説明

バルブ装置

【課題】 弁体、ハウジング、及びシート保持体のそれぞれの間でのシールを適正に図ることのできるバルブ装置を提供する。
【解決手段】 弁体と、弁体の連通路を介して連通する二つの主通路が形成されたハウジングと、シート材を保持しつつ主通路の中心方向に移動可能に設けられたシート保持体と、シート保持体を弁体側に付勢する付勢手段と、シート保持体とハウジングとの間をシールするシール手段とを備え、シート保持体は、シート材を保持する保持部に連続する筒状ガイド部を備え、ハウジングには、シート保持体を収容する収容部が形成され、シール手段は、筒状ガイド部の外周とハウジングの内周との間に介設可能に筒状に形成されて筒状ガイド部及びハウジングに挟まれた部分に径方向に変形可能なシール部を備え、弁体収容室と収容部における付勢手段の収容した空間とを連通させた連通部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や気体、粉体等を流通させる流路の開閉や切り換えを行うためのバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バルブ装置には、種々タイプのものが提供されており、その一つとして、所定の軸線と直交又は略直交する仮想面上を通って貫通する連通穴が形成された弁体と、該弁体が内装される弁体収容室が形成され、弁体の連通穴を介して互いに連通する主通路が形成されたハウジングと、該ハウジングの主通路同士を連通させた弁体の連通路周りと対向するように環状のシート材を保持するシート保持体とを備え、前記弁体がシート材に対して非接触又は略非接触な状態で前記所定の軸線周りで回転可能に構成されるとともに非貫通部分を主通路に対向させた状態で前記所定の軸線の延びる方向の一端側を支点にしてシート材側に傾動可能に構成されたバルブ装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかるバルブ装置は、弁体がシート材に対して非接触又は略非接触の状態で回転可能に構成されているため、弁体の回転に伴うシート材の摩耗を防止することができ、弁体とハウジングとの間のシール性能の低下を抑制できるとされている。
【0004】
そして、この種のバルブ装置は、弁体が所定の軸線の延びる方向の一端側を支点にして傾動するため、弁体とシート材との当接位置によって当接力が異なり、弁体とシート材との密接性が均一でないとして、シート保持体が主通路の穴中心方向に移動可能に設けられるとともに、ハウジングとシート保持体との間にシート保持体(シート材)を弁体側に向けて付勢する付勢手段が介装されたものが提供されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
かかるバルブ装置は、シート保持体に対する付勢手段による付勢でシート材を弁体に均一に圧接させて弁体とハウジングとの間のシール性能を高めるようになっている。そして、この種のバルブ装置は、シート保持体が主通路の穴中心方向に移動可能とされるため、シート保持体とハウジングとの間をシールすべく、シート保持体の外周とハウジングの内周との間にOリングや角リング等のシール材が介装されている。これにより、かかるバルブ装置は、シート保持体(シート材)の移動を許容しつつハウジングとシート保持体との間のシールが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4192193号公報
【特許文献2】特開2009−85244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記構成のバルブ装置は、付勢手段でシート材を弁体に押し付けるべく、シート保持体が主通路の穴中心方向に移動可能となっているため、シート保持体とハウジングとの間に隙間が形成される結果、弁体をシート材に圧接させたときにシート材(シート保持体)が傾いて弁体がシート材に対して適正に圧接しない場合がある。すなわち、弁体を傾動させると、弁体は、傾動支点側からその反対側に向けて順々にシート材に当接していくことになるため、弁体の傾動支点側ほどシート材に対する圧接力(押圧力)が大きくなる。その結果、シート保持体は、シール手段(Oリングや角リング)を押し潰しつつ傾いてしまい、シート保持体に保持されたシート材が弁体に対して不適切な姿勢になって弁体に対してシート材が均一に当接しない場合がある。
【0008】
また、上記構成のバルブ装置は、弁体がハウジングやシート材に対して非接触又は略非接触な状態で回転可能に構成されるため、弁体とハウジングとの間に隙間が形成されてしまい、弁体収容室内に液体や気体等が流れ込んでしまう。そのため、弁体収容室内の液体や気体等の圧力(流体圧)がシート保持体に作用してしまい、その圧力が付勢手段による付勢力よりも大きい場合にシート保持体が弁体から離間する方向に押されて移動してしまうことがある。その結果、弁体をシート材側に傾動させてもシート材が流体圧の作用で弁体から離間する方向に逃げてしまうことになり、シート材に弁体が適正に圧接せずに弁体とハウジングとの間を確実にシールできなくなる場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、シート材を保持するシート保持体をハウジング内で移動可能に設けたとしても、弁体、ハウジング、及びシート保持体のそれぞれの間でのシールを適正に図ることのできるバルブ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るバルブ装置は、所定の軸線と直交又は略直交する仮想面上を通って貫通する連通路が形成された弁体と、該弁体を内装する弁体収容室が形成され、弁体収容室内の弁体の連通路を介して互いに連通する少なくとも二つの主通路が形成されたハウジングと、該ハウジングの主通路同士を連通させた弁体の連通路周りと対向するように環状のシート材を保持しつつ主通路の穴中心方向に移動可能に設けられたシート保持体と、シート保持体を弁体側に付勢する付勢手段と、シート保持体とハウジングとの間をシールするシール手段とを備え、弁体は、シート材に対して非接触又は略非接触な状態で前記所定の軸線を回転中心にして回転可能に構成されるとともに、連通路の両端開口間に形成される非貫通部分が主通路と対向した状態で前記所定の軸線の延びる方向の何れか一端側を支点にしてシート材側に傾動可能に構成され、弁体をシート材側に傾動させることによって該弁体の非貫通部分をシート材に圧接させて主通路を遮断するように構成されたバルブ装置において、シート保持体は、シート材を保持する環状の保持部と、該保持部に対して略同心で連続する筒状ガイド部とを備え、ハウジングには、主通路と同心又は略同心をなすとともに弁体収容室に向けて開放し、少なくともシート保持体の保持部及び付勢手段を収容可能な収容部が形成され、シール手段は、一端をシート保持体又は付勢手段に当接させるとともに他端をハウジングの内面に当接させた状態で、筒状ガイド部の外周とハウジングの内周との間に介設可能に筒状に形成されるとともに、筒状ガイド部及びハウジングに挟まれた部分の少なくとも一部に主通路の穴中心方向の