説明

バンドパスフィルタ、これを備える無線通信モジュールおよび無線通信機器

【課題】 通過帯域の高周波側における減衰特性をより向上することができるバンドパスフィルタ、これを備える無線通信モジュールおよび無線通信機器を提供する。
【解決手段】 バンドパスフィルタ1は、単一共振器と複合共振器とからなり、帯状電極22d,23d,24d,25dの延在方向と、電極指24a,25a,29a,30aが延びる方向とが直交するように積層される。分岐電極22a,27aに備えられる複数の電極指のうち、最も外側に配置される2つの電極指24a,29aは、積層方向から見たときに、帯状電極の延在方向と平行となる屈曲部26a,31aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドパスフィルタに関し、特には2つの通過帯域を持つバンドパスフィルタ、これを備える無線通信モジュールおよび無線通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の分野では、たとえば、無線電波の送受信器において、送信すべき電波、受信すべき電波を有効に取り出す必要があり、入力された高周波信号から特定の周波数帯域の信号を通過させるフィルタの特性が重要となっている。また、無線通信に使用される電波は、無制限に使用できるものではなく、たとえば用途別に使用可能な周波数帯域が設定されている。設定された周波数帯域の高周波信号を利用するためにはフィルタが欠かせない素子となっている。使用可能な周波数帯域を最大限に利用しようとすると、通過させるべき周波数帯域と通過させない周波数帯域との境界において、急峻な特性変化が必要となる。この急峻な特性変化は、通過させない周波数帯域の信号強度を減衰させることによって得られる。通過させるべき周波数帯域(通過帯域)が広いほど通過帯域外で急峻に減衰させることが困難となっている。
【0003】
使用する周波数帯域が広い、すなわちフィルタにとっては通過帯域が広い無線通信方式の1つにUWB(Ultra wide band)方式がある。UWB方式は、近距離での超高速通信が可能であることに加え、位置測定およびレーダなど多くの用途を有効に実現できる。しかしながら、通過帯域が広いために使用するフィルタには、高い性能が要求される。さらに、UWB方式では、使用可能な周波数帯域が、比較的低い周波数帯域と比較的高い周波数帯域とに分離しているため、すべての周波数帯域を利用するためには、低周波数帯域を通過させるためのバンドパスフィルタと、高周波数帯域を通過させるためのバンドパスフィルタの2種類のバンドパスフィルタが必要となる。
【0004】
UWB方式は、近距離通信となるため、いわゆるモバイル機器への実装が不可欠であり、モバイル機器では、部品点数の制限から1つのフィルタ素子で2つの広い周波数帯域に対応できるフィルタ素子が要求される。
【0005】
特許文献1記載のバンドパスフィルタは、複数の単一共振電極と複数の複合共振電極とが積層方向からみて互いに直交するように配置されており、複数の単一共振電極が比較的低い周波数で共振し、複数の複合共振電極が比較的高い周波数で共振することで、2つの広い周波数帯域に対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−290430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
同じ方式の無線通信であっても、使用可能な周波数帯域は国ごとに設定されており、使用する国が変わると通過帯域が変わるためにフィルタ素子の設計変更を余儀なくされる。また、使用可能な周波数帯域のうち、複数の国で重複する帯域があり、この重複する帯域を通過帯域とするフィルタ特性が得られれば、複数の国で使用可能なフィルタ素子が実現できる。
【0008】
特許文献1記載のバンドパスフィルタは、1つの国のみで使用する場合に限ると十分なフィルタ特性を発揮する。しかしながら、より高性能なフィルタを目指して、たとえば複数の国で使用可能なものを考えると、高周波数帯域における減衰特性にはまだ改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、通過帯域の高周波側における減衰特性をより向上することができるバンドパスフィルタ、これを備える無線通信モジュールおよび無線通信機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、予め定める間隔をあけて互いに平行に設けられる複数の帯状電極からなる単一共振器であって、前記帯状電極の延在方向端部のいずれか一方が接地電極に接続され、接続される端部が前記複数の帯状電極において交互に異なるように構成される単一共振器と、
電極基部と前記電極基部から分岐して一方向に延びる平行な複数の電極指とからなる分岐電極を複数備える複合共振器であって、前記電極基部の、前記電極指が設けられる側とは反対側の端部が接地電極に接続され、互いに隣接する分岐電極は、前記電極指が前記電極基部から延びる方向が逆向きとなるように構成される複合共振器と、を備え、
前記単一共振器と前記複合共振器とは、前記帯状電極の延在方向と、前記電極指が延びる方向とが直交するように積層され、
前記複合共振器に備えられる複数の電極指のうち、最も外側に配置される2つの電極指は、積層方向から見たときに、前記帯状電極の延在方向と平行となる屈曲部を有することを特徴とするバンドパスフィルタである。
【0011】
