説明

パストライザにおける被処理体供給構造並びにこれを具えたパストライザ

【課題】 パストライザにおけるメインコンベヤと供給コンベヤ等の供給搬送手段との間の被処理物の受渡し構造において、互いの搬送作用面の高さの違いに起因して被処理物が転倒することを低コストの対応構造で防止するパストライザにおける被処理体供給構造並びにこれを具えたパストライザを提供する。
【解決手段】 供給搬送手段(供給コンベヤ4)から前記メインコンベヤ2へ被処理体Fを載せ替えて供給する構造において、前記供給搬送手段とメインコンベヤ2とのうち、いずれか一方または双方には、互いの搬送作用面20、30が常にほぼ連なるように搬送作用面20、30を合わせる位置調節機構10を具えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器入り飲料等の食品を加熱して殺菌処理等を行うパストライザに関するもので、特に容器入り飲料等の被処理体を供給搬送コンベヤからメインコンベヤへ転送する被処理体供給構造の改良に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般にパストライザは、閉鎖した加熱処理室内で移送されてくる被処理体たる容器入り飲料等に温水及び冷水等をかけて殺菌処理を行う装置であり、ここにおける被処理体の移送手段は、殺菌処理が行われる個所であるメインコンベヤと、その両端に搬送方向をメインコンベヤと直交するように配設した供給コンベヤと排出コンベヤとによって構成されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
ところで、前記メインコンベヤは、温水及び冷水等が散水されるため、プラスチック製等の多数の孔開きのキャリヤスラットが連接されたスラットコンベヤを用いるため、次のような問題が生じていた。
すなわち、メインコンベヤ2′の搬送作用面20′の始端部21′は、スラットコンベヤであることに因み高さが上下動する(例えば5mm程度)という特性があり、図8に示すように細長い容器の被処理体Fの場合には、転倒してしまうことがあった。ここで、この問題を解消するために、単純には、キャリヤスラット22′のピッチを狭いタイプのスラットコンベヤに交換すれば高さの上下動範囲を少なくすることが可能である。しかしながら既存の設備でこのような対策を得ることは、多額の更新コストを要するという問題を有している。
【特許文献1】特開平11−9244号公報
【特許文献2】特開平10−276743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような背景からなされたものであって、パストライザにおけるメインコンベヤと供給コンベヤ等の供給搬送手段との間の被処理物の受渡し構造において、互いの搬送作用面の高さの違いに起因して被処理物が転倒することを低コストの対応構造で防止することを実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載のパストライザにおける被処理体供給構造は、処理室内に、スラットコンベヤを適用したメインコンベヤと、このメインコンベヤの前後端部に接続される供給搬送手段及び排出搬送手段とを具え、前記メインコンベヤにより移送される被処理体が所定の加熱等の処理を受けるにあたり、前記供給搬送手段から前記メインコンベヤへ被処理体を載せ替えて供給する構造において、前記供給搬送手段とメインコンベヤとのうち、いずれか一方または双方には、互いの搬送作用面が常にほぼ連なるように搬送作用面を合わせる位置調節機構を具えていることを特徴として成るものである。
【0006】
更に請求項2記載のパストライザにおける被処理体供給構造は、前記請求項1記載の要件に加え、前記位置調節機構は、前記メインコンベヤに具えられるものであり、且つメインコンベヤにおける供給搬送手段との連接側のみを位置調節機構により位置調節することを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項3記載のパストライザにおける被処理体供給構造は、前記請求項1記載の要件に加え、前記位置調節機構は、前記供給搬送手段に具えられていることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項4記載のパストライザは、処理室内にスラットコンベヤを適用したメインコンベヤと、このメインコンベヤの前後端部に接続される供給搬送手段及び排出搬送手段とを具え、前記メインコンベヤにより移送される被処理体が所定の加熱等の処理を受ける装置において、前記供給搬送手段とメインコンベヤとのうち、いずれか一方または双方には、互いの搬送作用面が常にほぼ連なるように搬送作用面を合わせる位置調節機構を具えていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項5記載のパストライザは、前記請求項4記載の要件に加え、前記位置調節機構は、前記メインコンベヤに具えられるものであり、且つメインコンベヤにおける供給搬送手段との連接側のみを位置調節機構により位置調節することを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項6記載のパストライザは、前記請求項4記載の要件に加え、前記位置調節機構は、前記供給搬送手段に具えられていることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパストライザにおける被処理体供給構造は、上述した手段により以下のような効果を奏するものである。
