説明

バルク金属酸化物粒子を含むバルク触媒組成物

本発明は、(i)液体中に分散すると約1μm未満の寸法を有する分散性ナノ粒子と、(ii)少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と、(iii)少なくとも1つの第VIB族金属化合物と、(iv)プロトン性液体とを、反応混合物中で合わせるステップと、ナノ粒子の存在下において、少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と少なくとも1つの第VIB族金属とを反応させるステップと、を含む、バルク金属酸化物粒子を調製するためのプロセスに関連する。本発明はまた、そのような方法によって得ることができるバルク金属の水素化処理触媒にも関連する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、バルク触媒組成物に関連し、特に、水素化処理バルク触媒組成物、およびその調製のためのプロセスに関連し、該バルク触媒組成物は、少なくとも1つの第III族非貴金属、少なくとも1つの第VIB族金属、および分散性ナノ粒子を有するバルク金属酸化物粒子を含む。
【先行技術の説明】
【0002】
炭化水素原料の水素化は、一般的に、触媒の存在下および水素化処理条件下(典型的には昇温および昇圧)において炭化水素原料を水素と反応させるすべてのプロセスを包含する。水素化処理という用語は、水素付加、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化異性化、水素化脱ろう、および温和な水素化分解等のプロセスを含むが、これに限定されない。
【0003】
一般に、従来の水素化処理触媒は、その上に第VIB族金属成分および第VIII族非貴金属成分が堆積された担体(または担持部)から成る。そのような触媒は、所望の金属の化合物の水溶液に担体を含浸させ、続いて1つ以上の乾燥ステップおよび/または焼成ステップを行うことより調製される。
【0004】
「担持された」触媒の調製のための代替技術は、米国特許第4,113,605号(とりわけ、炭酸ニッケルをMoO3と反応させて結晶性のモリブデン酸ニッケルを形成し、後にアルミナと混合して押出する)および独国特許第3029266号(炭酸ニッケルをWOと混合し、得られた組成物を、硝酸ニッケルおよびタングステン酸アンモニウム等の化合物に含浸させたアルミナと混合する)に記載されている。
【0005】
最近、一般的にバルク触媒と称される、担体なしで適用され得る触媒の提供に多大な注目が集まってきている。国際公開第WO99/03578号は、硫化物の非存在下においてニッケル、モリブデン、およびタングステンの化合物を反応および共沈させることによる、1つの第VIII族非貴金属および2つの第VIB族金属を有するバルク金属酸化物粒子を含むバルク水素化処理触媒組成物の調製のための方法を記載している。
【0006】
国際公開第WO00/41810号は、1つ以上の第VIII族非貴金属および2つ以上の第VIB族金属をプロトン性液体中で反応させ、該反応の間、金属化合物は少なくとも部分的に溶質の状態(すなわち溶解している)である、バルク金属酸化物粒子を含む水素化処理触媒の調製のための方法を記載している。先行技術はまた、例えば押出による成形により、また得られたバルク金属酸化物粒子を少量のさらなる材料(例えば結合剤材料)と配合することにより、成形を容易にし、成形された触媒に機械的強度を提供する、水素化処理プロセスにおける使用のための簡便な形式の水素化処理触媒の生成も開示している。
【0007】
先行技術に記載されるバルク触媒組成物は優れた水素化処理活性を有するが、当該技術分野には、特に、ディーゼルおよび減圧軽油(VGO)等の特定の標的炭化水素原料の水素化脱硫(HDS)、ならびに水素化脱窒素(HDN)および水素付加において、さらに改良された水素化処理活性を有する新しいバルク触媒組成物を開発する必要性が依然として存在する。
【0008】
例えば、国際公開第WO00/41810号は、第VIII族対第VIB族金属の様々な比率で、少なくとも1つの第VIII族金属および少なくとも2つの第VIB族金属を
含むバルク金属酸化物粒子を有するバルク触媒を記載している。該例は、第VIB族金属を上回るように第VIII族金属のモル比を増加することにより、水素化脱硫(HDS)活性の増加が得られると記載している。この文書は、特に、1つの第VIII族金属および1つの第VIB族金属を有するバルク金属触媒について、1.25を下回る第VIII族対第VIB族金属のモル比では、好適に活性な触媒を得ることは非常に困難であると示唆している。さらに、約1.1〜1.0を下回る金属モル比では、まったく活性を示さない、完全に異なる結晶構造が得られる。論理的観点からすると、そのような大量の第VIII族金属は、触媒の調製プロセスにおいて有利または必要でさえあるが、炭化水素原料の水素化精製に用いられる活性硫化バルク触媒においては、必要ではない、またはあまり必要ではない可能性があると考えられる。第VIII族対第VIB族の高い金属モル比は、触媒の合成中に有用であるように思われるが、過剰量の第VIII族金属は不必要な重量を加えるだけであり、また、いったんバルク金属酸化物粒子が硫化されると、バルク触媒組成物の単位重量当たりの活性を低下させるようである。したがって、より高い活性の触媒、特に、第VIII族対第VIB族の低い金属モル比で生成され得る、少なくとも1つの第VIII族および少なくとも1つの第VIB族金属を含むバルク触媒を発見するという要望が存在する。
【発明の概要】
【0009】
したがって、(i)液体中に分散すると約1μm未満の寸法を有する分散性ナノ粒子と、(ii)少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と、(iii)少なくとも1つの第VIB族金属化合物と、を有するバルク金属酸化物粒子を含むバルク触媒組成物、ならびに(i)液体中に分散すると約1μm未満の寸法を有する分散性ナノ粒子と、(ii)少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と、(iii)少なくとも1つの第VIB族金属化合物と、(iv)プロトン性液体とを、反応混合物中で合わせるステップ、および少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と少なくとも1つの第VIB族金属化合物とを反応させるステップを含む、そのようなバルク金属酸化物粒子を調製するためのプロセスが提供される。
【0010】
該プロセスは、好ましくはa)プロトン性液体中で、少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物の第1の懸濁液を調製するステップと、b)プロトン性液体中で、少なくとも1つの第VIB族金属化合物の第2の懸濁液を調製するステップと、(c)第1の懸濁液と第2の懸濁液を一緒に添加するステップと、を含み、第1および第2の懸濁液のうちの少なくとも1つは、液体中に分散すると約1μm未満の寸法を有する分散性ナノ粒子を含む。より好ましくは、ナノ粒子の少なくとも一部分は、第VIII族非貴金属化合物の第1の懸濁液に含まれる。最も好ましくは、少なくともナノ粒子の少なくとも一部分は、炭酸ニッケル、炭酸水酸化ニッケル、炭酸コバルト、および炭酸水酸化コバルトのうちの少なくとも1つを含む第1の懸濁液に含まれる。
【0011】
一実施形態において、第VIB族または第VIII族の金属化合物は、ナノ粒子の存在下において沈殿させることにより調製される。好ましくは炭酸(水酸化)ニッケルおよび炭酸(水酸化)コバルトが、ナノ粒子、好ましくはその合成粘土鉱物の存在下において沈殿させることにより調製される。
【0012】
このプロセスはまた、少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物および少なくとも2つの第VIB族金属化合物を含むバルク金属酸化物粒子を作製するためにも使用することができる。
【0013】
本発明によるプロセスの別の実施形態において、反応混合物は、第V族金属化合物、好ましくはニオブ化合物をさらに含む。第V族金属は、たとえ比較的少ない量で存在する場合でも、特に、例えば、第VIII族対第VIB族金属の低いモル比等の臨界組成の範囲
において、活性触媒の形成を促進することが明らかになっている。「活性触媒」という用語は、高いHDSおよび/またはHDN活性を有する触媒を意味する。
【0014】
本発明はまた、本発明によるプロセスによって得られる、少なくとも1つの第VIII族非貴金属と、少なくとも1つの第VIB族金属と、液体中に分散すると約1μm未満の寸法を有する分散性ナノ粒子と、を含むバルク金属酸化物触媒粒子を含むバルク触媒組成物も対象とする。さらに、本発明の別の態様によると、少なくとも1つの第VIII族非貴金属および少なくとも1つの第VIB族金属(上記第VIII族および第VEB族金属は、酸化物として計算すると、バルク触媒組成物の全重量の約50重量%〜約99.5重量%を示し、該金属は、バルク触媒組成物中にそれらの酸化物の状態および/またはそれらの硫化物の状態で存在する)、ならびに約0.5重量%〜約15重量%のナノ粒子(バルク金属酸化物触媒粒子の全重量を基準として)を含むバルク金属酸化物触媒粒子を含むバルク触媒組成物が提供される。本発明はさらに、バルク金属酸化物触媒粒子を含む上記バルク触媒組成物を硫化することにより得られる硫化バルク触媒に関する。
【0015】
バルク触媒組成物中、バルク金属酸化物触媒粒子は、好ましくは、i)酸化物として計算すると、バルク触媒組成物の全重量を基準として、約50重量%〜約99.5重量%、より好ましくは約70重量%〜約99重量%、また最も好ましくは約85重量%〜約95重量%の上記第VIII族非貴金属および第VEB族金属を含み(金属は、それらの酸化物および/または硫化物の状態で存在する)、ii)約0.5重量%〜約15重量%、好ましくは約1〜約10重量%、より好ましくは約1〜約5重量%、またさらにより好ましくは約2〜約4重量%のナノ粒子(バルク金属酸化物触媒粒子の全重量を基準とする)を含むことが好ましい。粒子が常に粒度分布を有することを考慮すると、添加されたナノ粒子の総量の少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約70重量%が、約1μm未満の横方向の寸法を有することが好ましい。
【0016】
本発明の別の態様によると、水素化処理条件下において原料が前述したバルク触媒組成物と接触する、炭化水素原料の水素化処理のためのプロセスが提供される。本発明によるバルク触媒組成物は、これに限定されないが、水素化分化される前に原料を前処理することを含む、多様な反応条件化において複数の原料を処理するための実質的にすべての水素化処理プロセスにおいて使用することができる。一般的に、これらの反応条件は、約200〜約450℃の範囲の温度、約5〜約300バールの範囲の水素圧、約0.5〜約10h−1の範囲の液空間速度(LHSV)、および約50〜約2000Nl/lの範囲のH/油比を含む。しかし、少なくとも約0.5〜約10h−1の範囲の液空間速度(LHSV)、および約50〜約2000Nl/lの範囲のH/油比を含む条件下において、ディーゼル油または減圧軽油を含む原料の水素化処理、より具体的には、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒素(HDN)、および水素化脱芳香族化(HDA)に、本発明の触媒を利用することが好ましい。バルク触媒組成物は、特にVGOにおいて、原料が低窒素レベルを有する条件下で水素化脱硫活性の向上を示すことが明らかになっている。本発明の好ましい一実施形態は、水素化分化される前の原料の前処理のための触媒である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるバルク触媒組成物のX線回折パターンである。
【図2】本発明によるバルク触媒組成物のX線回折パターンと比較構造との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
分散された状態で1μm未満の寸法を有する分散性ナノ粒子の存在下において、少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と少なくとも1つの第VIB族金属化合物とを、プロトン性液体を含む反応混合物中で合わせて反応させることにより調製されるバルク金
属粒子を含むバルク触媒組成物は、ナノ粒子なしで調製されるバルク金属粒子を含む対応する触媒に比べて多くの利点を有することが明らかになっている。例えば、分散された状態で1μm未満の寸法を有する分散性ナノ粒子を用いて調製されたバルク金属触媒は、反応混合物中にそのようなナノ粒子を含まずに調製された同じ触媒と比べて、有意に高い水素化処理活性を有する触媒を提供することが明らかになっている。さらに、たとえ第VIII族対第VIB族の金属モル比が低くても、ナノ粒子の非存在下と比べると有意に短時間で、高度に活性な所望の金属酸化物のバルク粒子構造が形成される。
【0019】
これらの発見に関連する様々な実施形態を、以下にさらに詳細に記載する。
化合物および材料
ナノ粒子
【0020】
触媒調製プロセス中に形成される金属酸化物/硫化物の混合粒子はナノ粒子でもあり得るため、本明細書で使用されるナノ粒子という用語は、触媒合成プロセス中に形成され得る金属酸化物ナノ粒子ではなく、混合金属酸化物粒子を合成するために使用される反応混合物に意図的に添加される他のナノ粒子を意味する。好ましい実施形態において、ナノ粒子は粘土鉱物のナノ粒子であり、好ましくは、約1μm未満の寸法を有する合成粘土鉱物のナノ粒子である。より好ましくは、ナノ粒子は、三次元座標空間において、約1μm未満、好ましくは500nm未満、より好ましくは250nm未満、またさらにより好ましくは100nm未満の最大寸法を有する。ナノ粒子は、好ましくは、三次元座標空間において、25nm未満、好ましくは10nm未満、さらにより好ましくは5nm未満、およびさらにより好ましくは1nm未満の最小寸法を有する。ナノ粒子の寸法は、これ以降に記載するように、TEM、光散乱法、または当該技術分野における同等の方法によって決定することができる。便宜上、少なくとも70重量%等の少なくとも50重量%のナノ粒子は、約1μm未満の最大寸法を有する。
【0021】
上記の定義に加えて、本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、適切な寸法を有するいずれかの形状の粒子を包含し、したがって、球状、多面体、ナノファイバー、および円盤状のナノ粒子を含む。
【0022】
好ましくは、本明細書において使用されるナノ粒子は粘土鉱物であり、より好ましくは、本発明のプロトン性液体中に分散されると円盤状ナノ粒子を提供することができ、したがって、バルク金属酸化物粒子を形成する金属化合物の反応中に、平面または準平面を示す合成粘土鉱物である。より好ましくは、約250m/gを上回る、最も好ましくは約350m/gを上回る表面積を有する円盤状粒子を提供することができる粘土鉱物が望ましい。そのような粘土鉱物は、合成の2:1型粘土ならびに天然および合成の層状ケイ酸を含む。ナノ粒子は好ましくは、スメクタイト属の合成粘土、層状ケイ酸、カオリナイト、ラポナイト、ハロイサイト、およびそれらの混合物から構成される群から選択される粘土鉱物粒子である。
