説明

バーハンドル車両用連動ブレーキ装置

【課題】 第1前輪ディスクブレーキと第2前輪ディスクブレーキの構成部材を極力共通化し、メンテナンス性や生産性を向上させるとともに、制動力の配分を良好に調整することのできるバーハンドル車両用連動ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】 第1前輪ディスクブレーキ11の各ピストンを同一の径を有する基準ピストン14とし、第2前輪ディスクブレーキ21のピストンは、前輪用ブレーキ操作子2の作動によって液圧作動する基準ピストン14よりも大径の独立ピストン25と、後輪用ブレーキ操作子3の作動に連動して液圧作動する連動ピストン26とを備える。各ピストン17,25,26の前面に配設される各摩擦パッド15を、基準ピストン14に適した大きさの押圧面を有する同一の形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーハンドル車両用連動ブレーキ装置に係り、詳しくは、連動ブレーキ装置に用いられるディスクブレーキの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
前輪と後輪とを連動させて制動するバーハンドル車両用連動ブレーキ装置として、前輪用ブレーキ操作子の作動によって液圧作動する第1前輪ディスクブレーキと、前記前輪用ブレーキ操作子の作動によって液圧作動するとともに、後輪用ブレーキ操作子の作動に連動して液圧作動する第2前輪ディスクブレーキとを備えたものがある。この連動ブレーキ装置に用いられる第1前輪ディスクブレーキと第2前輪ディスクブレーキと後輪ディスクブレーキとに、2組のシリンダ孔を対向して設けた4ポット対向型の同一のキャリパボディを用い、コストの低減を図るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、前輪用ブレーキ操作子の作動によって液圧作動するピストンの径と後輪用ブレーキ操作子の作動に連動して液圧作動する連動用のピストンの径とを異ならせ、制動力の配分を調整できるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−231112号公報
【特許文献2】特公平5−43556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のものでは、第1前輪ディスクブレーキと第2前輪ディスクブレーキと後輪ディスクブレーキとには、同一径のピストンが装着されることから、制動力の配分を調整することはできなかった。
【0005】
また特許文献2のものでは、キャリパボディや摩擦パッドを共通化することができず、メンテナンス性や生産性が悪かった。
【0006】
そこで本発明は、第1前輪ディスクブレーキと第2前輪ディスクブレーキの構成部材を極力共通化し、メンテナンス性や生産性を向上させるとともに、制動力の配分を良好に調整することのできるバーハンドル車両用連動ブレーキ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、第1の本発明は、前輪用ブレーキ操作子の作動によって液圧作動する複数組のピストンを備えた第1前輪ディスクブレーキと、前記前輪用ブレーキ操作子の作動によって液圧作動する少なくとも1組の独立ピストン及び後輪用ブレーキ操作子の作動に連動して液圧作動する少なくとも1組の連動ピストンを備えた第2前輪ディスクブレーキと、後輪用ブレーキ操作子の作動によって少なくとも1組のピストンを液圧作動する後輪ディスクブレーキとを備えたバーハンドル車両用連動ブレーキ装置において、前記第1前輪ディスクブレーキの各ピストンを同一の径を有する基準ピストンとし、前記独立ピストンを前記基準ピストンよりも大径に形成し、前記基準ピストンと独立ピストンと連動ピストンの前面に、同一形状の個別の摩擦パッドをそれぞれ配設したことを特徴としている。
【0008】
第2の発明では、第1の発明の特徴に加えて、さらに前記連動ピストンは、前記基準ピストンよりも小径であることを特徴としている。
【0009】
