説明

バーナ

【課題】アルコールのように揮発性の高い燃料を用いる場合でも、不着火や失火を防止するボイラ用バーナを提供する。
【解決手段】第一ノズル6と第二ノズル7とを備えるバーナである。第一ノズル6への燃料供給は、第一燃料供給弁12により制御され、第二ノズル7への燃料供給は、第二燃料供給弁13により制御される。第一ノズル6からの燃料噴霧を継続した状態で、第二ノズル7からの燃料噴霧の有無により、燃焼量を変える。第二ノズル7から燃料噴霧を開始する際、予め第二燃料供給弁13を一回または複数回開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてボイラに用いられるバーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば下記特許文献1に開示されるように、低燃焼用ノズルと高燃焼用ノズルとの二つのノズルを有するバーナが知られている。この種のバーナでは、低燃焼時には、低燃焼用ノズルからは燃料を噴霧するが、高燃焼用ノズルからは燃料を噴霧せず、高燃焼時には、低燃焼用ノズルと高燃焼用ノズルとの双方から燃料を噴霧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−215791号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、バイオ燃料が注目され、徐々に実用化されている。たとえば、食品残渣などを用いてアルコールを生成し、ボイラの燃料とする試みもある。しかしながら、重油や軽油などのこれまでの標準燃料と比較して、アルコールは揮発し易いという違いがある。そのため、この種の揮発性の高い液体燃料を、前記特許文献1に開示されるような一対のノズルを備えるバーナで燃焼させると、不都合を生じるおそれがある。
【0005】
具体的には、低燃焼時には、高燃焼用ノズルは燃料を噴霧せずに停止状態にあるので、その間、低燃焼ノズルからの燃料の燃焼による熱を受け、高燃焼用ノズル内(電磁弁からノズルチップまでの間)の燃料が揮発してしまうおそれがある。また、ボイラは、蒸気の使用負荷に応じて、典型的には高燃焼、低燃焼および停止の三位置で制御されるが、停止による待機時にも、それまでの燃焼による熱を炉内から受けるので、各ノズル内の燃料が揮発してしまうおそれがある。これらの場合、ノズルから燃料の噴霧が円滑になされず、不着火になったり、空気比の乱れから失火に至ったりするおそれがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、アルコールのように揮発性の高い燃料を用いる場合でも、不着火や失火を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、ノズルから燃料噴霧を開始する際、予めそのノズルへの燃料供給弁を一回または複数回開閉することが、少なくとも一本のノズルでなされることを特徴とするバーナである。なお、燃料供給弁の開閉は、全開と全閉との間で行う必要はなく、所望の開度までの開閉でもよい。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ノズルから燃料噴霧を開始する際、予めそのノズルへの燃料供給弁を一回または複数回開閉する。これにより、ノズル内の燃料気化による空洞部を埋めて、確実で安定した着火や燃焼移行を実現することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、第一ノズルと第二ノズルとを備え、前記第一ノズルからの燃料噴霧を継続した状態で、前記第二ノズルからの燃料噴霧量を変え、前記第二ノズルから燃料噴霧を開始する際、予め第二ノズルへの燃料供給弁を一回または複数回開閉することを特徴とするバーナである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、第一ノズルからの燃料噴霧を継続した状態で、第二ノズルからの燃料噴霧量を変えるが、第二ノズルから燃料噴霧を開始する際、予め第二ノズルへの燃料供給弁を一回または複数回開閉する。これにより、第二ノズル内の燃料気化による空洞部を埋めて、確実で安定した燃焼移行を実現することができる。