説明

バルブの弁座構造

【課題】 塑性変形が抑制される弁座の弾性による付勢力で高いシール性を確保することができるとともに、弁体閉弁時の封止流体圧で弁座を付勢して高いシール性を確保することができ、内面シール構造の回転弁、あるいは外面シール構造のボール弁などのバルブに好適なバルブの弁座構造を提供する。
【解決手段】 弁箱スリーブ21の先端部21bに耐熱・耐摩耗性にすぐれた金属によって構成したベロー型弁座27の基部28を弁箱スリーブ21の流出口20bに取付ける。このベロー型弁座27は、谷部27aと山部27bの複数部位が軸方向に連続しており、先端部には、回転弁体24裏面の凹球面状の弁体シート部23に接離する弁箱側シート部30を設けてある。そして、ベロー型弁座27の軸線Cから基部28の外端までの取付半径Rと、シール半径R1との関係を、R≦R1好ましくはR<R1に設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバルブの弁座構造に関し、内面シール構造の回転弁、あるいは外面シール構造のボール弁やバタフライ弁などのバルブの弁座に好適なバルブの弁座構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バルブの弁座構造として、図6に示す偏心内面シール弁に適用されたものがある。このバルブの弁座構造は、弁箱1に挿入した弁箱スリーブ2の出口2a近傍に径外に張り出して設けた弁箱側シート部3と、弁体4の裏面に形成した凹球面状の弁体側シート部5とを備え、弁箱側シート部3は、弁箱スリーブ2の出口2a近傍に径外に張り出して形成した鍔部6に嵌着された硬質ゴムからなる弾性シール材7によって構成されており、弁体4は、弁箱スリーブ2の出口2aに対して偏心した位置を中心として回動自在に弁箱スリーブ2に取付けられている。したがって、実線で示す弁体4の閉弁状態は、弾性シール材7に凹球面状の弁体側シート部5を密着させて、弁箱スリーブ2の出口2aを弁体4で閉塞することによって得られ、この閉弁状態で弁箱1の流入口として機能する弁箱スリーブ2の入口2bから落下導入されたたとえば粉体が弁体4の内面、つまり凹球面状の弁体側シート部5の上面に堆積される。そして、この閉弁状態から図6の二点鎖線で示すように、弁体4を90度回転させて、弁箱スリーブ2の出口2aを開放すると、弁体4の内面に堆積されていた前記粉体が前記出口2aから落下することになる(特許文献1)。
【0003】
一方、他のバルブの弁座構造として、図7に示すバタフライ弁に適用されたものがある。このバルブの弁座構造は、弁箱8に基部9aが取付けられた断面略L字状の金属板製の弁座本体9を有し、この弁座本体9の先端側折曲片を弁箱側シート部9bとして機能させ、図示されているような弁体10の閉弁時には、弁箱側シート部9bの弾性により該弁箱側シート部9bを弁体10周縁部の弁体側シート部10aに圧接させるとともに、弁箱8と金属板製の弁座本体9の基部側垂直片の間に介設した皿バネからなる押圧力調整板11の押圧力付勢によって、弁箱側シート部9bをより強力に弁体側シート部10aに圧接させてシール性を保持するように構成されている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】実公昭52−117631号公報
【特許文献2】実開平5−8140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載のバルブの弁座構造は、弁体4が実線で示す閉弁状態にあるときには、弁体4の裏面に形成した凹球面状の弁体側シート部5が弾性シール材7からなる弁箱側シート部3に密着することによって、シール性を保持するように構成されているので、弁箱1内に弁体4を押し上げ方向に付勢する流体圧(たとえばガス圧)Pが作用する配管系に、偏心内面シール弁を適用している場合は、前記ガス圧Pによって凹球面状の弁体側シート部5が弾性シール材7からなる弁箱側シート部3方向に付勢されて、凹球面状の弁体側シート部5と弾性シール材7からなる弁箱側シート部3との密着力を高め、閉弁時のシール性を向上させることができる。
【0006】
