説明

パイロットクラッチとメインクラッチとを備えたクラッチ

本発明は、自動車、特にモータサイクルに用いられる湿式クラッチであって、該湿式クラッチが、自動車のパワートレーンに設けられた内燃機関のクランクシャフトと変速機の変速機入力軸(15)との間に配置されるようになっており、湿式クラッチが、メインクラッチ(4)を備えており、該メインクラッチ(4)が、クランクシャフトに結合されたクラッチケース(16)と、変速機入力軸(15)に結合されたクラッチコア(18)とを有しており、クラッチケース(16)が、相対回動不能であるものの制限されて軸方向に移動可能にクラッチケースに結合された1つまたはそれ以上の薄板(17)を有しており、クラッチコア(18)が、相対回動不能であるものの制限されて軸方向に移動可能にクラッチコア(18)に結合された1つまたはそれ以上の対応薄板(19)を有しており、薄板(17)と対応薄板(19)とが、互いに交互に積層されて配置されている、自動車に用いられる湿式クラッチに関する。湿式クラッチが、さらに、メインクラッチ(4)に前置されたパイロットクラッチ(3)を有しており、該パイロットクラッチ(3)が、てこエレメント(10)によって操作可能であり、パイロットクラッチ(3)とメインクラッチ(4)とが、カム装置(12)を介して互いに結合されており、該カム装置(12)が、内燃機関の少なくともアクセルオン方向に有効なカムを有しており、メインクラッチ(4)と変速機入力軸(15)との間に、トーションばねとして形成されたトルク感応器(23)が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロットクラッチとメインクラッチとを備えたクラッチであって、パイロットクラッチが、緊締手段を介して、接続された状態または切断された状態にもたらされるようになっており、パイロットクラッチが、メインクラッチに作用結合部材を介して結合されており、これによって、メインクラッチに切断位置および接続位置が伝達されるようになっている、パイロットクラッチとメインクラッチとを備えたクラッチに関する。
【0002】
公知先行技術において、欧州特許第1685332号明細書に基づき、パイロットクラッチとメインクラッチとを備えたクラッチが公知である。
【0003】
本発明の課題は、パイロットクラッチとメインクラッチとを備えた改善されたクラッチを提供することである。
【0004】
この課題を解決するために本発明に係るクラッチによれば、パイロットクラッチが、メインクラッチと、緊締手段の操作エレメントに対する接続範囲との間に配置されており、緊締手段が、外側の範囲でパイロットクラッチのクラッチコアに作用結合されており、緊締手段が、中間の範囲でパイロットクラッチの対応薄板の薄板に作用結合されており、緊締手段が、内側に位置する範囲に前記操作エレメントに対する当付け範囲を有している。
【0005】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、パイロットクラッチのクラッチコアに軸受けを介して回動可能にパイロットクラッチのクラッチケースが支承されている。
【0006】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、メインクラッチが、パイロットクラッチにトルク感応器、特にばね手段を介して作用結合されている。
【0007】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、パイロットクラッチのクラッチケースが、軸受けを介してメインクラッチのクラッチケースに回動可能に支承されている。
【0008】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、パイロットクラッチが、該パイロットクラッチのクラッチケースに取り付けられた薄板を有しており、パイロットクラッチが、該パイロットクラッチのクラッチコアに取り付けられた対応薄板を有しており、薄板と対応薄板とに緊締手段に向かってプリロードをかけるプリロードばねが設けられている。
【0009】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、メインクラッチが、薄板と対応薄板とを有しており、該薄板と該対応薄板とが、カバーによって摩擦接続可能であり、薄板と対応薄板とにカバーに向かってプリロードをかける第2のプリロードばねが設けられている。
【0010】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、パイロットクラッチとメインクラッチとの間の前記作用結合部材が、パイロットクラッチのカムリングの形で設けられており、該カムリングが、メインクラッチのカムリングに伝達エレメントを介して作用結合されており、これによって、パイロットクラッチに対するメインクラッチの回動が、該メインクラッチのカムリングの軸方向の移動に変換されるようになっており、メインクラッチのカムリングとパイロットクラッチのカムリングとの間の作用結合を改善する手段が設けられており、特に引張ばね、圧縮ばね、圧縮ゴムまたはダンパが設けられている。
【0011】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、軸受けが、パイロットクラッチのカムリングとメインクラッチのカムリングとの間に配置されており、軸受けが、基本摩擦を発生させるための手段、特に摩擦を調整するための摩擦ディスクおよびばね手段を有している。
