説明

パイロット信号発生器と、これを用いた基地局受信装置

【課題】増幅器の動作状態に対する判定精度が悪い。
【解決手段】増幅器33へ入力される信号のレベルと、増幅器33から出力される信号のレベルとを検出し、これらのレベルに応じてパイロット信号を発生させるものであるので、パイロット信号は増幅器33へ入力されない。これにより、パイロット信号に使用する周波数にかかわらず、増幅器33の動作状態に対し精度が良く判定可能なパイロット信号を発生させるパイロット信号発生器を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定利得増幅器の利得を監視し、その利得値に応じた信号を出力するパイロット信号発生器と、これを用いた基地局受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のパイロット信号発生器について図面を用いて説明する。図6は、従来のパイロット信号発生器を用いた携帯電話用基地局のブロック図である。図6において、基地局1は、携帯電話2と通信するために設置される。この基地局1には、携帯電話2から送られた高周波信号を受信するアンテナ3と、このアンテナ3に入力された高周波信号が供給される基地局受信装置4とを含んでいる。
【0003】
では、従来の基地局受信装置4について詳細に説明する。アンテナ3に入力された高周波信号が入力され、携帯電話2が使用する周波数帯域のみを通過させるフィルタ5と、このフィルタ5の出力が一方の入力に接続されるとともに、他方の入力には局部発振器6の出力が供給された合成器7と、この合成器7で合成された合成信号を増幅する増幅器8とを有している。なお、増幅器8は固定の増幅利得を有した増幅器である。
【0004】
この増幅器8の出力は、ケーブルを介して、分配器9へ入力される。この分配器9は、携帯電話2から受信した高周波信号と、局部発振器6の出力信号とを分配するものであり、高周波信号を受信器10へ供給し、局部発振器の信号をパイロット信号検出器11へ供給する。受信器10では、入力された高周波信号を中間周波信号へと変換する。そしてこの受信器10の出力がベースバンド回路12へ接続され、このベースバンド回路によってベースバンド信号へと戻している。
【0005】
このように構成された基地局受信装置4では、増幅器8が正常に動作しているかどうかを判定する為に、局部発振器6が出力する信号をパイロット信号とし、パイロット信号検出器11によりパイロット信号を検出する。そして、パイロット信号検出器11は、入力された信号のレベルが所定の値である場合に、増幅器8が正常に動作しているものと判定し、正常動作している旨の信号を出力し、一方入力された信号のレベルが、所定の値でない場合に、増幅器8の利得が異常であると判定し、異常である旨の信号を出力する。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平10−107655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のパイロット信号発生器におけるパイロット信号の周波数には、増幅器8の使用周波数帯域内となる周波数を用いる。一般的に増幅器8が使用できる周波数帯域は100MHz程度であるので、パイロット信号の周波数と、携帯電話2の通信周波数とは非常に近い周波数となる。そのため、受信器10においてパイロット信号が、妨害信号となる場合が発生する。
【0008】
そこで、パイロット信号の周波数として増幅器8の使用周波数帯域外の周波数を用いればよいが、増幅器8の使用周波数帯域外における利得は、ばらつきが大きい。従って、パイロット信号に増幅器8の使用帯域外の周波数を用いると、パイロット信号検出器11での増幅器8の動作状態に対する判定精度が悪化するという問題を有している。
【0009】
そこで本発明は、この問題を解決したもので、増幅器の動作状態に対する判定精度が良好なパイロット信号発生器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために本発明のパイロット信号発生器では、固定利得増幅器へ入力される信号のレベルと、固定利得増幅器から出力される信号のレベルとを検出し、パイロット信号発生手段は、これらのレベルに応じてパイロット信号を発生させるものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明のパイロット信号発生器では、固定利得増幅器へ入力される信号のレベルと、固定利得増幅器から出力される信号のレベルとを検出し、パイロット信号発生手段は、これらのレベルに応じてパイロット信号を発生させるものであるので、パイロット信号は固定利得増幅器へ入力されない。つまり、パイロット信号のレベルは、固定利得増幅器の使用周波数外の周波数におけるインピーダンスばらつきによる影響を受け難くなるので、パイロット信号の周波数として固定利得増幅器の使用周波数帯域外の周波数を用いることができる。これにより、パイロット信号に使用する周波数にかかわらず、増幅器の動作状態に対し精度が良く判定可能なパイロット信号を発生させるパイロット信号発生器を提供できる。
