パターンド媒体のサーボパターンの配置方法及び情報記憶装置
【課題】ビットパターンド媒体を搭載する磁気ディスク装置において、サーボ領域のサーボパタンを磁化反転のないように形成する。
【解決手段】データ領域とサーボパターン領域とを有するビットパターンド記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、サーボ領域に埋め込むアドレス情報を半径方向に複数に分断して分断アドレス情報を作り、各分断アドレス情報を独立情報として作成した復調値を分断復調値とし、最下位グループのアドレス情報は変更せず、或るグループの新アドレス情報を、1つ下位のグループの新アドレス情報に基づく分断復調値と、或るグループの新アドレス情報に基づく分断復調値の論理和が、或るグループの元の分断アドレス情報に基づく分断復調値になるようにして求め、得られた新アドレス情報に基づいて、サーボパターンを定める。
【解決手段】データ領域とサーボパターン領域とを有するビットパターンド記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、サーボ領域に埋め込むアドレス情報を半径方向に複数に分断して分断アドレス情報を作り、各分断アドレス情報を独立情報として作成した復調値を分断復調値とし、最下位グループのアドレス情報は変更せず、或るグループの新アドレス情報を、1つ下位のグループの新アドレス情報に基づく分断復調値と、或るグループの新アドレス情報に基づく分断復調値の論理和が、或るグループの元の分断アドレス情報に基づく分断復調値になるようにして求め、得られた新アドレス情報に基づいて、サーボパターンを定める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願はパターンド媒体のサーボパターンの配置方法及び情報記憶装置に関する。特に、この出願は単磁区記録膜のパターンド媒体を搭載した磁気ディスク装置において、サーボ情報の品質を永続的に安定化させたパターンド磁気記憶媒体のサーボパターンの配置方法、及び該方法で作られたパターンド媒体を備える情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクなどの磁気ディスク媒体は、粒径10nm以下のグラニュラ状の磁性粒からなる連続膜媒体で構成されており、1ビットは数十個の磁性粒より構成されていた。一方、近年の記録媒体の高記録密度化に伴い磁性粒の更なる微細化が進められている。しかし、微細化により個々の磁性粒の体積が減少すると、磁化状態の安定性が減少するので、熱揺らぎにより記録媒体が劣化するという問題が生じる。
【0003】
そこで、グラニュラ状の磁性粒ではなく、単磁区磁性膜1ドットで1ビットを構成するパターンド媒体が注目されている。パターンド媒体に使用される垂直磁気記憶媒体は、トラック方向のディスク媒体上に孤立した磁性ドットを形成し、この磁性ドットを情報単位(ビット)とするものであり、ビットパターンド媒体(BPM)と呼ばれている。BPMには、データを記録するデータ領域と、サーボ情報を記録するサーボパターン領域とがある。
【0004】
こうしたパターン加工したBPMを用いる磁気ディスク装置では、データ領域においてデータを記録するドット(データビット)の磁化の向きがデータに応じて変化するのに対して、サーボ情報は単磁区形成された領域(サーボパターン領域)に予め埋め込まれている。サーボ情報を事前に磁性層の凹凸を含むパターンとして埋め込み形成するパターンド媒体の技術については特許文献1に開示がある。この場合、サーボ情報を与えるサーボパターン領域の磁化状態は、通常、磁化の向きが媒体の表面側に向かう上向き、またはその反対の下向きのどちらか一方である。
【0005】
このような、サーボパターン領域には、シリンダ情報やセクタ情報を記録するアドレス部とポジション部とがある。ポジション部のドットの面積(体積を示すが、以後単に面積という)は、データ領域にあるドットの面積に近い。一方、アドレス部にあるドットの面積は、信頼性を確保するためにデータ長を長くすると、下位ビットではパターンが半径方向に分断されるが、上位ビットではパターンが半径方向に分断されなくなる。これは、データ長が長いと、上位ビットでは“1”が続くので“1”を表すドットの数が多くなってドットが繋がるので面積が大きくなり、下位ビットでは“1”と“0”が頻繁に変化するのでドットが分散するために面積が大きくならないからである。
【0006】
また、サーボパターン領域では全てのビット磁化が同じ方向を向いているため、隣接ビットから発生する磁束が互いにぶつかる。そして、ドットの面積が小さい場合は、単磁区であっても保持力(Hc)が高いために磁気的に安定であるが、ドットの面積が大きい場合は、単磁区記録膜では保持力(Hc)が低下して磁気的に不安定となり、一部の磁化が反転する現象が生じる。一度サーボパターン領域のビットの磁化が反転すると、この反転が伝播して複数のトラックでサーボ情報の破壊が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−147112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
サーボパターン領域のドットに記録されるサーボ信号は、全てのビット磁化が同じ方向を向いて記録されており、一旦記録された磁化は再記録されることがない。このため、サーボパターン領域のドットの面積が大きい部分において一部の磁化に反転する現象が生じてしまうと、磁気ヘッドのトラック位置決め精度が悪化するという課題があった。
【0009】
そこでこの出願は、孤立した磁性ドットをサーボパターン領域に備えるBPM、及びBPMを搭載した情報記憶装置において、サーボパターン領域のドットの上向き、あるいは下向きの磁化状態に反転が生じ難いパターンド媒体のサーボパターンの配置方法及び情報記憶装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するパターンド媒体のサーボパターンの配置方法の第1の形態は、記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、元アドレス情報を横軸方向に複数に分断してグループを作り、各グループを独立ビットマップとして扱って、各グループ毎の元アドレス情報から求めた復調値を元グループ内復調値とし、最も下位のグループは、その新アドレス情報として元アドレス情報をそのまま維持し、元アドレス情報に基づく元グループ内復調値を新グループ内復調値とし、或るグループの新アドレス情報は、1つ下位のグループの新グループ内復調値と、或るグループの新アドレス情報に基づく新グループ内復調値の論理演算結果が、或るグループの元グループ内復調値になるように演算して求め、得られた各グループの新アドレス情報を統合したビットマップ上の新アドレス情報に基づいて、サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴としている。
【0011】
前記目的を達成するパターンド媒体のサーボパターンの配置方法の第2の形態は、記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、元アドレス情報を横軸方向に複数に分断すると共に、縦軸方向にも複数に分断して、同数のアドレス情報を備えたセグメントを作成し、セグメントの位置を所定の規則に基づいてビットマップ上で移動することによって、ビットマップ上に新アドレス情報を作成し、得られた新アドレス情報に基づいて、サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴としている。
【0012】
前記目的を達成するパターンド媒体のサーボパターンの配置方法の第3の形態は、記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、サーボ領域のアドレス部に記録されるアドレス情報を、記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、元アドレス情報に対して、各シリンダに属する元アドレス情報を、シリンダ毎に所定の規則で並べ換えてビットマップ上に新アドレス情報を作成し、得られた新アドレス情報に基づいて、サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴としている。
【0013】
また、前記目的を達成する情報記憶装置は、第1の形態から第3の形態の何れかの形態の方法によって作られたパターンド媒体のサーボパターンの配置方法を用いてサーボ領域に予めドットパターンが形成された記憶媒体と、記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、磁気ヘッドから読み出されたサーボパターンの復調信号を、サーボパターンが形成された時の規則に基づいて、復調する復調回路とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この出願のパターンド媒体及び該媒体を用いる情報記憶装置によれば、サーボパターン領域に記録するデータ長が長く、上位ビットにデータ“1”が集中する場合であっても、ディスクのサーボパターン領域のパターンを所定の規則に基づいて分散させることにより、上位ビットへのデータ“1”の集中が回避され、サーボパターン領域のドットの上向き、あるいは下向きの磁化状態が反転し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)はサーボパターン領域とデータ領域を備えた磁気ディスクを搭載した従来及びこの出願のハードディスク装置の概略構成を示す平面図、(b)は(a)に示したサーボパターン領域とデータ領域の磁性ドットのパターンの一例を示す部分拡大平面図、(c)は(b)に示したサーボパターン領域のアドレス部の上位ビットにおいて磁性ドットのパターンの一部に磁性反転が生じた状態を示す部分拡大断面図、(d)は(b)に示したサーボパターン領域のアドレス部の下位ビットにおいて磁性ドットのパターンに磁性反転が生じていない正常な状態を示す部分拡大断面図である。
【図2】(a)はサーボパターン領域のアドレス部が9ビット構成である場合のドットパターンの一例を示す部分拡大平面図、(b)は(a)に示したドットパターンのデータ内容を示す9ビット32シリンダ分のビットマップを示す図である。
【図3】図2(b)に示した9ビット32シリンダ分のビットマップを、3ビット32シリンダ分の第1と第2と第3の3つのビットマップに分けて示す説明図である。
【図4】(a)は図3に示した第1と第2と第3の3つのビットマップからこの出願の第1の実施例の3ビット32シリンダ分の第1と第2と第3の3つのビットマップを作る方法を示すブロック図、(b)は(a)に示した方法によって作られたこの出願の第1の実施例の3ビット32シリンダ分の第1と第2と第3の3つのビットマップを示す図である。
【図5】(a)は図4(b)に示した第1と第2と第3の3つのビットマップをまとめた9ビット32シリンダ分のビットマップを示す図、(b)は(a)のビットマップに基づいてサーボパターン領域のアドレス部に形成された9ビット構成のドットパターンを示す部分拡大平面図である。
【図6】(a)は図3に示した第1と第2と第3の3つのビットマップからこの出願の第2の実施例の3ビット32シリンダ分の第1と第2と第3の3つのビットマップを作る方法を示すブロック図、(b)は(a)に示した方法によって作られたこの出願の第2の実施例の3ビット32シリンダ分の第1と第2と第3の3つのビットマップを示す図である。
【図7】図6(b)に示した第1と第2と第3の3つのビットマップをまとめた9ビット32シリンダ分のビットマップを示す図である。
