説明

パイロットバルブ

【課題】充填した油に気泡が混入した場合にも、操作性の問題やパイロット油圧が不安定になる問題を防止すること。
【解決手段】操作レバーLの操作量に応じてピストン30が進出移動した場合に出力圧調整バネ53によって入力ポート11fと出力ポート11gとを互いに連通させる方向にスプール40を押圧するとともに、出力ポート11gの圧力を受圧室56に作用させ、出力圧調整バネ53の押圧力と受圧室56に作用する圧力とをバランスさせた状態で出力ポート11gからパイロット油圧を出力するパイロットバルブであって、スプール40とロードピストン30との間に、スプール40の受圧用凹部44に対してロードピストン30が予め設定した距離を超えて進入した場合に受圧室56を油タンクに通じたドレンポート11hに連通させる脱気通路47,57を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロットバルブに関するもので、特に、ピストンが移動した場合にピストンとスプールとの間に介在させた出力圧調整バネの押圧力と、スプールに作用する出力ポートの圧力とをバランスさせた状態で出力ポートからパイロット油圧を出力するパイロットバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、例えば特許文献1に記載のものがある。パイロットバルブは、バルブ本体にピストン及びスプールを備えている。ピストンは、操作レバーの傾動量に応じて進出移動するようにバルブ本体に配設されている。スプールは、バルブ本体に設けた入力ポートと出力ポートとの間の断続状態を変更するようにバルブ本体に進退可能に配設されている。スプールとピストンとの間には、ピストンが進出移動した場合にスプールに押圧力を付与する出力圧調整バネが介在されている。
【0003】
また、スプールには、先端部に設けた受圧用凹部にロードピストンが進退可能に嵌合されており、スプールの受圧用凹部に受圧室が構成されている。この受圧室は、スプールに形成した連絡通路によってバルブ本体の出力ポートに連通されている。
【0004】
上記のように構成されたパイロットバルブでは、操作レバーが操作され、その傾動量に応じてピストンが進出移動すると、出力圧調整バネによって入力ポートと出力ポートとが互いに連通される方向にスプールが押圧されるとともに、出力ポートの圧力が受圧室に作用され、出力圧調整バネの押圧力と受圧室に作用する圧力とがバランスした位置にスプールが配置されることになる。従って、入力ポートに接続した油圧ポンプの吐出する油の圧力(1次油圧)を、出力圧調整バネの押圧力、すなわち操作レバーの傾動量に応じたパイロット油圧(2次油圧)として出力ポートから出力することができる。
【0005】
このパイロットバルブでは、バルブ本体に対してスプールが移動すると、スプールに形成した受圧用凹部に対してロードピストンが進入もしくは退行移動され、ロードピストンの移動に伴って、受圧室に充填された油の圧力が変化することになる。この場合においても、受圧室に連絡通路が形成されているため、内部の油が出力ポートとの間で適宜流通されることになり、受圧室の油がスプールの移動を妨げる恐れはない。具体的には、スプールの受圧用凹部に対してロードピストンが進入する場合、受圧室に充填した油の圧力が上昇することになるが、圧力上昇に伴って連絡通路から出力ポートに油が排出されるため、ロードピストンの進入移動が妨げられることはない。一方、スプールの受圧用凹部に対してロードピストンが退行する場合には、受圧室に充填した油の圧力が減少することになるが、圧力減少に伴って連絡通路から出力ポートの油が流入するため、ロードピストンの退行移動が妨げられることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−2900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、パイロットバルブに限らず、一般的な油圧機器を組み立てる場合には、機器内部に油を充填する際に、油に気泡が混入する恐れがある。混入した気泡は、油が流通される通路においてはそのまま排出されることになるが、油を貯留する室に混入した場合、そのまま残留する場合が多い。例えば、上述したパイロットバルブにあっては、スプールの受圧室に気泡が残存する恐れがある。スプールの受圧室に充填された油に気泡が混入された状態で、スプールの受圧用凹部に対してロードピストンが進入移動した場合には、まず気泡が圧縮され、その後に油の圧力が急速に上昇することになる。
【0008】
