説明

パウダー茶の製造方法

【課題】金属酵母でもって茶殻の葉緑素を美しい自然の緑色に復元することで、人体の健康を害するとなく綺麗な緑色とし、さらに茶殻を金属酵母で緑色にしながら酵母臭がなく、種々の食品に添加して添加される食品の風味を害することがないパウダー茶を提供する。
【解決手段】茶殻を原料とするパウダー茶の製造方法は、Zn、Cu、Fe、Mg、Alのいずれかの金属を含む金属酵母の金属イオンでもって茶殻を緑色に変色する変色工程と、変色工程で変色してなる茶殻に含まれる酵母を酸化して酵母臭を脱臭する脱臭工程と、茶殻を粉末状に粉砕する粉砕工程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶殻を使用するパウダー茶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、膨大な量の茶殻が発生している。茶殻は、含まれるカテキンによって腐敗しないことから、廃棄に手間とコストがかかる。それは、焼却などの方法で廃棄するからである。茶殻を粉砕してパウダー茶とする技術は開発されている。(特許文献1参照)
この公報には、茶殻を粉砕してパウダー茶とする技術が記載されている。このパウダー茶は、食品添加物等に使用される。パウダー茶は、茶を抽出した後の茶殻を遠心分離器などを用いて脱水し、遠赤外線照射機で遠赤外線を照射して乾燥するか、あるいは日光にさらして乾燥した後、これを粉末化して製作される。このパウダー茶は、遊離アミノ酸やテアニンなどの茶葉の有効成分を多量に含んでいる。
【0003】
ただ、茶殻は、煎液を抽出する工程で茶色に変色することから、これを乾燥し、粉砕して製造されるパウダー茶は、緑茶特有の自然な美しい緑色にはできない。このため、茶殻のパウダー茶を食品添加物に使用して、たとえば、うどん等の麺類に添加し、あるいはコンニャク等の食品に添加して、これを緑茶の美しい自然食には着色できない。この欠点は、茶殻を粉砕してなるパウダー茶に、緑色の色素を添加して解消できる。ただ、色素を添加してなる茶殻の粉砕物は、緑茶の自然な美しい色に着色するのが難しいことに加えて、人体に好ましくない合成物が添加されて人体の健康を害する弊害が発生する。また、色素で変色された茶殻の粉末は、顔料を微粉砕すると色が薄くなるのと同じ原理で、小さく微粉砕するほど色が薄くなる。このため、微粉砕するほど、添加する色素量を多くする必要があり、人体の健康を害する弊害も多くなる。
【0004】
本発明者は、色素を使用することなく、金属酵母でもって植物の葉緑素を緑色に復元させる技術を開発した。(特許文献2参照)
【特許文献1】特開2003−111566号公報
【特許文献2】特開2006−314300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の方法は、金属酵母を水に添加してなる酵母液に植物を浸漬する。酵母液に浸漬された植物は、酵母液に含まれる金属イオンが葉緑素に作用して緑色に復元される。この方法は、食品である酵母を使用して葉緑素自体を緑色に変色することから、色素を添加する弊害、すなわち、人体の健康に害を与える弊害がなく、また葉緑素を自然な緑色とすることから、茶に独特の美しい自然な緑色にできる特徴がある。ただ、この方法で茶殻を緑色にしてパウダー茶を製造すると、酵母臭が一緒に添加される。酵母臭のあるパウダー茶は、これを食品添加物として食品に添加すると、緑茶の美しい色に着色はできるが、一緒に酵母臭も添加されて、食品の風味を変化させる弊害がある。酵母臭は、全ての食品に好ましい香りとはならず、パンのように酵母臭が独特の風味となる食品もあるが、たとえば、うどんやコンニャクでは、必ずしも食品に最適な風味とはならない。
