説明

バレル研磨装置

【課題】複雑な形状のワークをバレル研磨する場合に、そのワークの箇所により、過研磨の箇所と未了研磨の箇所いわゆる研磨ムラが生じやすく、一定品質の研磨ができない点である。
【解決手段】研磨媒体を収容する研磨媒体収容槽内において、ワークと研磨媒体とが擦れ合って生ずる摩擦によりワークの表面を研磨するバレル研磨方法において、ワークの自転運動、上下運動、振り子運動を、互いに連動することなく独立させて運動させ、ワークが研磨媒体収容槽内において特定軌道を描くことができないようにしたバレル研磨方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属等表面研磨する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バレル研磨とは、被加工物(以下ワークとする。)と研磨石、コンパウンド、水(水を混合いない場合もある。)を一定の割合で混合して(以下、この混合物を研磨媒体とする。)研磨槽に入れ、ワークを運動させるか、研磨槽を運動させるか、あるいはワークと研磨槽の両方に運動をさせて、ワークと研磨媒体とが擦れ合って生ずる摩擦によりワークの表面を研磨する方法である。
【0003】
このバレル研磨を行う装置として以下のような先行技術がある。研磨槽の中心線に対して、工作物支持軸を傾斜して保持すると共に、工作物を公転および自転させるようにしたジャイロ研磨方法及び機械(特許文献1)、研磨媒体収容槽と基台とこの基台に進退手段を介して前記研磨槽の方向に進退可能に設置されたスライド板とこのスライド板に設置された電動回転駆動手段とこの電動回転駆動手段に設けられ前記スライド板の進退方向に沿って配置された回転シャフトとこの回転シャフトの先端部に設置されたワークを取り付けるためのワーク取付具とからなるバレル研磨装置(特許文献2)、研磨媒体の盛り上がりをこの加圧板によって邪魔することによって、ワークに対する研磨媒体の面圧を所定以上に維持しやすくしたバレル研磨(特許文献3)等がある。さらに、ワークを研磨槽の研磨媒体中に下降し、軸心を中心として回転させ円弧軌道に沿って移動されこの移動により水平面に対して傾斜した状態にし、この傾斜を維持したまま直線軌道で移動されることで研磨されるように制御される研磨装置(特許文献4)がある。
【0004】
上記各特許文献にはそれぞれ優れた特徴を有している。例えば、特許文献1の発明では、研磨槽の中心線に対して、工作物支持軸を傾斜して保持すること、特許文献2の発明では、回転駆動手段に流れる電流を検知して進退手段をコントロールすること、特許文献3の発明では研磨媒体を押圧するための加圧板を設けたもの、更には、特許文献4の発明では、研磨槽内でワークの動きを一定にして研磨すること等である。
【0005】
長年金属の表面研磨を業として行ってきた本発明者は、上記の各研磨装置に比較し、複雑な形状のワークであっても、研磨未了の箇所が生じないいわゆるムラの少ない研磨方法がないか、更に、短時間で研磨でき製造費が安価である研磨装置がないか検討を重ねてきた。
【0006】
そして、本願発明者は、これまでの先行技術では、ワークを研磨媒体に接触させるため、ワークを研磨媒体中にて特定軌道の運動をさせていることに気付いた。また、研磨媒体収容槽を回転等する場合でも、ワークから見ると、相対的には、ワークは研磨媒体中にて特定軌道の運動をさせていることになることにも気付いた。ワークが研磨媒体中にて特定軌道の動きをすることは、複雑な形状のワークにあっては、研磨媒体と多頻度で接触する箇所とそうでなく研磨媒体との接触回数が少ない箇所が生じ、研磨し過ぎの過研磨の箇所と、必要な研磨がされていない未了研磨の箇所いわゆる研磨ムラが生ずることが、本発明者のこれまでの経験から明らかであった。例えば、上記特許文献4の発明では、ワークの動きを研磨媒体中にて、ワークの向きを変え、ワークを降下しながら揺動運動させ、さらにワークが最低位置にくると揺動運動を止めて元の位置に戻すという特定軌道の運動をさせているが、過研磨と未了研磨の箇所ができるだけでなく、ワークの向き等を変える時間も必要であり、全体として研磨時間が長くなってしまうという難点があることに注目した。更に、研磨媒体中にてワークを特定軌道の運動をさせることで、研磨作業に寄与しない研磨媒体すなわち使用しない研磨媒体が多く生ずることも分かっていた。そこで、本発明者は、研磨媒体内でワークの運動を特定することなく、ワークの自転、上下運動、振り子運動を互いに関連することなく、各々独立して、自由に運動させることにより、研磨ムラが少なく、短時間でより効果的な研磨ができることを見い出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−228366号公報
