説明

バルブ動作状態の判定方法および判定装置

【課題】 装置を運転することなくバルブの動作状態を判定可能なバルブ動作状態の判定方法および判定装置を提供する。
【解決手段】 配管W1内に配置されたバルブVの作動状態(姿勢)を判定するにあたり、前記配管W1の開口部W2より配管W1内に向けてスピーカ12等により音波を放射し、前記バルブVより反射される反射音をマイク11等により収集し、反射音の周波数−音圧強度特性に基づいてバルブVの作動状態を判定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内に配置したバルブの動作状態を判定するバルブ動作状態の判定方法および判定装置に関し、特に、アクチュエータにより開度調整されるバルブに好適なバルブ動作状態の判定方法および判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、内燃機関に設けたバルブの動作状態を判定する作動検査装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これは、車両定置状態で、エンジンの排気ガス再循環システム(EGRシステム)の作動検査を行うため、エンジンを無負荷レーシングし、回転数が3000rpm以上となると、EGRバルブを開とする。エンジン回転数が安定し、かつ、アクセル開度も安定すると、EGRバルブを閉じて、吸気管圧力の変化を検出する。このとき、アクセル開度が一定であることを確認する。圧力変化が所定値以上の場合には、EGRシステムが正常に作動したと判定する。また、EGRバルブを開いて所定時間内にガスの温度が所定値以上上昇したか否かによっても、作動を検査するようにしている。
【特許文献1】特開平8−247901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例では、エンジン運転中にバルブの作動検査を行うものであるため、バルブの作動検査に先立ち、エンジンを所定回転数までモータリング運転させ且つ吸気管圧力が安定した状態とする必要があり、それまでの間に計測待ちが発生し検査時間が長くなる不具合があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、装置を運転することなくバルブの動作状態を判定可能なバルブ動作状態の判定方法および判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、配管内に配置されたバルブの作動状態、例えば、動作姿勢を判定するにあたり、前記配管の開口部より配管内に向けて音波を放射し、前記バルブより反射される反射音の周波数−音圧強度特性に基づいてバルブの作動状態を判定するようにした。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明では、配管内に配置されたバルブの作動状態を判定するにあたり、前記配管の開口部より配管内に向けて音波を放射し、前記バルブより反射される反射音の周波数−音圧強度特性に基づいてバルブの作動状態を判定するため、例えば、エンジン等の装置を運転することなく判定することができ、短時間で計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のバルブ動作状態の判定方法および判定装置を各実施形態に基づいて説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1〜図5は、本発明を適用したバルブ動作状態の判定方法および判定装置の第1実施形態を示し、図1はバルブ動作状態判定装置のシステム構成図、図2は同じく判定装置の概略外観図、図3は判定部位の拡大図、図4は判定装置による判定方法を説明するフローチャート、図5は判定要領を説明する特性図である。
【0010】
図1において、バルブ動作状態の判定装置は、マイク11およびスピーカ12を備える計測ユニット1と、計測ユニット1のスピーカ12を作動させる計測用音波信号発生装置2および増幅器3と、計測ユニット1のマイク11で集音した反射音を増幅しデジタル変換する増幅器4およびA/Dコンバータ5と、デジタル変換した音波信号を周波数−音圧強度特性に分析処理する音波信号処理装置6と、測定対象のバルブが測定状態(姿勢)となるよう駆動装置8Aからアクチュエータ8へ指令信号を出力し、音波信号処理装置6の処理結果を予め設定した閾値と比較して判定する判定装置7と、を備える。図2に示すように、前記計測用音波信号発生装置2および増幅器3、増幅器4およびA/Dコンバータ5、判定装置6は、計測結果を表示するモニタ9と共に計測装置10に内蔵され、前記計測ユニット1は測定対象部品Wの配管W1の開口部W2に接続して設置するために前記計測装置10とは別体に構成している。
