説明

パケットデータネットワーク通信装置及び方法

本発明は、パケットデータネットワーク内の通信のための移動無線通信装置であって、ネットワークアタッチメント手順の一部として、前記ネットワークに個別ベアラセットアップシグナリングを送信するように構成され、該装置は、前記個別ベアラセットアップシグナリングを格納するように、かつアタッチ完了シグナリングの成功に応じて該個別ベアラセットアップシグナリングを送信又は再送信するようにさらに構成される、移動無線通信装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケットデータネットワーク通信装置、及びその関連する動作方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、ネットワークアタッチ手順中に展開されるシグナリングに関する、パケットデータネットワーク通信装置及び関連する方法に関する。
【0003】
本出願は、2009年4月7日に出願された英国特許出願第0906014.6号からの優先権の利益を主張し、該特許出願の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0004】
発展型3GPPネットワーク及びシステムアーキテクチャの標準規格化が進行中である。本標準規格化において、ごく最近では、ロングタームエボリューション(LTE)システムアーキテクチャに関わるいわゆる発展型パケットシステム(EPS)に焦点が当てられている。
【0005】
一般に、そのようなパケットデータネットワークは、複数のEPSベアラを用いるように構成される。これら複数のEPSベアラは、それぞれ無線ベアラ及びモビリティトンネルを備える。各EPSベアラは、例えばVoIPのようにそれぞれ異なるIPフローに関する、複数のサービス品質(QoS)プロファイルのうちの1つに関連付けられる。
【0006】
そのようなアーキテクチャ内では、ユーザー機器(UE)がEPSネットワークのアタッチ手順を要求することによって接続を開始する傾向にある。その次に、ネットワークは、そのネットワークの関連デフォルト接続と共にいわゆるアタッチ受理応答で応答するアタッチ手順を通じて、UEの登録を可能にする。
【0007】
一般に、そのようなデフォルト接続は、ネットワークアタッチメント手順における遅延を防ぎ、かつ該ネットワークアタッチメント手順をさらに簡略化する試みの中で提供される。一方、オプションとしては個別ベアラリソースもセットアップすることができる。一般に、個別ベアラリソースはEPSデフォルトベアラコンテキストに関連付けられる。
【0008】
次に、UEは、アタッチ完了メッセージで応答することによってアタッチ手順を完了し、個別EPSベアラコンテキストアクティベーション応答で応答することによって個別ベアラリソースセットアップ手順を完了することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、様々な理由のために、たとえば、UEがアタッチ受理メッセージの受信に続く任意の時点からLTE内ハンドオーバーに遭遇する場合、UE内の下位レイヤーがアタッチ完了メッセージの送信に失敗する状況が規則的に発生する。このとき、アタッチ完了済メッセージは、UE内の下位レイヤーによって送信されず、このことは潜在的に問題があると確認されている。
【0010】
このような問題を克服するか、又は少なくとも軽減するための機構が提案されており、現在既知の提案の1つの例は、第2のアタッチ手順の実施を開始することである。この第2のアタッチ手順は通例、オプションのセキュリティアクティベーション及びESM情報要求手順も意味する。
【0011】
このとき、コアネットワークエンティティが変わっていない場合であっても、UE内の非アクセス層(NAS)レイヤー及びアクセス層(AS)レイヤーの双方において、ネットワーク実施態様に依拠して、デフォルトベアラが再作成される可能性がある。
【0012】
代替の既知のオプションは、完全な再アタッチ手順を回避することを試みて、アタッチ完了シグナリングを再送信することである。しかしながら、そのような既知の構成では、個別ベアラリソースセットアップは、通例約8秒の関連ガードタイマー間隔の満了後に初めてネットワークによって再始動され、これは当然ながら、全ネットワークシステム内にレイテンシを引き起こす限り、制限的であると分かることができる。
【0013】