【特許文献2】特開平11−21660号公報
【特許文献3】特開2000−15553号公報
【特許文献4】特開2001−353654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする問題点は、複雑な形状のワークをバレル研磨する場合に、そのワークの箇所により、過研磨の箇所と未了研磨の箇所いわゆる研磨ムラが生じやすく、一定品質の研磨ができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、ワークが研磨媒体中にて特定軌道を運動することなく、自在な運動により研磨ムラを少なくし、さらに研磨時間を短縮させることを特徴とするものである。
【0010】
先ず、第1発明は、研磨媒体を収容する研磨媒体収容槽内において、ワークと研磨媒体とが擦れ合って生ずる摩擦によりワークの表面を研磨するバレル研磨方法において、ワークの自転運動、上下運動、振り子運動を、互いに連動することなく独立させて運動させ、ワークが研磨媒体収容槽内において特定軌道を描くことができないようにしたバレル研磨方法である。
【0011】
バレル研磨については、前述の通りである。バレル研磨には、水を使用する湿式法と水を使用しない乾式法があるが、本方法はいずれにも適用できる。
ワークの自転運動とは、ワークそのものが回転する運動をいう。ワークがある箇所を中心として研磨媒体中にて回転する場合には公転というものとする。なお、ワークの上下運動とは、ワークの下降、上昇する運動であり垂直であるか傾斜を伴うものであるかは問わない。ワークの振り子運動とは、ワークを取り付けた軸の一端と反対側の軸の一端を中心として左右あるいは前後のいずれかに移動する振り子運動又は左右と前後を同時に移動する振り子運動をいう。ここで振り子運動の左右あるいは前後とは、この方法を具現化した装置を正面から見たときの左右又は前後の方向をいうものとする。振り子運動では、左右と前後を同時に行えば、ワークが上下方向に停止している場合には、水平面に対し円弧状を描くことになる。
【0012】
「互いに連動することなく、独立して運動させ」とは、上下運動により、ワークが研磨媒体収容槽内の最上位又は最下位になったときに、振り子運動は停止する又はその方向を変るというような上下運動と振り子運動が何らかの連動することなく、上下運動と振り子運動は独立に運動するものである。したがって、ワークが研磨媒体収容槽内の最上位になったとき、振り子運動は、その位置とは関係なく継続し、前後あるいは左右又は前後・左右のいずれかの方向に振られるか定めることができないものである。また、言うまでもなく自転運動も、上下運動、振り子運動とは何ら連動することなく自転を継続する。そのため、ワークは、研磨媒体収容槽内で常に決められた軌道すなわち特定軌道の運動をすることができず、常時不確定な軌道を描くことになる。
【0013】
続いて、第2発明は、研磨媒体を収容する研磨媒体収容槽内において、ワークと研磨媒体とが擦れ合って生ずる摩擦によりワークの表面を研磨するバレル研磨装置において、ワークの自転運動、上下運動、振り子運動を、互いに連動することなく独立させて運動させ、ワークが研磨媒体収容槽内において特定軌道を描くことができないようにしたバレル研磨装置である。
【0014】
第1発明の技術的方法を装置として具現化するものである。ワークの自転運動、上下運動、振り子運動は、前述の通りである。本バレル研磨装置は、下記の実施例において説明する。
【0015】
続いて、第3発明は、ワークの自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びに各運動の作業時間を所定範囲内にて変えることができる第2発明のバレル研磨装置である。
【0016】
ワークの自転運動、上下運動、振り子運動の各運動は、それぞれ他の運動とは関係なく、停止することができ、さらに所定の範囲内にて、各運動の速さを変化することができるものである。なお、各運動の中には停止すること及び停止後各運動を再開することも含まれ、こうした各運動や停止、更には後述する研磨媒体収容槽の回転及び停止も作業とする場合がある(以下同じ。)。従って、上下運動を停止し、自転運動と振り子運動だけでバレル研磨することや、自転運動と上下運動だけでバレル研磨することも可能である。また、振り子運動の周期は、上下運動の速度に関係なく決めることができ、ワークの自転も速さ並びにその時間も所定の範囲内にて自在に定めることができる。
【0017】
続いて、第4発明は、第3発明のバレル研磨装置を用い、ワーク毎の適切な自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びに各運動の作業時間についての条件を見出し、この適切な条件にて行う第1発明のバレル研磨方法である。