【0011】
前記計測ユニット1は、測定対象部品Wの配管W1の開口部W2に隣接して設けた測定スタンド13の計測ユニット固定装置14に基部15が支持され、固定装置14より前進させた状態で測定対象部品Wの配管W1(この例では、エンジンに固定した状態の吸気マニホールド)の開口部W2に、測定口16を嵌め合わせて接続するようにしている。図3に詳細に示すように、この例での測定対象部品Wは、エンジンの吸気マニホールドの入口に設けたスロットルバルブV1および吸気マニホールドの終端近傍に配置したスワール(タンブル)コントロールバルブV2であり、その動作状態を判定する場合を示している。これらスロットルバルブV1およびスワール(タンブル)コントロールバルブV2は、エンジンコントローラよりの指令に応じて作動する電子制御アクチュエータ8により弁開度が調整および開閉作動されるものであり、そのバルブVの動作状態は吸気マニホールドの外部からは目視確認ができない。
【0012】
測定ユニット1内には、図3に示すように、奥側に測定対象に向かって音波を出力するスピーカ12を配置し、測定口16側には測定対象部品Wからの反射音を集音するマイク11を配置している。
【0013】
前記計測用音波信号発生装置2は、計測装置10よりの指令により測定ユニット1のスピーカ12から発生させる音波の周波数域およびその出力音圧を選定して増幅器3にその音波信号を出力する。前記音波信号の周波数域としては、例えば、可聴周波数全域において一様な音圧となるホワイトノイズの音波信号を選定することが望ましいが、測定対象部品Wと共鳴が発生して反射音が効果的に収集可能な特定周波数領域の音波信号や測定対象部品Wの動作状態(姿勢)により変化する反射音を効果的に収集可能な特定周波数領域の音波信号等を選定するようにしてもよい。後者の音波信号は、前者のホワイトノイズよりも安価な装置で発生させることができる。前記計測用音波信号発生装置2により出力された音波信号は、増幅器3により増幅されて測定ユニット1のスピーカ12を作動させ、スピーカ12は配管W1内のバルブVに向けて音波を放射する。
【0014】
前記放射された音波は、配管W1内を進んで測定対象部品WであるバルブVに到達し、バルブVの動作状態(姿勢)に応じて一部が測定ユニット1側に反射され、反射音としてマイク11で集音される。前記増幅器4およびA/Dコンバータ5は、マイク11で集音された音波信号(サンプリングデータ)を増幅しデジタル信号に変換して音波信号処理装置6へ出力する。この場合、集音したサンプリングデータの全周波数領域において、増幅若しくはデジタル変換するようにしてもよいが、目的とする特定周波数領域のサンプリングデータのみを出力するよう、バンドパスフィルタを設置するか、増幅器4若しくはA/Dコンバータ5の周波数特性を特定周波数領域で利得を高めるよう作動させてもよい。
【0015】
前記音波信号処理装置6は、入力されたサンプリングデータの周波数分析を行い、その周波数と音圧強度の関数に分析する。この分析には、一般に知られている高速フーリエ変換(FFT処理と称される)が用いられる。FFT処理された周波数−音圧強度のデータは、判定装置7に出力され、判定装置7に内蔵されているメモリ7Aに記憶される。
【0016】
前記判定装置7は、図示しないCPUおよびメモリ7Aを内蔵し、メモリ7Aに格納された計測制御手順に基づいて、測定対象部品WであるバルブVの電気制御アクチュエータ8を駆動する吸気制御部品駆動装置8Aを作動させ、計測用音波信号発生装置2、音波信号処理装置6を作動させる。具体的には、吸気制御部品駆動装置8Aにより測定対象部品WであるバルブVの電気制御アクチュエータ8を作動させて測定対象バルブVを開状態・閉状態若しくは中開状態等の測定状態に作動させ、その測定状態(姿勢)において、計測用音波信号発生装置2を作動させて計測ユニット1のスピーカ12からホワイトノイズ若しくは特定の周波数の音波を発生させて測定対象バルブVに向けて配管開口から当該音波を配管W1内に照射させる。また、測定ユニット1のマイク11で集音されたサンプリングデータに基づき音波信号処理装置6でFFT処理した周波数−音圧強度のデータと予め設定した閾値と比較してバルブVが指定した動作状態(姿勢)となっているか否かを判定する。
【0017】