ところが、前記ガス圧Pが作用しない配管系に偏心内面シール弁が適用されると、閉弁時のシール性は、弁体4が実線で示す閉弁位置に回動してきたときに決定される弁体側シート部5と弁箱側シート部3との密着力のみに委ねられることになるので、弁体4の閉弁状態において、弁体4の自重および該弁体4を取付けている回動軸4Aと軸受(図示省略)との間に生じる軸受隙間の影響で、弁体4が軸受隙間分に相当して下降すると、弁体側シート部5と弁箱側シート部3との密着力が低下して、閉弁時のシール性を低下させるとともに、弁体側シート部5と弁箱側シート部3との間に粉体が噛み込まれて、弁箱側シート部3を摩耗損傷させ、シール性をより一層低下させる問題がある。
【0007】
一方、前記特許文献2に記載のバルブの弁座構造は、弁体10の閉弁時には、弁箱側シート部9bの弾性により該弁箱側シート部9bを弁体10周縁部の弁体側シート部10aに圧接させるとともに、皿バネからなる押圧力調整板11の押圧力付勢によって、弁箱側シート部9bをより強力に弁体側シート部10aに圧接させてシール性を保持することができる。このため、弁体10に流体圧P1が作用して、弁体10が該弁体4を取付けている回転軸(図示省略)と軸受との間に生じる軸受隙間の影響で流体圧P1の方向に移動しても、図示している弁体10の半円部分では、弁箱側シート部9bの弾性によって弁体10の移動を吸収して、弁箱側シート部9bを弁体10周縁部の弁体側シート部10aに圧接させることでシール性を確保することができる。しかし、図示されていない弁体10の半円部分では、弁体10自体の歪みや前記軸受隙間の影響で、弁体側シート部10aが弁箱側シート部9bに過剰に押し付けられることになって、弁箱側シート部9bを塑性変形させ、弁箱側シート部9bと弁体側シート部10aとの圧接力を低下させて、閉弁時のシール性を低下させるといった相反する状態が生じる。
【0008】
また、弁体10の閉弁時において、弁体10に流体圧Pが作用すると、図示している弁体10の半円部分では、弁体10自体の歪みや前記軸受隙間の影響で、弁体10が流体圧Pの方向に移動して、弁体側シート部10aを弁箱側シート部9bに過剰に押し付けることになって、弁箱側シート部9bを塑性変形させ、弁箱側シート部9bと弁体側シート部10aとの圧接力を低下させて、閉弁時のシール性を低下させることになり、図示されていない弁体10の半円部分では、弁体10が軸受隙間の影響で流体圧Pの方向に移動しても、弁箱側シート部9bの弾性によって弁体10の移動を吸収して、弁箱側シート部9bを弁体10周縁部の弁体側シート部10aに圧接させることによって、シール性を確保するといった相反する状態が生じる。
【0009】
さらに、弁箱側シート部9bの塑性変形によって閉弁時のシール性が低下すると、弁体10の閉弁時に、流体圧PまたはP1が弁体10に作用して、前記軸受隙間の影響で弁体10が流体圧PまたはP1の方向に移動しても、塑性変形している弁箱側シート部9bでは、弁体10の流体圧PまたはP1方向の移動を吸収して、弁箱側シート部9bを弁体10周縁部の弁体側シート部10aに圧接させることが期待できず、閉弁時のシール性を低下させることになるなどの問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するものであって、その目的とするところは、塑性変形が抑制される弁座の弾性による付勢力で高いシール性を確保することができるとともに、弁体閉弁時の封止流体圧で弁座を付勢して高いシール性を確保することができ、内面シール構造の回転弁、あるいは外面シール構造のボール弁などのバルブに好適なバルブの弁座構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明に係るバルブの弁座構造は、基部が弁箱側に取付けられたベロー型弁座の先端部に弁体に設けた弁体シート部に接離する弁箱側シート部が設けられ、該ベロー型弁座の弾性により付勢されて少なくとも前記弁体の閉弁時に前記弁箱側シート部が前記弁体シート部に密着するように構成されているとともに、前記弁体閉弁時の封止流体圧が前記ベロー型弁座を付勢して前記弁箱側シート部を前記弁体シート部に密着させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
