説明

パウチ容器用の充填ノズル

【課題】高粘度の流動性充填物であっても充填速度を向上させてスタンディングパウチに充填することが出来、且つ、充填時乃至充填後のシャボン玉状の気泡の発生や糸引き現象の発生を防止し、充填能力を向上させ、スタンディングパウチ製品の生産性を改善することが出来るパウチ容器の充填ノズルを提供する。
【解決手段】弁棒30は、最下位置において、パイプラインが連通した部位の直下部のノズル筒20内に形成される上流弁部61を閉止する上流弁体部33と、下端に吐出口部位のノズル筒内に形成される下流弁部65を閉止する下流弁体部37を有し、最上位置においては、上流弁部及び下流弁部を開放するように構成され、ノズル筒内に、パイプラインから供給される流動性充填物が流下して吐出口26から断続的に吐出すことができるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性を有する充填物をスタンディングパウチに充填するための充填ノズルに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
シャンプーやコンディショナー等の流動性を有する充填物を封入するためのスタンディングパウチと称すプラスチック製の自立型に形成された袋状の容器は、ボトル型容器に比べてプラスチック使用量が少なく、また空になった容器は畳んだり、丸めたりすることができるため、省資源化やゴミの減量化等の観点からも近年広く使われるようになり、所謂詰め替えパック等の形態としても広く普及している。
【0003】
このスタンディングパウチに対する流動性充填物の充填を行う充填設備は、流動性充填物を収容すると共に、収容した流動性充填物を加圧して送り出すタンクと、このタンクに連通し流動性充填物を導通させるパイプラインと、このパイプライン上に設けられた流量計と、流量計の先端に設けられた充填ノズルと、から構成される。この充填設備によってなされる充填は、スタンディングパウチ一包ずつに対して、該スタンディングパウチの上部の開口部から充填ノズルが挿入され、次いで、スタンディングパウチ内部に流動性充填物が充填されることによってなされる。一定量が充填された後には、充填ノズルがスタンディングパウチの上部の開口部から抜き出され、その後、この開口部を熱溶着することによって該開口部が閉止され、スタンディングパウチが密閉されて完成に至る。尚、従来の充填設備の一例は、特許文献1に開示されている。
【0004】
ところが、一定量の充填を終えた充填ノズルの先端には、屡々充填ノズルの先端に残存した流動性充填物によるシャボン玉状の気泡が発生したり、充填ノズル先端から流動性充填物が糸状に伸びてしまう所謂糸引き現象が生じ、この気泡や糸がスタンディングパウチの開口部の内側の一部に付着してしまい、その後の開口部の熱溶着の際に、所謂擬似接着がなされ、シール不良になってしまう可能性があった。この擬似接着がなされてしまったスタンディングパウチにおいては、スタンディングパウチ上部の開口部を熱溶着した際に、流動性充填物が付着した部分に、内外に連通した液路が出来てしまい、スタンディングパウチに外部から圧力が加えられた際に、この液路から流動性充填物が漏れ出したり、飛び出したりする所謂パンク現象が生じてしまう畏れがある。
【0005】
従来、シャンプーやコンディショナー等の流動性充填物を充填したスタンディングパウチ製品における擬似接着によるシール不良は、十万本に一本程度の頻度で発生するとも言われている。ところが、近年、シャンプーやコンディショナーに対するユーザーの嗜好は、その流動性充填物の粘性が高くなる方向へ変化し、これに伴い、従来の充填設備によって生産されている高粘性の流動性充填物が充填されてなる昨今のスタンディングパウチ製品においては、シャボン玉状の気泡の発生率や糸引き現象の発生率が高まってしまい、従来の数十倍即ち一万本に三、四本の頻度で擬似接着によるシール不良が発生すると言われる事態に至った。
【0006】
また、近年の流動性充填物の高粘度化は、シール不良による不良品率を高めることのみならず、粘度が高まったことによる流動性の低下によって、スタンディングパウチ一包当たりに要する充填時間が延び、充填効率が著しく低下するという問題を呈している。つまり、流動性充填物の高粘度化によって、スタンディングパウチ製品においては、近年、シール不良による不良品率の増大や生産効率の低下によってその生産性が著しく低下する傾向が現れている。