【0012】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、軸受けが、外側軸受けシェルと、軸受けピンと、内側軸受けシェルとを備えた転がり軸受けとして形成されており、前記手段が、外側軸受けシェルおよび/または内側軸受けシェルに作用結合されている。
【0013】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、パイロットクラッチのカムリングおよび/またはメインクラッチのカムリングが、カム面を有しており、該カム面は、アクセルオフ運転およびアクセルオン運転に対して、互いに異なる傾きを備えたカム面が作用するように形成されており、特に前記アクセルオン運転において、それぞれ異なる傾きを備えた区分が作用するようになっている。
【0014】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、カム面のそれぞれ異なる傾きの前記区分の間の移行部が丸み付けられている。
【0015】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、メインクラッチのカムリングとパイロットクラッチのカムリングとの間に第2のばねエレメントが配置されている。
【0016】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、メインクラッチのカムリングとメインクラッチのクラッチケースとの間にばね手段および/または減衰手段が配置されている。
【0017】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、軸受けに設けられた、基本摩擦を発生させるための前記手段は、パイロットクラッチとメインクラッチとの間の回動量の増加につれて、基本摩擦がより少なくなるように形成されている。
【0018】
本発明に係るクラッチの有利な態様によれば、パイロットクラッチとメインクラッチとを備えた前記クラッチが、軸受けを備えており、該軸受けが、メインクラッチとパイロットクラッチとの間の調整可能な摩擦に対する手段を有している。
【0019】
本発明に係るクラッチの利点は、パイロットクラッチが、メインクラッチとパイロットクラッチの操作エレメントとの間に配置されていることにある。さらに、パイロットクラッチの緊締手段が、半径方向外側の範囲でパイロットクラッチのクラッチコアに作用結合されており、緊締手段が、半径方向中間の範囲でパイロットクラッチの薄板または対応薄板に作用結合されている。緊締手段は、半径方向内側に位置する範囲に操作エレメントに対する当付け範囲を有している。この配置態様によって、パイロットクラッチの質量慣性が減少させられる。したがって、クラッチの動特性が著しく改善されている。
【0020】
本発明の1つの態様では、パイロットクラッチのクラッチコアに軸受けを介して回動可能にパイロットクラッチのクラッチケースが支承されている。別の態様では、メインクラッチのクラッチコアが、パイロットクラッチのクラッチコアにトルク感応器、特にばね手段を介して結合されている。別の態様では、パイロットクラッチのクラッチコアが、メインクラッチのクラッチケースに第2の軸受けを介して支承されている。別の態様では、パイロットクラッチの薄板と対応薄板とを互いに緊締する第2の緊締手段が設けられている。
【0021】
別の態様では、メインクラッチに接続方向にプリロードをかける、つまり、予備荷重を加える第3の緊締手段が設けられている。
【0022】
別の態様では、メインクラッチとパイロットクラッチとの間の作用結合を改善する手段、特に引張ばね、圧縮ばね、圧縮ゴムおよび/またはダンパが設けられている。特にこの手段によって、パイロットクラッチの振動またはグラッビングを減衰することができる。この構成は、クラッチの構造に関係なく、種々異なる態様において使用することができる。
【0023】
別の態様では、第1の軸受けおよび/または第2の軸受けが、基本摩擦を発生させるための手段を有している。この手段は、特に軸受けの摩擦を調整するための摩擦ディスクおよび/またはばね手段の形で形成されている。これによって、特にパイロットクラッチの振動を減衰することができる。この構成は、クラッチの構造に関係なく、種々異なる態様において使用することができる。
【0024】
別の態様では、メインクラッチが、パイロットクラッチにトルク感応器、特にばね手段を介して作用結合されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】クラッチの第1の実施の形態を概略的に示す図である。
【図2】カム装置のカム面の傾斜を示す図である。
【図3】図1のクラッチの斜視的な部分横断面図である。
【図4】図3のクラッチの中心を通る横断面図である。
【図5】クラッチの第2の実施の形態を概略的に示す図である。
【図6】クラッチの第3の実施の形態を概略的に示す図である。
【図7】クラッチの第4の実施の形態を概略的に示す図である。
【図8】クラッチの第5の実施の形態を概略的に示す図である。
【図9】クラッチの第6の実施の形態を概略的に示す図である。
【図10】クラッチの第7の実施の形態を概略的に示す図である。
【図11】クラッチの第8の実施の形態を概略的に示す図である。
【0026】
