説明

バルブ

【課題】管路の伸縮や曲げによりバルブ部と継手部の接合部に発生する応力に対する高い物性強度や、流体圧やウォーターハンマー現象による水撃などの内圧に対する高い耐水圧強度を有すると共に、バルブや部品の交換を容易に行うことができるバルブを提供する。
【解決手段】バルブはバルブ部1と継手部2とから構成される。バルブ部1は、弁本体3内に連通する少なくとも二方の流路の開閉又は切換を行なうための弁体4と、鍔付き短管6と、キャップナット7とを備え、弁本体3に螺着されるキャップナット7により鍔付き短管6が弁本体3に固定される。継手部2の一端部には受口部25が設けられ、他端部には鍔付き短管6の短管部15に接合される管部28が設けられる。継手部2は、受口部25に挿入されるパイプに係止させる環状の抜止リング21をさらに有する。バルブ部1の鍔付き短管6の短管部15と継手部2の管部28とは溶かされて一体的に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工場、または半導体製造分野、液晶製造分野、食品分野などの各種産業に使用されるバルブに関するものであり、さらに詳しくは、バルブ部と継手部の接合部分に高い物性強度や耐水圧性を有すると共に、バルブや部品の交換を容易に行うことができる構成であり、パイプを配管接続する作業が工具などを用いずに容易で瞬時に行うことができ、特に塩化ビニル樹脂製のバルブにおいて施工現場で接着剤を用意する必要がなく、オレフィン系樹脂のバルブにおいて管継手の組み立てや配管接続が容易であり、高温の薬液などの流体輸送に長期間使用できる樹脂製のバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種産業に使用されるバルブとして、図9に示すようなボールバルブがある(例えば、特許文献1参照)。このボールバルブは、バルブ本体101内に流路を開閉可能とするボール102が配置され、このボール102に流路両側よりボールシート103が当接され、このボールシート103の少なくとも一方が、バルブ本体101の開口端側の内周面に設けられた雌ねじ104に、その外周面に設けられた雄ねじ105が螺合されたボール押え106によりボール102に向けて押圧されており、バルブ本体101の端部外周の雄ねじ107にユニオンナット108が螺合され、このユニオンナット108で接続スリーブ109をボール押え106に向けて押圧するようにしたものである。このようなボールバルブは、パイプを接続スリーブ109に接続することによってパイプに配管接続される。
【0003】
しかしながら、上記のようなボールバルブが樹脂製の場合にこれにパイプを配管接続するには、例えばボールバルブが塩化ビニル樹脂製であれば、施工現場で接着剤を用いて接続されるが、接着を行なうには専用の接着剤を用意しなければならず、雨の日に屋外で施工を行なうには作業が困難になるという恐れや、作業者により施工のばらつきがあり接着剤の塗布が不十分だと接着不良が起こる恐れがあるという問題がある。また、ボールバルブがポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂であれば、オレフィン系樹脂用の接着剤は塩化ビニル樹脂のように樹脂を溶かして接着するものではないため、配管接続に必要な接着強度が得られずに配管用途として使用することはできない。そのため、オレフィン系樹脂製のバルブの配管接続では施工現場でソケット融着やバット融着などの熱溶着が行われるが、熱溶着には専用の加熱装置や電源を用意しなければならず、加熱から冷却までの工程が必要であることから、施工現場で配管施工を行うには時間が多くかかる問題や、雨の日での屋外の施工が非常に困難であるという問題がある。
【0004】
上記従来の問題点を解決する方法として、図10に示すような異種管接合用配管器材を用いる方法がある(例えば、特許文献2参照)。この異種管接合用配管器材は、バルブの器材本体に複数の受口用接合部位110、111を設け、この接合部位110、111の端部側内周面に端部外方に沿って縮径した環状のテーパ溝112を形成し、このテーパ溝112を、金属管又は樹脂管等の異種管に用いる抜出防止機構113、114を選択的に装着できるように共通のテーパ溝形状に形成すると共に、各抜出防止機構113、114の外周囲に、該共通のテーパ溝112で反力を受けるテーパ面115をそれぞれ設けて任意の異種管を器材本体に接合できるように構成したものである。このような配管器材に金属管又は樹脂管等のパイプを接続する場合、受口用接合部位110、111の開口部からパイプを挿入するだけで抜出防止機構113、114が係止されて接続できる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−248745号公報
【特許文献2】特開2001−289376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような配管器材は、バルブの器材本体に受口用接合部位110、111が一体的に形成されているため、パイプを配管接続した後は、管路からバルブを取り外せる構成ではない。そのため、バルブの交換を行う場合には、管路に接続されたパイプの部分からバルブを切り離して、新たなバルブを配管接続し直さなければならないという問題がある。また、新たなバルブを配管接続する際に、バルブが切り離されたパイプの切断面が間隔をあけて互いに向き合った状態で固定されているため、上記配管器材の受口用接合部位110、111にパイプを挿入するためのストロークを得ることが困難であるという問題がある。このような管路に新たなバルブを配管接続する場合、互いに向き合ったパイプの一方側の端部を受口用接合部位110に挿入し、このときの受口用接合部位111端面からパイプの他方側の端面までの距離と受口用接合部位111のパイプ挿入量を合わせた長さのパイプを用意し、該パイプの一端を受口用接合部位111に挿入すると共に、他端面を互いに向き合ったパイプの他方側の端面と当接させ、溶接や専用の接続冶具を用いて接続する方法や、受口用接合部位110、111の各々にパイプを挿入し、パイプを挿入した状態の配管器材の長さを互いに向き合ったパイプの間隔に合わせて、パイプの端面同士を当接させて溶接や専用の接続冶具を用いて接続する方法などが採用されるが、このような配管接続は作業が困難であり熟練を要するという問題がある。
【0007】
