説明

バーナーワーク用ガスバーナー

【課題】 高温の火炎を発生することが出来ると共に、火炎の温度、火炎の太さ、火炎の長さその他をバーナーワークの作業に対応させて容易且つ正確に調整出来るようなバーナーワーク用ガスバーナーの提供。
【解決手段】 同一の同心円上に配列された複数のノズル(12,13)は同一の燃料供給系統(210)と空気供給系統(220)を経由して燃料と空気を供給され、中央のノズル(11)は中央のノズル用の燃料供給系統と空気供給系統を経由して燃料と空気を供給される様に構成され、燃料供給系統(210)には可変流量調整装置(22)が介装され、空気供給系統(220)には空気流量を設定する流量調整装置(23)が介装されており、空気供給系統(220)の流量調整装置(23)よりもノズル側で且つ燃料供給系統の可変流量調整装置(22)のノズル側で燃料供給系統と空気供給系統とが合流している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラス細工(いわゆる「トンボ玉」等)のような各種バーナーワークに使用されるガスバーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
バーナーワークの代表的な例としては、いわゆる「トンボ玉」のようなガラス細工がある。
近年、「トンボ玉」のようなガラス細工を趣味として行う人口が急増している。ガラス細工を行う場合、材料である各種ガラスの融点以上の高温を出力できるバーナーが必要である。
しかし、従来、家庭用、或いは個人用のバーナーで、その程度の高温を出力できるものは無く、融点の低いガラスのみしか、トンボ玉に使用できなかった。それに対して、融点の高いガラスを用いてトンボ玉を行いたい、という要請がある。
【0003】
ガラスの融点は最も融点が高い石英ガラスでは1700℃である。作業を円滑に進めるためには、融点よりも、さらに数百℃高い温度が欲しい。
また、ガラス細工における種々の加工に対応してバーナーの火炎(火力)を色々と調整する必要があるが、従来の家庭用、或いは個人用バーナーではそのような細かな調整は困難である。
ここで、ガラスの融点以上の高温の火炎を得るためには、天然ガスや、プロパンガスを理論空燃比で燃焼させてやればよい。しかし、従来の家庭用、或いは個人用のバーナーでは、燃料(例えば、プロパンガス、天然ガス)と空気との供給量を理論空燃比となるように調節することは不可能であった。
【0004】
その他の従来技術として、例えば圧縮空気を燃焼装置に送って煙道ガスの流速を高め、煙道ガスから別の流体へ熱を回収せしめ、小型で且つ電力消費を少なくする技術が提案されている(特許文献1)。しかし、係る技術は蒸気発生器や蒸気吸収熱ポンプ等への適用を前提とするものであり、家庭用、或いは個人用のバーナーには不適当である。
また、2種類のバーナーを備え、各バーナーの配管に流量調節弁や電磁弁を備えており、極めて小型である加熱装置も提供されている(特許文献2)。しかし、この加熱装置は、熔解した金を鋳造する鋳造装置に係るものであり、いわゆる「トンボ玉」のようなガラス細工に適用するには不都合である。
【特許文献1】特開2000−88202号公報
【特許文献2】特開2004−344922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、高温の火炎を発生することが出来ると共に、火炎の温度、火炎の太さ、火炎の長さその他をバーナーワークの作業に対応させて容易且つ正確に調整出来るようなバーナーワーク用ガスバーナーの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバーナーワーク用ガスバーナーは、中央のノズル(11)と、該中央のノズル(11)の周囲に同心円状に配列された複数のノズル(12,13)とを有し、同一の同心円上に配列された複数のノズル(12,13)は同一の燃料供給系統(共通燃料供給ライン210)と空気供給系統(共通空気供給ライン220)を経由して燃料と空気を供給され、中央のノズル(11)は中央のノズル用の燃料供給系統(第1の連通孔211、第1の燃料供給縦孔214、第1の燃料供給横孔217)と空気供給系統(共通空気供給ライン220、第1の空気供給孔221、第1のオリフィス224、第1の混合エリア227、第1の混合気供給管3)を経由して燃料と空気を供給される様に構成され、燃料供給系統(共通燃料供給ライン210)には可変流量調整装