説明

バルブ

【課題】高温域(60〜95℃)において短期的に高い内圧がかかっても破損や漏れのない剛性を有し、高温域でアルカリラインに好適に使用できるバルブであり、高温クリープ特性と衝撃強度のバランスが良く、塩化ビニルと同じ製造設備を使用できるバルブの提供。
【解決手段】流体流入口と流体流出口を有し内部に該流入口及び該流出口に連通する流路と該流路内に弁座が形成された本体と、回動又は上下動することで該弁座に圧接離間されて該流路の開閉を行う弁体とを有するバルブにおいて、少なくとも該本体がポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂を必須成分としたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなることを特徴とするバルブ。他の特徴として、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、95℃雰囲気下での引張強度が20MPa以上、引張弾性率が1000MPa以上であることなど。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、60℃以上の高温流体が流れる配管ラインに好適に使用されるバルブに関するものであり、さらに詳しくは、特に高温のアルカリラインに好的に使用でき、塩化ビニル樹脂と同じ製造設備を使用でき、高温クリープ特性と衝撃強度のバランスの良いバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製バルブは各種あるが、その一例として樹脂製のダイヤフラムバルブがあった(特許文献1参照)。このダイヤフラムバルブのバルブ本体の材質は、塩化ビニル樹脂(以下、PVCと記す)が用いられていた。また、他の一例として樹脂製のボールバルブ(特許文献2参照)があった。このボールバルブのバルブ本体の材質も、PVCが用いられていた。これらのようにPVCは、加工性や耐薬性が良好で材料が安価に製造できることからバルブ本体の材質として好適に用いられてきた。
【0003】
しかしながら、PVCは熱変形温度が70℃程度であるため、前記従来のPVC製バルブの使用温度は60℃までが限界であり、高温流体が流れる配管ラインには適していないという問題があった。
【0004】
また、他の樹脂を用いた樹脂製バルブとしては、前記従来の樹脂製バルブ(特許文献1、2)において、塩素化塩化ビニル樹脂(以下、CPVCと記す)、ポリプロピレン(以下、PPと記す)、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと記す)、ポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと記す)、ポリエーテルエーテルケトン(以下、PEEKと記す)などが挙げられており、これらの樹脂を用いたバルブの使用可能な温度範囲は、塩化ビニル樹脂が適用していない60℃以上も含まれている。
【0005】
しかしながら、上記樹脂にはそれぞれ長所と短所があり、使用するにはそれぞれ制限がある。CPVCは、使用温度がPVCより高くなり90℃までとなるが、それ以上の温度(特に100℃付近)では使用できない。また、アルカリに対する耐性が劣るため、アルカリ性の薬液の用途には適しておらず、流体によって使用が制限される。PPは、使用温度がCPVCと同じ90℃までとなるが、それ以上の温度では樹脂が軟化してバルブの剛性が低下するため使用できない。しかし、CPVCに比べて耐アルカリ性は良好であり、流体による使用制限が少ない。PVDFは、使用温度が120℃までとなるが、アルカリに対する耐性が劣るため、アルカリラインの用途には適しておらず、流体によって使用が制限される。加えて、価格がPVC、CPVC、PPに比べてやや高くなる。PPS、PEEKは、共に使用温度が150℃以上となるが、成形温度が高いために厚肉な成形品においては寸法安定性が劣る。また、PPSやPEEKを射出成形するには金型温度をPPSで120〜150℃、PEEKで130〜170℃に温調する必要があり、通常の水による金型温調では対応できず、油などによる金型温調を行わなければならないため、成形現場において金型切替での油による金型温調の準備や金型の昇温に手間や時間がかかる。加えて双方とも価格が非常に高く、PPSやPEEK製のバルブを製造するにはランニングコストが多く掛かり、特に大口径のバルブには不向きである。そのため、従来のPPSやPEEK製のバルブは非常に限定された用途にしか用いられていない。以上のように、耐熱性、耐薬品性、成形性、経済性等を考えて用途によって樹脂製バルブを使い分けていたが、上記の樹脂製バルブでは90℃を超えて特に100℃付近のアルカリラインに好的に使用できる樹脂製バルブがなく、バルブの使用温度や使用圧力を使用可能な値まで落として用いるか、非常に高価となるバルブを使用するしかないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平8−152073
【特許文献2】特開平11−44373
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような従来の樹脂製バルブが有する欠点を克服し、高温域(60〜95℃)において短期的に高い内圧がかかっても破損や漏れのない程の剛性を有し、高温域でアルカリラインに好適に使用できるバルブであり、さらには高温クリープ特性と衝撃強度のバランスが良く、塩化ビニルと同じ製造設備を使用できるバルブを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは高温域(60〜95℃)のアルカリラインに好ましい性質を有するバルブを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を用いることによって上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、流体流入口と流体流出口を有し内部に該流入口及び該流出口に連通する流路と該流路内に弁座が形成された本体と、回動又は上下動することで該弁座に圧接離間されて該流路の開閉を行う弁体とを有するバルブにおいて、少なくとも該本体がポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂を必須成分としたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなることを第1の特徴とし、95℃雰囲気下で引張強度が20MPa以上、引張弾性率が1000MPa以上であることを第2の特徴とし、23℃雰囲気下のノッチ付きアイゾット衝撃強度が7.0kJ/m以上であること第3の特徴とし、線膨張係数が5.0×10−5/℃〜8.0×10−5/℃であること第4の特徴とし、95℃雰囲気下で前記バルブを全開にして、5.0MPaの水圧をかけた状態で1分間保持したときに、該バルブから水漏れがないことを第5の特徴とし、成形した肉厚10mmの成形品の成形収縮率が0.5〜0.8%であること第6の特徴とし、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部とポリスチレン系樹脂50〜120質量部を必須成分とし、混練後のMFRが1.0〜5.0g/10分であることを第7の特徴とし、スチレン含有量10〜40%及び重量平均分子量20万以上のスチレン・ブタジエン系ゴムをポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、1.0〜15質量部含有することを第8の特徴とし、バルブが、ダイヤフラムバルブ、ボールバルブ、コック、バタフライバルブ、ゲートバルブ、ストップバルブ、ニードルバルブ、ピンチバルブ、チェックバルブ等のいずれかであることを第9の特徴とする。
【0010】