図1には、回動軸線2を中心として配置された、パイロットクラッチ3とメインクラッチ4とを備えたクラッチ1の半部の部分断面図が概略的に示してある。このクラッチ1は湿式クラッチを成している。パイロットクラッチ3とメインクラッチ4とは、作用結合手段12を介して互いに作用結合されている。パイロットクラッチ3の第1のクラッチケース5には、相対回動不能であるものの回動軸線2に沿って制限されて軸方向に移動可能に第1の薄板6が取り付けられている。この第1の薄板6は、たとえば摩擦材料で被覆された連行体または摩擦板から形成することができる。図示の実施の形態には、ただ1つの第1の薄板6が示してある。複数の第1の薄板6が設けられていてもよい。さらに、各第1の薄板6には、第1の対応薄板7が対応配置されている。この第1の対応薄板7はパイロットクラッチ3の第1のクラッチコア8に、相対回動不能であるものの回動軸線2に沿って軸方向に移動可能に取り付けられている。図示の実施の形態では、第1のクラッチコア8は変速機入力軸15に結合されている。第1の薄板6は連行ディスクを成しており、第1の対応薄板7はディスクを成している。第1の対応薄板7は、たとえば鋼から製造されている。
【0027】
第1のクラッチコア8は、外側のプレート81と内側のプレート82とを有している。これら両プレート81,82の間に第1の薄板6と第1の対応薄板7とが配置されている。さらに、たとえば皿ばねの形の緊締手段10が配置されている。この緊締手段10は第1の薄板6と第1の対応薄板7とを押し合わせ、したがって、第1のクラッチケース5を第1のクラッチコア8に相対回動不能に結合し、ひいては、パイロットクラッチ3を接続する。第1のクラッチケース5は、第1のクラッチコア8に軸受け13を介して回動可能に支承されている。パイロットクラッチ3が切断されている場合には、第1のクラッチケース5を第1のクラッチコア8に対して回動させることができる。
【0028】
緊締手段10は内側のプレート82に半径方向外側の範囲101で支持されている。第1の緊締手段10は第1の対応薄板7の下面に半径方向中間の範囲103で接触する。緊締手段10は半径方向内側の範囲に、操作エレメントに作用結合するための別の当付け範囲102を有している。
【0029】
第1のクラッチケース5は第1のカムリング11を有している。この第1のカムリング11はメインクラッチ4の第2のカムリング21に対応配置されている。第1のカムリング11は、たとえば第1のクラッチケース5の、軸受け13に案内されている結合片の一部である。第1のカムリング11と第2のカムリング21との間には、たとえばボールの形の伝達エレメント22が形成されている。第1のカムリング11と、伝達エレメント22と、第2のカムリング21とは、パイロットクラッチ3とメインクラッチ4との間の作用結合手段12を成している。
【0030】
第2のカムリング21は、メインクラッチ4のカバーの一部として形成することができる。第2のカムリング21は、相対回動不能であるものの回動軸線2に沿って制限されて軸方向に移動可能にメインクラッチ4の第2のクラッチケース16に取り付けられている。メインクラッチ4は第2の薄板17を有している。この第2の薄板17は、相対回動不能であるものの回動軸線2に沿って制限されて軸方向に移動可能に第2のクラッチケース16に取り付けられている。さらに、メインクラッチ4は第2のクラッチコア18を有している。この第2のクラッチコア18には、相対回動不能であるもの回動軸線2に沿って制限されて軸方向に移動可能に第2の対応薄板19が取り付けられている。第2の薄板17と第2の対応薄板19とは、図1に示したように、交互に積層されて配置されている。第2のクラッチコア18は、第1のクラッチコア8にトルク感応器23を介して結合されている。このトルク感応器23は、コイルばねの形で形成されていて、第1のクラッチコア8と第2のクラッチコア18との間のばね弾性的な結合部材を成している。第2の薄板17は、たとえば摩擦材料で被覆された連行板または摩擦板から形成されている。第2の対応薄板19は、たとえば鋼から製造されている。第2の薄板17と第2の対応薄板19とは、第2のカムリング21と第2のプレート20との間に配置されている。この第2のプレート20は、図示の実施の形態では、第2のクラッチケース16の一部であり、エンジン入力接続部材24に案内されている。
【0031】
第1の作用結合手段12は、第1のカムリング11および第2のカムリング21の形のカム装置を成している。第1のカムリング11と第2のカムリング21とは、互いに向かい合った面に傾斜面を有している。これら両傾斜面の間に伝達エレメント22が配置されている。カム装置の基本機能は、第1のカムリング11と第2のカムリング21との間の回動角に関連して、第2のカムリング21が多かれ少なかれ第2のプレート20に向かって移動させられることにある。移動距離は、回動角に関連して、メインクラッチ4が断続されているように設定されている。
【0032】
選択的な実施の形態によれば、伝達エレメント22が、円筒ころの形で形成されていてもよい。たとえば、3つまたはそれ以上のボールまたは円筒ころが設けられていてよく、これによって、第2のカムリング21に対する第1のカムリング11の回動が、第2のプレート20に向けられた第2のカムリング21の軸方向の運動に変換され、ひいては、メインクラッチ4が接続される。
【0033】
緊締手段10が操作されない場合には、第1の薄板6と第1の対応薄板7との間に摩擦接続が形成されており、ひいては、パイロットクラッチ3が接続されている。このパイロットクラッチ3が接続された状態で変速機入力軸15とエンジン出力部材24との間のトルク差に基づき第1のカムリング11と第2のカムリング21との間に回動が生じると、メインクラッチ4が摩擦接続に向かって自動的に接続される。内燃機関の始動に際して、たとえば走行段が入れられることによってまたはパイロットクラッチ3が接続される状態でのスリップトルクによって変速機入力軸15にトルクが提供されると、第2のクラッチケース16と第2のカムリング21とが第1のカムリング11に対して回動させられる。これによって、伝達エレメント22が、アクセルオン方向に上昇しているカムに向かって転動させられる。この場合、軸方向固定の第1のカムリング11が、軸方向可動のカムリング21を第2のプレート20に向かって軸方向に移動させる。第2のカムリング21の軸方向の運動によって、積層されて配置された第2の薄板17と第2の対応薄板19とが互いに圧着され、摩擦係合される。これによって、メインクラッチ4が摩擦接続にもたらされる。