圧縮力の作用で径方向に変形可能なシール部を備え、しかも、ハウジングとシート保持体との間、ハウジング、及びシート保持体の少なくとも何れか一つには、弁体収容室と収容部における付勢手段の収容した空間とを連通させた連通部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成のバルブ装置によれば、シート保持体は、シート材を保持する環状の保持部と、該保持部に対して略同心で連続する筒状ガイド部とを備え、ハウジングには、主通路と同心又は略同心をなすとともに弁体収容室に向けて開放し、少なくともシート保持体の保持部及び付勢手段を収容可能な収容部が形成され、シール手段は、一端をシート保持体又は付勢手段に当接させるとともに他端をハウジングの内面に当接させた状態で、筒状ガイド部の外周とハウジングの内周との間に介設可能に筒状に形成されるとともに、筒状ガイド部及びハウジングに挟まれた部分の少なくとも一部に主通路の穴中心方向の圧縮力の作用で径方向に変形可能なシール部を備え、しかも、ハウジングとシート保持体との間、ハウジング、及びシート保持体の少なくとも何れか一つには、弁体収容室と収容部における付勢手段の収容した空間とを連通させた連通部が形成されているので、シート材を保持するシート保持体をハウジング内で移動可能に設けたとしても、弁体、ハウジング、及びシート保持体のそれぞれの間でのシールを適正に図ることができる。
【0012】
具体的には、シール手段は、一端をシート保持体又は付勢手段に当接させるとともに他端をハウジングの内面に当接させた状態で、筒状ガイド部の外周とハウジングの内周との間に介設可能に筒状に形成されているため、筒状ガイド部の外周面とシール手段の内周面とが面接触し、且つシール手段の外周面とハウジングの内周面とが面接触することになる。これにより、弁体の傾動(シート材に対する弁体の押圧)によってシート保持体が傾動しようとしても、筒状ガイド部、シール手段及びハウジングの相互の面接触でシート保持体を適正な姿勢で維持させるように対抗することになる。
【0013】
従って、シート保持体が傾くことがないため、該シート保持体の保持部に保持されたシート材は弁体に対して適正な配置で維持することになる。
【0014】
そして、上記構成のバルブ装置は、ハウジングとシート保持体との間、ハウジング、及びシート保持体の少なくとも何れか一つには、弁体収容室と収容部における付勢手段の収容した空間とを連通させた連通部が形成されているため、弁体収容室内の流体が連通部を介して収容部における付勢手段の収容された空間(領域)に流れ込むことになる。
【0015】
そうすると、収容部内と弁体収容室内とが同圧になる結果、ハウジング内(弁体収容室側)の流体圧と収容部内の流体圧とが相殺される。これにより、シート保持体が流体圧の作用で不用意に移動することがなく、弁体を傾動させたとき、該弁体に対してシート保持体(シート材)が付勢手段によって適正に押し付けられ、弁体とシート材との間のシールを確実に図ることができる。
【0016】
そして、上記構成のバルブ装置は、シール手段が筒状ガイド部及びハウジングに挟まれた部分の少なくとも一部に主通路の穴中心方向の圧縮力の作用で径方向に変形可能なシール部を備えているので、上述の如く、弁体がシート材に圧接すると、その圧接力がシール手段に伝わり、その圧接力がシール手段に対して軸心方向の圧縮力として作用する。そうすると、前記シール手段のシール部の全周が圧縮力の作用で径方向に変形し、筒状ガイド部の外周面及びハウジングの内周面の全周に亘って密接(圧接)することになる。従って、弁体をシート材に密接させたときにシート保持体とハウジングとの間のシール性も高めることができる。
【0017】
本発明の一態様として、前記連通部は、ハウジングとシート保持体との間に形成される隙間で構成されていることが好ましい。このようにすれば、ハウジングやシート保持体に特別な加工を行うことなく連通部を形成することができる。
【0018】
本発明の他態様として、前記シール手段は、シート保持体又は付勢手段に当接させる第一筒部材と、ハウジングの内面に当接させる第二筒部材と、第一筒部材と第二筒部材との間に介装される前記シール部としての筒状シール部材とを備えていることが好ましい。このようにすれば、弁体をシート材に圧接させたときに、その圧接力が第一筒部材及び第二筒部材のそれぞれに対して軸線方向の力として作用する結果、筒状シール部材を確実に径方向に弾性変形させることができる。
【0019】
この場合、前記第一筒部材は、筒状シール部材に当接させる端面が径方向中心側又は径方向外側の何れか一方側に向いて傾斜した傾斜面に形成される一方、第二筒部材は筒状シール部材に当接させる端面が径方向中心側又は径方向外側の何れか他方側に向いて傾斜した傾斜面に形成されることが好ましい。このようにすれば、シール手段に圧縮力が作用したとき、第一筒部材の傾斜面からなる端面が筒状シール部材を筒状ガイド部又はハウジングの何れか一方に向けて押し付ける一方、第二筒部材の傾斜面からなる端面が筒状シール部材を筒状ガイド部又はハウジングの何れか他方に向けて押し付けることになり、筒状ガイド部及びハウジングに対する筒状シール部材の密接度を高めることができる。従って、シート保持体(筒状ガイド部)とハウジングとの間のシールをより確実なものにすることができる。
【0020】
そして、本発明の別の態様として、前記筒状シール部材は、膨張黒鉛又はフッ素樹脂で構成されることが好ましい。このようにすれば、シート保持体とハウジングとの間のシール性能をよりいっそう高めることができる。なお、筒状シール部材を構成するフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド(2フッ化))、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化))等が挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係るバルブ装置によれば、シート材を保持するシート保持体をハウジング内で移動可能に設けたとしても、弁体、ハウジング、及びシート保持体のそれぞれの間でのシールを適正に図ることができるといった優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るバルブ装置の縦断面図であって、弁体の連通路を介してハウジングの主通路が連通した状態を示す。
【図2】同実施形態に係るバルブ装置の縦断面図であって、ハウジングの主通路を遮断すべく、弁体をシート材側に傾動させる状態を示す。
【図3】同実施形態に係るバルブ装置の第一ステム挿入部及び第一ステム(接続部)の関係を説明するための説明図を示す。
【図4】同実施形態に係るバルブ装置の部分拡大断面図であって、図1のA部拡大断面図を示す。
【図5】本発明の他実施形態に係るバルブ装置の部分拡大断面図を示す。
【図6】本発明の別の実施形態に係るバルブ装置の部分拡大断面図であって、(a)は、ハウジングに連通部を形成したバルブ装置の部分拡大断面図を示し、(b)は、シート保持体に連通部を形成したバルブ装置の部分拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0024】
