説明

バルブ開放機構、それを用いた取り替え用エアゾール容器およびエアゾール容器の取り替えシステム。

【課題】 簡易な操作でエアゾール組成物の廃棄を可能にするバルブ開放機構、および廃棄時には手間をかけさせず、エアゾール装置の有効利用と廃棄の両者を同時に満たす取り替え用エアゾール容器およびエアゾール容器取り替えシステムを提供する。
【解決手段】 エアゾール容器4の上端に、装着される取付部材2と、その取付部材2とネジ機構により脱着できる排出部材3とからなり、前記取付部材2が、容器頭頂部の上方に延び、ネジ部が形成された周壁2bを備え、前記排出部材3が、前記取付部材2の周壁2bのネジ部と螺合する筒状部3aおよびその筒状部3aの上端を連結する天板3bと、ステム10と嵌合してステム内の通路と連通し、周壁に向けて開口する連通路11cが形成されたステム保持部11とが設けられ、前記排出部材3を取付部材2に螺合するときに、ステム保持部11がエアゾールバルブ3を開放するように構成されているバルブ開放機構1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール容器のバルブを開放状態に維持する機構および、そのバルブ開放機構を備えた取り替え用エアゾール容器およびエアゾール容器の取り替えシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平11−105954
【特許文献2】特開2002−80079
【0003】
特許文献1のエアゾール式吐出容器は、筒状の取付部材をエアゾール容器の取付環に装着し、その取付部材の上部に形成されたネジ部により吐出部材を締結している。そのため、ネジ部により、吐出部材を脱着することができる。また、内容物がなくなった後は、吐出部材を取り外し、新たな容器に装着すると、吐出部材を再使用することができる。さらに、容器本体が金属性で、吐出部材が樹脂製の場合には、金属部分と樹脂部分とを容易に分別して回収することができる。
【0004】
特許文献2には、薬液などの散布量を必要なだけ連続して噴射することができるエアゾール容器が開示されている。このものは、マウンティングキャップ中央のハウジングを保持する円筒状の外周部位にオネジが形成されており、その円筒状の頭頂部にステムが配置されている。そして、前記オネジと螺合できるメネジを内周面に備えた筒状の押圧部材を螺合すると、前記ステムを押し下げられるように構成されている。そのため、一旦、押圧部材を装着すると、ステムも押し下げられたままの状態となり、内容物を噴射し続けることができる。また、噴射を止めたいときには、ネジを緩めて噴射を中止することができる。そのため、噴射の無駄が少ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献では、ネジ機構を利用して、使用者に噴射部材を取り外しやすくして噴射部材の再利用と、金属製のエアゾール容器と合成樹脂製の吐出部材とを分けて分別回収による資源保護とを実現している。他方、エアゾール装置においては、不要になり廃棄する時は容器内部に残存しているエアゾール組成物を排出する作業が必要である。その排出作業を怠ると、回収業者がエアゾール装置を回収する場合に、エアゾール装置がゴミ回収車内で圧縮されて破損し、容器内部に残っていたエアゾール組成物が回収車内で放出され、周囲に静電気などの火種があると引火して火災を引き起こす危険性がある。このような危険性は資源保護の促進に対する妨げとなる。
【0006】
エアゾール組成物の排出作業は、容器本体に穴を開けたり、噴射ボタンを押し続けても実現できるが、それでは手間がかかる。また、排出作業の容易さだけを追求するために、そのための部材をエアゾール装置に付加するだけでは、排出作業時まで使用されない部材をいつも備えておくことになり、その製品の全体のデザインあるいは利便性が損なわれる。そのため、エアゾール装置の有効利用と排出作業の両者を同時に満たすものを提供する必要がある。
【0007】
