイルバネを設けずに最大限までピストンロッドを移動させた場合には、ピストンロッドの前進端及び後退端では、エアシリンダ内のピストンとエアシリンダの側面枠が強く衝突し、エアシリンダの側面枠はピストンから大きな衝撃を受けることになる。エアシリンダは通常この衝撃を緩和するための簡易的なクッションを備えているが、ピストンロッドにより移動する箱体などは重量物であるので、ピストンロッドの前進端及び後退端の停止時での衝撃が大きくなり、エアシリンダの破損、短寿命化の原因となる。また、このような急激な停止は、ピストンロッドにより移動する箱体などの移動部へも衝撃を与え、それらの移動部の寿命を低下させることになる。本発明では、箱体の前進移動中に前進停止コイルバネのバネ力により箱体の前進移動を停止させ、箱体の後退移動中には後退停止コイルバネのバネ力により箱体の後退移動を停止させているので、バネによって大きな衝撃を生じさせることがなく、エアシリンダやピストンロッドにより移動する箱体などの移動部の長寿命化を図ることができる。
【0009】
本発明のうち第2の態様に係るものは、第1の態様に係るバリ取り装置あって、箱体の下部で箱体を支持する四角枠を有し、四角枠の下部はスライドブロックの上部と結合し、四角枠の上部は箱体の下部と結合し、四角枠の測部はピストンロッドと結合することを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、箱体の下部で箱体を支持する四角枠を設けているので、スライドブロック、箱体、ピストンロッドとの結合が容易にできる。また、箱体は四角枠とのみ結合しているので、取り付けや取り外しが簡単にでき、バリを取る小型機械部品の前工程からの移動と次工程への移動が、箱体に収納した状態で容易にできる利点もある。
【0011】
本発明のうち第3の態様に係るものは、第1または第2の態様に係るバリ取り装置あって、エアシリンダへの空気の注入または排出によりピストンロッドを外側に押し出している時間、およびピストンロッドを引き込んでいる時間をそれぞれ設定する時間設定手段を、有し、エアシリンダによる箱体の前進移動および後退移動の繰り返しにおいて、時間設定手段により設定された時間、エアシリンダへの空気の注入または排出によりピストンロッドを外側に押し出しまたはピストンロッドを引き込むものである。
【0012】
本発明によれば、エアシリンダへの空気の注入または排出によりピストンロッドを外側に押し出している時間、およびピストンロッドを引き込んでいる時間をそれぞれ設定する時間設定手段を設けているので、エアシリンダへの空気の注入または排出により箱体を前進移動させる時間が終了する前に、前進停止コイルバネのバネ力により箱体の前進移動を停止させることができるように時間を設定でき、また、エアシリンダへの空気の注入または排出により箱体を後退移動させる時間が終了する前に、後退停止コイルバネのバネ力により箱体の後退移動を停止させることができるように時間を設定できる。そして、その設定した時間により自動的に前進移動および後退移動を繰り返し行わせることができる。加えて、ピストンロッドを外側に押し出している時間、およびピストンロッドを引き込んでいる時間をそれぞれ設定する時間設定手段を設けているので、ピストンロッドを外側に押し出す速度と引き込む速度が異なるエアシリンダを使用することも可能になる。
【0013】
本発明のうち第4の態様に係るものは、第1〜第3のいずれかの態様に係るバリ取り装置あって、ピストンロッドが前進し後退する回数を設定する回数設定手段を、有し、回数設定手段により設定された回数に達することにより、ピストンロッドの移動を停止させることを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、ピストンロッドが前進し後退する回数を設定する回数設定手段を設けているので、回数設定手段により設定された回数に達すれば、前進移動および後退移動を自動的に停止させることができ、省力化を図ることができる。また、小型機械部品のバリを除去するためのピストンロッドを前進および後退させる回数は小型機械部品により異なるが、それぞれの小型機械部品のバリを除去するために必要な回数を回数設定手段により設定することができる。