本実施形態に係るバルブ装置は、流路の遮断と開放とを切り換えるための二方弁である。すなわち、本実施形態に係るバルブ装置は、流路を構成する二本の配管が接続され、その配管間で流通対象物の流通が可能な状態と流通が不能な状態とに切り換えることができるようになっている。
【0025】
本実施形態かかるバルブ装置は、図1及び図2に示す如く、所定の軸線Lと直交又は略直交する仮想面(図示しない)上を通って貫通する連通路R1が形成された弁体2と、該弁体2を内装する弁体収容室30が形成され、該弁体収容室30内の弁体2の連通路R1を介して互いに連通する二つの主通路R2,R3が形成されたハウジング3と、該ハウジング3の主通路R2,R3同士を連通させた弁体2の連通路R1周りと対向するように環状のシート材Sを保持しつつ主通路R2,R3の穴中心CL方向(穴中心線CLの延びる方向)に移動可能に設けられたシート保持体4と、シート保持体4を弁体2側に付勢する付勢手段5と、シート保持体4とハウジング3との間をシールするためのシール手段6とを備えている。
【0026】
前記弁体2は、シート材Sに対して非接触又は略非接触な状態で前記所定の軸線Lを回転中心にして回転可能に構成されるとともに、連通路R1の両端開口間に形成される非貫通部分が主通路R2と対向した状態で前記軸線L方向の一端側を支点にしてシート材S側に傾動可能に設けられている。
【0027】
そして、本実施形態に係るバルブ装置1は、上述の如く、弁体2をシート材Sに対して非接触な状態で回転させた上で、該弁体2をシート材S側に傾動させるに伴い、上記構成に加え、所定の軸線Lを通るようにハウジング3に挿通され、弁体2を所定の軸線L方向の一端側(本実施形態においてはハウジング3の下端側)で傾動可能に支持するとともに該弁体2を所定の軸線L周りで回転させる軸状のステム(以下、第一ステムという)8と、所定の軸線Lを通るように第一ステム8とは反対側でハウジング3に挿通され、所定の軸線Lの他端側(本実施形態においてはハウジング3の上端側)で弁体2をシート材Sに向けて付勢して該弁体2を傾動させる軸状のステム(以下、第二ステムという)9とをさらに備えている。
【0028】
前記弁体2は、一般的なボールバルブと同様、略球状に形成され、前記連通路R1が該弁体2の略中心を通る真っ直ぐな穴に形成されている。本実施形態に係る弁体2は、所定の軸線L方向の一端側となる端部に第一ステム8の一端部(後述する接続部80)を挿入するためのステム挿入部(以下、第一ステム挿入部という)20が凹設されている。該第一ステム挿入部20は、図3に示す如く、前記弁体2の回転中心となる所定の軸線Lと直交又は略直交する方向に沿って延びる一対の第一平面部20a,20bが前記所定の軸線Lを挟んで形成されるとともに、一対の第一平面部20a,20bと直角又は略直角をなし、且つ前記所定の軸線Lと直交又は略直交する方向に延びる一対の第二平面部21a,21bが前記所定の軸線Lを挟んで形成されている。
【0029】
図1及び図2に戻り、本実施形態に係る弁体2は、所定の軸線L方向の他端側(第一ステム挿入部20とは反対側)の端部に、第二ステム9の後述する押圧部90に押圧(付勢)される被押圧部(以下、第一被押圧部という)22aが設けられている。該第一被押圧部22aは、弁体2の非貫通部分がシート材Sと対向した状態で、押圧部90による押圧力が該シート材Sに向けて作用するように設けられている。本実施形態において、弁体2は、所定の軸線L方向の他端側の端部に第二ステム9の端部を挿入するステム挿入部(以下、第二ステム挿入部という)22が凹設されている。
【0030】
該第二ステム挿入部22も、第一ステム挿入部20と同様に、非貫通状態の穴(凹部)で構成されており、該第二ステム挿入部22の内周(開口形状)を所定の形状とすることで、該第二ステム挿入部22の内周面の一部が第一被押圧部22aとされている。具体的には、該第二ステム挿入部22は、連通路R1の穴中心CLと略同方向に延びる平面からなる第一被押圧部22aを備えた内周面によって画定されており、弁体2の非貫通部分と一方の主通路R2とが対向した状態(連通路R1の穴中心CLと主通路R2,R3の穴中心CLとが直交した状態)で、第一被押圧部22a(内面)が弁体2の変位(傾動)を許容する方向と直交した方向に延び、押圧部90の押圧力が弁体2を変位させる方向に作用するようになっている。
【0031】
本実施形態に係るバルブ装置1は、押圧部90による押圧で弁体2をシート材S側に変位(傾動)させた状態(弁体2がシート材Sに密接した状態)から弁体2を反対側に強制的に変位させる(弁体2をシート材Sから離間させる)ことができるようにもなっている。これに伴い、第二ステム挿入部22を画定する内周面は、前記第一被押圧部22aと略平行をなして対向する平面からなる別の被押圧部(以下、第二被押圧部という)22bを備えている。
【0032】
前記ハウジング3は、内部に弁体2を収容する弁体収容室30が形成されており、二つの主通路(穴)R2,R3が弁体収容室30を挟んで互いに対向するように形成されている。すなわち、上述の如く、弁体2の連通路R1が真っ直ぐな穴で構成されるため、二つの主通路R2,R3は、弁体2の連通路R1と略同心になるように形成されている。また、二つの主通路R2,R3は、弁体2の連通路R1の内径と同径に設定されている。
【0033】
なお、本実施形態に係るハウジング3は、メインフレーム31と、該メインフレーム31に取り付けられるサブフレーム32とで構成されており、メインフレーム31とサブフレーム32とを連結することで内部に弁体収容室30が形成されるようになっている。これに伴い、本実施形態に係るハウジング3は、サブフレーム32に一方の主通路R2が形成される一方、メインフレームに他方の主通路R3が形成されており、上述の如く、面フレーム31にサブフレーム32を連結することで、一対の主通路R2,R3が弁体収容室30を挟んで同心で連通するようになっている。
【0034】
そして、ハウジング3は、主通路R2,R3の穴中心CLと直交する方向の一端側に第一ステム8を挿通するための第一ステム挿通部311が形成されるとともに、該第一ステム挿通部311と対向するように、第二ステム9を挿通するための第二ステム挿通部312が形成されている。そして、第一ステム8は、第一ステム挿通部311に挿通された状態で弁体収容室30内の弁体2に形成された第一ステム挿入部20に接続部80が挿入されている。これに対し、第二ステム9は、第二ステム挿通部312に挿通された状態で弁体収容室30内の弁体2に形成された第二ステム挿入部22に端部が挿入されている。なお、第一ステム挿通部311及び第二ステム挿入部22は、何れも各ステム8,9の軸線周りの回転を許容しつつシールを図るべく、ステム8,9とハウジング3との間にガスケット(採番しない)が介入されている。
【0035】
そして、前記ハウジング3には、シート保持体4を収容するための収容部300が主通路R2,R3と同心又は略同心で形成されている。本実施形態に係るバルブ装置1は、ハウジング3がメインフレーム31とサブフレーム32とで構成され、一方の主通路R2側にシート材Sを配設するようにしているため、前記収容部300は、サブフレーム32に形成されている。
