説明

バルーンカテーテル

【課題】バルーン部の滑りを確実に防止しながら狭窄部を効果的に拡張でき、外部バルーンの破裂を防ぐことを可能にした安全性を高いバルーンカテーテルを提供すること。
【解決手段】本発明は、シャフトと、内側バルーンと、外側バルーンと、を備えるバルーンカテーテルであって、シャフトは、長手方向における後端側の端面から該シャフトの内部を通って内側バルーンの内部へと連通する内側バルーン連結ルーメンと、上記端面から該シャフトの内部を通って外側バルーンの内部へと連通する外側バルーン連結ルーメンとを有し、内側バルーンは、先端側の取付部(P)と後端側の取付部(Q)とでシャフトに取り付けられ、外側バルーンは、内側バルーンを被うように、先端側の取付部(R)と後端側の取付部(S)とでシャフトに取り付けられており、外側バルーンの径方向の伸び率が、300%以下であり、かつ、内側バルーンの径方向の伸び率よりも小さい、バルーンカテーテルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
食道、気管、胆管等の消化管や血管等の生体体腔に生じた狭窄部の治療には、バルーンカテーテルが用いられている。バルーンカテーテルを用いた治療では、外部からバルーンカテーテルを生体体腔に挿入し、バルーンを狭窄部に到達させ、そこでバルーンを膨らませることにより狭窄部を物理的に拡張できるため、高い治療効果が期待できるからである。
【0003】
従来のバルーンカテーテルのバルーンは、生体体腔内を抵抗なくなめらかに移動して狭窄部に到達することを可能にする材質で作られている。このため、バルーンカテーテルの狭窄部への到達はスムーズに実現され、スピーディーな治療と患者負担の軽減に大いに役立っている。
【0004】
一方、従来のバルーンカテーテルを用いた治療では、バルーンを膨らませる際にバルーンが滑って標的とする狭窄部からずれてしまうことが起こるため、術者の経験と慎重な操作が必要とされている。バルーンが滑って狭窄部からずれてしまった場合には、バルーンを収縮させて、バルーンを狭窄部の位置まで戻し、再度、慎重にバルーンを膨らませることが必要となり、手術時間の延長と患者負担を増すことになるからである。
【0005】
近年、二重構造のバルーン部を有し、予め内側のバルーンを膨張させてバルーン部を治療対象の狭窄部に密着させ、バルーン部の滑りを防止した上で、外側バルーンを膨張させて狭窄部を拡張するバルーンカテーテルが報告された(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−102354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の二重構造を有するバルーンカテーテルは、外側バルーン部が内側バルーン部より容易に拡張できること、すなわち、外側バルーンがより伸び易い原料で形成されることを特徴としているため、外側バルーンを膨張させても所期の内圧を得ることができず、外部バルーンの膨張にも限界があるため、治療効果を発揮できる程度にまで狭窄部を拡張できないのが現状である。外部バルーンの膨張限界を超えて過度に加圧してしまった場合には、バルーンが破裂し、患者を危険に曝すおそれもあるといえる。
【0008】
そこで本発明は、バルーン部の滑りを確実に防止しながら狭窄部を効果的に拡張でき、外部バルーンの破裂を防ぐことを可能にした安全性を高いバルーンカテーテルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、バルーン部の滑りを確実に防止しながら狭窄部を効果的に拡張可能なバルーンカテーテルの作製に成功し、以下の発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、シャフトと、内側バルーンと、外側バルーンと、を備えるバルーンカテーテルであって、上記シャフトは、長手方向における後端側の端面から該シャフトの内部を通って内側バルーンの内部へと連通する1以上の内側バルーン連結ルーメンと、上記端面から該シャフトの内部を通って外側バルーンの内部へと連通する1以上の外側バルーン連結ルーメンとを有し、上記内側バルーンは、上記シャフトの長手方向における先端側の取付部(P)と後端側の取付部(Q)とで、上記内側バルーン連結ルーメンから気体又は液体が注入されると膨らむように上記シャフトに取り付けられ、上記外側バルーンは、上記内側バルーンを外側から被うように、上記取付部(P)よりも上記先端側の取付部(R)と、上記取付部(Q)よりも上記後端側の取付部(S)とで、上記外側バルーン連結ルーメンから気体又は液体が注入されると膨らむように上記シャフトに取り付けられており、上記外側バルーンの径方向の伸び率が、300%以下であり、かつ、上記内側バルーンの径方向の伸び率よりも小さい、バルーンカテーテルを提供する。