本発明のバルブに用いられるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、95℃雰囲気下での引張強度は20MPa以上が好ましく、20〜40MPaがより好ましい。また95℃雰囲気下での引張弾性率は1000MPa以上であることが好ましく、1000〜2000MPaが好ましい。高温域(60〜95℃)での剛性と、高温域のバルブの長期寿命に必要な特性である高温クリープ特性を有し、バルブの弁座面の強度を保持して高いシール性能を維持するためには引張強度が20MPa以上であることが好ましく、ウォーターハンマーなどの衝撃に対するバルブの柔軟性を保つためには40MPa以下であることが好ましい。また、引張弾性率は高温時の剛性を示す指針であり、高温時の剛性を有し、内圧に対するバルブの膨らみによる変形を抑えシール性能を維持するためには引張弾性率は1000MPa以上であることが好ましく、衝撃に対するバルブの柔軟性を保つためには2000MPa以下が好ましい。
【0011】
また、本発明のバルブに用いられるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、23℃雰囲気下でのノッチ付きアイゾット衝撃強度が7.0kJ/m以上であることが好ましく、7.0〜15.0kJ/mがより好ましい。バルブは肉厚に設けられているため、アイゾット衝撃強度が多少低くても(5.0kJ/m2程度)、一般的なバルブ(1.0MPa仕様)として使用するには問題ないが、高圧の用途(1.5〜2.0MPa程度での長期使用を想定)においては圧力に応じてウォーターハンマーなどによる衝撃も上昇するため、これに対する充分な耐性を有すると共に、バルブの長期間使用による材質の劣化や、薬液等による劣化が起こってもバルブの耐性を保持するためには7.0kJ/m以上が良く、引張強度を保持したまま衝撃による割れ等に対する耐性を保つためには15.0kJ/m以下が好ましい。
【0012】
また、本発明のバルブ本体の線膨張係数は、5.0×10−5/℃〜8.0×10−5/℃であることが望ましい。これはバルブを固定施工して高温流体を流す際に、熱膨張に伴う長手方向への伸びが生じてしまうことにより、バルブが変形して弁体と弁座部のシール部分やパイプと継手等との接続部分などに歪みが生じて流体の漏れが発生することや、バルブの各部に歪みが生じることで長期寿命が損なわれることを防止するためである。
【0013】
また、本発明のバルブを95℃雰囲気下でバルブを全開にして、5.0MPaの水圧をかけた状態で1分間保持したときに、バルブから水漏れがないことが好ましい。なお、ここでの95℃雰囲気下とは、周囲の温度を95℃にした状態で内圧をかけても良く、95℃の流体を流して内圧をかけても良い。一般的に熱可塑性樹脂組成物製バルブ(1.0MPa仕様のもの)は、常温(23℃)で5.0MPaの高い水圧がかかるとバルブの剛性が持たずに漏れが発生する可能性が高く、高圧仕様の対策が必要となる。さらに95℃まで高温となると、バルブが膨張すると共にバルブの剛性が低下して、バルブの剛性が低下した状態で5.0MPaの高い水圧がかかるとバルブが水圧で膨らんだ状態となる。このようなバルブの膨張と膨らみにより、バルブが変形して各部の寸法が変化することでバルブのシール部分のシール性は低下する。そのため、95℃雰囲気下で5.0MPaの水圧をかけた状態で1分間保持してもバルブから水漏れがないことにより、高い圧力がかかった状態で高温域(60〜95℃)やそれ以上の100℃付近で使用するための高温用バルブとして好適に用いることができる。
【0014】
ここでパイプの場合では、高温クリープ試験における温度、引張荷重、保持時間の関係から、同じ温度で引張荷重を変化させたときの保持時間を、DIN8078を参照してNadayの式と周応力−時間特性グラフから換算することができる。引張荷重をかけることとは、パイプではパイプ内圧がかかることとして考えることができ、引張荷重に相当するパイプ内圧はパイプ肉厚とパイプ外径によって変化し、式1のNadayの式から算出される。なお、式1における試験応力が引張荷重となる。
パイプ内圧=(2×パイプ肉厚×試験応力)/(パイプ外径−パイプ肉厚)・・・式1
この式1は、バルブの場合にも応用することができ、バルブにおいては内径と最小肉厚の関係から、最小肉厚のパイプに置き換えることで内圧の計算や保持時間の換算を行うことができる。
【0015】
本発明におけるバルブは、95℃雰囲気下で5.0MPaの引張荷重をかけた高温クリープ特性において、破壊に至るまでの時間が1000時間以上であることが好ましい。これは口径25mm(内径25mm)のバルブの最低肉厚部分が6.25mmの場合、パイプ外径37.5mm、パイプ肉厚6.25mmのパイプの場合に置き換えて計算すると式1より引張荷重5.0MPaは内圧1.83MPaとなり、95℃雰囲気下で1.83MPaの内圧をかけで1000時間以上保持することになる。これを95℃雰囲気下で保持時間が10年になるようにする場合、DIN8078を参照してNadayの式と周応力−時間特性グラフから換算すると内圧は1.20MPaとなるため、95℃雰囲気下で内圧1.20MPaのときバルブは10年の寿命を有することとなる。これに対し、例えば他の材料のポリプロピレン系樹脂組成物製バルブの場合、同様に口径25mmのバルブの最低肉厚部分が6.25mmの場合、95℃雰囲気下で1.83MPaの内圧をかけると約10時間程度で破壊に至るものであり、1000時間以上保持しようとすると95℃雰囲気下で0.80MPaの内圧まで下げる必要がある。これを95℃雰囲気下で保持時間が10年になるように換算すると内圧は0.80MPaとなる。このことから、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物製のバルブの許容圧力は、ポリプロピレン系樹脂組成物製のバルブの1.5倍となり、より高圧の用途で使用することができる。
【0016】
また、バルブを95℃以上で使用する場合、例えば温度を100℃とした時では、ポリプロピレン系樹脂組成物では軟化温度付近ということもあり100℃雰囲気下では樹脂組成物が軟化して高温用バルブとしての強度を十分保持できないのに対し、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は軟化することがないので、温度、引張荷重、保持時間を換算すると使用圧力を低下させる(内径25mm、最低肉厚6.25mmバルブの場合、パイプ外径37.5mm、パイプ肉厚6.25mmのパイプの場合に置き換えて計算すると100℃雰囲気下で保持時間が10年とするには内圧は0.60MPaとなる)という制限はあるものの問題なく使用することができる。つまり、既存の他の樹脂組成物製の配管部材では十分網羅できなかった耐薬品性を有し、高温域(60〜95℃)はもとより、100℃付近で使用可能であり、ポリプロピレン系樹脂組成物製配管部材よりも高温の用途における配管部材として最適である。
【0017】
また、本発明のバルブの成形収縮率が0.5〜0.8%であることが好ましく、より具体的には、肉厚10mmの成形品における流動方向の成形収縮率が0.6〜0.8%であり、直角方向の成形収縮率が0.5〜0.7%であることが好ましい。樹脂の種類や配合する樹脂の量の違いによって樹脂組成物の成形収縮率は変化するが、成形収縮率が0.5〜0.8%のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物であれば、塩化ビニル樹脂の成形収縮率とほぼ同等のため、例えば塩化ビニル樹脂製バルブ用の金型を用いてポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を射出成形すると、成形したバルブは塩化ビニル樹脂で成形したバルブとほぼ同じ寸法のバルブを得ることができる。そのため、従来の塩化ビニル樹脂と同一の製造設備を共有することができ、製品のラインナップを揃えるためにポリフェニレンエーテル系樹脂組成物用の製造設備を増設する必要がなくなり、余計な費用が掛からず、製造設備の設置スペースも新たに設けなくて済む。