また本発明は、前記屈曲部は、最も外側に配置される前記2つの電極指の先端に設けられることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記単一共振器の、前記複合共振器とは異なる側に積層される電極配線であって、一方端部および他方端部が、それぞれ前記単一共振器に備えられる複数の帯状電極のうち、最も外側に配置される2つの帯状電極とそれぞれ磁気結合するように構成される電極配線をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記帯状電極の少なくとも1つと電磁界結合するように配置される反作用共振器電極であって、一方端が接地電極に接続され、他方端が開放端である反作用共振器電極を有することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記バンドパスフィルタを備えることを特徴とする無線通信モジュールである。
【0015】
また本発明は、前記バンドパスフィルタを含むRF部と、
前記RF部に接続されたベースバンド部と、
前記RF部に接続されたアンテナとを備えることを特徴とする無線通信機器である。
【発明の効果】
【0016】
本実施形態のバンドパスフィルタによれば、単一共振器と複合共振器とからなり、帯状電極の延在方向と、前記電極指が延びる方向とが直交するように積層される。単一共振器は比較的低い周波数を通過帯域とし、複合共振器は比較的高い周波数を通過帯域とする。
【0017】
前記単一共振器と前記複合共振器とは、前記帯状電極の延在方向と、前記電極指が延びる方向とが直交するように積層され、前記複合共振器に備えられる複数の電極指のうち、最も外側に配置される2つの電極指は、積層方向から見たときに、前記帯状電極の延在方向と平行となる屈曲部を有する。
【0018】
この屈曲部は、単一共振器の帯状電極と磁気結合し、最も外側に配置される2つの電極指は、単一共振器の帯状電極を介して飛越結合する。これにより、通過帯域の高周波側で減衰極が発生し、高周波数帯域における減衰特性をより向上することができる。
【0019】
また、本実施形態の無線通信モジュールおよび無線通信機器によれば、通信帯域の全域に渡って通過する信号の損失が小さいバンドパスフィルタを送信信号および受信信号の濾波に用いることにより、バンドパスフィルタを通過する受信信号および送信信号の減衰が少なくなるため、受信感度が向上する。また、送信信号および受信信号の増幅度を小さくできるため増幅回路における消費電力が少なくなる。
【0020】
よって受信感度が高く消費電力が少ない高性能な無線通信モジュールおよび無線通信機器を得ることができる。さらに、1つのフィルタで2つの通信帯域に対応することができる。また、薄型化しても良好なフィルタ特性が得られるバンドパスフィルタを用いることにより、小型で製造コストが低い無線通信モジュールおよび無線通信機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態であるバンドパスフィルタ1の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の切断面線A−Aにおけるバンドパスフィルタ1の断面図である。
【図3A】バンドパスフィルタ1の構成を示す分解平面図である。
【図3B】バンドパスフィルタ1の構成を示す分解平面図である。
【図3C】バンドパスフィルタ1の構成を示す分解平面図である。
【図3D】バンドパスフィルタ1の構成を示す分解平面図である。
【図3E】バンドパスフィルタ1の構成を示す分解平面図である。
【図3F】バンドパスフィルタ1の構成を示す分解平面図である。
【図3G】バンドパスフィルタ1の構成を示す分解平面図である。
【図4】分岐電極22a,27aの屈曲部26a,31aと帯状電極23d,24dとの位置関係を示す図である。
【図5A】θ1およびθ2が0°,20°のときのフィルタ特性を示すグラフである。
【図5B】θ1およびθ2が0°,10°のときのフィルタ特性を示すグラフである。
【図6A】他の実施形態の電極層20aを示す分解平面図である。
【図6B】他の実施形態の電極層20aを示す分解平面図である。
【図6C】他の実施形態の電極層20aを示す分解平面図である。
【図7】誘電体層10gとその上面に設けられた電極層20fとを示す平面図である。
【図8】バンドパスフィルタ1を用いた無線通信モジュール80および無線通信機器85の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態のバンドパスフィルタは、重複しない2つの通過帯域を有する。比較的低い周波数帯域、たとえば3.1〜4.7GHz程度の帯域を使用するLow Band(ローバンド)と、比較的高い周波数帯域、たとえば6.6GHz〜8.7GHz程度の帯域を使用するHigh Band(ハイバンド)の2つの通過帯域を有する。特に2つのバンドの間にある5.3GHzでの減衰特性と、ハイバンドよりも高周波域である9GHzでの減衰特性とが重要である。
【0023】
本実施形態のバンドパスフィルタは、ローバンドに対応する共振器として、単一共振器を備える。単一共振器は、複数の帯状電極からなり、帯状電極は、延在方向に直交する方向に、所定の間隔を空けて互いに平行に設けられる。互いに隣接する帯状電極は、延在方向端部の片側が接地電極に接続されており、接続される端部が帯状電極ごとに交互に異なっている。帯状電極は、電気長が、ローバンドの周波数帯において中心となる周波数(ロー側周波数)の波長の1/4程度となるように構成され、1/4波長共振器として機能する。