そのようなレイテンシに関して、UEはそのような個別ベアラのセットアップの要求を継続する可能性が高く、これによって、不都合なことには、システム内のシグナリングも増大するが、このシグナリングは実際には余分である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、既知のそのような装置及び方法を上回る利点を有するパケットデータネットワーク通信装置及び動作方法を提供しようとするものである。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、パケットデータネットワーク内の通信のための移動無線通信装置であって、ネットワークアタッチ手順の一部として、ネットワークに個別ベアラセットアップシグナリングを送信するように構成され、該装置は、前記個別ベアラセットアップシグナリングを格納するように、かつアタッチ完了シグナリングの成功に応じて該個別ベアラセットアップシグナリングをネットワーク上で再送信するようにさらに構成される、移動無線通信装置が提供される。
【0016】
アタッチ完了メッセージの送信成功に基づいて装置により送信される個別ベアラセットアップシグナリングを用いて、本発明が、アタッチ要求の不必要な再送信、並びに、任意の関連付けられたNASセキュリティアクティベーション及びESM情報の要求/応答を回避できると示す場合、本発明は特に利点を示すことができる。
【0017】
さらなる利点として、上位レイヤー装置メッセージ再送信の現在の処理との動作の一貫性を維持することが容易に可能であることを本発明は示す。
【0018】
装置は、アタッチ完了メッセージの送信失敗に応じて個別ベアラセットアップシグナリングを再送信するように構成されることが好ましい。
【0019】
移動無線通信装置内の無線レイヤーがそのような送信失敗を示すと都合がよい。
【0020】
代替的な特徴として、本装置はアタッチ完了メッセージの送信成功の指示に応じて個別ベアラセットアップシグナリングを再送信するように構成することができる。
【0021】
これもまた理解されるように、移動無線通信装置内のNASが、後続の送信のために個別ベアラセットアップシグナリングを保持する役割を果たすことができるようなNASメッセージを、個別ベアラセットアップシグナリングに含むと都合がよい。
【0022】
本発明の別の態様によれば、パケットデータネットワークにおける移動無線通信装置のためのネットワークアタッチメント方法であって、送信された個別ベアラセットアップ信号を格納するステップと、アタッチ完了シグナリングの成功に応じてネットワーク内で個別ベアラセットアップ信号を再送信するステップとを含む、方法が提供される。
【0023】
上述した移動無線通信装置のさらなる可能な詳細に関してと同様に、本方法は、アタッチ完了メッセージの送信失敗の識別に応じて、個別ベアラセットアップシグナリングを再送信するように構成されることが可能であり、アタッチ完了メッセージの送信失敗を移動無線通信装置内の無線ベアラによって提示することができる。
【0024】
本方法は、アタッチ完了メッセージの送信成功の指示に応じて個別ベアラのセットアップシグナリングを再送信するステップ、及び当然ながら、本装置のNASにより提供することができる送信された個別ベアラセットアップ信号を格納するステップも含むことができる。
【発明の効果】
【0025】
従って、理解されるように、本発明を適用することによって、例えばLTE内ハンドオーバーに起因して、UE内の下位レイヤーによるEPSアタッチ応答送信が失敗したとき、UEは、例えば第2のアタッチ手順のような登録更新手順を開始する必要がなく、また、アタッチ完了手順を再送信する必要もないことが都合がよい。代わりに、EPSアタッチ応答再送信後に、任意の関連するNAS個別ベアラ応答信号を再送信することを提案する。
【0026】
このため、本発明は有利には、EPSアタッチ手順の一部としての高速ベアラセットアップ及び後続のNASメッセージ送信失敗に対する比較的高度な回復力を提供することができる。
【0027】
本発明を、添付の図面を参照して、例としてのみ以下でさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】シグナリングが送信失敗/エラーを一切受けないパケットデータネットワーク内の要素を概略的に表すシグナリング図である。
【図2】同じネットワーク要素に関する同様のシグナリング図であるが、本発明の実施例がシグナリングメッセージの失敗から生じる問題を克服するように有効にされたシナリオを示す、シグナリング図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
まず図1を参照すると、パケットデータネットワーク内のエンドユーザーの装置のUENAS10及びUEAS12、並びにそれと共にe−NodeB14、及びネットワークの移動管理エンティティ(MME)16も示されている。
【0030】