前記構成によれば、弁体の閉弁時においては、ベロー型弁座の弾性付勢力による第1の作用によって、弁箱側シート部を弁体シート部に密着させて、高いシール性を確保することができる。また、弁体の閉弁によって封止される流体の圧力がベロー型弁座に負荷されると、当該ベロー型弁座を軸方向にのばすように付勢する第2の作用が生じる。この第2の作用によって、ベロー型弁座が軸方向にのばされて、弁体シート部に対する弁箱側シート部の密着力が高められることによっても、高いシール性を確保することができる。すなわち、本発明に係るバルブの弁座構造では、前記第1の作用に第2の作用が加算された複合的な作用によって、高いシール性を確保することができる。
さらに、弁体の閉弁時に該弁体によってベロー型弁座が過剰に押圧されたとしても、この過剰な押圧による圧縮変形は、ベロー型弁座を構成している山部と谷部の複数部位の圧縮変形に分散して吸収することができるので、ベロー型弁座の塑性変形を抑制して、弾性を維持した状態で高いシール性を確保することができる。
【0013】
本発明においては、弁体を回転弁体によって構成し、この回転弁体には、ベロー型弁座の弁箱側シート部に接離する凹球面状の弁体シート部を設けることが好ましい。これによると、本発明に係るバルブの弁座構造を内面シール構造の回転弁に適用することができる。
【0014】
また、本発明においては、ベロー型弁座の基部側の弁箱に、当該ベロー型弁座を開閉するバタフライ弁を内蔵してもよい。これによると、本発明に係るバルブの弁座構造を、たとえば、粉体を搬送ガスによって移送する管路系に装着される複合弁に適用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ベロー型弁座の塑性変形が抑制されることによって、ベロー型弁座の弾性による付勢力を長期間維持して、弁箱側シート部を弁体シート部に密着させて、高いシール性を確保することができる。また、弁体閉弁時の封止流体圧で弁箱側シート部を弁体シート部に密着させて、高いシール性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明を内面シール構造の回転弁に適用した実施形態を示す縦断面図である。この図において、内面シール構造の回転弁Vは、弁箱20の上端部に流入口20aを有し、弁箱20の下端部に流出口20bを同心で備えている。弁箱20には、流入口20aおよび流出口20bと同心に弁箱スリーブ21が収容されており、その基端部21aが弁箱20に固着され先端部21bは流出口20bに向かって開口している。
【0017】
弁箱スリーブ21の内部には、スリーブ内流路21Aを開閉するバタフライ弁22が配置され、弁箱スリーブ21の先端部21bは、凹球面状の弁体シート部23を裏面に形成した回転弁体24の90度回転によって開閉される。なお、バタフライ弁22を軸支するバタフライ弁用弁棒25は、弁箱20の一方の側面を気密かつ回転自在に貫通してバタフライ弁開閉手段(図示省略)に接続され、回転弁体24を軸支する回転弁体用弁棒26は、弁箱20の他方の側面を気密かつ回転自在に貫通して回転弁開閉手段(図示省略)に接続されている。
【0018】
弁箱スリーブ21の先端部21bには、ベロー型弁座27が取付けられている。このベロー型弁座27は、コバルト基合金、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱・耐摩耗性にすぐれた金属によって構成されている。そして、図2に示すように、径内方向に縮径している谷部27aと径外方向に拡径している山部27bの複数部位が軸方向に連続しており、基部28がボルト29を介して弁箱スリーブ21の先端部21bに同心に取付けられ、先端部には回転弁体24の裏面に形成した凹球面状の弁体シート部23に接離する弁箱側シート部30を設けてある。このように、ベロー型弁座27をコバルト基合金、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱・耐摩耗性にすぐれた金属によって構成していることによって、高温下での使用が可能になって、ベロー型弁座27の適用範囲を拡大することができるとともに、弁箱側シート部30の摩耗に伴うシール性の低下を抑えて、バルブの弁座構造の耐久性を向上させることができる