【0007】
ところで、スタンディングパウチに流動性充填物を充填する従来の充填設備における充填ノズルは、円柱状のノズルの内部に、先端に該ノズル先端の開口を開閉し得る弁部を有する弁棒が該ノズルの同軸上において上下動可能に配設され、該ノズル上方に横穴状に連通されたパイプラインから供給される流動性充填物をノズル先端から断続的に吐出することができるように構成されている。また、弁棒は、その上部に弁棒を上下動させつつ、スタンディングパウチを膨らませるためのエア供給を行う作動機構に連結される。このように構成された従来の充填ノズルが、特許文献2及び特許文献3に開示されている。
【特許文献1】特開2000−190942号公報
【特許文献2】特開平9−118314号公報
【特許文献3】特開平9−193914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、高粘度の流動性充填物の充填時における従来の問題を解決すべく、充填設備や充填方法について様々な研究を行った。先ず、本発明者は、従来の充填ノズルに比べてノズル径を色々に増大させた各種充填ノズルを用意し、それぞれの充填能力の各種測定を行った。その結果、ノズル経を増大させた充填ノズルでは、充填速度の向上は見られたものの、パンク現象における改善は見られないという結果を得た。そこで、流動性充填物の液温を様々な温度に上昇させて充填能力の各種測定検証を行った。その結果、流動性充填物の粘性が低下し、充填速度が改善されたが、パンク現象は改善されないということが判明した。
【0009】
そこで、従来の充填ノズルにおける弁の開閉機構が、ノズル先端部付近に弁部を有する所謂外弁シャットオフ方式であったものを、弁部の先端にノズルを延長して、弁部がノズル内部の中間部位に位置するように構成した内弁シャットオフ方式の弁開閉機構に変更して、充填能力の各種測定検証を行った。しかしながら、これによって充填速度は向上したものの、充填終了後には延長したノズルの先端において糸引き現象が生じ、やはりパンク現象は改善されなかった。
【0010】
本発明者による以上のような研究の結果によって、ノズル径を大きくすると充填速度を高速化することができるが、大き過ぎるとノズルがスタンディングパウチの開口部に接触してしまうことによりパンクの原因となることや、流動性充填物の液温を上昇させると粘度が低下して流動性が良好になって充填速度を向上させることが出来るもののシャボン玉状の気泡発生や糸引き現象を抑制することはできないこと、或いは、充填ノズルのノズル内部において弁部で流動性充填物の液供給を停止させてもやはり糸引き現象は防止出来ず、結果としてパンク現象を改善することができないということが明らかになった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、本発明者の更なる鋭意研究の結果得られたものであり、高粘度の流動性充填物であっても充填速度を向上させてスタンディングパウチに充填することが出来、且つ、充填時乃至充填後のシャボン玉状の気泡の発生や糸引き現象の発生を防止し、充填能力を向上させ、スタンディングパウチ製品の生産性を飛躍的に改善することが出来るスタンディングパウチの充填ノズルを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明が採った手段は、パウチ容器に流動性充填物を充填するための充填ノズルであって、充填ノズルは、下端に吐出口を有し上端に上下動手段が配設され側面に流動性充填物が供給されるパイプラインが連通した略鉛直方向に長い筒状をなし内部に流動性充填物が流下する流路を有するノズル筒と、上端側が上下動手段に連結されノズル筒の同軸上において上下動可能にノズル筒に内装される略鉛直方向に長い弁棒と、パイプラインが連通した部位の直上部に配設されノズル筒と弁棒との間をシールするシール体と、を備え、弁棒は、最下位置において、パイプラインが連通した部位の直下部のノズル筒内に形成される上流弁部を閉止する上流弁体部と、下端に吐出口部位のノズル筒内に形成される下流弁部を閉止する下流弁体部を有し、最上位置においては、上流弁部及び下流弁部を開放するように構成され、ノズル筒内に、パイプラインから供給される流動性充填物が流下して吐出口から断続的に吐出することができるように構成されることを特徴とする。