【0011】
上記内側バルーンは、上記外側バルーンの長手方向における中央部よりも、上記シャフトの長手方向における先端側に取り付けられていることが好ましい。
【0012】
上記内側バルーンを上記外側バルーンの長手方向における中央部よりも上記シャフトの長手方向における先端側に取り付けることで、上記内側バルーンの数が1の場合であってもバルーン部の滑りをより効果的に抑制することができる。
【0013】
また、上記内側バルーンは複数個取り付けられていることが好ましい。上記内側バルーンを治療対象である狭窄部の形状等に合わせて複数個取り付けることで、バルーン部の滑り防止をさらに確実なものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバルーンカテーテルによれば、予め内側バルーンを狭窄部の前方で膨張させることによりバルーン部を治療対象となる狭窄部に固定し、滑りを防止しながら外側バルーンを膨張させて狭窄部を効果的に拡張できる。また、本発明のバルーンカテーテルは、所期の内圧を得て、治療効果を発揮できる程度まで外部バルーンを膨張させられるため、狭窄部の治療において高い治療効果を期待できるものである。さらに、本発明のバルーンカテーテルでは、外側バルーンが過度に膨張することがないため、バルーンの破裂に伴う危険を避けることができ、安全性の高い治療が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態に係るバルーンカテーテルの長手方向に対して水平な断面を示す概略図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係るバルーンカテーテルの長手方向に対して水平な断面を示す概略図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るバルーンカテーテルの内側のバルーンを膨張させて、外側バルーンを治療対象の狭窄部に密着させた状態を示す概略図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るバルーンカテーテルの外側のバルーンを膨張させて、治療対象の狭窄部を拡張した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。なお、同一の要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。また、図面の比率は説明のものとは必ずしも一致していない。
【0017】
本発明のバルーンカテーテルは、シャフトと、内側バルーンと、外側バルーンと、を備えるバルーンカテーテルであって、上記シャフトは、長手方向における後端側の端面から該シャフトの内部を通って内側バルーンの内部へと連通する1以上の内側バルーン連結ルーメンと、上記端面から該シャフトの内部を通って外側バルーンの内部へと連通する1以上の外側バルーン連結ルーメンとを有し、上記内側バルーンは、上記シャフトの長手方向における先端側の取付部(P)と後端側の取付部(Q)とで、上記内側バルーン連結ルーメンから気体又は液体が注入されると膨らむように上記シャフトに取り付けられ、上記外側バルーンは、上記内側バルーンを外側から被うように、上記取付部(P)よりも上記先端側の取付部(R)と、上記取付部(Q)よりも上記後端側の取付部(S)とで、上記外側バルーン連結ルーメンから気体又は液体が注入されると膨らむように上記シャフトに取り付けられており、上記外側バルーンの径方向の伸び率が、300%以下であり、かつ、上記内側バルーンの径方向の伸び率よりも小さいことを特徴としている。
【0018】
図1は、本発明の第一実施形態に係るバルーンカテーテルの長手方向に対して水平な断面を示す概略図である。
【0019】
図1に示されるバルーンカテーテル1Aは、外側シャフト2aの内腔7aに内側シャフト3aが挿入された二重筒式シャフトを備え、二重筒式シャフトの長手方向における先端側に、気体又は液体が注入されると膨らむ内側バルーン4a及び外側バルーン5aが取り付けられている。なお、内側バルーン4aは内側シャフト3aの長手方向における先端部に、先端側の取付部(P)10aと後端側の取付部(Q)11aとで取り付けられ、外側バルーン5aの先端側は内側シャフト3aの長手方向における先端部に、外側バルーン5aの後端側は外側シャフト2aの先端部に、それぞれ取付部(R)12a及び取付部(S)13aとで、内側バルーン4aを外側から被うように取り付けられており、内側シャフト3aの内腔8aは側孔9aを介して内側バルーン4aの内部へと連通し、外側シャフト2aと内側シャフト3aとの間の空間は、外側バルーン5aの内部と連通している。さらに、内側シャフト3aの先端には、先端チップ6が取り付けられている。
