説明

パターン形成方法及び液滴吐出装置

【課題】インクの補充を生産性良く行う描画方法を提供する。
【解決手段】本体部2上に表示マーク7と表示マーク7を囲む背景マーク8とを形成するパターン形成方法にかかわる。表示マーク7を第1着色液で描画し、背景マーク8を第2着色液で描画する第1描画工程と、表示マーク7を第2着色液で描画し、背景マーク8を第1着色液で描画する第2描画工程と、を有する。第1描画工程において表示マーク7及び背景マーク8を描画した描画回数を検出し、描画回数が15回に達したとき、第1描画工程から第2描画工程に移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法及び液滴吐出装置にかかわり、特に、主パターンの周囲に副パターンを形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品の表面に製品コードや型番等のパターンを形成することが広く行われている。半導体装置においてはレーザー光を照射する方法やインクジェット法を用いてマークが形成されている。半導体パッケージが薄いときには半導体装置にダメージを与える可能性が少ないインクジェット法が採用されることが多い。
【0003】
インクジェット法装置では吐出された液滴が定着し易くするためにパターンを形成する面に親液性の処理をする等の工夫がなされる。しかし、親液性の面では着弾した着色液の液滴が濡れ広がり易いので、パターンの輪郭がぼやけるという課題があった。この課題の解決方法が特許文献1に開示されている。これによるとマークの輪郭部を描画する工程と、輪郭部に囲まれた領域を描画する工程とを有することで、マークの輪郭がぼやけることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−190297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクに消費期限が設定されている場合には消費期限を過ぎたインクは廃棄される。そこで、省資源なインク消費方法が望まれていた。また、マークと輪郭部とには異なる色調のインクが用いられる。そして、マークと輪郭部とは面積が異なることが多いので、マークを形成するインクと輪郭部を形成するインクの消費量が異なる。これにより、マークを形成するインクを補充する時期と輪郭部を形成するインクを補充する時期が異なっている。従って、インクを補充する回数が多くなっていた。そこで、インクの補充を生産性良く行う方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかるパターン形成方法は、基材上に主パターンと前記主パターンを囲む副パターンとを形成するパターン形成方法であって、前記主パターンを第1着色液で描画し、前記副パターンを第2着色液で描画する第1描画工程と、前記主パターンを前記第2着色液で描画し、前記副パターンを前記第1着色液で描画する第2描画工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
このパターン形成方法によれば、第1描画工程と第2描画工程とでは主パターンに用いる着色液と副パターンに用いる着色液とが異なっている。主パターンと副パターンとにおける着色液の消費量が異なるときには第1描画工程だけを行うと消費量の多い着色液を先に補充する必要がある。続いて、残量の無くなる毎に着色液が順次補充される。本適用例では、第1描画工程と第2描画工程とを行っている。従って、消費量の多い着色液が切り替わる為、第1着色液と第2着色液とを補充する時期を同じ時期に調整することができる。その結果、着色液を補充する回数を減らすことができる為、着色液の補充を生産性良く行うことができる。
【0009】
[適用例2]
上記適用例にかかるパターン形成方法において、前記第1描画工程における処理量を検出し、前記処理量が所定の量に達したとき、前記第1描画工程から前記第2描画工程に移行することを特徴とする。
【0010】
このパターン形成方法によれば、処理量を検出している。処理に伴って着色液が消費されるので処理量を検出することにより着色液の消費量を推定することができる。着色液の残量は消費する前の着色液の量から消費した量を減算することにより算出が可能である。従って、処理量を検出することにより着色液の残量を推定することができる。
【0011】
[適用例3]