こうした受圧室の段階的な圧力の変化は、スプール、ピストン及び操作レバーを介して操作者の手に伝わることになり、操作反力が変化して違和感を与える等、操作性の点で必ずしも好ましいとはいえない。しかも、操作レバーを一定量操作したにも関わらず、バルブ本体に対するスプールの位置が変化することになり、出力ポートから出力されるパイロット油圧が不安定になる恐れもある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みて、充填した油に気泡が混入した場合にも、操作性の問題やパイロット油圧が不安定になる問題を防止することのできるパイロットバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係るパイロットバルブは、バルブ本体に進退可能に配設したピストンと、バルブ本体に設けた入力ポートと出力ポートとの間の断続状態を変更する態様でバルブ本体に進退可能に配設したスプールと、ピストンとスプールの基端部との間に介在し、ピストンが進出移動した場合にその移動量に応じた押圧力をスプールに付与することにより入力ポートと出力ポートと互いに連通する方向に押圧力を付与する出力圧調整バネと、スプールの先端部に設けた受圧用凹部に進退可能に嵌合することにより、スプールの受圧用凹部に受圧室を構成するロードピストンとを備え、操作レバーの操作量に応じてピストンが進出移動した場合に出力圧調整バネによって入力ポートと出力ポートとを互いに連通させる方向にスプールを押圧するとともに、出力ポートの圧力を受圧室に作用させ、出力圧調整バネの押圧力と受圧室に作用する圧力とをバランスさせた状態で出力ポートからパイロット油圧を出力するパイロットバルブであって、前記スプール及び前記ロードピストンに、スプールの受圧用凹部に対してロードピストンが予め設定した距離を超えて進入した場合に前記受圧室を油タンクに通じたドレンポートに連通させる脱気通路を形成したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に係るパイロットバルブは、上述した請求項1において、ピストンとバルブ本体との間に構成し、内部圧力が増大した場合にピストンを進出移動させる方向の押圧力を生成するアシスト受圧室と、出力ポートの圧力を前記アシスト受圧室に作用させるアシスト通路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操作レバーをフルストロークさせる等、スプールの受圧室に対してロードピストンを予め設定した距離を超えて進入させれば、脱気通路を介して受圧室をドレンポートに連通され、出力ポートの油が受圧室及び脱気通路を通じてドレンポートに排出されることになり、この間、受圧室に気泡が存在していた場合にも油とともにドレンポートに排出されることになる。従って、受圧室に充填された油に気泡が混入された状態で、スプールの受圧用凹部に対してロードピストンを進出移動させた場合にも、受圧室に段階的な圧力の変化が発生することはなく、操作反力が変化して違和感を与える等、操作性の点で問題が発生したり、出力ポートから出力されるパイロット油圧が不安定になる恐れもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1であるパイロットバルブを示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示したパイロットバルブの要部拡大断面図である。
【図3】図3は、図1に示したパイロットバルブの要部断面図である。
【図4】図4は、図1に示したパイロットバルブにおいてスプールとロードピストンとの動作を示す要部断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2であるパイロットバルブを示す断面図である。
【図6】図6は、図5に示したパイロットバルブにおいてスプールとロードピストンとの動作を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るパイロットバルブの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1及び図2は、本発明の実施の形態1であるパイロットバルブを示したものである。ここで例示するパイロットバルブは、建設機械においてブームやバケット等の作業機を駆動する作業機用油圧アクチュエータと油圧ポンプとの間に介在し、作業機用油圧アクチュエータに対する油の供給制御を行う方向切換バルブに対して操作レバーLの操作量に応じたパイロット油圧を供給するためのものである。図には明示していないが、本実施の形態1は、特に、バルブ本体10の一端面に傾動可能に配設した操作レバーLによって2つの方向切換バルブ(図示せず)に対する油の供給制御をおこなうパイロットバルブを示しており、操作レバーLの基端部に装着したディスクDによって覆われる位置に2対の収容孔11を有するとともに、それぞれの収容孔11にスリーブ20、ピストン30及びスプール40が収容してある。4つの収容孔11は、互いに軸心が平行となり、かつ操作レバーLからの距離が同一となるようにバルブ本体10に形成してある。尚、収容孔11及びこれに収容させたスリーブ20、ピストン30及びスプール40は、互いに同一の構成を有したものである。従って、以下においては基本的に、そのうちの一つを代表して説明を行う。また、以下においては便宜上、バルブ本体10において操作レバーLを配設した端面を上方として説明を行う。