【0023】
本発明に組み込むのに好適な合成の2:1型粘土(フルオロヘクトライト、ラポナイト、およびフルオロ雲母等)は、2枚のケイ素(Si)四面体シートの間に挟まれたナノメートルの厚さのアルミニウム(Al)八面体から構成される結晶構造を有するスメクタイト族の鉱物を含む。これらの3枚のシート層は、層間にファンデルワールスギャップを伴って積み重なっている。八面体シートにおいてAlがマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、またはリチウム(Li)で同形置換されると、かつ/または四面体シートにおいてSiがAlで同形置換されると、3枚のシート層各々に全体的な負電荷が与えられ、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、Mg、Fe、およびLi等の層間空間の交換可能な金属陽イオンにより平衡が保たれる。
【0024】
本発明に組み込むのに好適な合成の層状ケイ酸(カネマイト、マカタイト、オクタシリケート、マガダイト、およびケニヤイト等)は、主に、層の厚さが異なるケイ素四面体シートから構成される粘土である。この粘土は、前述したスメクタイトと同様のインターカレーション化学を示し、さらに、これらは、それらのスメクタイト粘土に相補的な高い純度および構造特性を持つため、上記スメクタイトとの組み合わせにおけるこれらの使用を容易にする。
【0025】
合成スメクタイト粘度および合成層状ケイ酸の両方のインターカレーション化学は、それらを化学的に修飾することが可能であり、バルク触媒組成物のさらなる金属化合物と適応できるようにする。
【0026】
合成の2:1型粘土および層状ケイ酸は、典型的には粉末として市販品が入手可能である。これらの粉末鉱物および他の粘度は、本発明によるプロセスで使用される前に、好ましくは剥離および/または層間剥離されて円盤状ナノ粒子になる。好ましくは、これは、剥離および/または層間剥離されて円盤状ナノ粒子になるのに十分に長い期間、好ましくは水である液体中に粉末を分散させることにより実行される。理論に拘束されることは望まないが、そのような粉末からの円盤状ナノ粒子の形成は、以下のプロセスにより生じると考えられる:i)粉末を湿潤させ、凝集した粒子のスタックを形成する(各スタックは積み上げたコインに類似する(各コインが粘土構造の層))、ii)上記凝集したスタックを個々の粒子スタック中に分散させる(「2次粒子」)、iii)スタック中のインターカレートされたナトリウムイオンを水和させる、およびiv)個々の粒子(「1次粒子」)に分離させる。
【0027】
凝集していない個々のスタック(2次粒子)および1次粒子の両方が、本発明の意味においてナノ粒子であり得ることに留意されたい。これらの円盤型粘土鉱物の1次粒子は、一般的に、約0.1〜約1.5nmの範囲の厚さ、約100nm未満の横方向の寸法、約100〜約1500のアスペクト比、および約250m/gを上回る表面積によって特徴付けられる。しかし、本発明では、約350〜約1000m/gの範囲の表面積によって特徴付けられ、(構成要素である)1次粒子は、約1nmの厚さおよび約100nm未満の横方向の寸法を有する1次および2次粒子として提供され得る(または層間剥離/剥離されて1次および2次粒子になる)粘土を使用することが望ましい。
【0028】
したがって、本発明では、ナノ粒子がスメクタイト属の合成粘土を含むことが好ましい。より好ましくは、ナノ粒子は、該ナノ粒子の全重量を基準とする約70重量%を上回る、好ましくは約90重量%を上回る、ラポナイトを含む。最も好ましくは、ナノ粒子は、本質的にラポナイトから構成される。
【0029】
粘土鉱物のナノ粒子はまた、有機粘土としても調製することができる。有機粘土は、窒素イオンを含有する一種の界面活性剤である第四級アミンで修飾することにより製造される。親水性末端である第四級アミンの窒素末端は、正電荷を帯び、ナトリウムまたはカルシウムとイオン交換され得る。使用されるアミンは、典型的には約12〜約18個の炭素原子を有する長鎖型のアミンである。粘土表面の特定の最低の割合(典型的には約30%)がこれらのアミンで被覆されると、該粘土は疎水性になる。特定のアミンを用いて、有機親和性の粘土を作製することができる。
他の化合物および材料
【0030】
本発明によるバルク触媒の調製のためのプロセスは、反応混合物中でプロトン性液体、金属化合物、およびナノ粒子を合わせ、該ナノ粒子の存在下において金属を反応させる。プロトン性液体は、金属化合物の反応またはナノ粒子の分散を妨害しない、いずれかのプロトン性液体であり得る。その例は、水、カルボン酸、およびメタノール、エタノール等
のアルコール、またはそれらの混合物を含む。好ましいプロトン性液体は、アルコールと水の混合物等の水と他のプロトン性液体の混合物であり、より好ましいプロトン性液体は水単独である。
【0031】
本発明のプロセスにおいて、異なるプロトン性液体が同時に適用され得ることは明白である。例えば、エタノール中の金属化合物の懸濁液を、別の金属化合物の水溶液に添加することが可能である。いくつかの場合において、それ自体の結晶水に溶解する金属化合物が使用され得る。この場合、結晶水は、プロトン性液体としての役割を果たす。
【0032】
少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物および少なくとも1つの第VIB族金属化合物が、本発明のプロセスにおいて使用される。好適な第VIB族金属は、クロム、モリブデン、タングステン、またはそれらの混合物を含み、モリブデンとタングステンの組み合わせが最も好ましい。好適な第VIII族非貴金属は、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの混合物、好ましくはコバルトおよび/またはニッケルを含む。好ましくは、i)ニッケルおよびタングステン、ii)ニッケルおよびモリブデン、iii)ニッケル、モリブデン、およびタングステン、iv)コバルトおよびタングステン、v)コバルトおよびモリブデン、vi)コバルト、モリブデン、およびタングステン、またはvii)ニッケル、コバルト、モリブデン、およびタングステンのいずれかを含む金属化合物の組み合わせが、本発明のプロセスにおいて使用される。
【0033】
好ましい実施形態において、ニッケルおよびコバルトは、酸化物として計算すると、第VIII族非貴金属化合物全体の少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約70重量%、さらにより好ましくは少なくとも約90重量%を占める。第VIII族非貴金属化合物が本質的にニッケルおよび/またはコバルトから構成されることは、さらにより好ましい。
【0034】
別の好ましい実施形態において、モリブデンおよびタングステンは、三酸化物として計算すると、第VIB族金属化合物全体の少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約70重量%、さらにより好ましくは少なくとも約90重量%に相当する。第VIB族金属化合物が本質的にモリブデンとタングステンの混合物から構成されることは、さらにより好ましい。
【0035】
本発明のプロセスに適用される第VIB族金属対第VIII族非貴金属のモル比は、一般的に約10:1〜約1:10の範囲、好ましくは約3:1〜約1:3の範囲である。異なる第VIB族金属の互いのモル比は、一般的に重要ではない。1つより多くの第VIII族非貴金属が適用される場合にも同様である。モリブデンおよびタングステンが第VIB族金属として使用される場合、モリブデン:タングステンのモル比は、好ましくは約9:1〜約1:19、より好ましくは約3:1〜約1:9、最も好ましくは約3:1〜約1:6の範囲である。
【0036】
別の実施形態において、本発明によるバルク触媒は、第V族金属、好ましくはニオブを含む。好ましくは、第V族金属は、(第VIB族金属全体に対して)約0.1〜約10モル%、より好ましくは約0.1〜約9モル%、より好ましくは約0.1〜約8、さらにより好ましくは約0.1〜約7、また最も好ましくは約0.1〜約5モル%の範囲の量で存在する。第V族金属は、たとえ比較的少ない量で存在する場合でも、特に、例えば、第VIII族対第VIB族金属の低いモル比等の臨界組成の範囲において、活性触媒の形成を促進することが明らかになっている。好ましくはニオブである第V族金属の存在は、第VIII族金属対第VIB族金属のモル比が約1.5:1を下回る場合に特に好ましく、約1.4:1、約1.3:1を下回る場合、または約1.2:1さえも下回る場合に、さらにより好ましい。本発明による特に好ましい触媒は、第VIII族金属Co、Ni、また
はCoとNiの混合物、および第VIB族金属W、Mo、またはWとMoの混合物、好ましくはNiおよびWのみを、約1.2:1を下回る金属モル比で含み、また約0.1〜約5モル%(第VIB族金属全体に対するものであり、すべての金属は酸化物として示される)の間の第V族金属(好ましくはニオブ)、約0.5〜約5重量%(バルク金属酸化物粒子の全重量に対して)の合成ナノ粘土をさらに含み、第VIII族、第VIB族、および第V族金属は、バルク触媒粒子中の金属化合物全体の少なくとも約95重量%(酸化物を基準として)、またバルク触媒組成物の全重量に対する少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約70重量%を形成する。
【0037】
プロトン性液体が水である場合は、本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態である第VIII族非貴金属化合物および第VIB族金属化合物の溶解度は、18℃で約0.05mol/100ml水未満である。これは、例えばGB1 282 950等の、選択される化合物の高い溶解度と対照的であり得る。
【0038】
プロトン性液体が水である場合は、本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態である好適な第VIII族非貴金属化合物は、クエン酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、水酸化炭酸塩、水酸化物、リン酸塩、リン化物、硫化物、アルミン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、酸化物、またはそれらの混合物等の、水中で低い溶解度を有する第VIII族非貴金属化合物を含む。好ましくは、本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態である第VIII族非貴金属化合物は、シュウ酸塩、炭酸塩、水酸化炭酸塩、水酸化物、リン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、酸化物、またはそれらの混合物を含み、またより好ましくは本質的にそれらから構成され、水酸化炭酸塩および炭酸塩が最も好ましい。一般的に、水酸化炭酸塩中のヒドロキシ基とカーボネート基との間のモル比は、0〜約4、好ましくは0〜約2、より好ましくは0〜約1、また最も好ましくは約0.1〜約0.8の範囲である。
【0039】
プロトン性液体が水である場合は、本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態である好適なニッケルおよびコバルト化合物は、シュウ酸塩、クエン酸塩、アルミン酸塩、炭酸塩、水酸化炭酸塩、水酸化物、モリブデン酸塩、リン酸塩、リン化物、硫化物、タングステン酸塩、酸化物、もしくはそれらの混合物等の、やや溶解性であるニッケルまたはコバルトまたはニッケル‐コバルト混合化合物を含む。好ましくは、ニッケルまたはコバルト化合物は、シュウ酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、水酸化炭酸塩、水酸化物、モリブデン酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、酸化物、またはそれらの混合物を含み、またより好ましくは本質的にそれらから構成され、炭酸水酸化ニッケルおよび/またはコバルト、水酸化ニッケルおよび/またはコバルト、炭酸ニッケルおよび/またはコバルト、またはそれらの混合物が最も好ましい。一般的に、ニッケルまたはコバルトまたは炭酸水酸化ニッケル‐コバルト中のヒドロキシ基とカーボネート基との間のモル比は、0〜約4、好ましくは0〜約2、より好ましくは0〜約1、また最も好ましくは約0.1〜約0.8の範囲である。少なくとも部分的に固体の状態である好適な鉄化合物は、クエン酸鉄(II)、炭酸鉄、炭酸水酸化塩、水酸化物、リン酸塩、リン化物、硫化物、酸化物、またはそれらの混合物であり、クエン酸鉄(II)、炭酸鉄、水酸化炭酸塩、水酸化物、リン化物、酸化物、またはそれらの混合物が好ましい。
【0040】
プロトン性液体が水である場合は、好適な低水溶性の第VIB族金属化合物(したがって、接触する間、少なくとも部分的に固体の状態である)は、二酸化物および三酸化物、炭化物、窒化物、アルミニウム塩、酸、硫化物、またはそれらの混合物を含む。この群の中から、第VIB族金属化合物が、本質的に二酸化物および三酸化物、酸、またはそれらの混合物から構成されることが好ましい。
【0041】
本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態である好適なモリブデン化合物
は、モリブデン二酸化物および三酸化物、モリブデン二硫化物、モリブデン炭化物、モリブデン窒化物、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸(例えばHMoO)リンモリブデン酸アンモニウム、またはそれらの混合物等の不水溶性モリブデン化合物を含み、モリブデン酸ならびにモリブデン二酸化物および三酸化物が好ましい。
【0042】
最後に、本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態である好適なタングステン化合物は、タングステン二酸化物および三酸化物、タングステン硫化物(WSおよびWS)、タングステン炭化物、オルトタングステン酸(HWOO)、タングステン窒化物、タングステン酸アルミニウム、(メタ‐またはポリ‐タングステン酸塩とも言う)、リンタングステン酸アルミニウム、またはそれらの混合物等の水溶性タングステン化合物を含み、オルトタングステン酸ならびにタングステン二酸化物および三酸化物が好ましい。
【0043】