置(燃料調整部材22)が介装され、空気供給系統(共通空気供給ライン220)には空気流量を設定する流量調整装置(空気量調整部材23)が介装されており、空気供給系統(共通空気供給ライン220)の流量調整装置(空気量調整部材23)よりもノズル(ノズルホルダ1)側で且つ燃料供給系統の可変流量調整装置(燃料調整部材22)のノズル(ノズルホルダ1)側で燃料供給系統(燃料供給横孔217,218,219)と空気供給系統(第1のオリフィス224の後端、第2のオリフィス225の後端、第3のオリフィス229の後端)とが合流(第1の混合エリア227、第2の混合エリア228、第3の混合エリア229を構成)していることを特徴としている(図1〜図16)。
【0007】
また、本発明のバーナーワーク用ガスバーナーは、前記ノズル(中央のノズル11と、該中央のノズル11の周囲に同心円状に配列された複数のノズル12,13とで構成されるノズルホルダ1)と、燃料供給系統(共通燃料供給ライン210等)と、空気供給系統(共通空気供給ライン220等)とを有する本体部(2)を備え、該本体部(2)は基台(ブラケット7A,7B)に接続されており、且つ、本体部(2)は基台(ブラケット7A,7B)に対して回動可能に構成されている(図1〜図3、図12、図13、図17〜図19)。
【発明の効果】
【0008】
上述する構成を具備する本発明のバーナーワーク用ガスバーナーによれば、中央のノズル(11)と、該中央のノズル(11)の周囲に同心円状に配列された複数のノズル(12,13)とを有し、中央のノズル(11)及び、同一の同心円状に配列された複数のノズル(12,13)は、夫々が専用の燃料供給系統と空気供給系統を経由して燃料と空気を供給(3,4,5)される様に構成され、燃料供給系統(供給燃料供給ライン210)に介装された各可変流量調整装置(燃料調整部材22)によって、空気量と、燃料の量との比、すなわち、空燃比を理論空燃比とすることが出来る。
そのため、高効率で、高温の燃焼炎が得られ、あらゆる材料に対応したバーナーワークが可能となる(図1〜図16)。
【0009】
また、本発明のバーナーワーク用ガスバーナーは、前記ノズル(中央のノズル11と、該中央のノズル11の周囲を同心円状に配列された複数のノズル12,13とで構成されるノズルホルダ1)と、燃料供給系統(共通燃料供給ライン210等)と、空気供給系統(共通空気供給ライン220等)とを有する本体部(2)を備え、該本体部(2)は基台(ブラケット7A,7B)に接続されており、且つ、本体部(2)は基台(ブラケット7A,7B)に対して回動可能に構成されているので、炎の向きが、基台(ブラケット7A,7B)の回転軸回りに変えられ、作業者は、大きく姿勢を変えることなく、作業を続行することが出来る(図1〜図3、図12、図13、図17〜図19)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
先ず、図1〜図18を参照して第1実施形態を説明する。
図1(正面図)、図2(図1のX−X断面図)、図3(平面図)、図4(斜視図)において、当該バーナーワーク用ガスバーナーは、ノズルホルダ1と、本体部2と、本体部2の回転軸2Sa、2Sbを回動自在に軸支するブラケット7A,7Bとを有している。
【0012】
ノズルホルダ1は、図2に詳細断面を示すように、中央のノズル11と、該中央のノズル11の周囲に同心円状に配列された複数の中間輪のノズル12と、該中間輪のノズル12の周囲に同心円状に配列された複数の外輪のノズル13と、3段の段付き円柱状のノズル支持部材14(図2参照)と、中間輪のノズル用デリバリ管15と、外輪のノズル用デリバリ管16とで構成されている。
【0013】
ノズル支持部材14は、図2の上方の面14fが一つの平面で、上方の面14fの反対側が下方になるに従って径の小さくなる3段の円柱段付形状である。
上方の面14f側には、上方の面14fの中心に中央のノズル11が立設されている。前記中央のノズル11を包囲するように、同一の同心円C1上に中間輪のノズル12(図示の例では7個)が立設され、更に中間輪のノズル12の外側には、別の同一の同心円C2上に外輪のノズル13(図示の例では13個)が立設されている。
【0014】
ノズル支持部材14を構成する最下端の最小径の円柱部141には、円柱部141の中央に、ノズル支持部材14を上下に貫通し、且つ前記中央のノズル11の領域内に一端が開口するように中央ノズル孔141nが穿孔さている。