【0024】
本実施形態のバンドパスフィルタは、ハイバンドに対応する共振器として複合共振器を備える。複合共振器は、複数の分岐電極からなる。分岐電極は、電極基部と電極基部から一方向に延びる平行な複数の電極指からなる。複数の分岐電極は、電極指の延在方向に直交する方向に、所定の間隔を空けて設けられる。分岐電極は、電極基部の、電極指が設けられる側とは反対側の端部が接地電極に接続されており、互いに隣接する分岐電極は、電極指が電極基部から延びる方向が反対方向となるように設けられる。電極基部および電極指は、電極指の延在方向における、電極指の電気長と電極基部の電気長との和がハイバンドの周波数帯の比較的低い周波数(ハイ側第1周波数)で共振するように構成されるとともに、電極指の延在方向における、電極指の電気長がハイバンドの周波数帯の比較的高い周波数(ハイ側第2周波数)で共振するように構成される。
【0025】
本実施形態のバンドパスフィルタは、単一共振器と複合共振器とが積層構造の内層に設けられており、単一共振器の帯状電極が延びる延在方向と、複合共振器の分岐電極の電極指が延びる延在方向とが、積層方向から見たときに直交するように設けられる。
【0026】
さらに、複合共振器において、全ての分岐電極に備えられる電極指のうち、最も外側に配置される2本の電極指は、積層方向から見たときに、その一部が、単一共振器の帯状電極が延びる延在方向と平行となるように屈曲して設けられる。複合共振器に、この屈曲した平行部分を設けることによって、ハイバンドの高周波側に減衰極が発生し、減衰特性が向上する。これにより、フィルタ特性がさらに向上したバンドパスフィルタを実現できる。
【0027】
図1は、本発明の実施形態であるバンドパスフィルタ1の外観を示す斜視図である。図2は、図1の切断面線A−Aにおけるバンドパスフィルタ1の断面図である。図3A〜図3Gは、バンドパスフィルタ1の構成を示す分解平面図である。
【0028】
バンドパスフィルタ1は、直方体形状を有し、たとえば、アンテナと送受信用半導体素子との間に接続され、特定の2種の通過帯域を有するフィルタ素子である。バンドパスフィルタ1は、複数の誘電体層10と誘電体層間に内層された電極層20とが積層されて成り、積層方向の最も外側にはベタ状の接地電極層60が設けられる。電極層20同士は、誘電体層10を貫通する貫通導体40を介して電気的に接続される。なお、フィルタ外部との高周波信号の入出力は、最外層の接地電極層60の一部を切り欠いて入出力端子50を設け、入出力端子50と電極層20とを貫通導体40を介して電気的に接続する。以下では、図1〜図3に示すように、入出力端子50を設けた側を上面として説明するが、回路基板への実装を行うときには、基板側の端子との位置関係により、入出力端子50を設けた側を上面とするのに限らず、入出力端子50を設けた側を下面としてもよい。
【0029】
本実施形態では、たとえば、誘電体層10は、6層の誘電体層10a,10b,10c,10d,10e,10fからなり、電極層20は、5層の電極層20a,20b,20c,20d,20eからなり、接地電極層60は、接地電極層60a,60bからなる。入出力端子50は、入力端子50aおよび出力端子50bからなる。
【0030】
図2の断面図に示すように、誘電体層10は、上から誘電体層10a,10b,10c,10d,10e,10fの順に積層されて成る。誘電体層10aの上面には、接地電極層60aが設けられ、接地電極層60aを切り欠いて入力端子50aおよび出力端子50bが設けられる。誘電体層10fの下面には、接地電極層60bが設けられる。
【0031】
誘電体層10aと誘電体層10bとの間に、電極層20aが設けられ、誘電体層10bと誘電体層10cとの間に、電極層20bが設けられ、誘電体層10cと誘電体層10dとの間に、電極層20cが設けられ、誘電体層10dと誘電体層10eとの間に、電極層20dが設けられ、誘電体層10eと誘電体層10fとの間に、電極層20eが設けられる。
【0032】
入力端子50aおよび出力端子50bは、貫通導体40aを介して電極層20cと電気的に接続される。貫通導体40aは、誘電体層10a,10b,10cを貫通するように設けられる。電極層20bは、貫通導体40bを介して電極層20cと電気的に接続される。貫通導体40bは、誘電体層10cを貫通するように設けられる。電極層20dは、貫通導体40cを介して電極層20eと電気的に接続される。貫通導体40cは、誘電体層10eを貫通するように設けられる。
【0033】
図3Aは、誘電体層10aとその上面に設けられた接地電極層60aとを示す分解平面図である。接地電極層60aは、誘電体層10aの表面にベタ状に設けられ、一端部と、反対側の他端部とに方形状の切り欠き孔が設けられ、切り欠き孔内で接地電極層60aに接しないように、入力端子50aおよび出力端子50bが設けられる。入力端子50aおよび出力端子50bは、貫通導体40aに接続される。
【0034】
図3Bは、誘電体層10bとその上面に設けられた電極層20aとを示す分解平面図である。電極層20aは、環状接地電極21a、分岐電極22a,27aを含み、ハイバンドに対応する複合共振器を構成する。環状接地電極21aは、誘電体層10bの四辺に沿って設けられる環状の電極であり図示しない接地電位配線と接続されることで接地電位となっている。
【0035】