【図8】(a)は図2(b)に示した9ビット32シリンダ分のビットマップを、第1と第2と第3の3つのビットマップ及び8シリンダずつの4つのグループに分割した状態を示すビットマップを示す図、(b)は(a)に示したビットマップを第1と第2と第3の3つのビットマップに分けてグループ内のデータを交換する様子を説明する説明図である。
【図9】(a)は図8(b)に示したグループ内データの交換によって作成された第1と第2と第3の3つのビットマップを示す図、(b)は(a)に示した第1と第2と第3の3つのビットマップをまとめたこの出願の第3の実施例の9ビット32シリンダ分のビットマップを示す図である。
【図10】(a)はこの出願の第3の実施例を実施するに際して、サーボパターン領域のアドレス部に追加するセグメント順番フラグとシリンダ値情報の関係を示す説明図、(b)は通常のサーボパターン領域のアドレス部における磁性ドットへの磁場の影響を示す部分拡大断面図、(c)はサーボパターン領域のアドレス部に冗長間隔を設けた場合のアドレス部の磁性ドットへの磁場の影響を示す部分拡大断面図、(d)は(a)に示したセグメント順番フラグの位置を変更した場合のセグメント順番フラグとシリンダ値情報の関係を示す説明図、(e)は(a)に示したサーボパターン領域のアドレス部に更に付加情報を追加した場合のセグメント順番フラグ、シリンダ値情報及び付加情報の関係を示す説明図である。
【図11】(a)は図2(b)に示したビットマップにおいて各シリンダ内のデータを順に1ビットずつシフトする様子を説明する説明図、(b)は(a)に示したシフト方法によって作成されたこの出願の第4の実施例の9ビット32シリンダ分のビットマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を用いてこの出願のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法及び情報記憶装置の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。まず、図1(a)を用いて、情報記憶装置であるハードディスク装置の構成について説明し、次に、図1(b)から図1(d)を用いてサーボパターン領域の構成、及びサーボパターン領域における磁化反転について説明する。
【0017】
図1(a)は磁気ディスク4を搭載したハードディスク装置9の概略構成を示すものである。磁気ディスク4は垂直記録用のビットパターンド型の磁気記憶媒体であり、データを記録するデータ領域Dと、トラックデータやセクタデータを含むサーボ情報が記録されたサーボパターン領域Sがある。図1(a)にはこのデータ領域Dとサーボパターン領域Sの磁気ディスク4の上の位置を示してある。
【0018】
磁気ディスク4は、ハードディスク装置9の筐体であるベース部2の上の中央部から一方の側にオフセットして設けられたスピンドルモータ3に取り付けられており、スピンドルモータ3によって回転する。磁気ディスク4はスピンドルモータ3に複数枚設けられることもある。ハードディスク装置9のベース部2の上の中央部から他方の側にオフセットした位置には、磁気ディスク4のトラックにアクセスしてデータの読み書きを行うヘッド(図示せず)を備えるスイングアーム5がある。ヘッドはスライダ8に設けられており、スライダ8はスイングアーム5の先端部に取り付けられている。スイングアーム5は回転軸6を中心にして磁気ディスク4の上をスイングするように構成されている。
【0019】
回転軸6に対してスイングアーム5と反対側には、スイングアーム5をスイングさせるボイスコイルモータ(VCM)7がある。ボイスコイルモータ7によるスイングアーム5の回転駆動(位置決め制御)、並びにスライダ8に設けられたヘッドによるデータの磁気ディスク4への読み書き制御は、制御回路10によって行われる。また、制御回路10には外部の機器と情報を遣り取りする入出力端子(図示せず)がある。更に、制御回路10には、サーボパターン領域Sから読み出したこの出願におけるサーボ情報を、正しいサーボ情報に復元する規則を記憶した記憶部(図示せず)がある。
【0020】
図1(b)は図1(a)に示したサーボパターン領域Sとデータ領域Dを部分的に拡大して示すものである。サーボパターン領域Sは、シリンダ情報、セクタ情報が記録されるアドレス部ADとポジション部POとがある。サーボパターン領域Sとデータ領域Dにはそれぞれ孤立した磁性ドット41,42がある。サーボパターン領域Sの磁性ドット41はパターンを形成しており、その磁化方向(垂直方向の磁化の向き)は全て同じである。なお、図1(b)に示す磁性ドット41のパターンは従来例のものを示しており、この出願によって形成されたものではない。また、データ領域Dの磁性ドット42はデータを記録するものであり、各磁性ドット42の磁化方向はデータによって異なる。
【0021】
ポジション部POのドット41の面積は、データ領域Dにあるドット42の面積に近い。一方、アドレス部ADにある従来例のパターンでは、ドット41の面積は信頼性を確保するためにデータ長を長くしてあるので、下位ビットLBではパターンが半径方向に分断されるが、上位ビットUBではパターンが半径方向に分断されなくなる。これは、データ長が長いと、上位ビットUBでは“1”が続くが、下位ビットLBでは“1”と“0”が頻繁に変化するからである。このため、上位ビットUBの磁性ドット41の面積の方が、下位ビットLBの磁性ドット41の面積よりも大きい。
【0022】
サーボパターン領域Sでは全てのビット41の磁化が同じ方向を向いているため、隣接ビットから発生する磁束が互いにぶつかる。そして、ドットの面積が小さい場合は、単磁区であっても保持力(Hc)が高いために磁気的に安定であるが、ドットの面積が大きい場合は、単磁区記録膜では保持力(Hc)が低下して磁気的に不安定となり、一部の磁化が反転する現象が生じる。これを図1(c)、(d)を用いて説明する。
【0023】
図1(d)は図1(b)に示したサーボパターン領域Sの下位ビットLBの磁性ドット41を部分的に拡大して示す断面図である。サーボパターン領域Sの磁性ドット41はディスクベース40の上に形成されており、磁気ディスク4の製造時に予め外部磁界によって同じ面内では全て同じ向きに磁化されている。図1(d)の各磁性ドット41に示される矢印は、磁性ドット41の磁化の向きを示している。そして、同一面内の全ての磁性ドット41の磁化の向きが同じであると、磁束がぶつかってビット磁化が不安定になる。しかし、ドットの面積が小さい場合は、単磁区であっても保持力(Hc)が高いために磁気的に安定であり、磁性ドット41の磁化の向きは、磁気ディスク4が正常な状態では、磁気ディスク装置9の動作中に変わることはない。
【0024】
図1(c)は図1(b)に示した従来例におけるサーボパターン領域Sの上位ビットUBの磁性ドット41を部分的に拡大して示す断面図であり、各磁性ドット41に示される矢印は磁性ドット41の磁化の向きを示している。上位ビットUBでは、前述のようにドットの面積が大きく、単磁区記録膜では保持力(Hc)が低下して磁気的に不安定であるので、磁性ドット41の一部が磁化反転を起こし易い。図1(c)は磁性ドット41の一部が磁化反転を起こした状態を示している。磁化反転した磁性ドット41には網点を付してある。
【0025】
また、上位ビットUBの磁性ドット41は、熱揺らぎによって磁化が不安定になり、磁性ドット41の保持力が弱まることもあった。そして、従来例におけるサーボパターン領域Sの磁性ドット41のパターンでは、サーボパターン領域Sの上位ビットUBの磁性ドット41の一部が磁化反転したり、磁性ドットの保持力が弱まると、ヘッドのトラックへの位置決め精度が劣化してしまう課題があった。
【0026】
本出願はこのような課題を解消するためになされたものであり、上位ビットUBの磁性ドット41の磁化反転を防止し、ヘッドのトラックへの位置決め精度を高品質に保持するものである。このため、本出願ではビットパターンド型媒体のサーボパターン領域のアドレス部における磁性ドットの配置パターンを、磁化反転が起きないように、サーボパターン領域にドット面積が小さい状態で磁性ドットが分散するように配置している。
【0027】
ここでは、本出願のサーボパターン領域のアドレス部における磁性ドットの配置パターンを分かりやすく説明するために、まず、アドレス部の磁性ドットによるサーボパターンが図2(a)に示すように、ビットa〜ビットiを備えた9ビット構成であり、シリンダ数(トラック数)がシリンダ0〜シリンダ31の32である場合について説明する。
【0028】
図2(a)は、磁気ディスクのサーボパターン領域に、サーボ情報としてデータ値0〜31が順番に従来の配置で記録されている時のアドレス部ADを部分的に拡大して示すものである。この図においてハッチングを付した部分が、磁性ドット41が存在する部分を示している。そして、磁性ドット41は磁化されて“1”の情報が記録されているものとし、磁性ドット41がない部分は再生時に“0”として読み出されるものとする。よって、シリンダ0には磁性ドット41がないのでシリンダ0が表すデータの値は0である。また、シリンダ31には磁性ドット41が4つ連続しているので、シリンダ31が示すデータの値は31である。
【0029】
図2(b)は図2(a)に示した磁性ドット41によるパターンのデータ内容をビットマップにしたものである。このビットマップの横方向がビットa(右端)〜ビットi(左端)を表し、縦方向がシリンダ0(上端)〜シリンダ31(下端)を表している。従って、図2(a)に示される磁性ドット41のパターンがヘッドによって順次読み出された場合には、制御回路にあるメモリに、X方向のアドレスa〜iとY方向のアドレス0〜31を有する図2(b)に示されるようなビットマップが格納されると考えれば良い。また、ここでは、説明を簡単にするために、各シリンダの番号0〜31と各シリンダ0〜31の復調値0〜31を同じにしてある。即ち、例えば、シリンダ7のデータを復調すれば、復調値が7になるとする。
【0030】
一方、磁性ドット41が図2(a)に示すように配置されている場合、アドレスa〜アドレスeとシリンダ16〜シリンダ31で示される部分に、面積の大きな磁性ドット41の集合部分LDが存在する。この磁性ドット41の集合部分LDは、ディスクの半径方向にも円周方向にも長い部分があるので、集合部分LDは保持力Hcが小さく、磁化が反転し易い。従って、図2(b)において破線で囲まれた“1”の集合部分DCにおけるデータ“1”がデータ“0”に反転し易い。
【0031】
この課題を解消するためには、図2(b)に示されるビットマップ上のデータを、ある規則でマップ上に分散させ(エンコードし)ておき、分散したデータを読み出した後に、前述の規則に基づいて元のデータに戻す(デコードする)ようにすれば良い。即ち、X方向のアドレスa〜iと、Y方向のアドレス0〜31を有するビットマップの上で、データ“1”をマップ上にある規則で分散させ、分散させたデータでサーボ領域のアドレス部に磁性ドット41を形成すれば良い。そして、アドレス部に分散配置された磁性ドット41のパターンをヘッドで読み出した場合、読み出したデータが、図2(a)に示される磁性ドット41のパターンをヘッドで読み取って得られるデータと一致するように前述の規則で復調すれば良い。
【0032】
ここで、図2(b)に示したマップ上のデータ“1”を、X方向のアドレスa〜iとY方向のアドレス0〜31を有するビットマップの上に、ある規則を用いて分散させる本出願の方法を、幾つかの実施例に基づいて図3から図11(b)を用いて説明する。
【0033】