図4のフローチャートは、判定装置6により実行されるバルブ動作状態の判定に係る手順を示しており、以下、これに基づいてバルブ動作状態の判定方法を説明する。
【0018】
先ず、ステップS1において、検査対称部品V毎の設定値を設定する。この設定値は、検査対象部品Vの個々に対して、判定時の周波数域(f0〜f1)と音圧強度の許容範囲(Vlow〜Vup)とを設定する。
【0019】
例えば、図3におけるスワール(タンブル)コントロールバルブV2においては、その閉じ状態時(スワール若しくはタンブルを発生させない開度状態)と開き状態時(スワール若しくはタンブルを発生させる開度状態)における判定時の周波数域(f0〜f1)と音圧強度の許容閾値範囲(Vlow〜Vup)とが設定される。図5は横軸を周波数とし且つ縦軸(対数目盛り)を音圧強度とする周波数−音圧強度特性を表示したものであり、スワール(タンブル)コントロールバルブV2の閉じ状態に対する特定周波数域での音圧強度の許容閾値範囲を示したものである。即ち、許容閾値範囲の上限値が実線で、同じく許容閾値範囲の下限値が破線で、夫々示している。このスワール(タンブル)コントロールバルブV2の開き状態に対する特定周波数域での音圧強度の許容閾値範囲は、また別に設定し記憶される。
【0020】
また、スロットルバルブV1においては、その全閉時、全開時および複数の中開度における判定時の周波数域(f0〜f1)と音圧強度の許容範囲(Vlow〜Vup)とが設定される。これらの各測定時における測定ステップが、N=1からN+1と順次実行していく。
【0021】
ステップS2およびステップS3では、最初の手順として、検査対象部品Vに対して測定ユニット1を接続してセットする。検査対象部品Vとして図3に示すスロットルバルブV1およびスワールコントロールバルブV2である場合には、吸気マニホールドの入口開口W2に測定ユニット1の測定口16を接続する。この手順における接続は、マニピュレータによる自動接続であっても、作業者による手動接続であってもよい。
【0022】
ステップS4では、計測用音波信号発生装置2を作動させてスピーカ12から吸気マニホールド内に向かって音波を放射させ、検査対象部品Vからの反射音をマイク11を介してサンプリングデータとして収集する。この場合、検査対象部品Vが目的とする検査状態(姿勢、例えば、スロットルバルブV1であればノーマル状態では全閉状態、スワールコントロールバルブV2であればノーマル状態で閉じ状態)となっていることを前提としているが、ノーマル状態で測定状態(姿勢)となっていない場合には、測定に先立ってバルブVの操作用アクチュエータ8を作動させて目的とする測定状態(姿勢)としておく必要がある。なお、スワールコントロールバルブV2の測定ステップにおいては、スロットルバルブV1は全開状態に維持される。
【0023】
ステップS5では、収集したサンプリングデータを音波信号処理装置6によりFFT処理して、周波数−音圧強度のデータを得る。このデータは判定装置7のメモリ7Aに記憶させる。この場合における周波数−音圧強度のデータは、当該部品Vの判定周波数f0〜f1領域での音圧特性が得られればよく、サンプリングデータの全周波数に亙る必要はない。
【0024】
ステップS6では、周波数f0〜f1での音圧信号波形データWnを許容閾値範囲Vnと比較し、ステップS7へ進む。
【0025】
ステップS7では、周波数f0〜f1での音圧信号波形データWnが許容閾値範囲Vn(Vlow〜Vup)の範囲内か否かを判定する。そして、音圧信号波形データWnが、許容閾値範囲内であればステップS8へ進み、ステップS8で、バルブVの作動状態(姿勢)が目的とする状態(姿勢)となっていることを記録してステップS10へ進む。また、音圧信号波形データWnが、許容閾値範囲を外れるのであればステップS9へ進み、ステップS9で、バルブVの作動状態(姿勢)が目的とする状態(姿勢)となっていないことを記録してステップS10へ進む。図5では、スワールコントロールバルブV2の閉じ状態での音圧信号波形データと開き状態での音圧信号波形データとの両方の波形データが併記されており、閉じ状態における音圧信号波形データが許容閾値範囲内となっていることが確認できる。
【0026】
ステップS10では、次の測定ステップ(N=N+1)のために測定対象部品Vを動作させ、ステップS11で測定ステップがN=N+1となったことを確認し、ステップS12へ進む。
【0027】
ステップS12では、測定ステップが規定した測定ステップ数に達したか否かが判定され、全測定ステップが完了している場合には、ここで処理を終了させ、完了していない場合には、次の測定ステップのためのステップS4へ進む。以後では、ステップS4〜ステップS12の測定ステップが、全測定ステップが完了するまで繰返し実行される。