第3の発明では、第1または第2の発明に加えて、さらに
前記独立ピストン及び前記連動ピストンの少なくともいずれか一方のピストンのピストン中心からディスクロータの中心までの距離が、前記基準ピストンのピストン中心からディスクロータの中心までの距離と異なることを特徴とする請求項1又は2記載のバーハンドル車両用連動ブレーキ装置。
【0010】
第4の発明では、前輪用ブレーキ操作子の作動によって液圧作動する複数組のピストンを備えた第1前輪ディスクブレーキと、前記前輪用ブレーキ操作子の作動によって液圧作動する少なくとも1組の独立ピストン及び後輪用ブレーキ操作子の作動に連動して液圧作動する少なくとも1組の連動ピストンを備えた第2前輪ディスクブレーキと、後輪用ブレーキ操作子の作動によって少なくとも1組のピストンを液圧作動する後輪ディスクブレーキとを備えたバーハンドル車両用連動ブレーキ装置において、前記第1前輪ディスクブレーキの各ピストンを同一の径を有する基準ピストンとし、前記独立ピストンと連動ピストンのピストン中心からディスクブレーキの中心までの距離を、前記基準ピストンのピストン中心からディスクブレーキの中心までの距離と異ならせ、各ピストンの前面に、同一形状の個別の摩擦パッドをそれぞれ配設したことを特徴としている。
【0011】
第5の発明では、第1乃至第4の発明の特徴に加えて、さらに前記第1前輪ディスクブレーキと第2前輪ディスクブレーキとを共通の鋳造型を用いて成形することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1〜第3の発明では、第1前輪ディスクブレーキと第2前輪ディスクブレーキとに用いられる摩擦パッドの形状を共通化することから、メンテナンス性が向上する。また、前記第2前輪ディスクブレーキの独立ピストンの径及び連動ピストンの径を、基準ピストンの径と異ならせることにより、摩擦パッドの形状が同じであって、且つ摩擦パッドのライニング材の摩擦係数が同じであったとしても、前輪用ブレーキ操作子の作動によって得られる制動力と後輪用ブレーキ操作子の作動によって得られる制動力の配分を調整することができる。
【0013】
また第4の発明では、独立ピストンと連動ピストンのピストン中心からディスクロータの中心までの距離を、基準ピストンのピストン中心からディスクロータの中心までの距離と異ならせることにより、摩擦パッドの形状が同じであって、且つ摩擦パッドのライニング材の摩擦係数が同じであったとしても、前輪用ブレーキ操作子の作動によって得られる制動力と後輪用ブレーキ操作子の作動によって得られる制動力の配分を調整することもできる。
【0014】
さらに第5発明では、第1前輪ディスクブレーキと第2前輪ディスクブレーキとに用いられるキャリパボディを鋳造する鋳造型も共通のものを利用できるので、生産性の向上を図ることができる。さらには、独立ピストン、基準ピストン、連動ピストンが同径のものでは、キャリパボディにシリンダ孔を加工する際に用いられる刃具等を共用化できるので、生産コストをより低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の各形態例を図面に基づいて詳しく説明する。図1乃至図3は本発明の第1形態例を示すもので、図1はバーハンドル車両用連動ブレーキ装置の系統図、図2は第1前輪ディスクブレーキの断面正面図、図3は第2前輪ディスクブレーキの断面正面図である。なお、図中の矢印Aは、車両前進走行時のディスクロータの回転方向を示し、以下の説明で用いるディスクブレーキ回入側と回出側とは、車両前進走行時の場合とする。
【0016】
図1に示されるように、バーハンドル車両用連動ブレーキ装置1は、前輪ブレーキとして2つの同径のディスクロータ10a,10bと、各ディスクロータ10a,10bに配設される2ポット対向型の第1前輪ディスクブレーキ11と第2前輪ディスクブレーキ21とを備えるとともに、後輪ブレーキとして1つのディスクロータ30と、1ポット対向型の後輪ディスクブレーキ31とを備えている。第1前輪ディスクブレーキ11は、キャリパボディ12内に設けられた4つの液圧室13を全て連通させた一系統のものであり、第2前輪ディスクブレーキ21は、キャリパボディ22内に設けられた4つの液圧室のうち、ディスク回出側の液圧室23,23同士及びディスク回入側の液圧室24,24同士をそれぞれ連通させて前後の液圧室を別系統とした二系統のものとしている。また、後輪ディスクブレーキ31は、キャリパボディ32内に設けられた2つの液圧室33を連通させている。