【0013】
上流弁部は、ノズル筒内が、一定の高さ範囲において一定の内径に狭まってシリンダ状に形成され、上流弁体部は、一定以上の高さ範囲において一定の外径に広がってピストン状に形成され、下動過程において、シリンダ状に形成された上流弁部内をピストン状に摺動して、摺動開始点から最下位置までの間中、上流弁部を閉止するように構成されることが好ましい。
【0014】
弁棒の最下位置においての上流弁部中における上流弁体部の占有容積が、上流弁部に対する上流弁体部の摺動開始位置における下流弁体部の先端位置から下流弁体部が下流弁部を閉止するまでの下流弁体部付近における下流弁体部先端による移動容積よりも大容量に設定されることが好ましい。
【0015】
吐出口の口径が、上流弁部の内径よりも小さく設定されることが好ましい。
【0016】
弁棒の先端は、鉛直上方に向かって窪んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、充填ノズルを二段階以上の内弁機構で構成し、上流側に位置する上流弁部分における上流弁体部の占有容積を、吐出口部位に位置する下流弁部分における下流弁体部の占有する容積よりも小さく設定すると共に、上流弁部の内径を吐出口の口径よりも大きく設定したことにより、充填ノズル内の上流を流下する流動性充填物の流速よりも、下流特に、吐出口付近を流下する流動性充填物の流速を高速化し、吐出口から吐出される流動性充填物の運動速度を高速化したことによって、高粘度の流動性充填物であっても充填速度を向上させてスタンディングパウチに充填することが可能となり、充填後の充填ノズルの吐出口付近における流動性充填物の付着切れ、即ち、液切れをよくし、充填時乃至充填後の充填ノズル先端付近におけるシャボン玉状の気泡の発生や糸引き現象の発生を防止し、充填能力を向上させ、スタンディングパウチ製品の生産性を飛躍的に改善することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態を、以下に添付図面(図1乃至図3)を参照しながら詳細に説明する。本実施態様の充填ノズル(10)は、スタンディングパウチ(図示省略)に流動性充填物(図示省略)を充填するためのものであって、流動性充填物を収容すると共に、収容した流動性充填物を加圧して送り出すタンク(図示省略)と、このタンクに連通し流動性充填物を導通させるパイプライン(図示省略)と、このパイプライン上に設けられた流量計(図示省略)と、を備えた充填設備における流量計の先端に配設される充填設備の主たる構成要素である。
【0019】
充填ノズル(10)は、図1〜3に示すように、略円筒状のノズル筒(20)と、このノズル筒(20)に上下動可能に内装される弁棒(30)と、ノズル筒(20)内の適宜の部位においてノズル筒(20)と弁棒(30)との間をシールするシール体(40)とを備える。
【0020】
ノズル筒(20)は、それぞれ略円筒状に形成された上筒部材(21)と中筒部材(22)と下筒部材(23)とを順次高さ方向に連結し、全体として略鉛直方向に長い一連の略円筒状に構成され、内部に流動性充填物が流下する一連の流路(24)を有する。ただし、ここで、ノズル筒(20)は三つの筒状の部材(21)(22)(23)を結合して構成されるが、必ずしも三つの筒状の部材(21)(22)(23)によって構成しなければならないというものではなく、例えば、二つの半筒状の部材を互いに対向させて結合させることによって略円筒状のノズル筒を構成してもよい。
【0021】
ノズル筒(20)の上端には、上下動手段(70)を固設するためのフランジ状に形成される固設部(25)を有する。ノズル筒(20)の先端即ち下端には、ノズル筒(20)の筒方向に開口した吐出口(26)を有する。ノズル筒(20)の上端と下端の適宜の中間部位、図においては中筒部材(22)の高さ方向における中央位置には、パイプラインからノズル筒(20)内に流動性充填物を導入するための、ノズル筒(20)の外面から横穴状に穿設された導入口(50)を有する。この導入口(50)には、パイプラインに連結するための連結管(51)がノズル筒(20)に対して垂直方向外向きに延設される。この連結管(51)の先端には、フランジ(52)が形成され、パイプラインの先端に形成されたフランジを当接させて固着することが出来ように構成される。