【0036】
前記収容部300は、図4に示す如く、弁体収容室30に向けて開口するように形成されている。本実施形態に係る収容部300は、弁体収容室30に向けて開口した第一収容部300aと、第一収容部300aよりも小径な第二収容部300bと、第二収容部300bよりも小径な第三収容部300cとで構成されており、これらが主通路R2の穴中心CL方向に連続して並ぶことで形成されている。すなわち、収容部300は、弁体収容室30側から第一収容部300a、第二収容部300b、第三収容部300cの順でこれらが同心で並ぶ段付き穴で構成されている。
【0037】
前記第一収容部300aは、内径がシート保持体4の後述する保持部4aの外径よりも大径に設定されている。また、第一収容部300aは、主通路R2の穴中心CL方向の長さが、同方向における保持部4aの長さよりも長く設定されている。より具体的に説明すると、第一収容部300aは、保持部4aを主通路R2の穴中心CL方向で移動可能な状態で収容し、また保持部4aに隣接させた状態で保持部4aとともに付勢手段を収容できるようになっている。これに伴い、第一収容部300aは、主通路R2の穴中心CL方向の長さが、同方向における保持部4aの長さ、保持部4aの移動代、付勢手段の長さ、及び余裕代(シール手段6の端部を介在させる介在代)を合計した長さに設定されている。
【0038】
第二収容部300bは、シール手段6及び筒状ガイド部4bを収容する空間で、内径がシール手段6の外径と同径又は略同径に設定されている。そして、第二収容部300bは、主通路R2の穴中心CL方向の長さがシール手段6の軸心方向の長さよりも短く設定されており、収容したシール手段6の端部(後述する第一筒部材の一部)が第一収容部300a内に延在するように形成されている。
【0039】
第三収容部300cは、内径がシート保持体4の後述する筒状ガイド部4bの外径よりも大径に設定されている。そして、第三収容部300cは、第一収容部300aに保持部4aを収容した状態で、筒状ガイド部4bの端部が収容されるように形成されている。すなわち、第三収容部300cは、筒状ガイド部4bにおける保持部4aに接続された端部とは反対側の端部を収容できるように形成されている。また、第三収容部300cは、主通路R2の穴中心CL方向において筒状ガイド部4bが移動できるように長さ設定されている。
【0040】
前記シート保持体4は、環状のシート材Sを保持可能に構成された保持部4aと、該保持部4aに対して略同心で連続する筒状ガイド部4bとを備えている。
【0041】
シート材Sは、弾性変形可能な軟質材料で環状に成形されている。ここで、シート材Sに採用できる材料として、例えば、天然ゴムや、合成ゴム(ニトリルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴムなどの合成ゴム)、四フッ化エチレンゴム樹脂等があるが、流路内で流通させる流通対象物の性状や該バルブ装置1の使用環境に応じて(耐熱や耐薬などを考慮して)選択されることは言うまでもない。
【0042】
本実施形態に係る保持部4aは、シート材Sを全周に亘って弁体2側に突出させた態様で保持できるように形成されている。本実施形態に係る保持部4aは、主通路R2の一部を形成するようにリング状に形成されている。すなわち、保持部4aは、リング状に形成されることで、その穴で主通路R2の一部を形成している。そのため、保持部4aは、内径がハウジング3に形成された主通路R2と同径に設定されている。
【0043】
そして、保持部4aは、第一収容部300aに収容されることを前提に、外径が主通路R2の内径よりも大径に設定されている。すなわち、保持部4aは、外径が主通路R2よりも大径で且つ第一収容部300aの内径よりもやや小径に設定されている。これにより、本実施形態に係るバルブ装置1は、保持部4aと第一収容部300aの内周面との間に隙間が形成され、該隙間を介して弁体収容室30と第一収容部300aの奥部(付勢手段5が内装される空間)とが連通している。そして、本実施形態に係る保持部4aは、外周端部に第一収容部300aの内部側に突出した突出部40が形成されている。該突出部40は、第一収容部300aに収容された付勢手段5が当接するように形成されている。
【0044】
前記筒状ガイド部4bは、保持部4aに連設されており、保持部4aとともに主通路R2の一部を形成するように筒状に形成されている。すなわち、筒状ガイド部4bは、筒状に形成されることで、その穴で主通路R2の一部を形成している。そのため、筒状ガイド部4bは、内径がハウジング3に形成された主通路R2と同径に設定されている。そして、本実施形態に係るバルブ装置1は、筒状ガイド部4bの外周面とハウジング3(第二収容部300b)の内周面との間にシール手段6を介装させるため、前記筒状ガイド部4bは、外径がシール手段6の内径と同径又は略同径に設定されている。そして、筒状ガイド部4bは、保持部4aを第一収容部300aにおける弁体収容室30側に位置させた状態で、端部が第三収容部300cに位置するように長さ設定されている。なお、筒状ガイド部4bは、第三収容部300c内にあるときに、その第三収容部300cの終端(弁体収容室30側に向く端面)と干渉することのない長さに設定されている。
【0045】
前記付勢手段5は、収容部300(第一収容部300a)内に収容されている。具体的には、付勢手段5は、収容部300の内面(収容部300を画定して弁体収容室30側に向く面)と、シート保持体4(保持部4a)の背面(弁体収容室30とは反対側に向く面)との間に介設されており、シート保持体4(保持部4aに保持されたシート材S)を弁体収容室30側に付勢している。これに伴い、本実施形態に係るバルブ装置1は、シート材Sが規定位置よりも弁体収容室30(弁体2)側に移動するのを規制するストッパー7がハウジング3に固定されている。なお、規定位置とは、シート保持体4(シート材S)のホームポジションであって、弁体2がシート材S側に傾動した状態で、該弁体2がシート材Sに対して当接し得る位置を意味する。
【0046】
前記付勢手段5には、コイルバネや皿バネ等の種々タイプのものを採用でき、本実施形態においては、皿バネが採用されている。皿バネは、円環状に形成されており、その中心が主通路R2の穴中心CLと同心又は略同心となるように、シート保持体4(保持部4a)の背面とハウジング3(第一収容部300a)の内面との間に介装されている。本実施形態において、保持部4aに突出部40が形成されているため、前記皿バネ5は、突出部40の外周縁部に当接するように第一収容部300aに収容されている。本実施形態において、前記皿バネ5は、穴中心CL方向に二つ重ねて設けられており、シート保持体4が規定位置に位置した状態で、自然長になるように設けられている。
【0047】