【0018】
ワーク毎に形状は異なっている。そのためにワーク毎に適切な自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びに各運動の作業時間等の条件が存在する。更には1のワークにおいて、荒削り、中削り等の工程を行っていく場合もあり、そのためにバレル研磨時間の経過とともに自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びにそれらの各作業時間を変化させていく場合もある。新たなワークを研磨する場合、これまでの経験と試行錯誤により、このワークの適切な各運動の停止及び速さ並びにこうした各作業時間等の条件が見い出される。第4発明は、この見出された適切な条件により行う第1発明のバレル研磨方法である。
【0019】
続いて、第5発明は、ワーク毎の自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びに各運動の作業時間を記録し、更に、ワーク毎に見い出された適切な自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びに各運動の作業時間を記録し、その適切な条件を再現することができる設備を備えた第3発明のバレル研磨装置である。
【0020】
第5発明は、第4発明の技術的方法を具現化するものである。これまでの経験と試行錯誤により、1のワーク毎に作業時間を含めた研磨ムラのない適切な作業条件が決められる。この作業条件を決めるに際し、その作業の経過が記録され、その記録の中から適切な作業条件が見出され、この適切な作業条件を再現することができれば、試行錯誤の段階から研磨ムラのない通常の作業に至るまでの一連の流れをスムーズに行うことができる。こうした記録や再現する手段としては、電子的方法が挙げられる。
【0021】
続いて、第6発明は、研磨媒体を収容する研磨媒体収容槽が停止及び平面的な回転とその回転速度並びにその各作業時間を所定範囲内にて変えることができる第2発明、第3発明及び第5発明のいずれかのバレル研磨装置である。
【0022】
ワークを研磨媒体中にて運動させるだけでは、ワークと研磨材との接触が不十分な場合もある。そこで研磨媒体収容槽も平面的に回転させ、ワークと研磨媒体をより頻度よく接触させようとするものである。研磨媒体収容槽が平面的な回転としたのは、バレル研磨では研磨媒体収容槽は、平面的な回転だけでなく、3次元的な回転をする場合があるため、ここでは平面的な回転に限定したものである。研磨媒体収容槽は停止してバレル研磨する場合もあり、また所定の速度で左回転あるいは右回転してバレル研磨する場合もある。
【0023】
続いて、第7発明は、第6発明のバレル研磨装置を用い、ワーク毎の適切な自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びに研磨媒体収容槽の停止及び回転速度と、それらの各作業時間の条件を見い出し、この適切な条件にて行う請求項1のバレル研磨方法である。
【0024】
第8発明は、ワーク毎の自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ、並びに研磨媒体収容槽停止及び回転速度とそれらの各作業時間を記録し、更に、ワーク毎に見いだされた適切な自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ、並びに研磨媒体収容槽の停止及び回転速度と、それらの作業時間の条件を見い出し、この適切な条件を記録し、その条件を再現する設備を備えた第6発明のバレル研磨装置である。
【0025】
第8発明は、第5発明と同趣旨の発明であり、試行錯誤の段階から通常の作業に至るまでの一連の流れをスムーズに行うことができるものである。
【発明の効果】
【0026】
第1発明の方法により、先行技術のように、ワークが研磨媒体中にて特定軌道を描くことを回避できるため、研磨ムラが少なく、短時間でより効果的なバレル研磨が実現できる。第2発明は、第1発明を具現化したバレル研磨装置であり、第3発明では、ワーク毎の形状により作業条件を決めることができ、第4発明ではかかる作業条件を第1発明に加えたバレル研磨方法を示すものである。第5発明では、ワーク毎のバレル研磨条件を検討し、通常の作業までの一連の流れをスムーズにするものである。
【0027】