【0020】
外側シャフト2a及び内側シャフト3aからなる二重筒式シャフトの後端側の端面から、該シャフトの内部を通じて、内側バルーン4a又は外側バルーン5aの内部に気体又は液体を注入することができる。ここで、バルーンカテーテル1Aにおいては、内側シャフト3aの内腔8aが、長手方向における後端側の端面から二重筒式シャフトの内部を通って内側バルーンの内部へと連通する「内側バルーン連結ルーメン」に、外側シャフト2aと内側シャフト3aとの間の空間が、長手方向における後端側の端面から二重筒式シャフトの内部を通って外側バルーンの内部へと連通する「外側バルーン連結ルーメン」に相当するものである。
【0021】
外側シャフト2a及び内側シャフト3aの材料としては、抗血栓性に優れ可撓性のある高分子材料が好ましく、例えば、ナイロン11若しくはナイロン12等のポリアミド系樹脂又はポリアミドエラストマー、ポリプロピレン又はポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリウレタン、塩化ビニール等の可撓性を有する高分子材料、あるいはそれらの組み合わせが挙げられる。また、これら高分子材料は、抗菌剤又は抗炎症剤を含有していてもよい。なお、内側シャフト3aは、外側シャフト2aに比べて細径で屈曲し易いことから、耐屈曲性を向上させるため、ステンレス等の金属を材料に用いることも好ましい。
【0022】
外側シャフト2aの長手方向に対して垂直な断面の外側輪郭形状は、生体管腔への挿入の容易性及び剛性を確保するため、真円又は真円に近い楕円が好ましい。
【0023】
内腔7a及び内腔8aの長手方向に対して垂直な断面の形状は、円形が好ましい。
【0024】
外側シャフト2aの外径は、生体管腔への挿入の容易性、剛性及び柔軟性を確保するため、さらには内視鏡の内腔に挿入する場合があることから、1.0〜3.0mmが好ましい。内側シャフト3aの外径は、1.0〜2.0mmが好ましい。
【0025】
外側シャフト2a及び内側シャフト3aの長さは、先端部が治療対象の狭窄部に到達するのに十分な長さであればよいが、1000〜3000mmが好ましく、1500〜2500mmがより好ましい。
【0026】
内腔7a及び内腔8aの大きさは、体内で二重筒式シャフトが屈曲した場合であってもバルーン内部への気体又は液体の注入が困難とならないようにするため、内腔7a及び内腔8aそれぞれの長手方向に対して垂直な断面積の合計が、外側シャフト2aの長手方向に対して垂直な断面積の50〜90%であることが好ましい。
【0027】
内側シャフト3aに設けられた側孔9aは、直径0.3〜1.0mmの円形であることが好ましい。
【0028】
外側シャフト2aを及び内側シャフト3a製造する方法としては、例えば、射出成形法又は押出成形法が挙げられる。
【0029】
内側バルーン連結ルーメン又は外側バルーン連結ルーメンからバルーン内部へ注入される気体又は液体としては、例えば、水、生理食塩水又は空気、不活性ガスが挙げられる。これらの気体又は液体は、シリンジ等を用いて二重筒式シャフトの後端側の端面から内側バルーン連結ルーメン又は外側バルーン連結ルーメンに注入することができる。
【0030】
「バルーンの径方向の伸び率」とは、バルーンの材料の伸び率をプラスチックの引張試験の一つであるASTM D638法により測定した数値をいう。
【0031】
両端部が縮径された筒状の膜部材である外側バルーン5aの材料は、治療対象の狭窄部を効果的に拡張することが可能な0.6〜2.0MPaの内圧を得るために、バルーンの径方向の伸び率が300%以下であることが必要であるが、このような材料としては、例えば、ナイロン11若しくはナイロン12等のポリアミド系樹脂又はポリアミドエラストマー、ポリプロピレン又はポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン等を含む高分子材料が挙げられる。
【0032】
外側バルーン5aの膨張時の最大直径は、治療対象に合わせ適宜設定すればよいが、5〜30mmが好ましい。
【0033】