これにより、バリを除去するのにピストンロッドを多く前進し後退させる必要がある小型機械部品であっても、ピストンロッドが前進し後退する回数を多く設定することにより、確実にバリを除去することができ、少ない前進と後退の回数でバリの除去できる小型機械部品に対しては、不必要に多くの前進と後退を繰り返すことが避けられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバリ取り装置によれば、箱体の前進移動中に前進停止コイルバネのバネ力により箱体の前進移動が急停止し、箱体の後退移動中には後退停止コイルバネのバネ力により箱体の後退移動が急停止するので、前進と後退の急停止した際に、小型機械部品は慣性により相互にぶつかり合い、かつ、小型機械部品と箱体の内面も同様にぶつかり合うことによって、突出したバリを除去することができる。また、モーターに比べて小型で安価なエアシリンダを駆動装置として使用し、一般市販品であるエアシリンダ、コイルバネ、箱体、及びスライドレールとスライドブロックからなるスライドガイドを使用し、これらの一般市販品と一般市販材料に簡単な加工を加えたものを組み合わせることにより、安価で、少なくとも従来と同等の機能をもつバリ取り装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態におけるバリ取り装置の上面図である。
【図2】図1のA−A断面を示す図である。
【図3】図1のB−B断面を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるバリ取り装置のエアシリンダを説明する図である。
【図5】エアシリンダの制御信号を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるバリ取り工法のブロック線図である。
【図7】(a) 箱体の前進移動中に、前進停止コイルバネのバネ力により箱体の前進移動を停止させた状態を示す図である。 (b) 箱体の後退移動中に、後退停止コイルバネのバネ力により箱体の後退移動を停止させた状態を示す図である。
【図8】本発明の変形例1におけるバリ取り装置の上面図である。
【図9】図8のC−C断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかるバリ取り装置について図面を参照にしながら説明する。ここで、
図1は本発明の一実施形態におけるバリ取り装置の上面図であり、図2は図1のA−A断面を示す図であり、図3は図1のB−B断面を示す図である。ここで、図1の箱体3は、図を見やすくするために外形線のみを図示しており、図2のエアシリンダ7とその設置台15への固定金具16の内部構造は本発明と直接の係りがないので外形を図示している。また、図3のスライドレール13とスライドブロック14の内部構造についても本発明と直接の係りがないので外形を図示している。
【0018】
図1〜図3に示すように、バリ取り装置1は、小型機械部品2の突出したバリを除去するもので、箱体3と、箱体3が移動するように箱体3を案内するスライドガイド4と、箱体3とスライドガイド4の間に設けられた中空状の四角枠5と、ピストンロッド6を備えたエアシリンダ7と、前進停止コイルバネ8と、後退停止コイルバネ9とが備えられている。
【0019】
箱体3は、小型機械部品2を収容する箱体本体10と、箱体本体10の上部に取り付ける蓋11とを有している。そして、箱体本体10の中に小型機械部品2を収容した後に、箱体本体10の上部に蓋11が取り付けられる。箱体3は、一般に市販されているポリエチレン製のものを使用している。そして、箱体3の底面を、四角枠5の内側に差し込んで、箱体3と四角枠5とが固定されている。なお、本実施形態では、四角枠5を箱体3の底面に差し込んで固定しているが、クランプ(締め具)やビスなどを用いて、箱体3と四角枠5を固定してもよく、固定方法は限定されない。
【0020】
スライドガイド4は、平行に置かれた2本のスライドレール13と、スライドレール13上をスライドレール13に接しながら移動するスライドブロック14を備えている。金属ボールをスライドレールとスライドブロックの間に設け、スライドブロックがスライドレール上をスムーズにスライドできるようにしたスライドブロックとスライドレールのセットが、スライドガイドとして一般に市販されており、スライドガイド4はこれを使用している。なお、本実施形態では、スライドレール13は、2本のスライドレースからなるとしたが、これに限らず、1本のスライドレースからなるものでもよく、また平行に置かれた3本以上のスライドレールからスライドレール13を構成してもよい。箱体3は、四角枠5を介し、このスライドガイド4により支持されており、四角枠5は、鉄のアングル材を溶接加工して作られている。