シール手段6は、一端が第一収容部300a内の付勢手段5に当接するとともに他端がハウジング3の内面に当接して主通路R2,R3の穴中心CL方向での移動が規制された状態で、筒状ガイド部4bの外周とハウジング3の内周との間に介装可能な筒状に形成されている。本実施形態に係るバルブ装置1は、ハウジング3に収容部300(第一収容部300a及び第二収容部300b)が形成されているため、シール手段6は一方の端部を第一収容部300aに延在させた状態で残りの部分が第二収容部300bに収容されている。なお、本実施形態に係るバルブ装置1は、付勢手段5に皿バネが採用されているため、シール手段6の一端は皿バネ5の内周縁部に当接している。
【0048】
そして、シール手段6は、筒状ガイド部4b及びハウジング3に挟まれた部分の少なくとも一部に主通路R2の穴中心CL方向の圧縮力の作用で径方向に変形可能なシール部60を備えている。本実施形態において、シート保持体4が筒状ガイド部4bを備えるとともに、ハウジング3に筒状ガイド部4bを収容する第二収容部300bが形成されているため、シール手段6は、ハウジング3(本実施形態においては第二収容部300b)の内周面と、筒状ガイド部4bとに挟まれた領域内にシール部60を備えている。
【0049】
本実施形態に係るシール手段6は、付勢手段5に当接させる第一筒部材61と、ハウジング3の内面に当接させる第二筒部材62と、第一筒部材61と第二筒部材62との間に介装される前記シール部としての筒状シール部材60とを備えている。第一筒部材61及び第二筒部材62は、弁体2の傾動に伴う押圧力に対抗可能(すなわち、変形不能)な金属材料で形成されている。これに対し、前記筒状シール部材は、膨張黒鉛又はフッ素樹脂で構成される。筒状シール部材を構成するフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化))、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化))、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド(2フッ化))、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化))等が挙げられる。
【0050】
これにより、シール手段6の軸線方向で圧縮力が作用したときに、第一筒部材61及び第二筒部材62が変形することなく筒状シール部材60を挟み込み、筒状シール部材60の外径が径方向に拡径するとともに筒状シール部材60の内径が縮径するように該筒状シール部材60が弾性変形するようになっている。すなわち、シール手段6は、軸線方向の圧縮力が作用すると筒状シール部材60が変形して筒状ガイド部4b及びハウジング3に対する密着度が高まる一方、圧縮力から解放されると筒状シール部材60が元の状態に復元して筒状ガイド部4b及びハウジング3に対する密着度が低下するようになっている。
【0051】
そして、第一筒部材61は、筒状シール部材60に当接させる端面が径方向中心又は外側の何れか一方に向いて傾斜した傾斜面(テーパー面)に形成される一方、第二筒部材62は、筒状シール部材60に当接させる端面が径方向中心又は外側の何れか他方に向いて傾斜した傾斜面(テーパー面)に形成されている。本実施形態において、第一筒部材61は、筒状シール部材60に当接させる端面が径方向中心に向いて傾斜した傾斜面に形成される一方、第二筒部材62は、筒状シール部材60に当接させる端面が外側に向いて傾斜した傾斜面に形成されている。これにより、本実施形態に係るシール手段6は、軸線方向(主通路R2,R3の穴中心CL方向)の圧縮力(軸力)が作用したときに、第一筒部材61が筒状シール部材60の端部を筒状ガイド部4b側に押し付ける一方、第二筒部材62が筒状シール部材60の他方の端部をハウジング3(第二収容部300b)の内周面に押し付けるようになっている。
【0052】
そして、本実施形態に係るバルブ装置1は、ハウジング3とシート保持体4との間に弁体収容室30と収容部300(第一収容部300a)における付勢手段5の収容した空間とを連通させた連通部45が形成されている。すなわち、本実施形態に係るバルブ装置1は、シート保持体4が主通路R2の穴中心CL方向に移動可能に設けられるに伴って第一収容部300aの内面と保持部4aの外面との間に形成される微小隙間で連通部45が構成されている。これにより、本実施形態に係るバルブ装置1は、シート材Sにおける弁体2との接触位置よりも径方向外側で連通部45が弁体収容室30に向けて開放した状態になっており、弁体2とシート材Sとが接触した状態であっても弁体収容室30内に流れ込んだ流体が連通部45を介して収容部300(第一収容部300a)内に流入できるようになっている。
【0053】
前記第一ステム8は、図1〜図3に示す如く、ハウジング3(第一ステム挿通部311)に挿通され、該ハウジング3内に位置する一端部に、弁体2の第一ステム挿入部20(一対の第一平面部20a,20b間:一対の第一平面部20a,20b及び一対の第二平面部21a,21bで包囲される領域)に挿入される接続部80が形成されている。
【0054】
該第一ステム8の接続部80は、前記一対の第一平面部20a,20bと対向するように、前記所定の軸線Lと直交又は略直交方向に延びる一対に凸条部81a,81bが前記所定の軸線Lを挟んで形成されるとともに、一対に凸条部81a,81bの延びる方向と直交又は略直交する方向に延び且つ前記所定の軸線Lと平行又は略平行な一対の第三平面部82a,82bが前記所定の軸線Lを挟んで形成されている。
【0055】
前記一対の凸条部81a,81bは、対向する第一平面部20a,20bに対して僅かに隙間があくように形成されている。すなわち、弁体2が傾動できるように一対の第一平面部20a,20bの間隔よりも一対に凸条部81a,81bの間隔が狭く設定されており、弁体2が傾動したときに各凸条部81a,81bが対向する各第一平面部20a,20bに対して線接触するように構成されている。
【0056】
前記第三平面部82a,82bは、対向する弁体2側の第二平面部21a,21bと面接触しており、第一ステム8を回転させたときのトルクが第二平面部21a,21bから第三平面部82a,82bに伝達できるように構成されるとともに、その接触面に沿った弁体2の移動(傾動)を許容できるように構成されている。
【0057】
そして、図1及び図2に示す如く、ハウジング3内に位置する第一ステム8の先端には、弁体2と点接触するように構成された凸部(採番しない)が形成されている。この凸部は、頂点(最も突出した部分)が第一ステム8(弁体2)の所定の軸線L上に位置するように形成されており、本実施形態においては、外面が球面状をなすように形成されている。そして、該第一ステム8は、前記凸部が弁体2の第一ステム挿入部20の奥部に形成される面(平面)に接触するように設けられる。すなわち、第一ステム8は、弁体2を支持できるように取り付けられる。
【0058】
第一ステム8は、ハンドル等を取り付けることで手動によって回転させることも可能であるが、本実施形態においては、第一ステム8の回転角度を任意に設定できるパルスモータ等の駆動モータ(図示しない)が他端側に接続され、該駆動モータによる駆動により、弁体2の所定の軸線L周りで回転するようになっている。