【0017】
前輪用ブレーキ操作子2は、操向ハンドルの右端部に設けられた前輪用液圧マスタシリンダ2aに枢支されるブレーキレバーであって、後輪用ブレーキ操作子3は、車体フレームに枢支されるブレーキペダルであり、後輪用ブレーキ操作子3の後端には後輪用液圧マスタシリンダ3aを作動させるピストン押動子3bが設けられている。前輪用ブレーキ操作子2を操作することによって前輪用液圧マスタシリンダ2aにブレーキ作動用の液圧が発生し、後輪用ブレーキ操作子3を操作することによって後輪用液圧マスタシリンダ3aにブレーキ作動用の液圧が発生する。
【0018】
このバーハンドル車両用連動ブレーキ装置1は、前記前輪用ブレーキ操作子2の操作によって発生した液圧を、第1前輪ディスクブレーキ11の4つの液圧室13と、第2前輪ディスクブレーキ21のディスク回出側の2つの液圧室23にそれぞれ供給し、各液圧室13内の基準ピストン14と、各液圧室23内の独立ピストン25とを液圧作動させるための第1前輪ブレーキ系統4と、後輪用ブレーキ操作子3の操作によって発生した液圧を、後輪ディスクブレーキ31の2つの液圧室33に供給し、両液圧室33内のピストン34を液圧作動させるための第1後輪ブレーキ系統5と、後輪用ブレーキ操作子3の操作によって発生した液圧を、第2前輪ディスクブレーキ21のディスク回入側の2つの液圧室24に供給し、両液圧室24内の連動ピストン26を液圧作動させるための第2前輪ブレーキ系統6とを備えている。
【0019】
第1前輪ディスクブレーキ11は、図2に示されるように、前輪に設けられた前記ディスクロータ10aと、該ディスクロータ10aの一側部で車体に取り付けられるキャリパボディ12と、該キャリパボディ12の内部に、ディスクロータ10aを挟んで対向配置される4枚の摩擦パッド15を備えている。キャリパボディ12は、ディスクロータ10aの一側面に配設される第1キャリパ半体12aと、ディスクロータ10bの他側面に配設される第2キャリパ半体12bとをブリッジ部12cで付き合わせ、ディスク回入側の接合面12dとディスク回出側の接合面12eと中間部の接合面12fに連結ボルト16をそれぞれディスク軸方向に挿通して締結し、双方のキャリパ半体12a,12bを連結して形成される。
【0020】
双方のキャリパ半体12a,12bには、同径のシリンダ孔12g,12gが対向して形成され、各シリンダ孔12gには、同径の基準ピストン14がそれぞれ内挿される。各シリンダ孔12gの底部と基準ピストン14との間に、前記液圧室13が画成され、各液圧室13は、液通路12hによって連通している。各基準ピストン14の前面には、同一形状の前記摩擦パッド15がそれぞれ1枚づつ対応して設けられている。各摩擦パッド15は、前記基準ピストン14に適した大きさの押圧面を有するもので、同一形状のライニング15aと、同一形状の金属製の裏板15bとから成り、ライニング15aは、材質が同一であるとともに、その摩擦係数も同一のものとなっている。このような摩擦パッド15は、それぞれのライニング15aをディスクロータ10a側に向け、ディスクロータ10aを挟んで対向する2枚の裏板15bの上部に、ハンガーピン17,17をそれぞれ挿通してディスクロータ軸方向へ移動可能に吊持される。
【0021】
第2前輪ディスクブレーキ21は、図3に示されるように、前記前輪のディスクロータ10bの一側部で車体に取り付けられるキャリパボディ22と、該キャリパボディ22の内部に、ディスクロータ10bを挟んで対向配置される第1前輪ディスクブレーキ11に用いた摩擦パッド15と同一の4枚の摩擦パッド15とを備えている。キャリパボディ22は、第1前輪ディスクブレーキ11のキャリパボディ12を製造する鋳造型と共通の鋳造型を用いて形成されており、ディスクロータ10bの一側面に配設される第1キャリパ半体22aと、ディスクロータ10bの他側面に配設される第2キャリパ半体22bとをブリッジ部22cで付き合わせ、ディスク回入側の接合面22dとディスク回出側の接合面22eと中間部の接合面22fとに連結ボルト27をそれぞれディスク軸方向に挿通して締結し、双方のキャリパ半体22a,22bを連結して形成される。