上記の化合物はすべて、一般的に市販品が入手可能であるか、例えば沈殿によって調製することができる。具体的には、炭酸水酸化ニッケルは、適量の炭酸ナトリウムを添加することにより、塩化ニッケル、硫酸塩、または硝酸ニッケル溶液から調製することができる。当業者には、得られた沈殿物の所望の形態および組織を得るような、より具体的には、沈殿物の粒度(表面積)を制御するような様式の沈殿条件を選択することは、一般的に既知である。
【0044】
一般に、金属の他にC、Oおよび/またはHを主に含有する金属化合物は、環境に及ぼす悪影響が低いため、好ましい。炭酸塩および水酸化炭酸塩が適用されるとCOが放出され、反応混合物のpHに好ましい影響を及ぼすため、第VIII族非貴金属の炭酸塩および水酸化炭酸塩は、少なくとも部分的に固体の状態で添加されるのに好ましい金属化合物である。さらに、炭酸塩はCOに変換され、その廃水中に残らないため、廃水を再利用することが可能である。その結果として、得られたバルク金属酸化物粒子から望ましくない陰イオンを除去するための洗浄ステップの必要がなくなる。
【0045】
溶質の状態で添加される好ましい第VIII族非貴金属化合物は、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、ギ酸塩、次亜リン酸塩、およびそれらの混合物等の水溶性の第VIII族非貴金属塩を含む。その例は、例えば、ニッケルおよび/またはコバルトならびに次亜リン酸ニッケルの硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、ギ酸塩、もしくはそれらの混合物等の水溶性ニッケルおよび/またはコバルト塩等の、水溶性ニッケルおよび/またはコバルト化合物を含む。溶質の状態で添加される好適な鉄化合物は、酢酸鉄、塩化物、ギ酸塩、硝酸塩、硫酸塩、またはそれらの混合物を含む。
【0046】
溶質の状態で添加される好適な第VIB族金属化合物は、標準的なアンモニウムまたはアルカリ金属のモノモリブデン酸塩およびタングステン酸塩等の水溶性の第VIB族金属塩、ならびにメタタングステン酸等のモリブデンおよびタングステンの水溶性イソポリ化合物、あるいは例えばP、Si、Ni、もしくはCo、またはそれらの組み合わせをさらに含む、モリブデンまたはタングステンの水溶性ヘテロポリ化合物を含む。好適な水溶性イソポリ化合物およびヘテロポリ化合物は、Molybdenum Chemicals, Chemical data series, Bulletin Cdb−14,
February 1969およびMolybdenum Chemicals, Chemical data series, Bulletin Cdb−12a−revised, November 1969に記載される。好適な水溶性クロム化合物は、標準的なクロム酸塩、イソポリクロム酸塩、および硫酸アンモニウを含む。
【0047】
金属化合物の好ましい組み合わせは、タングステン酸とモリブデン酸化の組み合わせ、またはモリブデン三酸化物とタングステン三酸化物との組み合わせ等の、炭酸水酸化およ
び/または炭酸ニッケルもしくはコバルト等の第VIII族非貴金属の水酸化炭酸塩および/または炭酸塩と、第VIB族金属酸化物および/または第VIB族の酸との組み合わせ、あるいは炭酸水酸化および/または炭酸ニッケルもしくはコバルト等の第VIII族の水酸化炭酸塩および/または炭酸塩と、二モリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、およびメタタングステン酸アンモニウム等の第VIB族金属の塩との組み合わせである。当業者は、金属化合物のさらなる好適な組み合わせを選択することができるであろうと考えられる。
本発明の触媒の調製
(A)バルク金属酸化物粒子の調製
【0048】
本発明の一態様は、少なくとも1つの第VIII族非貴金属および少なくとも1つの第VIB族金属を含むバルク金属酸化物触媒粒子を含むバルク触媒組成物を調製するためのプロセスを対象とし、該プロセスは、少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と少なくとも1つの第VIB族金属化合物とを、プロトン性液体を含む反応混合物中で合わせて反応させるステップを含み、該反応は、好ましくは粘土鉱物のナノ粒子である分散性ナノ粒子の存在下において起こり、該ナノ粒子は、分散された状態で1μm未満の寸法を有することを特徴とする。
【0049】
溶液の状態にあるすべての金属成分の組み合わせおよび反応によって、本発明のプロセスを実施することは可能であるが(参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO99/03578号の開示に記載されるように)、金属化合物のうちの少なくとも1つは、全プロセスを通して少なくとも部分的に固体の状態に留まることが好ましい。本明細書で使用される「少なくとも部分的に固体の状態である」という用語は、金属化合物の少なくとも一部分は固体の金属化合物として存在し、任意選択的に金属化合物の別の部分は、プロトン性液体中でこの金属化合物の溶液として存在することを意味する。この典型的な例は、金属が少なくとも部分的に固体として存在し、任意選択的に部分的にプロトン性液体中に溶解している、プロトン性液体中の金属化合物の懸濁液である。前述したこの「全プロセス」とは、金属化合物を合わせることおよび反応させることを含む。より具体的には、互いに金属化合物を添加すること、ならびに同時におよび/またはその後で、それらを反応させることを含む。
【0050】
理論に拘束されることは望まないが、すべての金属化合物が実質上完全に固体の状態である場合でさえも、この反応は起こり得ると考えられる(プロトン性液体の存在に起因して、微量の金属化合物が溶解、相互作用、またひいては反応し得る)。プロトン性液体は、溶解した金属化合物の輸送を担っており、したがって、本発明のプロセスの間、プロトン性液体の存在は必須であると考えられる。このプロセスにおける反応時間は比較的長く、好ましくは少なくとも約4時間である。しかし、ナノ粒子の存在に起因して、所望の活性構造は、ナノ粒子の非存在下と比べると有意に短い時間で形成される。
【0051】
本発明のプロセスの間、少なくとも1つの金属化合物が少なくとも部分的に固体の状態である本発明の実施形態は、いくつかの方法において行われ得る。この点において、例えば、i)少なくとも部分的に固体の状態である金属化合物が、溶質の状態である金属化合物と組み合わされる、ii)金属化合物のうちの1つは、少なくとも部分的に固体の状態で添加され、2つの金属化合物は溶質の状態で添加される、およびiii)2つの金属化合物が、溶質の状態である1つの金属化合物に少なくとも部分的に固体の状態で添加されるプロセスは、本発明の実施形態の範囲内であると考えられる。「溶質の状態で」という用語は、この金属化合物のすべての量が、プロトン性液体中のこの金属化合物の溶液として添加されることを示唆する。しかし、4(iv)番目かつ好ましい代替形態では、本発明のプロセスにおいて組み合わされるすべての金属化合物は、少なくとも部分的に固体の状態として適用され、この好ましい実施形態は、プロトン性液体中での金属化合物の溶解
に必要であるが、得られた混合金属反応生成物中には組み込まれないこれらの陰イオン種(硝酸塩等)および陽イオン種(アンモニウムイオン等)を減少させ、また理想的には消失させる。
【0052】
これらの代替形態では、あらゆる順序で金属化合物を添加することが可能である。例えば、全プロセスを通して少なくとも部分的に固体の状態に留まる金属化合物は、最初にプロトン性液体中の金属化合物の懸濁液として調製され得、同時にまたは続けて、プロトン性液体中に溶解および/もしくは懸濁させたさらなる金属化合物(複数可)を含む溶液(複数可)ならびに/またはさらなる懸濁液(複数可)がそれに添加され得る。同様に、最初に第1の金属成分の溶液を調製し、その後で、部分的に固体状態である金属化合物(複数可)の必要とされる懸濁液(複数可)と、任意選択的にさらなる溶液(複数可)とを、同時にまたは続けて添加することも可能である。しかし、すべての第VIII族非貴金属化合物が同時に合わせられ、すべての第VIB族金属化合物が同時に合わせられ、得られた2つの混合物がその後で合わせられることが好ましい。
【0053】
これらすべての場合において、金属化合物を含むいずれかの懸濁液が、固体金属化合物をプロトン性液体中に懸濁させることにより調製され得る。しかし、固体金属化合物をプロトン性液体に沈殿させるか、または金属化合物を(共)沈殿させることにより、懸濁液を調製することも可能であり、1つより多くの金属化合物は、全プロセスを通して少なくとも部分的に固体の状態に留まる。その後、さらなる金属化合物は、溶液中、スラリー中、またはそのままで、この(共)沈殿から生じた懸濁液に直接添加され得る。代替として、さらなる金属化合物は、
i)得られた沈殿物が固体/液体分離により処理され、乾燥および/または熱処理の任意選択的なステップが行われた後に、乾燥した沈殿物または共沈殿物に、
ii)湿潤させた上記ステップi)の沈殿物に、あるいは、
iii)プロトン性液体中で再度スラリー化させた上記ステップi)またはステップii)の沈殿物に、
添加され得る。
【0054】
金属化合物を溶質の状態で合わせて反応させるか、または少なくとも部分的に固体の状態にある少なくとも1つの金属化合物と合わせて反応させるかにかかわらず、金属化合物の間の反応は、ナノ粒子の存在下において起こらなければならない。ナノ粒子は、好ましくは水溶液中の懸濁液として金属と合わせられる。ナノ粒子は、上記化合物とさらなる金属化合物を合わせる前に、個々の金属化合物の溶液もしくは懸濁液に加えられ得るか、または既に合わせられた金属化合物の懸濁液/溶液に加えられ得る。ナノ粒子は、全プロセスを通して少なくとも部分的に固体の状態に留まる特定のまたはある金属化合物の懸濁液中で混合されることが好ましい。金属化合物の懸濁液が沈殿により調製される場合、該沈殿は、ナノ粒子、好ましくは合成粘土鉱物のナノ粒子の存在下において起こることがさらに好ましい。
【0055】
本発明の実施形態によると、少なくとも少量の、好ましくはすべての添加されるナノ粒子は、炭酸水酸化または炭酸ニッケルおよび/もしくはコバルトの懸濁液に含まれる。より好ましくは、これらのニッケルおよび/またはコバルト化合物は、前述した沈殿反応により調製されたものである。
【0056】
理論に拘束されることは望まないが、ナノ粒子は、金属化合物、好ましくは炭酸(水酸化)ニッケルおよび/またはコバルトがその上に沈殿する核としての役割を果たし得る。ナノ粒子と、反応の間に形成されるニッケルおよび/またはコバルト化合物とは、したがって、バルク金属粒子の形成の間、密接に関連している。
【0057】
好ましくは、金属酸化物として計算すると、すべての第VIB族および第VIII族の非貴金属化合物の全重量を基準として、少なくとも約1重量%、さらにより好ましくは少なくとも約10重量%、またさらにより好ましくは少なくとも約15重量%の金属化合物が、本発明のプロセスの間に固体の状態で添加される。高収量、つまり大量のバルク金属酸化物粒子を得ることが望ましい場合には、本発明のプロセスの間、大量に固体の状態に留まる金属化合物の使用が好ましい方法である可能性がある。その場合、少量の金属化合物が母液中に溶解して留まり、その後の固体‐液体分離の間に廃水中に残る金属化合物の量が減少される。本発明のプロセスにおいて固体‐液体分離から生じる母液を再利用すれば、金属化合物のいかなる損失も完全に防ぐことができる。共沈殿プロセスに基づく触媒調製(陰イオンおよびアンモニウム等の陽イオンが母液中に堆積し得る)と比べて廃水量が大幅に減少され得ることは、本発明のプロセスの特定の利点であることに留意されたい。
【0058】
好ましいプロセスにおいて、少なくとも1つの、好ましくはすべての金属化合物が、本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態に留まる。この実施形態では反応性があまり高くないため、化合物はやや溶解性であることが好ましい。金属化合物の反応性に応じて、本発明のプロセスの初期に用いられるすべての金属化合物の好ましくは少なくとも約0.01重量%、より好ましくは少なくとも約0.05重量%、また最も好ましくは少なくとも約0.1重量%は、反応条件で溶解した状態にある(すべての金属化合物の全重量を基準とし、酸化物として計算する)。このようにして、金属化合物の適切な接触が確保される。
【0059】
本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態に留まる金属化合物(複数可)の形態および組織は、本発明のプロセスの間、ある程度保持され得ることが明らかになっている。そのため、特定の形態および組織を有する金属化合物粒子を使用することにより、最終バルク触媒組成物に含有されるバルク金属酸化物粒子の形態および組織を、少なくともある程度までは制御することができる。本発明の文脈における「形態および組織」とは、細孔容積、細孔径分布、表面積、粒子構造、および粒度を意味する。例えば、すべての金属種が溶解しないように酸の添加を低減することで酸性度(pH)を制御することにより、(例えば、炭酸ニッケル、酸化モリブデン、またはタングステン酸が使用される場合)、少なくとも原材料の一部分を少なくとも部分的に固体の状態の手段に保つことによって、形態的特性が保存され得る。
【0060】
一般的に、バルク金属酸化物粒子の表面積は、本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態に留まる金属化合物の表面積の少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、またより好ましくは少なくとも約80%である。本明細書において、表面積は、この金属化合物の金属酸化物として計算した重量当たりの表面積として表される。また、酸化物バルク金属粒子の中央細孔径(窒素吸着により決定)は、本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態に留まる金属化合物の中央細孔径の少なくとも約40%、また好ましくは少なくとも約50%である。さらに、酸化物金属粒子の細孔容積(窒素吸着により決定)は、一般的に、本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態に留まる金属化合物の細孔容積の少なくとも約40%、また好ましくは少なくとも約50%であり、本明細書において細孔容積は、この金属化合物の金属酸化物として計算した重量当たりの細孔の容積として表される。
【0061】
粒度の保持は、一般的に、プロセスの間(特に混合または混練等のステップの最中)に酸化物バルク金属粒子による機械的損傷の程度に依存する。これらの処置が短期かつ温和なものであれば、粒径はかなりの程度保持され得る。この場合、酸化物バルク金属粒子の中央粒径は、一般的に、本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態に留まる金属化合物の中央粒径の少なくとも約80%、また好ましくは少なくとも約90%である
。粒度もまた、特に、さらなる材料が存在する場合に、噴霧乾燥等の処置による影響を受け得る。そのような処理中に粒度分布を制御するための好適な条件を選択することは、当業者の能力の範囲内である。