【0034】
クラッチ1を切断するためには、緊締手段10をメインクラッチ4に向かって操作することによって、パイロットクラッチ3が切断されさえすればよい。このパイロットクラッチ3は、緊締手段10の操作が行われない場合には接続されているように形成されている。パイロットクラッチ3は、いわゆる「アクティブクラッチ」である。緊締手段10は第1のクラッチコア8に支持されている。これによって、パイロットクラッチ3の質量慣性が著しく減少させられる。したがって、クラッチ1の動特性が著しく改善されている。選択的な実施の形態によれば、トルク感応器23が省略されてもよい。このトルク感応器23は、エンジン接続部材24と変速機入力軸15との間の負荷変動を減衰するために働く。
【0035】
図2a、図2bおよび図2cには、両カムリング11,21の機能形式を説明する作用結合手段12の3つの位置が概略的に示してある。図2a、図2bおよび図2cには、第1のカムリング11、第2のカムリング21およびボールの形の伝達エレメント22のそれぞれ1つの断面図が示してある。この場合、横断面は、第1のカムリング11と第2のカムリング21との円中心点を基準とした半径方向の1つの円線に沿って案内されている。第1のカムリング11と第2のカムリング21とは、それぞれ1つのカム面60,61を有している。図2aには、出発位置が示してある。この出発位置では、パイロットクラッチ3が切断されていて、このパイロットクラッチ3からメインクラッチ4に力が伝達されないようになっている。図2bには、アクセルオン位置が示してある。このアクセルオン位置では、パイロットクラッチ3が接続されていて、第2のカムリング21が、伝達されるトルクによって第1のカムリング11に対して回動させられている。この第1のカムリング11は軸方向で挟み込まれているので、傾けられたカム面60,61によって、第2のカムリング21に力が加えられ、この第2のカムリング21が第2のプレート20に向かって下向きに移動させられる。これによって、メインクラッチ4が接続される。
【0036】
図2cには、アクセルオフ状況が示してある。このアクセルオフ状況では、第1のカムリング11が第2のカムリング21に対して先行し、この第2のカムリング21が第2のプレート20に向かって下向きに押圧され、ひいては、メインクラッチ4が再び接続される。カム面60,61の選択された傾きに関連して、パイロットクラッチ3とメインクラッチ4との間の規定された切換機能を規定することができる。
【0037】
図2d、図2eおよび図2fには、3つの異なるカム面に対する3つの線図が示してある。これらの線図には、第1のカムリング11と第2のカムリング21との間の移動角Wに対する第2のカムリング21の移動距離Sが示してある。線図には、第2のカムリング21が第2のプレート20に向かって移動させられる結果的な移動距離が示してある。この移動距離を実現するためには、1つまたは2つのカム面が使用されるようになっている。図2dのバリエーションaでは、アクセルオフの際の移動距離Sの増加がアクセルオンの際よりも著しく急傾斜である。結果的な移動距離の増加は、ゼロ位置の両側においてコンスタントである。図2eのバリエーションbでは、移動距離が、ゼロ位置を起点としてアクセルオンの方向に向かって第1の区分Aにおいて著しく上昇していて、より少ない傾斜の第2の区分Bに移行している。図2fのバリエーションcでは、アクセルオンの側における、より急傾斜の第1の区分Aから、より緩傾斜の区分への移行が、丸み付けられてなだらかに実施される。アクセルオンまたはアクセルオフの際の移動距離のそれぞれ異なる増加によって、クラッチ機能の改善を達成することができる。カム面の設計は、クラッチの2つの主要な運転状態に合わせられるようになっている。一方の状態は、たとえば運転者がガスを付与する、つまり、アクセルを開け、これによって、クラッチ1にアクセルオン負荷がかけられている際に、エンジンが正のトルクを供給することにある。エンジンが負のトルクを供給する、たとえばエンジンブレーキの場合には、クラッチにアクセルオフ負荷がかけられる。したがって、アクセルオン運転またはアクセルオフ運転に相俟って、パイロットクラッチがメインクラッチに対して相対的にゼロ位置を起点として一方向または他方向に回動させられる。理想的には、アクセルオン運転中に最大のエンジントルクを伝達することができることが望ましい。これに対して、アクセルオフ運転中には、より小さな制限されたエンジントルクが必要となる。つまり、たとえばモータサイクルへのクラッチの使用時には、アクセルオフ運転中にモータサイクルの後輪がロックされやすいようになっている。加速(アクセルオン負荷)時には、主として、後輪がモータサイクル重量を受け止めるのに対して、エンジンブレーキひいてはアクセルオフ負荷による制動動作時には、前輪がモータサイクル重量を受け止める。これは、アクセルオフ運転中の後輪のスリップ限界がアクセルオン運転中よりも急速に達成されることを意味している。たとえば高い変速走行段から低い変速走行段へのシフトダウン時には、エンジンが短期間、後輪のロックに繋がる恐れがある高い負のトルクを供給する。この状況に基づき、アクセルオン運転における1つまたはそれ以上の有効なカム面の少ない傾斜が有利であり、これによって、エンジンの最大のトルクを伝達することができる。シフトダウン時の後輪のスリップは、たとえばアクセルオフ運転中に、伝達可能な少ないトルクが発生させられることによって回避することができる。圧着力は減少させられることが望ましい。このことは、高い傾斜によって発生させることができる。