そして、最小径の円柱部141の外周部には後述する第1の混合気供給管3の上端の内径部3iが嵌合されている。
【0015】
最小径の円柱部141よりも更に大きな径の円柱部142には、前記中間輪のノズル12の中心上に中心点を持つノズル孔142n(図示の例では7個)が、ノズル支持部材14を上下に貫通し、且つ前記中間輪のノズル12の領域内に各々のノズル孔142nの一端が開口するように穿孔されている。
そして、円柱部142の外周部には中間輪のノズル用デリバリ管15の上端が嵌合されている。
【0016】
円柱部142よりも更に大きな径の円柱部143には、前記外輪のノズル13の中心上に中心点を持つノズル孔143n(図示の例では13個)が、ノズル支持部材14を上下に貫通し、且つ前記外輪のノズル13の領域内に各々のノズル孔143nの一端が開口するように穿孔されている。
そして、円柱部143の外周部には雄ねじ143aが形成され、その雄ねじ143aに外輪のノズル用デリバリ管16の内径部上端に形成された雌ネジ16aが螺合される様に構成されている。
【0017】
中間輪のノズル用デリバリ管15の下端は底部材15bで閉塞させられると共に、その底部材15bは、前記第1の混合気供給管3を気密に貫通させている。
また、外輪のノズル用デリバリ管16の下端は底部材16bで閉塞させられると共に、その底部材16bは、中間輪のノズル用デリバリ管15を気密に貫通させている。
【0018】
本体部2の上方の中央寄りには、図1及び図3の左右方向で、本体部2の左端に開口部を有し、右端に近い位置まで延在する盲孔である共通燃料供給ライン210が形成されている。その開口部には雌ねじ210aが形成されており、その雌ねじに螺合する金具を有する図示しない燃料ホースによって、例えば燃料であるプロパンガスが当該供給燃料供給ライン210内に供給される様に構成されている。
【0019】
本体部2の前面(図2における左方)近傍には、前面から同じ距離だけ後退した位置で、本体部2の左右方向の中央及び左右両端近傍に垂直方向に延在し、本体部2上方に開口部を有する燃料供給縦孔214,215,216が形成されている。
図1における左右方向の中央の燃料供給縦孔が第1の燃料供給縦孔214で、右端の燃料供給縦孔が第2の燃料供給縦孔215で、左端の燃料供給縦孔が第3の燃料供給縦孔216である。
【0020】
それらの第1、第2、第3の燃料供給縦孔214,215,216は、前記共通燃力供給ライン210と、符号順に連通孔211,212,213によって連通している。
尚、係る連通の態様については、後で詳述する。
【0021】
第2の燃料供給縦孔215における上方開口部は、図5に詳細を示すように、雌ねじ215aを形成した拡径部215bと更に拡径された開口孔215cによって構成されている。
【0022】
その雌ねじ215aには、図6に詳細を示す様な、雄ねじ部24aと括れ部24bと上端フランジ24cとから成るプラグ24が螺合され、開口孔215cを塞ぐように構成されている。
前記括れ部24bには、OリングO2が装着される(図2参照)。
【0023】
図5の第2の燃料供給縦孔215には、本体部2の前端に開口部を有し、当該縦孔215の軸中心線Lcを含み、紙面上に中心軸を有する水平に配置された摺動孔21afが形成され、その摺動孔21afの最深部が前記連通孔212と連通することによって、共通燃料供給ライン210と第2の燃料供給縦孔215は連通している。
ここで、連通孔212は、共通燃料供給ライン(孔)210を貫通して設けられている。そして、この連通孔212には、後述するリターンスプリングS2が介装される(図2参照)。
【0024】
詳細には、摺動孔21afの開口部は、本体部2の前面から円柱状に突出した突出部2tと同心に位置する様に形成されている。そして、その突出部2tの外周には雄ねじ2pが形成され、後述するロック部材26(図8参照)の雌ねじ26bと螺合するように構成されている。
【0025】
第3の燃料供給縦孔216も同様に構成(216a,216b,216c,21af,213)されている(図5の符号215を216と読み替えて参照。また、図15も参照)。
しかし、第1の燃料供給縦孔214には摺動孔21afは形成されていなく、従って、第1の燃料供給系統に関しては、本体部2には突起部2tもない。第1の燃料供給縦孔214の場合は、共通燃料供給ライン210と第1の燃料供給縦孔214とを単に連通するのみの連通孔211が形成されているだけである(後述の図14参照)。