【0012】
また、パイロット信号発生手段は、固定利得増幅器の入力と出力とレベルを検出してパイロット信号を出力するので、このパイロット信号を固定利得増幅器へ入力する必要が無く、固定利得増幅器から出力される受信信号は、パイロット信号による相互変調歪みなどが起こり難くなるので、判定精度が良好である。
【0013】
さらに、パイロット信号の発生には、実際に固定利得増幅器へ入力される入力信号のレベルと、その信号が増幅され、固定利得増幅器から実際に出力された出力信号のレベルを用いる。つまり固定利得増幅器における実際入出力を用いるので、さらに判定精度は良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、本実施の形態について図面を用いて説明する。図2は、本実施の形態における基地局受信装置を用いた監視システムの概略ブロック図である。なお図2において、従来と同じものは同じ番号を用い、その説明は簡略化している。
【0015】
図2において、基地局21は、携帯電話2(通信機器の一例として用いた)との高周波信号を送・受信するものである。例えば、携帯電話2から他の通信機器(図示せず)へ送信する場合、携帯電話2が送信した送信信号は、基地局21が受信し、ケーブル22などを介して通信会社23へ送られる。一方、携帯電話2が他の通信機器(図示せず)から受信する場合、受信信号は、通信会社23からケーブル22を介して、基地局21へ入力される。そしてこの信号を高周波信号へと変換し、携帯電話2へ送信する。
【0016】
基地局21は、アンテナ24と、このアンテナ24に入力された高周波信号をケーブル22へ送信する信号へと変換する基地局受信装置25とを含んでいる。そして、この基地局受信装置25は、アンテナ塔26や高いビルの頂上近傍に設置される屋外受信装置25a(基地局受信装置の一例として用いた)と、建物27内に設置される屋内受信装置25b(報知装置の一例として用いた)と、これらの間を接続する同軸ケーブル25cとを含んでいる。
【0017】
携帯電話2をどこでも利用できるようにするために、このような基地局21は、ある間隔をおいて広範囲に点在している。さらに、それらは全て無人で稼動しているので、それらの基地局21は通信会社23に対し定期的に稼動状態を示す報知信号を送出している。この報知信号がケーブルを介して通信会社23へ送信され、この通信会社23において各基地局の状態が、監視装置28の表示部28aへ表示される。このようにして、通信会社23は、複数の基地局21の稼動状態を集中的に監視している。
【0018】
つまりこのような監視システムにおいて、報知信号の精度は非常に重要なものとなる。つまり、異常が表示されると、基地局21を管轄する通信会社23は、それが例え人里離れた山中にある基地局21であり、頻繁に携帯電話2が利用されないような場所であっても、修理のために人を派遣しなければならない。そして、特にその異常が屋外受信装置25aに起因する場合、その作業はアンテナ塔26上で行われることとなるので、非常に危険も伴う作業となる。従って、このような基地局21に用いられる監視システムにおいて、報知信号の精度を高くすることは非常に重要となる。
【0019】
そこで本発明は、このような要求に対応し、高い報知信号精度を実現できる基地局受信装置25を提供するものである。以下に、本実施の形態における基地局受信装置25について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施の形態における基地局受信装置のブロック図である。図1において図2や図7と同じものは同じ番号を用い、その説明は簡略化している。
【0020】
まず屋外受信装置25aについて以下詳細に説明する。アンテナ3の出力は、屋外受信装置25aの入力端子31へ接続され、この入力端子31へは、携帯電話2の送信信号の周波数である高周波信号が入力される。この入力端子31へ入力された信号は、バンドパスフィルタ32へ供給される。このバンドパスフィルタ32は、入力された高周波信号の中で携帯電話2との通信で使用する高周波信号を通過させるものである。
【0021】
増幅器33(固定利得増幅器の一例として用いた)は、バンドパスフィルタ32の出力が供給され、このバンドパスフィルタ32を通過した信号を増幅する。そして増幅器33は、使用可能な特定の帯域幅を有しており、この使用周波数帯域内の周波数信号は、一定の利得で増幅される。この増幅器33で増幅された信号は、出力端子34からケーブル25cを介して屋内受信装置25bへ供給される。
【0022】