【0018】
ここで、ポリフェニレンエーテル系樹脂は機械強度、弾性率が大きいが、流動性が悪いため、単独では成形することができずに他の樹脂を配合して流動性をあげて成形する必要がある。この配合に用いる樹脂はポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられるが、バルブとして要求される特性(高温クリープ特性、成形収縮率、耐薬品性、価格等)を考慮すると、ポリスチレン系樹脂が要求される特性をバランス良く有している。
【0019】
本発明において、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂の配合割合は、上記の高温用バルブに要求される特性を満足させる範囲にする必要があり、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対してポリスチレン系樹脂の配合量は50〜120質量部であることが好ましい。これは、衝撃強度を向上させると共に、流動性を向上させて成形性を良くするためには50質量部以上がよく、良好な高温クリープ特性を有し、機械強度の低下を抑え、耐熱性を維持するためには120質量部以下がよい。また、塩化ビニル樹脂と同等の成形収縮率を得るためにもポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対してポリスチレン系樹脂の配合量は50〜120質量部であるとよい。なお、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂をブレンドしたものを用いても良いが、両者をグラフト共重合しても良く、グラフト共重合することによって良好な加工性と長期物性を得ることができ、特に高温クリープ特性が良好となる。
【0020】
また本発明において、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物のMFRは1.0〜5.0g/10分である必要がある。射出成形に必要な樹脂組成物の流動性を有し、特に厚肉のバルブを成形するのに良好な生産性を得るためには1.0g/10分以上が良く、本発明のバルブに用いられるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物をパイプの押出成形に共用でき、良好な高温クリープ特性を得ると共に、パイプ押出成形における樹脂組成物のドローダウンを抑えるためには5.0g/10分以下が良い。なお、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物のMFRは、JIS K7210に準拠し、試験温度250℃、試験荷重10kgの条件で測定したものである。
【0021】
また、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、バルブとして要求される特性の許容範囲内であればポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に他のポリマーを含んでも良い。他のポリマーとしては、バルブの特性を低下させないものであれば特に限定されないが、スチレン・ブタジエン系ゴムが特に好適なものとして挙げられ、スチレン・ブタジエン系ゴムを配合することで高温クリープ特性を維持したまま衝撃強度を向上させることができる。
【0022】
ここで、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、スチレン・ブタジエン系ゴムの配合割合は1〜15質量部が好ましい。これは良好な高温クリープ特性、衝撃強度を得るためには1質量部以上が良く、良好な耐熱性と剛性を得るために15質量部以下が良い。なお、他のポリマーについては、その合計量がポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して1〜15質量部になるようにする必要がある。
【0023】
また、スチレン・ブタジエン系ゴムのスチレン含有量は10〜40%が良く、15〜35%であることがより望ましい。スチレン・ブタジエン系ゴムのスチレン含有量は、少なすぎると物性の変化は小さく、逆に多すぎると弾性率が低くなり機械強度が弱くなるものの流動性は良くなるのでバルブの成形性は向上するという関係にある。そのためバルブに必要である良好な高温クリープ特性や衝撃強度をバランスよく満たすためにはスチレン含有量10%以上が良く、良好な相溶性を得た上で良好な高温クリープ特性、衝撃強度をバランスよく満たすためにはスチレン含有量40%以下が良い。
【0024】
また、本発明のスチレン・ブタジエン系ゴムの重量平均分子量は20万以上である必要がある。ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に重量平均分子量20万以下のスチレン・ブタジエン系ゴムを配合すると、衝撃強度は向上するが高温クリープ特性が著しく損なわれることから、良好な高温クリープ特性、衝撃強度を得るためには20万以上が良い。ここでスチレン・ブタジエン系ゴムの重量平均分子量をより高分子量にすると高温クリープ特性が向上するため、重量平均分子量の上限は特に限定しないが、重量平均分子量が高くなることでスチレン・ブタジエン系ゴムの製造が困難とならないように、実用的には数百万程度が良く、具体的には20万〜300万であることが好適である。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂、スチレン・ブタジエン系ゴムの混練後のMFRは混練前と変化しないか混練前より低下していることが望ましく、混練後のMFRを上昇させないためにはスチレン・ブタジエン系ゴムはMFRが測定できない程の高分子量であれば混練後のMFRはむしろ低下させることができるため(表1の実施例5と実施例6参照。スチレン・ブタジエン系ゴムの分子量の違いにより、実施例6の分子量10万の場合の混練後のMFRに対して、実施例5の分子量28万の場合の混練後のMFRは低下している)、スチレン・ブタジエン系ゴムをMFRが測定できない程の高分子量にするためにも重量平均分子量が20万以上であることが必要である。
【0025】
本発明のスチレン・ブタジエン系ゴムの重合方法や重合触媒は、いかなる方法、触媒を用いても良い。なお、スチレン・ブタジエン系ゴムをポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂に配合した時の耐薬品性や耐候性の点から、水素添加率は100%に近い方が望ましく、具体的な水素添加率は、耐候性や耐熱性、耐薬品性の点から85%以上、より好ましくは90%以上、さらには95%以上であることが好ましい。
【0026】
ここで、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、スチレン・ブタジエン系ゴムの配合割合は1〜15質量部である必要がある。これは良好な高温クリープ特性、衝撃強度を得るためには1質量部以上が良く、高温時の剛性を有し、シール性能を保持するために15質量部以下が良い。
【発明の効果】
【0027】