【0021】
エアシリンダ7は、エアシリンダ7への空気の注入または排出によりピストンロッド6を外側に押し出したり、ピストンロッド6を引き込ませたりするものである。ピストンロッド6の先端は、四角枠5の側面に固定されている。このように、箱体3は、四角枠5を介し、ピストンロッド6と結合している。換言すると、ピストンロッド6は箱体3と間接的に結合している。このように、箱体3は四角枠5とのみ結合しているので、取り付けや取り外しが簡単にでき、バリを取る小型機械部品2の前工程からの移動と次工程への移動が箱体3に収納した状態でも容易にできる。なお、本実施形態では、ピストンロッド6を、四角枠5を介し箱体3と結合させたが、これに限らず、ピストンロッド6を、箱体3の側面に直接的に結合させてもよい。また、エアシリンダ7は、エアシリンダ7の付属部品である固定金具16により固定されている。
【0022】
後退停止コイルバネ9は、ピストンロッド6に取り付けられている。この後退停止コイルバネ9の一端は、ピストンロッド6の外周に溶接により固定された円形状の後退停止コイルバネ固定板17に取り付けられ、後退停止コイルバネ9の他端は、中心部にピストンロッド6を貫通させる貫通孔18が設けられた穴あき円板19に取り付けられている。このように、後退停止コイルバネ9に溶接により取り付けられた穴あき円板19は、ピストンロッド6上を移動可能である。穴あき円板19は、後退停止コイルバネ9が直接エアシリンダ7に繰り返し衝突すると、後退停止コイルバネ9の先端部がエアシリンダ7に損傷を与える可能性があるので、これを避けるために設けられたものであるが、必須のものではない。
【0023】
前進停止コイルバネ8の一端は、設置台15に取り付けられているストッパ20に溶接により固定され、前進停止コイルバネ8の他端は、円形形状の前進停止板39に溶接により取り付けられている。このストッパ20は、鉄のアングル材を材料として作られている。このように、前進停止板39は、前進停止コイルバネ8の伸縮に伴って移動することができる。
【0024】
なお、スライドレール13と設置台15、スライドブロック14と四角枠5、ピストンロッド6と四角枠5、設置台15と固定金具16、設置台15とストッパ20は、いずれもビスにより固定されているが、溶接により固定させてもよい。
【0025】
次に、図4を用いて、エアシリンダ7について具体的に説明する。ここで、図4は、本発明の一実施形態におけるバリ取り装置のエアシリンダを説明する図で、一般に市販されているものである。エアシリンダ7は、内部に円柱形状のピストン21を有し、ピストン21の外周は、ピストン枠22の内周面と接して摺動するものである。ピストン枠22の一端には、ロッドカバー23が内接固定され、ピストン枠22とロッドカバー23の間はパッキン24を用いて気密が確保されている。このロッドカバー23には、ピストンロッド6が貫通する貫通孔25が設けられる。ピストン枠22の他端には、シリンダカバー26が固定され、ピストン枠22とシリンダカバー26の間はパッキン27を用いて気密が確保されている。そして、駆動用電磁弁28を作動させて、空気供給ライン29を介し、エアシリンダ7の給排ポートA30、給排ポートB31を通じてシリンダ室A32、シリンダ室B33内に空気を注入または排出させることにより、ピストンロッド6を外側に押し出したりピストンロッド6を引き込ませたりする往復運動を行うことができる。なお、本実施形態では、図4に示すエアシリンダ7を用いたが、このエアシリンダ7の代わりに、空気を注入または排出するシリンダ室をシリンダ室A、Bのどちらか一方のみとし、他方のシリンダ室に替えて片持ちバネ設けたエアシリンダを用いてもよい。このようなシリンダも一般に市販されており、当該シリンダでは、空気を1つのシリンダ室に注入、排出することにより、空気圧とバネ力によりピストンロッド6が往復運動を行う。
【0026】