そこで、本発明では、このような問題に鑑みてなされたものであり、簡易な操作でエアゾール組成物の排出を可能にするバルブ開放機構、および排出時には手間をかけさせず、エアゾール装置の有効利用と排出作業の両者を同時に満たす取り替え用エアゾール容器およびエアゾール容器取り替えシステムを提供することを技術課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバルブ開放機構(請求項1)は、エアゾール容器の上端に、エアゾールバルブのステムを略中心として装着される取付部材と、その取付部材とネジ機構により脱着できる排出部材とからなり、前記取付部材が、容器頭頂部の上方に延び、ネジ部が形成された周壁を備え、前記排出部材が、前記取付部材の周壁のネジ部と螺合する筒状部およびその筒状部の上端を連結する天板と、ステムと嵌合してステム内の通路と連通し、周壁に向けて開口する連通路が形成されたステム保持部とが設けられ、前記排出部材を取付部材に螺合するときに、ステム保持部がエアゾールバルブを開放するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
このようなバルブ開放機構においては、前記排出部材が、取付部材に対し、ステムの上方に間隔を空けて配置される通常形態およびステムを下方に押し下げる開放形態に変化することができるように構成されているものが好ましい(請求項2)。また、前記排出部材が、その筒状部の下端に、取付部材と螺合可能で、かつ、取り去ることができる嵩上げ部材を備えているものが好ましい(請求項3)。さらに、前記排出部材の筒状部が、天板を越えて反対向きに延びる側壁部材を備え、その側壁部材が周壁のネジ部と螺合できるものが好ましい(請求項4)。
【0010】
本発明の取り替え用のエアゾール容器(請求項5)は、前述のバルブ開放機構と、そのバルブ開放機構が装着されるエアゾール容器とを有することを特徴とする。また、本発明のエアゾール装置(請求項6)は、前述の取付部材を装着したエアゾール容器と、取付部材のネジ部と脱着自在に螺合し、ステムと嵌合する噴射部材とからなることを特徴とする。さらに、本発明のエアゾール容器の取り替えシステム(請求項7)は、前述の取り替え用エアゾール容器(A)と、前述のエアゾール装置(B)とからなり、取り替え用エアゾール容器(A)の排出部材とエアゾール装置(B)の噴射部材とが取り替え可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のバルブ開放機構(請求項1)は、不要になったエアゾール装置から内容物(エアゾール組成物)を排出する際、噴射部材を取り外し、排出部材を取付部材に回しながら装着するだけでステムが押し下げられてエアゾールバルブが開放し、容器内に残っている内容物を全量排出することができる。そのため、ネジを締めこむだけの簡易な操作ですむので、排出作業に手間がかからない。また、ネジ機構により、排出部材が強固に固着され、さらに、排出部材を装着する際の回転させる距離に対し、ステムが押し下げられる距離は小さいため、ステム孔がゆっくりと開放され、内容物が大量に排出され飛散するのを防止できるなど、安全に内容物を排出することができる。また、排出部材が、取付部材に装着したときにステムと嵌合してステム内の通路と連通し、取付部材の周壁に向けて開口する連通路が形成されたステム保持部を有するため、排出される内容物は周壁に衝突するため、内容物が飛散しない。
【0012】
また、前記排出部材が、取付部材に対し、ステムの上方に間隔を空けて配置される通常形態およびステムを下方に押し下げる開放形態に変化することができるように構成されている場合(請求項2)は、通常の形態では、ステムを保護するキャップとして、さらには押しボタンなどの噴射部材をステムに装着することができるため噴射部材を保護するキャップとして、用いることができるので、誤噴射を防止するばかりか、梱包あるいは搬送が容易で流通に適した形態となる。一方、エアゾール装置(製品)が不要になり内容物を排出するときは、排出部材をバルブ開放形態に変化させる。それにより、エアゾール組成物を容易に排出することができる。
【0013】
前記排出部材が、その筒状部の下端から折り曲げて取り去ることができる嵩上げ部材を備えている場合(請求項3)は、通常は、排出部材は容器の上部を保護するキャップとして、誤噴射などを防止する。そして、排出作業時には、嵩上げ部材を取り去って、取付部材に装着することにより、エアゾール組成物を容易に排出させることができる。そのため、部品点数を増やすことなく、通常のキャップとしての利用と排出作業での排出部材としての利用とを実現できる。前記排出部材の筒状部が天板を越えて反対向きに延びる側壁部材を備え、その側壁部材と取付部材の周壁がネジ機構により締結できる場合(請求項4)は、通常はステムの上部や噴射部材を覆って不意な誤噴射を防止するキャップとなる。そして、ひっくり返せば、内容物を排出する排出部材として作用する。そのため、別途、排出用の部材を用意しなくとも、直ちにエアゾール組成物の排出を行うことができる。