図3は、図2(b)に示した9ビット32シリンダ分のビットマップを、3ビット32シリンダ分の第1のビットマップA、第2のビットマップB、及び第3のビットマップCの3つのグループに分けて示す説明図である。第1〜第3のビットマップA〜Cにおいて丸付A、丸付B、丸付Cで示されるものは、“1”と“0”で示されるデータ値(A)〜(C)とする。また、第1〜第3のビットマップA〜Cの右側に示される数字は、第1〜第3のビットマップA〜Cをそれぞれ独立したビットマップと見なして、各ビットマップにおけるデータ値(A)〜(C)を復調した復調値《A》〜《C》である。以後この各グループの復調値を、グループ内復調値《A》〜《C》と呼ぶ。
【0034】
グループ内復調値《A》〜《C》は、図3ではそれぞれ楕円付A〜楕円付Cで示してあり、各グループを独立したビットマップと見なして復調した値である。第2ビットマップBのシリンダ31のアドレスdのデータは“1”、アドレスeのデータは“1”、アドレスfのデータは“0”であるので、第2ビットマップBのシリンダ31の復調値は(2の1乗)+(2の0乗)で3になる。そして、9ビットをそれぞれ3ビットの3つのグループに分けると、それぞれは8進数となるので、各シリンダ全体の復調値は、グループ内復調値《C》×(8の2乗)+グループ内復調値《B》×(8の1乗)+グループ内復調値《A》×(8の0乗)となる。例えば、シリンダ31の復調値は(0×1)+(3×8)+(7×1)=31となる。以後の説明では、図3のグループ内復調値《A》〜《C》は元グループ内復調値《A》〜《C》と呼ぶ。
【0035】
図4(a)は、図3に示した第1、第2、及び第3の3つのビットマップA〜Cから、この出願の第1の実施例の第1、第2、及び第3の3つのビットマップA1〜C1を作る方法を示すものである。また、図4(b)は図4(a)に示した方法によって作られたこの出願の第1の実施例の第1、第2、及び第3の3つのビットマップA1〜C1を示すものである。なお、図4(b)では、ビットマップA1〜C1における“1”と“0”で示されるデータ値(A)〜(C)を丸付A〜丸付Cで示し、データ値(A)〜(C)の新グループ内復調値〔A〕〜〔C〕を楕円付A〜楕円付Cで示す。更に、ビットマップA1〜C1において得たい元グループ内復調値を《A》〜《C》とし、これを四角で囲んだA〜Cで示す。
【0036】
まず、第1のビットマップA1は、図3に示した第1のビットマップAと同じにする。従って、第1のビットマップA1では、元グループ内復調値《A》は新グループ内復調値〔A〕と同じであり、データ値(A)も同じである。次に、第2のビットマップB1は、図4(b)に示した第1のビットマップA1に基づいて、ある規則に基づいて以下のようにして作成する。即ち、第1のビットマップA1の新グループ内復調値〔A〕に第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕を加えたものが、第2のビットマップB1の元グループ内復調値《B》になるように、第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕を作成する。つまり、〔A〕+〔B〕=《B》になるように第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕を作成する。新グループ内復調値〔B〕を作成できれば、データ値(B)も作成することができる。
【0037】
このようにして第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕とデータ値(B)が求められた後に、第3のビットマップC1を作成する。第3のビットマップC1は、図4(b)のように作成された第2のビットマップB1に基づいて、ある規則に基づいて以下のようにして作成する。即ち、第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕に第3のビットマップC1の新グループ内復調値〔C〕を加えたものが、第3のビットマップC1の元グループ内復調値《C》になるように、第3のビットマップC1の新グループ内復調値〔C〕を作成する。つまり、〔B〕+〔C〕=《C》になるように第3のビットマップC1の新グループ内復調値〔C〕を作成する。新グループ内復調値〔C〕を作成できれば、データ値(C)も作成することができる。
【0038】
図5(a)は、図4(a)に示した方法により、図4(b)に示した第1、第2、第3のビットマップA1,B1,C1をまとめた9ビット32シリンダ分のビットマップを示すものである。また、図5(b)は図5(a)のビットマップに基づいて、サーボパターン領域のアドレス部に形成した9ビット構成のドットパターンを示すものである。第1の実施例では、ビットの配置変化が激しい下位ビットを利用して、上位ビットを含めた全ビットがパターン化されているので、ビットマップ上にドット41の多くの集合部分が見られなくなり、保持力Hcが大きくなって磁化反転の耐性が向上する。
【0039】
なお、図5(b)に示されるドットを読み出して得られた図5(a)に示されるデータは、前述の規則に基づいて復調し、第1のビットマップA1の部分の元グループ内復調値《A》は新グループ内復調値〔A〕をそのまま採用する。一方、第2のビットマップB1のデータ内元復調値《B》は、第1のビットマップA1の新グループ内復調値〔A〕に第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕を加えることによって得られる。また、第3のビットマップC1の元グループ内復調値《C》は第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕に第3のビットマップC1の新グループ内復調値〔C〕を加えることによって得られる。
【0040】
図6(a)は、図3に示した第1、第2、及び第3の3つのビットマップA〜Cから、この出願の第2の実施例の第1、第2、及び第3の3つのビットマップA2〜C2を作る方法を示すものである。また、図6(b)は図6(a)に示した方法によって作られたこの出願の第2の実施例の3ビット32シリンダ分の第1、第2、及び第3の3つのビットマップA2〜C2を示す図である。なお、図6(b)でも、ビットマップA2〜C2における“1”と“0”で示されるデータ値(A)〜(C)を丸付A〜丸付Cで示し、データ値(A)〜(C)の新グループ内復調値〔A〕〜〔C〕を楕円付A〜楕円付Cで示す。更に、ビットマップA2〜C2において得たい元グループ内復調値を《A》〜《C》とし、これを四角で囲んだA〜Cで示す。
【0041】
まず、第1のビットマップA2は、図3に示した第1のビットマップAと同じにする。従って、第1のビットマップA2では、新グループ内復調値〔A〕は元グループ内復調値《A》と同じであり、データ値(A)も同じである。次に、第2のビットマップB2は、図6(a)に示した第1のビットマップA2に基づいて、ある規則に基づいて以下のようにして作成する。即ち、第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕から第1のビットマップA2の新グループ内復調値〔A〕を引いたものが、第2のビットマップB2の元グループ内復調値《B》になるように、第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕を作成する。つまり、〔B〕−〔A〕=《B》になるように第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕を作成する。新グループ内復調値〔B〕を作成できれば、データ値(B)も作成することができる。
【0042】
このようにして第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕とデータ値(B)が求められた後に、第3のビットマップC2を作成する。第3のビットマップC2は、図6(b)のように作成された第2のビットマップB2に基づいて、ある規則に基づいて以下のようにして作成する。即ち、第3のビットマップC2の新グループ内復調値〔C〕から第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕を引いたものが、第3のビットマップC2の元グループ内復調値《C》になるように、第3のビットマップC2の新グループ内復調値〔C〕を作成する。つまり、〔C〕−〔B〕=《C》になるように第3のビットマップC2の新グループ内復調値〔C〕を作成する。新グループ内復調値〔C〕を作成できれば、データ値(C)も作成することができる。
【0043】
図7は、図6(a)に示した方法により、図6(b)に示した第1、第2、第3のビットマップA2,B2,C2をまとめた9ビット32シリンダ分のビットマップを示すものである。また、図7のビットマップに基づいて、サーボパターン領域のアドレス部に形成した9ビット構成のドットパターンの図示は省略する。第2の実施例でも、ビットの配置変化が激しい下位ビットを利用して、上位ビットを含めた全ビットがパターン化されているので、ビットマップ上にドット41の多くの集合部分が見られなくなり、保持力Hcが大きくなって磁化反転の耐性が向上する。
【0044】
なお、図7に示されるデータも、前述の規則に基づいて復調し、第1のビットマップA2の部分の元グループ内復調値《A》は新グループ内復調値〔A〕をそのまま採用する。一方、第2のビットマップB2の元グループ内復調値《B》は、第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕から第1のビットマップA2の新グループ内復調値〔A〕を引くことによって得られる。また、第3のビットマップC2の元グループ内復調値《C》は、第3のビットマップC2の新グループ内復調値〔C〕から第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕を引くことによって得られる。
【0045】
次に、本出願の第3の実施例を説明するが、第3の実施例は、第1と第2の実施例とデータのビットマップ上への分散のさせ方が異なる。第3の実施例では、図8(a)に示すように、図2(b)の32シリンダ分のビットマップを、第1と第2と第3の3つのビットマップA,B,Cに分割する以外に、シリンダ方向に8シリンダずつの4つのグループP、Q、R、Tに分割する。この結果、9ビット32シリンダのビットマップは、3ビット8シリンダ分のデータを備える12個のセグメントに分割される。12個のセグメントは図8(a)に示すように、セグメントAP,BP,CP、AQ,BQ,CQ,AR,BR,CR,AT、BT,CTである。
【0046】
そして、第3の実施例では、図8(b)に示すように、グループPとグループTのセグメントAP,BP,CPとセグメントAT、BT,CTはそのままにするが、グループQのセグメントAQ,BQ,CQとグループRのセグメントAR,BR,CRは同じグループ内で入れ替える。第3の実施例では、例えばグループQにおいて、セグメントAQをセグメントBQの位置に、セグメントBQをセグメントCQの位置に、セグメントCQをセグメントAQの位置に移し換える。また、グループRにおいて、セグメントARをセグメントCRの位置に、セグメントBRをセグメントARの位置に、セグメントCRをセグメントBQの位置に移し換える。
【0047】
図9(a)は前述の第3の実施例の方法によって作成された第1と第2と第3の3つのビットマップA3,B3,C3を示すものであり、図9(b)は図9(a)に示した第1と第2と第3の3つのビットマップA3,B3,C3をまとめた9ビット32シリンダ分のビットマップを示すものである。このように、第3の実施例の方法によっても、作成されたビットマップの上に、ドット41の大きな集合部分が見られなくなり、保持力Hcが大きくなって磁化反転の耐性が向上する。
【0048】