【0026】
図5を再度参照して、前記摺動孔21afには、燃料流路開閉ロッド21が挿入される。詳細には後述する燃料流路開閉ロッドの摺動部21aが挿入される。摺動孔21afと燃料流路開閉ロッドの摺動部21aとは、隙間は最低限であるが円滑に摺動出来る様に嵌合されている。
【0027】
図7を参照して、燃料流路開閉ロッド21について更に詳細に説明する。
燃料流路開閉ロッド21は、図示の右端側に形成された摺動部21aと、その摺動部21aの右端に形成された球状弁受け孔21bと、摺動部21aの一部に形成されたOリング(O1;図2参照)介装用の縮径部21cと、摺動部21aに隣接した軸部21dと、軸部21dの左端(ロッドの左端)に形成されたノブ21fとによって構成されている。軸部21dの途中には、部分球状の切欠き21eが形成されている。
【0028】
前記球状弁受孔21bの直径は、球状弁20(図2参照)の直径よりもわずかに大きく、前記連通孔212の直径は球状弁20の直径よりも小さく形成され、球状弁20を球状弁受け孔21bの底部に当接させた状態で、燃料流路開閉ロッド21を本体部2側に押込み(ロッド21を左行させる)、球状弁20が、連通孔212の入口に当接すれば、燃料の通過が阻止される。
【0029】
尚、ノブ21fの中央には明確には図示はしないが、雌ねじが形成されており、軸部21dに形成された雄ねじで螺合することによって一体となるように構成されている。
【0030】
ここで、燃料流路開閉ロッド21の軸部21dと、本体部2の摺動孔21afとは、図2で示すリターンスプリングS1の介装を許容する隙間が形成されるように構成されている(図2参照)。
【0031】
図8を参照して、ロック部材26について詳述する。
ロック部材26は、図示の左端側に開口し、前記燃料流路開閉ロッド21の軸部21dを挿通させる挿通孔26aと、その挿通孔26aの右端に隣接する雌ねじが形成された拡径孔26bと、その拡径孔26bの右隣に形成され拡径孔26bよりも大きく形成された拡大孔26cと、前記挿通孔26aに直交し、ロック部材26の外周に開口するリターンスプリング格納孔26dと、リターンスプリングS3(図2参照)の逸脱を阻止するカバー部材26eとによって構成されている。
【0032】
燃料流路開閉ロッド21及びロック部材26を本体部2に組込む際には、図2、図5、図7を参照して、
先ず、連通孔212内にリターンスプリングS2を挿入する。次に、燃料流路開閉ロッド21の括れ部21cにOリングO1を装着させ、且つ、球状弁受け孔21bに球状弁20を嵌め込み、その状態で、本体部2の摺動孔21afに燃料流路開閉ロッド21の摺動部21aを挿入する。
【0033】
次に、ノブ21fを軸部21dより取り外し、軸部21dの周囲にリターンスプリングS1を装着させる。
【0034】
次に、ロック部材26の挿通孔26aに燃料流路開閉ロッド21の軸部21dを挿通させて、ロック部材26を更に押込み、ロック部材26の拡径孔26bの雌ねじを本体の突出部2tに形成された雄ねじ2pに螺合させ、締め込む。
【0035】
尚、ロック部材26及び燃料球路開閉ロッド21には、ロック部材26のリターンスプリング格納孔26dと、燃料流路開閉ロッド21側の切欠き21eの回転方向の位相が一致するように、互いにマーキングを施してあり、ロック部材26を本体部2に締め込んだ後に、燃料流路開閉ロッド21を回転させて、係る位相の一致を行う。
【0036】
この時点ではロック部材26には、カバー26eが装着されていなく、ロック部材26のリターンスプリング格納孔26dにロックボール27を入れ、その後リターンスプリングS3を挿入する。
【0037】
その後、ロック部材26にカバー26eを装着させれば、1箇所(第2の供給系統;図2及び図15がこれに対応)の燃料流路開閉ロッド21及びロック部材26の本体部2への組込みは完了する。同様にして残る1箇所(第3の供給系統;図16がこれに対応)の組み込みを行う。
【0038】
ここで、中間輪のノズル12に流れる燃料及び外輪のノズルに流れる燃料を遮断して、ノズルの火力を落とす操作について説明する。
【0039】
先ず、中位に火力を落とす場合は、例えば、外輪のノズル13に係る燃料流路開閉ロッド21のノブ21fを、流路開閉ロッドロック機構26のロックボール27が流路開閉ロッド21の切欠き21eから押出されるように押込む。一定量押込めば、その後はリターンスプリングS1の付勢によって、球状弁20が第3の連通孔213を塞いで、外輪のノズル13に流れる燃料をカットする。