なお、「第二ノズルからの燃料噴霧量を変え」には、第二ノズルからの燃料噴霧の有無を変える場合も含まれる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記第二ノズルから燃料噴霧を開始する際、直前における前記第一ノズルからの燃料噴霧のみで燃焼した時間に基づき、前記第二ノズルへの燃料供給弁の事前開閉の有無もしくは回数または開放時間を変更することを特徴とする請求項2に記載のバーナである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、第一ノズルからの燃料噴霧のみで燃焼した時間に基づき、第二ノズルへの燃料供給弁の事前開閉の有無もしくは回数または開放時間を変更することで、第二ノズル内の燃料気化による空洞部を適切に埋めることができる。
【0013】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記第一ノズルから燃料噴霧して着火する際、予め第一ノズルへの燃料供給弁を一回または複数回開閉することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のバーナである。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、第一ノズルから燃料噴霧して着火する際、予め第一ノズルへの燃料供給弁を一回または複数回開閉することで、第一ノズル内の燃料気化による空洞部を埋めて、確実で安定した着火を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アルコールのように揮発性の高い燃料を用いる場合でも、不着火や失火を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例のバーナが設けられたボイラの一例を示す概略図であり、一部を省略して示すと共に一部を断面にして示している。
【図2】図1のバーナの燃焼量の変化の一例を示す概略図であり、ハッチングを施した箇所が燃料の供給状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例のバーナが設けられたボイラの一例を示す概略図であり、一部を省略して示すと共に一部を断面にして示している。
【0018】
このボイラ1は、円筒状に配列された多数の水管2,2,…を有し、その円筒状の水管列3の径方向中央上部に、バーナ4が下方へ向けて設けられる。バーナ4から吐出される燃料は、円筒状の水管列3の内側で燃焼を図られる。つまり、円筒状の水管列3の内側が、燃焼室5として機能する。
【0019】
本実施例のバーナ4は、液体燃料を燃焼させるものであり、第一ノズル6と第二ノズル7との二つのノズルを備える。第一ノズル6は、第一ノズルパイプ8と、その先端部に設けられる第一ノズルチップ9とから構成される。また、第二ノズル7は、第二ノズルパイプ10と、その先端部に設けられる第二ノズルチップ11とから構成される。
【0020】
第一ノズルパイプ8と第二ノズルパイプ10とは、それぞれ軸線を上下方向へ沿って配置され、隣接して並列に設けられる。この際、第一ノズルチップ9と第二ノズルチップ11とは、図示例では隣接して同一高さに設けられる。
【0021】
第一ノズル6は、第一ノズルパイプ8へ供給される燃料を、第一ノズルチップ9から下方へ噴霧する。第二ノズル7は、第二ノズルパイプ10へ供給される燃料を、第二ノズルチップ11から下方へ噴霧する。各ノズルチップ9,11からの燃料の噴霧は、本実施例では、各ノズルパイプ8,10への燃料供給弁12,13としての電磁弁の開閉により切り替えられる。
【0022】
具体的には、両ノズル6,7への燃料供給路14は、燃料ポンプ15および燃料元弁16を介した後、二股分かれして各ノズル6,7へ接続される。その際、第一ノズル6への燃料供給路には第一燃料供給弁12が設けられ、第二ノズル7への燃料供給路には第二燃料供給弁13が設けられる。これにより、第一ノズル6には、燃料が、燃料ポンプ15、燃料元弁16および第一燃料供給弁12を介して供給され、第二ノズル7には、燃料が、燃料ポンプ15、燃料元弁16および第二燃料供給弁13を介して供給される。そして、燃料元弁16は、ボイラ1の運転時には開放状態に維持される。
【0023】