【0014】
また、本発明の取り替え用エアゾール容器(請求項5)は、前述のバルブ開放機構と、そのバルブ開放機構が装着されるエアゾール容器とを有する。そのため、エアゾール装置が不要になったとき、残っている内容物の排出が容易になる。さらに、本発明のエアゾール装置(請求項6)は、取付部材に形成されたネジ部を用いて、噴射部材を脱着することにより、噴射の用途に併せて、使用者が種々の噴射部材を選択することができる。さらに、エアゾール組成物がなくなった後は、噴射部材を取り外し、その噴射部材を新たなエアゾール容器に装着すると、噴射部材を再使用することができる。そして、不要になったエアゾール容器は排出部材を装着して残留しているエアゾール組成物を全量排出し、廃棄することができる。また、容器本体が金属性で、噴射部材が樹脂製の場合には、金属部分と樹脂部分とを容易に分別して資源ゴミとして回収することができる。そのため、リサイクルしやすく資源保護に適している。
【0015】
本発明のエアゾール容器の取り替えシステム(請求項7)は、前述の取り替え用エアゾール容器(A)と、前述のエアゾール装置(B)とからなり、取り替え用エアゾール容器(A)の排出部材とエアゾール装置(B)の噴射部材とが取り替え可能である。そのため、エアゾール装置(B)のエアゾール組成物がなくなると、使用者は、取り替え用エアゾール容器(A)を用意して、その取り替え用エアゾール容器(A)の排出部材を取り外して、使用済みのエアゾール容器(B)の取付部材に装着して、容器内に残っているエアゾール組成物を排出させる。次いで、使用済みエアゾール装置(B)に装着されていた噴射部材を取り替え用エアゾール容器(A)に装着して、新たなエアゾール装置として使用する。このように、使用済みエアゾール容器からは噴射部材が、取り替え用エアゾール容器からは排出部材が提供される。そのため、噴射部材は、再使用されるので、資源保護に適している。また、排出部材は、使用時には付属しておらず、エアゾール容器の交換時に取り替え用エアゾール容器に付属されているので、使用時に用いない排出部材を常備する必要がないので、その製品の全体のデザインあるいは利便性を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、図面を参照しながら本発明のバルブ開放機構、取り替え用エアゾール容器およびエアゾール容器の取り替えシステムの実施形態を説明する。図1は本発明のバルブ開放機構の一実施形態を示す断面図、図2aはそのバルブ開放機構の作動する様子を示す概略上面図、図2bは図2aのバルブ開放機構を備えた取り替え用エアゾール容器の一部側面断面図、図3aは本発明の取り替え用エアゾール容器の通常形態における他の実施形態を示す一部側面断面図、図3bは図3aの取り替え用エアゾール容器に用いる排出部材を示す斜面図、図3cは、図3aのエアゾール容器のバルブ開放形態を示す一部側面断面図、図3dは本発明の取り替え用エアゾール容器の通常形態におけるさらに他の実施形態を示す一部側面断面図、図3eは図3cの取り替え用エアゾール容器に用いる排出部材を示す斜面図、図4a、図4b、図4cは本発明のエアゾール容器の取り替えシステムに用いる噴射部材の実施の形態を示す概略図、図5は本発明のエアゾール容器の取り替えシステムの使用されてから廃棄されるまでを示す概略工程図、図6aおよび図6bは本発明のバルブ開放機構のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【0017】
図1を用いて本発明のバルブ開放機構の一実施形態を説明する。図1に示すバルブ開放機構1は、取付部材2と、その取付部材2に脱着自在に取り付けられる排出部材3とからなる。なお、取付部材2および排出部材3は、たとえばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミドあるいはポリエステルなどの合成樹脂で成形される。
【0018】