また、第6発明は、研磨媒体収容槽にも平面的な回転を与え、よりワークと研磨媒体が接触し易くしたものであり、第7発明は、研磨媒体収容槽の回転、停止も含んだ適切なバレル研磨方法を提供し、第8発明では、研磨媒体収容槽の回転、停止も含んだ適切なバレル研磨条件を通常の作業にスムーズにつなげるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、バレル研磨装置の概略側面図を示す。
【図2】図2は、ワークが下降し研磨媒体収容槽に入った状態を示す。
【図3】図3は、バレル研磨機と操作盤及びパソコンの連絡図を示す。
【図4】図4は、バレル研磨機の操作盤を示す。
【図5】図5は、試作品での傾斜板が略垂直の状態を示す。
【図6】図6は、試作品での傾斜板が傾斜した状態を示す。
【図7】図7は、1のワークを研磨される状態を示す。
【図8】図8は、複数の同種ワークを研磨する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施する代表例を以下に示す。
【実施例1】
【0030】
図1は、バレル研磨装置の概略側面図を示す。基台2上の支持柱21にリフター22が取り付けられ、移動板アーム24と振り子運動シリンダー5が固定されたリフター移動板23が支持柱21に沿って上下にスライドする。移動板アーム24には、傾斜板3と上下スライド板31が付けられている。傾斜板3には、上下スライド板31と上下スライド板31を上下に運動させる上下運動シリンダー4とが付けられ、上下スライド板31には、ワーク7を把持し回転させる自転軸32と、この自転軸32を回転させる自転軸駆動モータ33が付けられている。振り子運動シリンダー5は、傾斜板3に連結され、振り子運動シリンダー5の伸縮により、傾斜板3は前後の振り子運動を生じ、自転軸32も前後の振り子運動を生じる。また、基台2上に回転盤62が付けられ回転盤62に研磨媒体収容槽6が固定され、回転盤62の回転により研磨媒体収容槽6が平面的に回転する。
【0031】
図2は、ワークが下降し研磨媒体収容槽に入った状態を示す。ワーク等の状態を破線で表わす。但し各部署の符号は図1と同じのため省いている。図1、図2では振り子運動は、前後運動に限られているが、図示しないが移動板アームに左右の動きを生じるシリンダーを付けることにより、左右の振り子運動も可能になる。
【実施例2】
【0032】
図3は、バレル研磨機と操作盤及びパソコンの連絡図を示す。ここでは振り子運動は、前後運動に限定して説明する。操作盤8またパソコン9から操作盤8を通し、いずれの場合からもバレル研磨装置1の作業を制御することができる。図4に示された操作盤8の各スイッチ番号の機能について説明する。
先ず、1から5及び18は、操作表示ランプである。
1 電源ランプ 装置に電源がきているときにオン
2 各個ランプ 各個自動切換えスイッチ(切り替えスイッチ9とする。)9が各個のときオン
3 自動ランプ 切換えスイッチ9が自動のときオン
4 原位置ランプ 作業の最初の状態であるリフター22が上限にあり、上下運動のシリンダー4が下限(最短になっている。) にあって、ワーク7が研磨媒体収容槽6の上方にあり、振り子運動のシリンダー5が下限(最短になって、自転軸が垂直になっているとき)にあるとき点灯する。切り替えスイッチ9が各個、自動いずれの場合も上記の条件にあるときには点灯する。
5 運転準備ランプ 作業の最初の状態であるリフター22が上限にあり、上下運動シリンダー4、振り子運動シリンダー5が上記4の原位置ランプの原点の位置にあって、スイッチ9を自動にしているとき点灯する。
6 上下運動スイッチ 切り替えスイッチ9が自動になっている場合のみ機能する。固定のときには、上下運動シリンダー4の上限あるいは下限に固定でき、自動側では上下運動をする。
7 振り子運動スイッチ 切り替えスイッチ9が自動になっている場合のみ機能する。固定のときには、振り子運動シリンダー5の上限あるいは下限に固定でき、自動側では振り子運動をする。
8 自転スイッチ 切り替えスイッチ9が自動の場合には「切」、「入」いずれの場合も自転する。固定の場合には、「入」のときのみ回転する。
9 各個、自動切換えスイッチ(切り替えスイッチ)
各個のときにのみスイッチ10、11,12が機能する。
10 各個上下スイッチ 切り替えスイッチ9が各個のとき上下運動シリンダー4の上限あるいは下限に固定することができる。
11 各個振り子スイッチ 切り替えスイッチ9各個のときに振り子運動シリンダー5の上限あるいは下限に固定できる。
12 各個リフタースイッチ 切り替えスイッチ9が各個のときにリフター22が上限あるいは下限に固定できる。このリフター22はワークの自転、上下運動、振り子運動を行うすべての機構を支持するリフター移動板23を上下させる。切り替えスイッチ9が自動のときには、作業の最初にワーク7を研磨媒体収容槽6内に降ろし、研磨終了後にワーク7を研磨媒体収容槽6の上方に上げることは自動化されている。