なお、図9(b)に示されるデータは、グループPとグループTのセグメントAP,BP,CPとセグメントAT、BT,CTは、データをそのまま復調する。また、グループQのセグメントAQ,BQ,CQとグループRのセグメントAR,BR,CRは同じグループ内でデータが入れ換えられている。そこで、グループQのセグメントAQ,BQ,CQとグループRのセグメントAR,BR,CRについては、入れ換えた規則に応じて読み出したセグメント単位のデータの順番を入れ換える。セグメント単位のデータの順番は、セグメント順番フラグとしてビットマップのどこかに記憶させておけば良い。
【0049】
図10(a)はこの出願の第3の実施例を実施するに際して、サーボパターン領域のアドレス部に追加するセグメント順番フラグとシリンダ値情報(前述のセグメントの順番の情報)の関係を示すものである。セグメント順番フラグには、そのグループのセグメントの読み出し順が記載されているので、読み出した各セグメントのデータは、この読み出し順に従って復調すれば、元のデータが得られる。
【0050】
なお、図9(b)に示した各セグメントを磁気ディスク上にビットとしてレイアウトする場合に、各セグメントの間に冗長間隔をとることができる。すると、各セグメントの間に冗長間隔がない場合は図10(b)に示すように、磁化の向きが同じ磁性ドットでは磁束がぶつかりあう。一方、各セグメントの間に冗長間隔をとると、図10(c)に示すように、磁化の向きが同じ磁性ドットでは、セグメントの間に冗長間隔がある部分では、図10(b)に示すように、冗長間隔がある部分のドットにおける磁束が弱くなり、磁場の影響が小さくなって磁化反転の可能性が小さくなる。
【0051】
図10(d)は図10(a)に示したセグメント順番フラグの位置を変更した場合のセグメント順番フラグとシリンダ値情報の関係を示すものである。このように、セグメント順番フラグの位置は、シリンダ値情報の前後に配置しても、シリンダ情報の間に配置しても良い。更に、図10(e)は図10(a)に示したサーボパターン領域のアドレス部に、セグメント順番フラグに加えて付加情報を追加した場合の実施例を示すものである。付加情報とは、サーボ情報やアドレス情報以外の情報である。
【0052】
なお、以上説明した第3の実施例では、セグメントは各グループ内でのみ移動させているが、セグメントの移動先を明確にさえしておけば、セグメントの移動はグループ内に限定されず、どのセグメント同士を入れ換えても差し支えない。
【0053】
図11(a)はこの出願の第4の実施例を示すものである。第3の実施例では、図8(a)で説明したように、ビットマップをシリンダ方向に更に4つのグループP、Q、R、Tに分割して12個のセグメントを作り、各グループ内でセグメントを移動してデータを分散した。一方、第4の実施例では、図11(a)に示すように、ビットマップをシリンダ方向に8シリンダずつの4つのグループP、Q、R、Tに分割し、各グループ内のシリンダでビットをシフトし、シフト数をシリンダ数が大きくなるにつれて1つずつ増やしている。そして、ビットマップからはみ出た部分のデータはビットマップ内の空いた領域に戻して、図11(b)に示すようなビットマップを作成している。この方法によっても、ビットマップ上のデータの大きな集合部分を、ビットマップ上に分散することができる。
【0054】
また、前述の第4の実施例の変形例として、4つのグループP、Q、R、T内におけるビットのシフト量をランダムに行っても良い。更に、ビットマップをグループに分けることなく、各シリンダにおけるビットのシフト量をランダムにしても良い。ただし、ビットマップにおける各シリンダのビットのシフト量は規則で予め定めて置き、データビットがサーポパターン上に分散して配置されたサーボパターン領域から読み出したデータは、この規則によって元のサーボデータに復調できなければならない。このようなサーポパターン部から読み出したデータの復調は、図1(a)に示した制御回路10が行うようにすれば良い。
【0055】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本発明の容易な理解のために、本発明の具体的な形態を以下に付記する。
【0056】
(付記1) 記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報を前記横軸方向に複数に分断してグループを作り、各グループを独立ビットマップとして扱って、各グループ毎の前記元アドレス情報から求めた復調値を元グループ内復調値とし、
最も下位のグループは、その新アドレス情報として元アドレス情報をそのまま維持し、前記元アドレス情報に基づく前記元グループ内復調値を新グループ内復調値とし、
或るグループの新アドレス情報は、1つ下位のグループの新グループ内復調値と、前記或るグループの新アドレス情報に基づく新グループ内復調値の論理演算結果が、前記或るグループの元グループ内復調値になるように演算して求め、
得られた各グループの新アドレス情報を統合したビットマップ上の新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。(1)
(付記2) 前記論理演算が論理和又は論理差であることを特徴とする付記1に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。(2)
(付記3) 記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報を前記横軸方向に複数に分断すると共に、前記縦軸方向にも複数に分断して、同数のアドレス情報を備えたセグメントを作成し、
前記セグメントの位置を所定の規則に基づいてビットマップ上で移動することによって、ビットマップ上に新アドレス情報を作成し、
得られた新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。(3)
(付記4) 前記セグメントの位置の移動が、前記縦方向に分断したグループ内だけで行われることを特徴とする付記3に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
(付記5) 前記セグメントの位置の移動情報が、前記サーボパターンの前、又は後ろの部分にパターン化されて設けられていることを特徴とする付記3又は4に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【0057】
(付記6) 前記サーボパターンが半径方向に複数のグループに分断され、前記セグメントの位置の移動情報が、前記分断されたグループの間の領域にパターン化されて設けられていることを特徴とする付記3又は4に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
(付記7) 前記サーボパターンが半径方向に複数のグループに分断され、前記分断されたグループの間の領域に、他のサーボ情報がパターン化されて挿入されていることを特徴とする付記3から6の何れかに記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
(付記8) 前記サーボパターンが半径方向に複数のグループに分断され、前記分断されたグループの間の領域にビットが形成されない冗長間隔が設けられていることを特徴とする付記3から7の何れかに記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
(付記9) 記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録されるアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報に対して、各シリンダに属する元アドレス情報を、前記シリンダ毎に所定の規則で並べ換えて前記ビットマップ上に新アドレス情報を作成し、
得られた新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。(4)
(付記10) 前記所定の規則が、
前記元アドレス情報に対して、各シリンダに属する元アドレス情報を、前記シリンダ番号の若い方から順に、1ビットずつ上位方向にシフトし、シフトによって前記ビットマップから押し出されたアドレス情報は、シフトによって空いたアドレスに順次移動し、
シフトが各シリンダの最上位ビットに及んだ場合は最下位ビットから1ビットずつのシフトを繰り返して新ビットマップを作成するものであることを特徴とする付記9に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【0058】
(付記11) 付記1から付記9のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法を用いてサーボ領域に予めドットパターンが形成された記憶媒体と、
前記記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、前記記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、
前記磁気ヘッドから読み出された前記サーボパターンの復調信号を、前記サーボパターンが形成された時の規則に基づいて、復調する復調回路とを備えることを特徴とする情報記憶装置。(5)
【符号の説明】
【0059】
4 磁気ディスク
9 ハードディスク装置
10 制御回路
AD アドレス部
D データ領域
LD 面積大のドット集合部分
PO ポジション部
S サーボパターン領域
【技術分野】
【0001】
この出願はパターンド媒体のサーボパターンの配置方法及び情報記憶装置に関する。特に、この出願は単磁区記録膜のパターンド媒体を搭載した磁気ディスク装置において、サーボ情報の品質を永続的に安定化させたパターンド磁気記憶媒体のサーボパターンの配置方法、及び該方法で作られたパターンド媒体を備える情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクなどの磁気ディスク媒体は、粒径10nm以下のグラニュラ状の磁性粒からなる連続膜媒体で構成されており、1ビットは数十個の磁性粒より構成されていた。一方、近年の記録媒体の高記録密度化に伴い磁性粒の更なる微細化が進められている。しかし、微細化により個々の磁性粒の体積が減少すると、磁化状態の安定性が減少するので、熱揺らぎにより記録媒体が劣化するという問題が生じる。
【0003】
そこで、グラニュラ状の磁性粒ではなく、単磁区磁性膜1ドットで1ビットを構成するパターンド媒体が注目されている。パターンド媒体に使用される垂直磁気記憶媒体は、トラック方向のディスク媒体上に孤立した磁性ドットを形成し、この磁性ドットを情報単位(ビット)とするものであり、ビットパターンド媒体(BPM)と呼ばれている。BPMには、データを記録するデータ領域と、サーボ情報を記録するサーボパターン領域とがある。
【0004】
こうしたパターン加工したBPMを用いる磁気ディスク装置では、データ領域においてデータを記録するドット(データビット)の磁化の向きがデータに応じて変化するのに対して、サーボ情報は単磁区形成された領域(サーボパターン領域)に予め埋め込まれている。サーボ情報を事前に磁性層の凹凸を含むパターンとして埋め込み形成するパターンド媒体の技術については特許文献1に開示がある。この場合、サーボ情報を与えるサーボパターン領域の磁化状態は、通常、磁化の向きが媒体の表面側に向かう上向き、またはその反対の下向きのどちらか一方である。
【0005】