このような、バルブ開放機構1は図2bに示すエアゾール容器6内に充填されているエアゾール組成物7(内容物)を使用し、不要になったとき、エアゾール容器6内に残留しているエアゾール組成物7を排出するために使用する。図2bのエアゾール容器6は、容器本体4と、その容器本体4の上部に形成された開口部に固着されるエアゾールバルブ5とからなる。そして、前記エアゾール容器6の内部にはエアゾール組成物7が充填されている。前記容器本体4は従来公知のものを使用することができる。たとえば容器本体4は、アルミニウムやブリキなどの金属、合成樹脂、耐圧ガラスなどからなる耐圧性を有する有底筒状の形態を有する公知のものを用いることができる。図2bに示す容器本体4は上端に肩部4aが設けられ、その肩部4aからさらに上方の開口部にはビード4bが形成されている。前記エアゾールバルブ5は、ビード4bにクリンプされるマウンティングカップ8と、そのマウンティングカップ8によって保持されるハウジング9と、ハウジング9内に上下動または傾動自在に設けられるステム10と、そのステム10を常時上向きに付勢するバネとを有する公知のものを用いることができる。前記エアゾールバルブ5は、マウンティングキャップ8の上端に形成された被せ部8aと、その被せ部8aから連続して、下方に延びる側壁部8bを備えており、被せ部8aをガスケットを介して容器本体4のビード4bに被せ、側壁8bを容器本体4のビード4bにクリンプすることにより容器本体4に気密に取り付けられる。そして、前記ステム10に押しボタンなどの噴射部材を取り付けると、エアゾール装置として使用することができる。
【0019】
前記エアゾール容器6に充填されるエアゾール組成物7は、有効成分を含む原液と、その原液を泡状、霧あるいはミスト状などの所望の噴射形態で噴射させるための噴射剤とからなり、例えば、スタイリング剤、トリートメント剤、染毛剤、脱色剤、着色剤などの頭髪用の有効成分、保湿剤、鎮痒剤、鎮痛剤、ほてり止め剤、制汗剤、害虫忌避剤、清涼化剤、クレンジング剤、育毛剤などの皮フ用の有効成分、殺虫剤、消臭剤、芳香剤などの家庭用の有効成分を配合した原液と、該原液を噴射させるための液化ガスあるいは圧縮ガスなどの噴射剤とからなる。
【0020】
ここから図1と図2を用いて説明する。前記取付部材2はエアゾールバルブ5の上端に装着する環状の装着部2aと、その装着部2aから上方に延びる筒状の周壁2bとからなる。前記装着部2aは、円筒状の部材であり、その下端でマウンティングキャップ8の被せ部8aの外周を弾力的に挟持する。前記周壁2bの外周にはオネジ2cが形成されている。
【0021】
前記排出部材3は、有底筒状の部材であり、取付部材2の周壁2bにネジ機構により締結される筒状部3aと、その筒状部3aを上方で連結する天板3bとかなる。前記筒状部3aの内周面には取付部材2の周壁2bに形成されたオネジ2cと螺合するメネジ3dが形成されている。前記天板3bには、中央付近から筒状内部に向けて延びるステム10と連通するステム保持部11と、天板3bを貫通する開口部3cが形成されている。その開口部3cは、排出作業をしたときに排出部材3内に排出されたエアゾール組成物7の噴射剤を大気中に放出するために設けられている。前記ステム保持部11は円柱状であり、その円柱の下端には、ステム10との嵌合のための嵌合部11aが形成されている。その嵌合部11aにはステム10の上部が挿入され、その挿入の終端部分で、ステム10の先端部を押し下げることができる段部11bが形成されている。その段部11bの中央付近には、ステム10の通路から連続するように筒状部3aの上方に向かって窪んでいる連通路11cが形成されている。その連通路11cは、段部11bがステム10を押し下げたときに、ステム10の上方に干渉しないように形成されている。前記円柱状のステム保持部11の外周には、連通路11cと連通するように、スリット状の排出口11dが形成されている。その排出口11dはステム保持部11の下端から連通路11cまでの長さで嵌合部11aに届くまで切り欠かれている。その排出口11dは3箇所設けられておりステム保持部11の外周から等角度で3方向に向いている。
【0022】
前記エアゾール容器6は、取付部材2を取り付けると共に、排出部材3とセットにして、取り替え用エアゾール容器として販売される。使用者は、新しく購入したエアゾール容器6のステム10に、使用済みエアゾール装置から取り外した押しボタンなどの噴射部材を取り付けて使用する。なお、噴射部材を別売りにしてもよく、エアゾール容器6とセットにして販売してもよい。使用済みのエアゾール装置は、使用者は噴射部材をステム10から取り外し、前記排出部材3を取付部材2にねじ込む。それにより、排出部材3の回転の中心に配置されたステム保持部11は、ステム10と自然と嵌合していく。このときのねじ込み深さは、十分にステム10を押し下げてエアゾール組成物7を排出できるように構成されるが、ステム10の上下動するストロークを超えないように構成するのが好ましい。なお、この実施形態では、前記排出口11dは3方向に延びているが、排出しにくいエアゾール組成物7を備えたものでは、その大きさを大きくしたり、通路の本数を増やしてもよい。一方、エアゾール組成物中に可燃性成分(アルコール類、炭化水素、液化ガスなど)を多く含み、大気中に放出されて濃度が高くなると安全性が低下する場合は、ゆっくりと排出させるために排出口11dの数を少なくしたり、小さくしてもよい。なお、スリット状に代えて孔を用いることもできる。また、同様の理由により、ガス抜き用の開口部3cの直径を大きくしたり、天板3b上の数箇所に形成することもできる。