屋外受信装置25aには、増幅器33の利得を監視し、この監視状況に応じてパイロット信号を発生させるパイロット信号発生手段35を有している。このパイロット信号発生手段35は、増幅器33とバンドパスフィルタ32との間と、増幅器33と出力端子34との間の信号レベルをそれぞれに検出し、それらのレベルが正常であるか異常であるかを判定し、正常か異常かを示す信号をパイロット信号出力端子35aから出力する。なお、本実施の形態では、増幅器33と出力端子34との間に、合成器36を挿入する。この合成器36は、一方の入力に増幅器33の出力が接続され、他方の入力にパイロット信号出力端子35aが接続され、増幅器33とパイロット信号発生手段35とから供給された信号を合成して出力端子から出力させるものである。これにより、高周波信号とパイロット信号との電送は、ケーブル25c一本で電送することができる。
【0023】
次に、パイロット信号発生手段35について説明する。バンドパスフィルタ32と増幅器33の間に方向性結合器37(入力信号分配器の一例として用いた)が、挿入される。この方向性結合器37は、増幅器33へ入力される入力信号を分配し、分配信号出力端子37aから出力する。一方増幅器33と合成器36との間にも方向性結合器38(出力信号分配器の一例として用いた)が、挿入される。この方向性結合器38は、増幅器33から出力される出力信号を分配し、分配信号出力端子38aから出力する。
【0024】
これら分配信号出力端子37a,38aには夫々増幅器39,40が接続される。方向性結合器37,38では、入力信号あるいは出力信号の約1〜10%の電力が分配されるだけであるので、非常に小さなレベルであり、このままでは検波器41,42での検出精度が悪くなる。そこで、増幅器39,40で増幅することにより、検波器41,42によって精度良く検出できるようにしている。なお、ここで、方向性結合器37,38の分配量は共に略同じものを用い、さらに増幅器39,40の利得は同じにすることが重要である。そのようにすることで、増幅器33へ入力される入力信号と、増幅器33から出力される出力信号との差を正確に検出できるので、増幅器33の動作状態を正確に検知することができるからである。
【0025】
検波器41と検波器42の出力は、パイロット信号発生器43へ接続される。なお、本実施の形態では増幅器33へ供給される電流を検出した電流検出信号もパイロット信号発生器43へ供給されている。これにより、パイロット信号発生器43は、検波器41と検波器42の出力と電流検出信号との3つの信号によって、増幅器33が正常に動作しているかどうかを判定している。そしてパイロット信号発生器43は、増幅器33が正常な利得で動作していると判定した場合に、その旨を示すパイロット信号をパイロット信号出力端子35aから出力する。
【0026】
次に、屋内受信装置25bについて説明する。屋内受信装置25bには、同軸ケーブル25cが接続される入力端子44と、この入力端子に入力された信号が入力されるパイロット信号検出手段45と、このパイロット信号検出手段45の一方の出力端子45aから出力される高周波信号が入力される受信器10と、この受信器10の出力が接続されたベースバンド回路12と、このベースバンド回路12の出力が接続された出力端子46とを有している。
【0027】
パイロット信号検出手段45の入力端子44と出力端子45aとの間には、分配器47が挿入される。この分配器47は、入力された信号の中から携帯電話2から送られた周波数の高周波信号を端子47a側へ供給し、パイロット信号を端子47bに出力する。そのために本実施の形態における分配器47は、方向性結合器によって入力された信号を分配する。そして、その方向性結合器の一方の出力と端子47aとの間には、携帯電話2で使用される周波数を通過させ、パイロット信号の周波数を減衰させるフィルタが挿入されている。また、方向性結合器の他方の出力と端子47bの間には、パイロット信号発生器43が発生させるパイロット信号の周波数信号を通過させ、携帯電話2で使用される周波数を減衰させるバンドパスフィルタが挿入されている。
【0028】
分配器47の端子47bから出力されるパイロット信号は、パイロット信号検出器48へ供給される。本実施の形態におけるパイロット信号検出器48には、パイロット信号の周波数と同じ周波数を発振する発振器と、この発振器の出力が一方の入力に接続されると共に、他方の入力には分配器47から入力されたパイロット信号が供給された混合器を有している。そしてこの混合器の出力は、パイロット信号検出手段45の出力端子45bを介して屋内受信装置25bの出力端子46から出力される。
【0029】
次に、以上のように構成された基地局21において、基地局受信装置25の故障を検知し、監視装置28へ報知信号を送出する動作について説明する。携帯電話2あるいは送信器51から送られた高周波信号は、バンドパスフィルタ32を通過し、増幅器33へ入力される。増幅器33は、この高周波信号をある特定の利得で増幅して出力端子34へ送出する。
【0030】