上記適用例にかかるパターン形成方法において、前記処理量は前記主パターン及び前記副パターンを描画した回数であり、前記主パターン及び前記副パターンを所定の回数描画したときに前記第1描画工程から前記第2描画工程に移行することを特徴とする。
【0012】
このパターン形成方法によれば、主パターン及び副パターンを描画した回数を検出している。主パターン及び副パターンが所定のパターンのときには1回の描画で消費する着色液の消費量を推定することができる。着色液の残量は消費する前の着色液の量から消費した量を減算することにより算出が可能である。従って、描画した回数を検出することにより着色液の残量を推定することができる。
【0013】
[適用例4]
上記適用例にかかるパターン形成方法において、前記主パターン及び前記副パターンを描画する前記所定の回数は1回であり、前記主パターン及び前記副パターンを1回描画する毎に前記第1描画工程と前記第2描画工程とを繰り返すことを特徴とする。
【0014】
このパターン形成方法によれば、主パターン及び副パターンを1回描画する毎に描画に用いる第1着色液と第2着色液とを入れ替えている。従って、第1着色液と第2着色液との残量の差の変化を1回の描画における消費量の差にすることができる。その結果、第1着色液と第2着色液との残量の差が広がらないようにすることができる。
【0015】
[適用例5]
上記適用例にかかるパターン形成方法において、前記主パターン及び前記副パターンは収納容器に収納された前記第1着色液及び前記第2着色液を用いて描画され、前記第1着色液及び前記第2着色液の残量を検出し、前記残量の差が所定の量に達したとき、前記第1描画工程から前記第2描画工程に移行することを特徴とする。
【0016】
このパターン形成方法によれば、第1着色液及び第2着色液の残量を検出している。そして、残量の差が所定の量に達したとき、主パターンと副パターンとに用いる第1着色液と第2着色液とを入れ替えている。これにより、第1着色液と第2着色液との残量の差が小さくなるようにすることができる。その結果、第1着色液及び第2着色液の残量を所定の量以内に維持することができる。
【0017】
[適用例6]
本適用例にかかる液滴吐出装置は、基材に向けて第1着色液と第2着色液とを液滴にして吐出し、主パターンと前記主パターンを囲む副パターンとを形成する液滴吐出装置であって、前記第1着色液と前記第2着色液とをそれぞれ収納する収納容器と、前記収納容器内の前記第1着色液と前記第2着色液との各残量を検出する残量検出部と、前記主パターンと前記副パターンとに吐出する前記液滴の材料を前記第1着色液と前記第2着色液とから設定する制御部と、を備え、前記残量検出部が検出する前記第1着色液と前記第2着色液との前記残量の差を参照して前記制御部は前記主パターンと前記副パターンとに吐出する前記液滴の前記材料を設定することを特徴とする。
【0018】
この液滴吐出装置によれば、収納容器に第1着色液と第2着色液とがそれぞれ収納されている。この第1着色液と第2着色液の残量を残量検出部が検出する。残量検出部が検出する第1着色液と第2着色液との残量の差を制御部が参照する。そして、制御部は主パターンと副パターンとに吐出する液滴の材料を設定する。
【0019】
主パターンと副パターンとを描画するときに主パターンに吐出する液滴の材料と副パターンに吐出する液滴の材料の消費量が異なるときがある。このときには液滴の材料を切り替えることにより第1着色液と第2着色液との消費量が入れ替わる。従って、残量の多い材料を消費量の多いパターンに設定することにより第1着色液と第2着色液との残量の差を小さくすることができる。そして、第1着色液と第2着色液との消費量を調整することにより、第1着色液と第2着色液とを補充する時期を同じ時期にすることができる。その結果、着色液を補充する回数を減らすことができる為、着色液の補充を生産性良く行うことができる。
【0020】
[適用例7]
本適用例にかかる液滴吐出装置は、基材に向けて第1着色液と第2着色液を液滴にして吐出し、主パターンと前記主パターンを囲む副パターンとを形成する液滴吐出装置であって、前記主パターンと前記副パターンとに吐出する前記液滴の材料を前記第1着色液と前記第2着色液とから設定する制御部を備え、前記制御部は前記液滴を吐出する処理量を検出して前記処理量が所定の前記処理量となるとき前記主パターンと前記副パターンとに吐出する前記液滴の前記材料を切り替えることを特徴とする。
【0021】