次に、本実施形態におけるバリ取り装置の動作、作用を図5〜図7を用いて説明する。ここで、図5はエアシリンダの制御信号を示す図であり、図6は本発明の一実施形態におけるバリ取り工法のブロック線図であり、図7(a)は箱体の前進移動中に、前進停止コイルバネのバネ力により箱体の前進移動が停止させた状態を示す図であり、図7(b)は箱体の後退移動中に、後退停止コイルバネのバネ力により箱体の後退移動を停止させた状態を示す図である。ここで、図7のエアシリンダ7とその設置台15への固定金具16の内部構造は本発明と直接の係りがないので外形を図示している。
【0027】
まず最初に、箱体3の蓋11を開けてバリを取る小型機械部品2を箱体3内に入れ、小型機械部品2が箱体3の中に入れられた後に蓋11を閉める。この場合、バリ取りの前工程から運んできたバリを取る小型機械部品2が入った箱体3を、四角枠5に差し込んで設置してもよい。
【0028】
次に、スタートボタン34を押すと、ツインタイマ36にスタート信号が入り、ツインタイマ36から、時間設定手段により設定した前進信号発信時間T1と後退信号発信時間T2の時間間隔で、ピストンロッド6の前進信号と後退信号が交互に発信される(図5参照)。この信号でエアシリンダ7の空気供給ライン29に設けられたエアシリンダ7に付属の駆動用電磁弁28を作動させることにより、前進信号発信時にはピストンロッド6を前進させ、後退信号発信時にはピストンロッド6を後退させる(図4参照)。前進信号発信時、前進信号が終了する前に、ピストンロッド6により移動する箱体3などの移動部は前進停止コイルバネ8により前進を停止し、その後、前進信号が終了して後退信号が発信されると後退を開始する。詳述すれば、前進信号発信時、ピストンロッド6の前進端に達する前に、四角枠5のピストンロッド6が固定された側面とは反対側の側面がストッパ20に設けた前進停止コイルバネ8に接触してバネ力により移動部が前進を停止、その後、前進信号が終了して後退信号が発信されると後退を開始する。また、前進信号発信時間T1と後退信号発信時間T2は、エアシリンダ7への空気の注入または排出によりピストンロッド6を外側に押し出している時間T1およびピストンロッド6を引き込んでいる時間T2である。なお、本実施形態のカウンタ35およびツインタイマ36は、一般に市販されているものを使用している。
【0029】
後退時においても前進時と同様に、後退信号が終了する前に、ピストンロッド6により移動する箱体3などの移動部は後退停止コイルバネ9により後退を停止し、その後、後退信号が終了して前進信号が発信されると前進を開始する。詳述すれば、後退時は、ピストンロッド6の後退端に達する前にピストンロッド6の先端に設けられた後退停止コイルバネ9がエアシリンダ7の前面に接触してバネ力により移動部が後退を停止し、その後、後退信号が終了して前進信号が発信されると前進を開始する。ここで、前進信号発信時間T1と後退信号発信時間T2は同一値に設定するが、エアシリンダ7が前進速度と後退速度が異なる特性を持つ場合などは、異なる設定値としてもよい。
【0030】
このように、箱体3が前進移動および後退移動を繰り返し、箱体3の前進移動中に前進停止コイルバネ8のバネ力により箱体3の前進移動が急停止し、箱体3の後退移動中には後退停止コイルバネ9のバネ力により箱体3の後退移動が急停止するので、図7(a)および図7(b)に示すように、前進と後退の急停止した際に、小型機械部品2は慣性により相互に強くぶつかり合い、かつ、小型機械部品2と箱体3の内面も同様に強くぶつかり合うことによって、突出したバリを効果的に除去することができる。また、仮に、前進停止コイルバネ8と後退停止コイルバネ9を設けずに最大限までピストンロッド6を移動させた場合には、ピストンロッド6の前進端及び後退端では、エアシリンダ7内のピストン21とエアシリンダ7の側面枠が強く衝突し、エアシリンダ7の側面枠はピストン21から大きな衝撃を受けることになる。市販のエアシリンダ7は通常この衝撃を緩和するための簡易的なクッションを備えているが、ピストンロッド6により移動する箱体3などは重量物であるので、ピストンロッド6の前進端及び後退端の停止時での衝撃が大きくなり、エアシリンダ7の破損、短寿命化の原因となる。また、このような急激な停止は、ピストンロッド6により移動する箱体3などの移動部へも衝撃を与え、それらの移動部の寿命を低下させることになる。本実施形態では、箱体3の前進移動中に前進停止コイルバネ8のバネ力により箱体3の前進移動を停止させ、箱体3の後退移動中には後退停止コイルバネ9のバネ力により箱体3の後退移動を停止させているので、バネによって大きな衝撃を生じさせることなく、エアシリンダ7やピストンロッド6により移動する箱体3などの移動部の長寿命化を図ることができる。