従って、第一ノズル6への燃料供給は、燃料ポンプ15を作動させた状態で、電磁弁から構成される第一燃料供給弁12を開くことで行われ、第二ノズル7への燃料供給は、燃料ポンプ15を作動させた状態で、電磁弁から構成される第二燃料供給弁13を開くことで行われる。逆に、第一ノズル6への燃料供給の停止は、第一燃料供給弁12を閉じることで行われ、第二ノズル7への燃料供給の停止は、第二燃料供給弁13を閉じることで行われる。そして、双方のノズル6,7への燃料供給を停止する場合には、燃料ポンプ15の作動も停止すればよい。
【0024】
このようにして、本実施例では、第一ノズル6からの燃料の噴霧は、第一燃料供給弁12により切り替えられ、第二ノズル7からの燃料の噴霧は、第二燃料供給弁13により切り替えられる。但し、一方または双方のノズル6,7は、燃料噴霧の有無だけでなく流量を変えてもよい。たとえば、第二ノズルパイプ10の中途に、燃料ポンプ15より上流側への戻し路を設け、それによる戻し量を調整することで、第二ノズル7からの燃料噴霧の流量を変えてもよい。その場合、噴霧流量の調整により、後述する低燃焼状態と高燃焼状態との間の燃焼移行を、より円滑に行うことができる。
【0025】
本実施例のバーナ4は、第一ノズル6へ供給される燃料と、第二ノズル7へ供給される燃料とが同一のものとされる。この燃料は、重油、軽油または灯油のような従来からの標準燃料よりも揮発性の高い燃料であり、たとえばエタノールのようなアルコールとされる。
【0026】
本実施例のバーナ4は、燃焼室5内へ燃焼用空気を供給する給気筒17をさらに備える。図示例では、給気筒17は、同心円筒状に配置された内外二重の筒体から構成される。そして、この給気筒17の軸線に沿って、前記各ノズルパイプ8,10が設けられる。この際、給気筒17の下方開口部の直前まで、各ノズルパイプ8,10が差し込まれて設けられる。
【0027】
また、本実施例のバーナ4は、給気筒17の下方に燃焼筒18をさらに備える。また、給気筒17の上部には、ウィンドボックス19が設けられ、ここに送風機(図示省略)から空気が供給される。送風機からの空気は、ウィンドボックス19および給気筒17を介して、燃焼用空気として燃焼室5内へ供給される。各ノズル6,7から燃料を噴霧して燃焼を図る際には、所望量の空気がこのようにして燃焼室5内へ供給される。
【0028】
図2は、本実施例のバーナ4の燃焼量の変化の一例を示す概略図であり、ハッチングを施した箇所が燃料の供給状態を示している。同図において、(a)は低燃焼時、(b)は移行時、(c)は高燃焼時を示している。また、同図において、各燃焼段階に示した左右一対のノズル6,7の内、左側が第一ノズル6を示し、右側が第二ノズル7を示している。また、同図下部のタイミングチャートにおいて、下段が第一ノズル6からの燃料噴霧(具体的には第一燃料供給弁12の開放)の有無を示し、上段が第二ノズル7からの燃料噴霧(具体的には第二燃料供給弁13の開放)の有無を示している。
【0029】
本実施例では、ボイラ1は、高燃焼、低燃焼および停止の三位置で燃焼量が制御される。この燃焼量の制御は、周知のとおり、ボイラ1からの蒸気圧に基づき、蒸気の使用負荷を監視して、圧力スイッチ(図示省略)により行うことができる。
【0030】
本実施例では、低燃焼時には、図2(a)に示すように、第一ノズル6から燃料が噴霧され、高燃焼時には、同図(c)に示すように、第一ノズル6に加えて第二ノズル7からも燃料が噴霧され、停止時には、双方のノズル6,7からの燃料噴霧が停止される。
【0031】
図2(b)に示すように、低燃焼状態から高燃焼状態へ移行する場合は、第一ノズル6からの燃料噴霧を継続した状態で、予め第二燃料供給弁13を一回または複数回開閉する。これを事前開閉操作と呼ぶことにする。低燃焼時、第二ノズル7は停止しているので、第二ノズル7内の燃料が気化しているおそれがあるが、第二ノズル7からの燃料噴霧を開始する際、事前開閉操作を行うことで、第二ノズル7内の燃料の空洞部を埋めることができる。その後、改めて第二ノズル7から燃料噴霧を継続して行い、この際に燃焼用空気の流量も変えることで、空気比を所望に維持して燃焼移行を図ることができる。但し、送風機がインバータ制御される場合など、所望により、前記事前開閉操作の段階で、燃焼用空気の流量を増加し始めてもよい。
【0032】