この液滴吐出装置によれば、制御部は液滴を吐出する処理量を検出する。そして、処理量が所定の処理量となるとき、制御部は主パターンと副パターンとに吐出する液滴の材料を切り替える。主パターンと副パターンとを1回描画するときの着色液の消費量が異なるとき、材料を切り替えることにより1回描画するときの第1着色液と第2着色液との消費量が入れ替わる。これにより第1着色液と第2着色液との残量の差を小さくすることができる。そして、第1着色液と第2着色液との消費量を調整することにより、第1着色液と第2着色液とを補充する時期を同じ時期にすることができる。その結果、着色液を補充する回数を減らすことができる為、着色液の補充を生産性良く行うことができる。
【0022】
[適用例8]
本適用例にかかるパターン形成方法は、基材上に主パターンと前記主パターンを囲む副パターンとを形成するパターン形成方法であって、前記主パターンを第1着色液で描画し、前記副パターンを第2着色液で描画する描画工程を有し、前記第1着色液及び前記第2着色液の各前記着色液には消費期限が設定され、前記主パターンと前記副パターンとのうち前記着色液の消費量が多い方に消費期限の残日数の少ない前記着色液を設定することを特徴とする。
【0023】
このパターン形成方法によれば、着色液の消費量が多い方に消費期限の残日数の少ない着色液が設定される。従って、消費期限の残日数の少ない着色液が消費期限の残日数の多い着色液より早く消費される。従って、消費期限に近いインクを消費期限内に消費する可能性を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態にかかわり、(a)は、半導体装置を示す概略斜視図、(b)は液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】(a)は、キャリッジを示す模式側面図、(b)は、キャリッジを示す模式平面図、(c)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図。
【図3】液滴吐出装置の電気制御ブロック図。
【図4】描画作業を示すフローチャート。
【図5】描画作業における吐出方法を説明するための模式図。
【図6】描画作業における吐出方法を説明するための模式図。
【図7】第2の実施形態にかかわる着色液の差の推移図。
【図8】第3の実施形態にかかわる着色液の残量の推移図。
【図9】第4の実施形態にかかわる描画パターンの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0026】
(第1の実施形態)
本実施形態では、半導体装置及び液滴吐出装置を説明する。次に、この液滴吐出装置を用いて半導体装置にマークを描画する本発明の特徴的な描画方法の例について、図1〜図6に従って説明する。液滴吐出装置に関しては様々な種類の装置があるが、インクジェット法を用いた装置が好ましい。インクジェット法は微小液滴の吐出が可能であるため、微細加工に適している。尚、以下の説明に用いた各図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0027】
(半導体装置)
図1(a)は、半導体装置を示す概略斜視図である。最初に、マークが形成された半導体装置1について図1(a)に従って説明する。半導体装置1は矩形の板状の基材としての本体部2を備えている。そして、半導体装置1の内部には半導体等により構成された回路基板が収納されている。この半導体装置1の本体部2はセラミックにより形成されているのでセラミックパッケージと呼ばれている。半導体装置1は図中上下方向が薄く形成され、図中上側の面を上面2aとし上面2aと隣接する図中右下及び左上の面を側面2bとする。側面2bには電極3が等間隔に配置されている。電極3は半導体装置1の内部に配置された回路基板と電気的に接続されている。
【0028】
上面2aには社名マーク4、機種コードマーク5、ロット番号マーク6の主パターンとしての表示マーク7が配置されている。社名マーク4は会社名を示すマークであり、例えば、図中では"EPSON"と記載されている。機種コードマーク5は半導体装置1の機能を示すコードと対応するマークであり、数字と文字の組み合わせにより構成される。機種コードマーク5は、例えば、図中では"1NBS"と記載されている。ロット番号マーク6は製造時に同一条件で製造する集団を示す識別番号のマークである。同一条件で製造する集団をロットと称し、ロット番号マーク6は、例えば、図中では"09139033"と記載されている。
【0029】