【0016】
収容孔11は、スリーブ収容部11aとピストン収容部11bとスプール収容部11cとを有して構成したものである。スリーブ収容部11aは、バルブ本体10の上端部に構成した円柱状の孔であり、バルブ本体10の上端面に開口している。
【0017】
ピストン収容部11bは、スリーブ収容部11aよりも小さい内径を有した円柱状の孔であり、スリーブ収容部11aの下方部に互いの軸心を合致させた状態で形成してある。このピストン収容部11bには連絡ポート11dが設けてある。連絡ポート11dは、ピストン収容部11bの下端部に形成した大径の環状を成す凹部である。バルブ本体10に形成した4つの連絡ポート11dは、連通通路11eを介して互いに連通し、ドレンポートに繋がっている。
【0018】
スプール収容部11cは、ピストン収容部11bよりも小さい内径を有した円柱状の孔であり、ピストン収容部11bの下方部に互いの軸心を合致させた状態で形成してある。スプール収容部11cには、入力ポート11f、出力ポート11g及びドレンポート11hが設けてある。入力ポート11fは、スプール収容部11cの上方部に形成した大径の環状を成す凹部である。バルブ本体10に形成した4つの入力ポート11fは、入力ポート連絡通路11iによって互いに連通し、さらに供給ポート12を介して図示せぬ油圧ポンプに接続してある。出力ポート11gは、入力ポート11fよりも下方となる部位に形成した大径の環状を成す凹部である。バルブ本体10に形成した4つの出力ポート11gは、互いに独立しており、図には明示していないが、それぞれが対応する方向切換バルブ(図示せず)を切り換えるためのパイロットポートに接続してある。ドレンポート11hは、スプール収容部11cの下端部に形成した大径部分である。バルブ本体10に形成した4つのドレンポート11hは、それぞれが図示していないドレン通路を介して油タンク(図示せず)に接続してある。
【0019】
スリーブ20は、収容孔11のスリーブ収容部11aに嵌合する外径を有した円筒状部材であり、外周面とスリーブ収容部11aとの間にシール部材21を介在させた状態でスリーブ収容部11aに嵌着してある。図2に示すように、スリーブ20の内径は、収容孔11におけるピストン収容部11bの内径よりも僅かに小さく形成してある。
【0020】
またスリーブ20には、図2に示すように、下端部に薄肉部20aが設けてあるとともに、上端部にストッパリング22が設けてある。薄肉部20aは、スリーブ20の上方部よりも外径を小さく形成するとともに内径を大きく形成することによって構成したもので、複数箇所に圧力伝達口20bを有している。圧力伝達口20bは、それぞれスリーブ20の径方向に沿って形成した小径の貫通孔である。ストッパリング22は、スリーブ20の内周面から内方に向けて突設したリング状部材であり、スリーブ20に対するピストン30の上動位置を規制するものである。
【0021】
ピストン30は、下端が開口した円筒状部材であり、下端部が収容孔11におけるピストン収容部11bの内径に合致する外径に形成してあるとともに、上端部がスリーブ20の内径に合致する外径に形成してある。このピストン30は、上端部がスリーブ20に摺動可能に嵌合し、かつ下端部がピストン収容部11bに摺動可能に嵌合した状態で収容孔11に収容してある。
【0022】
図からも明らかなように、このピストン30は、バルブ本体10及びスリーブ20との間にアシスト受圧室50を構成している。アシスト受圧室50は、内部圧力が増大した場合にスリーブ20に対してピストン30を下方に押し下げる力が作用するように構成してある。このアシスト受圧室50には、図3に示すように、バルブ本体10に形成したアシスト通路51を介して出力ポート11gが連通してある。
【0023】
図1及び図2に示すように、ピストン30の上端面には押圧操作部31が設けてある。押圧操作部31は、操作レバーLが傾動した場合にディスクDによって押圧される部分であり、ピストン30よりも小さい外径を有した円柱状部材を成し、互いの軸心を合致させた状態でピストン30の上端面から上方に向けて突設してある。押圧操作部31は、ピストン30が最も下方まで移動した場合にも、球状に構成した上端部がバルブ本体10の上面から突出するに十分な長さに構成してある。押圧操作部31の中心部には、ピストン30の内部に連通するロッド収容孔31aが形成してある。