標準として、UE10、12はパケットデータネットワークへの接続を求めて、アタッチ要求信号18をMMEに送信し、MME16は、ネットワークへのUE10、12の登録を可能にし、アタッチ受理信号20を返す。アタッチ受理信号20は、NAS EPSデフォルトベアラコンテキストセットアップ要求の詳細、及びオプションでNAS EPS個別ベアラコンテキストセットアップ要求も含む。
【0031】
次に、UE10、12は、アタッチ完了信号22を送信することによってアタッチ手順を完了するように動作する。アタッチ完了信号22は、当然ながら、UEの下位レイヤー10内で生じ、NAS EPSデフォルトベアラコンテキストセットアップ応答を含む。
【0032】
デフォルトベアラコンテキストセットアップ応答は、遅延を制限し、かつ通例、アタッチ手順の完了を簡略化するのに有用である一方、その後、UE10、12からのNAS EPS個別ベアラコンテキストセットアップ要求24が続き、通常動作中、MME16がEPSデフォルトベアラコンテキスト内の関連付けられたEPS個別ベアラコンテキストに関連する任意のメッセージを容易に処理することができるようにする。
【0033】
理解されるように、図1のシグナリングは、特定のシグナリング遅延/失敗が生じないシナリオを表す。
【0034】
しかしながら、特に本発明の文脈において、UEの下位レイヤーからアタッチ完了メッセージを送信するのを妨げるような失敗が生じ得ることが分かっている。このような失敗は、例えばアタッチ受理メッセージの受信に続くある時点から、LTE内ハンドオーバーに遭遇する等を通じて生じる。
【0035】
本出願の図2を参照して、シグナリングのそのような中断が示され、さらに検討される。
【0036】
したがって、ここで図2を参照すると、図1に示すのと同じネットワーク要素10、12、14、及び16が示され、ここでもまた、UE10、12のためのアタッチ手順がUE10、12からMME16へのアタッチ要求シグナリング18により開始され、MME16は上記で検討したアタッチ受理シグナリング20で応答する。しかし、図2のシナリオでは、UE内の下位レイヤーは、セル内ハンドオーバー手順、E−NodeB内ハンドオーバー手順、又はさらにE−NodeB間ハンドオーバー手順を含む可能性があるLTE内ハンドオーバーを行うことを試みる。
【0037】
その結果の中断26を考慮すると、図1のアタッチ完了シグナリング22は送信に成功せず、そのような失敗の指示28がUE10、12の下位レベル10内で生じる。LTE内ハンドオーバー26により生じる失敗を通じて、MME16は、アタッチ完了メッセージ内で見つけられるNASEPSデフォルトベアラコンテキストセットアップ応答を受信しておらず、したがってEPSデフォルトベアラコンテキストに関連付けられたEPS個別ベアラコンテキストに関連するメッセージを一切処理することができないことになることを理解するべきである。
【0038】
このとき、本発明の有利なシグナリング30がUEの下位レベル10内で生成され、該シグナリング30は、以前に試行されて同時に格納されたNASEPS個別ベアラコンテキストセットアップ要求の再送信を含む。理解されるように、このメッセージは、必要に応じたそのような再送信への準備ができた状態で、UE NAS10内に事前に格納されている。
【0039】
ここでMME16は、そのような再送信メッセージ38の受信を通じて、NASEPSデフォルトベアラコンテキストセットアップ応答を含む先行するアタッチ完了メッセージ32により、MME内に以前にセットアップされたEPSデフォルトベアラコンテキストに関連付けられたEPS個別ベアラコンテキストに関連する任意のメッセージを処理することができる。
【0040】
このため、本発明は、現在の技術と比較して、以前に単純性の理由から潜在的に提案されていたアタッチ手順の再始動を用いる必要がない場合に、有利であると分かることができる。さらに、第2のアタッチ手順が通例、MMEが実際には変わっていないのにESM情報要求手順及びデフォルトベアラの再作成を要求する場合に、準最適であると考えることができる該第2のアタッチ手順を用いる必要がない。
【0041】
すなわち、本発明は、アタッチ要求、セキュリティモード命令/完了、及びESM情報要求/応答(ESM情報(セキュリティ保護された)転送フラグがセットされている場合)、アタッチ受理、並びにアクティベート個別EPSベアラコンテキスト要求(複数可)の不要な再送信を回避する。当然ながら、ダウンリンクメッセージの再送信が有意義である唯一のケースはコアネットワークエンティティ変更の場合であるが、これは稀なケースである。(手順を完了することを可能にする最後のメッセージのような)他のNASメッセージ再送信に関する現在の挙動との一貫性を維持するため、TAIが変更されていないか、又は新たなTAIがまだTAIリスト内にある場合、LTE内ハンドオーバーにおいて、TAU完了、GUTI再配置完了、認証応答/失敗、セキュリティモード完了/拒否、及び切り離し受理が現在は再送信される。