【0006】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、金属酵母でもって茶殻の葉緑素を美しい自然の緑色に復元することで、人体の健康を害するとなく綺麗な緑色とし、さらに茶殻を金属酵母で緑色にしながら酵母臭がなく、種々の食品に添加して添加される食品の風味を害することがない茶殻からなるパウダー茶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の茶殻を原料とするパウダー茶の製造方法は、Zn、Cu、Fe、Mg、Alのいずれかの金属を含む金属酵母の金属イオンでもって茶殻を緑色に変色する変色工程と、変色工程で変色してなる茶殻に含まれる酵母を酸化して酵母臭を脱臭する脱臭工程と、茶殻を粉末状に粉砕する粉砕工程とからなる。
【0008】
本発明の請求項2のパウダー茶の製造方法は、変色工程において、異なる金属を含む複数種の金属酵母の金属イオンで茶殻を緑色に変色する。
【0009】
本発明の請求項3のパウダー茶の製造方法は、脱臭工程において茶殻をオゾン水に浸漬して脱臭する。
【0010】
また、本発明の請求項4のパウダー茶の製造方法は、茶殻を変色工程と脱臭工程で変色、脱臭した後、粉砕工程で乾燥して粉末状に加工する。
【0011】
また、本発明の請求項5のパウダー茶の製造方法は、粉砕工程において、茶殻を真空凍結乾燥して粉末状に粉砕する。
【0012】
さらにまた、本発明の請求項6のパウダー茶の製造方法は、粉砕工程で粉末状に加工してなるパウダー茶をペースト状に加工している。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパウダー茶の製造方法は、酵母で茶本来の美しい自然な緑色に復元することから、人体の健康を害するとなく綺麗な緑色にでき、しかも人体の健康に害のない酵母を使用しながら、酵母臭を除去して、種々の食品に添加されて食品の風味を生かすことができるパウダー茶を製造できる特徴がある。とくに、本発明を利用することで、廃棄していた膨大な茶殻を、自然な緑色のパウダー茶として有効に再利用できることから、茶殻を廃棄することなく、これを種々の食品に添加して、食品を自然な緑色としながら風味を生かしたものにできる特徴が実現される。それは、本発明のパウダー茶の製造方法が、酵母に含まれる金属でもって茶殻に含まれる葉緑素を緑色に変色すると共に、変色するために使用して添加される酵母臭を酸化して脱臭してパウダー茶とするからである。とくに、酵母で変色された茶殻を酸化して酵母臭を脱臭する方法は、脱臭工程で緑色に変色された葉緑素を変色することなく、綺麗で自然な緑色を保持しながら酵母臭のみを脱臭できる特徴がある。それは、変色された茶殻を酸化して脱臭する脱臭工程が、金属イオンの状態で葉緑素に結合された酵母の金属を葉緑素から離脱することなく、酵母臭を脱臭できるからである。
【0014】
本発明の請求項2のパウダー茶の製造方法は、変色工程において、異なる金属を含む複数種の金属酵母の金属イオンで茶殻を緑色に変色するので、茶殻を緑色にする時間を短縮しながら、効率よく緑色に変色できる。とくに、茶殻によって、金属イオンの組み合わせを種々に変更して、緑色に変色させる茶殻の色調を調整できる特徴がある。
【0015】
さらに、本発明の請求項3に記載するパウダー茶の製造方法は、請求項1の構成に加えて、脱臭工程において茶殻をオゾン水に浸漬して脱臭する。この方法は、オゾン水に含まれるオゾンでもって、酵母を酸化して速やかに酵母臭を脱臭できる特徴がある。この方法は、酵母で緑色に変色され茶殻をオゾン水に数分浸漬して、綺麗な緑色に保持しながら酵母臭を脱臭できる。
【0016】
また、本発明の請求項4のパウダー茶の製造方法は、請求項1の構成に加えて、茶殻を変色工程と脱臭工程で変色、脱臭した後、粉砕工程で乾燥して粉末状に加工する。この方法は、茶殻を変色した後、粉砕するので、変色工程と脱臭工程で茶殻を能率よく変色して脱臭できる。
【0017】
また、本発明の請求項5のパウダー茶の製造方法は、請求項1の構成に加えて、粉砕工程においては、茶殻を真空凍結乾燥して粉末状に粉砕する。この方法は、茶殻を能率よく微細な粉末にできる特徴がある。
【0018】