上面2aにおいて表示マーク7の周囲には副パターンとしての背景マーク8が形成されている。表示マーク7と背景マーク8とは異なる色に着色され、背景マーク8を背景として表示マーク7が判読可能になっている。例えば本実施形態では、背景マーク8が黒色で表示マーク7が白色の組合せの第1組合せと背景マーク8が白色で表示マーク7が黒色の組合せの第2組合せとの2つの組合せが形成される。本体部2及び各種マークの色の組合せは特に限定されず、各種マークが判読可能な色の組合せであれば良い。
【0030】
(液滴吐出装置)
図1(b)は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。液滴吐出装置9により、膜を構成する材料を含む着色液が吐出されて塗布される。図1(b)に示すように液滴吐出装置9は直方体形状に形成される基台10を備えている。本実施形態では、この基台10の長手方向をY方向とし、水平面内にてY方向と直交する方向をX方向とする。そして、鉛直方向をZ方向とする。
【0031】
基台10の上面10aには、Y方向に延びる一対の案内レール11が同Y方向全幅にわたり凸設されている。その基台10の上側には、一対の案内レール11に対応する図示しない直動機構を備えた移動部としてのステージ12が取付けられている。この直動機構の種類は、特に限定されないが、サーボモーターとボールネジとを組み合わせて構成することができる。他にも、リニアモーターを採用しても良い。このステージ12が移動するY方向を副走査方向とする。
【0032】
さらに、基台10の上面10aには、案内レール11と平行に副走査位置検出装置13が配置され、ステージ12のY方向の位置が計測できるようになっている。ステージ12の上面には載置面14が形成され、その載置面14には、図示しない吸引式の基板チャック機構が設けられている。操作者が載置面14に載置案内板15を載置して所定の位置に位置決めする。その後、基板チャック機構により載置案内板15は載置面14に固定される。
【0033】
載置案内板15上には15個の本体部2が配列して配置されている。載置案内板15には本体部2の外形形状と同じ形状の凹部が複数形成されている。そして、各凹部に本体部2が配置されている。凹部は載置案内板15上の所定の位置に形成されているので、凹部に配置される本体部2は所定の位置に配置される。
【0034】
基台10のX方向両側には、一対の支持台16が立設されている。その一対の支持台16には、X方向に延びる案内部材17が架設されている。案内部材17の下側には、X方向に延びる案内レール18がX方向全幅にわたり設置されている。そして、案内レール18に沿って略角柱状に形成された移動部としてのキャリッジ19が配置されている。キャリッジ19は直動機構を備え、X方向に走査移動することが可能になっている。この直動機構の種類は、特に限定されないが、例えば、リニアモーターを採用することができる。キャリッジ19が走査するX方向を主走査方向とする。案内部材17とキャリッジ19との間には、主走査位置検出装置20が配置され、キャリッジ19の位置が計測可能になっている。
【0035】
液滴を吐出するときに液滴吐出ヘッドと被吐出物とが相対移動する方向を主走査方向とする。そして、主走査方向と直交する方向を副走査方向とする。副走査方向は改行するときに液滴吐出ヘッドと被吐出物とが相対移動する方向である。本実施形態では主走査方向がX方向であり、副走査方向がY方向となっている。
【0036】
キャリッジ19の載置案内板15を向く側にはヘッドユニット21と一対の硬化ユニット22が配置されている。ヘッドユニット21の載置案内板15側には液滴を吐出する図示しない液滴吐出ヘッドが凸設されている。硬化ユニット22には吐出された液滴を硬化させる紫外線を照射する装置が配置されている。硬化ユニット22は主走査方向においてヘッドユニット21を挟んだ位置に配置されている。
【0037】
キャリッジ19の図中上側には収納容器としての収容タンク23が配置されている。収容タンク23には着色液が収容されている。ヘッドユニット21の液滴吐出ヘッドと収容タンク23とは図示しないチューブにより接続され、収容タンク23内の着色液がチューブを介して液滴吐出ヘッドに供給される。
【0038】