【0040】
ノズルの火力を最低限まで落とすには、外輪のノズル側の燃料流路開閉ロッドの操作に加え、同様に中間輪のノズル12に係る燃料流路開閉ロッド21を操作すれば良い。
尚、リターンスプリングS1の付勢は、球状弁側のリターンスプリングS2の付勢よりも大である。
【0041】
本実施形態における中央のノズルへの燃料供給系には、燃料流路開閉ロッド21及び流路開閉ロッドロック機構26は設けていないが、これらの機構を装備することは可能である。
【0042】
次に、同じく図1〜図3を参照して、燃料の量を調節する燃料調整機構について説明する。
【0043】
前記燃料供給縦孔214,215,216の下方には夫々、同じ構成の燃料調整機構が設けられている。ここでは、代表して、第2の燃料供給縦孔215に係わる燃料調整機構について説明する。
【0044】
本体部2の下方であって、第2の燃料供給縦孔215の下方の領域近傍には、水平方向に部分円錐状に突出する突出部2Tが形成されている(図2参照)。そして、その突出部2Tの更に先端部には突出部2Tの先端の最小径よりも更に径が小さな水平突出部2Hが形成されている。
【0045】
水平突出部2Hの端部には、雌ねじ2Haが形成され、更にその雌ねじ2Haに連続して雌ねじ2Haより内径の小さな摺動孔231が水平方向に穿孔されている。更にその摺動孔231に連続して、摺動孔231の内径よりも谷径が小さな雌ねじ232が形成され、その雌ねじ232は、前記第2の燃料供給縦孔215に連通する様に構成されている。即ち、突出部2Hの端部に形成された雌ねじ2Haから雌ねじ232にかけての一連の中心軸は、前記第2の燃料供給縦孔215の中心軸と直交する様に構成されている。
【0046】
そして、更に本体部2において、雌ねじ232の延長先であって、前記第2の燃料供給縦孔215に対する雌ねじ232の反対側には、第2の燃料供給横孔218(第1の燃料供給縦孔214に対しては第1の燃料供給横孔217(図14参照)、第3の燃料供給縦孔216に対しては第3の燃料供給横孔219(図16参照))が形成されている。
【0047】
前記摺動孔231には、図9に詳細を示す燃料調整部材22の摺動部22dが挿入され、摺動孔231を燃料調整部材22の摺動部22dが摺動する様に構成されている。
【0048】
図9を参照して、燃料調整部材22について更に詳細に説明する。
燃料調整部材22は、図示の右端側に形成された先端側が細いテーパー状の弁体部22aと、その弁体部22aの左隣の弁体部22aの最大径と同じ太さが続く平行部22bと、雄ねじ部22cと、雄ねじ部22cの左隣の摺動部22dと、摺動部22dに連なる左端の軸部22fとを有している。
【0049】
摺動部22dの中間には括れ部22eが形成され、その括れ部22eには漏洩防止用のOリングO3が装着される(図2参照)。
【0050】
軸部22fの左端側にはノブ22gが回転止め用の小ねじ22hによって固定されるように構成されている。
【0051】
図2をも参照して、水平突出部2Hの端部の雌ねじ2Haには中心に軸部22fを挿通させながら本体部2内へのゴミの侵入を阻止するための防塵プラグ6の雄ねじ部6aが螺合して、摺動孔231を塞ぐように構成されている。
【0052】
前記ノブ22gの図示の右端にはスカート部22iが形成され、前記防塵プラグ6及び水平突出部2Hを覆っている。
【0053】
図2の状態は、弁体部22aと平行部22bの境界が本体部2に形成された第2の燃料供給横孔218の入口に一致しており、そのため、弁体部22aにより、第2の燃料供給横孔218が閉塞され、燃料が流れない状態を示している。
【0054】
バーナーワークでは、細かな細工を行う上で、火力を落とした状態にしたい場合がある。
係る火力を落とした状態は、例えば、第2及び第3の燃料供給横孔218,219に関与する燃料調整部材22を回転させて捻じ込むことで、本体部2側への挿入代を増加させ、第2及び第3の燃料供給横孔218,219を弁体22aで、閉塞させ、依って、第2及び第3の燃料供給横孔218,219を流過する燃料をカットすることにより、実現出来る。
【0055】
次に、空気供給系統と供給する空気量の調整機構について、同じく図1〜図3を参照して説明する。
【0056】
本体部2の下方には、図1における左右方向の左端に開口部220aを有し、右端近傍まで延在する盲孔である共通空気供給ライン220が形成されている。