【0019】
一方、ベロー型弁座27の弁箱側シート部30には、耐熱・耐摩耗性にすぐれたステライトなどの超硬合金からなる肉盛り部31を設け、この肉盛り部31によって弁箱側シート部30を構成している。したがって、弁箱側シート部30の熱劣化に伴うシール性の低下を抑えて、バルブの弁座構造の耐久性をより一層向上させることができるとともに、弁箱側シート部30の摩耗に伴うシール性の低下をより一層確実に抑えて、バルブの弁座構造の耐久性をさらに向上させることができる。
【0020】
また、図1,図2,図3に示すように、ベロー型弁座27の軸線C(なお、この軸線Cは、本実施形態においては弁箱20および弁箱スリーブ21の軸線と同じである)から基部28の外端までの取付半径Rと、前記軸線Cから回転弁体24の閉弁状態で凹球面状の弁体シート部23に密着している肉盛り部31(弁箱側シート部30)までのシール半径R1との関係を、R≦R1好ましくはR<R1に設定してある。つまり、図2の実施形態ではR=R1に設定され、図3の実施形態ではR<R1に設定してある。
【0021】
前記構成において、内面シール構造の回転弁Vは、弁箱20の流入口20aを粉体の供給系に接続するとともに、流出口20bを高圧の搬送ガスが流れる搬送系に接続して使用される。なお、粉体を伴って流れる搬送系の途中に介設することも可能である。
【0022】
回転弁Vの開弁操作は、まず、回転弁体24を図1の実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に90度回転させて開弁し、その後にバタフライ弁22を実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に90度回転させて開弁する手順によってなされる。この状態で、粉体は弁箱20の流入口20aから弁箱スリーブ21を通って自重で落下し、流出口20bを経ては搬送系に流入する。
【0023】
回転弁Vの閉弁操作は、まず、バタフライ弁22を二点鎖線で示す位置から実線で示す位置に90度逆回転させて粉体の流れを遮断し、ベロー型弁座27の周囲に粉体が存在しない状態で、回転弁体24を二点鎖線で示す位置から実線で示す位置に90度逆回転させて閉弁する手順によってなされる。このことにより、ベロー型弁座27の肉盛り部31(弁箱側シート部30)と回転弁体24凹球面状の弁体シート部23との間に粉体が噛み込むのを防止して、シール性を確実なものにすることができる。
【0024】
図2に示す実施形態において、回転弁体24の閉弁時には、ベロー型弁座27の弾性付勢力によって、肉盛り部31(弁箱側シート部30)を回転弁体24の凹球面状の弁体シート部23に密着させて、高いシール性を確保することができる。また、回転弁体24の閉弁時には、前記搬送系を流れている搬送ガスの圧力Pがベロー型弁座27に外圧として負荷される。そして、取付半径Rとシール半径R1との関係がR=R1に設定され、かつ谷部27cのくぼみよ量よりも大きいくぼみ量を保有している谷部27aに圧力Pが外圧として負荷されて、ベロー型弁座27を軸方向にのばすように付勢する作用が生じるので[なお、くぼみ量とは、くぼみの径方向の寸法「くぼみの深さ」およびくぼみの円周方向の長さ「くぼみの幅」の少なくともいずれか一方のことをいう]、この作用によって、ベロー型弁座27が軸方向にのばされて(軸方向に撓んで)、弁体シート部23に対する弁箱側シート部3の密着力が高められることによっても、高いシール性を確保することができる。すなわち、図2の実施形態では、ベロー型弁座27は、自己の弾性付勢力によって、肉盛り部31(弁箱側シート部30)を回転弁体24の凹球面状の弁体シート部23に密着させる作用に加えて、外圧Pによってベロー型弁座27が軸方向にのばされて、肉盛り部31(弁箱側シート部30)を回転弁体24の凹球面状の弁体シート部23に密着させる作用が加算される複合的な作用によって、高いシール性を確保することができる。