【0059】
第二ステム9は、ハウジング3(第二ステム挿通部312)に挿通され、ハウジング3内に位置する一端部の外周の少なくとも一部に径方向外方に突出した押圧部90が設けられている。押圧部90は、湾曲した外周面に対する曲率中心が第二ステム9の軸心に対して偏心した偏心カムであり、弁体2の非貫通部分がシート材Sに対向した状態で、第二ステム9を所定の軸線L周りで回転させると、弁体2の第一被押圧部22aに接触乃至押圧するようになっている。
【0060】
また、本実施形態に係る押圧部90は、弁体2の非貫通部分がシート材Sに対向した状態で、第二ステム9を所定の軸線L周りで逆回転(押圧部90に第一被押圧部22aを押圧させるとき回転方向とは逆方向に回転)させることで、第二被押圧部22bに対しても押圧できるようになっており、シート材S側に傾動(変位)した弁体2(非貫通部分)をシート材Sから強制的に離間させることもできるようになっている。
【0061】
上記構成の第二ステム9は、第一ステム8と同様に、ハンドル等を取り付けることで手動によって回転させることも可能であるが、本実施形態においては、第二ステム9の回転角度を任意に設定できるパルスモータ等の駆動モータ(図示しない)が他端側に接続されている。
【0062】
本実施形態に係るバルブ装置1は、以上の構成からなり、次に、本実施形態に係るバルブ装置1の作動について説明する。
【0063】
上記構成のバルブ装置1は、図1に示す如く、二つの主通路R2,R3が弁体2の連通路R1を介して連通した状態で、一方の主通路R2側から他方の主通路R3側(又は、他方の主通路R3側から一方の主通路R2側)に向けて流通対象物の流通が許容される。この状態で、二つの主通路R2,R3と弁体2の連通路R1とが同心又は略同心をなし、弁体2がシート材Sに対して非接触状態になっており、押圧部90が弁体2の第一被押圧部22a及び第二被押圧部22bの何れに対しても押圧していない状態となっている。
【0064】
そして、このように流通対象物の流通を許容した状態から主通路R2を遮断するには、第二ステム9をそのままの状態で維持させつつ第一ステム8のみを90°回転させる。そうすると、第一ステム8の回転力が第三平面部82a,82bを介して弁体2の第二平面部21a,21bに伝達され、弁体2も90°回転することになる。
【0065】
このように第二ステム9を回転させることなく弁体2を回転させるとき、押圧部90(カム)は、第一被押圧部22a及び第二被押圧部22bの何れも押圧しない状態(弁体2を傾動させるような付勢を作用させない状態)で維持し、弁体2はシート材Sに対して非接触状態のままを維持しつつ所定の軸線L周りで回転する結果、弁体2の非貫通部分が一方の主通路R2(シート材S)に対して隙間をあけた状態で対向することになる。また、第一ステム8のトルクを伝達した弁体2側の第二平面部21a,21bと第一ステム8の第三平面部82a,82bとが、弁体2を傾動させる方向に沿った状態(主通路R2の穴中心CLと平行又は略平行になった状態)になり、第二平面部21a,21bと第三平面部82a,82bとが接触していても弁体2の傾動が許容された状態となる。
【0066】
そして、第二ステム9を回転させると、図2に示す如く、押圧部90が第一被押圧部22a(弁体2の上部側)を押圧して弁体2をシート材S側に付勢し、その付勢で弁体2が傾動しようとする。このとき、第一ステム8の先端(弁体2を支持した支持点)を傾動支点にして弁体2が傾動し、弁体2が所定の移動量傾動した状態で、弁体2の非貫通部分がシート材Sに接近する。
【0067】
本実施形態に係るバルブ装置1は、シート保持体4を構成する筒状ガイド部4bとハウジング3の内周面との間に筒状のシール手段6が介装されているため、筒状ガイド部4bの外周面とシール手段6の内周面とが面接触し、且つシール手段6の外周面とハウジング3の内周面とが面接触することになり、弁体2の傾動(シート材6に対する弁体2の押圧)によってシート保持体4を傾動させようとしても、筒状ガイド部4b、シール手段6及びハウジング3の相互の面接触でシート保持体4を適正な姿勢で維持させよるように対抗することになる。
【0068】
従って、シート保持体4は傾くことがないため、該シート保持体4の保持部4aに保持されたシート材Sは弁体2に対して適正な配置で維持することになる。そして、上記構成のバルブ装置1は、保持部4aの外周とハウジング3(第一収容部300a)の内周との間に連通部45が形成されているため、弁体収容室30内に流れ込む流体が連通部45を介して第一収容部300a(収容部300)における付勢手段5の収容された空間(領域)に流れ込むことになる。
【0069】
そうすると、第一収容部300a内と弁体収容室30内とが同圧になる結果、ハウジング3内(弁体収容室30側)の流体圧と第一収容部300a内の流体圧とが相殺される結果、シート保持体4が弁体収容室30内の流体圧の作用で不用意に移動することがない。これにより、弁体2を傾動させたとき、該弁体2に対してシート保持体4(シート材S)が付勢手段5によって適正に押し付けられ、弁体2とシート材Sとの間のシールを確実に図ることができる。
【0070】
また、このように弁体2がシート材Sに圧接すると、その圧接力がシート保持体4及び付勢手段5を介してシール手段6に伝わるので、その圧接力が筒状のシール手段6に対して軸心方向の圧縮力として作用する。そうすると、前記シール手段6のシール部60の全周が圧縮力の作用で径方向に変形し、筒状ガイド部4bの外周面及びハウジング3(第二収容部300b)の内周面の全周に亘って密接(圧接)することになり、シート保持体4とハウジング3との間のシール性も高まることになる。
【0071】
このように、弁体2がシート材Sに圧接すると、シート材Sは全周に亘って規定した変形量で弾性変形し、その弾性によって弁体2とハウジング3との間がシールされる結果、一方の主通路R2(二つの主通路R2,R3間)が遮断され、流通対象物の流通が停止することになる。
【0072】
これに対し、第二ステム9を逆回転(弁体2をシート材S側に変位させる場合とは反対側に回転)させると、第一被押圧部22aに対する押圧部90の当接が解除される一方、該押圧部90が第二被押圧部22bを押圧することになり、第二被押圧部22bに対する押圧部90の押圧作用で、弁体2がシート材Sから離間する方向に傾動する。
【0073】
その結果、弁体2が元の位置に復帰する一方で、シート保持体4(シート材S)が規定位置で位置決めされ、弁体2とシート材Sとが非接触状態(略一定の間隔)に戻ることになる。そして、第二ステム9を回転させることなく第一ステム8を逆回転(弁体2の非貫通部分をシート材Sと対向させる場合とは反対側に回転)させると、弁体2がシート材Sに対して非接触状態で回転し、二つの主通路R2,R3が弁体2の連通路R1を介して連通して流通対象物の流通を許容した状態に戻ることになる。
【0074】