このとき、方向性結合器37と方向性結合器38により増幅器33の前後の信号を分配し、それぞれの信号を検波器41と、検波器42との夫々へ供給する。検波器41と、検波器42では夫々の信号のレベルを検出し、そのレベルに応じた直流電圧を出力する。そして、パイロット信号発生器43は、検波器41と、検波器42から供給された直流電圧に応じ、パイロット信号を発生させる。このパイロット信号は、合成器36により増幅器33から出力された高周波信号と合成され、出力端子34からケーブル25cへ送出される。なおこのパイロット信号発生器43には、増幅器33の使用帯域外であり、かつバンドパスフィルタ32の減衰域の周波数で発振する発振器を含んでいる。
【0031】
ここで、監視すべき増幅器33の利得の状態を示すための手段としては、発振信号自体をオン・オフし、パイロット信号自体の送信、非送信で表現する方法や、パイロット信号発生器43に入力される信号によって発振信号に変調をかけて表現する方法などを用いる。
【0032】
高周波信号とパイロット信号とは、ケーブル25cを介し、屋内受信装置25bへ送られる。屋内受信装置25bにおいて、分配器47には、夫々の信号を通過させるためのフィルタを含んでおり、高周波信号とパイロット信号とを分離し、高周波信号は端子47aより出力され、パイロット信号は端子47bから出力される。このようにして分離された高周波信号は、受信器10により受信され、ベースバンド回路12により復調や、伸長などが行われ、出力端子46へ出力される。
【0033】
一方、パイロット信号はパイロット信号検出器48へ入力される。このパイロット信号検出器48では、入力されたパイロット信号により、増幅器33の状態を判定し、正常であると判定した場合には、正常を示す旨の報知信号を発生させる。増幅器33の動作が異常であると判定した場合には、異常を示す旨の報知信号を発生させる。そして監視装置28は、これらの報知信号を受け取り、表示部28aへ増幅器33の稼動状態を表示する。
【0034】
以上のようにパイロット信号発生手段35は、増幅器33へ入力される信号のレベルと、この増幅器33から出力される信号のレベルとを検出し、これらのレベルに応じてパイロット信号を発生させるものであるので、パイロット信号を増幅器33へ入力する必要がない。これにより、パイロット信号の周波数として増幅器33の使用周波数帯域外の周波数を用いることができる。従って、パイロット信号の周波数には、任意の周波数を選定することができる。
【0035】
このことにより、パイロット信号の周波数には、通信に利用されている周波数外の周波数を用いることも可能となるので、携帯電話2との通信で使用する周波数に係わらず、増幅器33の動作状態を監視可能な報知システムが構築可能となる。そしてこのことは、昨今の携帯電話需要の増加に伴う、新たな周波数帯域の使用に対しても、パイロット信号の周波数を変更する必要がなく、パイロット信号発生手段35や、パイロット信号検出手段45をそのまま継続利用できるというメリットがある。従って、通信事業者にとっては、増波などに対しても、設備変更による投資などを減少させることができることとなる。
【0036】
なお、増幅器33の周波数に対するインピーダンスばらつきの影響を受け難くなるので、増幅器33の動作状態を精度が良く監視可能となる。
【0037】
また、パイロット信号発生手段35は、増幅器33の入力と出力とレベルを検出してパイロット信号を出力するので、このパイロット信号を増幅器33へ入力する必要が無く、増幅器33から出力される受信信号は、パイロット信号による相互変調歪みなどが起こり難くなるので、受信器10において良好な受信感度を得ることができる。
【0038】
さらに、パイロット信号の発生には、実際に増幅器33へ入力される入力信号のレベルと、その信号が増幅され、増幅器33から実際に出力された出力信号のレベルとの実際の信号レベルを用いる。つまり増幅器33における実際入出力を用いるので、さらに、パイロット信号検出手段45での判定精度は良好となる。従って、パイロット信号検出手段45から出力される報知信号の信頼性も高くなる。
【0039】
なお本実施の形態において、パイロット信号がアンテナ24から放射されることを防止するために、パイロット信号の周波数は、バンドパスフィルタ32の減衰域となる周波数としている。このようにすれば、パイロット信号は、バンドパスフィルタ32で減衰するので、アンテナ24から放射されず、他の携帯電話2などへ妨害を与えない。
【0040】
さらに、本実施の形態では、屋外受信装置25aの受信器10の出力が供給される疑似送信信号発生器49を設けている。この疑似送信信号発生器49は、受信器10からの出力を検知し、前回信号を検知した時間から所定時間以上経過しても、受信器10から新たな信号の入力を検知できない場合に、疑似送信信号を発生させる。そして疑似送信信号は、ケーブル50を介して送信器51(疑似通信器の一例として用いた)へ送出される。この送信器51は、携帯電話2の送信回路部分のみを抜き出したものを利用することも可能であるので、低価格で実現可能である。
【0041】