【0031】
ツインタイマ36の前進信号の発信数は、カウンタ35によりカウントされ、カウント数がカウンタ35の回数設定手段により設定された設定回数Nより大きくなれば、即ち、前進と後退を1セットとして、その繰り返し回数が設定回数Nより大きくなれば、カウンタ35より終了信号を出して、ツインタイマ36の前進、後退信号の出力を停止し、バリ取りが終了し、箱体3の蓋11を開けてバリが除去された小型機械部品2を箱体3内から取り出す。この場合、箱体3の蓋11を開けてバリが除去された小型機械部品2を箱体3内から取り出す代わりに、バリが除去された小型機械部品2を箱体3ごと四角枠5から取り外し、そのまま次の工程に運んでもよい。
【0032】
以上説明したように、本実施形態におけるバリ取り装置1は、モーターに比べて小型で安価なエアシリンダ7を駆動装置とし、また、一般市販品であるエアシリンダ7、前進停止コイルバネ8、後退停止コイルバネ9、箱体3、カウンタ35、ツインタイマ36、及びスライドレール13とスライドブロック14からなるスライドガイド4を使用し、これらの一般市販品と一般市販材料に簡単な加工を加えたものを組み合わせることにより、安価で、少なくとも従来と同等の小型機械部品のバリ取り機能を持つバリ取り装置1とすることができる。
【0033】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。さらに本発明の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲の記載によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0034】
次に、以上説明した実施形態(以下、「本実施形態」という。)の変形例について説明する。
(変形例1)
本実施形態では、後退停止コイルバネ9の一端を後退停止コイルバネ固定板17に取り付け、後退停止コイルバネ9の他端を穴あき円板19に取り付けるようにしたが、これに限らず、図8および図9に示すように、後退停止コイルバネ9の一端をエアシリンダ7の側面に溶接により取り付け、後退停止コイルバネ9の他端を中心部にピストンロッド6を貫通させる貫通孔18が設けられた穴あき円板19に溶接により取り付けるようにしてもよい。この場合においても、ピストンロッド6の外周に溶接により固定された円形状の後退停止コイルバネ固定板17を設ける点は本実施の形態と同様である。このような構成を用いても、本実施形態と同様、箱体3の後退移動の際にピストンロッド6が引き込まれると、穴あき円板19が後退停止コイルバネ固定板17により押されることにより後退停止コイルバネ9が縮み、後退停止コイルバネ9のバネ力により箱体3の後退移動が停止することになる。ここで、図8は本発明の変形例1におけるバリ取り装置の上面図であり、図9は図8のC−C断面を示す図である。ここで、図8の箱体3は、図を見やすくするために外形線のみを図示しており、図9のエアシリンダ7とその設置台15への固定金具16の内部構造は本発明と直接の係りがないので外形を図示している。また、本実施形態では、前進停止コイルバネ8の一端をストッパ20に溶接により取り付け、前進停止コイルバネ8の他端を前進停止板39に取り付けるようにしたが、これに限らず、図8および図9に示すように、前進停止コイルバネ8の一端を四角枠5の前進側の側面に溶接により取り付け、前進停止コイルバネ8の他端を円形形状の前進停止板39に溶接により取り付けるようにしてもよい。この場合においても、設置台15にビスにより取り付けられているストッパ20を設ける点は本実施の形態と同様である。このような構成を用いても、本実施形態と同様、箱体3の前進移動の際にピストンロッド6が押し出されると、ストッパ20により前進停止板39が押されることにより前進停止コイルバネ8が縮み、前進停止コイルバネ8のバネ力により箱体3の前進移動が停止することになる。このように、後退停止コイルバネ9をエアシリンダ7と箱体3の間に設け、箱体3の後退停止コイルバネ9が設けられた側と反対側に設けられた前進停止コイルバネ8を箱体3とストッパ20の間に設けるようにすることにより、本実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0035】