【0062】
少なくとも部分的に固体の状態で添加され、かつ大きな中央粒径を有する金属化合物が選択される場合、他の金属化合物は、大きな金属化合物粒子の外層とのみ反応すると考えられる。この場合、いわゆる「コア‐シェル」構造のバルク金属酸化物粒子が生じる(後にさらに詳細に記載する)。
【0063】
金属化合物(複数可)の適切な形態および組織は、前もって形成した好適な金属化合物を適用すること、または好適な形態および組織が得られる条件下において、上記沈殿または再結晶化または当業者に既知である他のいずれかの技法を用いて、これらの金属化合物を調製すること、のいずれかにより達成され得る。適切な沈殿条件の妥当な選択は、ルーチン実験により行われ得る。
【0064】
高い触媒活性を有する最終バルク触媒組成物を得るために、本発明のプロセスの間、少なくと部分的に固体の状態である金属化合物または化合物は、多孔質の金属化合物であることが好ましい。これらの金属化合物の合計細孔容積および細孔径分布は、従来の水素化処理触媒のそれらとおおむね類似していることが望ましい。従来の水素化処理触媒は、一般的に、水銀または水ポロシメトリーにより決定される約0.05〜約5ml/g、好ましくは約0.1〜約4ml/g、より好ましくは約0.1〜約3ml/g、また最も好ましくは約0.1〜約2ml/gの細孔容積を有する。さらに、従来の水素化処理触媒は、一般的に、B.E.T.方法によって決定される少なくとも約10m/g、より好ましくは少なくとも約50m/g、また最も好ましくは少なくとも約100m/gの表面積を有する。
【0065】
本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態である金属化合物または化合物の中央粒径は、好ましくは約0.5μm〜約5000μm、より好ましくは約1μm〜約500μm、また最も好ましくは約2μm〜約150μmの範囲である。一般的に、金属化合物の粒度が小さいほど、それらの活性は高くなり、前述した好ましい下限値を下回る粒度を有する主要な金属化合物は、本発明の望ましい実施形態となるであろうが、健康、安全、および環境的な理由から、そのような小さな粒子の取り扱いは、特別な注意を必要とし、よって好ましくない。
【0066】
バルク金属粒子の調製中にナノサイズ粒子が存在するため、バルク金属粒子の粒度分布および細孔径分布は、そのようなナノ粒子の非存在下において調製されたバルク金属粒子と比べて、より小さな粒径へと移動する。好ましくは触媒組成物は、全細孔容積の少なくとも75パーセントが、モード細孔径の約20オングストローム下〜モード細孔径の約20オングストローム上の直径の細孔であり、上記全細孔容積の10パーセント未満が、60オングストローム未満の直径の細孔であり、上記全細孔容積の3パーセントを上回る〜10パーセント未満が、110オングストロームを上回る直径の細孔であり、上記組成物のモード細孔径は約70〜約90オングストロームの範囲である、細孔径分布を有する。
【0067】
典型的には、ナノ粒子が存在することにより、表面積が少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも50%増加する。また、ナノ粒子の添加とともに、細孔容積は減少する。細孔径は、バルク多金属粒子の調製中にナノ粒子が使用されると、20%よりも多く、または30%よりもさらに多く、または50%よりも多く減少することが明らかになっている。しかし、好ましくは、VGOの水素化処理については、十分に高い触媒性能を保持するために、平均細孔径(MPD)は約7nmの値を下回って低下するべきではない。この影響および高いナノ粒子含有量では活性の向上
が横ばいになるようであるという事実を考慮すると、反応混合物に添加されるナノ粒子の量は、金属酸化物として計算すると、使用される金属の合計量に対して好ましくは約10重量%未満である。
【0068】
以下に、金属化合物を合わせる間の好ましいプロセス条件と、(その後の)反応ステップを記載する。
金属化合物の組み合わせ
【0069】
金属化合物を合わせる間のプロセス条件は、一般的に重要ではない。すべての化合物を、それらの自然のPhで(懸濁液または溶液が適用される場合)、周囲温度で添加することが可能である。一般的に、添加中に化合物の容易かつ安全な取り扱いを確保するために、添加される金属化合物の温度を反応混合物の大気圧の沸点より低く維持することが好ましい。しかし、所望の場合、反応混合物の大気圧の沸点より高い温度または異なるpH値が適用され得る。反応ステップが昇温で実行される場合は、反応混合物に添加される懸濁液および任意選択的に溶液は、一般的に事前に加熱して反応温度と等しい温度まで上昇させることができる。
【0070】
前述したように、1つ以上の金属化合物の添加は、すでに合わせられた金属化合物が互いに反応している間に実行することもできる。この場合、金属化合物の組み合わせおよびその反応は単一のプロセスステップと重複し、またそれを構成する。
反応ステップ
【0071】
反応が信号の変化によって示唆されるIR分光法またはRaman分光法等の従来の技法を用いて、反応を監視することができる。いくつかの場合において、反応混合物のpHにおける変化を監視することにより反応を監視することも可能である。さらに、X線回折により反応の完全性を監視することができる。これについては、「本発明のバルク触媒組成物」の項目の下により詳細に記載する。
【0072】
ナノ粒子と一緒になった金属化合物、好ましくは粘土鉱物ナノ粒子を、それらの添加中および/または添加後に、一定期間、特定の温度で撹拌して反応を起こさせる。反応温度は、好ましくは約0℃〜約300℃、より好ましくは約50℃〜約300℃、さらにより好ましくは約70℃〜約200℃の範囲であり、また最も好ましくは約70℃〜約180℃の範囲である。温度が反応混合物の大気圧の沸点を下回る場合は、プロセスは一般的に大気圧で実行される。この温度を上回ると、反応は一般的に昇温で、好ましくはオートクレーブおよび/または静的ミキサー内で実行される。
【0073】
典型的には、混合物は、反応ステップの間はその自然のpHで維持され、上記pHは、好ましくは約0〜約12の範囲、より好ましくは約1〜約10の範囲、またさらにより好ましくは約3〜約8の範囲である。上に記載したように、反応ステップの間にすべての金属が溶解しないようにpHおよび温度が選択されることが好ましい。
【0074】
反応時間は、選択される反応経路によって、約1分〜数日間であり得るが、一般的に約1分〜約100時間の範囲である。金属化合物のうちの少なくとも1つが反応の間に少なくとも部分的に固体の状態であるプロセスでは、好ましくは約1時間〜約30時間、より好ましくは約4〜約30時間、さらにより好ましくは約10〜約25時間、またより好ましくは約15時間〜約25時間である。上で述べたように、反応時間は温度によって決まる。
【0075】
反応ステップの後、必要に応じて、残っている可能性のあるいずれかのプロトン性液体から、例えば濾過を用いて、固体を分離することができる。本発明のプロセスは、バッチ
プロセスおよび連続プロセスの両方として実行することができる。
(B)後続のプロセスステップ
【0076】
上記(A)で記載したプロセスから得られるバルク金属粒子は、金属酸化物粒子であることに留意されたい。上記(A)で記載したプロセスに続いて、水素化処理プロセスに使用する前に、バルク金属粒子を以下のプロセスのうちの1つ以上に供することができる。
i)結合剤材料、結合剤前駆体材料、従来の水素化処理触媒、分解化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物、追加の遷移金属、希土類金属、またはそれらの混合物の群から選択されるさらなる材料との配合、
ii)噴霧乾燥、(フラッシュ)乾燥、粉砕、混練、スラリー混合、乾式もしくは湿式混合、またはそれらの組み合わせ、
iii)成形、
(iv)乾燥および/または熱処理、ならびに、
(v)硫化。
【0077】
これらのプロセスステップを(i)〜(v)として列挙したのは便宜のためのみであって、これらのプロセスがこの順序で行われるべきであると制約する主旨のものではない。これらのプロセスステップを、以下により詳細に説明する。
プロセスステップ(i)
【0078】
前述したさらなる材料の配合は、バルク金属粒子を調製する間に、複数の段階で行うことができる。しかし、さらなる材料のいかなる添加も、金属化合物とナノ粒子との間の相互作用に影響を与えるべきではないため、これらのさらなる材料と合わせる前に、第VIB族、第VIII族の非貴金属化合物とナノ粒子とを合わせ、好ましくは少なくとも部分的にバルク金属粒子と反応させることが好ましい。
【0079】
これらの材料は、熱処理されているかまたは熱処理されていない乾燥した状態で、湿潤および/または懸濁させた状態で、および/または溶液として、添加することができる。それらは、任意のステップ(ii)の前および/または任意のステップ(ii)の最中および/または後で添加され得るが、好ましくは最終的な成形ステップ(iii)の前に添加され得る。成形後に、例えば含浸によって、さらなる添加剤が添加され得る(これらは、さらなる配合材料とは称されない)。
【0080】
好ましくは、材料は、バルク金属粒子の調製後および噴霧乾燥もしくはいずれかの代替技法の前に添加されるか、または噴霧乾燥もしくは代替技法が適用されない場合は成形の前に添加される。任意選択的に、上記のように調製されるバルク金属粒子は、材料と配合される前に、固体‐液体分離に供することができる。固体‐液体分離の後、任意選択的に洗浄ステップを含むことができる。さらに、任意選択的な固体‐液体分離および乾燥ステップの後および材料と配合される前に、バルク触媒粒子を熱処理することが可能である。
【0081】
上記すべてのプロセスの代替形態において、「バルク金属粒子を材料と配合する」という用語は、材料がバルク金属粒子に添加されるかまたはその逆であり、得られる組成物が混合されることを意味する。混合は、好ましくは、液体の存在下で行われる(「湿式混合」)。これにより、最終バルク触媒組成物の機械的強度が向上する。
【0082】
バルク金属粒子を結合剤材料と配合することおよび/またはバルク金属粒子の調製中に結合剤材料を組み込むことは、特にバルク金属粒子の中央粒度が、少なくとも約0.5μm、より好ましくは少なくとも約1μm、最も好ましくは少なくとも約2μmであるが、好ましくは約5000μm以下、より好ましくは約1000μm以下、さらにより好ましくは約500μm以下、また最も好ましくは約150μm以下の範囲である場合に、特に
機械的強度の高いバルク触媒組成物をもたらすことが明らかになっている。さらにより好ましくは、中央粒径は約1〜約150μmの範囲であり、また最も好ましくは約2〜約150μmの範囲である。
【0083】
バルク金属粒子を材料と配合すると、この材料に埋め込まれたバルク金属粒子がもたらされるか、またはその逆がもたらされる。通常は、バルク金属粒子の形態は、得られるバルク触媒組成物中で本質的に維持される。
【0084】
上記のように、材料は、結合剤材料、結合剤前駆体材料、従来の水素化処理触媒、分解化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物、追加の遷移金属、希土類金属、またはそれらの混合物、結合剤材料、従来の水素化処理触媒、分解化合物、またはそれらの混合物から構成される群から選択され得る。これらの材料を、以下により詳細に記載する。
【0085】
適用される結合剤材料は、水素化処理触媒中の結合剤として従来適用されるいずれかの材料であり得る。その例は、シリカ、シリカ‐アルミナ(従来のシリカ‐アルミナ、シリカ被覆アルミナ、およびアルミナ被覆シリカ等)、アルミナ((擬)ベーマイトまたはギブサイト等)、チタニア、チタニア被覆アルミナ、ジルコニア、ヒドロタルサイト、またはそれらの混合物である。好ましい結合剤は、シリカ、シリカ‐アルミナ、アルミナ、チタニア、チタニア被覆アルミナ、ジルコニア、ベントナイト、またはそれらの混合物である。これらの結合剤は、そのままで、または解膠後に適用され得る。
【0086】
本発明のプロセスの間に上記結合剤のうちのいずれかに変換される、これらの結合剤の前駆体を使用することも可能である。好適な前駆体は、例えば、アルカリ金属アルミン酸塩(アルミナ結合剤を得るため)、水ガラス(シリカ結合剤を得るため)、アルカリ金属アルミン酸塩と水ガラスの混合物(シリカ‐アルミナ結合剤を得るため)、アルミニウムクロロヒドロール(aluminium chlorohydrol)、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、またはそれらの混合物である。
【0087】
所望の場合、バルク金属粒子と配合する前、および/またはその調製中に添加される前に、結合剤材料を第VIB族金属含有化合物および/または第VIII族の非貴金属含有化合物と配合することができる。結合剤材料をこれらの金属含有化合物のうちのいずれかと配合するステップは、結合剤をこれらの材料に含浸させることにより実行され得る。好適な含浸技法は当業者に既知である。結合剤を解膠する必要がある場合は、第VIB族および/または第VIII族の非貴金属を含有する化合物の存在下において、解膠を実行することも可能である。
【0088】
アルミナが結合剤として使用される場合、該アルミナの表面積は、一般的に、B.E.T.法で測定される約50〜約600m/g、また好ましくは約100〜約450m/gの範囲である。アルミナの細孔容積は、好ましくは窒素吸着により測定される約0.1〜約1.5ml/gの範囲である。その特性決定の前に、600℃で1時間アルミナの熱処理を行う。
【0089】
一般的に、本発明のプロセスにおいて添加される結合剤材料は、バルク金属粒子よりも低い触媒活性を有するか、またはまったく触媒活性を有しない。その結果として、結合剤材料を添加することにより、バルク触媒組成物の活性が低下され得る。さらに、結合剤材料の添加は、最終バルク触媒組成物の機械的強度において顕著な増加をもたらす。したがって、本発明のプロセスにおいて添加される結合剤材料の量は、一般的に、最終バルク触媒組成物の所望の活性および/または所望の機械的強度によって決まる。想定される触媒的用途に応じて、全組成物の0〜約95重量%の量の結合剤が好適であり得る。しかし、
本発明のバルク金属粒子から得られる非常に高い活性を利用するために、添加される結合剤の量は、一般的に、全組成物の約1〜約75重量%の範囲であり、好ましくは約1〜約50重量%、より好ましくは約1〜約30重量%、さらにより好ましくは約3〜約20重量%、また最も好ましくは約4〜約12重量%である。
【0090】
本発明のバルク金属粒子は、既知の水素化脱硫、水素化脱窒素、または水素化分解触媒を含む、従来の水素化処理触媒と合わせることもできる。これらの触媒は、使用済みの、再生された、新しい、または硫化された状態で添加することができる。所望の場合、本発明のプロセスに適用する前に、従来の水素化処理触媒を粉砕するか、または他のいずれかの従来様式において処理することができる。