以上のように、本実施形態に係るバルブ装置1によれば、シート保持体4が、シート材Sを保持する環状の保持部4aと、該保持部4aに対して略同心で連続する筒状ガイド部4bとを備え、ハウジング3には、主通路R2と同心又は略同心をなすとともに弁体収容室30に向けて開放し、シート保持体の保持部4a及び付勢手段5を収容可能な収容部300(第一収容部300a)が形成され、シール手段6は、一端を付勢手段5に当接させるとともに他端をハウジング3の内面に当接させた状態で、筒状ガイド部4bの外周とハウジング3の内周との間に介設可能に筒状に形成されるとともに、筒状ガイド部4b及びハウジング3に挟まれた部分の一部に主通路R2の穴中心CL方向の圧縮力の作用で径方向に変形可能なシール部60を備え、しかも、ハウジング3とシート保持体4との間には、弁体収容室30と収容部300における付勢手段5の収容した空間とを連通させた連通部45が形成されているので、シート材Sを保持するシート保持体4をハウジング3内で移動可能に設けたとしても、弁体2、ハウジング3、及びシート保持体4のそれぞれの間でのシールを適正に図ることができる。
【0075】
また、前記シール手段6は、付勢手段5に当接させる第一筒部材61と、ハウジング3の内面に当接させる第二筒部材62と、第一筒部材61と第二筒部材62との間に介装される筒状シール部材(シール部)60とを備えているので、弁体2をシート材Sに圧接させたときに、その圧接力が第一筒部材61及び第二筒部材62のそれぞれに対して軸線方向の力として作用する結果、筒状シール部材60を確実に径方向に弾性変形させ、筒状ガイド部4b及びハウジング3に圧接させることができる。
【0076】
特に、第一筒部材61は、筒状シール部材60に当接させる端面が径方向中心側に向いて傾斜した傾斜面に形成される一方、第二筒部材62は筒状シール部材60に当接させる端面が径方向外側に向いて傾斜した傾斜面に形成されているので、シール手段6に圧縮力が作用したとき、第一筒部材61の傾斜面からなる端面が筒状シール部材60を筒状ガイド部4に向けて押し付ける一方、第二筒部材62の傾斜面からなる端面が筒状シール部材60をハウジング3に向けて押し付けることになり、筒状ガイド部4b及びハウジング3に対する筒状シール部材60の密接度を高めることができる。
【0077】
さらに、前記筒状シール部材60は、膨張黒鉛又はフッ素樹脂で構成されているので、シート保持体4とハウジング3との間のシール性能をよりいっそう高めることができる。
【0078】
尚、本発明のバルブ装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0079】
上記実施形態において、第一筒状部材61の端面を筒状ガイド部4b側に傾斜した傾斜面に形成し、第二筒状部材62の端面をハウジング側に傾斜した傾斜面に形成したが、例えば、第一筒状部材61の端面をハウジング3側に傾斜した傾斜面に形成し、第二筒状部材62の端面を筒状ガイド部4b側に傾斜した傾斜面に形成してもよい。
【0080】
上記実施形態において、シール手段6を筒状シール部材60、第一筒部材61、及び第二筒部材62で構成し、第一筒部材61及び第二筒部材62の端面(筒状シール部材60を挟みこむ端面)を傾斜面で構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第一筒部材61及び第二筒部材62の端面(筒状シール部材60を挟みこむ端面)を主通路R2,R3の穴中心CLと直交又は略直交する平面で構成してもよい。但し、筒状シール部材60を筒状ガイド部4b及びハウジング3に確実に圧接させるには、上記実施形態のように第一筒部材61及び第二筒部材62の端面(筒状シール部材60を挟みこむ端面)を傾斜面で構成することが好ましいことは言うまでもない。
【0081】
上記実施形態において、シール手段6のシール部として単一な筒状シール部材60で構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、リング状をなす複数のシール部材を一列に並べて筒状のシール部60を形成するようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態において、シール手段6を筒状シール部材60,第一筒部材61、及び第二筒部材62で構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、筒状シール部材60のみでシール手段6を構成してもよい。
【0083】
上記実施形態において、シール部(筒状シール部材)60を膨張黒鉛又はフッ素樹脂で構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、シール手段6の一部又は全部をシール部60として、シート材Sと同様の軟質材料で構成してもよい。すなわち、シール部60は、シール手段6に対して軸線方向の圧縮力が作用したときに変形可能な材料であればよく、圧縮力から解放されたときに変形状態から元の状態に復元できる材料であればなおよい。
【0084】
また、上記実施形態のようにシール手段6を筒状シール部材60,第一筒部材61、及び第二筒部材62で構成する場合、第一筒部材61及び第二筒部材62の端面(筒状シール部材60を挟みこむ端面)を傾斜面で構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第一筒部材61及び第二筒部材62の端面(筒状シール部材60を挟みこむ端面)を主通路R2,R3の穴中心CLと直交又は略直交する平面で構成してもよい。
【0085】
上記実施形態において、収容部300を第一乃至第三収容部300c,300b,300cで構成し、シート保持体4全体を収容部300内に収容するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図5に示す如く、収容部300を第一収容部300a及び第二収容部300bで構成し、筒状ガイド部4bがハウジング3の穴(主通路R2)内で移動するようにしてもよい。このようにしても、筒状ガイド部4bとハウジング3(第二収容部300b)との間にシール手段6を設けることで、上記実施形態と同様に弁体2、ハウジング3、及びシート保持体4のそれぞれの間のシールを確実に図ることができる。但し、このように筒状ガイド部4bの内径がハウジング3に形成された穴(主通路R2)よりも小径になるため、筒状ガイド部4bが流体の流通を阻害する可能性が高まるため、上記実施形態と同様にすることが好ましいことは言うまでもない。
【0086】
上記実施形態において、シート材S(シート保持体4)を一つの主通路R2に対応させて設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、弁体2を他方の主通路R3側にも傾動可能にする場合には、両方の主通路R2,R3に対応させてシート材S(シート保持体4)を設けるようにしてもよい。
【0087】
上記実施形態において、二つの主通路R2,R3の形成された二方弁を一例に挙げたが、これに限定されるものではなく、例えば、弁体収容室30回りに三つ以上の主通路の形成された分岐用のバルブ装置であってもよい。これは、ボールバルブに適用したときも同様である。
【0088】