以上の構成により、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物製バルブは、高温クリープ特性と衝撃強度がバランス良く優れており、また成形時における流動性を確保し良好な成形性を得ることができるという作用効果を奏することができ、そのため、本発明のバルブを高温域(60〜95℃)で酸・アルカリなどの薬液を流して長期間使用することができ、100℃付近での使用も可能となり、また、高い圧力がかかった状態で高温域(60〜95℃)やそれ以上の100℃付近で使用してもバルブの変形や膨らみを抑えて高いシール性能を維持することができ、さらにスチレン・ブタジエン系ゴムを加えることによって、高温クリープ特性を低下させることなく衝撃強度を向上させることができるという作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂としては、公知のものを特に制限無く使用でき、単独重合体であっても共重合体であっても良く、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2 ,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブロモメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジトリル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(26−ジクロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジベンジル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルなどが挙げられる。
【0029】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物で用いられるポリスチレン系樹脂は、スチレン及びスチレン誘導体の単独重合体、例えば、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン)、シンジオタクチックポリスチレン等が挙げられ、さらにはスチレン系共重合体、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)やスチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。このうち相溶性が良好で衝撃強度を向上させる点でハイインパクトポリスチレンを用いることが好ましい。
【0030】
また、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、必要により応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの安定剤を配合しても良く、これらの配合により組成物の熱安定性や耐光性を向上させることができる。
【0031】
酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2 ’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4− ビス〔( オクチルチオ)メチル〕−0−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレートなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロビオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤; トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル) ホスファイトなどのリン系酸化防止剤などを挙げることができる。
【0032】
紫外線吸収剤、光安定剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤あるいはヒンダードアミン系光安定剤などを挙げることができる。
【0033】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は必要に応じて、球状フィラー、板状フィラー、繊維状フィラー等の無機充填材を使用してもよい。これらは単独でも、2種類以上組み合わせて用いても良い。球状フィラーとしては、炭酸カルシウム、マイカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、クレー、パーライト、シラスバルーン、珪藻土、焼成アルミナ、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。板状フィラーとしては、タルク、マイカ等が挙げられる。繊維状フィラーとしてはガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、ポリイミド繊維等が挙げられる。
【0034】
また、その他必要に応じて、難燃剤(塩素化ポリエチレン、デカブロモジフェニルエーテル等のハロゲン系、トリクレジルホスフェート等のリン系、水酸化アルミニウム等の無機系等)、滑剤(流動パラフィン等の炭化水素系、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリルアルコール等の高級アルコール系、ステアリン酸アミド等のアミド系、ステアリン酸カルシウム等の金属せっけん系等)、帯電防止剤(ポリアルキレングリコール、スルホン酸基含有化合物等)、抗菌剤(ゼオライト等の無機系、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール等の有機系等)、着色剤(酸化チタン等の無機系、カーボンブラック等の有機系等)等を配合してもよい。それらの配合量は添加剤の種類によって変化するため、組成物の物性を低下させずに添加剤の効果が十分発揮される量を配合することが好ましい。以上のごとく配合した後、溶融混練する方法には特に制限はなく、単軸押出機や二軸押出機、ニーダーなどを用いることで各成分が均一に分散したポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を得ることができる。
【0035】
さらに本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の成形前の含水量は250ppm未満(カールフィッシャー法により測定が)望ましい。なお、100ppm=0.01%である。外観不良(シルバーストリークなど)や内部に気泡を発生させないためには250ppm未満が良く、理想としては0ppmであることが好ましい。特に厚肉となるバルブの場合は含水量によって外観不良や気泡が発生し易くなるため、不良率を低下させるために好適である。
【0036】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は種々のバルブに用いることができ、ダイヤフラムバルブ、ボールバルブ、コック、バタフライバルブ、ゲートバルブ、ストップバルブ、ニードルバルブ、ピンチバルブ、チェックバルブ等が好適なものとして挙げられる。上記バルブは、バルブの構成が同じものであれば機能的な構成を有していても良く、流体の流量を調節する構成、流量を一定に保つ構成、圧力を一定に保つ構成、流体の逆流を防止する構成等を有していても良い。
【0037】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を用いたバルブの成形方法は、射出成形されてなるバルブが好適なものとして挙げられるが、成形方法は特に限定されず、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物製の丸棒を切削加工によって成形しても良い。
【0038】
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を用いて製造されるバルブは、以下のような優れた特性を有する。
(1)バルブの本体にポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を用いることにより、高温域(60〜95℃)での酸・アルカリなどの薬液ラインに使用することができ、100℃付近でも使用することができる。
(2)95℃雰囲気下での引張強度が20MPa以上、引張弾性率が1000MPa以上であるため高温時にかかる水圧に対してバルブの変形や膨らみを抑えて、高いシール性能を維持することができる。
(3)23℃雰囲気下でのノッチ付きアイゾット衝撃強度が7.0kJ/m以上であるため、バルブの長期間使用による材質の劣化や、薬液等による劣化が起こってもバルブの耐性を保持することができる。