送信器51では、疑似送信信号を携帯電話2が送信で使用する周波数帯域と同じ周波数帯域へと変換し、送信アンテナ52から空中へ放射する。そして、この放射された疑似送信信号は、アンテナ24で受信され、バンドパスフィルタ32へと供給される。疑似送信信号は、携帯電話2の送信周波数と同じであるので、バンドパスフィルタ32を通過し、増幅器33で増幅される。これによりパイロット信号発生手段35は、増幅器33の入出力での疑似送信信号のレベルを検出してパイロット信号を発生させる。なおベースバンド回路12において、疑似送信信号を検出した場合には、この信号は出力端子46へ送出しない。
【0042】
つまり、パイロット信号発生手段35は、実際に携帯電話2からアンテナ24へ入力されると、パイロット信号を発生する。言い換えると、山中などのように、頻繁に高周波信号が入力されない場所にある基地局では、長期にパイロット信号発生手段35への入力が行われない場合もあるので、その間監視装置28では、増幅器33の動作が確認できないこととなり、パイロット信号検出器48で発生させる報知信号は信頼できないこととなる。そこで、予め定められた時間経過しても基地局21へ携帯電話2からの信号が入力された場合に、疑似送信信号を増幅器33へ供給することにより、パイロット信号を発生させて、報知信号を出力させることができる。これにより、例え携帯電話2の使用が少ない地域などにおいても、信頼性良く増幅器33の利得を監視できる。
【0043】
なおここで、送信器51における送信電力は、携帯電話2が近隣にある場合にアンテナ24へ入力される電力よりも小さくしておくことが重要である。これにより他の携帯電話2へ妨害を与え難くできる。
【0044】
また、ここでは、前回の通信より予め定められた時間経過後に疑似送信信号を発生させたが、これは特定時刻に定期的に行っても良い。通常携帯電話2が頻繁に使用されることのないような時間帯、例えば毎日明け方近くの時間帯に疑似送信信号を送信しても良い。
【0045】
本実施の形態におけるパイロット信号において、この周波数を携帯電話2に利用する周波数とは異なった周波数を用いることが重要である。なお、本実施の形態におけるパイロット信号の周波数としては、約1.7GHz帯の周波数であるとか、約420MHzから約430MHzの間の周波数を選択すると良い。さらに、これは、1.7GHzの周波数、420から430MHzの周波数は、共に携帯電話2で利用される周波数と離れているので、バンドパスフィルタ32での減衰量は大きく、アンテナ24から放射されないためである。もし上記以外の周波数を用いる場合にパイロット信号の周波数は、少なくとも受信する周波数帯域から約100MHz以上離しておくことが必要である。
【0046】
また、420MHzから430MHzの周波数帯域は、妨害を受けるべき信号が少ないので、パイロット信号の信頼度が高くできる。さらに、比較的周波数が低いのでこのパイロット信号を発生させる発振器などを集積回路内で構成しやすくなる。
【0047】
一方、パイロット信号の周波数として、1.7GHzの周波数帯域を用いた場合、通信として利用される周波数に、携帯電話から受信する高周波信号とパイロット信号との相互変調歪みの信号が発生し難くなる。さらにまた、1.7GHzと携帯電話2に利用する周波数とは、比較的近いので、ケーブル25cにおける損失量は、400MHzに比べて近い値となる。従って、パイロット信号検出器48でパイロット信号のレベルを判定することにより、通信に使用する高い周波数に対するケーブルの劣化を、精度良く検出することも可能となる。
【0048】
(実施の形態2)
以下に、実施の形態2について図面を用いて説明する。図3は、本実施の形態におけるパイロット信号発生器の詳細ブロック図である。図3において、本実施の形態におけるパイロット信号発生器100は、本実施の形態1におけるパイロット信号発生器43の他の形態である。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同じものは同じ番号を用い、その説明は簡略化している。
【0049】
パイロット信号発生器100には、検波器41の出力が接続された端子100aと、検波器42の出力が接続された端子100bとを有している。そして、端子100aには、増幅器33へ入力された信号のレベルに応じた電圧が供給され、一方端子100bには、増幅器33から出力された信号のレベルに応じた電圧が供給されることとなる。
【0050】
これら端子100aと端子100bとへ入力された電圧は、差動増幅器101(差分検出器の一例として用いた)へ入力され、差動増幅器101からは、これら入力された電圧の電圧差が出力される。つまり、電圧差は、増幅器33の入力信号と出力信号との実際のレベル差を表すので、この電圧差は増幅器の実際の利得値に対応したものとなる。
【0051】
差動増幅器101から出力された電圧差は、比較器102の一方の入力102aへ供給される。比較器102の他方の入力102bには基準電圧103が供給される。ここで基準電圧103は、増幅器33の利得が、予め定められた利得以上であるかを判定するためのしきい値となる。従って比較器102は、増幅器33の利得が基準電圧に対応する利得以上であり、正常であると判定した場合にハイを出力する。