また、上記配管器材の抜出防止機構113、114を挿入されるパイプに係止させる構成上、挿入されるパイプの外径に対して抜出防止機構113、114の内径が略同径か若干小さく形成されなければならない。そのため、特に受口用接合部位110、111にパイプを挿入する作業を行う際に、挿入するパイプの軸線がずれてパイプが挿入された場合など、パイプ挿入の際に抜出防止機構113、114の内周を通過するときに抜出防止機構113、114の鋸歯がパイプ外面を傷つけてしまい、この傷痕の深さによっては傷痕から流体漏れが発生する恐れがあるという問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、管路の伸縮や曲げによりバルブ部と継手部の接合部分に発生する応力に対する高い物性強度や、流体圧やウォーターハンマー現象による水撃などの内圧に対する高い耐水圧強度を有すると共に、バルブや部品の交換を容易に行うことができる構成であり、パイプを配管接続する作業が工具などを用いずに容易で瞬時に行うことができ、特に塩化ビニル樹脂製のバルブにおいて施工現場で接着剤を用意する必要がなく、オレフィン系樹脂のバルブにおいて管継手の組み立てや配管接続が容易であり、高温の薬液などの流体輸送に長期間使用できる樹脂製のバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、パイプを接続するための少なくとも二つの接続部を有した弁本体と、前記パイプを通して該弁本体内に連通する少なくとも二方の流路の開閉又は切換を行なうための弁体と、短管部と該短管部の一端から半径方向外向きに延びる鍔部とを有する鍔付き短管と、内周面に雌ねじ部が設けられた円筒状本体部と一端部に半径方向内向きに突出する環状突条部とを有したキャップナットとを備え、前記鍔付き短管の前記短管部を前記キャップナットの前記環状突条部の内側に挿入した状態で前記弁本体の接続部の外周面に設けられた雄ねじ部に前記キャップナットの雌ねじ部を螺合させて前記接続部の端面と前記環状突条部との間に前記鍔付き短管の前記鍔部を挟持することにより前記鍔付き短管を前記弁本体に固定したバルブ部と、一端部にパイプが挿入される受口部が設けられると共に、他端部に前記鍔付き短管の短管部に接合される管部が設けられており、前記受口部に挿入されるパイプに係止させるための環状の抜止リングを有する継手部とを具備し、前記鍔付き短管の前記短管部と前記継手部の前記管部とが溶かされて一体的に接合されるようにしたバルブを提供する。
【0010】
上記バルブにおいて、前記継手部が、一端部に螺着部が設けられ他端部に前記管部が設けられた継手本体と、前記螺着部に螺着される締結部材とを備え、前記螺着部への前記締結部材の螺着により前記抜止リングを縮径させて前記パイプの外周面に係止させるようになっていることが好ましい。
【0011】
上記の場合、前記螺着部として前記継手本体の一端部の外周に雄ねじ部が設けられると共に、前記締結部材の内部に、前記継手本体の前記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部と、該雌ねじ部に連続して設けられ、前記継手本体の一端部の端面に前記抜止リングの軸線方向端面が当接した状態で前記抜止リングを収容する抜止リング収容部とが設けられており、前記抜止リング収容部の内周が前記締結部材の前記雌ねじ部から離れる方向に向かって漸次縮径するテーパ面を有すると共に、前記抜止リングの外周が前記抜止リング収容部の内周の前記テーパ面にスライド可能に接触するテーパ面を有していることがさらに好ましい。
【0012】
さらに、前記抜止リングが、前記パイプの外径よりも0.5〜3mm大きい内径を有することが好ましい。
【0013】
また、前記抜止リングが前記締結部材と共に回転可能になっていることが好ましい。
【0014】
また、前記継手部の前記管部の外径が前記キャップナットの前記環状突条部の内径より小さく、前記鍔付き短管の鍔部側の端面から前記継手部における前記管部と残余の部分との境界までの距離が前記キャップナットの軸線方向の長さよりも大きいことが好ましい。
【0015】
また、前記継手部における前記管部と前記残余の部分との境界に前記管部よりも大径の突部が設けられており、前記鍔付き短管の鍔部側の端面から前記継手部の管部側の前記突部の側面までの距離が前記キャップナットの軸線方向の長さよりも大きいことが好ましい。
【0016】
前記バルブ部及び前記継手部はオレフィン系樹脂で形成されていてもよい。
【0017】
この場合、前記バルブ部及び前記継手部がポリプロピレンで形成されていることがさらに好ましい。
【0018】
また、前記鍔付き短管の短管部に受口部が形成されると共に、前記継手部の管部に前記短管部の受口部内に嵌合可能な挿入部が形成され、前記短管部の受口部と前記管部の挿入部がソケット融着により接合されてもよい。
【0019】
また、前記バルブ部及び前記継手部が塩化ビニル樹脂で形成されており、前記鍔付き短管の短管部に受口部が形成されると共に、前記継手部の管部に前記短管部内に嵌合可能な挿入部が形成され、前記短管部の受口部と前記管部の挿入部が接着剤による接着により接合されてもよい。
【0020】
また、前記継手部の受口部内周に少なくとも2つのシールリングが配置されることが好ましい。
【0021】
前記バルブ部は、ボールバルブ、ダイヤフラムバルブ及びゲートバルブのうちの何れかとすることができる。
【0022】
また、前記弁体は、手動式、空動式及び電動式のうちの何れかで駆動されることができる。
【0023】
本発明は、鍔付き短管の短管部と継手部の管部が溶かされて一体的になるように接合されるものであり、接合方法としては、融着や溶接などの熱溶着が好適なものとして挙げられ、例えば塩化ビニル樹脂のように接着剤で溶かされて一体的に接着できるものであれば接着でも良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明は以上のように構成したので、以下の優れた効果が得られる。
(1)バルブ部と継手部が溶かされて一体的に接合されることで、管路の伸縮や曲げによりバルブ部と継手部の接合部分に発生する応力に対する高い物性強度や、流体圧やウォーターハンマー現象による水撃などの内圧に対する高い耐水圧強度を得ることができる。
(2)バルブを配管施工した後でも、バルブ部と継手部を分解してバルブや部品の交換を行うことができる。
(3)バルブにパイプを配管接続する時に、接続のための各種道具や工具を必要とせず、接続が容易で瞬時に行うことができる。
(4)鍔付き短管の鍔部側の端面から継手部における管部と残余の部分との境界までの距離が、キャップナットの軸線方向の長さよりも大きいことにより、バルブの部品を交換するときにキャップナットが取り外しの邪魔になることなく、バルブ部品の取り外しや取り付けを容易に行うことができ、配管施工後のメンテナンスを容易に行うことができる。
(5)バルブ部と継手部の各部材がオレフィン系樹脂で形成されることにより、施工現場で熱溶着の装置や電源などを必要とせずに、容易で瞬時に配管接続することができる。
(6)バルブ部と継手部の各部材がポリプロピレンで形成されることにより、バルブが高温域での酸・アルカリに対する耐薬品性を有し、高温クリープ特性に優れ、薬液を高温で長期間使用することができる。