着色液は樹脂材料、光重合開始剤、溶媒を主材料とする。この主材料に顔料または染料等の色素や、親液性または撥液性等の表面改質材料等の機能性材料を添加することにより着色液が形成されている。着色液の樹脂材料は樹脂膜を形成する材料である。樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによりポリマーとなる材料であれば特に限定されない。さらに、粘性の小さい樹脂材料が好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。モノマーの形態であればさらに好ましい。光重合開始剤はポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤であり、例えば、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタールを用いることができる。溶媒は樹脂材料の粘度を調整するものである。着色液を液滴吐出ヘッドから吐出し易い粘度にすることにより、液滴吐出ヘッドは安定して着色液を吐出することができる。
【0039】
図2(a)は、キャリッジを示す模式側面図である。図2(a)に示すようにヘッドユニット21の載置案内板15側の面には2個の液滴吐出ヘッド26が配置されている。液滴吐出ヘッド26の個数は特に限定されず、吐出する着色液の種類に合わせて設定するのが良い。ヘッドユニット21と硬化ユニット22との間には一対のヘッド昇降装置27が配置されている。ヘッド昇降装置27はキャリッジ19に対してヘッドユニット21を昇降させる装置である。ヘッド昇降装置27はヘッドユニット21を昇降させることにより液滴吐出ヘッド26と本体部2との隙間を制御することができる。
【0040】
ヘッド昇降装置27はヘッドユニット21の移動方向を限定するガイドレールと直動機構とを備えている。直動機構は特に限定されないが、例えば、本実施形態ではボールねじとステップモーター等から構成されている。そして、ステップモーターに駆動パルス信号が入力されるとき、ステップモーターはボールねじを回転してヘッドユニット21をZ方向に昇降させる。
【0041】
キャリッジ19の上に配置された収容タンク23は第1タンク23aと第2タンク23bとから構成されている。第1タンク23aには黒色の着色液である第1着色液28が収納され、第2タンク23bには白色の着色液である第2着色液29が収納されている。
【0042】
2つの収容タンク23にはそれぞれ光透過性の材質からなる窓部30が収容タンク23から突出して形成されている。この窓部30を挟むように窓部30の両側には照明装置31と残量検出部としての液残量検出装置32が配置されている。照明装置31は蛍光灯やLED(Light Emitting Diode)等の発光素子を用いることができる。液残量検出装置32にはフォトトランジスターが直線状に配列されたラインセンサーが配置されている。照明装置31と液残量検出装置32との間に第1着色液28や第2着色液29が存在する場所では照明装置31が照射する光の一部は第1着色液28や第2着色液29に吸収される。照明装置31と液残量検出装置32との間に第1着色液28や第2着色液29が存在しない場所では照明装置31が照射する光の一部は第1着色液28や第2着色液29に吸収されずに液残量検出装置32を照射する。従って、液残量検出装置32が受光する光の分布により第1着色液28及び第2着色液29の液面の位置を検出することができる。
【0043】
図2(b)は、キャリッジを示す模式平面図である。図2(b)に示すようにキャリッジ19に配置されたヘッドユニット21には2個の液滴吐出ヘッド26が配置され、液滴吐出ヘッド26の下面には、それぞれノズルプレート33が備えられている。そのノズルプレート33には、それぞれ複数のノズル34がY方向に所定の間隔で配列されている。
【0044】
硬化ユニット22の本体部2と対向する面には吹出口35と照射窓36とが配置されている。硬化ユニット22の内部には温風装置と紫外光照射装置とが配置されている。温風装置は温風を形成する装置である。温風装置と吹出口35とが流路によって接続され、温風装置によって形成された温風は吹出口35から本体部2に着弾した液滴に向けて吹出される。そして、着弾した液滴の表面が乾燥される。紫外光照射装置は紫外光を照射する装置である。紫外光は照射窓36を通過して本体部2に着弾した液滴に向けて照射される。そして、着弾した液滴が硬化される。
【0045】
図2(c)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図である。図2(c)に示すように、ノズルプレート33の上側であってノズル34と相対する位置には、キャビティ37が形成されている。そして、キャビティ37には収容タンク23に貯留されている第1着色液28または第2着色液29が供給される。キャビティ37の上側には、上下方向に振動して、キャビティ37内の容積を拡大縮小する振動板38と、上下方向に伸縮して振動板38を振動させる圧電素子39が配設されている。