このような、サーボパターン領域には、シリンダ情報やセクタ情報を記録するアドレス部とポジション部とがある。ポジション部のドットの面積(体積を示すが、以後単に面積という)は、データ領域にあるドットの面積に近い。一方、アドレス部にあるドットの面積は、信頼性を確保するためにデータ長を長くすると、下位ビットではパターンが半径方向に分断されるが、上位ビットではパターンが半径方向に分断されなくなる。これは、データ長が長いと、上位ビットでは“1”が続くので“1”を表すドットの数が多くなってドットが繋がるので面積が大きくなり、下位ビットでは“1”と“0”が頻繁に変化するのでドットが分散するために面積が大きくならないからである。
【0006】
また、サーボパターン領域では全てのビット磁化が同じ方向を向いているため、隣接ビットから発生する磁束が互いにぶつかる。そして、ドットの面積が小さい場合は、単磁区であっても保持力(Hc)が高いために磁気的に安定であるが、ドットの面積が大きい場合は、単磁区記録膜では保持力(Hc)が低下して磁気的に不安定となり、一部の磁化が反転する現象が生じる。一度サーボパターン領域のビットの磁化が反転すると、この反転が伝播して複数のトラックでサーボ情報の破壊が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−147112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
サーボパターン領域のドットに記録されるサーボ信号は、全てのビット磁化が同じ方向を向いて記録されており、一旦記録された磁化は再記録されることがない。このため、サーボパターン領域のドットの面積が大きい部分において一部の磁化に反転する現象が生じてしまうと、磁気ヘッドのトラック位置決め精度が悪化するという課題があった。
【0009】
そこでこの出願は、孤立した磁性ドットをサーボパターン領域に備えるBPM、及びBPMを搭載した情報記憶装置において、サーボパターン領域のドットの上向き、あるいは下向きの磁化状態に反転が生じ難いパターンド媒体のサーボパターンの配置方法及び情報記憶装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するパターンド媒体のサーボパターンの配置方法の第1の形態は、記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、元アドレス情報を横軸方向に複数に分断してグループを作り、各グループを独立ビットマップとして扱って、各グループ毎の元アドレス情報から求めた復調値を元グループ内復調値とし、最も下位のグループは、その新アドレス情報として元アドレス情報をそのまま維持し、元アドレス情報に基づく元グループ内復調値を新グループ内復調値とし、或るグループの新アドレス情報は、1つ下位のグループの新グループ内復調値と、或るグループの新アドレス情報に基づく新グループ内復調値の論理演算結果が、或るグループの元グループ内復調値になるように演算して求め、得られた各グループの新アドレス情報を統合したビットマップ上の新アドレス情報に基づいて、サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴としている。
【0011】
前記目的を達成するパターンド媒体のサーボパターンの配置方法の第2の形態は、記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、元アドレス情報を横軸方向に複数に分断すると共に、縦軸方向にも複数に分断して、同数のアドレス情報を備えたセグメントを作成し、セグメントの位置を所定の規則に基づいてビットマップ上で移動することによって、ビットマップ上に新アドレス情報を作成し、得られた新アドレス情報に基づいて、サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴としている。
【0012】
前記目的を達成するパターンド媒体のサーボパターンの配置方法の第3の形態は、記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、サーボ領域のアドレス部に記録されるアドレス情報を、記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、元アドレス情報に対して、各シリンダに属する元アドレス情報を、シリンダ毎に所定の規則で並べ換えてビットマップ上に新アドレス情報を作成し、得られた新アドレス情報に基づいて、サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴としている。
【0013】
また、前記目的を達成する情報記憶装置は、第1の形態から第3の形態の何れかの形態の方法によって作られたパターンド媒体のサーボパターンの配置方法を用いてサーボ領域に予めドットパターンが形成された記憶媒体と、記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、磁気ヘッドから読み出されたサーボパターンの復調信号を、サーボパターンが形成された時の規則に基づいて、復調する復調回路とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
この出願のパターンド媒体及び該媒体を用いる情報記憶装置によれば、サーボパターン領域に記録するデータ長が長く、上位ビットにデータ“1”が集中する場合であっても、ディスクのサーボパターン領域のパターンを所定の規則に基づいて分散させることにより、上位ビットへのデータ“1”の集中が回避され、サーボパターン領域のドットの上向き、あるいは下向きの磁化状態が反転し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)はサーボパターン領域とデータ領域を備えた磁気ディスクを搭載した従来及びこの出願のハードディスク装置の概略構成を示す平面図、(b)は(a)に示したサーボパターン領域とデータ領域の磁性ドットのパターンの一例を示す部分拡大平面図、(c)は(b)に示したサーボパターン領域のアドレス部の上位ビットにおいて磁性ドットのパターンの一部に磁性反転が生じた状態を示す部分拡大断面図、(d)は(b)に示したサーボパターン領域のアドレス部の下位ビットにおいて磁性ドットのパターンに磁性反転が生じていない正常な状態を示す部分拡大断面図である。
【図2】(a)はサーボパターン領域のアドレス部が9ビット構成である場合のドットパターンの一例を示す部分拡大平面図、(b)は(a)に示したドットパターンのデータ内容を示す9ビット32シリンダ分のビットマップを示す図である。
【図3】図2(b)に示した9ビット32シリンダ分のビットマップを、3ビット32シリンダ分の第1と第2と第3の3つのビットマップに分けて示す説明図である。
【図4】(a)は図3に示した第1と第2と第3の3つのビットマップからこの出願の第1の実施例の3ビット32シリンダ分の第1と第2と第3の3つのビットマップを作る方法を示すブロック図、(b)は(a)に示した方法によって作られたこの出願の第1の実施例の3ビット32シリンダ分の第1と第2と第3の3つのビットマップを示す図である。
【図5】(a)は図4(b)に示した第1と第2と第3の3つのビットマップをまとめた9ビット32シリンダ分のビットマップを示す図、(b)は(a)のビットマップに基づいてサーボパターン領域のアドレス部に形成された9ビット構成のドットパターンを示す部分拡大平面図である。
【図6】(a)は図3に示した第1と第2と第3の3つのビットマップからこの出願の第2の実施例の3ビット32シリンダ分の第1と第2と第3の3つのビットマップを作る方法を示すブロック図、(b)は(a)に示した方法によって作られたこの出願の第2の実施例の3ビット32シリンダ分の第1と第2と第3の3つのビットマップを示す図である。
【図7】図6(b)に示した第1と第2と第3の3つのビットマップをまとめた9ビット32シリンダ分のビットマップを示す図である。
【図8】(a)は図2(b)に示した9ビット32シリンダ分のビットマップを、第1と第2と第3の3つのビットマップ及び8シリンダずつの4つのグループに分割した状態を示すビットマップを示す図、(b)は(a)に示したビットマップを第1と第2と第3の3つのビットマップに分けてグループ内のデータを交換する様子を説明する説明図である。
【図9】(a)は図8(b)に示したグループ内データの交換によって作成された第1と第2と第3の3つのビットマップを示す図、(b)は(a)に示した第1と第2と第3の3つのビットマップをまとめたこの出願の第3の実施例の9ビット32シリンダ分のビットマップを示す図である。
【図10】(a)はこの出願の第3の実施例を実施するに際して、サーボパターン領域のアドレス部に追加するセグメント順番フラグとシリンダ値情報の関係を示す説明図、(b)は通常のサーボパターン領域のアドレス部における磁性ドットへの磁場の影響を示す部分拡大断面図、(c)はサーボパターン領域のアドレス部に冗長間隔を設けた場合のアドレス部の磁性ドットへの磁場の影響を示す部分拡大断面図、(d)は(a)に示したセグメント順番フラグの位置を変更した場合のセグメント順番フラグとシリンダ値情報の関係を示す説明図、(e)は(a)に示したサーボパターン領域のアドレス部に更に付加情報を追加した場合のセグメント順番フラグ、シリンダ値情報及び付加情報の関係を示す説明図である。
【図11】(a)は図2(b)に示したビットマップにおいて各シリンダ内のデータを順に1ビットずつシフトする様子を説明する説明図、(b)は(a)に示したシフト方法によって作成されたこの出願の第4の実施例の9ビット32シリンダ分のビットマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を用いてこの出願のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法及び情報記憶装置の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。まず、図1(a)を用いて、情報記憶装置であるハードディスク装置の構成について説明し、次に、図1(b)から図1(d)を用いてサーボパターン領域の構成、及びサーボパターン領域における磁化反転について説明する。
【0017】
図1(a)は磁気ディスク4を搭載したハードディスク装置9の概略構成を示すものである。磁気ディスク4は垂直記録用のビットパターンド型の磁気記憶媒体であり、データを記録するデータ領域Dと、トラックデータやセクタデータを含むサーボ情報が記録されたサーボパターン領域Sがある。図1(a)にはこのデータ領域Dとサーボパターン領域Sの磁気ディスク4の上の位置を示してある。
【0018】
磁気ディスク4は、ハードディスク装置9の筐体であるベース部2の上の中央部から一方の側にオフセットして設けられたスピンドルモータ3に取り付けられており、スピンドルモータ3によって回転する。磁気ディスク4はスピンドルモータ3に複数枚設けられることもある。ハードディスク装置9のベース部2の上の中央部から他方の側にオフセットした位置には、磁気ディスク4のトラックにアクセスしてデータの読み書きを行うヘッド(図示せず)を備えるスイングアーム5がある。ヘッドはスライダ8に設けられており、スライダ8はスイングアーム5の先端部に取り付けられている。スイングアーム5は回転軸6を中心にして磁気ディスク4の上をスイングするように構成されている。
【0019】
回転軸6に対してスイングアーム5と反対側には、スイングアーム5をスイングさせるボイスコイルモータ(VCM)7がある。ボイスコイルモータ7によるスイングアーム5の回転駆動(位置決め制御)、並びにスライダ8に設けられたヘッドによるデータの磁気ディスク4への読み書き制御は、制御回路10によって行われる。また、制御回路10には外部の機器と情報を遣り取りする入出力端子(図示せず)がある。更に、制御回路10には、サーボパターン領域Sから読み出したこの出願におけるサーボ情報を、正しいサーボ情報に復元する規則を記憶した記憶部(図示せず)がある。