(4)線膨張係数が5.0×10−5/℃〜8.0×10−5/℃であるため、高温時の膨張による寸法の変化を抑えて、高いシール性能を維持することができる。
(5)95℃雰囲気下で5.0MPaの水圧をかけた状態で1分間保持してもバルブから水漏れがないことにより、高い圧力がかかった状態で高温域(60〜95℃)やそれ以上の100℃付近で使用することができる。
(6)成形収縮率が0.5〜0.8%であることで塩化ビニル樹脂と同一の製造設備を使用することができる。
(7)ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、ポリスチレン系樹脂50〜120質量部を必須成分とすることで、高温クリープ特性と衝撃強度のバランスが良い配管部材を得ることができる。
(8)ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物のMFRを1.0〜5.0g/10分と限定することで、成形時における流動性を確保し反りのない良好な成形品を得ることができ、高温クリープ特性を保持することができる。
(9)重量平均分子量20万以上のスチレン・ブタジエン系ゴムの配合により、高温クリープ特性を低下させずに衝撃強度を高めることができる。
【0039】
以下、本発明における実施形態について図面を参照して説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。図1は、本発明の樹脂製ダイヤフラムバルブの全開状態を示す縦断面図である。
【0040】
1はポリフェニレンエーテル系樹脂組成物製のバルブ本体であり、内部に流体流入口11と流体流出口12に各々連通する流路2を有し、流路2の中間に流路を湾曲させたなだらかな円弧状の曲面を有する仕切壁3が設けられている。仕切壁3の上面に弁座面4が形成されている。5はバルブ本体1の上部に固定されているポリフェニレンエーテル系樹脂組成物製のボンネットであり、ボンネット5の上部中央開口部には、銅合金製のスリーブ6が支承されている。7はスリーブ6の内部に設けられた雄ネジ部と螺合しているステンレス製のスピンドルである。8はPVDF製のコンプレッサーでありスピンドル7の下端部に固定されている。9は弁体であるダイヤフラムであり、コンプレッサー8に固定され、周縁部はバルブ本体1とボンネット5の間に挟持され、スピンドル7の上下運動により仕切壁3の上端面に接離する。10はPP製のハンドルであり、スリーブ6の上部外周に嵌合され、ボンネット5の上端部に配置されている。
【0041】
次に、本発明のダイヤフラムバルブに流体を流した際の作用を説明する。
【0042】
ダイヤフラムバルブが全開(図1の状態)の時、ハンドル10を閉の方向へ回転させる。ハンドル10の回転によってスピンドル7が下降すると共に、コンプレッサー8が下降する。コンプレッサー8が下降すると、コンプレッサー8がダイヤフラム9を下方へ押圧する。さらにハンドル10を閉方向へ回転させると、ダイヤフラム9は仕切壁3上面の弁座面4に押圧され、流路2が遮断されてバルブは全閉となる。次に、ダイヤフラムバルブが全閉の時にハンドル10を開方向に回転すると、ハンドル10の回転によってスピンドル7が上昇すると共に、コンプレッサー8が上昇する。コンプレッサー8が上昇すると、ダイヤフラム9は弁座面4から離間し、流路2が開放されダイヤフラムバルブは開となり、ダイヤフラム9は開限度位置まで上昇して流路2が開放されダイヤフラムバルブは全開(図1の状態)となる。
【0043】
このとき、バルブ本体1はポリフェニレンエーテル系樹脂組成物製であるため、高温域(60〜90℃)はもとより、100℃付近で使用可能であり、耐薬品性が酸やアルカリに対して優れているため、特に100℃付近のアルカリラインに好適に使用できる。また、本発明の95℃雰囲気下での各種物性強度を有することにより、高温・高圧のラインに対しても長期間使用することができる。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は樹脂の価格がPPとPVDFの間でPPより若干高い程度であり、さらに金型温度が40〜80℃で成形されるので通常の水による金型温調で対応することができ、油による金型温調などを行わなくて良く、成形現場においPPSやPEEK製のバルブのように金型切替での金型温調や金型の昇温に手間や時間をかけることなく成形することができる。
【0044】
次に、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物製バルブについて図1に示す口径が25mmのダイヤフラムバルブを成形し、その性能を以下に示す試験方法で評価した。
【0045】
(1)バルブの耐水圧試験
ポリフェニレンエーテル系樹脂を用いて成形したダイヤフラムバルブを全開状態で95℃の温水を通水した状態で60分間保持し、その後徐々に水圧を上昇させ、5.0MPaの水圧をかけた状態で1分間保持したときに、バルブの破損の有無やシール部からの流体漏れの有無を目視にて確認した。1分間保持して流体漏れがなければ合格とする。また、5.0MPaに至る前にバルブの破損や流体漏れがした場合は、破損や液体漏れ時の水圧を測定した。
(2)耐アルカリ性試験
DIN16888に準拠して、30%NaOH溶液を専用容器に入れたものに試験片を浸漬させ、これを95℃に保ったオーブンに入れ、112日経過した後の試験片の引張試験を行った。引張伸びの保持率が50%以上で合格とし、引張伸びの保持率が50%未満で不合格とする。
(3)引張試験
JIS K7113に準拠して、射出成形にて成形した試験片を用いて、23±1℃及び95±1℃の雰囲気中で引張試験を行い、各々引張強度及び引張弾性率を測定した。
(4)ノッチ付きアイゾット衝撃試験
JIS K7110に準拠して、射出成形にて成形した試験片を用いて、23±1℃の雰囲気中でアイゾット衝撃強度を測定した。
(5)線膨張係数
JIS K7197に準拠して、射出成形にて成形したダイヤフラムバルブの本体から試験片を切削加工で切り出し、23℃〜95℃の範囲で線膨張係数を測定した。
(6)高温クリープ試験
DIN8078に準拠して、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物製バルブ(内径25mm、最低肉厚6.0mm)に対し、95±1℃内圧1.93MPa(バルブの内径と最低肉厚からパイプ外径37.0mm、パイプ肉厚6.0mmのパイプの場合に置き換えて、試験応力で5.0MPaに相当する内圧を式1のNadayの式から算出)をかけ、破壊に至るまでの時間を測定した。なお、高温時にボルトの緩みがある場合には、増し締めを行った。
パイプ内圧=(2×パイプ肉厚×試験応力)/(パイプ外径−パイプ肉厚)・・・式1
(7)成形収縮率
射出成形機にてダイヤフラムバルブ本体(塩化ビニル樹脂用金型、基準寸法:フランジ部外径(図1のD)125mm、面間幅(図1のW)130mm)を成形し、23℃雰囲気中で2日間放置した後、フランジ部外径(バルブの両端各々直角方向で2点測定)と面間幅(2点測定)の寸法値を測定した。測定は試験片10個を測定し、フランジ部外形Dと面間幅Wの平均値を算出し、フランジ部外形と面間幅の平均値から各々の成形収縮率を式2より算出した。比較対象として同様に塩化ビニル樹脂(比較例1と同じ樹脂)を成形して寸法を測定し成形収縮率を算出した。なお、基準寸法とは、成形品が狙う寸法であり、製品寸法のことである。また、本試験で使用した塩化ビニル樹脂用金型は、塩化ビニル樹脂で成形したときに基準寸法に対する寸法許容差が、フランジ部外径で±0.2mm以内、面間幅で±0.2mm以内の範囲内になるように調整されている。この金型寸法(実測値)はフランジ部外径125.95mm、面間幅130.87mmで設計されている。本試験では、成形収縮率が0.5〜0.8%の範囲内であり、基準寸法の寸法許容差のフランジ部外径で±0.2mm以内、面間幅で±0.2mm以内の範囲内であることを合格とする。なお、表1における各実施例及び比較例の樹脂の成形収縮率の比較では、面間幅の成形収縮率を記載する(フランジ部外形は肉厚であり、寸法のばらつきが大きいため、寸法のばらつきの少ない面間幅を基準とする)。