13 ワーク自転方向スイッチ。正転は時計回り、正転は反時計ができる。
14 自転速度設定スイッチ インバータ制御により自転速度を決めることができる。
15 正転時間設定スイッチ 正転の時間を決める。
16 逆転時間設定スイッチ 逆転の時間を決める。
17 回転盤スイッチ 回転盤62の電源ON&OFFスイッチ
18 回転盤の電源ランプ 回転盤62の図示しない駆動モータに電源がきているとき点灯
19 回転盤方向スイッチ 回転盤62回転方向を決めるスイッチ。
20 回転速度設定スイッチ インバータ制御により回転速度を決めることができる。
21 正転時間設定スイッチ 正転の時間を決める。
22 逆転時間設定スイッチ 逆転の時間を決める。
手元スイッチ10は、切り替えスイッチ9が自動のときのみ作動する。ワーク7を取り付けた後、この手元スイッチ10を押すと、自転軸32が自転しつつ、ワーク7が研磨媒体収容6内に下降し、上下運動、振り子運動が始まる。なお、回転盤の制御機構は、1から16までのスイッチや手元スイッチとは関係なく、17から22までのスイッチにて行われ、切り換えスイッチ9とも連動していない。
【0033】
ワークの研磨手順を以下に説明する。新規なワークでは、その形状により自転、上下運動、振り子運動で研磨媒体収容槽6の内壁にワーク7が接触する場合もある。ワーク7をワーク把持部34に取り付け、磨媒体収容槽6に下降させて自転、上下運動、振り子運動を試みる。
(1) 切り替えスイッチ9を各個にして、ワーク7を自転軸32のワーク7把持部28に取り付ける。このときワーク7の把持部34は図2の実線の位置にある。
(2) 切り替えスイッチ9を各個とした状態で、リフタースイッチ12を下降にして、ワーク7を研磨媒体収容槽6内に下げる。次に各個上下スイッチ10にて上下運動、または各個振り子スイッチ11にて振り子運動をさせて、ワーク7が研磨媒体収容槽6の内壁に接触するかどうかの確認を行う。
(3) ワーク7が研磨媒体収容槽6内に接触しないことが確認できれば、自転スイッチ8を自転にして、自転した場合でもワーク7が研磨媒体収容槽6内壁と接触しないかどうかを確かめる。このような確認作業のために切り替えスイッチ9、各個上下スイッチ10、各個振り子スイッチ11、各個リフタースイッチ12がある。
【0034】
通常の研磨作業の場合には以下のような手順で行う。
(1) 上下運動スイッチ6、振り子運動スイッチ7、自転スイッチ8は「入」になっていることを確かめ、切り替えスイッチ9を自動にする。
(2) ワーク7の自転方向、正転(時計回り)のみ、逆転(反時計回り)のみ、あるいは双方をあわせた自転のいずれかをワーク自転方向スイッチ13で決めて、自転速度を自転速度設定スイッチ14、正転時間を正転時間設定スイッチ15、逆転時間を逆転時間設定スイッチ16にて設定する。
(3) ワーク7をワーク把持部34に取り付けた後、手元スイッチ10を押してオンにする。自転軸駆動モータ33が動きワーク7が自転し始め、さらにリフター22によりワーク7は研磨媒体収容槽6内にはいる。次に上下運動シリンダー4、振り子運動シリンダー5が動き、研磨媒体収容槽6内でワーク7は自転、上下運動、振り子運動をする。正転、逆転が所定時間経過すると自転、上下運動、振り子運動は止まりリフター22によりワーク7は上昇し、元に位置に戻り、ワーク把持部34より取りはずされる。
なお、ワークの形状により、自転運動と上下運動あるいは自転運動と振り子運動のみとしたい場合には、振り子運動スイッチ7を固定とし、あるいは上下運動スイッチ6を固定として切り替えスイッチ9を自動にしておけばよい。
(4) 必要に応じ、研磨媒体収容槽6の回転もスイッチ17からスイッチ22により設定する。
【0035】
いわゆるムラのない均一な研磨ができる条件は、ワーク毎に異なる。ここで条件とは、自転、上下運動、振り子運動の速さ、それらの各運動時間、研磨媒体収容槽の回転、及びその時間等である。更に自転、上下運動、振り子運動、研磨媒体収容槽の回転の有無も含まれる。こうした多くの条件の中から適切な研磨条件は、容易に決めることはできない。そこで、各条件をパソコンに記憶させ、その条件下でバレル研磨をおこない、ワークの研磨状態を確認し、その良否からワーク毎の適切な研磨条件を決め、このワーク毎の適切な研磨条件をパソコンに記憶させる。この適切な条件で研磨する方法が、第4発明及び第7発明であり、こうした方法を具現化するのが、第5発明及び第8発明のバレル研磨装置である。
【実施例3】
【0036】