【0020】
図1(b)は図1(a)に示したサーボパターン領域Sとデータ領域Dを部分的に拡大して示すものである。サーボパターン領域Sは、シリンダ情報、セクタ情報が記録されるアドレス部ADとポジション部POとがある。サーボパターン領域Sとデータ領域Dにはそれぞれ孤立した磁性ドット41,42がある。サーボパターン領域Sの磁性ドット41はパターンを形成しており、その磁化方向(垂直方向の磁化の向き)は全て同じである。なお、図1(b)に示す磁性ドット41のパターンは従来例のものを示しており、この出願によって形成されたものではない。また、データ領域Dの磁性ドット42はデータを記録するものであり、各磁性ドット42の磁化方向はデータによって異なる。
【0021】
ポジション部POのドット41の面積は、データ領域Dにあるドット42の面積に近い。一方、アドレス部ADにある従来例のパターンでは、ドット41の面積は信頼性を確保するためにデータ長を長くしてあるので、下位ビットLBではパターンが半径方向に分断されるが、上位ビットUBではパターンが半径方向に分断されなくなる。これは、データ長が長いと、上位ビットUBでは“1”が続くが、下位ビットLBでは“1”と“0”が頻繁に変化するからである。このため、上位ビットUBの磁性ドット41の面積の方が、下位ビットLBの磁性ドット41の面積よりも大きい。
【0022】
サーボパターン領域Sでは全てのビット41の磁化が同じ方向を向いているため、隣接ビットから発生する磁束が互いにぶつかる。そして、ドットの面積が小さい場合は、単磁区であっても保持力(Hc)が高いために磁気的に安定であるが、ドットの面積が大きい場合は、単磁区記録膜では保持力(Hc)が低下して磁気的に不安定となり、一部の磁化が反転する現象が生じる。これを図1(c)、(d)を用いて説明する。
【0023】
図1(d)は図1(b)に示したサーボパターン領域Sの下位ビットLBの磁性ドット41を部分的に拡大して示す断面図である。サーボパターン領域Sの磁性ドット41はディスクベース40の上に形成されており、磁気ディスク4の製造時に予め外部磁界によって同じ面内では全て同じ向きに磁化されている。図1(d)の各磁性ドット41に示される矢印は、磁性ドット41の磁化の向きを示している。そして、同一面内の全ての磁性ドット41の磁化の向きが同じであると、磁束がぶつかってビット磁化が不安定になる。しかし、ドットの面積が小さい場合は、単磁区であっても保持力(Hc)が高いために磁気的に安定であり、磁性ドット41の磁化の向きは、磁気ディスク4が正常な状態では、磁気ディスク装置9の動作中に変わることはない。
【0024】
図1(c)は図1(b)に示した従来例におけるサーボパターン領域Sの上位ビットUBの磁性ドット41を部分的に拡大して示す断面図であり、各磁性ドット41に示される矢印は磁性ドット41の磁化の向きを示している。上位ビットUBでは、前述のようにドットの面積が大きく、単磁区記録膜では保持力(Hc)が低下して磁気的に不安定であるので、磁性ドット41の一部が磁化反転を起こし易い。図1(c)は磁性ドット41の一部が磁化反転を起こした状態を示している。磁化反転した磁性ドット41には網点を付してある。
【0025】
また、上位ビットUBの磁性ドット41は、熱揺らぎによって磁化が不安定になり、磁性ドット41の保持力が弱まることもあった。そして、従来例におけるサーボパターン領域Sの磁性ドット41のパターンでは、サーボパターン領域Sの上位ビットUBの磁性ドット41の一部が磁化反転したり、磁性ドットの保持力が弱まると、ヘッドのトラックへの位置決め精度が劣化してしまう課題があった。
【0026】
本出願はこのような課題を解消するためになされたものであり、上位ビットUBの磁性ドット41の磁化反転を防止し、ヘッドのトラックへの位置決め精度を高品質に保持するものである。このため、本出願ではビットパターンド型媒体のサーボパターン領域のアドレス部における磁性ドットの配置パターンを、磁化反転が起きないように、サーボパターン領域にドット面積が小さい状態で磁性ドットが分散するように配置している。
【0027】
ここでは、本出願のサーボパターン領域のアドレス部における磁性ドットの配置パターンを分かりやすく説明するために、まず、アドレス部の磁性ドットによるサーボパターンが図2(a)に示すように、ビットa〜ビットiを備えた9ビット構成であり、シリンダ数(トラック数)がシリンダ0〜シリンダ31の32である場合について説明する。
【0028】
図2(a)は、磁気ディスクのサーボパターン領域に、サーボ情報としてデータ値0〜31が順番に従来の配置で記録されている時のアドレス部ADを部分的に拡大して示すものである。この図においてハッチングを付した部分が、磁性ドット41が存在する部分を示している。そして、磁性ドット41は磁化されて“1”の情報が記録されているものとし、磁性ドット41がない部分は再生時に“0”として読み出されるものとする。よって、シリンダ0には磁性ドット41がないのでシリンダ0が表すデータの値は0である。また、シリンダ31には磁性ドット41が4つ連続しているので、シリンダ31が示すデータの値は31である。
【0029】
図2(b)は図2(a)に示した磁性ドット41によるパターンのデータ内容をビットマップにしたものである。このビットマップの横方向がビットa(右端)〜ビットi(左端)を表し、縦方向がシリンダ0(上端)〜シリンダ31(下端)を表している。従って、図2(a)に示される磁性ドット41のパターンがヘッドによって順次読み出された場合には、制御回路にあるメモリに、X方向のアドレスa〜iとY方向のアドレス0〜31を有する図2(b)に示されるようなビットマップが格納されると考えれば良い。また、ここでは、説明を簡単にするために、各シリンダの番号0〜31と各シリンダ0〜31の復調値0〜31を同じにしてある。即ち、例えば、シリンダ7のデータを復調すれば、復調値が7になるとする。
【0030】
一方、磁性ドット41が図2(a)に示すように配置されている場合、アドレスa〜アドレスeとシリンダ16〜シリンダ31で示される部分に、面積の大きな磁性ドット41の集合部分LDが存在する。この磁性ドット41の集合部分LDは、ディスクの半径方向にも円周方向にも長い部分があるので、集合部分LDは保持力Hcが小さく、磁化が反転し易い。従って、図2(b)において破線で囲まれた“1”の集合部分DCにおけるデータ“1”がデータ“0”に反転し易い。
【0031】
この課題を解消するためには、図2(b)に示されるビットマップ上のデータを、ある規則でマップ上に分散させ(エンコードし)ておき、分散したデータを読み出した後に、前述の規則に基づいて元のデータに戻す(デコードする)ようにすれば良い。即ち、X方向のアドレスa〜iと、Y方向のアドレス0〜31を有するビットマップの上で、データ“1”をマップ上にある規則で分散させ、分散させたデータでサーボ領域のアドレス部に磁性ドット41を形成すれば良い。そして、アドレス部に分散配置された磁性ドット41のパターンをヘッドで読み出した場合、読み出したデータが、図2(a)に示される磁性ドット41のパターンをヘッドで読み取って得られるデータと一致するように前述の規則で復調すれば良い。
【0032】
ここで、図2(b)に示したマップ上のデータ“1”を、X方向のアドレスa〜iとY方向のアドレス0〜31を有するビットマップの上に、ある規則を用いて分散させる本出願の方法を、幾つかの実施例に基づいて図3から図11(b)を用いて説明する。
【0033】
図3は、図2(b)に示した9ビット32シリンダ分のビットマップを、3ビット32シリンダ分の第1のビットマップA、第2のビットマップB、及び第3のビットマップCの3つのグループに分けて示す説明図である。第1〜第3のビットマップA〜Cにおいて丸付A、丸付B、丸付Cで示されるものは、“1”と“0”で示されるデータ値(A)〜(C)とする。また、第1〜第3のビットマップA〜Cの右側に示される数字は、第1〜第3のビットマップA〜Cをそれぞれ独立したビットマップと見なして、各ビットマップにおけるデータ値(A)〜(C)を復調した復調値《A》〜《C》である。以後この各グループの復調値を、グループ内復調値《A》〜《C》と呼ぶ。
【0034】
グループ内復調値《A》〜《C》は、図3ではそれぞれ楕円付A〜楕円付Cで示してあり、各グループを独立したビットマップと見なして復調した値である。第2ビットマップBのシリンダ31のアドレスdのデータは“1”、アドレスeのデータは“1”、アドレスfのデータは“0”であるので、第2ビットマップBのシリンダ31の復調値は(2の1乗)+(2の0乗)で3になる。そして、9ビットをそれぞれ3ビットの3つのグループに分けると、それぞれは8進数となるので、各シリンダ全体の復調値は、グループ内復調値《C》×(8の2乗)+グループ内復調値《B》×(8の1乗)+グループ内復調値《A》×(8の0乗)となる。例えば、シリンダ31の復調値は(0×1)+(3×8)+(7×1)=31となる。以後の説明では、図3のグループ内復調値《A》〜《C》は元グループ内復調値《A》〜《C》と呼ぶ。
【0035】
図4(a)は、図3に示した第1、第2、及び第3の3つのビットマップA〜Cから、この出願の第1の実施例の第1、第2、及び第3の3つのビットマップA1〜C1を作る方法を示すものである。また、図4(b)は図4(a)に示した方法によって作られたこの出願の第1の実施例の第1、第2、及び第3の3つのビットマップA1〜C1を示すものである。なお、図4(b)では、ビットマップA1〜C1における“1”と“0”で示されるデータ値(A)〜(C)を丸付A〜丸付Cで示し、データ値(A)〜(C)の新グループ内復調値〔A〕〜〔C〕を楕円付A〜楕円付Cで示す。更に、ビットマップA1〜C1において得たい元グループ内復調値を《A》〜《C》とし、これを四角で囲んだA〜Cで示す。
【0036】
まず、第1のビットマップA1は、図3に示した第1のビットマップAと同じにする。従って、第1のビットマップA1では、元グループ内復調値《A》は新グループ内復調値〔A〕と同じであり、データ値(A)も同じである。次に、第2のビットマップB1は、図4(b)に示した第1のビットマップA1に基づいて、ある規則に基づいて以下のようにして作成する。即ち、第1のビットマップA1の新グループ内復調値〔A〕に第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕を加えたものが、第2のビットマップB1の元グループ内復調値《B》になるように、第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕を作成する。つまり、〔A〕+〔B〕=《B》になるように第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕を作成する。新グループ内復調値〔B〕を作成できれば、データ値(B)も作成することができる。
【0037】
このようにして第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕とデータ値(B)が求められた後に、第3のビットマップC1を作成する。第3のビットマップC1は、図4(b)のように作成された第2のビットマップB1に基づいて、ある規則に基づいて以下のようにして作成する。即ち、第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕に第3のビットマップC1の新グループ内復調値〔C〕を加えたものが、第3のビットマップC1の元グループ内復調値《C》になるように、第3のビットマップC1の新グループ内復調値〔C〕を作成する。つまり、〔B〕+〔C〕=《C》になるように第3のビットマップC1の新グループ内復調値〔C〕を作成する。新グループ内復調値〔C〕を作成できれば、データ値(C)も作成することができる。