成形収縮率={(金型寸法−試験片寸法)/金型寸法}×100・・・式2
(8)MFR測定
JIS K7210に準拠し、試験温度250℃、試験荷重10kgの条件で測定した。
【0046】
まず、図1のダイヤフラムバルブを用いて、本体1とボンネット5を異なる配合のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物で成形されたバルブと他の樹脂で成形されたバルブの物性と、各々のバルブに用いられた樹脂の物性を比較した。
【実施例1】
【0047】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ポリスチレン系樹脂のハイインパクトポリスチレン80質量部を配合し、二軸押出機にて混練してペレット化し、混練後のMFRが3.62のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm未満にしたのち、射出成形機を用いてシリンダー温度250℃にてポリフェニレンエーテル系樹脂製ダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、バルブ耐水圧試験、耐アルカリ性試験、高温クリープ試験、引張試験、線膨張係数と成形収縮率の測定試験を行った結果を表1に示す。また、成形収縮率の測定結果の詳細な結果を表2に示す。
【実施例2】
【0048】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ハイインパクトポリスチレン80質量部を配合し、実施例1と同様に混練してペレット化し、混練後のMFRが1.57のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm未満にしたのち、そのペレットを用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。
【実施例3】
【0049】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ハイインパクトポリスチレン60質量部を配合し、実施例1と同様に混練してペレット化し、混練後のMFRが3.62のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm未満にしたのち、そのペレットを用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。また、成形収縮率の測定結果の詳細な結果を表2に示す。
【実施例4】
【0050】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ハイインパクトポリスチレン110質量部を配合し、実施例1と同様に混練してペレット化し、混練後のMFRが4.50のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm未満にしたのち、そのペレットを用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。また、成形収縮率の測定結果の詳細な結果を表2に示す。
【実施例5】
【0051】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ハイインパクトポリスチレン80質量部を配合し、水素添加したスチレン・ブタジエン系ゴム(スチレン含有量30%、重量平均分子量23万)13質量部を実施例1と同様に混練してペレット化し、混練後のMFRが3.60のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm未満にしたのち、そのペレットを用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。
【実施例6】
【0052】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ハイインパクトポリスチレン80質量部を配合し、水素添加したスチレン・ブタジエン系ゴム(スチレン含有量30%、重量平均分子量10万)13質量部を実施例1と同様に混練してペレット化し、混練後のMFRが4.23のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm未満にしたのち、そのペレットを用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。
【実施例7】
【0053】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ハイインパクトポリスチレン80質量部、水素添加したスチレン・ブタジエン系ゴム(スチレン含有量5%、重量平均分子量23万)13質量部を配合し、実施例1と同様に混練してペレット化し、混練後のMFRが3.02のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm未満にしたのち、そのペレットを用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。
【実施例8】
【0054】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ハイインパクトポリスチレン80質量部を配合し、水素添加したスチレン・ブタジエン系ゴム(スチレン含有量50%、重量平均分子量23万)13質量部を実施例1と同様に混練してペレット化し、混練後のMFRが4.15のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm程度にしたのち、そのペレットを用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。
【実施例9】
【0055】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ハイインパクトポリスチレン80質量部を配合し、水素添加したスチレン・ブタジエン系ゴム(スチレン含有量30%、重量平均分子量23万)18質量部を実施例1と同様に混練してペレット化し、混練後のMFRが3.55のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm未満にしたのち、そのペレットを用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。
【実施例10】
【0056】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ハイインパクトポリスチレン80質量部を配合し、実施例1と同様に混練してペレット化し、混練後のMFRが6.20のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm未満にしたのち、そのペレットを用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。
【実施例11】
【0057】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ハイインパクトポリスチレン40質量部を配合し、実施例1と同様に混練してペレット化し、混練後のMFRが2.92のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm未満にしたのち、そのペレットを用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。また、成形収縮率の測定結果の詳細な結果を表2に示す。