【0052】
パイロット信号発生器100には、端子100cを有している。この端子100cには増幅器33の駆動電流などを検知し、増幅器33が動作しているかどうかを示す信号が供給される。なお本実施の形態では、増幅器33の駆動電流を表すためにデジタル信号が用いられ、増幅器33の駆動電流が正常に流れている場合にはハイとなり、駆動電流を検出できないなど、異常である場合にローとなる。
【0053】
これら端子100cへ入力された信号と、比較器102の出力とはアンド回路107へ入力される。これにより全ての入力がハイ(正常を示す)の場合にハイが出力され、いずれかの入力がロー(異常を示す)である場合にローが出力される。このように、増幅器33の利得が正常であるかどうかを、デジタル信号によって示しているので、パイロット信号検出手段45において、正常動作と異常動作とを信頼性良く判定できる。
【0054】
そして、アンド回路107の出力と端子100dとの間には、信号発生器104が挿入されている。この信号発生器104は、一方の入力にアンド回路107の出力が接続されるとともに、他方の入力には局部発振器105が接続された変調器106と、局部発振器105にループ接続されたPLL回路とを有している。これによりパイロット信号は、変調されているので、多くの情報の伝達が可能となる。つまり、増幅器33の増幅度合いや他の機器などの状態など、さらに多くの状態に応じた情報を出力することができるので、それらの状態を細かに知ることも可能となる。
【0055】
以上のようにパイロット信号発生器100では、差動増幅器101によって、実際に増幅器33へ入力される入力信号のレベルと、増幅器33から実際に出力される信号のレベルとを夫々に検波し、それら検波器41と検波器42との出力電圧の差に応じてパイロット信号を出力するので、入力される高周波信号のレベルにかかわらず、増幅器33の利得を正確に検知することができる。
【0056】
なお、端子100cには、送信器51の駆動電流などを検知し、送信器51の動作状態を示す信号などを供給しても良い。あるいは、これら全ての信号の論理和を用いることや、それらのデジタル信号の値をデジタルデータ信号とし、このデータにより変調することもできる。これによりひとつのパイロット信号によって、さまざまな状態を表すことも可能となる。
【0057】
(実施の形態3)
以下に実施の形態3におけるパイロット信号発生器について図面を用いて説明する。図4は、本実施の形態におけるパイロット信号発生器のブロック図である。図4において、図1や図3と同じものは同じ番号を用い、その説明は簡素化している。図4において、パイロット信号発生器201には、検波器41と検波器42の出力が接続される端子201aと端子201bとを有している。これらの端子201aと端子201bとに入力された信号が入力されて、これらの電圧差を出力する比較器202と、この比較器202の出力と端子201cとの間に挿入された信号発生器203が挿入されている。
【0058】
信号発生器203には、周波数信号を発振する局部発振器204と、この局部発振器の出力が一方の入力に接続されるとともに、他方の入力には、比較器202の出力が供給された振幅変調器205とを有している。なお、この振幅変調器205では、比較器202から入力された電圧に応じて、振幅変調を行っている。従って、アナログ変調であるので、構成が簡素となり、パイロット信号発生器201が低価格で実現できる。
【0059】
さらに、信号発生器203には、検波器41の出力が入力信号レベル比較器(図示せず)を介して接続される端子201dを設けている。この端子201dに入力された検波器41の出力も、振幅変調器205へ供給される。そしてこの振幅変調器205では、検波器41から入力があった場合には、予め定められた分だけ振幅変調器205の出力信号の振幅(レベル)を大きくする。これは、増幅器33への入力がなく、比較器202からの出力が0である場合と、増幅器33の破損などにより、増幅器33への入力と出力とが同じレベルであるので、比較器202からの出力が0である場合とを判別できるようにするためである。
【0060】
これにより、増幅器33への入力の有無も検出することが可能となるので、さらに精度の高い検出が可能となる。なお、実施の形態1や2に対し、本実施の形態と同様に検波器41の出力の検出を行っても良い。
【0061】
なおこの入力レベル比較器は、増幅器33への入力の有無を検波器41の出力から検出するために設けている。つまり、検波器41からの出力がある一定の値以上である場合に、入力があったという旨の信号を出力している。
【0062】
さらに、本実施の形態において、振幅変調器205は比較器202や端子201dからの入力が無くても局部発振器204の出力信号をパイロット信号として端子201cから出力する。これにより、パイロット信号検出器48は、パイロット信号を検出できなければ、同軸ケーブル25cあるいはパイロット信号発生器201が破損しているとして判定することができるので、これらの同軸ケーブル25cあるいはパイロット信号発生器201の破損を報知することも可能となる。