さらにまた、本発明の請求項6のパウダー茶の製造方法は、請求項1の構成に加えて、粉砕工程で粉末状に加工しているパウダー茶をペースト状に加工している。ペースト状のパウダー茶は、飛散することなく種々の食品に添加できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を詳述する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのパウダー茶の製造方法を例示するものであって、本発明はパウダー茶の製造方法を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0020】
本発明のパウダー茶の製造方法は、原料に茶殻を使用することで、廃棄している茶殻を有効に再利用できる状態に加工する。茶殻は、遊離アミノ酸、テアニン、カテキン、繊維質などの有効成分を含んでいる。したがって、茶殻を原料とするパウダー茶は、食品に添加されて食品を自然な美しい緑色としながら、さらに栄養価を高める作用もある。パウダー茶を添加する食品には、うどん、コンニャク、豆腐、餃子、菓子やパン、その他あらゆる食品が使用できる。
【0021】
本発明は、変色工程において、金属酵母を使用して茶殻のボディーカラーを緑色に変色する。変色工程は、茶殻の表面に緑色の着色剤を付着して変色するのではない。ボディーカラーを緑色とするパウダー茶は、変色工程で茶殻を変色した後、粉砕工程で粉砕して製造される。
【0022】
変色工程は、金属酵母の金属イオンでもって、茶殻に含まれる葉緑素を緑色に復元する。変色工程において、茶殻は、金属酵母を含む酵母液に浸漬され、あるいは、酵母液が散布されて酵母液に接触される。茶殻の葉緑素は、酵母液に接触して、酵母液に含まれる金属イオンで緑色に変色される。
【0023】
変色工程に使用される金属酵母は、葉緑素を変色する金属を含有している。酵母に含有されて葉緑素を緑色に変色する金属は、Zn、Cu、Fe、Mg、Se、Al、Mo、Cr、Mn等である。したがって、変色工程に使用される酵母は、これ等の金属を含有する。この種の酵母は、金属を添加している培地で培養、酵素処理して不活性化し、洗浄の後、不溶成分を除去して、乾燥して製作される。たとえば、Znを含有する酵母は、培地に塩化亜鉛を添加して培養され、Cuを含有する酵母は、培地に硫酸銅を添加して培養される。金属は塩化物や硫化物の状態で培地に添加されて、金属を含有する酵母を培養する。
【0024】
変色工程において、茶殻は、酵母を含む酵母液に接触して緑色となる。酵母液は、好ましくは、60〜100℃で、沸騰する温度よりも低い温度に加温される。酵母液は、茶殻を浸漬し、あるいは茶殻に散布して接触される。また、食品に添加されるパウダー茶は、食品の製造過程で添加される水で酵母液となり、この酵母液に茶殻が混合されて接触される。茶殻が加温された酵母液に接触すると、葉緑素は、速やかに緑色に変色される。茶殻に接触する酵母液の酵母濃度を濃くしても、葉緑素を緑色にできる時間は短くなる。したがって、短時間で葉緑素を緑色にするには、加温された酵母濃度の高い溶液に茶殻を接触させる。茶殻の葉緑素をゆっくりと時間をかけて緑色にするときは、加温されない酵母濃度の低い酵母液に接触させる。
【0025】
酵母液の酵母濃度は、酵母の金属含有量と、葉緑素を緑色にする時間と、溶液の温度とを考慮して最適値に調整する。たとえば、60℃以上に加熱して、浸漬する茶殻の葉緑素を10分程度で緑色にする溶液は、金属濃度が5ppm以上となるように酵母の添加量を調整する。茶殻を加熱された酵母液に接触させて、葉緑素を緑色にできる最低の金属濃度は、1ppmである。したがって、酵母液の金属濃度は、茶殻を緑色に変色させる時間と、溶液の加熱温度とを考慮して、たとえば、1ppm〜1000ppm、好ましくは3ppm〜300ppm、さらに好ましくは5〜200ppmの範囲とされる。
【0026】