【0022】
双方のキャリパ半体22a,22bのディスク回出側には、第1前輪ディスクブレーキ11のシリンダ孔12gよりも大径のシリンダ孔22hが、ディスク回入側には、第1前輪ディスクブレーキ11のシリンダ孔12gよりも小径のシリンダ孔22gがそれぞれ対向して形成され、大径のシリンダ孔22hには、基準ピストン14よりも大径の独立ピストン25が、小径のシリンダ孔22gには基準ピストン14よりも小径の連動ピストン26がそれぞれ挿入される。また、ディスク回出側の液圧室23,23は、液通路22iにて連通し、ディスク回入側の液圧室24,24は液通路22kにて連通している。
【0023】
各ピストン25,26の前面には、前記摩擦パッド15がそれぞれ1枚ずつ対応して設けられ、該摩擦パッド15は、ハンガーピン28,28によってディスク軸方向へ移動可能に吊持されている。
【0024】
後輪ディスクブレーキ31は、周知の1ポット対向型のディスクブレーキで、後輪のディスクロータ30の一側部で車体に取り付けられるキャリパボディ32と、該キャリパボディ32の内部にディスクロータ30を挟んで対向配置される2枚の摩擦パッド15とを備えている。キャリパボディ32は、ディスクロータ30の一側面に配設される第1キャリパ半体32aと、ディスクロータ30の他側面に配設される第2キャリパ半体32bとをブリッジ部32cで付き合わせ、連結ボルト(図示せず)で締結して形成され、双方のキャリパ半体32a,32bに設けた、前記第1前輪ディスクブレーキ11のシリンダ孔12gと同径のシリンダ孔32dには、前記基準ピストン14と同径のピストン34がそれぞれ挿入されている。各シリンダ孔32dの底部と各ピストン34との間には、前記液圧室33がそれぞれ画成され、これら2つの液圧室33は液通路32eにて連通している。また、各ピストン34の前面には、第1前輪ディスクブレーキ11に用いた摩擦パッド15と同一形状の2枚の摩擦パッド15がそれぞれディスク軸方向へ移動可能に吊持されている。
【0025】
上述のように構成されたバーハンドル車両用連動ブレーキ装置1は、前輪用ブレーキ操作子2を作動することによって、第1前輪ブレーキ系統4を介して、第1前輪ディスクブレーキ11の4つの液圧室13と、第2前輪ディスクブレーキ21のディスク回出側の2つの液圧室23とに作動液が供給され、第1前輪ディスクブレーキ11の4つの基準ピストン14と、第2前輪ディスクブレーキ21の2つの独立ピストン25をそれぞれ作動させ、各ピストン14,25の前方に配設された同一形状の摩擦パッド15をディスクロータ10a,10bの側面に摺接させる。この時、独立ピストン25は基準ピストン14よりも大径に形成されていることから、独立ピストン25が摩擦パッド15をディスクロータ10b側に押圧する押圧力を、基準ピストン14が摩擦パッド15をディスクロータ10b側に押圧する押圧力よりも大きく設定することができ、2つの前輪ディスクブレーキ11,21の制動力の配分をバランス良く調整することができる。
【0026】
一方、後輪用ブレーキ操作子3を作動することによって、第1後輪ブレーキ系統5を介して、後輪ディスクブレーキ31の2つの液圧室33に作動液が供給されて、各ピストン34が作動して摩擦パッド15を後輪のディスクロータ30に摺接させる。また、これと同時に、第2前輪ブレーキ系統6を介して、第2前輪ディスクブレーキ21のディスク回入側の2つの液圧室24に作動液が供給されることにより、2つの連動ピストン26を作動させ、前記摩擦パッド15を前輪のディスクロータ10bに摺接させる。この時、後輪ディスクブレーキ31の2つのピストン34よりも、第2前輪ディスクブレーキ21の連動ピストン26が小径であることから、第2前輪ディスクブレーキ21の連動ピストン26の制動力を小さく設定することができ、後輪ディスクブレーキ31と第2前輪ディスクブレーキ21とをバランス良く連動作動させることができる。