【0024】
尚、図2中の符号31bは、押圧操作部31のロッド収容孔31aとバルブ本体10の収容孔11との間を連通させるための孔である。また符号32は、押圧操作部31の外周面とスリーブ20の上端部においてストッパリング22よりも上方となる部位との間に介在させたシール部材である。さらに、図1中の符号Bは、操作レバーLの下端部とバルブ本体10の上端部との間に設けたダストブースである。
【0025】
スプール40は、図1に示すように、収容孔11のスプール収容部11cにおいて入力ポート11fからドレンポート11hに亘る部位に嵌合した円柱状部材であり、バルブ本体10に対して自己の軸心に沿う方向に移動することが可能である。このスプール40の外周面には、出力溝41及びドレン溝42が形成してある。これら出力溝41及びドレン溝42は、互いに独立した環状を成す凹溝である。出力溝41は、スプール40が自己の軸心に沿って移動した場合にバルブ本体10の入力ポート11fと出力ポート11gとの間を連通/遮断させるものである。ドレン溝42は、スプール40が自己の軸心に沿って移動した場合にバルブ本体10の出力ポート11gとドレンポート11hとの間を連通/遮断させるものである。
【0026】
スプール40には、支持ロッド部43及び受圧用凹部44が設けてある。支持ロッド部43は、スプール40よりも小さい外径を有した円柱状部材であり、互いの軸心を合致させた状態でスプール40の上端面から上方に向けて突設し、その上端部が押圧操作部31のロッド収容孔31aに位置している。この支持ロッド部43には、リングプレート35が設けてある。リングプレート35は、支持ロッド部43の上端部に形成した小径のスライド軸部43aに嵌合した円板状部材であり、スライド軸部43aの範囲内において軸心方向に移動することが可能である。リングプレート35の外径は、ピストン30の内部に摺動可能に嵌合できる大きさに形成してある。
【0027】
図からも明らかなように、リングプレート35とバルブ本体10との間にはピストン復帰バネ52が介在させてあるとともに、リングプレート35とスプール40の基端部との間には出力圧調整バネ53が介在させてある。ピストン復帰バネ52は、リングプレート35を介してピストン30を上方に押圧するためのコイルスプリングである。ピストン30に外力が作用していない場合、ピストン30は、このピストン復帰バネ52の押圧力によって最上位置に配置され、図1に示すように、上端面がストッパリング22に当接した状態となる。出力圧調整バネ53は、リングプレート35に対してスプール40を離隔する方向に押圧するコイルスプリングである。出力圧調整バネ53の押圧力は、ピストン復帰バネ52よりも小さく設定してある。ピストン30が上述した最上位置に配置された場合、出力圧調整バネ53は、バルブ本体10に対してスプール40を最上位置に配置し、入力ポート11fと出力ポート11gとの間を遮断し、かつ出力ポート11gとドレンポート11hとの間を連通させた状態に維持する。
【0028】
受圧用凹部44は、スプール40の下端面に設けた円柱状の孔であり、互いに軸心を合致させるように形成してある。図1からも明らかなように、この受圧用凹部44は、スプール40が最上位置に配置された場合にその内部上端面が出力ポート11gに達する長さを有している。
【0029】
受圧用凹部44には、図4に示すように、小径室45、連絡通路46及びスプール側脱気通路47が付設してある。小径室45は、受圧用凹部44よりも小径の円柱状を成す空所であり、互いに軸心を合致させた状態で受圧用凹部44の上端部に連通するように設けてある。連絡通路46及びスプール側脱気通路47は、それぞれスプール40の径方向に沿って形成し、スプール40の外周面に開口するごく小径の孔である。連絡通路46は、小径室45の周面から径外方向に向けて延在したもので、バルブ本体10に対してスプール40が移動した場合にも常時出力ポート11gに連通する位置に設けてある。スプール側脱気通路47は、受圧用凹部44の周面から径外方向に向けて延在したもので、バルブ本体10に対してスプール40が移動した場合にも常時ドレンポート11hに開口する位置に設けてある。
【0030】
この受圧用凹部44には、押圧バネ54を介してロードピストン55が挿入してある。押圧バネ54は、受圧用凹部44の内部上端面とロードピストン55との間に介在し、ロードピストン55を常時受圧用凹部44から押し出すように付勢するコイルスプリングである。押圧バネ54の押圧力は、出力圧調整バネ53の押圧力よりも小さく設定してある。ロードピストン55は、上端部を小径に形成した円柱状部材を成し、大径の下端部を介して受圧用凹部44に進退可能に嵌合したもので、スプール40の受圧用凹部44に受圧室56を構成している。尚、実施の形態1のように受圧用凹部44に押圧バネ54を設けた場合には、中立時にロードピストン55の位置が不安定になる事態を防止することができる。しかしながら、受圧用凹部44には、出力ポート11gからの出力圧が作用し、常にロードピストン55を突出する方向に押圧するため、必ずしも押圧バネ54を設ける必要はない。