【0063】
(実施の形態4)
以下実施の形態4について図面を用いて説明する。図5は、本実施の形態におけるパイロット信号検出手段のブロック図である。図5において図1と同じものは同じ番号を用い、その説明は簡略化する。このパイロット信号検出手段301には、複数の入力端子301a,301b,301cを有している。これら入力端子301a,301b,301cの夫々には夫々別の屋外受信装置25aが接続されている。それら入力端子301a,301b,301cの夫々に対応して設けられた出力端子301d,301e,301fが設けられる。そして、これら入力端子301a,301b,301cの夫々と、出力端子301d,301e,301fの夫々との間には夫々に分配器302a,302b,302cが挿入されている。この分配器302a,302b,302cの分配出力は、スイッチ303へ接続されている。このスイッチ303の共通端子が、パイロット信号検出器48に接続される。そしてスイッチ303は、分配器302a,302b,302cの分配出力を選択的に切替えるものである。
【0064】
なおここで、パイロット信号発生器43が発生するパイロット信号の周波数は、携帯電話2が使用している周波数帯域や、同一の基地局21で他の携帯電話との通信で使用される他の周波数帯域以外の周波数を用いると良い。これは、このパイロット信号の周波数は、通信で使用される周波数帯域以外の周波数を用いているので、携帯電話2などへ妨害を与えることは少なくなる。また、パイロット信号発生器43が発生する信号の周波数は、携帯電話2に用いられる周波数帯域以外の周波数であるので、パイロット信号発生器43は、使用される携帯電話2の周波数によらず、使用することができる。つまり、使用される周波数が変更されるような場合においても、パイロット信号発生器43や、パイロット信号検出器48はそのままで使用できる。したがって、通信に利用される周波数が変更されるような場合においても、通信事業者の設備投資を抑制できるという効果もある。
【0065】
もちろん携帯電話2と通信する周波数帯域がただひとつであるような場合においても、パイロット信号の周波数は増幅器33や受信器10で使用される周波数とは異なるので、それらの機器へ妨害を与えることは少なくなる。
【0066】
また、本実施の形態では、複数のパイロット信号を切替えて検出できるので、パイロット信号検出器48を共用できるので、低価格な屋内受信装置25bを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明にかかるパイロット信号発生器と、これを用いた基地局受信装置は、増幅器の動作状態に対する判定精度が良いという効果を有し、携帯電話などの通信機器の基地局に用いられるパイロット信号発生器等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施の形態1における基地局受信装置のブロック図
【図2】同、基地局受信装置を用いた監視システムの概略ブロック図
【図3】同、実施の形態2におけるパイロット信号発生器のブロック図
【図4】同、実施の形態3におけるパイロット信号発生器のブロック図
【図5】同、実施の形態4におけるパイロット信号検出手段のブロック図
【図6】従来の基地局受信装置のブロック図
【符号の説明】
【0069】
33 増幅器
35 パイロット信号発生手段
35a パイロット信号出力端子
37 方向性結合器
38 方向性結合器
41 検波器
42 検波器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定利得増幅器の利得を監視し、その利得値に応じた信号を出力するパイロット信号発生装置において、前記固定利得増幅器へ入力される入力信号を分配する入力信号分配器と、この入力信号分配器の出力に接続された前記入力レベルの検波器と、前記固定利得増幅器から出力される出力信号を分配する出力信号分配器と、この出力信号分配器の出力が接続された出力レベルの検波器と、この出力レベルの検波器と前記入力レベルの検波器との出力が接続されたパイロット信号発生手段と、このパイロット信号発生手段の出力が接続されたパイロット信号出力端子とを有し、前記パイロット信号発生手段は、前記入力レベルの検波器と前記出力レベルの検波器との出力によりパイロット信号を出力するパイロット信号発生器。
【請求項2】
パイロット信号発生手段は、入力レベルの検波器の出力と出力レベルの検波器の出力が供給されるとともに、これらの出力の差を検出する差分検出器と、この差分検出器の出力が接続された信号発生器とを有し、前記信号発生器は、前記差に応じたパイロット信号を出力する請求項1に記載のパイロット信号発生装置。
【請求項3】
差分検出器と信号発生器との間に比較器を挿入し、この比較器の一方の入力には、前記差分検出器の出力を接続すると共に、他方の入力には予め定められた電圧を供給し、前記比較器は、前記差分検出器の出力が予め定められた値以上であるときに、正常動作を示すデジタル信号を出力する請求項2に記載のパイロット信号発生装置。