【0023】
図2bに示すように、前記排出部材3を取付部材2に螺合させると、排出部材3の天板3b、筒状部3aおよびマウンティングキャップ8の上部とで排出室12が形成される。このとき、ネジを締めこむにつれ、排出部材3のステム保持部11は段部11b部分でステム10の先端を下方に押し下げる。そのステム10が下方に押し下げられると、容器本体4の内部と排出室12は、排出口11dおよび連通路11c、ステム10の内通路、ステム孔を介して連通する。そうすると、排出口11dより排出されるエアゾール組成物7は、取付部材2の周壁2bにぶつかり、そのまま排出室12内部に滞留する。エアゾール組成物7のうち、噴射剤や揮発性成分は、天板3bの開口部3cより大気中に放出排気される。そのため、排出処理を行なうにあたり、排出したエアゾール組成物7を撒き散らすことがなく、持ち手の指を汚すことがないので、清潔である。また、ネジ機構により取付部材2と排出部材3を締結しているので、廃棄時に排出作業を安全に行うことができる。なお、排出室12内に排出された内容物、特に原液が排出室12から溢れてエアゾール装置やその周囲を汚さないために、排出室12内に吸水性樹脂や綿、紙などの吸収体を挿入してから排出処理することが好ましい。
【0024】
また、ガス抜きを行う開口部3c(図2a参照)は、天板3bに形成されているため、排出部材3の筒状部3aを手に持ってネジ部分を螺合させても、直接に持ち手部分に触れることがない。そのため、途中で一旦、エアゾール組成物7の排出作業を中止するときにも、筒状部3aの外側を掴んで、螺合を緩めて排出を中止させることができる。図2aに示すように、前記開口部3cは、排出口11dの排出方向の延長線上を避けて配置すると(図2aのX)、開口部3cから液体あるいは固体状の内容物が漏れにくい。
【0025】
なお、前述した排出部材3は、段部11bによりステム10の先端部分を押し下げているが、従来からあるような円柱状の形状を呈し、側面に噴射孔が形成されているような押しボタン式の噴射部材が、ステム10に取り付けられている場合にも使用することができる。その場合には、天板3bに前記押しボタンを押し下げる突出した部分を形成して、その突出部により押しボタンを上方から押し下げ、エアゾール組成物7を排出させるとよい。さらに、取付部材2にオネジ2cを、排出部材にメネジ3dを形成しているが、逆に、取付部材2にメネジを、排出部材にオネジを形成するようにしてもよい。また、排出室12の内部を視認できるように、取付部材2と排出部材3を透明な材質のもので形成することもできる。なお、排出室12が形成されなくとも、排出部材3の筒状部3aが噴射方向を遮るように排出孔11dの前面に配置しても、エアゾール組成物7を撒き散らすことがない。また、その場合には、筒状部3aは筒状を呈しなくとも、複数の板状片により略筒形状を呈するように形成し、その板状片の内側にメネジ3dを形成すればよい。このようにすると、前記噴射剤などのガス状の成分は、板状片と板状片の隙間から抜けるので、そのための開口部3cを設けなくともよい。
【0026】
図3に本発明の取り替え用エアゾール容器の実施形態を示す。図3に示す取り替え用エアゾール容器15のうち、図1のバルブ開放機構1と同じものには同じ符号を付して、その説明を省略する。図3aに示すようにエアゾール容器6の頭頂部には、取付部材2が装着されており、その取付部材2に、排出部材16が装着されている。その排出部材16は、ステム保持部11とステム10との間隔を空けるように配置される通常形態Aと、ステム10を押し下げるステム開放形態Bの2つの形態に変化することができる。なお、通常形態Aにおいて、ステム10を押し下げない範囲でステム保持部11がステム10と嵌合してもよい。
【0027】