分岐電極22aは、電極基部23aと電極基部23aから一方向に延びる平行な複数の電極指24a,25aからなり、分岐電極27aは、電極基部28aと電極基部28aから一方向に延びる平行な複数の電極指29a,30aからなる。分岐電極22aの電極指24a,25aが延びる延在方向と、分岐電極27aの電極指29a,30aが延びる延在方向とは互いに平行である。
【0036】
環状接地電極21aと分岐電極22a,27aとは、電極基部23a,28aのみで接続されており、電極基部23a,28aの、電極指が設けられる側とは反対側の端部が環状接地電極21aに接続される。分岐電極22a,27aは、電極指24a,25a,29a,30aの延在方向に直交する方向に、所定の間隔を空けて設けられる。分岐電極22a,27aは、誘電体層10b上に回転対象に形成されるので、以下では、分岐電極22a,27aの両方に共通する特徴については、分岐電極22aを例として説明する。
【0037】
電極基部23aにおける、環状接地電極21aとの接続位置から電極指24a,25aとの接続位置までの電気長(以下では「基部電気長」という)と、電極指24a,25aにおける、電極基部23aとの接続位置からその反対側端部までの電気長(以下では「電極指電気長」という)は、これら基部電気長と電極指電気長との和がハイ側第1周波数(たとえば、6.8GHz)で共振するように構成される。さらに、電極指電気長が、ハイ側第2周波数(たとえば、8.9GHz)で共振するように構成される。
【0038】
分岐電極22aの電極指24a,25aのうち、外側に配置される電極指24aと、内側に配置される電極指25aとでは、電気長は同じであるが物理的長さは異なっており、外側の電極指24aのほうが、電極指25aよりも短い。電極指の電気長は、物理的な長さだけでなく、他の電極との相互作用、すなわち他の電極との電磁気的な結合状態によって決まる。内側の電極指25aは、外側の電極指24aと、分岐電極27aの内側の電極指30aと結合するため、他の電極との相互作用が強く、外側の電極指24aは、内側の電極指25aと結合するため、内側の電極指25aよりも、受ける相互作用が弱い。したがって、内側の電極指25aと外側の電極指24aの電気長を同じにするには、外側の電極指24aの実際の長さを、電極指25aよりも短くすればよい。
【0039】
単一共振器についての詳細は後述するが、本実施形態のバンドパスフィルタ1において、分岐電極が備える電極指の延在方向と、単一共振器の帯状電極の延在方向とが積層方向から見たときに直交する。本実施形態のバンドパスフィルタ1では、2つの分岐電極22a,27aに備えられる電極指24a,25a,29a,30aのうち、最も外側に配置される2本の電極指24a,29aは、積層方向から見たときに、その一部が、単一共振器の帯状電極が延びる延在方向と平行となるように屈曲して設けられる。
【0040】
電極指24aの一部であり、単一共振器の帯状電極の延在方向に平行となる屈曲部26aおよび電極指29aの一部であり、単一共振器の帯状電極の延在方向に平行となる屈曲部31aは、それぞれ単一共振器の帯状電極と磁界結合する。帯状電極は互いに結合しているので、帯状電極を介して間接的に屈曲部26aと屈曲部31aとが結合することとなる。複合共振器において分岐電極の最も外側にある2つの電極指が結合する、いわゆる飛越結合が生じる。本件発明者らは、この飛越結合を強くすることによって複合共振器における高周波数側での減衰特性が向上することを見出した。その前段として、バンドパスフィルタ1の低背化による飛越結合の低減について説明する。バンドパスフィルタ1を低背化するためには、フィルタの全体厚みを薄くすることが必要であり、これによってバンドパスフィルタ1の電極層同士の距離が縮まることになる。電極層同士の距離が縮まると、複合共振器と単一共振器との距離が縮まり、その結果複合共振器と単一共振器との結合が強くなり、複合共振器の電極指同士の飛越結合が弱まることになる。
【0041】
本件発明者らは、単一共振器の影響を排除して複合共振器のみの通過特性を見ると、飛越結合が強くなるに応じて減衰極が通過帯域に近づく、すなわち、より急峻な減衰特性が得られるという新たな知見を得ており、この知見を基に複合共振器の電極指と単一共振器の帯状電極との結合を積極的に利用し、電極指同士の飛越結合を強めることを試みた。具体的には、単一共振器の影響を考慮し、電極指の先端に屈曲部26aと屈曲部31aとを設けることによって単一共振器と電極指とを結合させた。これにより、高周波側で減衰極が発生し、この傾向は飛越結合が強まったことによる減衰特性の向上と同じ傾向を示した。
【0042】
図3Cは、誘電体層10cとその上面に設けられた電極層20bとを示す分解平面図である。図3Dは、誘電体層10dとその上面に設けられた電極層20cとを示す分解平面図である。電極層20bは、電極配線21b,22bを含み、複合共振器と結合する。電極層20cは、電極配線21c,22cを含み、電極配線21c,22cは、貫通導体40aを介して入力端子50a、出力端子50bと接続される。また、電極配線21c,22cは、貫通導体40bを介して電極配線21b,22bと接続される。
【0043】
ここで、バンドパスフィルタ1内の高周波信号の流れについて説明する。入力端子50aから入力された高周波信号は、貫通導体40aを通って電極配線22cに到達する。電極配線22cに沿って伝送する高周波信号は、貫通導体40bを通って電極配線22bに到達する。電極配線22bと、分岐電極27aの外側電極指29aとの磁気結合により、高周波信号は、分岐電極27aの外側電極指29aに入力される。入力された高周波信号は、分岐電極27aの外側電極指29aから、分岐電極22aの外側電極指24aまで伝搬して、電極配線21bと、分岐電極22aの外側電極指24aとの磁気結合により、分岐電極22aの外側電極指24aから出力される。出力された高周波信号は、ハイバンドの周波数帯域を通過した信号となり、貫通導体40bを介して電極配線21cに到達する。高周波信号は、電極配線21cに沿って伝送し、貫通導体40aを通って出力端子50bからフィルタ外部へと出力される。