【0025】
一方、図3に示す実施形態のように、ベロー型弁座27の取付半径Rとシール半径R1との関係をR<R1に設定すると、R1−Rに相当する受圧面Δrが山部27bの表面に形成され、この受圧面Δrに相当して、外圧Pによりベロー型弁座27を軸方向にのばす作用が図2の実施形態よりも大きくなる。したがって、ベロー型弁座27は、自己の弾性付勢力と、受圧面Δrが確保されたことによって、図2の実施形態よりも強力に軸方向にのばされて(軸方向に撓んで)、弁体シート部23に対する弁箱側シート部3の密着力がより一層高められることによっても、図2に示す実施形態よりも強力なシール性を確保することができる。
【0026】
また、図1,図2,図3に示す回転弁体24の閉弁時において、搬送ガスの圧力Pが回転弁体24の表面に作用して、ベロー型弁座27が過剰に弁箱スリーブ21側に押圧されたとしても、この過剰な押圧によるベロー型弁座27の圧縮変形は、ベロー型弁座27を構成している山部27bと谷部27a,27cの複数部位の圧縮変形に分散して吸収することができるので、ベロー型弁座27の塑性変形が抑制されて弾性を維持できる。このため、維持された弾性付勢力によって肉盛り部31(弁箱側シート部30)を回転弁体24の凹球面状の弁体側シート部23に密着させて、高いシール性を確保することができる。
【0027】
さらに、搬送ガスの圧力Pが回転弁体24の表面に作用していない状態であれば、回転弁体24の閉弁時において、回転弁体24の自重および該回転弁体24を取付けている回転弁体用弁棒26と軸受(図示省略)との間に生じる軸受隙間の影響で、軸受隙間分に相当して回転弁体24が下降する。しかし、前述の理由により、ベロー型弁座27の塑性変形が抑制されることで維持されている弾性付勢力によって、軸受隙間分に相当する回転弁体24の下降を補償して、肉盛り部31(弁箱側シート部30)を回転弁体24の凹球面状の弁体シート部23に密着させて、高いシール性を確保することができる。
【0028】
なお、図2,図3に示す実施形態では、回転弁体24の閉弁時において、搬送ガスの圧力Pが外圧としてベロー型弁座27に負荷される構成で説明しているが、ガス圧P1が内圧としてベロー型弁座27に負荷される場合は、ベロー型弁座27の取付半径Rとシール半径R1との関係をR≧R1に設定することによって、内圧P1によりベロー型弁座27を軸方向にのばす作用が生じて、肉盛り部31(弁箱側シート部30)を回転弁体24の凹球面状の弁体シート部23に密着させることができる。
【0029】
本発明に係るバルブの弁座構造は、図4,図5に示すように、外面シール構造のボール弁V1に適用することができる。図4において、流入口20aと流出口20bを設けた弁箱20には、該弁箱20の軸線Cに直交する軸線C1をもつ弁棒32を備え、この弁棒32とともに軸線C1まわりに回転する球状の弁体33が収容されており、この球状の弁体33における軸線C方向の両側の二つの位置にベロー型弁座27を配置して、それぞれの肉盛り部31(弁箱側シート部30)を球状の弁体33の表面を構成する凸球面状の弁体シート部23に密着させてある。そして、図5に示すように、ベロー型弁座27の取付半径Rとシール半径R1との関係をR<R1に設定して、R1−Rに相当する受圧面Δrを設けてある。なお、取付半径Rとシール半径R1との関係は、R≦R1であってもよい。
【0030】
図5のように、弁体33が閉弁されている状態で、流入口20aに流体圧Pが作用すると、この流体圧Pは、内圧として上流側のベロー型弁座27の内面に負荷されて、上流側のベロー型弁座27を軸方向に短縮させるように付勢する作用が生じるので、この作用によって、上流側のベロー型弁座27が軸方向に僅かに短縮して(軸方向に撓んで)、凸球面状の弁体シート部23に対する肉盛り部31(弁箱側シート部30)の密着力を低下させることになる。このため、流体圧Pは、矢印P1,P2で示すように、凸球面状の弁体シート部23と肉盛り部31(弁箱側シート部30)との間を通って、下流側のベロー型弁座27の表面に負荷されることになる。その結果、前述した理由によって、下流側のベロー型弁座27は軸方向にのばされて(軸方向に撓んで)、弁体シート部23に対する弁箱側シート部3の密着力が高められるので、下流側のベロー型弁座27によって、高いシール性を確保することができる。