図3bには、取り替え用エアゾール容器15に用いられる排出部材16を示す。その筒状部3aの下端部には、下方に延びる板状の嵩上げ部材17が形成されている。その嵩上げ部材17は、筒状部3aの周縁に沿うように下方に延びており、その内面には、筒状部3aの内面に形成されるネジ部と連続するメネジが形成されている。図3aには、その嵩上げ部17を備えた排出部材16を取付部材2に螺合した様子を示す(通常形態A)。その通常形態Aでは、排出部材16は、缶の頭頂部を保護するカバーとして用いられる。そのため、誤噴射を防止したり、搬送、梱包が容易である。
【0028】
また、嵩上げ部材17には、筒状部3aとの境界部分に、その境界部分に沿った溝、あるいは、細かな折り曲げ用の切り欠き部が形成されており、その境界部分でもって、折り曲げると、嵩上げ部材17を折り曲げて、取り去ることができるような構造となっている(図3b参照)。その嵩上げ部材17を取り去ると、図1の排出部材3とほぼ同様な形状となり、図3cに示すように、取付部材2に取り付けて排出作業を進めることができる(ステム開放形態B)。なお、嵩上げ部材17は、筒状部3aの下端から複数の板状片を延ばして形成されているが、筒状部3aを下方に延長した筒状の側壁の下端から上方に向けて、所定の間隔でスリットを形成してもよい。
【0029】
図3dにバルブ開放機構が装着されたエアゾール装置18を示す。このエアゾール装置18は、その頭頂部に噴射部材19を備えており、その噴射部材19を覆うように排出部材16が配置されている。その排出部材16の嵩上げ部材17は、大きく下方に延びている(図3e参照)。そのため、エアゾール装置18に噴射部材19が取り付けられたままの状態でも、排出部材16をそのまま噴射部材19に被せて通常形態Aとすることができる。一方、エアゾール組成物7を排出するときは、噴射部材19をステム10から抜き取らなければならないが、前述したように嵩上げ部材17を取り去って、バルブ開放形態Bへと変化させることができる。このように構成されたエアゾール装置18では、通常は、排出部材16が噴射部材19の上方を保護するネジ式のキャップとして使用される。そのため、通常時および排出時のどちらの場合でも、排出部材16が有効に利用されるので、エアゾール製品全体としての美観あるいは利便性を損なうことがない。
【0030】
図4には、本発明の取り替え用エアゾール容器15に用いられる噴射部材の実施の形態を示す。図4aに示す噴射部材21は、筒状部3aと、その筒状部3aの上端と連続し、その一端を支点21aとして容器本体の頭頂部を越えて延びる板状の連結部材22とを備えている。その連結部材22の中央付近から上方に向けて円柱状のノズル22aが延びている。連結部材22の他端には、未使用時に連結部材22の支点21aを支点として傾動させないためのストッパ21bが設けられている。前記円柱状のノズル22aの下部には、ステム保持部11が形成されている。そのステム保持部11のステム10との連結する嵌合部11aは、内側から外側に向かって広がるテーパ状に形成されており、ステム保持部11が傾動してもステム10から外れにくい構造となっている。また、円柱状のノズル22aの先端には吐出孔22bが形成されステム10と連通する。なお、ステム保持部11の嵌合部11aには、ステム10の直径やステム10の高さが異なるエアゾール容器にも用いることができるように、また、繰り返し使用により嵌合部11aが変形するなど劣化しないように、さらには、噴射操作したときに装着部分からエアゾール組成物7が漏れないように、合成ゴム、天然ゴム、シリコンゴム、エストラマーなどの弾性体21c(例えばOリング)を挿入することが好ましい。
【0031】
このように構成された噴射部材21は、ストッパ21bを抜き取ると、そのストッパ21bが配置されていた部分に向けて連結部材22が支点21aを支点として傾動可能になる。このときノズル22aの側面に設けた操作部22cを指で容器の軸線下方に押し下げると、ステム保持部11はステム10の先端を下方に押し下げ、本体容器2の内部と吐出孔22bとが連通し、エアゾール組成物7が吐出される。図4bおよび図4cには、噴射部材の他の形態を示す。図4bに示す噴射部材23は霧あるいはミスト状に内容物を噴射するもので、噴射孔23aには、メカニカルブレークアップ機構を設けたノズルが挿入されている。噴射孔23aの大きさやメカニカルブレークアップの機構の形状等を選択することにより所望の噴射形態(霧が拡がり等)が得られる。また、ノズルとして、メカニカルブレークアップ機構を有さずストレートな形状のものやロングノズルなども用いることにより、より粗い霧状あるいは液滴状に滴下することもできる。また、図4cに示す噴射部材24は、操作部がトリガー24aを備えており、そのトリガー24aを引き操作すると、ステム10を傾動させるものである。いずれの噴射部材にも、取付部材2に脱着可能なネジ部を有するため、取り替え用エアゾール容器15には、取付部材2に形成されたオネジ2cを利用して、種々の噴射部材を用いることができる。すなわち、噴射部材の下部に取付部材2のオネジと螺合することができるメネジを備えておけば、使用者は用途に応じて所望の噴射を選択することができる噴射部材を取り付けて使用することができる。