【0031】
このロードピストン55には、ピストン側脱気通路57が形成してある。ピストン側脱気通路57は、ロードピストン55の上端部に軸心に沿うように形成した主通路部57aと、主通路部57aからロードピストン55の径方向に沿って形成した上下2つの枝通路部57b,57cとを有したものである。主通路部57aは、ロードピストン55の上端面に開口する一方、下端部がロードピストン55の内部で閉塞している。上方に設けた枝通路部57bは、ロードピストン55の小径に形成した上端部において大径の下端部に近接した部位に設けてあり、受圧室56の内部に常時開口している。下方に設けた枝通路部57cは、ロードピストン55の外周面に形成した環状凹部55aに開口するものであり、図4の(c)に示すように、スプール40が最下位置に配置された場合にのみスプール側脱気通路47に連通するように形成してある。
【0032】
上記のように構成したパイロットバルブでは、通常状態にある場合、図1の左方に示すように、ピストン復帰バネ52の押圧力によってピストン30が最上位置に配置され、それぞれのピストン30の押圧操作部31がディスクDの下面に当接した状態にあり、操作レバーLが鉛直上方に沿って配置される。それぞれのスプール40は、いずれも入力ポート11fと出力ポート11gとが遮断された状態に維持され、かつ出力ポート11gとドレンポート11hとが連通した状態に維持されている。従って、パイロットバルブからはいずれの方向切換バルブ(図示せず)に対してもパイロット油圧が出力されることはない。
【0033】
この状態から、図1の右方に示すように、操作レバーLを任意の方向に傾動(図示の例では右側に傾動)させると、傾動方向に配置されたピストン30がディスクDを介して押圧される。ピストン30が押圧されて下方に進出移動すると、リングプレート35の下動により出力圧調整バネ53を介してスプール40が下方に押圧され、図4の(b)に示すように、スプール40の出力溝41を介してバルブ本体10の入力ポート11fと出力ポート11gとが連通されるとともに、出力ポート11gとドレンポート11hとが遮断されることになり、対応する出力ポート11gからパイロット油圧が出力される。
【0034】
この間、出力ポート11gの圧力が連絡通路46を介して受圧室56に作用することになり、出力圧調整バネ53の押圧力と受圧室56に作用する圧力とがバランスした位置にスプール40が配置されることになる。従って、入力ポート11fに接続した油圧ポンプ(図示せず)の吐出する油の圧力(1次油圧)を、出力圧調整バネ53の押圧力、すなわち操作レバーLの傾動量に応じたパイロット油圧(2次油圧)として出力ポート11gから出力することができる。
【0035】
操作レバーLの傾動量が増大し、出力ポート11gからのパイロット油圧が大きくなると、受圧室56に作用する圧力も増大し、操作反力も大きくなる。しかしながら、上記パイロットバルブにおいては、出力ポート11gの圧力がアシスト通路51を介してアシスト受圧室50に作用し、出力ポート11gの圧力に応じてピストン30を下方に押圧する力が作用することになる。このため、出力ポート11gの圧力が増大した場合にも大きな操作力を要することなく操作レバーLを操作することが可能となり、操作性の点で有利となる。
【0036】
バルブ本体10に対してスプール40が移動すると、スプール40に形成した受圧用凹部44に対してロードピストン55が進入もしくは退行移動され、ロードピストン55の移動に伴って、受圧室56に充填された油の圧力が変化することになる。すなわち、スプール40の受圧用凹部44に対してロードピストン55が進入する場合には、受圧室56に充填された油の圧力が上昇することになる。しかしながら、圧力上昇に伴って連絡通路46から出力ポート11gに油が排出されるため、ロードピストン55の進入移動が妨げられることはない。一方、スプール40の受圧用凹部44に対してロードピストン55が退行する場合には、受圧室56に充填した油の圧力が減少することになる。しかしながら、圧力減少に伴って連絡通路46から出力ポート11gの油が流入するため、ロードピストン55の退行移動が妨げられることはない。
【0037】
ところで、このパイロットバルブにあっても、受圧室56に充填した油に気泡が混入していた場合には、スプール40の受圧用凹部44に対してロードピストン55が進入移動すると、まず気泡が圧縮され、その後に油の圧力が急速に上昇する、という段階的な圧力の変化が招来される恐れがある。