外側バルーン5aの長手方向の長さは、長いほど一度に広範な狭窄部を治療可能であるが、過度に長いと操作性が低下することから、30〜100mmが好ましく、40〜60mmがより好ましい。
【0034】
外側バルーン5a同様、両端部が縮径された筒状の膜部材である内側バルーン4aの材料は、バルーンの径方向の伸び率が外側バルーンの径方向の伸び率よりも大きいことが必要であるが、このような材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー又はポリウレタンが挙げられる。なお、膨張時の内側バルーン4aの内圧は、0.1〜0.6MPaが好ましい。
【0035】
内側バルーン4aの膨張時の最大直径は、外側バルーン5aとの間隙を少なくして内側バルーン4aの位置を安定させるため、外側バルーン5aの膨張時の最大直径の80〜100%であることが好ましい。
【0036】
内側バルーン4aの長手方向の長さは、5〜30mmが好ましい。
【0037】
内側バルーン4a及び外側バルーン5aの形状としては、球状又は筒状が好ましい。
【0038】
内側バルーン4a及び外側バルーン5aを製造する方法としては、例えば、ブロー成形法又はディッピング成形法が挙げられる。
【0039】
内側バルーン4a及び外側バルーン5aは、取付部(P)〜(S)でそれぞれ二重筒式シャフトに取り付けられているが、取り付けの方法としては、例えば、接着剤による接着、熱収縮チューブを被覆して熱風を当てる熱溶着又は、レーザー、溶剤若しくは超音波による融着が挙げられる。
【0040】
外側バルーン5a及び外側シャフト2aの外表面には、挿入時の摩擦抵抗を低減するため、コーティング剤を表面コートするか、潤滑剤を塗布してもよい。表面コートに用いる上記コーティング剤としては、例えば、セルロース系、ポリエチレンオキサイド系、無水マレイン酸系、アクリルアミド系のコーティング剤が挙げられる。また、上記潤滑剤としては、例えば、シリコーンオイル、オリーブオイル又はグリセリンが挙げられる。
【0041】
患者の体内への挿入を容易にするために設ける先端チップ6は、テーパー加工されていることが好ましく、患者の体内を損傷しないよう、その先端は丸められていることが好ましい。
【0042】
先端チップ6の材料としては、適度の柔軟性及び耐屈曲性を有する弾性材料が好ましいが、そのような材料としては例えば、ポリアミドエラストマー又はポリウレタンが挙げられる。
【0043】
先端チップ6の外径は外側シャフト2aの外径より小さいことが好ましく、先端チップ6の長手方向の長さは、耐屈曲性を確保するため、20mm以下が好ましく、10〜15mmがより好ましい。
【0044】
先端チップ6を二重筒式シャフトに取り付ける方法としては、例えば、接着剤による接着又はレーザー、溶剤若しくは超音波による融着が挙げられる。
【0045】
図2は、本発明の第二実施形態に係るバルーンカテーテルの長手方向に対して水平な断面を示す概略図である。
【0046】
図2に示されるバルーンカテーテル1Bは、内側バルーン4bに加えて内側バルーン4cが取り付けられたバルーンカテーテル、すなわち、内側バルーンが複数個取り付けられているバルーンカテーテルである。
【0047】
より具体的には、バルーンカテーテル1Bはバルーンカテーテル1A同様、外側シャフト2bの内腔7bに内側シャフト3bが挿入された二重筒式シャフトを備え、二重筒式シャフトの長手方向における先端側に、気体又は液体が注入されると膨らむ内側バルーン4b及び4c並びに外側バルーン5bが取り付けられている。なお、内側バルーン4b及び4cは内側シャフト3bの長手方向における先端部に、先端側の取付部(P)10b及び10cと後端側の取付部(Q)11b及び11cでそれぞれ取り付けられ、外側バルーン5bの先端側は内側シャフト3bの長手方向における先端部に、外側バルーン5bの後端側は外側シャフト2bの先端部に、それぞれ取付部(R)12b及び取付部(S)13bで、内側バルーン4b及び4cを外側から被うように取り付けられている。ここで、内側シャフト3bは内腔8b及び8cの2つの内腔を有しており、内腔8cは側孔15を介して外側バルーン5bの内部へと連通し、内腔8bは側孔9bを介して内側バルーン4bの内部へと連通している。さらに、外側シャフト2bと内側シャフト3bとの間の空間は、側孔14を介して内側バルーン4cの内部と連通している。なお、内側シャフト3bの先端には、先端チップ6が取り付けられている。
【0048】