【0091】
本発明のバルク金属粒子は、分解成分と合わせることもできる。本発明による分解化合物は、陽イオン粘土、陰イオン粘土等のいずれかの従来の分解化合物、ゼオライト(例えば、ZSM−5、(超安定)ゼオライトY、ゼオライトX、ALPO、SAPO、MCM−41)等の結晶性の分解化合物、シリカ‐アルミナ等の非結晶性の分解化合物、またはそれらの混合物である。いくつかの材料は、結合剤および分解化合物としての役割を同時に果たし得ることが明らかであろう。例えば、シリカ‐アルミナは、分解機能と結合機能を同時に有し得る。
【0092】
所望の場合、バルク金属粒子と配合する前に、分解化合物を第VIB族金属および/または第VIII族の非貴金属と配合することができる。分解化合物をこれらの金属のうちのいずれかと配合することは、分解化合物をこれらの材料に含浸させる形式を採ることができる。
【0093】
一般的に、上記分解化合物のうちのどれを添加するかは(添加する場合は)、最終バルク触媒組成物の想定される触媒的用途によって決まる。結晶性の分解化合物は、好ましくは、得られる組成物が水素化分解に適用される場合に添加される。シリカ‐アルミナまたは陽イオン粘土等の他の分解化合物は、好ましくは、最終バルク触媒組成物が水素化処理用途または温和な水素化分解において使用される場合に添加される。添加される分解材料の量は、最終組成物の所望の活性および想定される用途によって決まり、したがって、バルク触媒組成物の全重量を基準として0〜約90重量%と異なり得る。
【0094】
バルク金属粒子と合わせることができるリン含有化合物は、リン酸アンモニウム、リン酸、または有機リン含有化合物を含む。リン含有化合物は、成形ステップの前および/または成形ステップの後で添加することができる。結合剤材料を解膠する必要がある場合は、リン含有化合物は解膠にも使用することができる。例えば、アルミナ結合剤は、リン酸か、またはリン酸と硝酸との混合物に接触させることにより解膠することができる。
【0095】
バルク金属粒子と合わせることができるホウ素含有化合物は、ホウ酸、またはホウ素とモリブデンおよび/もしくはタングステンとのヘテロポリ化合物を含む。典型的に使用され得るフッ素含有化合物は、フッ化アンモニウムである。典型的なケイ素含有化合物は、水ガラス、シリカゲル、オルトケイ酸テトラエチル、またはケイ素とモリブデンおよび/もしくはタングステンとのヘテロポリ化合物である。さらに、FとSi、BおよびPの組み合わせがそれぞれ所望である場合は、フルオロケイ酸、ホウフッ化水素酸、ジフルオロリン酸、またはヘキサフルオロリン酸等の化合物が適用され得る。
【0096】
好適な追加の遷移金属は、例えば、レニウム、マンガン、ルテニウム、ロジウム、インジウム、クロム、バナジウム、鉄、プラチナ、パラジウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、コバルト、ニッケル、モリブデン、またはタングステンである。これらの金属は、成形ステップの前に、本発明のプロセスのいずれの段階でも添加することができる。本発明
のプロセスの間にこれらの金属を添加することとは別に、それとともに最終バルク触媒組成物を配合することも可能である。したがって、最終バルク触媒組成物を、これらの金属のうちのいずれかを含む含浸溶液に含浸させることが可能である。
プロセスステップ(ii)
【0097】
上記(さらなる)材料のうちのいずれかを任意選択的に含むバルク金属粒子は、噴霧乾燥、(フラッシュ)乾燥、粉砕、混練、スラリー混合、乾式もしくは湿式混合、またはそれらの組み合わせに供することができ、湿式混合と混練、またはスラリー混合と噴霧乾燥の組み合わせが好ましい。
【0098】
これらの技法は、上記(さらなる)材料を添加する(添加する場合は)前または後、固体‐液体分離の後、熱処理の前または後、および再度湿潤させた後のうちのいずれかに適用され得る。
【0099】
好ましくは、バルク金属粒子は、上記材料うちのいずれかと配合されるとともに、上記技法のうちのいずれかに供される。噴霧乾燥、(フラッシュ)乾燥、粉砕、混練、スラリー混合、乾式もしくは湿式混合、またはそれらの組み合わせである上記技法のうちのいずれかを適用することにより、バルク金属粒子と、上記材料のうちのいずれかとの間の混合の程度が改良されると考えられる。これは、上記方法のうちのいずれかを適用する前および後に、材料が添加される場合に当てはまる。しかし、ステップ(ii)の前に材料を添加することが、一般的に好ましい。ステップ(ii)の後で材料を添加する場合は、好ましくは、成形等のいずれかのさらなるプロセスステップの前に、いずれかの従来技法を用いて得られる組成物を完全に混合する。噴霧乾燥の利点は、この技法が適用される場合、廃水流がまったく生じないことである。
【0100】
典型的には、噴霧乾燥は約100℃〜約200℃、また好ましくは約120℃〜約180℃の範囲の出口温度で実行される。
【0101】
乾式混合とは、乾燥した状態のバルク金属粒子を、乾燥した状態の上記材料のうちのいずれかと混合することを意味する。湿式混合は、一般的に、バルク金属粒子および任意選択的に上記材料のうちのいずれかを粉末または湿潤させた濾過ケーキとして含む湿潤濾過ケーキを混合して、その均一なペーストを形成することを含む。
プロセスステップ(iii)
【0102】
所望の場合、上記(さらなる)材料のうちのいずれかを任意選択的に含むバルク触媒は、ステップ(ii)が適用された後で任意選択的に成形することができる。成形は、押出、ペレット化、ビーズ化、および/または噴霧乾燥を含む。バルク触媒組成物が、スラリー型反応器、流動床、移動床、または膨張床において適用される場合は、一般的に、噴霧乾燥またはビーズ化が適用されることに留意されるべきである。固定床または沸騰床(ebullating bed)の適用のために、一般的に、バルク触媒組成物は、押出、ペレット化、および/またはビーズ化される。後者の場合、成形ステップの前または最中のいずれかのステップで、成形を容易にするために従来的に使用されるいずれかの添加剤が添加され得る。これらの添加剤は、ステアリン酸アルミニウム、界面活性剤、グラフファイト、デンプン、メチルセルロース、ベントナイト、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、またはそれらの混合物を含み得る。さらに、アルミナが結合剤として使用される場合は、アルミナを解膠して押出物の機械的強度を増加するために、成形ステップの前に硝酸等の酸を添加することが望ましい可能性がある。
【0103】
成形が、押出、ビーズ化、および/または噴霧乾燥を含む場合は、水等の液体の存在下において成形が実行されることが好ましい。好ましくは、押出および/またはビーズ化に
は、LOIとして表される成形混合物中の液体の量は、約20〜約80%の範囲である。
【0104】
所望の場合、上記材料のうちのいずれかと、上記材料のうちのいずれかを任意選択的に含むバルク金属粒子との同軸押出が適用され得る。より具体的には、2つの混合物を同時に押出することが可能であり、その場合は、上記材料のうちのいずれかを任意選択的に含むバルク金属粒子は内側の押出媒体に存在し、一方、バルク金属粒子を含まない上記材料のうちのいずれかは外側の押出媒体に存在するか、またはその逆である。
プロセスステップ(iv)
【0105】
好ましくは約100℃を上回る任意選択的な乾燥ステップの後で、得られた成形後のバルク触媒組成物を必要に応じて熱処理することができる。しかし、熱処理は本発明のプロセスに必須ではない。本発明による「熱処理」とは、窒素等の不活性ガスまたは空気もしくは純酸素等の酸素含有ガス中で、例えば約100℃〜約600℃、好ましくは約200℃〜約550℃、より好ましくは約250℃〜約450℃の温度で、約0.5〜約48時間の様々な時間で行われる処理を意味する。熱処理は、水流の存在下で実行することができる。
【0106】
上記すべてのプロセスにおいて、液体の量を制御しなければならない。バルク触媒組成物を噴霧乾燥に供する前に、液体の量が少な過ぎる場合は、追加の液体を添加しなければならない。反対に、バルク触媒組成物の押出の前に、液体の量が多過ぎる場合は、濾過、デカンテーション、または蒸発等の固体‐液体分離技法を用いて液体の量を減少しなければならず、必要であれば、得られた材料を乾燥し、その後である程度まで再度湿潤させることができる。上記すべてのプロセスステップについて、液体の量を適切に制御することは、当業者の技術の範囲内である。
プロセスステップ(v)
【0107】
本発明のプロセスは、硫化ステップをさらに含み得る。硫化は、一般的に、バルク金属粒子を、それらの調製直後、またはプロセスステップ(i)〜(iv)のうちのいずれか1つの後に、元素硫黄、硫化水素、ジメチルジスルフィド(DMDS)、または有機もしくは無機のポリ硫化物等の硫黄含有化合物と接触させることにより実行される。硫化ステップは、液相および気相において実行することができる。硫化は、バルク触媒組成物の調製後であるがステップ(i)の前および/またはステップ(i)の後であるがステップ(ii)の前および/またはステップ(ii)の後であるがステップ(iii)の前および/またはステップ(iii)の後であるがステップ(iv)の前および/またはステップ(iv)の後に実行することができる。得られた金属硫化物がそれらの酸化物に戻るいずれかのプロセスステップの前に硫化が実行されないことが好ましい。そのようなプロセスステップは、酸素含有雰囲気下で実行される場合、例えば、熱処理または噴霧乾燥または他のいずれかの高温処理である。その結果として、バルク触媒組成物が、酸素含有雰囲気下で噴霧乾燥および/もしくはいずれかの代替技法、または熱処理に供される場合、好ましくは、硫化はこれらの方法のうちのいずれかの適用の後で実行される。当然のことながら、これらの方法が不活性雰囲気下で適用される場合にも、硫化はこれらの方法の前に実行することができる。
【0108】
バルク触媒組成物が固定床プロセスにおいて使用される場合、好ましくは、硫化は成型ステップの後で実行され、適用される場合は、酸化雰囲気下での最終的な熱処理の後である。
【0109】
一般的に、硫化はインシチュー(in situ) および/またはエクスシチュー(ex situ)で実行することができる。好ましくは、硫化はエクスシチュー(ex situ)で実行される、すなわち、硫化バルク触媒組成物が水素化処理装置に充填され
る前に、別個の反応器内で硫化が実行される。さらに、バルク触媒組成物がエクスシチュー(ex situ)およびインシチュー(in situ)の両方で硫化されることが好ましい。
【0110】
本発明の好ましいプロセスは、上記バルク金属粒子を調製する以下の連続的なプロセスステップを含む:得られたバルク金属粒子の、例えば結合剤とのスラリー混合、得られた組成物の噴霧乾燥、再湿潤、混練、押出、乾燥、焼成、および硫化。別の好ましいプロセスの実施形態は、上記バルク金属粒子を調製する以下の連続的なプロセスステップを含む:濾過による粒子の単離、濾過ケーキと結合剤等の材料との湿式混合、混練、押出、乾燥、焼成、および硫化。
本発明のバルク触媒組成物
【0111】
本発明は、上記プロセスによって得られるバルク触媒組成物にさらに関連する。好ましくは、本発明は、プロセスステップ(A)、および任意選択的に上記プロセスステップB(i)〜(v)のうちの1つ以上によって得られるバルク触媒組成物に関連する。
【0112】
好ましい実施形態において、本発明は、上記プロセスによって得られるバルク触媒組成物に関連し、プロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態である金属化合物(複数可)の形態は、バルク触媒組成物においてある程度保持される。この形態の保持については、「本発明のプロセス」の項目の下により詳細に記載する。
酸化物バルク触媒組成物
【0113】
さらに、本発明は、少なくとも1つの第VIII族非貴金属および少なくとも1つの第VIB族金属を含むバルク金属粒子を含むバルク触媒組成物に関連し、金属は、それらの酸化物の状態でバルク触媒組成物中に存在し、特徴的な半値全幅は、第VIB族金属がモリブデン、タングステン、モリブデンとタングステンの組み合わせ、またはモリブデン、タングステン、およびクロムの組み合わせである場合は2.5°を超えず、または第VIB族金属がモリブデンとクロムの組み合わせ、またはタングステンとクロムの組み合わせである場合は、4.0°を超えない。
【0114】
「特性決定の方法」の項目の下に記載するように、特徴的な半値全幅は、2θ=53.9°(±1.0°)(第VIB族金属がモリブデン、タングステン、モリブデンとタングステンの組み合わせ、またはモリブデン、タングステン、およびクロムの組み合わせである場合)、または2θ=63.5°(±0.6°)(第VIB族金属がモリブデンとクロムの組み合わせ、またはタングステンとクロムの組み合わせである場合)に位置するピークに基づいて決定される。
【0115】
好ましくは、特徴的な半値全幅は、2.2°を超えず、より好ましくは2.0°、さらにより好ましくは1.8°、また最も好ましくは、1.6°を超えず(第VIB族金属がモリブデン、タングステン、モリブデンとタングステンの組み合わせ、またはモリブデン、タングステン、およびクロムの組み合わせである場合)、または3.5°を超えず、より好ましくは3.0°、さらにより好ましくは2.5°、また最も好ましくは2.0°を超えない(第VIB族金属がモリブデンとクロムの組み合わせ、またはタングステンとクロムの組み合わせである場合)。
【0116】
好ましくは、第VIB族金属がタングステンを含む場合、X線回折パターンは、2θ=35.9°(±0.6°)、38.7°(±0.6°)、40.8°(±0.7°)、53.9(±1.0°)、および64.5(±1.2°)の位置でピークを示す。タングステンを含む本発明の金属酸化物触媒の典型的なX線回折パターンを、図1に示す。
【0117】
本発明の酸化物バルク触媒組成物の特徴的な半値全幅から、本発明の触媒の微細構造は、国際特許出願公開第WO9903578号または米国特許第3,678,124号に記載される共沈殿によって調製される対応する触媒の微細構造とは異なると推測することができる。
【0118】
バルク金属粒子のX線回折パターンは、好ましくは、反応させる金属化合物に特徴的であるいずれのピークも含有しない。当然のことながら、所望の場合は、これらの金属化合物のうちの少なくとも1つに特徴的である1つ以上のピークをさらに含むX線回折パターンによって特徴付けられるバルク金属粒子を得るように、金属化合物の量を選択することも可能である。例えば、本発明のプロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態である金属化合物が大量に添加される場合、またはこの金属化合物が大きな結晶粒子の形態で添加される場合、得られたバルク金属粒子のX線回折パターン中に、この金属化合物が少量見られる。
【0119】