【実施例12】
【0058】
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部、ハイインパクトポリスチレン130質量部を配合し、実施例1と同様に混練してペレット化し、混練後のMFRが4.58のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物を乾燥させ、含水量を250ppm未満にしたのち、そのペレットを用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。また、成形収縮率の測定結果の詳細な結果を表2に示す。
【0059】
比較例1
塩化ビニル系樹脂100質量部の樹脂組成物を用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。
【0060】
比較例2
塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部の樹脂組成物を用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。
【0061】
比較例3
ポリプロピレン100質量部の樹脂組成物を用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。
【0062】
比較例4
ポリフッ化ビニリデン100質量部の樹脂組成物を用いてダイヤフラムバルブ及び各種試験片を成形し、各種評価試験を行った結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
表1よりバルブ耐水圧試験では、実施例1〜実施例12は23℃と95℃で共に5.0MPaの水圧で破損や漏れはなかった。なお、表1のバルブ耐水圧試験の数値は流体漏れが発生したときの圧力を示している。比較例1は23℃では5.0MPaの水圧で破損や漏れはないが、95℃では樹脂が軟化して試験はできなかった。比較例2は23℃では5.0MPaに満たずに流体漏れが発生し、95℃では樹脂が軟化して試験はできなかった。比較例3、比較例4では95℃で軟化することはないが、23℃の段階で5.0MPaに満たずに流体漏れが発生し、95℃では流体漏れが発生する圧力が低下した。また耐アルカリ性試験では、実施例1〜実施例12、比較例3は、95℃で30%のNaOHに浸漬して引張伸びの保持率が50%以上であるため、高温域のアルカリラインで好適に使用できる。比較例1、比較例2、比較例4では、引張伸びの保持率が50%以下であるために高温域のアルカリラインでの使用に不向きである。このことから、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物製バルブは、高温域(60〜95℃)において短期的に高い内圧がかかっても破損や漏れのない程の剛性を有し、高温域でアルカリラインに好適に使用できるバルブとして最低合格ラインであるバルブ耐水圧試験と耐アルカリ性試験をクリアしており、両試験をクリアしてないPVC、CPVC、PP、PVDF製バルブに対して優位性を有している。
【0066】
また引張試験では、実施例1〜実施例11は23℃と95℃での引張強度、引張弾性率が共に高い数値であり高温用バルブとして好適な高い剛性を有している。実施例12も95℃での引張強度が僅かに低い程度である。比較例1と比較例2は23℃の引張強度は実施例1と同程度で引張弾性率は実施例1の約1.5倍程度高いが、95℃では樹脂が軟化して測定できなかった。なお、比較例1は60℃、比較例2は90℃を超えた辺りから樹脂が軟化した。比較例3は23℃と95℃の引張強度で実施例1の1/2程度、引張弾性率は23℃で実施例1の3/5程度、95℃で1/4程度であった。比較例4は比較例3と同程度で僅かに数値が高かった。アイゾット衝撃強度では、実施例11、比較例1、比較例2で数値が低かった。一般的なバルブとして使用するには問題ないが、高圧で長期間使用するには不向きである(肉厚や構造の検討により対応は可能)。また線膨張係数では、実施例1〜実施例12と比較例1と比較例2は同程度だが、比較例3と比較例4では共に実施例1の約1.5倍程度となった。また成形収縮率では、実施例1〜実施例10、実施例12と比較例1、比較例2は同程度だが、実施例11ではこれらの実施例の収縮率より若干大きくなり、比較例3と比較例4では共に実施例1の収縮率も倍以上大きくなっている。高温クリープ特性は、実施例12は高温クリープ特性が低く長期使用には不向きであり、比較例1と比較例2は樹脂が軟化して試験ができず、実施例1と実施例3と実施例4は良好な高温クリープ特性を得ている。
【0067】
以上のことから、PVC製バルブは高温域(60〜95℃)では軟化して使用することができず、CPVC製バルブは90℃を超えると樹脂が軟化するため90℃まで使用できるもののあまり高い温度で使用するには不向きである。また高温時において、線膨張係数が大きい場合に高温時のバルブが膨張したり、引張弾性率が低い場合に高い水圧がかかるとバルブ本体が水圧によって膨らみが発生したりして、寸法の変化によりシール部分のシール性が低下するため、PP製バルブやPVDF製バルブは高温高圧用バルブの用途においては不向きである。よって、高温高圧用バルブとしてポリフェニレンエーテル系樹脂組成物製であるバルブが最も適していることがわかる。
【0068】
次に、実施例1、実施例2、実施例10を比較すると、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂の配合割合は同じだが、混練後のMFRが異なっていることにより高温クリープ特性が変わっていることが分かる。さらに実施例4、実施例12を加えて混練後のMFRの違いを比較すると、実施例1と実施例2のMFRでは高温クリープ特性に変化はみられないが、実施例10でMFRが大きくなると高温クリープ特性が実施例1の4/5程度に低下している。実施例12ではMFRがさらに大きくなり高温クリープ特性が実施例1の2/5程度に低下している。これはMFRが小さくなるとポリフェニレンエーテル系樹脂の分子量が小さくなり、分子量が小さいと高温クリープ特性が低下するためである。また、MFRが大きくなると樹脂の流動性は良くなるが、バルブのように厚肉成形品では樹脂の流動性が良すぎると気泡やボイドが発生しやすくなり、バルブの強度の低下にも繋がる。MFRの値が1.0g/10分より小さくなると樹脂組成物が、流動が悪くなり成形品の外観不良や反りなどが起こりやすくなり、MFRが小さくなりすぎると樹脂組成物が流動できずにバルブが成形できないため、高温クリープ特性とバルブの良好な成形性を得るためには実施例1、実施例2、実施例4がより好適な範囲となり、樹脂組成物のMFRは1.0〜5.0g/10分であることが望ましい。
【0069】
また、実施例1、実施例3、実施例4、実施例11、実施例12より、ポリフェニレンエーテル系樹脂に対するポリスチレン系樹脂の配合割合によって高温クリープ特性と衝撃強度等の物性が変化することが分かる。ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対するポリスチレン系樹脂の配合割合が実施例1の80質量部と比べて少ない場合、実施例3の60質量部では高温クリープ特性、衝撃強度共に変化はなく、実施例11の40質量部では高温クリープ特性に変化はないが、衝撃強度が低下する。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対するポリスチレン系樹脂の配合割合が実施例1の80質量部と比べて多い場合、実施例4の110質量部では衝撃強度は向上するものの、高温クリープ特性は僅かに低下し、実施例12の130質量部では衝撃強度がより向上し、高温クリープ特性が低下する。このことから、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、ポリスチレン系樹脂を50〜120質量部の範囲内で配合するからこそバルブとして必要な高温クリープ特性、衝撃強度等の物性がバランス良く得ることができる。ここで高温クリープ特性、衝撃強度等のバランスが良いとは、高温クリープ特性が600時間以上、衝撃強度7.0kJ/m2以上を満たすことを言い、長期的なバルブの性能を維持するためには高温クリープ特性が600時間以上(95℃雰囲気下で内圧が0.6MPaのときパイプが5年程度の寿命を有する)、衝撃強度7.0kJ/m2以上(長期間使用においてパイプ劣化による割れを抑え、高圧におけるウォーターハンマーなどの衝撃への耐性を有する)である必要がある。