本発明での試作品を以下に示す。図5は、試作品での傾斜板3が略垂直の状態を示し、図6は、試作品での傾斜板3が傾斜した状態を示す。図6では、振り子運動シリンダー5が延び、傾斜板3を押し、自転軸32が傾斜している。
【0037】
図7は、1つのワークを研磨される状態を示し、図8は、複数の同じワークを研磨する状態を示す。ワーク毎にワーク把持部34を準備している。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、これまでのバレル研磨方法の通念を排除し、新しい概念でのバレル研磨方法を提供するものである。この方法を採用したバレル研磨装置は、構造が簡単であり、安価で製造できるとともに、複雑な形状のワークをバレル研磨する場合にも、研磨ムラが生じ難く、一定品質の研磨ができ、かつ作業時間も短縮できる。こうしたメリットのため、係るバレル研磨装置は需要が大いに期待できる。
【符号の説明】
【0039】
1 バレル研磨装置
2 基台 21 支持柱 22 リフター 23 リフター移動板 24 移動板アーム
3 傾斜板 31 上下スライド板 32 自転軸 33 自転軸駆動モータ 34 ワーク把持部
4 上下運動シリンダー
5 振り子運動シリンダー
6 研磨媒体収容槽 61 研磨媒体 62 回転盤
7 ワーク
8 操作盤
9 パソコン
10 手元スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨媒体を収容する研磨媒体収容槽内において、ワークと研磨媒体とが擦れ合って生ずる摩擦によりワークの表面を研磨するバレル研磨方法において、ワークの自転運動、上下運動、振り子運動を、互いに連動することなく独立させて運動させ、ワークが研磨媒体収容槽内において特定軌道を描くことができないようにしたバレル研磨方法。
【請求項2】
研磨媒体を収容する研磨媒体収容槽内において、ワークと研磨媒体とが擦れ合って生ずる摩擦によりワークの表面を研磨するバレル研磨装置において、ワークの自転運動、上下運動、振り子運動を、互いに連動することなく独立させて運動させ、ワークが研磨媒体収容槽内において特定軌道を描くことができないようにしたバレル研磨装置。
【請求項3】
ワークの自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びに各運動の作業時間を所定範囲内にて変えることができる請求項2のバレル研磨装置。
【請求項4】
請求項3のバレル研磨装置を用い、ワーク毎の適切な自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びに各運動の作業時間についての条件を見い出し、この適切な条件にて行う請求項1のバレル研磨方法。
【請求項5】
ワーク毎の自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びに各運動の作業時間を記録し、更に、ワーク毎に見い出された適切な自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びに各運動の作業時間を記録し、その適切な条件を再現することができる設備を備えた請求項3のバレル研磨装置。
【請求項6】
研磨媒体を収容する研磨媒体収容槽が停止及び平面的な回転とその回転速度並びにその各作業時間を所定範囲内にて変えることができる請求項2、請求項3及び請求項5のいずれかのバレル研磨装置。
【請求項7】
請求項6のバレル研磨装置を用い、ワーク毎の適切な自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ並びに研磨媒体収容槽の停止及び回転速度と、それらの各作業時間の条件を見い出し、この適切な条件にて行う請求項1のバレル研磨方法。
【請求項8】
ワーク毎の自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ、並びに研磨媒体収容槽停止及び回転速度とそれらの各作業時間を記録し、更に、ワーク毎に見いだされた適切な自転運動、上下運動、振り子運動の各運動の停止及び各運動の速さ、並びに研磨媒体収容槽の停止及び回転速度と、それらの作業時間の条件を見い出し、この適切な条件を記録し、その条件を再現する設備を備えた請求項6のバレル研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−817(P2013−817A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132241(P2011−132241)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(305033837)有限会社村松研磨工業 (5)
【Fターム(参考)】