第VIB族対第VIII族非貴金属のモル比は、一般的に約10:1〜約1:10、また好ましくは約3:1〜約1:3の範囲である。コア‐シェル構造の粒子の場合は、当然のことながら、シェル内に含有される金属にこの比率が当てはまる。異なる第VIB族金属の互いの比率は、一般的に重要ではない。1つより多くの第VIII族非貴金属が適用される場合も同様である。モリブデンおよびタングステンが第VIB族金属として存在する場合、モリブデン:タングステンの比率は、好ましくは約9:1〜約1:19、より好ましくは約3:1〜約1:9、最も好ましくは約3:1〜約1:6の範囲である。
【0120】
バルク金属粒子は、唯一の第VIII族非貴金属および唯一の第VIB族金属化合物を含み得る。この実施形態において、好ましい2つの金属から成る組み合わせは、ニッケル‐タングステン、コバルト‐タングステン、ニッケル‐モリブデン、およびコバルト‐モリブデンを含み、より好ましくは、ニッケル‐タングステンを含む。
【0121】
しかし、バルク金属粒子は、少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と、少なくとも2つの第VIB族金属化合物とを等しく含み得る。好適な第VIB族金属は、クロム、モリブデン、タングステン、またはそれらの混合物を含み、モリブデンとタングステンの組み合わせが最も好ましい。好適な第VIII族非貴金属は、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの混合物を含み、好ましくはニッケルおよび/またはコバルトを含む。好ましくは、ニッケル、モリブデン、およびタングステン、またはニッケル、コバルト、モリブデン、およびタングステン、またはコバルト、モリブデン、およびタングステンを含む金属の組み合わせが、本発明のバルク金属粒子に含有される。
【0122】
好ましくは、これらのバルク触媒組成物に含まれる酸化物バルク金属粒子は、B.E.T.法を用いて測定される少なくとも約10m/g、より好ましくは少なくとも約50m/g、また最も好ましくは少なくとも約80m/gのB.E.T.表面積を有する。
【0123】
バルク金属粒子の調製中に、結合剤材料、分解化合物、または従来の水素化処理触媒等の上記(さらなる)材料のうちの1つも添加されなかった場合、バルク触媒粒子は、約85〜約99.5重量%の第VIB族および第VIII族の非貴金属を含む。バルク金属粒子の調製中に上記材料のうちのいずれかが添加された場合、それらは、さらに好ましくは約50重量%を上回る、またより好ましくは約70重量%を上回る第VIB族および第VIII族の非貴金属を含む(バルク金属粒子の全重量を基準とし、酸化物として計算され、残りは上記(さらなる)材料のうちのいずれかである)。第VIB族および第VIII族の非貴金属の量は、TEM−EDX、SEM−EDX、AAS、ICP、および/またはこれらの方法の適切な組み合わせを用いて決定することができる。TEMおよびSEM
−EDXは、ナノメートルまたはマイクロメートル規模の濃度を決定するために使用され、AASおよびICPはバルク法である。
【0124】
酸化物バルク金属粒子の中央細孔径(細孔容積の50%は上記直径を下回り、他の50%はそれを上回る)は、好ましくは約1〜約25nm、より好ましくは約2〜約15nm、また最も好ましくは約5〜約15nm(N吸着により決定)である。
【0125】
酸化物バルク金属粒子の合計細孔容積は、N吸着により決定すると、好ましくは少なくとも約0.05ml/g、より好ましくは少なくとも約0.1ml/g、また最も好ましくは約0.2ml/gを上回る。
【0126】
バルク金属粒子の細孔径分布は、従来の水素化処理触媒のものと類似することが所望される。より具体的には、バルク金属粒子は、好ましくは、窒素吸着によって決定される約3〜約25nmの中央細孔径、窒素吸着によって決定される約0.05〜約5ml/g、より好ましくは約0.05〜約4ml/g、さらにより好ましくは約0.05〜約3ml/g、また最も好ましくは約0.1〜約2ml/gの細孔容積を有する。
【0127】
さらに、これらのバルク金属粒子は、好ましくは、少なくとも約0.5μm、より好ましくは少なくとも約1μm、最も好ましくは少なくとも約2μmであるが、好ましくは約5000μm以下、より好ましくは約1000μm以下、さらにより好ましくは約500μm以下、また最も好ましくは約150μm以下の範囲の中央粒度を有する。さらにより好ましくは、中央粒径は、約1〜約150μmの範囲であり、また最も好ましくは約2〜約150μmの範囲である。
【0128】
前述してきたように、所望の場合、本発明のプロセスを用いてコア‐シェル構造のバルク金属粒子を調製することが可能である。これらの粒子中、金属のうちの少なくとも1つは、バルク金属粒子中に異方的に分布する。その金属化合物は本発明のプロセスの間、少なくと部分的に固体の状態である金属の濃度は、一般的に、内側部分、すなわち、最終バルク金属粒子のコアにおいて、外側部分、すなわち最終バルク金属粒子のシェルよりも高い。一般的に、最終バルク金属粒子のシェルにおけるこの金属の濃度は、最終バルク金属粒子のコアにおけるこの金属の濃度の多くとも約95%、またほとんどの場合は多くとも約90%である。さらに、本発明のプロセスの間、溶質の状態で適用される金属化合物の金属も、最終バルク金属粒子中に異方的に分布することが明らかになっている。より具体的には、最終バルク金属粒子のコアにおけるこの金属の濃度は、一般的に、シェルにおけるこの金属の濃度よりも低い。さらにより具体的には、最終バルク金属粒子のコアにおけるこの金属の濃度は、シェルにおけるこの金属の濃度の多くとも約80%、また頻繁には多くとも約70%、またしばしば多くとも約60%である。上記異方性金属の分布は、もしある場合は、バルク触媒組成物が熱処理および/または硫化されているかどうかにかかわらず、本発明のバルク触媒組成物中に見いだされ得ることに留意されるべきである。上記の場合、シェルは一般的に約10〜約1,000nmの厚さを有する。
【0129】
上記異方性金属の分布は、本発明のプロセスの間に形成され得る/得られ得るが、第VIB族および第VIII族の非貴金属は、一般的にバルク金属粒子中に均一に分布する。この実施形態が、一般的に好まれる。
【0130】
好ましくは、バルク触媒組成物は、好適な結合剤材料を追加的に含む。好適な結合剤材料は、好ましくは上記の材料である。粒子は、一般的に、粒子を一緒に保持するための接着剤としての役割を果たす結合剤材料中に埋め込まれている。好ましくは、粒子は、結合剤の中で均一に分布する。結合剤の存在は、一般的に、最終バルク触媒組成物の機械的強度の増加をもたらす。一般的に、本発明のバルク触媒組成物は、少なくとも約1lbs/
mm、また好ましくは少なくとも約3lbs/mmの側面破壊強度として示される機械的強度を有する(直径1〜2mmの押出物で測定)。
【0131】
結合剤の量は、とりわけ、バルク触媒組成物の所望の活性によって決まる。想定される触媒的用途に応じて、全組成物の0〜約95重量%の量の結合剤が好適であり得る。しかし、本発明の組成物の非常に高い活性を利用するために、結合剤の量は一般的に、全組成物の0〜約75重量%の範囲であり、好ましくは0〜約50重量%、より好ましくは0〜約30重量%である。
【0132】
所望の場合、バルク触媒組成物は、好適な分解化合物を含み得る。好適な分解化合物は、好ましくは、上記の化合物である。分解化合物の量は、好ましくは、バルク触媒組成物の全重量を基準として、0〜約90重量%の範囲である。
【0133】
さらに、バルク触媒組成物は、従来の水素化処理触媒を含み得る。従来の水素化処理触媒は、一般的に、上記結合剤材料および分解化合物のうちのいずれかを含み得る。従来の水素化処理触媒の水素付加金属は、一般的に、ニッケルまたはコバルトとモリブデンまたはタングステンの組み合わせ等の第VIB族および第VIII族の非貴金属を含む。好適な従来の水素化処理触媒は、水素化処理または水素化分解触媒を含む。これらの触媒は、使用済みの、再生された、新しい、または硫化された状態であり得る。
【0134】
さらに、バルク触媒組成物は、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物、追加の遷移金属、希土類金属、またはそれらの混合物等の、従来的に水素化処理触媒中に存在するいずれかのさらなる材料も含み得る。これらのさらなる材料についての詳細は上に記載した。遷移金属または希土類金属は、一般的に、バルク触媒組成物が酸化雰囲気中で熱処理されている場合は酸化物の形態で存在し、および/または、バルク触媒組成物が硫化されている場合は硫化形態で存在する。
【0135】
機械的強度の高いバルク触媒組成物を得るために、本発明のバルク触媒組成物が低いマクロ多孔性を有することが望ましい可能性がある。好ましくは、バルク触媒組成物の細孔容積の約30%未満、より好ましくは約20%未満が、約100nmより大きな直径の細孔である(水銀圧入により決定、接触角度:130°)。
【0136】
本発明の酸化物バルク触媒組成物は、金属酸化物として計算すると、バルク触媒組成物の全重量を基準として、一般的に、約10〜約100重量%、好ましくは約25〜約100重量%、より好ましくは約45〜約100重量%、また最も好ましくは約65〜約100重量%の第VIB族および第VIII族の非貴金属を含む。
【0137】
日本国特許第09000929号に記載される、アルミナ担体上の第VIB族および第VIII族の非貴金属溶液との段階的な含浸によって調製される触媒は、バルク金属粒子を一切含まず、したがって、本発明の触媒とは完全に異なる形態を有することに留意されたい。
硫化バルク触媒組成物
【0138】
所望の場合、本発明のバルク触媒組成物を硫化することができる。その結果として、本発明は、少なくとも1つの第VIII族非貴金属および少なくとも1つの第VIB族金属を含み、使用条件下における硫化の程度が約90%を超えない硫化物バルク金属粒子を含むバルク触媒組成物にさらに関する。
【0139】
上記硫化バルク触媒組成物は、上記(さらなる)材料のうちのいずれかを含み得ることは明白であろう。
【0140】
本発明は、
i)ナノ粒子、少なくとも1つの第VIII族非貴金属、および少なくとも2つの第VIB族金属を含み、使用条件下における硫化の程度が約90%を超えない硫化物バルク金属粒子、および、
ii)結合剤材料、従来の水素化処理触媒、分解化合物、またはそれらの混合物から成る群から選択される材料、
を含む成形および硫化バルク触媒組成物にさらに関する。
【0141】
使用条件下における硫化物バルク金属粒子の硫化の程度が、約90%を超えないことが必須である。好ましくは、使用条件下における硫化の程度は、約10〜約90%、より好ましくは約20〜約90%、また最も好ましくは約40〜約90%の範囲である。硫化の程度は、「特性決定の方法」の項目の下に記載するように決定される。
【0142】
本発明のプロセスにおいて従来の硫化技法が適用される場合、使用前の硫化物バルク金属粒子の硫化の程度は、使用条件下における硫化の程度と本質的に同一である。しかし、非常に特殊な硫化技法が適用される場合、使用中は硫化物または元素硫黄の一部が触媒から除去されるため、触媒の使用前の硫化の程度は、その使用中よりも高い可能性がある。この場合、硫化の程度は、触媒の使用中に得られるものであり、その使用前に得られるものではない。使用条件は、「本発明による使用」の章に記載される条件である。触媒が「使用条件下にある」ということは、触媒がその反応環境と平衡に達するのに十分長い期間、触媒がこれらの条件に供されることを意味する。
【0143】
本発明のバルク触媒組成物が、第VIII族非貴金属二硫化物を本質的に含まないことがさらに好ましい。より具体的には、第VIII族非貴金属は、好ましくは、x/yが約0.5〜約1.5の範囲で(第VIII族非貴金属)として存在する。
【0144】
成形および硫化触媒粒子は、多くの異なる形状を有し得る。好適な形状は、球形、円柱形、円形、および対称または非対称の多葉形(例えば、3葉形および4葉形)を含む。押出、ビーズ化、またはピル化から得られる粒子は、一般的に約0.2〜約10mmの範囲の直径を有し、その長さは同様に約0.5〜約20mmの範囲である。噴霧乾燥から得られる粒子は、一般的に約1μm〜約100μmの範囲の中央粒径を有する。
【0145】
結合剤材料、分解化合物、従来の水素化処理触媒、およびいずれかのさらなる材料、ならびにその量を上に記載する。さらに、硫化バルク触媒組成物に含有される第VIII族非貴金属および第VIB族金属についての詳細およびその量を、上に記載する。
【0146】
酸化物バルク触媒組成物について上述したコア‐シェル構造は硫化によって破壊されないこと、すなわち、硫化バルク触媒組成物もこのコア‐シェル構造を含み得ることに留意されたい。
【0147】
硫化触媒は、少なくとも部分的に結晶性鉱物であること、すなわち、硫化バルク金属粒子のX線回折パターンは、一般的に、第VIII族非貴金属および第VIB族金属硫化物に特徴的ないくつかの結晶ピークを含むことに、さらに留意されたい。
【0148】
酸化物バルク触媒組成物については、好ましくは硫化物バルク触媒組成物の細孔容積の約30%未満、より好ましくは約20%未満が、約100nmより大きな直径の細孔である(水銀圧入により決定、接触角度:130°)。
【0149】
一般的に、硫化物バルク金属粒子の中央粒径は、酸化物バルク金属粒子について上で記
載したものと同一である。
本発明による使用
【0150】
本発明によるバルク触媒組成物は、水素化処理炭化水素原料に特に有用である。そのため、本発明は、炭化水素原料を水素化処理するためのプロセスに関連し、上記プロセスは、炭化水素原料を、水素化処理条件下で、少なくとも1つの第VIII族非貴金属、少なくとも1つの第VIB族金属、およびナノ粒子を含むバルク金属粒子を含む触媒組成物と接触させることを含む。
【0151】
本発明による触媒組成物は、100〜450℃の温度、5〜1200バール(好ましくは300バールを下回る)の水素圧、0.05〜10h−1の液空間速度、および約18〜約1800m/m(100〜10,000SCF/B)の水素処理ガス比(hydrogen treat gas rates)等の幅広い反応条件下で、複数の原料を処理するための実質的にすべての水素化処理プロセスにおいて使用することができる。本発明の文脈において使用される水素化処理という用語は、上記温度および圧力で炭化水素原料を水素と反応させるすべてのプロセスを包含し、水素付加、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族化、水素化異性化、水素化脱ろう、水素化精製、水素化仕上、および水素化分解を含む。
【0152】
本発明の触媒組成物は、炭化水素原料から窒素および硫黄を除去するのに特に効果的である。そのため、好ましい実施形態において、本発明の触媒は、炭化水素原料から硫黄、窒素、または硫黄と窒素の組み合わせを除去するために使用される。炭化水素原料と触媒組成物との接触は水素含有処理ガスの存在下において起こり、効果的な水素化処理条件下で反応が操作される。炭化水素原料と触媒組成物との接触は、原料と比べるとより少ない窒素、硫黄、または両方を有する大気条件下において液体である、炭化水素生成物を生成する。
【0153】