【0046】
液滴吐出ヘッド26が圧電素子39を制御駆動するためのノズル駆動信号を受けると、圧電素子39が上下方向に伸縮する。そして、圧電素子39は振動板38を振動させるので、振動板38と隣接するキャビティ37の容積が拡大縮小する。それにより、キャビティ37内に供給された着色液のうち縮小した容積分の着色液がノズル34を通り、液滴40となって吐出される。液滴吐出装置9はステージ12とキャリッジ19とを走査移動させる。そして、ノズル34が所定の場所に位置するときに液滴40を吐出することにより、所望のパターンを描画することができる。
【0047】
図3は、液滴吐出装置の電気制御ブロック図である。図3において、液滴吐出装置9は液滴吐出装置9の動作を制御する制御部としての制御装置43を備えている。そして、制御装置43はプロセッサーとして各種の演算処理を行うCPU(中央演算処理装置)44と、各種情報を記憶するメモリー45とを備えている。
【0048】
主走査駆動装置46、主走査位置検出装置20、副走査駆動装置47、副走査位置検出装置13は、入出力インターフェイス48及びデータバス49を介してCPU44に接続されている。さらに、液滴吐出ヘッド26を駆動するヘッド駆動回路50、ヘッド昇降装置27、液残量検出装置32、入力装置51、表示装置52も入出力インターフェイス48及びデータバス49を介してCPU44に接続されている。
【0049】
主走査駆動装置46はキャリッジ19を駆動する装置であり、副走査駆動装置47はステージ12を駆動する装置である。主走査位置検出装置20がキャリッジ19の位置を検出し、主走査駆動装置46がキャリッジ19を駆動することにより、キャリッジ19を所望の速度にて走査することが可能となっている。同じく、副走査位置検出装置13がステージ12の位置を検出し、副走査駆動装置47がステージ12を駆動することにより、ステージ12を所望の位置に移動して停止させることが可能になっている。
【0050】
ヘッド駆動回路50は液滴吐出ヘッド26を駆動する回路である。そして、CPU44が指示する駆動電圧、吐出数、吐出間隔等の吐出条件に従って、ヘッド駆動回路50は液滴吐出ヘッド26を駆動する。ヘッド昇降装置27はキャリッジ19に対してヘッドユニット21を昇降させる装置である。ヘッド昇降装置27はCPU44の指示信号を受信し、指示信号に従って本体部2とノズルプレート33との距離を制御する。液残量検出装置32もCPU44の指示信号を受信し、指示信号に従って着色液の残量を検出してCPU44へ出力する。
【0051】
入力装置51は液滴40を吐出する各種加工条件を入力する装置であり、例えば、本体部2に液滴40を吐出する座標を図示しない外部装置から受信し、入力する装置である。表示装置52は加工条件や作業状況を表示する装置であり、表示装置52に表示される情報を基に、操作者は入力装置51を用いて操作を行う。
【0052】
メモリー45は、RAM、ROM等といった半導体メモリーや、ハードディスク、DVD−ROMといった外部記憶装置を含む概念である。機能的には、液滴吐出装置9の動作の制御手順が記述されたプログラムソフト53を記憶する記憶領域や、本体部2上に吐出する液滴40の着弾位置の座標データである吐出位置データ54を記憶するための記憶領域が設定される。他にも、液滴吐出ヘッド26を駆動するときの駆動信号である駆動信号データ55を記憶するための記憶領域や、第1着色液28と第2着色液29とを吐出する場所を設定するときの判断に用いる描画色データ56を記憶するための記憶領域が設定される。他にも、CPU44のためのワークエリアやテンポラリーファイル等として機能する記憶領域やその他各種の記憶領域が設定される。
【0053】
CPU44は、メモリー45内に記憶されたプログラムソフト53に従って、本体部2の上面2aの所定位置に液滴40を吐出するための制御を行うものである。具体的な機能実現部として液滴吐出ヘッド26から液滴40を吐出して描画するための演算を行う描画制御部57を有する。
【0054】
描画制御部57を詳しく分割すれば、キャリッジ19を主走査方向へ所定の速度で走査移動させるための制御を演算する主走査制御部58と、本体部2を副走査方向へ所定の移動量で移動させるための制御を演算する副走査制御部59を有する。さらに、描画制御部57は液滴吐出ヘッド26内の複数あるノズル34から液滴40を吐出させるノズル34を選択する吐出制御部60等を有する。吐出制御部60は選択したノズル34に対応する圧電素子39を作動させて液滴40を吐出させる。