(7)バルブ部と継手部の各部材が塩化ビニル樹脂で形成されることにより、施工現場で接着剤を用意する必要がなく、天気や気候などの外的要因の影響を受けずに接続を行うことができる。
(8)パイプを継手部に挿入して係止する際に、抜止リングがパイプの外周に係止する箇所以外に傷を付けることがなく、流体漏れの心配がなく確実な接続を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0026】
図1は本発明の第一の実施形態を示すボールバルブの縦断面図、図2は図1のバルブ部と継手部の接続前の要部拡大縦断面図、図3は図1の要部拡大縦断面図、図4は図1のパイプ接続後の要部拡大縦断面図、図5は図1のパイプ接続後に分解した状態を示す縦断面図、図6は継手本体に突部を設けないときの実施形態を示す要部拡大縦断面図、図7は本発明の第二の実施形態を示す他の継手部の要部拡大縦断面図、図8は本発明の第三の実施形態を示すダイヤフラムバルブの縦断面図である。
【0027】
以下、図1乃至図5に基づいて本発明の第一の実施形態であるボールバルブについて説明する。
【0028】
ボールバルブはバルブ部1と継手部2から構成されている。バルブ部1は、弁本体3と、弁体4と、弁体押さえ5と、鍔付き短管6と、キャップナット7とを備える。
【0029】
弁本体3は、口径25mmのポリプロピレン(以下、PPと記載する)製のものである。弁本体3は略中空円筒状で、内部に流路軸線に沿って弁室8が設けられていると共に、流路軸線と交わる方向にステム9が嵌挿される貫通孔が弁室8に連通するように設けられている。また、弁本体3の流路軸線方向両端部には、外周に雄ねじ部10が形成された接続部が設けられており、二つの接続部のうちの一方の内周には雌ねじ部11がさらに設けられている。
【0030】
弁体4はボール形状を有しており、PPから作製されている。弁体4は弁本体3の弁室8内に配置され、ハンドル12が上部に嵌着されたステム9に嵌合されている。また、ボールバルブの全閉時、すなわち上流側に流体圧力がかかっているときには、弁体4が弁室8内でわずかに下流側に移動可能な状態で、弁体4がステム9に嵌合されている。
【0031】
弁体押さえ5はPPから作製されたものである。弁体押さえ5は円筒状であり、外周にOリングが嵌着されている。さらに、弁体押さえ5の外周端部には弁本体3の接続部の一方に設けられた雌ねじ部11と螺着される雄ねじ部が設けられており、弁体押さえ5を弁本体3の接続部に螺着することで、弁室8内で弁体4が流路両側からシート13により押圧保持されるようになっている。また、後述する鍔付き短管6が当接する弁体押さえ5の端面には、Oリング14が配置されている。
【0032】
鍔付き短管6はPPから形成されており、その短管部15の軸線方向の一端には、半径方向外向きに延びる環状の鍔部16が設けられている。
【0033】
キャップナット7はPPから作製されたものである。キャップナット7は円筒状本体部を含んでおり、円筒状本体部の軸線方向の一方の端部の内周には弁本体3の雄ねじ部10に螺着される雌ねじ部17が設けられており、軸線方向の他方の端部には半径方向内向きへ突出する環状突条部18が設けられている。なお、雌ねじ部17は円筒状本体部全体の内周にわたって設けられていてもよい。キャップナット7は、鍔付き短管6の短管部15を環状突条部18の内側に挿入させ、鍔付き短管6の鍔部16をOリング14を介して弁本体3および弁体押さえ5の外側端面とこれと対向する環状突条部18の内側面との間に挟持した状態で弁本体3に螺着されている。このとき、弁本体3の流路軸線方向両端部に配置された鍔付き短管6の両開口から弁体4に至るまでの各々の流路が第一流路および第二流路となる。
【0034】
継手部2は、継手本体19と、袋ナット20と、抜止リング21とを備える。
【0035】
継手本体19はPPから形成されている。継手本体19は円筒状であり、軸線方向一端部の外周に、後述する袋ナット20の抜止リング収容部31内に収容(嵌合)されるテーパ面が設けられた先端部22と、後述する袋ナット20との螺着部となる雄ねじ部23と、鍔状に形成された環状の突部24とが連続して設けられ、同じ軸線方向一端部の内周にパイプ43が挿入される受口部25を有している。この受口部25の内周には環状溝が形成されており、この環状溝内にシールリング26が配置されている。また、受口部25の奥側には、挿入されたパイプ43の先端面が当接する段部27が形成されている。一方、継手本体19の他端部には、管部28と上記突部24が連続するように設けられており、管部28は鍔付き短管6の短管部15とソケット融着によって一体的に接合されている。なお、突部24は後述する袋ナット20を締め付けて当接させたり、キャップナット7を弁本体3から外して短管部15及び管部28の外周をスライドさせたときに当接可能に設けられていれば、その形状は板状や棒状など特に限定されない。例えば、継手本体19の外周に単一の突部24を設けたり、複数の突部を継手本体19の外周に沿って等間隔に設けても良く、鍔形状になるように環状の突部24を設けても良い。成形の容易さと寸法精度の良い成形が可能なことから鍔形状にすることが好適である。また、本実施形態ではシールリング26は1つだが、図8に示すようにシールリングを並列に配置して2つ以上設けても良い。
【0036】
袋ナット20はPP製の締結部材である。袋ナット20は円筒状であり、パイプ43が挿入される貫通口部33を有し、軸線方向一端部の内周に雌ねじ部29が形成されていると共に、雌ねじ部29から離れる方向に向かって漸次縮径するテーパ面30を有した抜止リング収容部31が形成されている。抜止リング収容部31において、テーパ面30の縮径方向端部には後述する抜止リング21の側面が当接される当接面32が設けられている。
【0037】
抜止リング21はポリフェニレンサルファイドから形成されている。抜止リング21は、外周面が袋ナット20のテーパ面30に当接した状態で抜止リング収容部31内に配置されている。また、抜止リング21は、円周を断絶する切り欠き部(図示せず)を有し、パイプ43の外周面に係止可能な断面鋸歯状の係止刃34が内面に形成されている。また、抜止リング21の最小内径は、挿入されるパイプ43の外径に対して1.2mm大きくなるように形成されている。
【0038】