さらに、酵母液には、他の金属を含有する金属酵母を添加することもできる。この酵母液は、複数種の金属イオンでもって、茶殻をより効果的に緑色にできる。たとえば、この酵母液は、亜鉛を含有する金属酵母に加えて、銅を含有する酵母や、鉄を含有する酵母を添加することができる。このように、複数種の金属イオンを含有する酵母液は、茶殻を緑色にする時間を短くし、あるいは、茶殻によっては色調を濃い緑色とすることもできる。茶殻は、お茶の産地や、新茶、二番茶、三番茶等の違いによっても、変色される色調が異なる。したがって、酵母液は、これらのことも考慮して、添加するや金属イオンの種類や酵母濃度等を調整する。
【0027】
酵母液に接触させて緑色になった茶殻は、その後、調整液に浸漬して色調を調整し、あるいは、短時間で洗浄を完了することもできる。
【0028】
調整液は、クエン酸のように、金属イオンと反応して錯塩を作るものが使用できる。緑色になった茶殻がクエン酸の溶液に浸漬されると、遊離して茶殻表面に付着している金属イオンがクエン酸と反応し、錯塩となって分離できる。このため、クエン酸の溶液に浸漬して、茶殻を短時間で水洗できる。
【0029】
さらに、調整液には、還元糖や還元剤を含ませることもできる。還元糖や還元剤の溶液に、緑色になった茶殻を浸漬すると、顔料や染料で人工的に着色したような不自然な色が調整される。また、処理後における茶殻の変色を防止できる。それは、還元糖や還元剤が、酸化を防止して、変色するのを少なくするからである。さらに、還元糖や還元剤で色調を調整する方法は、酵母液の酵母濃度を高くし、短時間で茶殻を緑色にし、その後に、調整液で色調を調整することにより、自然な発色の茶殻を短時間で処理できる特長がある。
【0030】
還元糖には、ブドウ糖、果糖、ソルビトル等が使用できる。還元剤にはアスコルビン酸、エリソルビン酸等が使用できる。調整液は、還元糖や還元剤の濃度を高くして、色調を晒れた色にできる。調整液の還元糖と還元剤の濃度は、茶殻を理想的な色調にする濃度に調整される。たとえば、還元糖または還元剤の濃度は、100ppm〜5%、好ましくは、200ppm〜1%、さらに好ましくは、300ppm〜3000ppmに調整される。
【0031】
変色工程で変色させた茶殻は、脱臭工程で酵母臭を脱臭する。脱臭工程は、茶殻に含まれる酵母を酸化して脱臭する。酵母は、オゾンや塩素、又は過酸化水素で酸化して脱臭できる。オゾンによる脱臭は、茶殻をオゾン水に浸漬する。オゾン水は、酵母臭を速やかに脱臭する。茶殻を浸漬するオゾン水は、約5ppmないし10ppmのオゾンを含有する。ただし、茶殻を浸漬するオゾン水は、オゾン濃度を、たとえば1ppm以上、好ましくは3ppm以上とする。オゾン濃度の低いオゾン水は、酵母臭を脱臭するために茶殻を浸漬する時間が長くなる。オゾン水への浸漬時間は、オゾン濃度により決定されるが、たとえば、オゾン濃度を5ppmとするオゾン水では、2〜10分、好ましくは約5分の浸漬で酵母臭を脱臭できる。茶殻の浸漬時間を長くして、オゾン水のオゾン濃度を低くできるので、オゾン濃度を1ppmとするオゾン水も使用できる。オゾン水は、オゾン濃度を高くして浸漬時間を短くできる。ただ、オゾン濃度が高すぎるオゾン水は、作業環境を悪くすると共に、酸化力が強すぎて茶殻を変質させるので、オゾン水のオゾン濃度は、たとえば100ppmよりも低く、好ましくは50ppmよりも低く、さらに好ましくは30ppmよりも低くする。ただし、茶殻は、オゾン濃度の高いオゾン水の浸漬時間を短くして、オゾンによる変質を防止できる。
【0032】