【0044】
図3Eは、誘電体層10eとその上面に設けられた電極層20dとを示す分解平面図である。図3Fは、誘電体層10fとその上面に設けられた電極層20eとを示す分解平面図である。
【0045】
電極層20dは、環状接地電極21d、帯状電極22d,23d,24d,25dを含み、ローバンドに対応する単一共振器を構成する。環状接地電極21dは、誘電体層10eの四辺に沿って設けられる環状の電極であり図示しない接地電位配線と接続されることで接地電位となっている。
【0046】
帯状電極22d,23d,24d,25dは、延在方向に直交する方向に、所定の間隔を空けて互いに平行に設けられる。帯状電極22d,23d,24d,25dは、延在方向端部の片側が環状接地電極21dに接続されており、帯状電極22dが環状接地電極21dに接続する端部と、帯状電極23dが環状接地電極21dに接続する端部とは、異なる側の端部である。帯状電極24d,25dも同様に環状接地電極21dに接続されており、帯状電極22d,24dと、帯状電極23d,25dとがそれぞれ櫛歯状に形成され、これらが互いにかみ合うように配置される、いわゆるインターデジタル型共振器を構成している。帯状電極22d,23d,24d,25dは、複合共振器の電極指と同様に、物理的な長さだけでなく、他の電極との相互作用、すなわち他の電極との電磁気的な結合状態によって電気長が決まる。たとえば、電気長を同じにしようとすると、物理的な長さは、帯状電極23d,24dのほうが帯電電極22d,25dよりも長くなる。帯状電極22d,23d,24d,25dとしては、電気長が、ロー側周波数の波長の1/4程度となるように構成すればよい。
【0047】
電極層20eは、電極配線21eおよび電極配線23eと、これらを接続する電極配線22eとを含む。電極配線21eおよび電極配線23eは、単一共振器の帯状電極の延在方向と平行に延び、延在方向および延在方向に直交する方向のいずれにも間隔を空けて配置される。電極配線22eは、電極配線21eの延在方向端部のうち、電極配線23eに近い側の端部と、電極配線23eの延在方向端部のうち、電極配線21eに近い側の端部とを接続する。また、電極配線21eの端部のうち、電極配線22eと接続する側と反対側の端部は、誘電体層10eを貫通する貫通導体40cを介して環状接地電極21dと電気的に接続し、電極配線23eの端部のうち、電極配線22eと接続する側と反対側の端部は、誘電体層10eを貫通する貫通導体40cを介して環状接地電極21dと電気的に接続する。電極配線21eは、単一共振器の帯状電極22dと磁気結合し、電極配線23eは、単一共振器の帯状電極25dと磁気結合する。電極配線21eと電極配線23eとが電極配線22eを介して接続されることにより、単一共振器の帯状電極22dと帯状電極25dとの間に誘導性結合が生じる。
【0048】
単一共振器の帯状電極22d,23d,24d,25dは、互いに隣接する帯状電極同士に容量性結合が生じており、帯状電極22d,23d,24d,25dを容量性結合によって伝搬する高周波信号と、電極配線21e,22e,23eを誘導性結合によって伝搬する高周波信号とは、位相が180°異なるため、これら2つの高周波信号が打ち消し合い、ローバンドの通過領域の近傍において、大きな減衰極を発生させることができ、減衰特性が向上する。
【0049】
図3Gは、接地電極層60bを示す平面図である。接地電極層60bは、全面ベタ状に形成される。
【0050】
本実施形態では、たとえば、誘電体層10は、6層の誘電体層10a,10b,10c,10d,10e,10fからなり、電極層20は、5層の電極層20a,20b,20c,20d,20eからなり、接地電極層60は、接地電極層60a,60bからなる。入出力端子50は、入力端子50aおよび出力端子50bからなる。
【0051】
本実施形態のバンドパスフィルタ1は、上記のように複合共振器に特徴を有しており、分岐電極22a,27aの電極指のうち最も外側に配置される2つの電極指24a,29aの一部が、単一共振器の帯状電極と平行となるように屈曲している。
【0052】
ここで、平行とは、電極指の屈曲部分の延在方向と、帯状電極の延在方向とが一致する、すなわちバンドパスフィルタの積層方向から見たときに、電極指の屈曲部分の延在方向と、帯状電極の延在方向との成す角が0°となる場合だけではなく、電極指の屈曲部分と帯状電極とが磁気結合するような位置関係であれば、ハイバンドの高周波側での減衰特性が向上するので、平行の概念に含まれる。
【0053】
図4は、分岐電極22a,27aの屈曲部26a,31aと帯状電極23d,24dとの位置関係を示す図である。図4では、電極層20aの各電極については実線で記載し、別層である電極層20dの帯状電極の一部(帯状電極23d)を破線で記載した。
【0054】
帯状電極23dの延在方向と屈曲部26aの延在方向とが成す角をθ1としたとき、角θ1の範囲は−20°以上20°以下とする。帯状電極24dの延在方向と屈曲部31aの延在方向とが成す角をθ2としたとき、角θ2の範囲はθ1と同様に−20°以上20°以下とする。角θ1,θ2が0°のときが最も高い効果が得られるので好ましい。θ1とθ2とは同じ角度であることが好ましいが、同じ角度である必要はなく、上記の範囲内であれば異なる角度であってもよい。