ところで、第二ノズル7から燃料噴霧を開始する際、直前における第一ノズル6からの燃料噴霧のみで燃焼した時間(直前の低燃焼時間)に基づき、事前開閉操作における第二燃料供給弁13の開閉の有無もしくは回数または開放時間を変更するのがよい。これにより、第二ノズル7内の燃料気化による空洞部を適切に埋めることができる。
【0033】
また、このような事前開閉操作は、燃焼移行時だけでなく、着火時にも行ってもよい。つまり、着火時にも、それまでの待機時に第一ノズル6内の燃料が気化しているおそれがあるので、実際の着火動作の直前に、予め第一燃料供給弁12を一回または複数回開閉してもよい。これにより、第一ノズル6内の燃料が気化していても、その空洞部を燃料で埋めることができる。この際、上述したのと同様に、直前までの燃焼停止時間に基づき、事前開閉操作における第一燃料供給弁12の開閉の有無もしくは回数または開放時間を変更してもよい。その後、改めて第一ノズル6から燃料噴霧を継続して行えばよい。
【0034】
本発明のバーナ4は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、アルコールのような揮発性の高い燃料を用いる場合、その燃料を噴霧してその燃料の燃焼をし始めるに際し、予めそのノズルへの燃料供給弁を一回または複数回開閉する構成であれば、各ノズル6,7は、燃料噴霧がなされている際に、その噴霧の流量は変えてもよい。また、燃料の種類、ボイラ1およびバーナ4の構成および制御は適宜に変更可能である。また、燃料供給弁12,13は、電磁弁の他、電動弁を用いてもよい。その場合、燃料供給弁12,13の事前開閉操作は、全開と全閉との間で行う必要はなく、所望の開度までの開閉でもよい。さらに、ボイラ1以外のバーナにも同様に適用可能である。
【0035】
さらに、前記実施例では、一対のノズル6,7を備え、双方のノズル6,7に揮発性の高い燃料を供給したが、ノズルの本数は適宜に変更可能であり、また、場合により異なる燃料を供給してもよい。異なる燃料を供給する場合でも、揮発性の高い燃料を噴霧し始めるに際し、予め燃料供給弁を開閉すればよい。
【0036】
各ノズル6,7に異なる燃料を供給する場合、典型的には、従来からの標準燃料と、アルコールのような揮発性の高い燃料とされる。その際、標準燃料としては、重油、軽油または灯油のような液体燃料であってもよいし、都市ガス、天然ガスまたは液化石油ガスのような気体燃料であってもよい。いずれにしても、揮発性の高い燃料を噴霧し始めるに際し、予め燃料供給弁を開閉すればよい。なお、液体燃料ではなく気体燃料を吐出させる場合、そのノズルの構成は、従来公知の各種のガスバーナの構成に変更される。
【符号の説明】
【0037】
1 ボイラ
4 バーナ
6 第一ノズル
7 第二ノズル
12 第一燃料供給弁
13 第二燃料供給弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから燃料噴霧を開始する際、予めそのノズルへの燃料供給弁を一回または複数回開閉することが、少なくとも一本のノズルでなされる
ことを特徴とするバーナ。
【請求項2】
第一ノズルと第二ノズルとを備え、
前記第一ノズルからの燃料噴霧を継続した状態で、前記第二ノズルからの燃料噴霧量を変え、
前記第二ノズルから燃料噴霧を開始する際、予め第二ノズルへの燃料供給弁を一回または複数回開閉する
ことを特徴とするバーナ。
【請求項3】
前記第二ノズルから燃料噴霧を開始する際、直前における前記第一ノズルからの燃料噴霧のみで燃焼した時間に基づき、前記第二ノズルへの燃料供給弁の事前開閉の有無もしくは回数または開放時間を変更する
ことを特徴とする請求項2に記載のバーナ。
【請求項4】
前記第一ノズルから燃料噴霧して着火する際、予め第一ノズルへの燃料供給弁を一回または複数回開閉する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のバーナ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−255932(P2010−255932A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107050(P2009−107050)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】