【0032】
次に、図5に取り替え用エアゾール容器15と、噴射部材23を取り付けたエアゾール装置20との取り替えシステムの概略図を示す。そのエアゾール装置20が、使用されてから廃棄されるまでを説明する。図5に示す状態S1では、エアゾール装置20のエアゾール組成物7をほぼ使い切り、新たに交換用エアゾール容器15を用意した状態である。次いで、状態S2では、エアゾール装置20のエアゾール容器6から噴射部材23を、取り替え用エアゾール容器15のエアゾール容器6´から排出部材16(通常形態A)をそれぞれ取り外した状態である。状態S3では、噴射部材23は新たに用意したエアゾール容器6´の取付部材2に螺合して再利用する。一方、排出部材16は、嵩上げ部材17を取り去り、不要になったエアゾール容器6に螺合する(ステム開放状態B)。そして、そのままネジを締めこんで、残ったエアゾール組成物7を外部に放出する。このように、噴射部材23は次々と新たなエアゾール容器6´に取り付けられるので、無駄がなく、資源保護に適している。一方、排出部材16も、普段は通常形態Aで販売することができ、排出部材16をステム10の上方を保護するカバーとして用いることができるので、不意な噴射を防止するばかりか、梱包あるいは搬送が容易で流通に適した形態である。なお、排出部材16がエアゾール容器6と同じ材質であればエアゾール容器6に取り付けたまま廃棄することもできる。それにより、廃棄物処理業者は、エアゾール容器6内のエアゾール組成物7が排出処理済であることが分かり、安心して処理することができる。ただし、十分にエアゾール組成物7を排出した後は、前記排出部材16をエアゾール容器6´から取り外して、金属製のエアゾール容器6´と樹脂製の噴射部材23を分別して廃棄してもよい。
【0033】
また、図1に示したバルブ開放機構1の場合には、まず、使用者は取付部材2が装着されたエアゾール容器6と、その取付部材2と螺合していない排出部材2とをセットで購入する。次いで、その取付部材2に別途、用意した噴射部材を取り付けて、エアゾール装置として使用する。そして、エアゾール製品が不要になったら、噴射部材を取り外し、前記排出部材2を螺合して、残留しているエアゾール組成物7を排出したうえで、廃棄する。
【0034】
図6には、バルブ開放機構のさらに他の実施形態を示す。図6に示すバルブ開放機構25は、図1のバルブ開放機構1とほぼ同様であるので、同じものには同じ符号を付して、その説明を省略する。図6に示すバルブ開放機構25の排出部材26は、筒状部3aが天板3bを越えて反対向きに延ばした側壁部材26aを備えている。その側壁部材26aの内周面には、取付部材2のオネジと螺合することができるメネジ3dが形成されている。
【0035】
図6aに示すバルブ開放機構25は側壁部材26を取付部材2のオネジ2cに締結している。このとき、ステム10は天板3bと間隔(図6の符号L)を空けて配置されるので、ステム10と干渉しない(通常形態A)。そのため、誤ってステム10が下方に押されても、エアゾール組成物7の噴射を防止できる。図6bに、前記排出部材26を用いてエアゾール組成物7を排出している様子(ステム開放形態B)を示す。図6bは、排出部材26は、通常形態Aで示した排出部材26を上下にひっくり返して、筒状部3aのメネジ3dを取付部材2のオネジ2cに締結したものである。このように、通常は側壁部分26aのメネジ3dを取付部材2に締結してステム10の上方を保護するキャップ部材として作用するが、廃棄時には、排出部材26を上下逆さまにして使用すると、ステム10を押し下げることができる排出部材として作用することができ、安全にエアゾール組成物7を排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明のバルブ開放機構の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図2aはそのバルブ開放機構の作動する様子を示す概略上面図、図2bは図2aのバルブ開放機構を備えた取り替え用エアゾール容器の一部側面断面図である。