【0042】
理解されるように、本発明は、EPSアタッチの複数ベアラセットアップの分野において、かつシステムアーキテクチャエボリューション(SAE)のLTE内ハンドオーバーが生じる可能性が高いシナリオに沿った特定の使用を提供する。
【0043】
特に、UE内のNASが、ネットワークに個別ベアラセットアップ応答を送信したことを記憶することが理解されよう。無線レイヤーがEPSアタッチ完了メッセージの送信に失敗したことを示す場合において、登録手順を実行する必要がないとき、格納されている個別ベアラセットアップ応答が再送信される。代替的に、UEは個別ベアラセットアップ応答が存在する場合、その送信前に、アタッチ完了メッセージの送信成功の指示を待つことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケットデータネットワーク内の通信のための移動無線通信装置であって、ネットワークアタッチメント手順の一部として、前記ネットワークに個別ベアラセットアップシグナリングを送信するように構成され、該装置は、前記個別ベアラセットアップシグナリングを格納するように、かつアタッチ完了シグナリングの成功に応じて該個別ベアラセットアップシグナリングを送信又は再送信するようにさらに構成される、移動無線通信装置。
【請求項2】
前記アタッチ完了メッセージの送信失敗の判断に応じて前記個別ベアラセットアップシグナリングを送信又は再送信するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置内の前記無線レイヤーが前記アタッチ完了メッセージの前記失敗を指示する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記アタッチ完了メッセージの送信成功の指示に応じて前記個別ベアラセットアップシグナリングを送信又は再送信するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記個別ベアラセットアップシグナリングはNASメッセージを含む、請求項1〜4のいずれか1項又は複数項に記載の装置。
【請求項6】
パケットデータネットワークにおける移動無線通信装置のためのネットワークアタッチメント方法であって、送信される個別ベアラセットアップ信号を格納するステップと、アタッチ完了シグナリングの成功に応じて前記個別ベアラセットアップ信号を送信又は再送信するステップとを含む、方法。
【請求項7】
前記個別ベアラセットアップシグナリングの前記送信又は再送信は、アタッチ完了メッセージの送信失敗の判断に応じる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記送信失敗を前記移動無線通信装置の無線レイヤー内で指示するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記個別レイヤーのベアラセットアップシグナリングの前記送信又は再送信は、アタッチ完了メッセージの送信成功の指示に応じる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記個別ベアラセットアップシグナリングはNASメッセージを含む、請求項6〜9のいずれか1項又は複数項に記載の方法。
【請求項11】
ネットワークアタッチメント手順の一部として複数ベアラセットアップを含む、請求項6〜10のいずれか1項又は複数項に記載の方法。
【請求項12】
パケットデータネットワーク内の通信の移動無線通信装置であって、添付の図面の図2を参照して実質的に上記で説明した、移動無線通信装置。
【請求項13】
パケットデータネットワーク内の移動無線通信装置のためのネットワークアタッチメントの方法であって、添付の図面の図2を参照して実質的に上記で説明し、図2に示すような、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−523138(P2012−523138A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543392(P2011−543392)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/JP2010/055984
【国際公開番号】WO2010/116942
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】