【0055】
図5Aは、θ1およびθ2が0°,20°のときのフィルタ特性を示すグラフである。図5Bは、θ1およびθ2が0°,10°のときのフィルタ特性を示すグラフである。横軸は周波数(GHz)を示し、縦軸は減衰量(dB)を示す。グラフAは、θ1=θ2=0°の場合を示し、グラフBは、θ1=θ2=20°の場合を示し、グラフCは、θ1=θ2=10°の場合を示す。グラフDは、比較対象として、屈曲部を有しない従来構成の場合を示す。
【0056】
これらのフィルタ特性は、シミュレーションによって得られた結果である。シミュレーションに用いたバンドパスフィルタのモデルについて説明する。層構成および各電極層については、図2示した断面図および図3A〜図3Gに示した平面図と同じである。
【0057】
層厚みは、誘電体層10aが175μmであり、誘電体層10bが25μmであり、誘電体層10cが75μmであり、誘電体層10dが25μmであり、誘電体層10eが125μmであり、誘電体層10fが75μmである。誘電体層の材質は、ガラスセラミックスを想定し、比誘電率εrを7.5とし、誘電正接(tanδ)を0.001とした。電極配線の導電材料は、銅を想定し、導電率を4.5×10(siemens/m)とした。バンドパスフィルタの外形寸法は、縦4mm、横5mm、高さ0.5mmとした。
【0058】
接地電極層60aは、縦4mm、横5mmのベタ状で、0.5mm角の切り欠き孔を2箇所設け、0.2mm角の入力端子50aおよび出力端子50bを設けた。電極層20aについては、分岐電極22aの電極基部23aは、電極指の延在方向長さが0.7mmであり、幅が0.62mmである。電極指24aは、幅が0.25mm、全体長さが1.65mmであり、屈曲部26aの長さは0.3mmである。電極指25aは、幅が0.25mm、全体長さが2.7mmであり、電極指24aと電極指25aとの間隔は0.12mmである。分岐電極27aは、分岐電極22aと同様である。電極層20bについては、電極配線21b、22bともに幅0.25mmであり、長さ0.58mmである。
【0059】
電極層20cについては、電極配線21c,22cともに幅0.15mmであり、長さ4.375mmである。電極層20dについては、帯状電極22d,03d,24c,25dともに幅0.175mmであり、長さ4.05mmであり、帯状電極22dと帯状電極23dとの間隔および帯状電極24dと帯状電極25dとの間隔は0.075mmであり、帯状電極23dと帯状電極24dとの間隔は0.085mmである。電極層20eについては、電極配線21e,23eともに幅0.1mmであり、長さは1.65mmであり、電極配線21e,23eの端部間の距離(横方向)は1.3mmであり、電極配線21e,23eの端部間の距離(縦方向)は0.775mmである。接地電極層60bは、縦4mm、横5mmのベタ状である。
【0060】
貫通導体40a,40b,40cは、いずれも直径を0.075mmとした。
屈曲部を有しない従来の構成では、グラフDに示されるように、ハイバンドの高周波側において減衰はしているが、厳しい要求特性に対応するには減衰が不十分である。分岐電極に屈曲部を有する本実施形態のバンドパスフィルタは、グラフA〜Cに示されるように、ハイバンドの高周波側において減衰特性が向上しており、θ1およびθ2が20°,10°,0°となるにつれて、減衰極がハイバンドの通過帯域に近づいている。グラフには示していないが、θ1およびθ2が−20°,−10°のときも、それぞれ、20°,10°のときと同様の結果が得られた。
【0061】
また、単一共振器の帯状電極と平行となる分岐電極の屈曲部は、帯状電極と磁気結合可能であれば、その延在方向長さに限定はない。また、屈曲部の電極指中における位置も、電極指の先端である必要はなく、電極指の一部であれば中間部分であってもよい。屈曲部の長さおよび位置は、電極指電気長が同じであれば適宜設定することができる。
【0062】
図6A〜図6Cは、他の実施形態の電極層20aを示す分解平面図である。本発明の他の実施形態としては、電極層20aの分岐電極22a,27aにおいて、屈曲部の形状が異なる構成のものがある。電極層20a以外の構成は、上記の実施形態と同一であるので説明は省略する。
【0063】
図6Aに示す電極層20aは、分岐電極22a,27aの電極指24a,29aにおいて、屈曲部32a,33aの長さが屈曲部26a,31aよりも長くなっている。電極指電気長は同じであるので、屈曲部の長さが長くなると角部の位置がより電極基部23a,28aに近づくことになる。
【0064】
図6Bに示す電極層20aは、分岐電極22a,27aの電極指24a,29aにおいて、屈曲部34a,35aが中間部分に位置している。電極指24a,29aは、全体として階段状またはクランク状となっている。
【0065】
図6Cに示す電極層20aは、分岐電極22a,27aの電極指24a,29aにおいて、屈曲部36a,37aが中間部分に位置している。電極指24a,29aは、全体として鉤針状となっている。
【0066】
次に本発明のさらに他の実施形態として反作用共振器電極を備えるバンドパスフィルタについて説明する。
【0067】
本実施形態では、複数の帯状電極間以外において帯状電極22d,23d,24d,25dの少なくとも1つと電磁界結合するように配置される反作用共振器電極を備える。図7は、誘電体層10gとその上面に設けられた電極層20fとを示す平面図である。たとえば、誘電体層10fと接地電極層60bとの間にさらに誘電体層10gを備え、誘電体層10gの上面には電極層20fが設けられる。電極層20fは、反作用共振器電極21f,22fを有する。