【0031】
一方、弁棒32と軸受(図示省略)との間に生じる軸受隙間の影響で、軸受隙間分に相当して球状の弁体33が流出口20bの方向に僅かに変位したとしても、この変位は、上流側のベロー型弁座27の弾性によって補償され、その肉盛り部31(弁箱側シート部30)を球状の弁体33表面の球面状の弁体シート部23に密着させて、高いシール性を確保することができる。このように、球状の弁体33が流出口20bの方向に僅かに変位することで、下流側のベロー型弁座27が過剰に流出口20b側に押圧されたとしても、この過剰な押圧による下流側のベロー型弁座27の圧縮変形は、ベロー型弁座27を構成している山部27bと谷部27a,27cの複数部位の圧縮変形に分散して吸収することができるので、下流側のベロー型弁座27の塑性変形が抑制されて弾性を維持できることになる。したがって、この弾性付勢力によって肉盛り部31(弁箱側シート部30)を球状の弁体33表面の球面状の弁体シート部23に密着させて、高いシール性を確保することができる。
【0032】
なお、球状の弁体33が閉弁されている状態で、流体圧P1が流出20bから球状の弁体33に負荷された場合は、前記上流側のベロー型弁座27と下流側のベロー型弁座27は、前述した流体圧Pが流入口20aから球状の弁体33に負荷される場合の逆に作用することのなるので、流体圧P1が流出20bから球状の弁体33に負荷された場合の作用説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を内面シール構造の回転弁に適用した実施形態を示す縦断面図である。
【図2】ベロー型弁座の第1実施形態の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図3】ベロー型弁座の第2実施形態の一部を拡大して示す縦断面図である。
【図4】本発明を外面シール構造のボール弁に適用した実施形態を示す縦断面図である。
【図5】ボール弁に適用した場合のシール作用の説明図である。
【図6】第1従来例の縦断面図である。
【図7】第2従来例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0034】
20 弁箱
22 バタフライ弁
23 凹球面状の弁体シート部(複合弁の弁体シート部)
24 回転弁体(複合弁の弁体)
27 ベロー型弁座
28 ベロー型弁座の基部
30 弁箱側シート部(ベロー型弁座のシート部)
33 球状の弁体(ボール弁の弁体)
34 球面状の弁体シート部(ボール弁の弁体シート部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部が弁箱側に取付けられたベロー型弁座の先端部に弁体に設けた弁体シート部に接離する弁箱側シート部が設けられ、該ベロー型弁座の弾性により付勢されて前記弁体の閉弁時に前記弁箱側シート部が前記弁体シート部に密着するように構成されているとともに、前記弁体閉弁時の封止流体圧が前記ベロー型弁座を付勢して前記弁箱側シート部を前記弁体シート部に密着させるように構成されていることを特徴とするバルブの弁座構造。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブの弁座構造において、
前記弁体が回転弁体によって構成され、この回転弁体には、前記ベロー型弁座の弁箱側シート部に接離する凹球面状の弁体シート部が設けられていることを特徴とするバルブの弁座構造。
【請求項3】
請求項2に記載のバルブの弁座構造において、
前記ベロー型弁座の基部側の弁箱に、当該ベロー型弁座を開閉するバタフライ弁が内蔵されていることを特徴とするバルブの弁座構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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