【0038】
しかしながら、上記パイロットバルブによれば、以下の操作を行うことによって上述の問題を解決することができる。すなわち、操作レバーLをストロークエンドまで傾動操作し、ピストン30の下方への進出移動を介してスプール40を最下位置まで移動させると、図4の(c)に示すように、スプール40に形成したスプール側脱気通路47とロードピストン55に形成したピストン側脱気通路57の枝通路部57cとが互いに連通する。この状態においては、連絡通路46から受圧室56に流入した出力ポート11gの油がピストン側脱気通路57及びスプール側脱気通路47を通じてドレンポート11hに連続して排出されることになる。従って、パイロットバルブの組み立て後に上述した操作を行えば、組み立て時に油に気泡が混入したとしてもこれを確実に除去することができるようになり、操作レバーLを操作したときに受圧室56に段階的な圧力の変化が発生することもない。これにより、操作反力が変化して違和感を与える等、操作性の点で問題が発生したり、出力ポート11gから出力されるパイロット油圧が不安定になる恐れもなくなる。
【0039】
尚、上述した実施の形態1では、ロードピストンとして上端部に小径部分を有した円柱状のものを例示しているが、例えば、以下に示す実施の形態2のように、必ずしもこの形状である必要はない。
【0040】
(実施の形態2)
図5及び図6は、本発明の実施の形態2であるパイロットバルブを示したものである。このパイロットバルブは、実施の形態1と同様、建設機械においてブームやバケット等の作業機を駆動する作業機用油圧アクチュエータと油圧ポンプとの間に介在し、作業機用油圧アクチュエータに対する油の供給制御を行う方向切換バルブに対して操作レバーLの操作量に応じたパイロット油圧を供給するためのものである。この実施の形態2においても、バルブ本体10の一端面に傾動可能に配設した操作レバーLによって2つの方向切換バルブ(図示せず)に対する油の供給制御をおこなうパイロットバルブを示しており、操作レバーLの基端部に装着したディスクDによって覆われる位置に2対の収容孔11を有するとともに、それぞれの収容孔11にスリーブ20、ピストン30及びスプール40が収容してある。4つの収容孔11は、互いに軸心が平行となり、かつ操作レバーLからの距離が同一となるようにバルブ本体10に形成してある。
【0041】
図5及び図6に示すように、実施の形態2のパイロットバルブでは、単に円柱状を成すロードピストン155を適用している。図6に示すように、このロードピストン155には、ピストン側脱気通路157としてロードピストン155の上端部に軸心に沿うように形成した主通路部157aと、主通路部157aからロードピストン155の径方向に沿って形成した1つの枝通路部157bとを有したものを適用している。主通路部157aは、ロードピストン155の上端面に開口する一方、下端部がロードピストン155の内部で閉塞している。枝通路部157bは、ロードピストン155の外周面に開口するものであり、図6の(c)に示すように、スプール40が最下位置に配置された場合にのみスプール側脱気通路47に連通するように形成してある。尚、実施の形態2において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
【0042】
この実施の形態2のパイロットバルブでは、図5に示すように、操作レバーLを任意の方向に傾動させると、傾動方向に配置されたピストン30がディスクDを介して押圧される。ピストン30が押圧されて下方に進出移動すると、リングプレート35の下動により出力圧調整バネ53を介してスプール40が下方に押圧され、図6の(a)に示す状態から図6の(b)に示すように、スプール40の出力溝41を介してバルブ本体10の入力ポート11fと出力ポート11gとが連通されるとともに、出力ポート11gとドレンポート11hとが遮断されることになり、対応する出力ポート11gからパイロット油圧が出力される。
【0043】
この間、出力ポート11gの圧力が連絡通路46を介して受圧室56に作用することになり、出力圧調整バネ53の押圧力と受圧室56に作用する圧力とがバランスした位置にスプール40が配置されることになる。従って、入力ポート11fに接続した油圧ポンプ(図示せず)の吐出する油の圧力(1次油圧)を、出力圧調整バネ53の押圧力、すなわち操作レバーLの傾動量に応じたパイロット油圧(2次油圧)として出力ポート11gから出力することができる。
【0044】