【0068】
反作用共振器電極21fは、矩形状の共振電極23fと、共振電極23fの一辺から内方側に延びる、接地電極層60bと接続するための接続電極24fからなり、反作用共振器電極22fは、矩形状の共振電極25fと、共振電極25fの一辺から内方側に延びる、接地電極層60bと接続するための接続電極26fからなる。
【0069】
反作用共振器電極21fの一方端は、接続電極24fおよび貫通導体を介して接地電極層60bに接続し、他方端は開放端となっている。反作用共振器電極22fも同様の構成である。
【0070】
反作用共振器電極21f,22fを設けることにより、帯状電極22d,23d,24d,25dによる高調波(11.2GHz)に反作用共振器(ノッチフィルタ)として機能する減衰極をさらに形成することができるので、特定の周波数(高周波数帯域)における不要信号を除去し、さらに特性が向上したバンドパスフィルタを提供することができる。
【0071】
誘電体層10a,10b,10c,10d,10e,10fの各層厚みは、誘電体層10の上下に配された電極層20同士の結合状態に影響を与える。層厚みが小さいと上下に配された電極層20同士の結合が強くなり、層厚みが大きいと上下に配された電極層20同士の結合が弱くなる。したがって、電極層20同士の結合を強くしたい場合には、その間の誘電体層の層厚みを比較的小さくし、電極層20同士の結合を弱くしたい場合には、その間の誘電体層の層厚みを比較的大きくすればよい。電極層20内に複数の電極が設けられる場合は、同じ電極層20内の電極同士の結合と、誘電体層を介した他の電極層20との結合とが生じることになる。同じ電極層20内の電極同士の結合を保持しつつ他の電極層20とも結合させたい場合は、少なくとも同じ電極層20内の電極同士の間隔以上の層厚みでできる限り小さい層厚みとすればよい。層厚みを小さくし過ぎると、他の電極層20との結合が強すぎて、同じ電極層20内の電極同士の結合が弱まってしまう。
【0072】
本実施形態のバンドパスフィルタ1では、たとえば、電極層20同士の結合を強くしたほうが好ましい、すなわち誘電体層10の層厚みを比較的薄くしたほうが好ましいのは、電極層20aと電極層20bとの間の誘電体層10b、および電極層20cと電極層20dとの間の誘電体層10dである。これらの誘電体層10b,10dは比較的層厚みを薄くすることにより、分岐電極22a,27aと、複合共振器の電極配線21b,22bとの結合、および電極配線21c,22cと、単一共振器の帯状電極22d,25dとの結合を強めることができる。
【0073】
また、複合共振器および単一共振器の各電極と、上記の結合すべき電極配線以外の電極との結合は弱いほうが好ましいので、たとえば誘電体層10aおよび誘電体層10eは層厚みを比較的厚くしている。
【0074】
誘電体層10が間に介在したときの電極層20同士の結合強さは、上記のような誘電体層10の厚み、すなわち電極層20同士の距離以外に、誘電体層10の比誘電率にも影響される。したがって、誘電体層10は、全体的なフィルタ特性を考慮して、適宜材質を選択し、層厚みを設定すればよい。
【0075】
本実施形態のバンドパスフィルタ1において、誘電体層10の材質としては、たとえばエポキシ樹脂などの有機材料、誘電体セラミックスなどのセラミックス材料を用いることができる。セラミックス材料としては、たとえば、BaTiO,PbFeNb12,TiOなどの誘電体セラミック材料と、B,SiO,Al,ZnOなどのガラス材料とからなり、800〜1200℃程度の比較的低い温度で焼成が可能なガラス−セラミック材料が好適に用いられる。また、誘電体層10の厚みとしては、たとえば10μm〜200μm程度に設定される。
【0076】
電極および貫通導体の材質としては、たとえば、Ag,Ag−Pd,Ag−PtなどのAg合金を主成分とする導電材料、Cu系,W系,Mo系,Pd系の導電材料などが好適に用いられる。各種の電極の厚みは、たとえば1μm〜200μmに設定される。貫通導体の直径は、たとえば25μm〜100μmに設定される。
【0077】
本実施形態のバンドパスフィルタは、たとえば次のようにして作製することができる。まず、セラミック原料粉末に適当な有機溶剤などを添加し、これらを混合して泥漿を作製するとともに、ドクターブレード法によって所定厚みのセラミックグリーンシートを形成する。
【0078】
次に、得られたセラミックグリーンシートにパンチングマシーンなどを用いて貫通導体を形成するための貫通孔を形成し、Ag,Ag−Pd,Au,Cuなどの導電材料を含む導体ペーストを充填する。また、セラミックグリーンシートの表面には、印刷法を用いて前述したのと同様の導体ペーストを塗布して導体ペースト付きセラミックグリーンシートを作製する。次に、これらの導体ペースト付きセラミックグリーンシートを所定の順序で積層し、ホットプレス装置を用いて圧着し、800℃〜1050℃程度のピーク温度で焼成することにより作製される。
【0079】
図8は、バンドパスフィルタ1を用いた無線通信モジュール80および無線通信機器85の構成を示すブロック図である。
【0080】