脱臭工程は、茶殻を塩素で酸化して酵母臭を脱臭することもできる。塩素で脱臭するには、茶殻を塩素水に浸漬する。塩素水は、次亜塩素酸ソーダを溶解して製作し、あるいは塩化ナトリウムを溶解した塩水を電気分解して製作される。電気分解による方法は、プラス極側から排出される塩水が塩素水となる。茶殻を脱臭する塩素水の塩素濃度は、20ppmとする。茶殻を浸漬する塩素水は、塩素濃度を、たとえば10ppm以上、好ましくは15ppm以上とする。塩素濃度の低い塩素水は、酵母臭を脱臭するために茶殻を浸漬する時間が長くなる。たとえば、塩素濃度を20ppmとする塩素水は、約5分の浸漬で酵母臭を脱臭できる。茶殻の浸漬時間を長くして、塩素水の塩素濃度を低くできるので、塩素濃度を10ppmとする塩素水も使用できる。塩素水は、塩素濃度を高くして浸漬時間を短くできる。ただ、塩素濃度が高すぎる塩素水は、作業環境を悪くすると共に、酸化力が強すぎて茶殻を変質させるので、塩素水の塩素濃度は、たとえば200ppmよりも低く、好ましくは100ppmよりも低く、さらに好ましくは50ppmよりも低くする。ただし、茶殻は、塩素濃度の高い塩素水の浸漬時間を短くして、塩素による変質を防止できる。
【0033】
さらに、脱臭工程は、茶殻を過酸化水素水に浸漬して脱臭することもできる。過酸化水素は、発生基の酸素が酵母を酸化して酵母臭を脱臭する。茶殻を脱臭する過酸化水素水の過酸化水素濃度は0.03重量%とする。茶殻は、この過酸化水素水に20分浸漬されて脱臭される。茶殻を脱臭する過酸化水素水の過酸化水素濃度は、0.01重量%〜1重量%とする。
【0034】
茶殻は、粉砕工程で微細な粉末状に粉砕される。茶殻は、好ましくは、変色工程で変色し、脱臭工程で脱臭した後、粉砕工程で粉末状に加工される。ただし、変色工程で変色した茶殻を粉砕工程で粉末状に加工し、粉末状の茶殻を脱臭工程で脱臭することもできる。粉末状の茶殻は、オゾン水に浸漬することなく、オゾン濃度の高い空気中に噴霧して脱臭することもできる。
【0035】
粉砕工程は、茶殻を真空凍結乾燥して粉砕する。この方法は、茶殻の品質を低下させることなく微細な粉末に粉砕できる。乾燥された茶殻は、石臼ですり潰して微細な粉末に粉砕される。ただし、茶殻は、乾燥することなく石臼ですり潰して粉砕することもできる。乾燥しないで粉砕された茶殻は、その後に乾燥して粉末状のパウダー茶にできる。ただし、本発明のパウダー茶は、必ずしも乾燥された粉末状には特定しない。パウダー茶をペースト状にして、食品に添加することもできるからである。
【実施例1】
【0036】
以下の方法で、退色した茶殻を原料として、パウダー茶を製造する。
[変色工程]
(1)茶殻を水洗する。
(2)酵母液を調製する。
酵母液は、下記のようにして製作する。
1リットルの水に、10重量%の亜鉛を含有する水溶性亜鉛酵母を200mg添加して酵母液とする。この酵母液は20ppmの亜鉛を含有する。この酵母液を90℃に加熱する。
(3)酵母液に、150gの茶殻を浸漬する。
浸漬された茶殻は、約5分経過して変色し始める。10〜15分浸漬した後、酵母液から茶殻を取り出す。
[脱臭工程]
変色された茶殻をオゾン水に浸漬して酵母臭を脱臭する。オゾン水のオゾン濃度は10ppmとする。オゾン水に浸漬する時間は5分とする。この工程で、茶殻に含まれる酵母はオゾンに酸化されて酵母臭が脱臭される。
【0037】
[粉砕工程]
(1)脱臭された茶殻を水洗した後、乾燥する。
茶殻は、好ましくは真空凍結乾燥して乾燥する。ただし、熱風乾燥することもできる。
(2)乾燥した茶殻を、石臼ですり潰して平均粒径を10μm〜100μmとする粉末状に粉砕して、パウダー茶とする。
以上の方法で製造されるパウダー茶は、酵母臭がなくて自然な緑色となる。
【実施例2】
【0038】
以下の方法で、退色した茶殻を原料として、パウダー茶を製造する。
[変色工程]
(1)茶殻を水洗する。
(2)酵母液を調製する。
酵母液は、下記のようにして製作する。
1リットルの水に、5重量%の亜鉛を含有する水溶性亜鉛酵母を1000mg添加して酵母液とする。この酵母液は50ppmの亜鉛を含有する。この酵母液を90℃に加熱する。
(3)酵母液に、150gの茶殻を添加する。
茶殻を酵母液に5〜10分浸漬して、茶殻を緑色に変色させた後、酵母液から茶殻を取り出す。
[脱臭工程]
変色された茶殻をオゾン水に浸漬して酵母臭を脱臭する。オゾン水のオゾン濃度は5ppmとする。
[粉砕工程]
(1)オゾン水に浸漬する茶殻をオゾン水と一緒に石臼でペースト状にすり潰して粉砕する。