【0038】
カム面の形状、すなわち、回動角に関連した、ゼロ位置を起点とした移動距離Sの増加は、この移動距離の増加がパイロットクラッチの固有周波数をシフトすることができる限り、クラッチの動特性感度にも影響を与える。移動距離の増加、すなわち、カム面の傾斜が急傾斜であればあるほど、固有周波数はますます高くなる。このことは、動特性に対しては有利であるものの、トルク伝達に対しては不利である。したがって、図2に示したように、移動距離の傾斜が回動角の増加につれて二段階で設計されているように、カム面の形状を形成することが有利である。つまり、有効なアクセルオンカムがクリアランス範囲でより急傾斜であってよい。なぜならば、メインクラッチがまだ接続されておらず、トルクを伝達しないからである。この結果、図2fに示したように、2つの区分A,Bの間の丸み付けられたなだらかな移行を選択することができる。この互いに異なる急傾斜で形成された2つの区分A,Bの間の丸み付けられたなだらかな移行は、1つまたはそれ以上のカム面からの伝達手段の持上りを回避することができるという利点を有している。
【0039】
図3には、斜視的にクラッチ1の部分横断面図が示してある。上側の範囲にパイロットクラッチ3が配置されている。このパイロットクラッチ3は作用結合手段12を介して、下側の範囲に配置されたメインクラッチ4に作用結合されている。外側のプレート81は内側のプレート82に固くねじ締結されている。外側のプレート81の内面には、第1の薄板6が接触している。この第1の薄板6は舌片25を介して第1のクラッチケース5の切抜き部に、この第1のクラッチケース5に対する回動に抗して取り付けられている。ただし、回動軸線2に沿った軸方向の移動は可能である。第1の薄板6の下方には、第1の対応薄板7が配置されている。この第1の対応薄板7は第1のクラッチコア8に相対回動不能に取り付けられている。第1の対応薄板7も同じく軸方向で回動軸線2に対して平行に移動可能に第1のクラッチコア8に支承されている。対応薄板7の下側には、皿ばねの形の緊締手段10が配置されている。第1の薄板6も、第1の対応薄板7も、緊締手段10も、円板の基本形状を有することができる。また、内側のプレート82も円板の基本形状を有している。この内側のプレート82は、半径方向外側の縁範囲に、上面で外側のプレート81に向かって突出した環状の隆起部26を有している。緊締手段10は、半径方向外側の第1の縁範囲27で隆起部26に載置されている。さらに、第1の対応薄板7は、緊締手段10に向けられた下面で半径方向中間の範囲に、環状に全周にわたって延びる第2の隆起部28を有している。図示の位置では、緊締手段10が、第2の隆起部28への当付けによって第1の対応薄板7に力を加えており、これによって、第1の対応薄板7が第1の薄板6を外側のプレート81に向かって押圧しており、ひいては、第1の薄板6と第1の対応薄板7との間に摩擦接続が形成されており、パイロットクラッチ3が接続されている。緊締手段10は、半径方向内側に位置する範囲に操作手段30に対する支持面29を有している。操作手段30は環状スリーブの形で形成されていて、レリーズ部材の形の操作エレメント(図示せず)に結合されている。パイロットクラッチ3を切断したい場合には、操作手段30が操作エレメントによって下方にメインクラッチ4に向かって押圧される。これによって、皿ばね10が内側のプレート82に向かって運動させられるので、第1の対応薄板7にかけられていたプリロードが解消される。したがって、第1の薄板6と第1の対応薄板7との間の摩擦接続が解除される。
【0040】
内側のプレート82は第1のクラッチコア8に結合されている。この第1のクラッチコア8は、変速機入力軸を接続するためのボス31を有している。第1のクラッチケース5は第1のカムリング11に結合されている。このカムリング11は内側のプレート82の下方に配置されている。第1のカムリング11には、第2のカムリング21が対応配置されている。この第2のカムリング21は部分的に第1のカムリング11の下方に配置されている。第2のカムリング21には、第2のクラッチケース16に支持されたプリロードばね32を介して第1のカムリング11に向かってプリロードがかけられる。図示の実施の形態では、複数のプリロードばね32が設けられている。ただし、ただ1つのプリロードばね32しか図示していない。第2のカムリング21は同時にメインクラッチ4のカバーを成している。第2のカムリング21は第2の舌片33を介して第2のクラッチケース16の切抜き部に、回動軸線2に沿って軸方向には移動可能であるものの半径方向には相対回動不能に第2のクラッチケース16に結合されている。さらに、4つの第2の薄板17が、相対回動不能であるものの回動軸線2に沿って軸方向に移動可能に第2のクラッチケース16に保持されている。この第2のクラッチケース16は第2のプレート20に結合されている。この第2のプレート20はエンジンシャフトに結合可能である。さらに、クラッチ4は第2の対応薄板19を有している。この第2の対応薄板19は第2のクラッチコア18に、相対回動不能であるものの回動軸線2の軸方向に移動可能に保持されている。第2のクラッチコア18は、コイルばねの形で形成された複数のトルク感応器23を介して第1のクラッチコア8に連結されている。トルク感応器23は、第1のクラッチコア8と第2のクラッチコア18との間にコイルばねを介してばね弾性的な結合を付与するために働く。