炭化水素原料は、水素および炭素を含む材料である。幅広い石油および化学炭化水素原料を、本発明により水素化処理することができる。炭化水素原料は、抜頭原油、水素化分解物、ラフィネート、水素化精製油、常圧軽油および減圧軽油、コーカー軽油、常圧残油および減圧残油、脱れき油、脱ろう油、スラックワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、およびそれらの混合物等の、原油、タールサンド、石炭液化、シェール油、および炭化水素合成から得られるまたはそれらに由来するものを含む。好適な原料は、軽油、潤滑油、および残油等の比較的軽質の蒸留分から重質原料までに及ぶ。軽質留分の原料の非限定例は、ナフサ(典型的な沸騰範囲約25℃〜約210℃)、ディーゼル(典型的な沸騰範囲約150℃〜約400℃)、灯油またはジェット燃料(典型的な沸騰範囲約150℃〜約250℃)等を含む。重質原料の非限定例は、減圧(または重質)軽油(典型的な沸騰範囲約315℃〜約610℃)、ラフィネート、潤滑油、循環油、含ろう油等を含む。好ましい炭化水素原料は、約150℃〜約650℃、好都合には約150℃〜約450℃の沸騰範囲を有する。
【0154】
本発明の触媒組成物は、炭化水素原料から硫黄、窒素、または硫黄と窒素の組み合わせを除去するのに特に効果的である。炭化水素原料は、実際には、しばしば硫黄および/または窒素含有有機化合物の形態で、窒素および硫黄汚染物質を含有することが多い。原料の窒素含有量は、約5000wppmまでの窒素、好ましくは約2000wppmまでの窒素、より好ましくは1000wppmまでの窒素、および最も好ましくは500wppmまでの窒素であり得る。窒素汚染物質は、塩基性であるかまたは非塩基性であり得る。塩基性窒素汚染物質の例としては、キノリンおよび置換キノリンが挙げられ、非塩基性窒素種の例としては、カルバゾールおよび置換カルバゾールが挙げられる。原料の硫黄含有量は、0.05重量%〜3重量%、また典型的には2重量%未満であり得る。
【0155】
好ましい実施形態において、効果的な水素化処理条件は効果的な水素化精製条件であり、つまり、(i)水素付加または(ii)水添分解のうち少なくとも1つに効果的な条件である。一般的に、水素化精製条件は、フィード中のヘテロ原子の少なくとも一部分の除去、および原料中の芳香族の少なくとも一部の水素付加をもたらす。水素化精製条件は、典型的には約100℃〜約450℃、好ましくは約200℃〜約370℃、より好ましくは約230℃〜約350℃の範囲の温度を含む。典型的な液空間速度(「LHSV」)は、約0.05〜約20hr−1、好ましくは約0.5〜約5hr−1の範囲である。いずれの効果的な圧力が用いられ得、圧力は、典型的には約5〜約250バールの範囲である。水素(H)対油の比率は、一般的に約18〜約1800m/m(100〜10000SCF/B)の範囲である。プロセス条件は、当業者に既知であるように、フィードの沸騰範囲およびスペシエーションによって異なり得る。一般的に、フィードの沸点が高いほど、条件の厳格性も増大する。次の表は、フィードの範囲についての典型的な条件を示すのに役立つ。
【表1】

【0156】
プロセスは、水素または水素含有処理ガスを使用する。処理ガスは、実質的に純粋な水素を含み得るか、または典型的には製油所の水素流中に見出される他の成分の混合物であり得る。処理ガスは、少量の硫化水素を含有すること、より好ましくは全く含有しないことが好ましい。処理ガスの純度は、少なくとも約50容量%の水素、好ましくは少なくとも約75容量%の水素、またより好ましくは少なくとも約90容量%の水素であるべきである。処理ガスは、純粋または実質的に純粋な水素であり得る。
【0157】
水素化処理は、反応段階で起こる。反応段階は1つ以上の反応器または反応ゾーンを含み得、そのそれぞれが、同じかまたは異なる触媒の1つ以上の触媒床を含む。少なくとも1つの床は、本発明の触媒組成物を含有する。他の種類の触媒床/反応器を使用することができるが、固定床が好ましい。そのような他の種類の触媒床は、流動床、沸騰床、スラリー床、および移動床を含む。反応器間、反応ゾーン間、または同じ反応器内の触媒床間の段間冷却または加熱を用いることができる。水素化処理の間に生成された熱の一部を回収することができる。この熱回収の選択肢を利用できない場合、従来の冷却は、冷却用水もしくは冷却用空気等の冷却設備によって、または水素クエンチ流(hydrogen quench stream)を用いて行なわれ得る。このように、最適反応温度をより容易に維持することができる。
特性決定の方法
【0158】
下記の方法は、本発明に最も適切であると思われる特性決定の方法を示すものである。しかし、当業者は、生成物の特性決定に同様に利用することができるラマン分光法または赤外線分光法等の他の技法を認識するであろう。
1.側面破壊強度の決定
【0159】
はじめに、例えば押出物粒子の長さを測定し、次いで可動ピストンを用いて該押出物粒子を加圧充填(25lbs/8.6秒)に供した。粒子を破壊するために必要な力を測定した。少なくとも40個の押出物粒子で手順を繰り返し、その平均を単位長さ(mm)当たりの力(lbs)として計算した。該方法は、好ましくは7mmを超えない長さの成形された粒子に適用した。
2.N吸着による細孔容積
【0160】
吸着の測定は、J.C.P.Broekhoff(Delft University of Technology 1969)の博士論文に記載されるように実行し、その開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
3.添加される固体金属化合物の量
【0161】
定性的決定:本発明のプロセスの間、固体金属化合物の存在は、少なくとも、金属化合物が可視光線の波長よりも大きな直径の粒子の形態で存在する場合、目視検査により容易に検出することができる。当然のことながら、当業者に既知である準弾性光散乱(QELS)または近前方散乱等の方法も、本発明のプロセスの間どの時点においても、すべての金属が固体の状態であることを検証するために用いることができる。
【0162】
定量的決定:少なくとも部分的に固体の状態で添加される金属化合物が懸濁液(複数可)として添加される場合、本発明のプロセスの間に添加される固体金属化合物の量は、懸濁液(複数可)中に含有されるすべての固体材料が固体濾過ケーキとして収集されるような方法で、添加中に適用される条件下(温度、pH、圧力、液体の量)において、添加される懸濁液(複数可)を濾過することにより決定することができる。乾燥した固体濾過ケーキの重量から、標準的な技法を用いて固体金属化合物の重量を決定することができる。当然のことながら、固体金属化合物の他に固体結合剤等のさらなる固体化合物が濾過ケーキ中に存在する場合は、この固体および乾燥した結合剤の重量は、乾燥した固体濾過ケーキの重量から差し引かれなければならない。
【0163】
濾過ケーキ中の固体金属化合物の量も、原子吸光分析(AAS)、XRF、湿式化学分析、またはICP等の標準的な技法により決定することができる。
【0164】
少なくとも部分的に固体の状態で添加される金属化合物が、湿潤したまたは乾燥した状態で添加される場合、一般的に濾過は不可能である。この場合、固体金属化合物の重量は、乾燥ベースで対応する最初に用いた金属化合物の重量と同様であると見なされる。すべての金属化合物の全重量は、乾燥ベースで金属酸化物として計算した、最初に用いたすべての金属化合物の量である。
4.特徴的な半値全幅
【0165】
酸化物触媒の特徴的な半値全幅を、直線バックグラウンドを用いて、触媒のX線回折パターンに基づいて決定した。
a)第VIB族金属がモリブデンおよびタングステンである場合:特徴的な半値全幅は、2θ=53.6°(±0.7°)におけるピークの半値全幅(2θで)である。
b)第VIB族金属がモリブデンおよびクロムである場合:特徴的な半値全幅は、2θ=63.5°(±0.6°)におけるピークの半値全幅(2θで)である。
c)第VIB族金属がタングステンおよびクロムである場合:特徴的な半値全幅は、2θ=53.6°(±0.7°)におけるピークの半値全幅(2θで)である。
d)第VIB族金属がモリブデン、タングステン、およびクロムである場合:特徴的な半値全幅は、2θ=53.6°(±0.7°)におけるピークの半値全幅(2θで)である。
【0166】
X線回折パターンの決定には、グラファイトモノクロメータを備える標準的な粉末回折装置(例えばPhilips PW1050)を使用することができる。測定条件は以下のように選択することができる:
・X線発生装置の設定:40kVおよび40mA
・波長:1.5418オングストローム
・発散および散乱防止スリット:1°
・検出器スリット:0.2mm
・ステップサイズ:0.04(°2θ)
・時間/ステップ:20秒
5.硫化の程度
【0167】
硫化物バルク触媒組成物中に含有されるいずれの硫黄も、誘導炉内で加熱することにより酸素流中で酸化した。得られた二酸化硫黄を、二酸化硫黄のIR特性に基づいて、検出システムを備える赤外セルを用いて分析した。硫黄の量を得るために、二酸化硫黄に関連する信号を既知の標準物質の較正で得られた信号と比較した。次いで、硫化の程度を、硫化物バルク金属粒子中に含有される硫黄の量と、すべての第VIB族および第VIII族の非貴金属がそれらの二硫化物の形態で存在する場合にバルク金属粒子中に存在するであろう硫黄の量との間の比率として計算した。
【0168】
当業者には、その硫化の程度が測定される触媒は、硫化の程度の決定の前に不活性雰囲気下で取り扱われることは明白であろう。
6.ナノ粒子の寸法
【0169】
分散したナノ粒子の寸法は、透過型電子顕微鏡法(TEM)(例えば、粒子が分散した懸濁液を注意深く蒸発させた後か、または、粘土ナノ粒子はバルク触媒とは異なる形態を有するので、バルク触媒粒子のTEM分析を用いて)によって、または光分散法(例えばスラリー中で)によって決定され得る。正確かつ絶対的な値の寸法を確立することは困難だが、本発明の目的において、好ましくは少なくとも約50%である十分に多くの部分が1マイクロメートルを下回るサイズを有することを決定するためには十分である。この評価は、当業者に知られるように、好ましくは少なくとも約500×約500ナノメートルの面積を網羅するTEM写真を撮影し、約500ナノメートル未満のサイズを有する相当数の粒子が存在するかどうかを代表的な写真上で評価することによって行うことができる。
【0170】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するものである。
実施例E1(Ni1Mo0.5W0.5+3w%ラポナイト)
【0171】
20.3gのラポナイト(LOI=11.2%、Rockwood Additives Limitedから入手可能なラポナイト RD)を、別個の撹拌槽内の水に約1時間懸濁させた。供給者の仕様によると、完全な層間剥離後に、厚さ約0.92nmであり、約25nmの横方向の寸法および900m−1を超える表面積を有する円盤状プレートレットが得られるはずである。粒子の長さおよびスタッキングは、TEMを用いて検証した。粘土粒子のほとんどは、実際には約25nmの長さの単層から構成されていた。しかし、粘土粒子のごく一部は完全に層間剥離されておらず、すなわち、粒子は長く(最
長60nm)、多層(最高5層)から構成されていた。
【0172】
別途、1211gの炭酸水酸化ニッケルペースト(10.7重量%Ni、2.21モルのNi)を水に懸濁させ、スラリーが均一になるまで混合物を撹拌した。次いで、161gのMoO(99.1%MoO、1.1モルのMo)および277gのHWO(92.7重量%WO、1.03モルのW)をニッケルスラリーに添加し、スラリーが均一になるまで混合物を撹拌した。次いでラポナイト懸濁液を添加し、スラリーが均一になるまで混合物を撹拌した。反応は開放槽で実行した。全プロセスを通して、すなわち、原材料を合わせている時およびそれらを反応させている時に、反応混合物を撹拌した。温度を95℃まで上昇させることにより反応を実行し、混合物をその温度で24時間維持した。反応混合物のpHは、反応開始時には5.2、そして反応時間の終わりには5.0であった。
【0173】
次いでスラリーを冷却し、その後で濾過した。得られた濾過ケーキを界面活性剤および15.3gのアタパルジャイト(ケイ酸マグネシウムアルミニウムを含む細長い粘土鉱物、混練機中で1マイクロメートルを上回る横方向の寸法を有する)(LOI=20.5%)と合わせた。さらに、27.6gの微顆粒状SiO(LOI=11.8重量%、表面積約190m/g、中央粒径22マイクロメートル)をケーキに添加した。濾過ケーキの含水量に応じて、押出混合物の含水量を調節し(水を添加することにより、または水を蒸発させることにより)、押出可能な混合物を得た。次いで混合物を押出し、120℃の空気中で一晩乾燥させ、340℃で30分間焼成した。ラポナイトの量(金属酸化物+ラポナイトの合計量に対する)は3.0重量%であった。最終生成物(=約1.9重量%のアタパルジャイトおよび約3.8重量%のシリカも含む焼成した最終的な触媒)中のラポナイトの量は2.8重量%であった。この触媒を、次いで硫化し、下の試験手順1および2に記載するように試験を行った。
比較実験C1(Ni1Mo0.5W0.5)
【0174】
この実験では、ラポナイト懸濁液を添加せずに実施例E1を繰り返した。次いでこの触媒を硫化し、下の試験手順1および2に記載するように試験を行った。
試験手順1および2を用いたE1およびC1の試験
【0175】
実施例E1およびC1において調製された触媒を、4つの異なる試験条件(それぞれTC1.1〜TC1.4)を用いた減圧軽油(VGO)原料の水素化精製において下に記載する試験手順1で、および2つの異なる試験条件(それぞれTC2.1およびTC2.2)を用いた超低硫黄ディーゼル(ULSD)原料の水素化精製において試験手順2で試験を行った。試験条件および試験結果を表3に示す。各試験手順ごとに、硫黄(ppmでのS)および窒素(ppmでのN)の残留レベルを、硫黄除去(HDS)および窒素除去(HDN)の活性(相対的容量活性:relative volume activity((RVA))で示している。各試験条件ごとに比較実験の触媒の活性を100%に設定し、本発明による触媒の活性、比較用触媒に対するパーセンテージで表した。CBDは、触媒の充填かさ密度である。試験手順の詳細を、以下により詳細に記載する。
試験手順1:VGO試験
【0176】
管型の上昇流反応器内で触媒を試験した。各反応器の管に、等量のSiC粒子と混合し、SiC粒子の層間に挟んだ触媒50mlを含有させた。試験を行う前に、320℃の温度、圧力40バール、水素対油比(Nl/l)300、および液空間速度(LHSV)(1/h)1.76で、合計硫黄含有量3.7重量%までジメチルジスルフィドを添加した表1に記載するフィードを用いて、液相予備硫化により触媒を予備硫化した。次いで、表1に示す特性を有するVGO原料の水素化処理において、予備硫化触媒の試験を行った。
【表2】

【0177】
実施例E1およびC1の触媒についてのVGO試験の結果を表3に示す。
試験手順2:ULSD試験