すなわち請求項1及び4記載のパストライザにおける被処理体供給構造並びにこれを具えたパストライザによれば、メインコンベヤに被処理体が受け渡しされる際に、供給搬送手段の搬送作用面とメインコンベヤの搬送作用面とがほぼ常に連なるように位置調節されるため、受け渡しがスムーズに行われ、ここで被処理体が転倒することが防止される。従って被処理体が転倒することにより、加熱処理等がうまく行われなかったり、ラインを一時止めるような事態を回避することができる。また装置の更新や製造コストを安く抑えることができる。
【0012】
また請求項2及び5記載のパストライザにおける被処理体供給構造並びにこれを具えたパストライザによれば、メインコンベヤについて、これと供給搬送手段との連接側のみを位置調節機構により位置調節するものであるため、メインコンベヤ全体を位置調節するよりも比較的軽い力で位置調節することができる。また装置の更新や製造コスト等も安く抑えることができる。またメンテナンスも比較的容易になる。
【0013】
また請求項3及び6記載のパストライザにおける被処理体供給構造並びにこれを具えたパストライザによれば、供給搬送手段が位置調節機構により位置調節されるため、メインコンベヤを位置調節するよりも比較的軽い力で位置調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の最良の形態は、具体的には以下の実施例に述べる通りである。
【実施例1】
【0015】
以下本発明のパストライザにおける被処理体供給構造並びにこれを具えたパストライザを図示の実施の形態に基づき説明する。なお以下の説明にあたっては、本発明のパストライザの説明を行うことにより本発明のパストライザにおける被処理体供給構造について併せて説明する。
なお本実施の形態にあっては、パストライザ1は、容器入り飲料等の被処理体Fを温水等の散水によりいったん加熱殺菌し、そして再び冷却して次工程へ排出する構造を有したものを説明するが、その他、温水の散水で温めるだけ、また冷水で冷やすだけの構造のものであってもよい。
【0016】
パストライザ1は、図1、2に示されるように処理室内にメインコンベヤ2と、供給搬送手段の一例である供給コンベヤ3と、排出搬送手段の一例である排出コンベヤ4とを具えて成り、メインコンベヤ2の上方には一例として前段に温水シャワー施設5が設けられ、後段には冷水シャワー施設6が設けられる。一方メインコンベヤ2の下方には貯水槽7、8が設けられ、ここに前記温水及び冷水シャワー施設5、6により散水された温水及び冷水が貯水される。貯水された温水及び冷水は、図示を省略する循環ポンプにより汲み上げられ再び前記温水及び冷水シャワー施設5、6に供給される。なお符号M1で示す部材は、メインコンベヤ2を駆動する駆動モータである。また供給コンベヤ3の始端側に連接される符号L1で示されるものは前方搬送コンベヤであり、排出コンベヤ4の終端側に連接される符号L2で示されるものは後方搬送コンベヤである。なおメインコンベヤ2は、排水のための多数の孔が開口されたキャリヤスラット22が連接されて構成されるスラットコンベヤが適用されている。
【0017】
供給コンベヤ3について説明する。供給コンベヤ3は、図2の平面図に示すようにメインコンベヤ2の入口側に連接して設けられ、その搬送方向をメインコンベヤ2と直交方向としている。供給コンベヤ3は、具体的には多数の孔を有したキャリヤスラット31が連接して無端帯状とされたバンドチェーンを適用するものであり、これが駆動モータM2により駆動される。キャリヤスラット31におけるメインコンベヤ2と近接する側の側端部31aは、尖端状に形成され、メインコンベヤ2の搬送作用面20と供給コンベヤ3の搬送作用面30とが直近に位置している。なお符号32はガイド体であって、例えば平板状部材を湾曲して形成したもので、供給コンベヤ3の終端へ到達した被処理体Fを塞き止めるとともにメインコンベヤ2上へ被処理体Fを進路変更させる。
【0018】
そして本発明の特徴として、供給コンベヤ3の搬送作用面30と、メインコンベヤ2の搬送作用面20の始端部21とが、平坦に連なるように、メインコンベヤ2の始端部21側を上下動させる位置調節機構10が設けられる。これによりメインコンベヤ2のキャリヤスラット22のピッチ幅を原因として生じるメインコンベヤ2の搬送作用面20の始端部21の上下動を無くし、常に一定レベル高さに保持するものである。位置調節機構10の具体例として図1,3に示されるものは、メインコンベヤ2の始端部21側の回転軸23を油圧シリンダ11にて上下動するものである。また図4に示される実施例は、位置調節機構10としてカム機構を用いるものであり、前記回転軸23にカム12を設け、更に回転軸23を軸受板13で上下動可能に支持している。因みに図4(a)に示すものは、回転軸23の上死点を示し、図4(b)は下死点を示している。なお位置調節機構10としては、この他スライダクランク機構等、種々の上下平行移動する機構のものを適用することが可能である。
【0019】
排出コンベヤ4について説明する。排出コンベヤ4は、図2の平面図に示すようにメインコンベヤ2の出口側に連接して設けられ、駆動モータM3により駆動してその搬送方向をメインコンベヤ2と直交方向としている。排出コンベヤ4の具体的形態は、前記供給コンベヤ3と同様であり、キャリヤスラット41のメインコンベヤ2と近接する側の側端部41aが尖端状に形成され、メインコンベヤ2の搬送作用面20と排出コンベヤ4の搬送作用面40が直近に位置している。また符号42はガイド体であり、前記供給コンベヤ3のガイド体32と同様構成のものである。
【0020】