【0038】
図5(a)は、図4(a)に示した方法により、図4(b)に示した第1、第2、第3のビットマップA1,B1,C1をまとめた9ビット32シリンダ分のビットマップを示すものである。また、図5(b)は図5(a)のビットマップに基づいて、サーボパターン領域のアドレス部に形成した9ビット構成のドットパターンを示すものである。第1の実施例では、ビットの配置変化が激しい下位ビットを利用して、上位ビットを含めた全ビットがパターン化されているので、ビットマップ上にドット41の多くの集合部分が見られなくなり、保持力Hcが大きくなって磁化反転の耐性が向上する。
【0039】
なお、図5(b)に示されるドットを読み出して得られた図5(a)に示されるデータは、前述の規則に基づいて復調し、第1のビットマップA1の部分の元グループ内復調値《A》は新グループ内復調値〔A〕をそのまま採用する。一方、第2のビットマップB1のデータ内元復調値《B》は、第1のビットマップA1の新グループ内復調値〔A〕に第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕を加えることによって得られる。また、第3のビットマップC1の元グループ内復調値《C》は第2のビットマップB1の新グループ内復調値〔B〕に第3のビットマップC1の新グループ内復調値〔C〕を加えることによって得られる。
【0040】
図6(a)は、図3に示した第1、第2、及び第3の3つのビットマップA〜Cから、この出願の第2の実施例の第1、第2、及び第3の3つのビットマップA2〜C2を作る方法を示すものである。また、図6(b)は図6(a)に示した方法によって作られたこの出願の第2の実施例の3ビット32シリンダ分の第1、第2、及び第3の3つのビットマップA2〜C2を示す図である。なお、図6(b)でも、ビットマップA2〜C2における“1”と“0”で示されるデータ値(A)〜(C)を丸付A〜丸付Cで示し、データ値(A)〜(C)の新グループ内復調値〔A〕〜〔C〕を楕円付A〜楕円付Cで示す。更に、ビットマップA2〜C2において得たい元グループ内復調値を《A》〜《C》とし、これを四角で囲んだA〜Cで示す。
【0041】
まず、第1のビットマップA2は、図3に示した第1のビットマップAと同じにする。従って、第1のビットマップA2では、新グループ内復調値〔A〕は元グループ内復調値《A》と同じであり、データ値(A)も同じである。次に、第2のビットマップB2は、図6(a)に示した第1のビットマップA2に基づいて、ある規則に基づいて以下のようにして作成する。即ち、第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕から第1のビットマップA2の新グループ内復調値〔A〕を引いたものが、第2のビットマップB2の元グループ内復調値《B》になるように、第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕を作成する。つまり、〔B〕−〔A〕=《B》になるように第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕を作成する。新グループ内復調値〔B〕を作成できれば、データ値(B)も作成することができる。
【0042】
このようにして第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕とデータ値(B)が求められた後に、第3のビットマップC2を作成する。第3のビットマップC2は、図6(b)のように作成された第2のビットマップB2に基づいて、ある規則に基づいて以下のようにして作成する。即ち、第3のビットマップC2の新グループ内復調値〔C〕から第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕を引いたものが、第3のビットマップC2の元グループ内復調値《C》になるように、第3のビットマップC2の新グループ内復調値〔C〕を作成する。つまり、〔C〕−〔B〕=《C》になるように第3のビットマップC2の新グループ内復調値〔C〕を作成する。新グループ内復調値〔C〕を作成できれば、データ値(C)も作成することができる。
【0043】
図7は、図6(a)に示した方法により、図6(b)に示した第1、第2、第3のビットマップA2,B2,C2をまとめた9ビット32シリンダ分のビットマップを示すものである。また、図7のビットマップに基づいて、サーボパターン領域のアドレス部に形成した9ビット構成のドットパターンの図示は省略する。第2の実施例でも、ビットの配置変化が激しい下位ビットを利用して、上位ビットを含めた全ビットがパターン化されているので、ビットマップ上にドット41の多くの集合部分が見られなくなり、保持力Hcが大きくなって磁化反転の耐性が向上する。
【0044】
なお、図7に示されるデータも、前述の規則に基づいて復調し、第1のビットマップA2の部分の元グループ内復調値《A》は新グループ内復調値〔A〕をそのまま採用する。一方、第2のビットマップB2の元グループ内復調値《B》は、第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕から第1のビットマップA2の新グループ内復調値〔A〕を引くことによって得られる。また、第3のビットマップC2の元グループ内復調値《C》は、第3のビットマップC2の新グループ内復調値〔C〕から第2のビットマップB2の新グループ内復調値〔B〕を引くことによって得られる。
【0045】
次に、本出願の第3の実施例を説明するが、第3の実施例は、第1と第2の実施例とデータのビットマップ上への分散のさせ方が異なる。第3の実施例では、図8(a)に示すように、図2(b)の32シリンダ分のビットマップを、第1と第2と第3の3つのビットマップA,B,Cに分割する以外に、シリンダ方向に8シリンダずつの4つのグループP、Q、R、Tに分割する。この結果、9ビット32シリンダのビットマップは、3ビット8シリンダ分のデータを備える12個のセグメントに分割される。12個のセグメントは図8(a)に示すように、セグメントAP,BP,CP、AQ,BQ,CQ,AR,BR,CR,AT、BT,CTである。
【0046】
そして、第3の実施例では、図8(b)に示すように、グループPとグループTのセグメントAP,BP,CPとセグメントAT、BT,CTはそのままにするが、グループQのセグメントAQ,BQ,CQとグループRのセグメントAR,BR,CRは同じグループ内で入れ替える。第3の実施例では、例えばグループQにおいて、セグメントAQをセグメントBQの位置に、セグメントBQをセグメントCQの位置に、セグメントCQをセグメントAQの位置に移し換える。また、グループRにおいて、セグメントARをセグメントCRの位置に、セグメントBRをセグメントARの位置に、セグメントCRをセグメントBQの位置に移し換える。
【0047】
図9(a)は前述の第3の実施例の方法によって作成された第1と第2と第3の3つのビットマップA3,B3,C3を示すものであり、図9(b)は図9(a)に示した第1と第2と第3の3つのビットマップA3,B3,C3をまとめた9ビット32シリンダ分のビットマップを示すものである。このように、第3の実施例の方法によっても、作成されたビットマップの上に、ドット41の大きな集合部分が見られなくなり、保持力Hcが大きくなって磁化反転の耐性が向上する。
【0048】
なお、図9(b)に示されるデータは、グループPとグループTのセグメントAP,BP,CPとセグメントAT、BT,CTは、データをそのまま復調する。また、グループQのセグメントAQ,BQ,CQとグループRのセグメントAR,BR,CRは同じグループ内でデータが入れ換えられている。そこで、グループQのセグメントAQ,BQ,CQとグループRのセグメントAR,BR,CRについては、入れ換えた規則に応じて読み出したセグメント単位のデータの順番を入れ換える。セグメント単位のデータの順番は、セグメント順番フラグとしてビットマップのどこかに記憶させておけば良い。
【0049】
図10(a)はこの出願の第3の実施例を実施するに際して、サーボパターン領域のアドレス部に追加するセグメント順番フラグとシリンダ値情報(前述のセグメントの順番の情報)の関係を示すものである。セグメント順番フラグには、そのグループのセグメントの読み出し順が記載されているので、読み出した各セグメントのデータは、この読み出し順に従って復調すれば、元のデータが得られる。
【0050】
なお、図9(b)に示した各セグメントを磁気ディスク上にビットとしてレイアウトする場合に、各セグメントの間に冗長間隔をとることができる。すると、各セグメントの間に冗長間隔がない場合は図10(b)に示すように、磁化の向きが同じ磁性ドットでは磁束がぶつかりあう。一方、各セグメントの間に冗長間隔をとると、図10(c)に示すように、磁化の向きが同じ磁性ドットでは、セグメントの間に冗長間隔がある部分では、図10(b)に示すように、冗長間隔がある部分のドットにおける磁束が弱くなり、磁場の影響が小さくなって磁化反転の可能性が小さくなる。
【0051】
図10(d)は図10(a)に示したセグメント順番フラグの位置を変更した場合のセグメント順番フラグとシリンダ値情報の関係を示すものである。このように、セグメント順番フラグの位置は、シリンダ値情報の前後に配置しても、シリンダ情報の間に配置しても良い。更に、図10(e)は図10(a)に示したサーボパターン領域のアドレス部に、セグメント順番フラグに加えて付加情報を追加した場合の実施例を示すものである。付加情報とは、サーボ情報やアドレス情報以外の情報である。
【0052】
なお、以上説明した第3の実施例では、セグメントは各グループ内でのみ移動させているが、セグメントの移動先を明確にさえしておけば、セグメントの移動はグループ内に限定されず、どのセグメント同士を入れ換えても差し支えない。
【0053】
図11(a)はこの出願の第4の実施例を示すものである。第3の実施例では、図8(a)で説明したように、ビットマップをシリンダ方向に更に4つのグループP、Q、R、Tに分割して12個のセグメントを作り、各グループ内でセグメントを移動してデータを分散した。一方、第4の実施例では、図11(a)に示すように、ビットマップをシリンダ方向に8シリンダずつの4つのグループP、Q、R、Tに分割し、各グループ内のシリンダでビットをシフトし、シフト数をシリンダ数が大きくなるにつれて1つずつ増やしている。そして、ビットマップからはみ出た部分のデータはビットマップ内の空いた領域に戻して、図11(b)に示すようなビットマップを作成している。この方法によっても、ビットマップ上のデータの大きな集合部分を、ビットマップ上に分散することができる。
【0054】
また、前述の第4の実施例の変形例として、4つのグループP、Q、R、T内におけるビットのシフト量をランダムに行っても良い。更に、ビットマップをグループに分けることなく、各シリンダにおけるビットのシフト量をランダムにしても良い。ただし、ビットマップにおける各シリンダのビットのシフト量は規則で予め定めて置き、データビットがサーポパターン上に分散して配置されたサーボパターン領域から読み出したデータは、この規則によって元のサーボデータに復調できなければならない。このようなサーポパターン部から読み出したデータの復調は、図1(a)に示した制御回路10が行うようにすれば良い。
【0055】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本発明の容易な理解のために、本発明の具体的な形態を以下に付記する。
【0056】