【0070】
また、実施例1と実施例5を比較すると、スチレン・ブタジエン系ゴムを適量配合することにより高温クリープ特性を維持したまま、衝撃強度を向上させることができる。また実施例5〜実施例9を比較すると、スチレン・ブタジエン系ゴムの最適条件は、スチレンの重量平均分子量と、スチレン含有量と、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対するスチレン・ブタジエン系ゴムの量で決まることが分かる。スチレンの重量平均分子量は、実施例5のスチレン・ブタジエン系ゴムの重量平均分子量が23万に比べて実施例6のスチレン・ブタジエン系ゴムの重量平均分子量が10万と小さいため、実施例6の高温クリープ特性は低下する。またスチレン含有量は、実施例5のスチレン含有量30%に比べて実施例7はスチレン含有量が5%と少ないためにポリフェニレンエーテル系樹脂との相溶性が悪くなり、高温クリープ特性が低下して衝撃強度も向上しない。実施例8はスチレン含有量が50%と多いためにポリフェニレンエーテル系樹脂との相溶性が向上して衝撃強度は向上するものの、高温クリープ特性が若干低下する。またポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対するスチレン・ブタジエン系ゴムの量は、実施例5の13質量部に比べて実施例9の18質量部と配合量が多くなると、衝撃強度は向上するものの、高温クリープ特性が低下している。これらのことから、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して、スチレン含有量が10〜40%、重量平均分子量が20万以上のスチレン・ブタジエン系ゴムを1〜15質量部を配合することにより、高温クリープ特性を維持したまま、衝撃強度を向上させることができる。さらに高温・高圧の用途においては、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対するポリスチレン系樹脂の配合量は50〜105質量部であり、混練後のMFRが1.5〜4.5g/10分であることがより好適である。
【0071】
表2より、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対するポリスチレン系樹脂の配合割合によって成形収縮率は変化することが分かる。実施例1、実施例3、実施例4、実施例12の成形収縮率は0.5〜0.8%の範囲内であり、また基準寸法の許容差の範囲内である。このうち、実施例2は許容差の範囲内ギリギリであるため、実施例1、実施例3、実施例4が好適であり、塩化ビニル樹脂による成形品と同等の成形品を得ることができ、塩化ビニル樹脂と同じ金型を使用することができる。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、ポリスチレン系樹脂50〜120質量部であれば塩化ビニル樹脂とほぼ同じ成形収縮率の範囲内にすることができる。
【0072】
以上のことから、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物製バルブは、高温クリープ特性と衝撃強度がバランス良く優れており、また成形時における流動性を確保し良好な成形品を得ることができる。そのため、高温域(60〜95℃)での酸・アルカリなどの薬液を流しても長期間使用することができ、100℃付近での使用も可能である。また、スチレン・ブタジエン系ゴムを加えることによって、高温クリープ特性を低下させることなく衝撃強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施例を示すダイヤフラムバルブの全開状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 弁本体
2 流路
3 仕切壁
4 弁座面
5 ボンネット
6 スリープ
7 スピンドル
8 コンプレッサー
9 ダイヤフラム
10 ハンドル
11 流体流入口
12 流体流出口
D フランジ部外径
W 面間幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流入口と流体流出口を有し内部に該流入口及び該流出口に連通する流路と該流路内に弁座が形成された本体と、回動又は上下動することで該弁座に圧接離間されて該流路の開閉を行う弁体とを有するバルブにおいて、少なくとも該本体がポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂を必須成分としたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、95℃雰囲気下での引張強度が20MPa以上、引張弾性率が1000MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の23℃雰囲気下でのノッチ付きアイゾット衝撃強度が7.0kJ/m以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の線膨張係数が5.0×10−5/℃〜8.0×10−5/℃であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項5】
95℃雰囲気下で前記バルブを全開にして、5.0MPaの水圧をかけた状態で1分間保持したときに、該バルブから水漏れがないことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項6】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の成形収縮率が0.5〜0.8%であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項7】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対し、ポリスチレン系樹脂50〜120質量部を必須成分とし、混練後のメルトフローレートが1.0〜5.0g/10分の樹脂組成物であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のバルブ。
【請求項8】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して、スチレン含有量が10〜40%であり、重量平均分子量が20万以上のスチレン・ブタジエン系ゴム1〜15質量部をさらに配合してなることを特徴とする請求項7記載のバルブ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8記載のバルブが、ダイヤフラムバルブ、ボールバルブ、コック、バタフライバルブ、ゲートバルブ、ストップバルブ、ニードルバルブ、ピンチバルブ、チェックバルブ等のいずれかであることを特徴とするバルブ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−291976(P2008−291976A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140752(P2007−140752)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】