上記実施形態では、バルブ部1を構成する弁本体3、弁体4、弁体押さえ5、鍔付き短管6、キャップナット7や、継手部2を構成する継手本体19、袋ナット20がPPから作製されているとして説明しているが、これらは、ポリエチレン(以下、PEと記す)、ポリブテン(以下、PBと記す)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(以下、ABSと記す)などのオレフィン系樹脂や、塩化ビニル樹脂(以下、PVCと記す)、ポリスチレン、ポリアセタール、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレンなどの樹脂から作製してもよい。特に、本発明のバルブは、配管接続に適した接着剤が存在せずに、施工現場で熱溶着を行なう必要のあるPP、PE、PB、ABSなどのオレフィン系樹脂をバルブの材料として用いる場合に好適であり、中でもPPはバルブの高温特性やクリープ特性が良くなり、耐薬品性に優れることから幅広い用途に用いることができ、価格も安価であるのでより好適である。
【0039】
なお、鍔付き短管6と継手本体19は互いに融着可能な樹脂同士で形成されている必要がある。また、本発明のバルブに接続されるパイプ43の材質は、管路内の耐薬品特性や物性を統一するために上記バルブ部1と継手部2を構成する部材と同一の材質にすることが望ましい。
【0040】
また、上記実施形態では、抜止リング21がポリフェニレンサルファイドから作製されるとして説明したが、抜止リング21の材質は、これに限定されるものではなく、抜止リング21は、ステンレス等の硬質材料から作製したり、内周の係止刃34の部分のみステンレス等の硬質材料から作製して他の部分を樹脂で形成してもよく、パイプ43より硬度が高い材料から作製すればよい。
【0041】
次に、本発明の第一の実施形態のボールバルブのバルブ部と継手部を熱溶着により接合する手順について図2、図3を参照して説明する。ここでは、熱溶着の方法としてソケット融着を用いている。
【0042】
図2に示されているバルブ部1と継手部2が接合される前の状態において、継手本体19の管部28の端部にはパイプの外周形状と同一の外周形状の挿入部42が形成されている一方、バルブ部1の鍔付き短管6には挿入部42の先端部が嵌合可能な受口部41が形成されている。
【0043】
まず、図2に示すように、キャップナット7の雌ねじ部17側端部から短管部15を前方に向けてキャップナット7内に鍔付き短管6を挿入し、鍔付き短管6の短管部15をキャップナット7の環状突条部18内に挿入させて、鍔付き短管6の鍔部16とキャップナットの環状突条部18の内側面とを係合した状態にする。次に、鍔付き短管6と継手本体19をソケット融着にて熱溶着するために、融着機のヒーターの一方の凸状側にキャップナット7が係合された鍔付き短管6を嵌合させ、他方の凹状側に継手本体19を嵌合させて、継手本体19の管部28の端部の挿入部42の外周と、鍔付き短管6の短管部15の受口部41の内周をヒーターにて加熱する(図示せず)。適度な時間で加熱した後にヒーターから継手本体19と鍔付き短管6を離して、時間を空けずに継手本体19の挿入部42を鍔付き短管6の受口部41に挿入する。その状態のまま一定時間固定し、融着部分の冷却を行うことで接合の作業が完了する。熱溶着によって接合した後は、鍔付き短管6の鍔部16を弁本体3の接続部の軸線方向端面に当接させてキャップナット7を弁本体3の接続部に螺着し、弁本体3の接続部の端面とキャップナット7の環状突条部18の内側面との間に鍔部16を挟持することにより、継手部2がバルブ部1に固定される(図3の状態)。
【0044】
ここで、継手部2の管部28とは、その外径がキャップナット7の環状突条部18の内周より小径であり、キャップナット7の内周に管部28を貫通させて、キャップナット7が管部28の外周をスライド可能である部分のことを言う。また、距離Lとは、鍔付き短管6と継手本体19が接合された状態で、鍔付き短管6の鍔部16側の端面から継手本体19の管部28と残余の部分(すなわちキャップナット7がその外周をスライドできない部分)との境界までの距離を言い、図3に示すような突部24が形成された本実施形態では、鍔付き短管6と継手本体19が接合された状態で、鍔付き短管6の鍔部16側の端面から継手本体19の突部24の管部28側の側面までの距離を言う。距離Lはキャップナット7の幅(軸線方向の長さ)Dに対して、L=1.1Dとなるように設定されている。
【0045】
なお、本実施形態の変形形態として、図6に示すように継手本体19に突部24を設けずに継手本体19の管部28と雄ねじ部23が連続して設けられていてもよい。図6に示される実施例では、継手部2は、継手本体19aと、袋ナット20と、抜止リング21とから構成されている。継手本体19aは円筒状であり、軸線方向の一端部の外周に袋ナット20の抜止リング収容部31内に収容(嵌合)されるテーパ面が設けられた先端部22と、袋ナット20の雌ねじ部29が螺着される雄ねじ部23と、軸線方向の他端部に形成された管部28とが連続して設けられ、管部28は鍔付き短管6の短管部15とソケット融着によって一体的に接合されている。この実施例では、鍔付き短管6と継手本体19aが接合された状態で、鍔付き短管6の鍔部16側の端面から継手本体19aの雄ねじ部23と管部28の境界までの距離がLとなる。
【0046】
また、鍔付き短管6と継手本体19は、同一の材質のPPで成形されているため、熱溶着によって完全に一体的に接合される。熱溶着の方法として、本実施形態のソケット融着の他に、バット融着や溶接などが挙げられる。バット融着の場合は、継手本体19の管部28と鍔付き短管6の短管部15を同径のパイプの形状にして、端面同士をヒーターで過熱した後に、これら端面同士を押圧することで融着が行なわれる。溶接の場合は、管部28と短管部15を嵌合させたり端面同士を押圧させた状態で溶接が行なわれる。
【0047】
このとき、熱溶着によって接合部分は溶かされて一体的に形成されるので、接合部分の強度は他の箇所と同等となり、さらに熱溶着では接合時にビードができるため、このビードの部分が補強となって管路内の流体の内圧による負荷やパイプの収縮や膨張による応力が最も加わるバルブ部1と継手部2の接合部分の破損を防止することができる。特に熱溶着の方法の中でもソケット融着は、受口部41と挿入部42が嵌合して接合されるため、溶融接合される部分の面積を広く取って一体的に設けることができる点で有利である。また、受口部41と挿入部42の両方の肉厚が重なって接合部分が形成されるので、接合部分の肉厚が厚く形成され、接合部分に集中する応力に対する高い物性強度を得ることができると共に、内圧に対しても接合部分がパイプ43以上の耐水圧強度を得ることができるので好適である。また、配管接続に適した接着方法のないPPなどのオレフィン系樹脂製のバルブにおいては、バルブ部1と継手部2を組み立てる方法として確実に接合を行うことができるので有効である。
【0048】