操作レバーLの傾動量が増大し、出力ポート11gからのパイロット油圧が大きくなると、受圧室56に作用する圧力も増大し、操作反力も大きくなる。しかしながら、上記パイロットバルブにおいては、出力ポート11gの圧力がアシスト通路51を介してアシスト受圧室50に作用し、出力ポート11gの圧力に応じてピストン30を下方に押圧する力が作用することになる。このため、出力ポート11gの圧力が増大した場合にも大きな操作力を要することなく操作レバーLを操作することが可能となり、操作性の点で有利となる。
【0045】
バルブ本体10に対してスプール40が移動すると、スプール40に形成した受圧用凹部44に対してロードピストン155が進入もしくは退行移動され、ロードピストン155の移動に伴って、受圧室56に充填された油の圧力が変化することになる。すなわち、スプール40の受圧用凹部44に対してロードピストン155が進入する場合には、受圧室56に充填された油の圧力が上昇することになる。しかしながら、圧力上昇に伴って連絡通路46から出力ポート11gに油が排出されるため、ロードピストン155の進入移動が妨げられることはない。一方、スプール40の受圧用凹部44に対してロードピストン155が退行する場合には、受圧室56に充填した油の圧力が減少することになる。しかしながら、圧力減少に伴って連絡通路46から出力ポート11gの油が流入するため、ロードピストン155の退行移動が妨げられることはない。
【0046】
さらに、操作レバーLをストロークエンドまで傾動操作し、ピストン30の下方への進出移動を介してスプール40を最下位置まで移動させると、図6の(c)に示すように、スプール40に形成したスプール側脱気通路47とロードピストン155に形成したピストン側脱気通路157の枝通路部157bとが互いに連通する。この状態においては、連絡通路46から受圧室56に流入した出力ポート11gの油がピストン側脱気通路157及びスプール側脱気通路47を通じてドレンポート11hに連続して排出されることになる。従って、パイロットバルブの組み立て後に上述した操作を行えば、組み立て時に油に気泡が混入したとしてもこれを確実に除去することができるようになり、操作レバーLを操作したときに受圧室56に段階的な圧力の変化が発生することもない。これにより、操作反力が変化して違和感を与える等、操作性の点で問題が発生したり、出力ポート11gから出力されるパイロット油圧が不安定になる恐れもなくなる。
【符号の説明】
【0047】
10 バルブ本体
11 収容孔
11f 入力ポート
11g 出力ポート
11h ドレンポート
30 ピストン
40 スプール
44 受圧用凹部
46 連絡通路
47 スプール側脱気通路
50 アシスト受圧室
51 アシスト通路
53 出力圧調整バネ
55 ロードピストン
56 受圧室
57 ピストン側脱気通路
155 ロードピストン
157 ピストン側脱気通路
L 操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体に進退可能に配設したピストンと、
バルブ本体に設けた入力ポートと出力ポートとの間の断続状態を変更する態様でバルブ本体に進退可能に配設したスプールと、
ピストンとスプールの基端部との間に介在し、ピストンが進出移動した場合にその移動量に応じた押圧力をスプールに付与することにより入力ポートと出力ポートと互いに連通する方向に押圧力を付与する出力圧調整バネと、
スプールの先端部に設けた受圧用凹部に進退可能に嵌合することにより、スプールの受圧用凹部に受圧室を構成するロードピストンと
を備え、操作レバーの操作量に応じてピストンが進出移動した場合に出力圧調整バネによって入力ポートと出力ポートとを互いに連通させる方向にスプールを押圧するとともに、出力ポートの圧力を受圧室に作用させ、出力圧調整バネの押圧力と受圧室に作用する圧力とをバランスさせた状態で出力ポートからパイロット油圧を出力するパイロットバルブであって、
前記スプール及び前記ロードピストンに、スプールの受圧用凹部に対してロードピストンが予め設定した距離を超えて進入した場合に前記受圧室を油タンクに通じたドレンポートに連通させる脱気通路を形成したことを特徴とするパイロットバルブ。
【請求項2】
ピストンとバルブ本体との間に構成し、内部圧力が増大した場合にピストンを進出移動させる方向の押圧力を生成するアシスト受圧室と、
出力ポートの圧力を前記アシスト受圧室に作用させるアシスト通路と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のパイロットバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−230019(P2010−230019A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74972(P2009−74972)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】