(2)乾燥してオゾン水から粉砕された粉末状の茶殻を分離してパウダー茶とする。
この方法で製造されるパウダー茶は、酵母臭がなくて自然な緑色となる。
【実施例3】
【0039】
以下の方法で、退色した茶殻を原料として、パウダー茶を製造する。
[変色工程]
(1)茶殻を水洗する。
(2)酵母液を調製する。
酵母液は、下記のようにして製作する。
1リットルの水に、5重量%の亜鉛を含有する水溶性亜鉛酵母を800mg添加して酵母液とする。この酵母液は40ppmの亜鉛を含有する。この酵母液を90℃に加熱する。
(3)酵母液に、150gの茶殻を混合する。
茶殻を酵母液に5〜10分浸漬して、茶殻を緑色に変色させる。
[粉砕工程]
(1)酵母液に浸漬した茶殻を酵母液と一緒に石臼でペースト状にすり潰して粉砕する。この工程で、茶殻は、平均粒径を10μm〜100μmとする大きさに粉砕される。
[脱臭工程]
スプレードライで、粉砕された茶殻を含む酵母液をノズルからオゾンを含む空気中に霧状に噴霧して脱臭すると共に乾燥する。
以上の工程で、酵母臭のない自然な緑色のパウダー茶が製造される。
【実施例4】
【0040】
変色工程において、5重量%の亜鉛を含有する水溶性亜鉛酵母の使用量を400mgから20mgとする以外、実施例1と同様にして茶殻のパウダー茶を製造する。この酵母液は、1ppmの亜鉛を含有する。この方法で製造されるパウダー茶は、酵母臭がなくて自然の淡い緑色のパウダー茶が得られる。
【実施例5】
【0041】
変色工程において、使用する酵母を、5重量%の亜鉛を含有する水溶性亜鉛酵母から5重量%の亜鉛を含有する亜鉛含有パン酵母に変更する以外、実施例1と同様にして茶殻のパウダー茶を製造する。この酵母液も、20ppmの亜鉛を含有する。この方法で製造されるパウダー茶は、酵母臭がなくて自然な緑色となる。
【実施例6】
【0042】
変色工程において、5重量%の亜鉛を含有する水溶性亜鉛酵母を添加するのに代わって、1重量%の銅を含有する水溶性銅酵母を使用し、この水溶性銅酵母1000mgを1リットルの水に添加して酵母液を調製する以外、実施例1と同様にして、茶殻を原料とする緑色のパウダー茶を製造する。この酵母液は、10ppmの銅を含有する。この方法で製造されるパウダー茶は、酵母臭がなくて自然な緑色となる。
【実施例7】
【0043】
変色工程において、5重量%の亜鉛を含有する水溶性亜鉛酵母を添加するのに代わって、1重量%の銅を含有する水溶性銅酵母を使用し、この水溶性銅酵母500mgを1リットルの水に添加して酵母液を調製する以外、実施例2と同様にして、茶殻を原料とする緑色のパウダー茶を製造する。この酵母液は、5ppmの銅を含有する。この方法で製造されるパウダー茶は、酵母臭がなくて自然な緑色となる。
【実施例8】
【0044】
変色工程において、5重量%の亜鉛を含有する水溶性亜鉛酵母を添加するのに代わって、1重量%の銅を含有する水溶性銅酵母を使用し、この水溶性銅酵母1500mgを1リットルの水に添加して酵母液を調製する以外、実施例3と同様にして、茶殻を原料とする緑色のパウダー茶を製造する。この酵母液は、15ppmの銅を含有する。この方法で製造されるパウダー茶は、酵母臭がなくて自然な緑色となる。
【実施例9】
【0045】
変色工程において、1リットルの水に、5重量%の亜鉛を含有する水溶性亜鉛酵母を400mgと、1重量%の銅を含有する水溶性銅酵母を1000mg添加して酵母液を調製する以外、実施例1と同様としてパウダー茶を製作する。この酵母液は20ppmの亜鉛と10ppmの銅を含有する。このパウダー茶は、酵母臭がなくて、原料とする茶の葉に独特の自然な美しい濃い緑色となる。
【実施例10】
【0046】
変色工程において、1リットルの水に、5重量%の亜鉛を含有する水溶性亜鉛酵母を200mgと、1重量%の銅を含有する水溶性銅酵母を500mg添加して酵母液を調製する以外、実施例2と同様としてパウダー茶を製作する。この酵母液は10ppmの亜鉛と5ppmの銅を含有する。このパウダー茶は、酵母臭がなくて、原料とする茶の葉に独特の自然な美しい緑色となる。