【0041】
第1のカムリング11は、回動軸線2を中心として回動可能に第1のクラッチコア8に軸受け13を介して支持されている。この軸受け13は、外側の軸受けシェル34と、内側の軸受けシェル35と、両軸受けシェル34,35の間に配置された軸受けローラ36とを有している。外側の軸受けシェル34は第1のカムリング11に接触している。内側の軸受けシェル35は第1のクラッチコア8に接触している。外側の軸受けシェル34と内側の軸受けシェル35とは軸受けローラ36を介して互いに相対的に転動する。
【0042】
図4には、クラッチ1が、回動軸線2およびクラッチ1の中心を通る別の横断面図で示してある。
【0043】
図5には、概略的にクラッチ1の別の実施の形態が示してある。このクラッチ1は、図1〜図3とほぼ同様に形成されている。図1〜図3の実施の形態と異なり、この実施の形態では、軸受け13が第1のクラッチケース5と第2のクラッチケース16との間に配置されている。選択的な実施の形態によれば、軸受け13が、図3および図4による基本摩擦に対する手段を有していてもよい。
【0044】
図6には、図1に関連した別の実施の形態が示してある。この実施の形態では、付加的にプリロードばね40が設けられており、このプリロードばね40によって、外側のプレート81に、回動軸線2に対して平行に軸方向可動に、第1のクラッチコア8のストッパ41に対して第1の薄板6に向かってプリロードがかけられている。こうして、パイロットクラッチ3においてフェーシングばね弾性が提供される。これによって、クラッチ1の圧着可能性が改善される。
【0045】
さらに、第2のプリロードばね42が設けられている。この第2のプレート20は第2のプレート20と一番下側の第2の薄板43との間に挟み込まれている。こうして、メインクラッチ4においてフェーシングばね弾性が提供される。別の実施の形態では、第2のカムリング21に規定の引張応力および/または圧縮応力または減衰を提供するために、付加的なばね手段44および/または減衰手段45が設けられていてよい。図示の実施の形態では、第2のクラッチケース16の第2のストッパ46と第2のカムリング21との間にばね手段44と減衰手段45とが配置されている。この減衰手段45は、たとえばゴムエレメントまたは減衰ピストンの形で形成されていてよい。
【0046】
図6の実施の形態にほぼ対応する図7に示した別の実施の形態では、第2のカムリング21と第2のストッパ46との間に減衰手段45が配置されている。さらに、第1のカムリング11と第2のカムリング21との間に第2のばね手段47が挟み込まれている。この第2のばね手段47は、たとえば引張ばねの形で形成されている。選択的な実施の形態によれば、ばね手段47が圧縮ばねの形で形成されていてもよい。こうして、第1のカムリング11と第2のカムリング21との間のプリロードが可能となる。
【0047】
図8には、クラッチ1の別の実施の形態が示してある。この別の実施の形態は、図1の実施の形態にほぼ対応している。しかし、トルク感応器23が第1のクラッチケース5と第2のクラッチケース16との間に配置されている。さらに、第1のクラッチケース5がエンジン接続部材24に結合されている。さらに、第2のクラッチコア18が変速機入力軸15に結合されている。第2のプレート20は第2のクラッチコア18に結合されている。第1のクラッチコア8は第2のクラッチコア18に軸受け13を介して回動可能に支持されている。第2のカムリング21は第2のクラッチコア18に取り付けられている。第1のカムリング11は第1のクラッチコア8に取り付けられている。緊締手段10は第1のカムリング11に支持されている。選択的な実施の形態によれば、第1のクラッチケース5が変速機入力軸15に連結されていて、第2のクラッチコア18がエンジンシャフトに連結されていてもよい。軸受け13は、基本摩擦を可変に調整するための手段を備えて形成されていてもよいし、基本摩擦を可変に調整するための手段を備えずに形成されていてもよい。
【0048】
図9には、図5の実施の形態が概略的に示してあるものの、基本摩擦に対する手段を備えた軸受け13が設けられている。この軸受け13における基本摩擦は、たとえば摩擦ディスク65によって達成することができる。この摩擦ディスク65は軸受けシェル34,35と当付け面37,38との間に挿入されている。さらに、第1のクラッチケース5と第2のクラッチケース16とに形成された当付け面37,38と、軸受けシェル34,35との間に挟み込まれた緊締手段39が設けられている。基本摩擦の目的は、軸受け13の外側軸受けシェル34と内側軸受けシェル35との間の相対的な回転運動を制動することにある。こうして、エンジンに対するパイロットクラッチ3の回転振動を減衰することができる。このことは、緊締手段39による軸受けシェル34,35の予圧によって達成される。緊締手段39による予圧は摩擦ディスク65の両側にも作用し、これによって、パイロットクラッチ3とエンジンとの間に摩擦モーメントが発生させられる。外側の軸受けシェル34だけでなく内側の軸受けシェル35も摩擦ディスク65に摺り接触する。これによって、パイロットクラッチ3とメインクラッチ4との間の回動が制動される。メインクラッチ4がトルクを伝達する場合には、軸受け13に圧着力が発生させられ、これによって、軸受け13における摩擦モーメントが調整される。圧着力はパイロットクラッチ3にも作用し、これによって、緊締手段39が緊締(緊縮)される。この付加的な力は内側の軸受けシェル35の予圧を緩和し、これによって、内側の軸受けシェル35に加えられる摩擦モーメントが少なくとも減少させられるかまたは完全に打ち消される。したがって、軸受け13の基本摩擦系には、メインクラッチ4の圧着力によって影響が与えられるようになっている。このメインクラッチ4の圧着力が緊締手段39の圧着力よりも大きい限り、基本摩擦は消去されている。これに対して、メインクラッチ4の圧着力が少ない場合、たとえば接続時には、軸受け13の回転が制動されている。