そして、上記実施形態において、一方の主通路R2に対応するようにシート保持体4(シート材S)を一つ設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、両主通路R2,R3(全ての主通路R2,R3)に対応するようにシート保持体4(シート材S)を設けるようにしてもよい。
【0089】
上記実施形態において、シート材S(シート保持体4)を付勢する付勢手段5として皿バネを採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、付勢手段5は、コイルバネであってもよい。
【0090】
上記実施形態において、シール手段6の一端を付勢手段5に当接させる一方で他端をハウジング3に当接させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、シール手段6の一端をシート保持体4に当接させる一方で他端をハウジング3に当接させるようにしてもよい。すなわち、シール手段6は、弁体2の傾動に伴ってシート材S(シート保持体4)が押圧されたときに、その力が軸線方向の圧縮力として作用するように配置すればよい。
【0091】
そして、上記実施形態において、弁体収容室30と収容部300(第一収容部300a)内の空間(付勢手段5が収容される空間)とを連通させる連通部45を保持部4aの外周とハウジング3の内周(第一収容部300aを画定する内周面)との間の隙間で構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、図6(a)及び図6(b)に示す如く、ハウジング3又はシート保持体4に弁体収容室30と収容部300の内部とを連通させる穴を設けて連通部45としてもよい。また、ハウジング3とシート保持体4との間、ハウジング3及びシート保持体4の少なくとも何れか一つに連通部45を形成してもよい。このようにしても、弁体収容室30内の流体が連通部45を介して収容部300内に流れ込んで両空間が同圧になる結果、シート保持体4が流体圧によって不用意に移動してしまうことを防止することができる。なお、この場合においても、連通部45は、シート材Sにおける弁体2との接触位置よりも径方向外側で弁体収容室30に向けて開放するように形成することは勿論のことである。
【0092】
また、上述の如く、ハウジング3又はシート保持体4に弁体収容室30と収容部300の内部とを連通させる穴を設けて連通部45とする場合、筒状ガイド部4bとハウジング3との間にシール手段6を介設するとともに、保持部4aとハウジング3との間にシール手段6を介設するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…バルブ装置、2…弁体、3…ハウジング、4…シート保持体、4a…保持部、4b…筒状ガイド部、5…付勢手段(皿バネ)、6…シール手段、7…ストッパー、8…第一ステム、9…第二ステム、20…第一ステム挿入部、20a,20b…第一平面部、21a,21b…第二平面部、22…第二ステム挿入部、22a…第一被押圧部、22b…第二被押圧部、30…弁体収容室、31…メインフレーム、32…サブフレーム、40…突出部、45…連通部、60…シール部(筒状シール部材)、61…第一筒部材、62…第二筒部材、80…接続部、81a,81b…凸条部、82a,82b…第三平面部、90…押圧部、300…収容部、300a…第一収容部、300b…第二収容部、300c…第三収容部、311…第一ステム挿通部、312…第二ステム挿通部、CL…穴中心、L…軸線、R1…連通路、R2,R3…主通路、S…シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線と直交又は略直交する仮想面上を通って貫通する連通路が形成された弁体と、該弁体を内装する弁体収容室が形成され、弁体収容室内の弁体の連通路を介して互いに連通する少なくとも二つの主通路が形成されたハウジングと、該ハウジングの主通路同士を連通させた弁体の連通路周りと対向するように環状のシート材を保持しつつ主通路の穴中心方向に移動可能に設けられたシート保持体と、シート保持体を弁体側に付勢する付勢手段と、シート保持体とハウジングとの間をシールするシール手段とを備え、弁体は、シート材に対して非接触又は略非接触な状態で前記所定の軸線を回転中心にして回転可能に構成されるとともに、連通路の両端開口間に形成される非貫通部分が主通路と対向した状態で前記所定の軸線の延びる方向の何れか一端側を支点にしてシート材側に傾動可能に構成され、弁体をシート材側に傾動させることによって該弁体の非貫通部分をシート材に圧接させて主通路を遮断するように構成されたバルブ装置において、シート保持体は、シート材を保持する環状の保持部と、該保持部に対して略同心で連続する筒状ガイド部とを備え、ハウジングには、主通路と同心又は略同心をなすとともに弁体収容室に向けて開放し、少なくともシート保持体の保持部及び付勢手段を収容可能な収容部が形成され、シール手段は、一端をシート保持体又は付勢手段に当接させるとともに他端をハウジングの内面に当接させた状態で、筒状ガイド部の外周とハウジングの内周との間に介設可能に筒状に形成されるとともに、筒状ガイド部及びハウジングに挟まれた部分の少なくとも一部に主通路の穴中心方向の圧縮力の作用で径方向に変形可能なシール部を備え、しかも、ハウジングとシート保持体との間、ハウジング、及びシート保持体の少なくとも何れか一つには、弁体収容室と収容部における付勢手段の収容した空間とを連通させた連通部が形成されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記連通部は、ハウジングとシート保持体との間に形成される隙間で構成されている請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記シール手段は、シート保持体又は付勢手段に当接させる第一筒部材と、ハウジングの内面に当接させる第二筒部材と、第一筒部材と第二筒部材との間に介装される前記シール部としての筒状シール部材とを備えている請求項1又は2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記第一筒部材は、筒状シール部材に当接させる端面が径方向中心側又は径方向外側の何れか一方側に向いて傾斜した傾斜面に形成される一方、第二筒部材は筒状シール部材に当接させる端面が径方向中心側又は径方向外側の何れか他方側に向いて傾斜した傾斜面に形成される請求項3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記筒状シール部材は、膨張黒鉛又はフッ素樹脂で構成される請求項1乃至4の何れか1項に記載のバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−276078(P2010−276078A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127720(P2009−127720)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】