【0022】
ノズル筒(20)内部の導入口(50)の直上部位には、略円筒状をなし、外周面がノズル筒(20)の内周面に当接し、内周面が弁棒(30)の外周面に当接するシール体(40)が、移動しないように定点配設される。ノズル筒(20)の高さ方向における導入口(50)が形成された部位のノズル筒(20)内部には、上流室(60)が形成される。導入口(50)の直下部位には、ノズル筒(20)の内径が狭まった上流弁部(61)が形成される。この上流弁部(61)の直下部には、下流に向かって広がった中流室(62)が形成される。この中流室(62)の下端は、ノズル筒(20)の内径が狭まった中流弁部(63)が形成される。この中流弁部(63)の直下部には、下流方向に向かって広がった下流室(64)が形成される。下流室(64)の下端には、ノズル筒(20)の内径が狭まった下流弁部(65)が形成されると共に、ノズル筒(20)の筒方向に向かって開口した吐出口(26)が形成される。
【0023】
上流室(60)は、その内径が中流室(62)の内径とほぼ同等に設定され、高さが中流室(62)の四分の一程度に設定される。下流室(64)は、その内径が中流室(62)の内径のおよそ半分程度に設定され、高さが上流室(60)の高さとほぼ同等に設定される。
【0024】
上流弁部(61)は、ノズル筒(20)の内周面から半径方向中心に向かって台形の土手状に、周回状にわたって形成され、ノズル筒(20)の内径を一定の高さ範囲で一定に狭めてシリンダ状に構成されるものである。中流弁部(63)は、中流室(62)の下端部付近におけるノズル筒(20)の外径、内径を共に狭めることによって形成される。中流弁部(63)の内径は、上流弁部(61)の内径よりも若干狭めに設定される。下流弁部(65)は、下流室(64)の下端部付近におけるノズル筒(20)の外径、内径が共に狭められることによって形成される。下流弁部(65)の内径は、中流弁部(63)の内径よりも若干狭めに設定される。そして、吐出口(26)の口径は、上流弁部(61)の内径よりも若干狭めに設定される。
【0025】
弁棒(30)は、ノズル筒(20)の長さよりも幾分短めに設定された長さを有し、長手方向の適部に外径の異なる部分を有して適当な起伏を有する棒状の部材である。弁棒(30)は、上端から上下動手段(70)の上下動部(71)の下端に設けられる結合手段(72)に結合される結合部(31)と、この結合部(31)の直下に下方に向かって延設される上軸部(32)と、この上軸部(32)の下端に形成される上流弁体部(33)と、上流弁体部(33)の下端から下方に向かって延設される中軸部(34)と、この中軸部(34)の下端に形成される中流弁体部(35)と、中流弁体部(35)の下端から延設される下軸部(36)と、この下軸部(36)の下端に形成される下流弁体部(37)と、下端に形成される窪部(38)を有する。
【0026】
上軸部(32)は、中軸部(34)よりも太く設定される一定の外径を有する。中軸部(34)は下軸部(36)よりも太く設定される。上流弁体部(33)の最細部は、中軸部(34)よりも細く、中流弁体部(35)の最細部よりも太く設定される。
【0027】
弁棒(30)は、図1に示すように、ノズル筒(20)内における最上位置において、上流弁体部(33)がノズル筒(20)の上流弁部(61)を開放し、中流弁体部(35)がノズル筒(20)の中流弁部(63)を開放し、下流弁体部(37)がノズル筒(20)の下流弁部(65)を開放するように構成される。また、弁棒(30)は、上流弁体部(33)が上流弁部(61)内をピストン状に摺動して閉止するが、図2に示すように、上流弁体部(33)が上流弁部(61)を摺動して閉止する開始位置にあるとき、中流弁体部(35)は中流弁部(63)を開放している状態で、且つ、下流弁体部(37)は下流弁部(65)を開放している状態となるように構成される。そして、弁棒(30)は、図3に示すように、ノズル筒(20)内における最下位置において、上流弁体部(33)がノズル筒(20)の上流弁部(61)を閉止し、中流弁体部(35)がノズル筒(20)の中流弁部(63)を閉止し、下流弁体部(37)がノズル筒(20)の下流弁部(65)を閉止するように構成される。