バルーンカテーテル1Bはバルーンカテーテル1A同様、外側シャフト2b及び内側シャフト3bからなる二重筒式シャフトの後端側の端面から、該シャフトの内部を通って、内側バルーン4b若しくは4c又は外側バルーン5bの内部に気体又は液体を注入することができる。ここで、バルーンカテーテル1Bにおいては、内側シャフト3bの内腔8b及び外側シャフト2bと内側シャフト3bとの間の空間が、長手方向における後端側の端面から二重筒式シャフトの内部を通って内側バルーンの内部へと連通する「内側バルーン連結ルーメン」に、内側シャフト3bの内腔8cが、長手方向における後端側の端面から二重筒式シャフトの内部を通って外側バルーンの内部へと連通する「外側バルーン連結ルーメン」に相当するものである。このような構成を採ることにより、内側バルーン4b若しくは4c又は外側バルーン5bを個別に膨らませることが可能となる。
【0049】
図3は、本発明の第一実施形態に係るバルーンカテーテルの内側のバルーンを膨張させて外側バルーンを治療対象の狭窄部に密着させた状態を示す概略図であり、図4は、さらに本発明の第一実施形態に係るバルーンカテーテルの外側のバルーンを膨張させて治療対象の狭窄部を拡張した状態を示す概略図である。
【0050】
バルーンカテーテル1Aの先端部を治療対象である狭窄部よりもさらに奥に挿入し、内側バルーン4aを膨らませてから術者の手元側に引くと、図3のように膨らんだ内側バルーン4aは狭窄部を再び通過することができず、外側バルーン5aが膨らむまでの間、外側バルーン5aを治療対象の狭窄部に密着させることが可能である。
【0051】
なお、バルーンカテーテル1Bのように内側バルーンが複数個取り付けられている場合には、内側バルーン4bを膨らませてから術者の手元側に引き、さらに内側バルーン4cを膨らませて狭窄部を挟み込むことで、外側バルーン5bが完全に膨らむまでの間、外側バルーン5bを治療対象の狭窄部により密着させることが可能である。しかしながら、バルーン部の滑りが生じ易いのは瞬間的に大きな圧力変化が生じる外側バルーン5a又は5bの膨らみ始めの時期であることから、内側バルーンの数が1であっても、十分な滑り防止効果を得ることは可能である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明のバルーンカテーテルの具体的な実施例を、図を交えて説明する。なお、「長さ」というときは、長軸方向における長さを表すものとする。
【0053】
(実施例)
ブロー成形法により、ナイロン12製であって、最大直径25mm、長さ65mmの外側バルーン5aを作製した。外側バルーン5aの径方向の伸び率は130%であった。
【0054】
同じくブロー成形法により、ポリウレタン製であって、最大直径25mm、長さ25mmの内側バルーン4aを作製した。内側バルーン4aの径方向の伸び率は600%であった。
【0055】
射出成形法により、ナイロン製であって、外径3.0mm、内径2.4mm、長さ1500mmの、内腔7を有する筒状の外側シャフト2aを作成した。
【0056】
同じく射出成形法により、ナイロン製であって、外径1.7mm、内径1.1mm、長さ1600mmの、内腔8を有する筒状の内側シャフト3aを作製した。内側シャフト3aの先端から長さ14mm及び22mmの位置に、いずれも直径0.6mmの円形の側孔9aを2つ設けた。
【0057】
外側シャフト2aの内腔7aに内側シャフト3aを挿入し、二重筒式シャフトを作製した。
【0058】
内側シャフト3aの先端から長さ6mmの位置を取付部(P)10aとし、その外周に内側バルーン4aの先端部を合わせて、熱溶着で固定した。次に、内側シャフト3aの先端から長さ30mmの位置を取付部(Q)11aとし、その外周に内側バルーン4aの後端部を合わせて、熱溶着で固定した。
【0059】
内側シャフト3aの先端から長さ6mmの位置を取付部(R)12a、外側シャフト2の先端から長さ83mmの位置を取付部(S)13aとし、外側バルーン5aの先端部及び後端部をそれぞれに合わせて、内側バルーン4aを外側から覆うようにして熱溶着で固定した。
【0060】
内側シャフト3aの先端に、ポリウレタン製であって、先端側の直径2.2mm、後端側の直径3.3mm、長さ25mmの先端チップ6を接着剤を用いて取り付け、バルーンカテーテル1A(以下、実施例バルーンカテーテル)を完成した。
【0061】
(比較例)
ディッピング成形法により、天然ゴム製であって、最大直径25mm、長さ70mmの外側バルーンを作製した。外側バルーンの径方向の伸び率は、800%であった。
【0062】
ブロー成形法により、ナイロン12製であって、最大直径25mm、長さ25mmの内側バルーンを作製した。外側バルーンの径方向の伸び率は、130%であった。