そして、その共通空気供給ライン220の左端近傍で前記第3の燃料供給縦孔219の中心軸を含み、図1の紙面に垂直な平面で共通空気供給ライン220を切った断面位置よりも上流側には、前記燃料調整部材22と同様の構成から成る空気量調整部材23の弁体部(空気調整部材23の各構成は、燃料調整部材22と同様であるので、符号を付しての説明は省略する)が、共通空気供給ライン220と直交し、図2の紙面と平行で且つ水平に形成された空気排出弁孔241に挿入され、燃料調整部材22と同じ原理で、図2の左右方向に移動する様に構成されている。
【0057】
前記空気排出弁孔241には、垂直方向に延在し、途中から雌ねじが形成された空気排出孔242が、排出弁孔241と直交する様に形成されている。
そして、その空気排出口242の雌ねじには、下端に雄ねじを形成し、空気排出管を兼ねた消音器25が取り付けられるように構成されている。
尚,空気の大気への排出時の排出音が気にならない場合は、消音器25を廃止して、直接空気排出口242から空気を大気に排出することも出来る。
【0058】
バーナーに供給される空気量の調整に際しては、空気量調整部材23を緩める様にノブを回して、弁体を空気排出弁穴241から抜くように操作すれば、空気排出口242及び消音器25を経由して、供給空気の一部はノズルホルダ1に達する前に大気に排出される。
【0059】
供給される燃料ガスによって、理論空燃比(λ)は決まる。
例えば、プロパンガスの理論空燃比(λ)は、λ=15.52であり、都市ガスの理論空燃比(λ)は、λ=17.07である。
このように、理論空燃比の異なる供給ガスを変えたい場合、空気量調整部材23のノブの操作(予め供給ガスの種類によりノブ及び又は本体側に目盛りを付けておく)することによって、容易に理論空燃比を得ることが出来る。
【0060】
次に、図2及び図2のA部拡大図である図10を参照して、燃料と空気の混合の態様を説明する。
【0061】
第2の燃料供給横孔218を含む平面には、共通空気供給ライン220と直行し、上方に延在する第2の空気供給孔222が形成されており、その上方には第2のオリフィス225が形成されている。
【0062】
オリフィス225の上方にはオリフィス225の外径よりも大きな径で、円柱状の空間である第2の混合エリア228が形成されている。その第2の混合エリア228の上端には、中央のノズル11(図2参照)に混合気を供給するための第2の混合気供給管4の下端4eが当接するようにセットされる。
【0063】
第1の混合気供給管4の内径部4iの直径は、前記第2の混合エリア228の直径よりも小さく構成されている。
【0064】
共通空気供給ライン220から第2の空気供給口222に流入した空気(矢印Y1)は、第2のオリフィス225で通路が急激に絞られ、流速を増大させて、第2の混合エリア228で膨張拡散する。この時、第2の燃料供給横孔218からも第2の混合エリア228内に燃料が空気流に直交する方向で進入(矢印Y2)する。
【0065】
即ち、第2の混合エリア228の前後では、断面積が急激に変化し、更に燃料と空気の進入方向も異なるために、乱流が起こり、供給された燃料と空気は、好適に混合される。
【0066】
尚、図12、図13及び図15では、第2の供給ライン(以下、中間輪のノズル12に対応する供給ラインには「第2の供給ライン」と言う)から供給される燃料及び空気の流れを符号Ff2、Af2で示している。
同じく、第1の供給ライン(以下、中央のノズル11に対応する供給ラインには「第1の供給ライン」と言う)から供給される燃料及び空気の流れを、図12、図13及び図14において、符号Ff1、Af1で示し、第3の供給ライン(以下、外輪のノズル13に対応する供給ラインには「第3の供給ライン」と言う)から供給される燃料及び空気の流れを、図12、図13及び図16において、符号Ff3、Af3で示している。
【0067】
図1及び図3を参照して、第2の供給ラインの第2の混合気供給管4の上端には中継部材41が接続され、その中継部材41は前記中間輪ノズル用デリバリ管15と接続し、中間輪ノズル用デリバリ管15に混合気を送り込むように構成されている。
【0068】
また、第3の供給ラインの第3の混合気供給管5の上端には中継部材51が接続され、その中継部材51は前記外輪ノズル用デリバリ管16と接続し、外輪ノズル用デリバリ管16に混合気を送り込むように構成されている。
【0069】
ここで、図2のB部詳細図である図11、及び図14を参照して、中央のノズル11の詳細構成について説明する。