【実施例11】
【0047】
変色工程において、1リットルの水に、5重量%の亜鉛を含有する水溶性亜鉛酵母を100mgと、1重量%の銅を含有する水溶性銅酵母を100mg添加して酵母液を調製する以外、実施例3と同様としてパウダー茶を製作する。この酵母液は5ppmの亜鉛と1ppmの銅を含有する。このパウダー茶は、酵母臭がなくて、原料とする茶の葉に独特の自然な美しい淡い緑色となる。
【実施例12】
【0048】
脱臭工程において、茶殻を過酸化水素水に浸漬する以外は実施例1と同様にして、パウダー茶を製作する。このパウダー茶も、酵母臭がなくて原料の茶の葉に独特の美しい自然な緑色となる。
【実施例13】
【0049】
脱臭工程において、茶殻を過酸化水素水に浸漬する以外は実施例2と同様にして、パウダー茶を製作する。このパウダー茶も、酵母臭がなくて原料の茶の葉に独特の美しい自然な緑色となる。
【0050】
以上の実施例は、酵母液に添加する酵母に、Znを含有する酵母、Cuを含有する酵母を使用したが、本発明は、これ等の酵母に代わって、あるいはこれ等の酵母に加えて、Feを含有する酵母、Mgを含有する酵母、Alを含有する酵母、Seを含有する酵母、Moを含有する酵母、Crを含有する酵母、Mnを含有する酵母のいずれかを使用して、茶殻を原料としてパウダー茶を製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のパウダー茶は、うどん、コンニャク、豆腐、餃子、菓子やパン、その他あらゆる食品に添加されて、これらの食品を自然な緑色としながら、原料の茶殻に含まれる栄養価をプラスして健康に優れた食品に加工できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Zn、Cu、Fe、Mg、Alのいずれかの金属を含む金属酵母の金属イオンでもって茶殻を緑色に変色する変色工程と、変色工程で変色してなる茶殻に含まれる酵母を酸化して酵母臭を脱臭する脱臭工程と、茶殻を粉末状に粉砕する粉砕工程とからなる茶殻を原料とするパウダー茶の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載されるパウダー茶の製造方法であって、
変色工程において、異なる金属を含む複数種の金属酵母の金属イオンでもって、茶殻を緑色に変色することを特徴とするパウダー茶の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載されるパウダー茶の製造方法であって、
脱臭工程において茶殻をオゾン水に浸漬して脱臭することを特徴とするパウダー茶の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載されるパウダー茶の製造方法であって、
茶殻を変色工程と脱臭工程で変色、脱臭した後、粉砕工程で乾燥して粉末状に加工することを特徴とするパウダー茶の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載されるパウダー茶の製造方法であって、
粉砕工程において、茶殻を真空凍結乾燥して粉末状に粉砕することを特徴とするパウダー茶の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載されるパウダー茶の製造方法であって、
粉砕工程で粉末状に加工してなるパウダー茶をペースト状に加工することを特徴とするパウダー茶の製造方法。

【公開番号】特開2008−220226(P2008−220226A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61126(P2007−61126)
【出願日】平成19年3月10日(2007.3.10)
【出願人】(597059247)株式会社佐藤運送 (6)
【Fターム(参考)】