なお、バルブ部1と継手部2がPVC製の場合、PVCは熱溶着が可能であると共に接着剤を用いて溶かして接着することが可能であるため、本実施形態と同様に熱溶着で接合しても良く、バルブ部1と継手部2とを接着剤を用いて溶かして一体的に接合しても良い。PVCを用いている場合、接合面同士に接着剤を塗布して接合面を溶かし、その接合面を互いに押圧させることで互いに溶け合って二つの部材を一体的に接合することができるため、配管部材の用途における接合方法として好適である。このように、PVCを用いている場合、組み立てを行う際の製造設備や、バルブを使用する環境に合わせて接合方法を選択することができる。また、PVCは配管部材として必要な強度を有していながら、透明の樹脂も揃っており、バルブ部1や継手部2に透明なPVCを用いることで流体の流れを外部から確認できるようにすることができる。
【0049】
次に、本発明の第一の実施形態のボールバルブにパイプを接続する手順とその作用について図1、図3、図4を参照して説明する。
【0050】
図1および図3に示されるパイプ43を接続する前の状態から、まず、パイプ43を袋ナット20の貫通口部33から挿入して抜止リング21の内周に通した後、パイプ43の先端面が継手本体19の受口部25の段部27に当接するまで、パイプ43を継手本体19の受口部25に挿入する。このとき、パイプ43の外周と継手本体19の受口部25内周がシールリング26により水密状態で嵌合される。
【0051】
次に、継手本体19に袋ナット20を締め付けていくと、継手本体19の先端部22の端面の押圧面35が抜止リング21の側面(軸方向端面)に当接した状態で袋ナット20の貫通口部33の当接面32側に押圧される。すると、抜止リング21は、外周面をテーパ面30に接触させながらテーパ面30上をスライドすることによりテーパ面30で外周面を軸心方向に押圧されて、次第に縮径していき、これにより抜止リング21の係止刃34がパイプ43の外周面に食い込まされる。このとき、抜止リング21は、袋ナット20の当接面32と継手本体19の押圧面35の間で挟持されることになり、抜止リング21が係止されたパイプ43はボールバルブの継手部2に強固に固定される。
【0052】
抜止リング21は、側面が継手本体19の押圧面35に当接した状態のまま、袋ナット20の締め付けにより同じ位置で縮径してパイプ43に係止されるので、抜止リング21は常にパイプ43の定位置に係止される。このため、抜止リング21が係止する箇所以外の場所に傷を付けることがないため、流体漏れのない安定したシールを行うことができると共に、抜止リング21がパイプ43に一旦係止すると、係止位置からずれにくくなり、継手部2からパイプ43が一層抜けにくくなる。これにより、バルブ閉止時にウォーターハンマー現象などで高い内圧がかかりやすい継手部2からの流体漏れやパイプ43の抜けが発生することを防止することができる。
【0053】
このようなパイプ43の接続方法を採用しているので、袋ナット20を手動で回転させて締め付けることで容易にボールバルブにパイプ43を接続することができる。これにより、例えばPVC製のパイプを接続する場合に、施工現場において接着剤を用いる必要がなくなる。この結果、接着のための道具を用意する必要がなくなると共に、接着剤塗布から乾燥までに要する時間がなくなって瞬時に接続を行うことが可能となる。また、PPなどのオレフィン系樹脂製のパイプを接続する場合には、施工現場で熱溶着を行わずに接続することが可能となる。この結果、加熱のための装置や電源を用意する必要性がなくなって、専用の工具、装置、電源を用意する必要がなくなると共に、加熱から冷却までに要する時間がなくなって瞬時に接続を行うことが可能となる。また、雨の日の屋外での施工作業も大掛かりな防水対策を必要とせずに行うことが可能となる。
【0054】
また、抜止リング21は袋ナット20を締め付けることで縮径されるので、抜止リング21の内径をパイプ43の外径より大きくして、パイプ43挿入時に抜止リング21がパイプ43外周に傷を付けないようにすることができると共に、パイプ43を受口部41に挿入する時の挿入荷重を低減させることができる。ここで、抜止リング21の最小内径は、パイプ43の外径より0.5mm〜3.0mm大きくなるように設定されることが望ましく、パイプ43の外径より0.7〜1.5mm大きいことがより望ましい。抜止リング21が若干斜めになった状態で抜止リング収容部31内に保持されている場合でも、抜止リング21の係止刃34とパイプ43外周面とのクリアランスを維持し、また、パイプ43挿入時に抜止リング21がパイプ43の端部に当接して挿入の妨げとなったり、係止刃34がパイプ43の外周面に傷を付けたりしないようにするためには、抜止リング21の内径とパイプ43の外径との差を0.5mm以上にすることが好ましい。また、抜止リング21がパイプ43に係止されるまでに袋ナット20を回転させる量が多くならないようにし、ねじ幅が大きくなって管継手の寸法が大きくならないようにするためには、抜止リング21の内径とパイプ43の外径との差を3.0mm以下にすることが好ましい。
【0055】
ここで、パイプ43を引き抜く方向の力がパイプ43に加わった場合、パイプ43の外周に係止刃34が食い込んだ状態で抜止リング21がパイプ43の外周に係止されており、パイプ43を引き抜く方向の力が作用すると抜止リング21の外周面がテーパ面30に押圧されて縮径させる力が加わるので、パイプ43の抜けが防止される。このとき、抜止リング収容部31のテーパ面30の縮径方向に抜止リング21の側面が当接される当接面32が設けられていることにより、パイプ43を引き抜く方向に大きな力が加わって抜止リング21が縮径してパイプ43に食い込もうとしても、抜止リング21の側面が当接面32に当接して、一定の食い込み量以上食い込まないようになっている。例えば当接面32を設けずにテーパ面30のみであった場合、管路内のパイプの収縮や、バルブを閉止した時のウォーターハンマー現象などでバルブ付近の管路内に急激な内部圧力が加わることにより、パイプ43を引き抜く方向に大きな力が加わると、抜止リング21がテーパ面30に押圧されてパイプ43に深く食い込みすぎてパイプ43が破損する恐れがあるが、当接面32が設けられていることにより、抜止リング21がパイプ43に深く食い込みすぎることを防止しパイプ43が破損することが防止される。また、抜止リング21がパイプ43に対して良好な食い込み量になるように当接面32の位置を設計することができる。
【0056】
なお、抜止リング21は袋ナット20と共に回転可能に形成しても良い。この場合、抜止リング21が回転することで係止刃34がパイプ43に係止し易くなり、係止位置のずれが起こりにくくなるため好適である。また、係止刃34に代えて、抜止リング21の内周の一部にパイプ43の外周面に溝を形成する切削刃を設け、抜止リング21が袋ナット20と共に回転して切削刃がパイプ43の外周面に環状溝を形成した後に、抜止リング21が該環状溝に嵌合することで係止されるようにしても良い。抜止リング21を袋ナット20と共に回転させる方法として、例えば袋ナット20に突条部または直線溝を設け、抜止リング21を該突条部または直線溝に係合可能に形成するなどが挙げられる。