【0028】
また、本実施態様の充填ノズル(10)は、図3に示す、弁棒(30)のノズル筒(20)内における最下位置においての、上流弁部(61)中における上流弁体部(33)の占有容積Vが、図2に示す、上流弁部(61)に対する上流弁体部(33)の摺動開始位置における、下流弁体部(37)の先端位置から下流弁体部(37)が下流弁部(65)を閉止するまでの下流弁体部(37)付近における下流弁体部(37)先端による移動容積vよりも大容量に設定される。
【0029】
尚、ノズル筒(20)の上端の固設部(25)に配設される上下動手段(70)は、所定のタイミングにおいて所定の速度で上下動部(71)を上下動させることが出来るように構成されたものであればよく、これ以外特に限定されない。
【0030】
本実施態様の充填ノズル(10)は、以上説明のように構成されるので、パイプラインから供給された流動性充填物が連結管(51)を介してノズル筒(20)内の流路(24)に導入され、所定のタイミングで上下動手段(70)が上下作動する際、上下動手段(70)の上下動部(71)に連結された弁棒(30)が、最上位置から降下するとき、上軸部(32)の下降に伴って上流室(60)の容積が狭められ、上流室(60)に収容されていた流動性充填物が中流室(62)に送り出される。
【0031】
弁棒(30)が、図1に示す位置から図2に示す位置まで下降すると、上流弁体部(33)が上流弁部(61)を閉止する開始位置となって、上流室(60)と中流室(62)とが隔絶される。この状態から弁棒(30)が更に下降すると、上流弁体部(33)が上流弁部(61)に摺動してピストン状に下降するために、中流室(62)に送られた流動性充填物は下流室(64)へ送り出され、下流室(64)に送られた流動性充填物は吐出口(26)から外部へと分配される。
【0032】
この際、上流弁部(61)周辺や中流室(62)内を流下する流動性充填物は、それらの辺りの流路(24)の容積が、下流室(64)内や下流弁部(65)周辺における流路(24)の容積よりも比較的大きいので流速が遅いが、逆に下流室(64)内や下流弁部(65)周辺を流下する流動性充填物の流速は比較的早くなる。従って、吐出口(26)から外部に分配される流動性充填物の吐出速度は、従来の充填ノズルに比べて高速化されることになる。
【0033】
弁棒(30)が、図2に示す位置から図3に示す位置まで下降すると、中流弁体部(35)が中流弁部(63)を閉止すると共に、下流弁体部(37)が下流弁部(65)を閉止するので、ノズル筒(20)内の流路(24)における流動性充填物の下流に向かう流れが止まり、吐出口(26)からの流動性充填物の吐出も止まる。このとき、流動性充填物は、高速で吐出されていたものが勢いよく制止されるので、液切れよく吐出停止される。更に、弁棒(30)の下端には、上方に向かって湾曲して窪んだ窪部(38)が形成されているので、弁棒(30)先端中央付近に残留している流動性充填物が、弁棒(30)先端周縁と吐出口(26)とのより広い接触領域に広がるために、滴下し難くなって糸引き現象が防止される。
【0034】
弁棒(30)が上昇する際には、パイプラインから流動性充填物が再びノズル筒(20)内に供給される。こうして、本実施態様の充填ノズル(10)は、弁棒(30)の上下動のサイクルに連動して、パイプラインから供給される流動性充填物を下端の吐出口(26)から断続的に吐出させてスタンディングパウチ内に高速で且つシール不良を防止しながら流動性充填物を充填することが出来るようになっている。
【0035】