(変形例2)
本実施形態では、前進停止コイルバネ8と後退停止コイルバネ9を用いて説明したが、これに限らず、圧縮空気の弾力性を利用した空気バネ(たとえば、ベローズ形空気ばね)を用いてもよい。このように、圧縮空気の弾力性を利用した空気バネを用いることにより、箱体3の前進移動中に空気バネのバネ力により箱体3の前進移動が急停止され、箱体3の後退移動中には空気バネのバネ力により箱体3の後退移動が急停止されるので、前進と後退の停止した際に、小型機械部品2は慣性により相互にぶつかり合い、かつ、小型機械部品2と箱体3の内面も同様にぶつかり合うことによって、突出したバリを除去することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 バリ取り装置
2 小型機械部品
3 箱体
4 スライドガイド
5 四角枠
6 ピストンロッド
7 エアシリンダ
8 前進停止コイルバネ
9 後退停止コイルバネ
10 箱体本体
11 蓋
13 スライドレール
14 スライドブロック
15 設置台
16 固定金具
17 後退停止コイルバネ固定板
18 貫通孔
19 穴あき円板
20 ストッパ
21 ピストン
22 ピストン枠
23 ロッドカバー
24 パッキン
25 貫通孔
26 シリンダカバー
27 パッキン
28 駆動用電磁弁
29 空気供給ライン
30 給排ポートA
31 給排ポートB
32 シリンダ室A
33 シリンダ室B
34 スタートボタン
35 カウンタ
36 ツインタイマ
39 前進停止板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型機械部品の突出したバリを除去するバリ取り装置であって、
小型機械部品を収容する箱体と、
1本または平行に配置された複数本のスライドレールと、
前記箱体の下部に設けられ、前記スライドレール上を前記スライドレールに接しながら前記箱体とともに移動するスライドブロックと、
前記箱体と直接的または間接的に結合したピストンロッドを移動させ、該移動により前記箱体を前進移動または後退移動させるエアシリンダと、
該エアシリンダと前記箱体の間に設けられた後退停止コイルバネと、
前記箱体の前記後退停止コイルバネが設けられた側と反対側に設けられた前進停止コイルバネと、を有し、
前記箱体は前記エアシリンダによる前進移動および後退移動を繰り返し行い、前記箱体の前進移動中に前記前進停止コイルバネのバネ力により前記箱体の前進移動を停止させ、前記箱体の後退移動中には前記後退停止コイルバネのバネ力により前記箱体の後退移動を停止させるバリ取り装置。
【請求項2】
該箱体の下部で前記箱体を支持する四角枠を有し、
該四角枠の下部は前記スライドブロックの上部と結合し、前記四角枠の上部は前記箱体の下部と結合し、前記四角枠の測部は前記ピストンロッドと結合することを特徴とする請求項1記載のバリ取り装置。
【請求項3】
前記エアシリンダへの空気の注入または排出により前記ピストンロッドを外側に押し出している時間、および前記ピストンロッドを引き込んでいる時間をそれぞれ設定する時間設定手段を、有し、
前記箱体のエアシリンダによる前進移動および後退移動の繰り返しにおいて、該時間設定手段により設定された時間、前記エアシリンダへの空気の注入または排出により前記ピストンロッドを外側に押し出しまたは前記ピストンロッドを引き込むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバリ取り装置。
【請求項4】
前記ピストンロッドが前進し後退する回数を設定する回数設定手段を、有し、
該回数設定手段により設定された回数に達することにより、前記ピストンロッドの移動を停止させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリ取り装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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