【0057】
次に、本発明の第一の実施形態のボールバルブを開閉させるときの動作について説明する。
【0058】
図1に示される開状態からハンドル12を90度回転することにより、ハンドル12に嵌着しているステム9が回動し、ステム9の回動に合わせてステム9に嵌合されている弁体4が90度回動してバルブが閉状態(図示せず)になる。次に、ハンドルを90度逆回転すると上記と逆の動作によりバルブが開状態(図1の状態)になる。
【0059】
本発明のバルブ部1と継手部2の各部材はPPで形成され、PP製のパイプ43に配管接続されているため、ボールバルブは高温域での酸・アルカリに対する耐薬品性を有する。また、高温クリープ特性にも優れているため、本発明のボールバルブは、流体として高温の薬液を流しても長期間使用することができる。なお、ボールバルブにおける高温域とは、ボールバルブのシールの構成上60℃〜80℃の範囲を言う。
【0060】
ここで、本発明のボールバルブを配管から取り外してバルブ(鍔付き短管6、キャップナット7を除いたバルブ部1)を交換する方法について説明する。まず、管路の上流側で流体の流れを停止させた後に、弁本体3の両端部に螺着されたキャップナット7を緩めて各々弁本体3から外し、外したキャップナット7を継手本体19の管部28側へ各々移動させる(図5の状態)。鍔付き短管6の鍔部16側の軸線方向端面から継手本体19の管部28側の突部24の側面(図5)又は雄ねじ部23と管部28との境界(図6)までの距離Lは、キャップナット7の幅(軸線方向長さ)Dに対して、L>Dの関係を有しており、外したキャップナット7が弁本体3と鍔付き短管6とを離す時の邪魔になることがないため、パイプ43を曲げたり引張って負荷をかけることなく、パイプ43に接続された継手部2をほとんど動かさずにバルブ部1(鍔付き短管6、キャップナット7を除いたもの)を管路から容易に取り外すことができる。その後、新たなバルブ部1(鍔付き短管6、キャップナット7を除いたもの)を設置して、弁本体3の両端部にOリング14を介して鍔付き短管6を当接させてキャップナット7を弁本体3に各々螺着することで新たなバルブ部1を配管に容易に取り付けることができる。
【0061】
バルブの部品を交換する場合にも上記と同様の手順で交換を行うことができる。例えばバルブ部1の下流側にあるOリング14を交換する場合においても、上記と同様に、バルブを閉止した状態で、弁本体3に螺着された下流側のキャップナット7を緩めて弁本体3から外し、Oリング14を交換した後、弁本体3の端部に新たなOリング14を介して鍔付き短管6を当接させてキャップナット7を弁本体3に螺着することで、容易に且つ短時間でOリング14を交換することができる。
【0062】
なお、鍔付き短管6の鍔部16側の端面から継手部2の管部28側の突部24の側面(図5)又は雄ねじ部23と管部28との境界(図6)までの距離Lは、キャップナット7の幅(軸線方向長さ)Dに対して、L>Dの関係を有していることが望ましく、D<L<2Dの関係を有していることがさらに望ましい。鍔付き短管6とキャップナット7が装着されたバルブは、配管接続した後でもキャップナット7を弁本体3から外して継手部2側へ移動させれば、パイプを曲げたり引張らなくても管路からバルブ部(鍔付き短管6、キャップナット7を除いたもの)を容易に外すことができるようにするためには、L>Dであることが必要である。また、バルブの面間を小さくしてコンパクトにするためにL<2Dであることが好ましい。
【0063】
以上のように、本発明のバルブはバルブ部1と継手部2が熱溶着によって一体的に接合されることで接合部の強度を得ることができ、特にオレフィン系樹脂製のバルブにおいて、バルブ部1と継手部2を容易で確実に接合することができる。また、パイプ43を配管接続するときに工具、装置、電源などを必要とせず、接続が容易で瞬時に行うことができる。さらに、バルブの部品を交換するときに、外したキャップナット7が弁本体3から鍔付き短管6を取り外す作業の邪魔になることがなく、バルブ部品の取り外し及び取り付けを容易に行うことができる。また、パイプ43を継手部2に挿入して係止する際に抜止リング21がパイプ43の外周に係止する箇所以外に傷を付けることがないので、パイプ43の接続部分の流体漏れの心配がなく確実な接続を行うことができる。
【0064】
次に、図7に基づいて本発明の第二の実施形態である継手部の他の実施例について説明する。
【0065】
図7に示される実施形態において、継手部2は、継手本体19bと、締結部材20bと、抜止リング21bとを備える。
【0066】
継手本体19bは、パイプ(図示せず)が挿入される受口部25bを有し、受口部25bの内周に、雌ねじ部44と、奥側に向かって漸次縮径するテーパ面45を有する抜止リング収容部46が形成されていると共に、受口部25においてテーパ面45の縮径方向の端部には抜止リング21bの側面が当接される当接面47が設けられている。締結部材20bは、その中心部に、パイプ(図示せず)が挿入される貫通口部33bを有し、外周には、継手本体19bの抜止リング収容部46に収容(嵌合)されるテーパ面が設けられた先端部48と、継手本体19bの雌ねじ部44に螺合する雄ねじ部49と、先端部48と軸線方向反対側の端部から半径方向に延びる鍔部50とが連続して設けられている。その他の構成は第一の実施形態と同様なのでここでは説明を省略する。
【0067】
次に、本発明の第二の実施形態の継手部にパイプを接続する方法について説明する。
【0068】
貫通口部33bを貫通して受口部25bにパイプ(図示せず)を挿入して、継手本体19bに締結部材20bを締め付けていくと、締結部材20bの先端部48の軸線方向端面が、継手本体19bの受口部25bの奥側に向かって抜止リング21bを押圧する。すると、抜止リング21bは、テーパ面45を軸線方向にスライドするに伴って、次第に縮径していく。これにより、抜止リング21bの係止刃34bがパイプの外周面に食い込んでいく。その他の作用については第一の実施形態と同様なのでここでは説明を省略する。
【0069】
このように、継手部2の軸線方向一端部に形成された螺着部として、受口部25の外周に形成された雄ねじ部23ではなく、受口部25bの内周に形成された雌ねじ部44を設けても良い。
【0070】
次に、図8に基づいて本発明の第三の実施形態であるダイヤフラムバルブについて説明する。
【0071】
ダイヤフラムバルブはバルブ部51と継手部52とから構成されている。バルブ部51は、弁本体53と、ダイヤフラム54と、ボンネット55と、鍔付き短管56と、キャップナット57とを備える。
【0072】