【0028】
なお、上記実施形態において、音波信号処理装置6のFFT処理により周波数に対する音圧強度(db、対数目盛)として判別装置7に出力するものについて説明しているが、図示しないが、音圧データに変換することなく、サンプリングデータの周波数領域における出力電圧値データを判別装置7に出力するものであってもよい。この場合には、許容閾値範囲を電圧値[mV]で表示することとなる。
【0029】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0030】
(ア)配管W1内に配置されたバルブVの作動状態(姿勢)を判定するにあたり、前記配管W1の開口部W2より配管W1内に向けてスピーカ12等により音波を放射し、前記バルブVより反射される反射音をマイク11等により収集し、反射音の周波数−音圧強度特性に基づいてバルブVの作動状態(姿勢)を判定するため、例えば、エンジン等の装置を運転することなく、バルブVの動作状態を判定することができ、バルブVの動作状態およびバルブVを駆動するアクチュエータ8の動作状態の正常・異常を短時間で計測することができる。また、これらの異常をエンジン等の装置を運転する前に検出できるため、装置がバルブVの異常作動により異常運転されることも未然に防止することができる。
【0031】
(イ)反射音の周波数−音圧強度特性を予め設定した周波数−音圧強度特性閾値と比較することによりバルブVの作動状態(姿勢)を判定するため、予め設定した周波数−音圧強度特性閾値を正常な作動状態のバルブVにより得られる周波数−音圧強度特性に近似させて設定すれば、バルブVの動作状態の正常・異常を簡易に精度よく判定することができる。
【0032】
(ウ)予め設定した周波数−音圧強度特性閾値を予め設定した特定の周波数域に設定し、反射音の特定の周波数域の周波数−音圧強度特性と比較することにより、特定の周波数域をバルブVの動作状態の正常・異常で顕著に差異が発生する周波数域に設定しておけば、より正確にバルブVの動作状態の正常・異常を判定することができる。
【0033】
(エ)配管W1の開口部W2より配管W1内に向けて放射する音波は、可聴周波数全域において一様な音圧となるホワイトノイズとすることにより、複雑な構造を備えて複雑に共鳴する検査対象Wの配管W1・バルブVであっても、バルブVの動作状態の正常・異常を反射音の周波数−音圧強度特性の変化として捕らえることができる。
【0034】
(オ)配管W1の開口部W2より配管W1内に向けて放射する音波は、予め設定した周波数域の音波とすることにより、放射音波の周波数域をバルブVの動作状態の正常・異常で顕著に差異が発生する周波数域とすることにより、より安価な音波信号発生装置2を利用することができ、安価な判定装置とすることができる。
【0035】
(カ)バルブVより反射される反射音を、バンドパスフィルタにより予め設定した周波数域の音波のみが周波数−音圧強度特性に分析されるようにすると、その周波数域をバルブVの動作状態の正常・異常で顕著に差異が発生する周波数域に設定しておけば、より正確にバルブVの動作状態の正常・異常を判定することができ、周波数−音圧強度特性の分析範囲を狭くすることができ、分析に必要な時間を減少でき、安価で応答性の速い判定装置とすることができる。
【0036】
(キ)バルブVより反射される反射音は、音波信号処理装置6により予め設定した周波数域の音波のみが周波数−音圧強度特性にFFT処理するようにすると、複数のバルブVが直列若しくは並列に配置された複雑な系であっても、バルブVのアクチュエータ8を順次作動させ、そのバルブVの正常・異常に差異が生ずる周波数域の周波数−音圧強度特性と比較することで、一連のサイクル内で順次バルブVの動作状態の正常・異常を判定することができる。
【0037】
(第2実施形態)
図6〜図7は、本発明を適用したバルブ動作状態の判定方法および判定装置の第2実施形態を示し、図6は判定装置により実行されるバルブ動作状態の判定に係る手順を示すフローチャート、図7は図6の手順での判定方法を説明する周波数に対する音圧強度の特性データである。本実施形態においては、バルブの動作前後の周波数に対する音圧強度データの変化によりバルブの動作状態を判定するようにしたものである。なお、第1実施形態と同一装置には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0038】