【0070】
中央ノズル11の内部には、先端が円錐台形のノズルヘッド11Nが嵌入されている。ノズルヘッド11Nの下方は、ノズル支持部材14に形成されたノズル孔141nと連通している。
ノズルヘッド11Nの頂部には主噴孔11Naが形成され、ノズルヘッド11Nのテーパー状の斜面には噴射向きが、半径斜め外方に向く様に複数の副噴孔11Nbが形成されている。
【0071】
中央のノズル11に連通する前記第1の混合気供給管3は、本体部3の上方では、本体部2の上面に形成された雌ねじ孔2gに螺合するプラグ28と一体化されており、プラグ28を雌ねじ孔2gに捻じ込むことで混合気供給管3及びその上部のノズルホルダ1を本体部2に固定する様に構成されている。
【0072】
また、雌ねじ孔2gにおけるプラグ28の直下には、OリングO4が介装されており、混合気の漏洩を防止している。
【0073】
副噴孔11Nbから噴射された混合気ジェットJbは、一旦ノズル11の内周で反射されて、主噴孔11Naから噴射された混合気ジェットJaと衝突することで、噴霧の粒子を微粒化して燃焼効率を高めている。
【0074】
次に、図17〜図19を参照して、本体部2の回動機構について説明する。
バーナーワーク用ガスバーナー全体の質量及び体積は、片手に持って操作するには大き過ぎる。
一方、創作中には創作対象物(ワーク)を片手に持ち、残る片手で、「へら」等を持って対象物(ワーク)の形状を整えなくてはならない場合がある。また、対象物(ワーク)の形状を整える際には、バーナーの炎の向きは、相当量変更出来ることが好ましい。
当該実施形態のガスバーナーでは、係る相当量の向きの変更が可能になるように本体部2に回転機構を備えている。
【0075】
図17〜図19において、当該回転機構は、本体部2の一方の側面(図示の例では、図17の右方側面)上方に配置された本体回転減速装置8と、本体部2の回転軸2Sbを回動自在に軸支するブラケット7Bに固定された扇状のセクターギヤ810とで構成されている。
【0076】
本体部2の側部上方には、ブラケット10が取り付けられ、そのブラケット10の先端部には電動モータ81が、モータ81の回転軸81aの向きが本体部2の前後方向(図18の左右方向)に向くように取り付けられている。
【0077】
以降、図19を参照して、電動モータ81の回転軸81aには第1のピニオンギヤ82が固着されており、その第1のピニオンギヤ82は、図示しない支持部材によって本体部2側に固定された回転軸83周りに自在に回転する第1のギヤ84と噛合っている。
【0078】
前記第1のギヤ84には同軸83で回転する第2のピニオン85が一体に固着されている。第2のピニオン85は前記電動モータ81の回転軸81a(或いはモータの回転軸81aの延長上の別の回転支持用の軸)によって回動自在に軸支された第2のギヤ86と噛合っている。
【0079】
前記第2のギヤ86には第2のギヤ86と同軸(モータの回転軸81a)で回転する第3のピニオン87が一体に固着されている。第3のピニオン87は前記回転軸83によって回動自在に軸支された第3のギヤ88と噛合っている。
【0080】
第1のピニオン82から第3のギヤ88までの歯形は平歯である。回転軸83における第3のギヤに隣接して、ウォームギヤ89が第3のギヤ88と一体で回転するように取り付けられている。このウォームギヤ89は本体部2の回転支持用のブラケット7Bに固定された前記セクターギヤ810と噛合い、電動モータ81の回転速度を減速させて本体部2を本体部自身の回転軸2Sb周りに回動させるように構成されている。
【0081】
図示の例では、セクターギヤ810は、ブラケット7BにボルトB2で取り付けているが、その他の締結手段で取り付けることも出来る。
図17〜図19において符号B1は本体用のブラケット7Bを、例えば、図示しない作業台に取り付けるためのボルトを示している。
【0082】
上述したような構成の本実施形態によれば、中央のノズル11と、該中央のノズル11の周囲に同心円上に配列された複数の中間輪のノズル12及び中間輪のノズル12の周囲に同心円上に配列された複数の外輪のノズル13とを有し、中央のノズル11、中間輪のノズル12、及び外輪のノズル13は、夫々が専用の燃料供給系統と空気供給系統を経由して、第1〜第3の混合気供給管3,4,5で燃料と空気を供給される様に構成され、供給燃料供給ライン210に介装された燃料調整部材22によって、空気量と、燃料の量との比、すなわち、空燃比を理論空燃比とすることが出来る。