弁本体53は口径25mmのPP製のものである。弁本体53の上面には開口部58が設けられている。また、弁本体53の内部には、第一流路59、第二流路60、及び両流路の中間に位置し且つ流路を開口部58へ向かって湾曲させている仕切壁61が設けられ、仕切壁61の上面には弁座62が形成されている。さらに、弁本体53の両端部には鍔部63が形成されており、鍔部63の外周には雄ねじ部64が設けられている。
【0073】
ダイヤフラム54は、フッ素ゴムから形成されており、弁体を構成する。ダイヤフラム54の非接液面側の中央には上部が突出した状態で埋め込み金具が埋設されており、ダイヤフラム54は埋め込み金具によってコンプレッサ65に係合固定されている。ダイヤフラム54の周縁部は、弁本体53と後記ボンネット55の間に挟持されており、ボンネット55の下面により弁本体53上面の開口部58周辺に押しつぶされて水密状態で固定されている。
【0074】
なお、本実施形態のダイヤフラム54の材質としては、フッ素ゴムの他にポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンゴムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0075】
ボンネット55はPPから作製されており、弁本体53の上部にボルト・ナット(図示せず)で固定されている。ボンネット55の上部中央の貫通孔66には、銅合金製のスリーブ67が支承されている。また、スリーブ67の内部に設けられた雌ねじ部には、銅合金製のステム68が螺合されており、ステム68の下端部には、コンプレッサ65が係合固定されている。さらに、PP製のハンドル69がスリーブ67の上部外周部に嵌合され、ボンネット55の上端部に配置している。
【0076】
鍔付き短管56はPPから作製されたものである。この鍔付き短管56の短管部70の軸線方向の一端には、半径方向外向きに突出する環状の鍔部71が設けられている。
【0077】
キャップナット57はPPから作製されたものである。キャップナット57は円筒状であり、軸線方向の一方の端部内周には弁本体53の雄ねじ部64に螺着される雌ねじ部72が設けられており、軸線方向の他方の端部には半径方向内向きに突出する環状突条部73が設けられている。キャップナット57は、鍔付き短管56の短管部70を環状突条部73内に挿入させ、鍔付き短管56の鍔部71をOリングを介して弁本体53の外側端面とこれと対向する環状突条部73の内側面との間に挟持した状態で弁本体53に螺着されている。
【0078】
継手部52は、継手本体74と、袋ナット75と、抜止リング76とを備える。継手本体74は、円筒状であり、軸線方向一端部の内周に、パイプ77が挿入される受口部78を有している。この受口部78の内周には2つの環状溝が軸線方向に並列に形成されており、これら環状溝内に各々シールリング79が配置されている。その他の構成は第一の実施形態と同様なのでここでは説明を省略する。
【0079】
また、本発明の第三の実施形態のダイヤフラムバルブのバルブ部51と継手部52を熱溶着により接合する手順や、継手部52にパイプ77を接続する手順とその作用については第一の実施形態と同様なのでここでは説明を省略する。
【0080】
なお、バルブ部51と継手部52がPVC製の場合、PVCは熱溶着が可能であると共に接着剤を用いて各部材を溶かして接着することが可能であるため、本実施形態と同様に熱溶着で接合しても良く、バルブ部51と継手部52とを接着剤を用いて溶かして一体的に接合しても良い。
【0081】
また、本実施形態ではシールリング79が2つ設けられているため、パイプ77を継手本体74の受口部78に挿入したとき、パイプ77の外周と継手本体74の受口部78の内周が2つのシールリング79により2重でシールされる。これにより、一方のシールリング79から流体が漏れたとしても他方のシールリング79が流体漏れを防止するため、シール性を向上させて接続部分の流体漏れを防止することができる。
【0082】
次に、本発明の第三の実施形態のダイヤフラムバルブを開閉させるときの動作について説明する。
【0083】
図8に示される全開状態からハンドル69を閉方向(時計回り)に回転すると、ハンドル69の回転に従ってステム68とステム68の下端部に設けられたコンプレッサ65が下降し、ダイヤフラム54が次第に下方に湾曲して行き、ついには弁本体53の仕切壁61の上面の弁座62に圧接され、第一流路59及び第二流路60が閉鎖されてダイヤフラムバルブが全閉状態となる。
【0084】
次に、ハンドル69を開方向(反時計回り)に回転すると、ハンドル69の回転に従ってステム68とステム68の下端部に設けられたコンプレッサ65が上昇し、ダイヤフラム54が弁座62から離間し、次第に上方に湾曲して開限度位置まで上昇し、第一流路59及び第二流路60が開放されてダイヤフラムバルブが全開状態(図8の状態)となる。
【0085】
本発明のバルブ部51と継手部52の各部材はPPで形成され、PP製のパイプ77に配管接続されているため、ダイヤフラムバルブは高温域での酸・アルカリに対する耐薬品性を有し、高温クリープ特性にも優れている。特にダイヤフラム54やシールリング79やOリングにフッ素ゴム製のものを用いると、高温域の耐薬品性を有する用途に加えてコンタミを嫌うような超純用途においても使用が可能となる。なお、ダイヤフラムバルブにおける高温域とは、ダイヤフラムバルブのシールの構成上60℃〜90℃の範囲を言う。また、本発明のダイヤフラムバルブを配管から取り外してバルブ(鍔付き短管56、キャップナット57を除いたバルブ部51)を交換する場合の作用については第一の実施形態と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0086】
また、本発明の他の実施形態として、バルブ部がゲートバルブの構成であっても良い(図示せず)。この場合、バルブ部がゲートバルブ構造である以外のバルブの構成や作用は第一の実施形態と同様である。
【0087】
以上、図示される実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は図示される実施形態に限定されるものではない。本発明のバルブ部1は、二方向の流路を有してバルブの開閉を行う構成でも良く、三方向以上の流路を有してバルブの開閉および/または連通する流路の切替を行う構成でも良い。また、流路の開閉や切替を行なう弁体は、回動や上下動して良く、回動の場合はボールバルブの構成が好適であり、上下動の場合はダイヤフラムバルブやゲートバルブの構成が好適である。また、バルブの駆動は、手動式、空気圧による空気駆動式、モーターなどによる電気駆動式などがあり、いずれでも良く特に限定されない。空気駆動式の場合、ハンドル12の代わりに空動式駆動部が、電気駆動式の場合は電動式駆動部(モーターなど)が、それぞれステム9に係合され自動式バルブが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第一の実施形態を示すボールバルブの縦断面図である。