本実施形態におけるバルブ動作状態の判定装置は第1実施形態における図1〜図3に示したと同様の構成を備え、判定装置7における判定方法おいて第1実施形態と相違している。図6は判定装置7により実行されるバルブ作動状態の判定に係る本実施形態での手順を示しており、以下、これに基づいてバルブ動作状態の判定方法を説明する。
【0039】
図6において、先ず、ステップS21において、検査対称部品V毎の設定値を設定する。この設定値は、検査対象部品Vの個々に対して、判定時に使用する周波数域(f0〜f1)およびバルブ動作前と動作後の音圧強度の差の絶対値を判定周波数域f0〜f1間で総和した値S1-Nの許容範囲(Ulow〜Uup)とを設定する。
【0040】
例えば、図3におけるスワール(タンブル)コントロールバルブV2においては、その開閉状態の判定時の周波数域(f0〜f1)と、その閉じ状態時(スワール若しくはタンブルを発生させない開度状態)と開き状態時(スワール若しくはタンブルを発生させる開度状態)における音圧強度の差の絶対値を判定周波数域(f0〜f1)間で総和した値の許容範囲Ulow〜Uupが設定される。図7は横軸を周波数とし、縦軸(対数目盛り)を音圧強度とする周波数−音圧強度特性を表示したものであり、スワール(タンブル)コントロールバルブV2の閉じ状態と開き状態との特定周波数域f0〜f1での音圧強度の差(ハッチング領域)を示したものである。即ち、特定周波数域f0〜f1での音圧強度の差の絶対値の積分した面積に対する許容範囲(Ulow〜Uup)を設定する。
【0041】
また、スロットルバルブV1においては、その全閉時と全閉時から所定開度だけ開弁させた開度における判定周波数域(f0〜f1)とバルブ開度変化前後の特定周波数域f0〜f1での音圧強度の差の絶対値を積分した面積に対する許容範囲(Ulow〜Uup)を設定する。そして、スロットルバルブV1が全開されるまで、上記の要領で判定周波数域(f0〜f1)と許容範囲(Ulow〜Uup)が設定される。これらのバルブ開度変化若しくは開閉による変化に対する測定ステップが、N=1からN+1と順次実行していく。
【0042】
ステップS22およびステップS23では、最初の手順として、検査対象部品Vに対して測定ユニット1が接続してセットする。検査対象部品Vとして図3に示すスロットルバルブV1およびスワールコントロールバルブV2である場合には、吸気マニホールドの入口開口W2に測定ユニット1の測定口16を接続する。この手順における接続は、マニピュレータによる自動接続であっても、作業者による手動接続であってもよい。
【0043】
ステップS24では、計測用音波信号発生装置2を作動させてスピーカ12から吸気マニホールド内に向かって音波を放射させ、検査対象部品Vからの反射音波をマイク11を介してサンプリングデータとして収集する。このサンプリングデータはバルブVの動作前のデータとなる。
【0044】
ステップS25では、収集したサンプリングデータを音波信号処理装置6によりFFT処理して、周波数−音圧強度のデータを得る。このデータは判定装置7のメモリ7Aに記憶させる。この場合における周波数−音圧強度のデータは、当該部品Vの判定周波数f0〜f1領域での音圧特性が得られればよく、サンプリングデータの全周波数に亙る必要はない。
【0045】
ステップS26では、検査対象部品Vが動作後か否かが判定され、動作前である場合にはステップS27へ進み、動作後である場合にはステップS28へ進む。
【0046】
ステップS27では、バルブVが動作前であるため、バルブ動作後の検査のためにバルブVを規定量だけ動作させて、再び前記のステップS24およびステップS25を実行して、バルブ作動後の周波数−音圧強度のデータを収集する。
【0047】
ステップS28では、判定周波数域f0〜f1でのバルブ動作前とバルブ動作後の音圧強度の差の絶対値の総和Snを演算する。図7に示すハッチング領域の面積がこれに相当する。そして、許容範囲Unと比較して、ステップS29へ進む。
【0048】
ステップS29では、判定周波数f0〜f1での音圧強度の差の絶対値の総和Snが許容範囲Un(Ulow〜Uup)の範囲内か否かを判定する。そして、判定周波数f0〜f1での音圧強度の差の絶対値の総和Snが、許容範囲Un内であればステップS30へ進み、判定周波数f0〜f1での音圧強度の差の絶対値の総和Snが、許容範囲Un外であればステップS31へ進む。
【0049】
ステップS30では、バルブVの状態(姿勢)がバルブ作動前と作動後とで目的とする状態(姿勢)変化されたことを記録してステップS32へ進む。また、ステップS31では、バルブVの状態(姿勢)がバルブ作動前と作動後とで目的とする状態(姿勢)となっていないことを記録してステップS32へ進む。