【0063】
上記の外側バルーン及び内側バルーンを用いた以外は、実施例とまったく同一の作業を行い、比較例バルーンカテーテルを作製した。
【0064】
(バルーンカテーテルを用いた拡張試験)
実施例バルーンカテーテル及び比較例バルーンカテーテルをそれぞれ3つずつ用意し、それぞれの内側バルーン連結ルーメン及び外側バルーン連結ルーメンに、それぞれ個別にシリンジを接続した。
【0065】
内径30mm、長さ600mmのホース内に、シリコーン樹脂製充填材(ショア硬度45A)を用いて、食道狭窄部モデル(内径5mm、長さ15mm)を作製した。
【0066】
上記の食道狭窄部モデルに、実施例バルーンカテーテル又は比較例バルーンカテーテルを0.038インチのガイドワイヤーに沿って挿入し、それぞれのシリンジから生理食塩水を注入して内側バルーン、外側バルーンを段階的に膨らませることで、狭窄部の拡張が可能であるか否かを検証した。
【0067】
その結果、実施例バルーンカテーテル又は比較例バルーンカテーテルのいずれについても、バルーン部が膨張する際の滑りを防止することができた。しかしながら、比較例バルーンカテーテルは、外側バルーンの内圧が0.15MPa(3つの比較例バルーンカテーテルの平均値)にしか達せず、狭窄部を挟む形で亜鈴状に膨らむことしかできないことから、狭窄部の効果的な拡張も達成されなかった。
【0068】
一方で、実施例バルーンカテーテルの外側バルーン5aの内圧は0.6MPa(3つの実施例バルーンカテーテルの平均値)に達し、狭窄部内で最大直径25mmまで問題なく膨らんで狭窄部を十分拡張することができた。
【0069】
以上の結果から、本発明のバルーンカテーテルは、バルーン部の滑りを確実に防止するのみならず、狭窄部の拡張に必要十分な膨張力が問題なく得られるため、狭窄部を効果的に拡張できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、医療用具であるバルーンカテーテルに適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1A,1B・・・バルーンカテーテル、2a,2b・・・外側シャフト、3a,3b・・・内側シャフト、4a,4b,4c・・・内側バルーン、5a,5b・・・外側バルーン、6・・・先端チップ、7a,7b,8a,8b,8c・・・内腔、9a,9b,14,15・・・側孔、10a,10b,10c・・・取付部(P)、11a,11b,11c・・・取付部(Q)、12a,12b・・・取付部(R)、13a,13b・・・取付部(S)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、内側バルーンと、外側バルーンと、を備えるバルーンカテーテルであって、
前記シャフトは、長手方向における後端側の端面から該シャフトの内部を通って内側バルーンの内部へと連通する1以上の内側バルーン連結ルーメンと、前記端面から該シャフトの内部を通って外側バルーンの内部へと連通する1以上の外側バルーン連結ルーメンとを有し、
前記内側バルーンは、前記シャフトの長手方向における先端側の取付部(P)と後端側の取付部(Q)とで、前記内側バルーン連結ルーメンから気体又は液体が注入されると膨らむように前記シャフトに取り付けられ、
前記外側バルーンは、前記内側バルーンを外側から被うように、前記取付部(P)よりも前記先端側の取付部(R)と、前記取付部(Q)よりも前記後端側の取付部(S)とで、前記外側バルーン連結ルーメンから気体又は液体が注入されると膨らむように前記シャフトに取り付けられており、
前記外側バルーンの径方向の伸び率が、300%以下であり、かつ、前記内側バルーンの径方向の伸び率よりも小さい、バルーンカテーテル。
【請求項2】
前記内側バルーンは、前記外側バルーンの長手方向における中央部よりも、前記シャフトの長手方向における先端側に取り付けられている、請求項1記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記内側バルーンは、複数個取り付けられている、請求項1又は2記載のバルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−152181(P2011−152181A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13786(P2010−13786)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】