【図2】図1のバルブ部と継手部の接続前の要部拡大縦断面図である。
【図3】図1の要部拡大縦断面図である。
【図4】図1のパイプ接続後の要部拡大縦断面図である。
【図5】図1のパイプ接続後に分解した状態を示す縦断面図である。
【図6】継手本体に突部を設けないときの実施形態を示す要部拡大縦断面図である。
【図7】本発明の第二の実施形態を示す他の継手部の要部拡大縦断面図である。
【図8】本発明の第三の実施形態を示すダイヤフラムバルブの縦断面図である。
【図9】従来のボールバルブを示す縦断面図である。
【図10】従来の異種管接合用配管器材を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 バルブ部
2 継手部
3 弁本体
4 弁体
5 弁体押さえ
6 鍔付き短管
7 キャップナット
10 雄ねじ部
15 短管部
16 鍔部
17 雌ねじ部
19 継手本体
20 袋ナット
21 抜止リング
23 雄ねじ部
24 突部
25 受口部
26 シールリング
28 管部
29 雌ねじ部
30 テーパ面
31 抜止リング収容部
35 押圧面
43 パイプ
51 バルブ部
52 継手部
53 弁本体
54 ダイヤフラム
55 ボンネット
56 鍔付き短管
57 キャップナット
63 鍔部
64 雄ねじ部
70 短管部
71 鍔部
72 雌ねじ部
74 継手本体
75 袋ナット
76 抜止リング
77 パイプ
78 受口部
79 シールリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプを接続するための少なくとも二つの接続部を有した弁本体と、前記パイプを通して該弁本体内に連通する少なくとも二方の流路の開閉又は切換を行なうための弁体と、短管部と該短管部の一端から半径方向外向きに延びる鍔部とを有する鍔付き短管と、内周面に雌ねじ部が設けられた円筒状本体部と一端部に半径方向内向きに突出する環状突条部とを有したキャップナットとを備え、前記鍔付き短管の前記短管部を前記キャップナットの前記環状突条部の内側に挿入した状態で前記弁本体の接続部の外周面に設けられた雄ねじ部に前記キャップナットの雌ねじ部を螺合させて前記接続部の端面と前記環状突条部との間に前記鍔付き短管の前記鍔部を挟持することにより前記鍔付き短管を前記弁本体に固定したバルブ部と、
一端部にパイプが挿入される受口部が設けられると共に、他端部に前記鍔付き短管の短管部に接合される管部が設けられており、前記受口部に挿入されるパイプに係止させるための環状の抜止リングを有する継手部と、
を具備し、前記鍔付き短管の前記短管部と前記継手部の前記管部とが溶かされて一体的に接合されることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記継手部が、一端部に螺着部が設けられ他端部に前記管部が設けられた継手本体と、前記螺着部に螺着される締結部材とを備え、
前記螺着部への前記締結部材の螺着により前記抜止リングを縮径させて前記パイプの外周面に係止させるようになっている、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記螺着部として前記継手本体の一端部の外周に雄ねじ部が設けられると共に、前記締結部材の内部に、前記継手本体の前記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部と、該雌ねじ部に連続して設けられ前記継手本体の一端部の端面に前記抜止リングの軸線方向端面が当接した状態で前記抜止リングを収容する抜止リング収容部とが設けられており、
前記抜止リング収容部の内周が前記締結部材の前記雌ねじ部から離れる方向に向かって漸次縮径するテーパ面を有すると共に、前記抜止リングの外周が前記抜止リング収容部の内周の前記テーパ面にスライド可能に接触するテーパ面を有している、請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記抜止リングが、前記パイプの外径よりも0.5〜3mm大きい内径を有する、請求項2又は請求項3に記載のバルブ。
【請求項5】
前記抜止リングが前記締結部材と共に回転可能になっている、請求項2から請求項4の何れか1項に記載のバルブ。
【請求項6】
前記継手部の前記管部の外径が前記キャップナットの前記環状突条部の内径より小さく、前記鍔付き短管の鍔部側の端面から前記継手部における前記管部と残余の部分との境界までの距離が前記キャップナットの軸線方向の長さよりも大きい、請求項1から請求項5の何れか1項に記載のバルブ。
【請求項7】
前記継手部における前記管部と前記残余の部分との境界に前記管部よりも大径の突部が設けられており、前記鍔付き短管の鍔部側の端面から前記継手部の管部側の前記突部の側面までの距離が前記キャップナットの軸線方向の長さよりも大きい、請求項1から請求項6の何れか1項に記載のバルブ。
【請求項8】
前記バルブ部及び前記継手部がオレフィン系樹脂で形成されている、請求項1から請求項7の何れか1項に記載のバルブ。
【請求項9】
前記バルブ部及び前記継手部がポリプロピレンで形成されている、請求項8に記載のバルブ。
【請求項10】
前記鍔付き短管の短管部に受口部が形成されると共に、前記継手部の管部に前記短管部の受口部内に嵌合可能な挿入部が形成され、前記短管部の受口部と前記管部の挿入部がソケット融着により接合される、請求項1から請求項9の何れか1項に記載のバルブ。
【請求項11】
前記バルブ部及び前記継手部が塩化ビニル樹脂で形成されており、前記鍔付き短管の短管部に受口部が形成されると共に、前記継手部の管部に前記短管部の受口部内に嵌合可能な挿入部が形成され、前記短管部の受口部と前記管部の挿入部が接着剤による接着により接合される、請求項1から請求項7の何れか1項に記載のバルブ。
【請求項12】
前記継手部の受口部の内周に少なくとも2つのシールリングが配置される、請求項1から請求項11の何れか1項に記載のバルブ。
【請求項13】
前記バルブ部が、ボールバルブ、ダイヤフラムバルブ及びゲートバルブのうちの何れかである、請求項1から請求項12の何れか1項に記載のバルブ。
【請求項14】
前記弁体が手動式、空動式及び電動式のうちの何れかで駆動される、請求項1から請求項13の何れか1項に記載のバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−144872(P2009−144872A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325107(P2007−325107)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】