【0050】
ステップS32では、次の測定ステップ(N=N+1)へ移行することを確認し、ステップS33へ進む。
【0051】
ステップS33では、測定ステップが規定した測定ステップ数に達したか否かが判定され、全測定ステップが完了している場合には、ここで処理を終了させ、完了していない場合には、次の測定ステップのためのステップS24へ進む。以後では、ステップS24〜ステップS32の測定ステップが、全測定ステップが完了するまで繰返し実行される。
【0052】
以上に説明した本実施形態におけるバルブVの動作状態の判定装置においては、バルブVの開閉方向の動作前と動作後における反射音の周波数−音圧強度特性を比較することにより、バルブVが正常に動作されたか否かを判定しているため、温度、外部騒音等の環境条件の変化(外乱)により音響状態が徐々に変化し、得られる周波数−音圧強度特性が高周波数側若しくは低周波数側へシフトする場合であっても、バルブVの動作状態を確実に判定することができる。
【0053】
また、判定する周波数領域の動作前における反射音の周波数−音圧強度特性とバルブ動作後における反射音の周波数−音圧強度特性との音圧強度の差の絶対値の積分値によりバルブ動作が正常にされたか否かを判定するため、上記外乱により得られる周波数−音圧強度特性が高周波数側若しくは低周波数側へシフトする場合であっても、バルブVの動作状態を確実に判定することができる。
【0054】
なお、上記実施形態において、バルブVの動作状態の判定方法として、バルブVの動作前後の周波数−音圧強度特性の差の絶対値の積分値により判定するものについて説明したが、図示はしないが、反射音の周波数−音圧強度特性と予め設定した周波数−音圧強度特性閾値とを比較する第1実施形態のバルブVの動作状態の判定方法と併用する、若しくは、測定しようとするバルブVに応じていずれかを使い分けるようにしてもよい。
【0055】
本実施形態においては、第1実施形態における効果(ア)〜(キ)に加えて以下に記載した効果を奏することができる。
【0056】
(ク)予め設定した周波数−音圧強度特性閾値として、バルブ開度変化の動作前における反射音の周波数−音圧強度特性を設定し、バルブ開度変化の動作後における反射音の周波数−音圧強度特性と比較することによりバルブVの作動状態(姿勢)を判定するようにしているため、温度、外部騒音等の環境条件の変化により音響状態が徐々に変化する場合であっても、バルブVの動作状態を確実に判定することができる。
【0057】
(ケ)バルブ開度変化の動作前における反射音の周波数−音圧強度特性とバルブ開度変化の動作後における反射音の周波数−音圧強度特性との比較は、予め設定した特定の周波数域での音圧強度の差の絶対値の積分値が予め設定した閾値を越えているか否かによりバルブ動作がなされたか否かを判定することにより、バルブVの動作前後で音圧強度が大きく変化する周波数域を特定の周波数域に設定することで、正確且つ確実にバルブVの動作状態の正常・異常を判定することができる。
【0058】
なお、上記各実施形態において、検査対象部品として、エンジンの吸気マニホールドに設けたスロットルバルブV1若しくはスワールコントロールバルブV2の動作状態を判定するものについて説明したが、図示はしないが、エンジンの給排気系統に用いられる他のバルブ、例えば、EGRコントロールバルブ等の動作状態を判定するものであってもよく、さらに、エンジン以外に用いられている配管内に装着されているバルブの動作状態を判定するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態を示すバルブ動作状態の判定装置のシステム構成図。
【図2】同じく判定装置の概略外観図。
【図3】判定部位の拡大図。
【図4】判定装置による判定方法を説明するフローチャート。
【図5】判定要領を説明する特性図。
【図6】本発明の第2実施形態の判定方法を説明するフローチャート。
【図7】第2実施形態の判定要領を説明する特性図。
【符号の説明】
【0060】
V バルブ
V1 スロットルバルブ
V2 スワール(タンブル)コントロールバルブ
W 測定対象部品
W1 配管
W2 開口部
1 測定ユニット
2 音波信号発生装置
3、4 アンプ
5 A/Dコンバータ
6 音波信号処理装置
7 判定装置
8 アクチュエータ
9 モニタ
10 計測装置
11 マイク