(付記1) 記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報を前記横軸方向に複数に分断してグループを作り、各グループを独立ビットマップとして扱って、各グループ毎の前記元アドレス情報から求めた復調値を元グループ内復調値とし、
最も下位のグループは、その新アドレス情報として元アドレス情報をそのまま維持し、前記元アドレス情報に基づく前記元グループ内復調値を新グループ内復調値とし、
或るグループの新アドレス情報は、1つ下位のグループの新グループ内復調値と、前記或るグループの新アドレス情報に基づく新グループ内復調値の論理演算結果が、前記或るグループの元グループ内復調値になるように演算して求め、
得られた各グループの新アドレス情報を統合したビットマップ上の新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。(1)
(付記2) 前記論理演算が論理和又は論理差であることを特徴とする付記1に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。(2)
(付記3) 記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報を前記横軸方向に複数に分断すると共に、前記縦軸方向にも複数に分断して、同数のアドレス情報を備えたセグメントを作成し、
前記セグメントの位置を所定の規則に基づいてビットマップ上で移動することによって、ビットマップ上に新アドレス情報を作成し、
得られた新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。(3)
(付記4) 前記セグメントの位置の移動が、前記縦方向に分断したグループ内だけで行われることを特徴とする付記3に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
(付記5) 前記セグメントの位置の移動情報が、前記サーボパターンの前、又は後ろの部分にパターン化されて設けられていることを特徴とする付記3又は4に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【0057】
(付記6) 前記サーボパターンが半径方向に複数のグループに分断され、前記セグメントの位置の移動情報が、前記分断されたグループの間の領域にパターン化されて設けられていることを特徴とする付記3又は4に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
(付記7) 前記サーボパターンが半径方向に複数のグループに分断され、前記分断されたグループの間の領域に、他のサーボ情報がパターン化されて挿入されていることを特徴とする付記3から6の何れかに記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
(付記8) 前記サーボパターンが半径方向に複数のグループに分断され、前記分断されたグループの間の領域にビットが形成されない冗長間隔が設けられていることを特徴とする付記3から7の何れかに記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
(付記9) 記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録されるアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報に対して、各シリンダに属する元アドレス情報を、前記シリンダ毎に所定の規則で並べ換えて前記ビットマップ上に新アドレス情報を作成し、
得られた新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。(4)
(付記10) 前記所定の規則が、
前記元アドレス情報に対して、各シリンダに属する元アドレス情報を、前記シリンダ番号の若い方から順に、1ビットずつ上位方向にシフトし、シフトによって前記ビットマップから押し出されたアドレス情報は、シフトによって空いたアドレスに順次移動し、
シフトが各シリンダの最上位ビットに及んだ場合は最下位ビットから1ビットずつのシフトを繰り返して新ビットマップを作成するものであることを特徴とする付記9に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【0058】
(付記11) 付記1から付記9のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法を用いてサーボ領域に予めドットパターンが形成された記憶媒体と、
前記記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、前記記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、
前記磁気ヘッドから読み出された前記サーボパターンの復調信号を、前記サーボパターンが形成された時の規則に基づいて、復調する復調回路とを備えることを特徴とする情報記憶装置。(5)
【符号の説明】
【0059】
4 磁気ディスク
9 ハードディスク装置
10 制御回路
AD アドレス部
D データ領域
LD 面積大のドット集合部分
PO ポジション部
S サーボパターン領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報を前記横軸方向に複数に分断してグループを作り、各グループを独立ビットマップとして扱って、各グループ毎の前記元アドレス情報から求めた復調値を元グループ内復調値とし、
最も下位のグループは、その新アドレス情報として元アドレス情報をそのまま維持し、前記元アドレス情報に基づく前記元グループ内復調値を新グループ内復調値とし、
或るグループの新アドレス情報は、1つ下位のグループの新グループ内復調値と、前記或るグループの新アドレス情報に基づく新グループ内復調値の論理演算結果が、前記或るグループの元グループ内復調値になるように演算して求め、
得られた各グループの新アドレス情報を統合したビットマップ上の新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【請求項2】
前記論理演算が論理和又は論理差であることを特徴とする請求項1に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【請求項3】
記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報を前記横軸方向に複数に分断すると共に、前記縦軸方向にも複数に分断して、同数のアドレス情報を備えたセグメントを作成し、
前記セグメントの位置を所定の規則に基づいてビットマップ上で移動することによって、ビットマップ上に新アドレス情報を作成し、
得られた新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【請求項4】
記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録されるアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報に対して、各シリンダに属する元アドレス情報を、前記シリンダ毎に所定の規則で並べ換えて前記ビットマップ上に新アドレス情報を作成し、
得られた新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れかのパターンド媒体のサーボパターンの配置方法を用いてサーボ領域に予めドットパターンが形成された記憶媒体と、
前記記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、前記記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、
前記磁気ヘッドから読み出された前記サーボパターンの復調信号を、前記サーボパターンが形成された時の規則に基づいて、復調する復調回路とを備えることを特徴とする情報記憶装置。
【請求項1】
記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報を前記横軸方向に複数に分断してグループを作り、各グループを独立ビットマップとして扱って、各グループ毎の前記元アドレス情報から求めた復調値を元グループ内復調値とし、
最も下位のグループは、その新アドレス情報として元アドレス情報をそのまま維持し、前記元アドレス情報に基づく前記元グループ内復調値を新グループ内復調値とし、
或るグループの新アドレス情報は、1つ下位のグループの新グループ内復調値と、前記或るグループの新アドレス情報に基づく新グループ内復調値の論理演算結果が、前記或るグループの元グループ内復調値になるように演算して求め、
得られた各グループの新アドレス情報を統合したビットマップ上の新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【請求項2】
前記論理演算が論理和又は論理差であることを特徴とする請求項1に記載のパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【請求項3】
記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録したいアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報を前記横軸方向に複数に分断すると共に、前記縦軸方向にも複数に分断して、同数のアドレス情報を備えたセグメントを作成し、
前記セグメントの位置を所定の規則に基づいてビットマップ上で移動することによって、ビットマップ上に新アドレス情報を作成し、
得られた新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【請求項4】
記録層にサーボ領域とデータ領域の各ビットが離間して配置されるビットパターンド型の記憶媒体のサーボパターンの配置方法であって、
前記サーボ領域のアドレス部に記録されるアドレス情報を、前記記憶媒体の半径方向を横軸、シリンダ方向を縦軸とするビットマップ上に展開して元アドレス情報とし、
前記元アドレス情報に対して、各シリンダに属する元アドレス情報を、前記シリンダ毎に所定の規則で並べ換えて前記ビットマップ上に新アドレス情報を作成し、
得られた新アドレス情報に基づいて、前記サーボ領域のビットの配置パターンを定めることを特徴とするパターンド媒体のサーボパターンの配置方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れかのパターンド媒体のサーボパターンの配置方法を用いてサーボ領域に予めドットパターンが形成された記憶媒体と、
前記記憶媒体に対してデータの記録と再生を行う磁気ヘッドを保持し、前記記憶媒体の半径方向に前記磁気ヘッドを移動させるアクチュエータと、
前記磁気ヘッドから読み出された前記サーボパターンの復調信号を、前記サーボパターンが形成された時の規則に基づいて、復調する復調回路とを備えることを特徴とする情報記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−225210(P2010−225210A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69022(P2009−69022)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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