【0178】
触媒の量は50mlの代わりに10ml、液空間速度(LHSV)(1/h)は1.76の代わりに3.00、およびジメチルジスルフィドを添加した原料は表2の超低硫黄フィードであったことを除いて、試験手順1と同様に触媒の試験を行った。次いで、表2に示す特性を有するディーゼル原料の水素化処理において、予備硫化触媒の試験を行った。
【表3】

【0179】
実施例E1およびC1の触媒についてのVGO試験の結果を表3に示す。
【表4】

【表5】

実施例E2(Ni1W1+3w% ラポナイト)
【0180】
1.8gのラポナイト(LOI=11.2%、Rockwool Additives
Limitedより入手可能なラポナイトRD)を、別個の撹拌槽内の水に約1時間懸濁させた。50.0gのタングステン酸HWO(0.2mol W)を、23.5gの炭酸水酸化ニッケル2NiCO*3Ni(OH)*4HO(0.2molのNi)とともに1リットルの水中でスラリー化した。次いでラポナイト懸濁液を添加し、スラ
リーが均一になるまで混合物を撹拌した。懸濁液を95℃まで加熱し、連続的に撹拌しがらその温度で24時間(一晩)維持した。その後、懸濁液を濾過した。得られた固体を120℃で16時間(一晩)乾燥させた。得られた固体をペレット化し、ペレットを粉砕して篩過により40〜60メッシュ画分を単離した。次いで材料を300℃で1時間焼成した。次いで材料を硫化し、下の試験手順3に記載するように試験を行った。
実施例E3(Ni1Mo0.5W0.5+3w% ラポナイト)
【0181】
実施例1と同様の触媒を硫化し、下の試験手順3に記載するように試験を行った。
比較実験C2(Ni1Mo0.5W0.5 ラポナイトなし)
【0182】
比較実験1と同様の触媒を硫化し、下の試験手順3に記載するように試験を行った。
比較実験C3(Ni1W1 ラポナイトなし)
【0183】
実施例E2に記載されるように触媒を調製したが、ラポナイト懸濁液は添加しなかった。触媒を硫化し、下の試験手順3に記載するように試験を行った。
比較実験C4(Ni1W1 ラポナイトなし:150℃
【0184】
大気圧下95℃で開放型の槽内で24時間行う代わりに、自己発生圧力下で約6時間、マイクロ波照射で加熱したオートクレーブ内で150℃で反応を実行したことを除いて、比較実験C3の手順と同様の手順で触媒を調製した。2.35gの炭酸Ni(0.02モルのNi)を、4.99グラムのタングステン酸(0.02モルのW)とともに100ccの水に添加した。密封した全容積275ccのWeflon(登録商標)槽に懸濁液を入れ、マイクロ波照射で10℃/分で150℃まで加熱し、連続的に撹拌しながら自己発生圧力下でその温度で6時間維持した。サンプルを室温まで冷却し、固体を濾過して120℃で一晩乾燥させた。得られた材料をペレット化し、ペレットを粉砕して篩過により40〜60メッシュ画分を単離した。次いで材料を300℃で1時間焼成した。次いで材料を硫化し、下の試験手順3を用いて試験を行った。
比較実験C5 (Ni1W1 ラポナイトなし:90℃、7日間)
【0185】
開放型の槽内で、7日間90℃で反応を実行したことを除いて、比較実験C3の手順と同様の手順で触媒を調製した。
【0186】
50.0gのタングステン酸HWO(0.2モルのW)を、23.5gの炭酸水酸化ニッケル2NiCO*3Ni(OH)*4HO(0.2モルのNi)とともに、1リットルの水中でスラリー化した。2つの固体の懸濁液を90℃まで加熱し、連続的に撹拌しながらその温度で7日間維持した。今回は最後に、懸濁液を濾過した。得られた固体を120℃で16時間(一晩)乾燥させた。得られた固体をペレット化し、ペレットを粉砕して篩過により40〜60メッシュ画分を単離した。次いで材料を300℃で1時間焼成した。次いで材料を硫化し、試験手順を用いて試験を行った。
試験手順3:ディーゼル
【0187】
管型の下降流反応器内で、ディーゼル水素化処理プロセスにおいて触媒E2、E3、およびC2〜C5の試験を行った。各反応器の管に、等量のSiC粒子と混合し、SiC粒子の層間に挟んだ触媒10mlを含有させた。試験を行う前に、合計硫黄含有量3.7重量%までジメチルジスルフィドを添加した表4に記載するフィードを用いた液相予備硫化により触媒を予備硫化した。次いで、表4に示す特性を有するディーゼル原料の水素化処理において、予備硫化触媒の試験を行った。
【表6】

【0188】
表5に示す2つの条件下で触媒の試験を行った。試験結果を表6に示し、HDS、HDN、N、およびSの後の接尾語1および2は、表5に提示される条件1および2を意味する。
【表7】

【0189】
表6に示した結果は、ナノサイズ粘土の非存在下において長い反応時間または熱水条件が用いられる場合でも、ナノサイズ粘土は、ナノサイズ粘土なしで調製した触媒と比較して優秀な水素化精製性能を持つ触媒の調製が可能であることを示す。
【表8】

実施例E4(Ni1W1+10重量% ラポナイト)
【0190】
7.3gのラポナイト(LOI=11.2%、Rockwool Additives
Limitedより入手可能なラポナイトRD)を、開放型の撹拌槽内の1リットルの
水に約1時間懸濁させた。実施例E1で述べたように、この実施例で使用されるラポナイトは、厚さ約0.92nmの、約25nmの横方向の寸法を有する1次粒子で形成される円盤状プレートレットである。製造業者によると、ラポナイトは、900m.g−1を超える表面積を有する。49.9gのタングステン酸HWO(92.7重量%のWO、0.2モルのW)および23.5gの炭酸水酸化ニッケル2NiCO*3Ni(OH)*4HO(0.2モルのNi)を、撹拌しながらラポナイト懸濁液に添加した。スラリーが均一になるまで混合物を撹拌した。懸濁液を90℃まで加熱し、撹拌しながらその温度で20時間維持した。懸濁液のpHは5.7と測定された。今回は最後に懸濁液を濾過した。得られた固体を90℃で一晩乾燥させた。図2の上部XRDパターンに示すように、得られた固体のX線回折は、本発明による触媒の典型的な特徴を示した。
比較実施例C6(Ni1W1+10重量% Actigel208)
【0191】
ラポナイトの代わりにActigel208を使用したことを除いて、実施例E4の手順を繰り返した。Actigel208は、平均して熱さ約3nmおよび横方向の寸法約2ミクロンの棒状粒子を有する、高品質の精製された自己分散性天然粘土である。得られた固体のX線パターンが、図2の下部XRDパターンに示されており、所望のバルク金属粒子に特徴的なパターンではなく、むしろ未反応の金属種に特徴的なピークを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク金属酸化物粒子を調製するためのプロセスであって、(i)液体中に分散すると約1μm未満の寸法を有する分散性ナノ粒子と、(ii)少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と、(iii)少なくとも1つの第VIB族金属化合物と、(iv)プロトン性液体とを、反応混合物中で合わせるステップと、前記ナノ粒子の存在下において、前記少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と前記少なくとも1つの第VIB族金属とを反応させるステップと、を含み、前記ナノ粒子は、前記少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物および前記少なくとも1つの第VIB族金属化合とは組成が異なる、プロセス。
【請求項2】
前記ナノ粒子は、粘土鉱物粒子である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物および少なくとも2つの第VIB族金属化合物は、前記反応混合物中で合わせられる、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記反応混合物は、第V族金属化合物をさらに含む、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記金属化合物は、前記プロセスの間、少なくとも部分的に固体の状態である、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ナノ粒子は、前記金属化合物の後で前記反応混合物に添加される、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応混合物は、
a)プロトン性液体中で、少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物の第1の懸濁液を調製するステップと、
b)プロトン性液体中で、少なくとも1つの第VIB族金属化合物の第2の懸濁液を調製するステップと、
c)前記第1の懸濁液と前記第2の懸濁液を一緒に合わせるステップと、
によって調製され、
前記第1、第2、または両方の懸濁液のいずれかはナノ粒子を含有し、また前記ナノ粒子は、前記少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物および前記少なくとも1つの第VIB族金属化合物とは組成が異なる、
請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物は、ナノ粒子の存在下において堆積した炭酸(水酸化)ニッケルを含有する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
好ましくは粘土鉱物ナノ粒子である前記ナノ粒子は、0.1〜1.5nmの厚さ、100〜1500のアスペクト比、および250m/gを上回る表面積を有するプレートレットを含む、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ナノ粒子は、スメクタイト族の合成粘土、層状ケイ酸、カオリナイト、ラポナイト、ハロイサイト、およびそれらの混合物から構成される群から選択される粘土鉱物粒子である、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記粘土鉱物ナノ粒子は、本質的にラポナイトから構成される、請求項10に記載のプ
ロセス。
【請求項12】
バルク触媒組成物であって、請求項1〜11のうちのいずれか1項による前記プロセスによって得ることが可能な、(i)液体中に分散すると約1μm未満の寸法を有する分散性ナノ粒子と、(ii)少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と、(iii)少なくとも1つの第VIB族金属化合物と、を有するバルク金属の酸化物、硫化物、または酸化物および硫化物の粒子の組み合わせを含み、前記ナノ粒子は、前記少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物および前記少なくとも1つの第VIB族金属化合物とは組成が異なる、バルク触媒組成物。
【請求項13】
バルク触媒組成物であって、(i)液体中に分散すると約1μm未満の寸法を有する分散性ナノ粒子と、(ii)少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と、(iii)少なくとも1つの第VIB族金属化合物と、を含むバルク金属の酸化物、硫化物、または酸化物および硫化物の粒子の組み合わせを含み、前記バルク金属酸化物粒子は、前記ナノ粒子と、少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と、少なくとも1つの第VIB族金属化合物と、プロトン性液体とを反応混合物中で合わせること、および前記ナノ粒子の存在下において、前記少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物と前記少なくとも1つの第VIB族金属化合物とを反応させることにより調製され、前記ナノ粒子は、前記少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物および前記少なくとも1つの第VIB族金属化合物とは組成が異なる、バルク触媒組成物。
【請求項14】
バルク金属の酸化物および/または硫化物の粒子を含むバルク触媒組成物であって、前記バルク金属の粒子は、
約50重量%〜約99.5重量%(前記バルク金属の酸化物および/または硫化物触媒粒子の全重量に対する金属酸化物の重量として計算される)の少なくとも1つの第VIII族非貴金属および少なくとも1つの第VIB族金属(前記金属は、酸化物および/または硫化物の形態である)と、
液体中に分散すると1μm未満の寸法を有する(前記バルク金属粒子の全重量に対して)約0.5重量%〜約15重量%のナノ粒子と、を含み、前記ナノ粒子は、前記少なくとも1つの第VIII族非貴金属化合物および前記少なくとも1つの第VIB族金属化合物とは組成が異なる、バルク触媒組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第VIII族非貴金属は、コバルトおよび/またはニッケルである、請求項14に記載のバルク触媒組成物。
【請求項16】
ニッケルおよび/またはコバルトは、第VIII族非貴金属全体の少なくとも約90重量%(酸化物として計算される)を表す、請求項15に記載のバルク触媒組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第VIB族金属は、モリブデンおよび/またはタングステンである、請求項14〜16のうちのいずれかに記載のバルク触媒組成物。
【請求項18】
唯一の前記第VIII族非貴金属はニッケルであり、また唯一の前記第VIB族金属はタングステンである、請求項14〜17のうちのいずれかに記載のバルク触媒組成物。
【請求項19】
前記バルク金属の酸化物および/または硫化物の粒子は、モリブデンおよびタングステンを含み、モリブデン:タングステンのモル比は約3:1〜約1:6の範囲である、請求項14に記載のバルク触媒組成物。
【請求項20】
約3:1〜約1:3の範囲の第VIB族金属対第VIII族非貴金属のモル比によって特徴付けられる、請求項14〜18のうちのいずれかに記載のバルク触媒組成物。
【請求項21】
第V族金属をさらに含む、請求項14〜20のうちのいずれかに記載のバルク触媒組成物。
【請求項22】
第V族金属対第VIB族金属のモル比は、約0.01〜約5の間である、請求項21に記載のバルク触媒組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−505249(P2011−505249A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537050(P2010−537050)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/085536
【国際公開番号】WO2009/073785
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(509129255)
【Fターム(参考)】