12 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内に配置されたバルブの作動状態を判定するバルブ動作状態の判定方法であり、
前記配管の開口部より配管内に向けて音波を放射し、
前記バルブより反射される反射音の周波数−音圧強度特性に基づいてバルブの作動状態を判定することを特徴とするバルブ動作状態の判定方法。
【請求項2】
前記反射音の周波数−音圧強度特性は、予め設定した周波数−音圧強度特性閾値と比較することによりバルブの作動状態を判定することを特徴とする請求項1に記載のバルブ動作状態の判定方法。
【請求項3】
前記予め設定した周波数−音圧強度特性閾値は予め設定した特定の周波数域に設定され、反射音の特定の周波数域の周波数−音圧強度特性と比較することを特徴とする請求項2に記載のバルブ動作状態の判定方法。
【請求項4】
前記予め設定した周波数−音圧強度特性閾値は、バルブ開度変化の動作前における反射音の周波数−音圧強度特性であり、バルブ開度変化の動作後における反射音の周波数−音圧強度特性と比較することによりバルブの作動状態を判定することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のバルブ動作状態の判定方法。
【請求項5】
前記バルブ開度変化の動作前における反射音の周波数−音圧強度特性とバルブ開度変化の動作後における反射音の周波数−音圧強度特性との比較は、予め設定した特定の周波数域での音圧強度の差の絶対値の積分値が予め設定した閾値を越えているか否かによりバルブ動作がなされたか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載のバルブ動作状態の判定方法。
【請求項6】
前記配管の開口部より配管内に向けて放射する音波は、可聴周波数全域において一様な音圧となるホワイトノイズであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のバルブ動作状態の判定方法。
【請求項7】
前記配管の開口部より配管内に向けて放射する音波は、予め設定した周波数域の音波であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のバルブ動作状態の判定方法。
【請求項8】
前記バルブより反射される反射音は、バンドパスフィルタにより予め設定した周波数域の音波のみが周波数−音圧強度特性に分析されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一つに記載のバルブ動作状態の判定方法。
【請求項9】
前記バルブより反射される反射音は、音波信号処理装置により予め設定した周波数域の音波のみが周波数−音圧強度特性にFFT処理されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一つに記載のバルブ動作状態の判定方法。
【請求項10】
配管内に配置されたバルブの作動状態を判定するバルブ動作状態の判定装置であり、
前記配管の開口部より配管内に向けて音波を放射する音波発生装置と、
前記バルブより反射される反射音を収集する反射音収集装置と、
前記収集した反射音の周波数・音圧強度特性を分析する音波信号処理装置と、
前記音波信号処理装置より出力される周波数−音圧強度特性と予め設定した周波数−音圧強度特性閾値とを比較することによりバルブの作動状態を判定する判定装置と、を備えることを特徴とするバルブ動作状態の判定装置。
【請求項11】
前記音波発生装置および反射音収集装置は、前記配管の開口部に接続可能な測定口を備える測定ユニット内に前記配管に向けて配置されていることを特徴とする請求項10に記載のバルブ動作状態の判定装置。
【請求項12】
前記バルブは、その開閉動作および/または開度調整動作がアクチュエータによりなされるものであり、前記判定装置は前記アクチュエータを動作させつつバルブの動作状態および/または動作状態の変化による前記音波信号処理装置より出力される周波数−音圧強度特性に基づいてバルブの動作状態を判定することを特徴とする請求項10または請求項11に記載のバルブ動作状態の判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−208277(P2006−208277A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22824(P2005−22824)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】