そのため、高効率で、高温の燃焼炎が得られ、あらゆる材料に対応したバーナーワークが可能となる。
【0083】
また、本発明のバーナーワーク用ガスバーナーの本体部2はブラケット7A,7Bに対して回動可能に構成されているので、炎の向きも、ブラケット7A,7Bの回転軸回りに変えられ、作業者は、大きく姿勢を変えることなく、作業を続行することが出来る。
【0084】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】発明の実施形態の構成を説明する正面図。
【図2】図1のX‐X断面図。
【図3】図1に対応する平面図。
【図4】発明の実施形態の外観形状を示した斜視図。
【図5】発明の実施形態に係る燃料供給縦孔の上部を詳細に示した断面図。
【図6】発明の実施形態に係るプラグの側断面図。
【図7】発明の実施形態に係る燃料流路開閉ロッドの側断面図。
【図8】発明の実施形態に係るロック部材の側断面図。
【図9】発明の実施形態に係る燃料調整部材の側面図。
【図10】図2のA部拡大図。
【図11】図2のB部拡大図。
【図12】図1に対応させて燃料及び空気の流れを示した作動図。
【図13】図3に対応させて燃料及び空気の流れを示した作動図。
【図14】図11のX1‐X1断面図であり、燃料及び空気の流れを示した作動図。
【図15】図11のX2‐X2断面図であり、燃料及び空気の流れを示した作動図。
【図16】図11のX3‐X3断面図であり、燃料及び空気の流れを示した作動図。
【図17】第1実施形態における本体の回転減速装置の概略構成を示した正面図。
【図18】図17に対応する側面図。
【図19】図17に対応する平面図。
【符号の説明】
【0086】
1・・・ノズルホルダ
2・・・本体部
3・・・第1の混合気供給管
4・・・第2の混合気供給管
5・・・第3の混合気供給管
6・・・防塵プラグ
7A,7B・・・本体支持用ブラケット
8,9・・・本体回転減速装置
11・・・中央ノズル
12・・・中間輪のノズル
13・・・外輪のノズル
14・・・ノズル支持部材
15・・・中間輪ノズル用デリバリ管
16・・・外輪ノズル用デリバリ管
20・・・球状弁
21・・・燃料流路開閉ロッド
22・・・燃料調整部材
23・・・空気量調整部材
24・・・プラグ
25・・・空気排出管を兼ねた消音器
26・・・流路開閉ロッドロック機構
27・・・ロックボール
210・・・共通燃料供給ライン
211・・・第1の連通孔
214・・・第1の燃料供給縦孔
217・・・第1の燃料供給横孔
220・・・共通空気供給ライン
221・・・第1の空気供給孔
224・・・第1のオリフィス
227・・・第1の混合エリア
231・・・摺動孔
232・・・雌ねじ孔
241・・・空気排出弁孔
242・・・空気排出孔
S1〜S3・・・リターンスプリング
O1〜O4・・・Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央のノズルと、該中央のノズルの周囲に同心円状に配列された複数のノズルとを有し、同一の同心円上に配列された複数のノズルは同一の燃料供給系統と空気供給系統を経由して燃料と空気を供給され、中央のノズルは中央のノズル用の燃料供給系統と空気供給系統を経由して燃料と空気を供給される様に構成され、燃料供給系統には可変流量調整装置が介装され、空気供給系統には空気流量を設定する流量調整装置が介装されており、空気供給系統の流量調整装置よりもノズル側で且つ燃料供給系統の可変流量調整装置のノズル側で燃料供給系統と空気供給系統とが合流していることを特徴とするバーナーワーク用ガスバーナー。
【請求項2】
前記ノズルと、燃料供給系統と、空気供給系統とを有する本体部を備え、該本体部は基台に接続されており、且つ、本体部は基台に対して回動可能に構成されている請求項1のバーナーワーク用ガスバーナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−292301(P2006−292301A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115253(P2005−115253)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(393026733)株式会社ソフィアプレシジョン (9)
【Fターム(参考)】