本発明の他の実施形態である無線通信モジュール80は、たとえば、ベースバンド信号が処理されるベースバンド部81と、ベースバンド部81に接続されベースバンド信号の変調後および復調前のRF(Radio Frequency)信号が処理されるRF部82とを備えている。RF部82には、本実施形態のバンドパスフィルタ1と同様の構成を有するバンドパスフィルタ821が備えられており、ベースバンド信号が変調されてなるRF信号または受信したRF信号における通信帯域以外の信号をバンドパスフィルタ821によって減衰させ、必要な帯域の周波数を有する信号は通過させる。
【0081】
具体的な構成としては、ベースバンド部81にはベースバンドIC(Integrated
Circuit)811が配置され、RF部82にはバンドパスフィルタ821とベースバンド部81との間にRFIC822が配置されている。なお、これらの回路間には別の回路が介在していてもよい。そして、無線通信モジュール80のバンドパスフィルタ821にアンテナ84を接続することによってRF信号の送受信が可能な無線通信機器85が構成される。
【0082】
このような構成を有する無線通信モジュール80および無線通信機器85によれば、無線通信に使用する周波数帯域の全域に渡って通過する信号の損失が小さいバンドパスフィルタ821を送信信号および受信信号の濾波に用いることにより、バンドパスフィルタ821を通過する受信信号および送信信号の減衰が少なくなるため、受信感度が向上し、また、送信信号および受信信号の増幅度を小さくできるため増幅回路における消費電力が少なくなる。よって受信感度が高く消費電力が少ない高性能な無線通信モジュール80および無線通信機器85を得ることができる。さらに、1つのフィルタで2つの通信帯域をカバーすることができるとともに、薄型化しても良好なフィルタ特性が得られるバンドパスフィルタ821を用いることにより、小型で製造コストが低い無線通信モジュール80および無線通信機器85を得ることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 バンドパスフィルタ
10,10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g 誘電体層
20,20a,20b,20c,20d,20e,20f 電極層
21a,21d 環状接地電極
21b,21c,21e,22b,22c,22e,23e 電極配線
22a,27a 分岐電極
22d,23d,24d,25d 帯状電極
23a,28a 電極基部
24a,25a,29a,30a 電極指
26a,31a,32a,34a,36a 屈曲部
40,40a,40b,40c 貫通導体
50 入出力端子
50a 入力端子
50b 出力端子
60,60a,60b 接地電極層
80 無線通信モジュール
81 ベースバンド部
82 RF部
84 アンテナ
85 無線通信機器
821 バンドパスフィルタ
822 RFIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定める間隔をあけて互いに平行に設けられる複数の帯状電極からなる単一共振器であって、前記帯状電極の延在方向端部のいずれか一方が接地電極に接続され、接続される端部が前記複数の帯状電極において交互に異なるように構成される単一共振器と、
電極基部と前記電極基部から分岐して一方向に延びる平行な複数の電極指とからなる分岐電極を複数備える複合共振器であって、前記電極基部の、前記電極指が設けられる側とは反対側の端部が接地電極に接続され、互いに隣接する分岐電極は、前記電極指が前記電極基部から延びる方向が逆向きとなるように構成される複合共振器と、を備え、
前記単一共振器と前記複合共振器とは、前記帯状電極の延在方向と、前記電極指が延びる方向とが直交するように積層され、
前記複合共振器に備えられる複数の電極指のうち、最も外側に配置される2つの電極指は、積層方向から見たときに、前記帯状電極の延在方向と平行となる屈曲部を有することを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記屈曲部は、最も外側に配置される前記2つの電極指の先端に設けられることを特徴とする請求項1記載のバンドパスフィルタ。
【請求項3】
前記単一共振器の、前記複合共振器とは異なる側に積層される電極配線であって、一方端部および他方端部が、それぞれ前記単一共振器に備えられる複数の帯状電極のうち、最も外側に配置される2つの帯状電極とそれぞれ磁気結合するように構成される電極配線をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載のバンドパスフィルタ。
【請求項4】
前記帯状電極の少なくとも1つと電磁界結合するように配置される反作用共振器電極であって、一方端が接地電極に接続され、他方端が開放端である反作用共振器電極を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のバンドパスフィルタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のバンドパスフィルタを備えることを特徴とする無線通信モジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のバンドパスフィルタを含むRF部と、
前記RF部に接続されたベースバンド部と、
前記RF部に接続されたアンテナとを備えることを特徴とする無線通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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