【0027】
また、第1前輪ディスクブレーキ11と第2前輪ディスクブレーキ21と後輪ディスクブレーキ31とは、同一形状の摩擦パッド15を用いることから、各ピストン14,25,26,34の径の違いによって摩擦パッド15の摩耗状態が異なったとしても、摩耗の激しい摩擦パッド15のみを個別に取り替えることができ、また、同一の摩擦パッド15が用いられていることから誤組をする虞もなく、メンテナンス性を向上させることができる。さらに、第1前輪ディスクブレーキ11と第2前輪ディスクブレーキ21に用いられるキャリパボディ12,22は、共通の鋳造型を用いて形成できることから、生産性を向上させることができる。
【0028】
図4は、本発明の第2形態例を示す第2前輪ディスクブレーキの断面正面図を示すもので、第1形態例と同一の部材には、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。また、第1前輪ディスクブレーキは、図2に示されるものと同様のものが用いられる。
【0029】
本形態例の第2前輪ディスクブレーキ41の、キャリパ半体42aに設けられる独立ピストン43と連動ピストン44とは、前記基準ピストン14と同径に形成され、独立ピストン43は、該独立ピストン43のピストン中心P1からディスクロータ40の中心までの距離L1が、基準ピストン14のピストン中心P2からディスクロータ10aの中心までの距離L2よりも大きくなる位置に形成され、一方、連動ピストン44は、該連動ピストン44のピストン中心P3からディスクロータ40の中心までの距離L3が、前記距離L2よりも小さくなる位置に形成される。また、独立ピストン43と連動ピストン44の前面には、前記第1前輪ディスクブレーキ11に用いられる摩擦パッド15と同一の摩擦パッド15がそれぞれ配設される。
【0030】
本形態例では、独立ピストン43のピストン中心P1からディスクロータ40の中心までの距離L1を、基準ピストン14のピストン中心P2からディスクロータ10aの中心までの距離L2よりも大きくすることにより、独立ピストン43の制動力を基準ピストン14の制動力よりも大きく設定でき、2つの前輪ディスクブレーキ11,41の制動力の配分をバランス良く調整することができる。また、連動ピストン44のピストン中心P3からディスクロータ40の中心までの距離L3を、基準ピストン14のピストン中心P2からディスクロータ10aの中心までの距離L2(図2参照)よりも小さくすることにより、連動ピストン44の制動力を基準ピストン14の制動力よりも小さく設定でき、後輪ディスクブレーキ31と第2前輪ディスクブレーキ41とをバランス良く連動作動させることができる。
【0031】
さらに、本形態例では、独立ピストン43と連動ピストン44と基準ピストン14とが同径なので、キャリパボディにシリンダ孔を加工する際に用いられる刃具等を共用化することができ、鋳造型の共用化に加え、さらに製造コストの低減を図ることができる。
【0032】
なお、本発明は上述の各形態例に限らず、基準ピストン,独立ピストン,連動ピストンの径は、任意に設定することができ、また、ピストン中心からディスクロータの中心までの距離も適宜設定することができる。さらに、複数の異径のピストンを用い、各ピストン中心からディスクロータの中心までの距離が異なるように形成したものにも適用でき、制動力の配分をより詳細に調整することができる。例えば、独立ピストンを基準ピストンよりも大径に、連動ピストンを基準ピストンよりも小径に形成するとともに、独立ピストンと連動ピストンのピストン中心からディスクブレーキの中心までの距離を、基準ピストンのピストン中心からディスクブレーキの中心までの距離と異ならせて制動力の配分を細かく調整したものでも良い。また、キャリパに備えられるピストンは2組に限らず、3組以上でも良い。さらに、後輪ディスクブレーキのキャリパボディを第1前輪ディスクブレーキと同様のものを適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1形態例を示すバーハンドル車両用連動ブレーキ装置の系統図である。