【0049】
クラッチ1の同期段階の間、すなわち、変速機が徐々にエンジンに結合されている場合には、パイロットクラッチ3が励振されて、振動が発生させられることがあり、これによって、クラッチのグラッビングが生じる。この段階の間、メインクラッチ4の圧着力がますます大きくなる。軸受け13の基本摩擦系はメインクラッチ4の圧着力に依存するので、圧着力が少なければ少ないほど、パイロットクラッチ3がますます制動される。したがって、クラッチのグラッビングを減少させることができる。
【0050】
図10には、図8の別の実施の形態が示してある。パイロットクラッチ3がアクティブクラッチとして形成されている。この実施の形態では、緊締手段10が、第1のクラッチケース5に支持されているように配置されている。この実施の形態では、第1のクラッチコア8がエンジン出力部材に結合されている。第2のクラッチコア18は変速機の入力部材に結合されている。この実施の形態では、パイロットクラッチ3が接続されている場合にのみ、このパイロットクラッチ3がエンジンに結合されている。クラッチペダルが操作されると、エンジンの加速はパイロットクラッチ3に影響を与えない。第1のカムリング11は静止状態のままである。
【0051】
図11には、図10のクラッチの別の実施の形態が示してある。軸受け13が摩擦ディスク65と緊締手段39とを有している。この摩擦ディスク65と緊締手段39とは、図9において説明したような機能により基本摩擦を調整する。これによって、パイロットクラッチ3の共振を減少させることができる。緊締手段39と摩擦ディスク65とは、軸受け13に対する基本摩擦がメインクラッチ4の圧着力に依存するように、外側の軸受けシェル34および/または内側の軸受けシェル35に作用結合されている。メインクラッチ4の圧着力が緊締手段39の圧着力よりも少ない場合には、基本摩擦が付与されていて、軸受け13の回転が制動されている。メインクラッチ4の圧着力が緊締手段39の圧着力よりも大きい場合には、この基本摩擦が消去されている。
【符号の説明】
【0052】
1 クラッチ
2 回動軸線
3 パイロットクラッチ
4 メインクラッチ
5 第1のクラッチケース
6 薄板
7 対応薄板
8 第1のクラッチコア
10 緊締手段
11 第1のカムリング
12 作用結合手段
13 軸受け
15 変速機入力軸
16 第2のクラッチケース
17 第2の薄板
18 第2のクラッチコア
19 第2の対応薄板
20 第2のプレート
21 第2のカムリング
22 伝達エレメント
23 トルク感応器
24 エンジン接続部材
25 舌片
26 隆起部
27 第1の縁範囲
28 第2の隆起部
29 支持面
30 操作手段
31 ボス
32 プリロードばね
33 第2の舌片
34 外側の軸受けシェル
35 内側の軸受けシェル
36 軸受けローラ
37 第1の当付け面
38 第2の当付け面
39 緊締手段
40 プリロードばね
41 ストッパ
42 第2のプリロードばね
43 一番下側の第2の薄板
44 ばね手段
45 減衰手段
46 第2のストッパ
60 カム面
61 カム面
65 摩擦手段
81 外側のプレート
82 内側のプレート
101 外側の範囲
102 別の当付け範囲
103 中間の範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイロットクラッチ(3)とメインクラッチ(4)とを備えたクラッチ(1)であって、パイロットクラッチ(3)が、緊締手段(10)を介して、接続された状態または切断された状態にもたらされるようになっており、パイロットクラッチ(3)が、メインクラッチ(4)に作用結合部材(12)を介して結合されており、これによって、メインクラッチ(4)に切断位置および接続位置が伝達されるようになっている、パイロットクラッチとメインクラッチとを備えたクラッチにおいて、パイロットクラッチ(3)が、メインクラッチ(4)と、緊締手段(10)の操作エレメントに対する接続範囲との間に配置されており、緊締手段(10)が、外側の範囲でパイロットクラッチ(3)のクラッチコア(8)に作用結合されており、緊締手段(10)が、中間の範囲でパイロットクラッチ(3)の対応薄板(7)の薄板(6)に作用結合されており、緊締手段(10)が、内側に位置する範囲に前記操作エレメントに対する当付け範囲(102)を有していることを特徴とする、パイロットクラッチとメインクラッチとを備えたクラッチ。
【請求項2】
パイロットクラッチ(3)のクラッチコア(8)に軸受け(13)を介して回動可能にパイロットクラッチ(3)のクラッチケース(5)が支承されている、請求項1記載のクラッチ。
【請求項3】
メインクラッチ(4)が、パイロットクラッチ(3)にトルク感応器(23)、特にばね手段を介して作用結合されている、請求項1または2記載のクラッチ。
【請求項4】
パイロットクラッチ(3)のクラッチケース(5)が、軸受け(13)を介してメインクラッチ(4)のクラッチケース(16)に回動可能に支承されている、請求項1記載のクラッチ。