以上説明したように、本発明のパウチ容器用の充填ノズル(10)は、二段階以上の内弁機構を設け、上流側に位置する上流弁部分における上流弁体部(33)の占有容積を、吐出口(26)部位に位置する下流弁部分における下流弁体部(37)の占有する容積よりも小さく設定すると共に、上流弁部(61)の内径を吐出口(26)の口径よりも大きく設定したことにより、充填ノズル(10)内の上流を流下する流動性充填物の流速よりも、下流特に、吐出口(26)付近を流下する流動性充填物の流速を高速化し、吐出口(26)から吐出される流動性充填物の運動速度を高速化するように構成したものであって、その主旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施態様の充填ノズルの構成を示す図であり、ノズル筒内における弁棒の位置が最上部にある状態を示す断面図である。
【図2】同ノズル筒内における弁棒の位置が中間部にある状態を示す断面図である。
【図3】同ノズル筒内における弁棒の位置が最下部にある状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 充填ノズル
20 ノズル筒
21 上筒部材
22 中筒部材
23 下筒部材
24 流路
25 固設部
26 吐出口
30 弁棒
31 結合部
32 上軸部
33 上流弁体部
34 中軸部
35 中流弁体部
36 下軸部
37 下流弁体部
38 窪部
40 シール体
50 導入口
51 連結管
52 フランジ
60 上流室
61 上流弁部
62 中流室
63 中流弁部
64 下流室
65 下流弁部
70 上下動手段
71 上下動部
72 結合手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウチ容器に流動性充填物を充填するための充填ノズルであって、上記充填ノズルは、下端に吐出口を有し上端に上下動手段が配設され側面に流動性充填物が供給されるパイプラインが連通した略鉛直方向に長い筒状をなし内部に上記流動性充填物が流下する流路を有するノズル筒と、上端側が上記上下動手段に連結され上記ノズル筒の同軸上において上下動可能に上記ノズル筒に内装される略鉛直方向に長い弁棒と、上記パイプラインが連通した部位の直上部に配設され上記ノズル筒と上記弁棒との間をシールするシール体と、を備え、上記弁棒は、最下位置において、上記パイプラインが連通した部位の直下部の上記ノズル筒内に形成される上流弁部を閉止する上流弁体部と、下端に上記吐出口部位の該ノズル筒内に形成される下流弁部を閉止する下流弁体部を有し、最上位置においては、上記上流弁部及び上記下流弁部を開放するように構成され、上記ノズル筒内に、上記パイプラインから供給される流動性充填物が流下して上記吐出口から断続的に吐出することができるように構成されることを特徴とするパウチ容器用の充填ノズル。
【請求項2】
前記上流弁部は、前記ノズル筒内が、一定の高さ範囲において一定の内径に狭まってシリンダ状に形成され、前記上流弁体部は、一定以上の高さ範囲において一定の外径に広がってピストン状に形成され、下動過程において、シリンダ状に形成された前記上流弁部内をピストン状に摺動して、摺動開始点から最下位置までの間中、前記上流弁部を閉止するように構成されることを特徴とする請求項1記載のパウチ容器用の充填ノズル。
【請求項3】
前記弁棒の最下位置においての前記上流弁部中における前記上流弁体部の占有容積が、前記上流弁部に対する前記上流弁体部の摺動開始位置における前記下流弁体部の先端位置から該下流弁体部が前記下流弁部を閉止するまでの該下流弁体部付近における該下流弁体部先端による移動容積よりも大容量に設定されることを特徴とする請求項2記載のパウチ容器用の充填ノズル。
【請求項4】
吐出口の口径が、上流弁部の内径よりも小さく設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のパウチ容器用の充填ノズル。
【請求項5】
弁棒の先端は、鉛直上方に向かって窪んでいることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のパウチ容器用の充填ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−280246(P2009−280246A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134770(P2008−134770)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】