【図2】同じく第1前輪ディスクブレーキの断面正面図である。
【図3】同じく第2前輪ディスクブレーキの断面正面図である。
【図4】本発明の第2形態例を示す第2前輪ディスクブレーキの断面正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…バーハンドル車両用連動ブレーキ装置、2…前輪用ブレーキ操作子、3…後輪用ブレーキ操作子、4…第1前輪ブレーキ系統、5…第1後輪ブレーキ系統、6…第2前輪ブレーキ系統、10a,10b,30…ディスクロータ、11…第1前輪ディスクブレーキ、12,22,32…キャリパボディ、12a,22a,32a…第1キャリパ半体、12b,22b,32b…第2キャリパ半体、12g,22g,22h,32d…シリンダ孔、12h,22i,22k,32e…液通路、13,23,24,33…液圧室、14,34…基準ピストン、15…摩擦パッド、15a…ライニング、15b…裏板、17,28…ハンガーピン、21,41…第2前輪ディスクブレーキ、25,43…独立ピストン、26,44…連動ピストン、31…後輪ディスクブレーキ、34…ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪用ブレーキ操作子の作動によって液圧作動する複数組のピストンを備えた第1前輪ディスクブレーキと、前記前輪用ブレーキ操作子の作動によって液圧作動する少なくとも1組の独立ピストン及び後輪用ブレーキ操作子の作動に連動して液圧作動する少なくとも1組の連動ピストンを備えた第2前輪ディスクブレーキと、後輪用ブレーキ操作子の作動によって少なくとも1組のピストンを液圧作動する後輪ディスクブレーキとを備えたバーハンドル車両用連動ブレーキ装置において、前記第1前輪ディスクブレーキの各ピストンを同一の径を有する基準ピストンとし、前記独立ピストンを前記基準ピストンよりも大径に形成し、前記基準ピストンと独立ピストンと連動ピストンの前面に、同一形状の個別の摩擦パッドをそれぞれ配設したことを特徴とするバーハンドル車両用連動ブレーキ装置。
【請求項2】
前記連動ピストンは、前記基準ピストンよりも小径であることを特徴とする請求項1記載のバーハンドル車両用連動ブレーキ装置。
【請求項3】
前記独立ピストン及び前記連動ピストンの少なくともいずれか一方のピストンのピストン中心からディスクロータの中心までの距離が、前記基準ピストンのピストン中心からディスクロータの中心までの距離と異なることを特徴とする請求項1又は2記載のバーハンドル車両用連動ブレーキ装置。
【請求項4】
前輪用ブレーキ操作子の作動によって液圧作動する複数組のピストンを備えた第1前輪ディスクブレーキと、前記前輪用ブレーキ操作子の作動によって液圧作動する少なくとも1組の独立ピストン及び後輪用ブレーキ操作子の作動に連動して液圧作動する少なくとも1組の連動ピストンを備えた第2前輪ディスクブレーキと、後輪用ブレーキ操作子の作動によって少なくとも1組のピストンを液圧作動する後輪ディスクブレーキとを備えたバーハンドル車両用連動ブレーキ装置において、前記第1前輪ディスクブレーキの各ピストンを同一の径を有する基準ピストンとし、前記独立ピストンと連動ピストンのピストン中心からディスクブレーキの中心までの距離を、前記基準ピストンのピストン中心からディスクブレーキの中心までの距離と異ならせ、各ピストンの前面に、同一形状の個別の摩擦パッドをそれぞれ配設したことを特徴とするバーハンドル車両用連動ブレーキ装置。
【請求項5】
前記第1前輪ディスクブレーキと第2前輪ディスクブレーキとを共通の鋳造型を用いて成形することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のバーハンドル車両用連動ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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