【請求項5】
パイロットクラッチ(3)が、該パイロットクラッチ(3)のクラッチケース(5)に取り付けられた薄板(6)を有しており、パイロットクラッチ(3)が、該パイロットクラッチ(3)のクラッチコア(8)に取り付けられた対応薄板(7)を有しており、薄板(6)と対応薄板(7)とに緊締手段(10)に向かってプリロードをかけるプリロードばね(40)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項6】
メインクラッチ(4)が、薄板(17)と対応薄板(19)とを有しており、該薄板(17)と該対応薄板(19)とが、カバー(21)によって摩擦接続可能であり、薄板(17)と対応薄板(19)とにカバー(21)に向かってプリロードをかける第2のプリロードばね(42)が設けられている、請求項1から5までのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項7】
パイロットクラッチ(3)とメインクラッチ(4)との間の前記作用結合部材が、パイロットクラッチ(3)のカムリング(11)の形で設けられており、該カムリング(11)が、メインクラッチ(4)のカムリング(21)に伝達エレメント(22)を介して作用結合されており、これによって、パイロットクラッチ(3)に対するメインクラッチ(4)の回動が、該メインクラッチ(4)のカムリング(21)の軸方向の移動に変換されるようになっており、メインクラッチ(4)のカムリング(21)とパイロットクラッチ(3)のカムリング(11)との間の作用結合を改善する手段(32,44,45,39,65)が設けられており、特に引張ばね、圧縮ばね、圧縮ゴムまたはダンパが設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項8】
軸受け(13)が、パイロットクラッチ(3)のカムリング(11)とメインクラッチ(4)のカムリング(21)との間に配置されており、軸受け(13)が、基本摩擦を発生させるための手段、特に摩擦を調整するための摩擦ディスク(65)およびばね手段(39)を有している、請求項2から7までのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項9】
軸受け(13)が、外側軸受けシェル(34)と、軸受けピン(36)と、内側軸受けシェル(35)とを備えた転がり軸受けとして形成されており、前記手段(65,39)が、外側軸受けシェル(34)および/または内側軸受けシェル(35)に作用結合されている、請求項8記載のクラッチ。
【請求項10】
パイロットクラッチ(3)のカムリング(11)および/またはメインクラッチ(4)のカムリング(21)が、カム面(5)を有しており、該カム面(5)は、アクセルオフ運転およびアクセルオン運転に対して、互いに異なる傾きを備えたカム面(5)が作用するように形成されており、特に前記アクセルオン運転において、それぞれ異なる傾きを備えた区分(A,B)が作用するようになっている、請求項7から9までのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項11】
カム面(5)のそれぞれ異なる傾きの前記区分(A,B)の間の移行部が丸み付けられている、請求項10記載のクラッチ。
【請求項12】
メインクラッチ(4)のカムリング(21)とパイロットクラッチ(3)のカムリング(11)との間に第2のばねエレメント(47)が配置されている、請求項7から11までのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項13】
メインクラッチ(4)のカムリング(21)とメインクラッチ(4)のクラッチケース(16)との間にばね手段(44)および/または減衰手段(45)が配置されている、請求項7から12までのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項14】
軸受け(13)に設けられた、基本摩擦を発生させるための前記手段は、パイロットクラッチ(3)とメインクラッチ(4)との間の回動量の増加につれて、基本摩擦がより少なくなるように形成されている、請求項8から13までのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項15】
パイロットクラッチ(3)とメインクラッチ(4)とを備えた前記クラッチが、軸受け(13)を備えており、該軸受け(13)が、メインクラッチ(4)とパイロットクラッチ(3)との間の調整可能な摩擦に対する手段を有している、請求項1記載のクラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−509542(P2013−509542A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535625(P2012−535625)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/DE2010/001224
【国際公開番号】WO2011/050772
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512006239)シェフラー テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (59)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】