【図3】図3aは本発明の取り替え用エアゾール容器の他の実施形態を示す一部側面断面図、図3bは図3aの取り替え用エアゾール容器に用いる排出部材を示す斜面図、図3cは、図3aのエアゾール容器のバルブ開放形態を示す一部側面断面図、図3dは本発明の取り替え用エアゾール容器の通常形態におけるさらに他の実施形態を示す一部側面断面図、図3eは図3dの取り替え用エアゾール容器に用いる排出部材を示す斜面図、である。
【図4】図4a、図4b、図4cは本発明のエアゾール容器の取り替えシステムに用いる噴射部材の実施の形態を示す概略図を示す。
【図5】図5は本発明のエアゾール容器の取り替えシステムの使用されてから廃棄されるまでを示す概略工程図である。
【図6】図6aおよび図6bは本発明のバルブ開放機構のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【0037】
1 バルブ開放機構
2 取付部材
2a 装着部
2b 周壁
2c オネジ
3 排出部材
3a 筒状部
3b 天板
3c 開口部
3d メネジ
4 容器本体
4a 肩部
4b ビード
5 エアゾールバルブ
6 エアゾール容器
7 エアゾール組成物
8 マウンティングキャップ
8a 被せ部
8b 側壁部
9 ハウジング
10 ステム
11 ステム保持部
11a 嵌合部
11b 段部
11c 連通路
11d 排出口
12 排出室
15 取り替え用エアゾール容器
16 排出部材
17 嵩上げ部材
18 エアゾール装置
19 噴射部材
20 エアゾール装置
21 噴射部材
21a 支点
21b ストッパレバー
21c 弾性体
22 連結部材
22a 円柱状のノズル
22b 吐出孔
22c 操作部
23 噴射部材
23a 噴射孔
23b ノズル
24 噴射部材
24a トリガー
25 バルブ開放機構
26 排出部材
26a 側壁部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器の上端に、エアゾールバルブのステムを略中心として装着される取付部材と、その取付部材とネジ機構により脱着できる排出部材とからなり、
前記取付部材が、容器頭頂部の上方に延び、ネジ部が形成された周壁を備え、
前記排出部材が、前記取付部材の周壁のネジ部と螺合する筒状部およびその筒状部の上端を連結する天板と、ステムと嵌合してステム内の通路と連通し、周壁に向けて開口する連通路が形成されたステム保持部とが設けられ、
前記排出部材を取付部材に螺合するときに、ステム保持部がエアゾールバルブを開放するように構成されているバルブ開放機構。
【請求項2】
前記排出部材が、取付部材に対し、ステムの上方に間隔を空けて配置される通常形態およびステムを下方に押し下げる開放形態に変化することができるように構成されている請求項1記載のバルブ開放機構。
【請求項3】
前記排出部材が、その筒状部の下端に、取付部材と螺合可能で、かつ、取り去ることができる嵩上げ部材を備えている請求項2記載のバルブ開放機構。
【請求項4】
前記排出部材の筒状部が、天板を越えて反対向きに延びる側壁部材を備え、その側壁部材が周壁のネジ部と螺合できる請求項2記載のバルブ開放機構。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のバルブ開放機構と、そのバルブ開放機構が装着されるエアゾール容器とを有する取り替え用のエアゾール容器。
【請求項6】
請求項1記載の取付部材を装着したエアゾール容器と、取付部材のネジ部と脱着自在に螺合し、ステムと嵌合する噴射部材とからなるエアゾール装置。
【請求項7】
請求項5記載の取り替え用エアゾール容器(A)と、請求項6記載のエアゾール装置(B)とからなり、取り替え用エアゾール容器(A)の排出部材とエアゾール装置(B)の噴射部材とが取り替え可能なエアゾール容器の取り替えシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−44684(P2006−44684A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224692(P2004−224692)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】