【請求項4】
信号発生器は、発振器と、この発振器にループ接続されたPLL回路とを含むと共に、パイロット信号は、発振器の出力を差分検出器の出力で変調した信号とした請求項2に記載のパイロット信号発生装置。
【請求項5】
信号発生器は、差分検出器からの出力の有無に係わらず発振器の信号を出力する請求項4に記載のパイロット信号発生装置。
【請求項6】
パイロット信号発生手段が発生する信号の周波数には、通信機器に用いられる周波数帯域以外の周波数を用いた請求項1に記載のパイロット信号発生装置。
【請求項7】
通信機器で用いられる複数の周波数帯域の中から、特定帯域の高周波信号を受信する基地局受信装置において、前記基地局受信装置は、アンテナから供給された前記高周波信号が供給される入力端子と、この入力端子に入力された前記高周波信号が、フィルタを介して供給される固定利得増幅器と、この固定利得増幅器の出力が接続された高周波信号出力端子とを備え、前記基地局受信装置は、前記フィルタと前記固定利得増幅器との間に挿入された入力信号分配器と、この入力信号分配器で分配された信号が供給される入力レベルの検波器と、前記固定利得増幅器の出力と前記出力端子との間に挿入された出力信号分配器と、この出力信号分配器で分配された信号が供給される出力レベルの検波器と、この出力レベルの検波器と前記入力レベルの検波器との出力が接続されたパイロット信号発生手段と、このパイロット信号発生手段の出力が接続されたパイロット信号出力端子とを有した基地局受信装置。
【請求項8】
固定利得増幅器の出力と出力端子との間にパイロット信号合成器を挿入し、前記パイロット信号合成器は、一方の入力に前記固定利得増幅器の出力が接続されるとともに、他方の入力にパイロット信号出力端子が接続された請求項7に記載の基地局受信装置。
【請求項9】
パイロット信号発生手段が発生する信号の周波数には、フィルタの帯域外阻止域の周波数を用いた請求項7に記載の基地局受信装置。
【請求項10】
パイロット信号発生手段が発生する信号の周波数には、通信機器で用いられる周波数帯域以外の周波数を用いた請求項7に記載の基地局受信装置。
【請求項11】
高周波信号が入力されるアンテナと、このアンテナに入力された高周波信号が供給される基地局受信装置と、この基地局受信装置のパイロット信号出力端子から出力されたパイロット信号が供給されるパイロット信号検出装置とを有し、前記基地局受信装置には、請求項7に記載の基地局受信装置を用いるとともに、前記パイロット検出装置は前記パイロット信号の検出により、固定利得増幅器の利得が規定の利得以下であると判定した場合に、報知信号を出力する基地局受信装置。
【請求項12】
アンテナの近傍に設けられると共に、固定利得増幅器へ供給される高周波信号と同じ周波数を有した疑似送信信号が出力される疑似通信器を有し、この疑似通信器は周期的に前記疑似送信信号を入力端子へ供給すると共に、前記疑似送信信号のレベルは、通信機器の出力レベルより小さくした請求項11に記載の基地局受信装置。
【請求項13】
アンテナの近傍に設けられると共に、固定利得増幅器へ供給される高周波信号と同じ周波数を有した疑似送信信号が出力される疑似通信器を有し、この疑似通信器は、一定時間以上前記アンテナへ入力が無い場合に、前記疑似送信信号を入力端子へ供給すると共に、前記疑似送信信号のレベルは、通信機器の出力レベルより小さくした請求項11に記載の基地局受信装置。
【請求項14】
高周波信号が入力される複数のアンテナと、これらのアンテナに入力された高周波信号が夫々に供給される複数の基地局受信装置と、これらの基地局受信装置のパイロット信号出力端子から出力されたパイロット信号が供給されるパイロット信号検出装置とを有し、前記基地局受信装置には請求項9に記載の基地局受信装置を用いるとともに、パイロット検出装置には前記パイロット信号が夫々に入力される複数の入力端子と、これらの入力端子に接続されるとともに、前記入力端子のいずれかを周期的に選択する切替えスイッチと、この切替えスイッチの出力が接続されたパイロット信号検出器とを有し、前記パイロット信号検出器は、前記パイロット信号の検出により固定利得増幅器の利得が規定の利得以下であると判定した場合に、報知信号を出力する基地局受信装置。
【請求項15】
パイロット信号発生手段が発生するパイロット信号の周波数には、通信機器で用いられる周波数帯域以外の周波数を用いるとともに、前記パイロット信号の信号周波数は、全て同じ周波数とした請求項14に記載の基地局受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−203491(P2006−203491A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12299(P2005−12299)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】