パストライザ1の具体的な構成は以上のとおりであり、以下この作動態様について説明する。
すなわちメインコンベヤ2の駆動状態において、搬送作用面20の始端部21は、スラットコンベヤであることに因んで上下動するが、図3(a)(b)に示すようにこれに同調してメインコンベヤ2の始端部21側の回転軸23が位置調節機構10により上下動する。すなわち図3(a)のように供給コンベヤ3の搬送作用面30と、メインコンベヤ2の搬送作用面20の始端部側とに段差が生じる毎に、位置調節機構10がメインコンベヤ2の始端部21を上方にシフトする。このため、メインコンベヤ2の搬送作用面20の始端が、供給コンベヤ3の搬送作用面30に平坦に連なり、被処理体Fが転倒することがなくなる。なお、位置調節機構10によるシフト動作は、パストライザ1における現実の処理速度からすると、1ストローク当たり多くは5秒前後、ケースによって3〜8秒程度のサイクルで行われる。
【実施例2】
【0021】
また図5に示すものは、供給コンベヤ3側に位置調節機構10を設けて供給コンベヤ3の搬送作用面30を上下動させる実施例である。この位置調節機構10としては、例えば図5に示すように供給コンベヤ3全体を油圧シリンダ11にて上下動するものである。
【実施例3】
【0022】
本発明の基本的な実施の形態は以上のようであるが、その他種々の改変が行い得る。
例えば前記実施例1、2では、供給搬送手段として供給コンベヤ3を示したが、図6に示されるようにコームと呼ばれる櫛状の渡し板50と、この渡し板34上の被処理体Fをメインコンベヤ2へ押し出す押出機構を用いるようにしてもよい。この場合渡し板50を用い、この渡し板50を上下動する場合には、渡し板50のメインコンベヤ2へ連なる端部側を位置調節機構10により上下動するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の被処理体供給構造を適用したパストライザを示す縦断側面及びメインコンベヤの始端部周辺の拡大図である。
【図2】同上平面図である。
【図3】メインコンベヤの始端部周辺を拡大して示す位置調節前の側面図(a)と、位置調節後の側面図(b)である。
【図4】カム機構を適用した位置調節機構を示す側面図である。
【図5】供給コンベヤ側に位置調節機構を設けた実施例を示す縦断側面図である。
【図6】他の供給搬送手段を適用した実施例を示す側面図である。
【図7】メインコンベヤとしてスラットコンベヤを使用した場合の問題点を示す側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 パストライザ
2 メインコンベヤ
3 供給コンベヤ
4 排出コンベヤ
5 温水シャワー施設
6 冷水シャワー施設
7 貯水槽
8 貯水槽
10 位置調節機構
11 油圧シリンダ
12 カム
13 軸受板
20 搬送作用面
21 始端部
22 キャリヤスラット
23 回転軸
30 搬送作用面
31 キャリヤスラット
31a 側端部
32 ガイド体
40 搬送作用面
41 キャリヤスラット
41a 側端部
50 渡し板
F 被処理体
L1 前方搬送コンベヤ
L2 後方搬送コンベヤ
M1 駆動モータ
M2 駆動モータ
M3 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に、スラットコンベヤを適用したメインコンベヤと、このメインコンベヤの前後端部に接続される供給搬送手段及び排出搬送手段とを具え、前記メインコンベヤにより移送される被処理体が所定の加熱等の処理を受けるにあたり、前記供給搬送手段から前記メインコンベヤへ被処理体を載せ替えて供給する構造において、前記供給搬送手段とメインコンベヤとのうち、いずれか一方または双方には、互いの搬送作用面が常にほぼ連なるように搬送作用面を合わせる位置調節機構を具えていることを特徴とするパストライザにおける被処理体供給構造。
【請求項2】
前記位置調節機構は、前記メインコンベヤに具えられるものであり、且つメインコンベヤにおける供給搬送手段との連接側のみを位置調節機構により位置調節することを特徴とする請求項1記載のパストライザにおける被処理体供給構造。
【請求項3】
前記位置調節機構は、前記供給搬送手段に具えられていることを特徴とする請求項1記載のパストライザにおける被処理体供給構造。
【請求項4】
処理室内にスラットコンベヤを適用したメインコンベヤと、このメインコンベヤの前後端部に接続される供給搬送手段及び排出搬送手段とを具え、前記メインコンベヤにより移送される被処理体が所定の加熱等の処理を受ける装置において、前記供給搬送手段とメインコンベヤとのうち、いずれか一方または双方には、互いの搬送作用面が常にほぼ連なるように搬送作用面を合わせる位置調節機構を具えていることを特徴とするパストライザ。
【請求項5】
前記位置調節機構は、前記メインコンベヤに具えられるものであり、メインコンベヤの供給搬送手段との連接側のみを位置調節機構により位置調節することを特徴とする請求項4記載のパストライザ。
【請求項6】
前記位置調節機構は、前記供給搬送手段に具えられていることを特徴とする請求項4記載のパストライザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−244289(P2007−244289A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72277(P2006−72277)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(595012121)株式会社加藤製缶鉄工所 (4)
【Fターム(参考)】