【0055】
他にも、CPU44は描画色制御部61を有する。描画色制御部61は本体部2に塗布する色の組合せを第1組合せと第2組合せとのどちらにするかを制御する。
【0056】
尚、本実施形態では、上記の各機能がCPU44を用いてプログラムソフトで実現することとしたが、上記の各機能がCPUを用いない単独の電子回路(ハードウェア)によって実現できる場合には、そのような電子回路を用いることも可能である。
【0057】
(液滴の吐出方法)
次に、上述した液滴吐出装置9を用いて、描画作業における液滴40の吐出方法について図4〜図6にて説明する。図4は、描画作業を示すフローチャートである。図5及び図6は、描画作業における吐出方法を説明するための模式図である。
【0058】
図4に示すフローチャートにおいて、ステップS1は、給材工程に相当する。この工程は、載置面に載置案内板を載置して固定する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、描画設定工程に相当する。この工程は、本体部に塗布する色の組合せを第1組合せと第2組合せとのどちらにするかを設定する工程である。第1組合せで行うときはステップS3に移行する。第2組合せで行うときはステップS4に移行する。ステップS3は第1描画工程に相当する。背景マークを黒色の第1着色液にて塗布した後に表示マークを白色の第2着色液にて描画する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS4は第2描画工程に相当する。背景マークを白色の第2着色液にて塗布した後に表示マークを黒色の第1着色液にて描画する工程である。次にステップS5に移行する。
【0059】
ステップS5は、液補充判断工程に相当する。この工程は、収容タンク内に第1着色液や第2着色液を補充するか補充しないかを判断する工程である。補充する判断をするとき、ステップS6に移行する。補充しない判断をするとき、ステップS7に移行する。ステップS6は、着色液補充工程に相当する。この工程は、収容タンクに着色液を補充する工程である。
【0060】
ステップS7は、終了判断工程に相当する。この工程は、描画作業を終了するかの判断をする工程である。描画する予定の本体部で描画していない本体部があるときステップS2に移行する。予定した総ての本体部にマークを描画したときステップS8に移行する。ステップS8は、除材工程に相当する。この工程は、載置面から載置案内板を除去して次工程へ移動する工程である。ステップS9は、固化工程に相当する。この工程は、塗布した着色液を固化させる工程である。以上により本体部2への描画作業を終了する。
【0061】
次に、図5及び図6を用いて、図4に示したステップと対応させて、描画作業における液滴の吐出方法を詳細に説明する。図5(a)は、ステップS1の給材工程に対応する図である。図5(a)に示すように、ステップS1において載置面14上に載置案内板15を載置する。そして、基板チャック機構を作動させることにより、載置案内板15を載置面14上に固定させる。載置案内板15上には15個の本体部2が所定の位置に載置されている。
【0062】
本体部2は予め着色液に対して親液性を有するように親液処理が行われている。親液処理の方法としては、エキシマランプや低圧水銀ランプによる紫外線照射、プラズマ照射、コロナ放電等により表面を改質する処理を用いることができる。
【0063】
ステップS2の描画設定工程では表示マーク7と背景マーク8とに塗布する着色液の色の組合せを設定する。この設定方法は第1着色液28の消費量と第2着色液29の消費量が同じ量になるように設定する。例えば本実施形態では処理量としての描画回数を判定描画回数と比較して判断する。第1組合せにて15回の描画を行った後に第2組合せにて描画を15回行う。続いて、第1組合せと第2組合せとを15回ずつ反復して実施する。尚、組合せを連続して行う回数は特に限定されないので製造上の利便性を考慮して設定しても良い。
【0064】
描画色制御部61は過去に実施した色の組合せを描画色データ56としてメモリー45に記憶する。そして、過去の直近の組合せが第1組合せであったときには第1組合せを連続して15回行ったかどうかを検出する。そして、第1組合せを連続して15回行っていないときには描画色制御部61は第1組合せにて描画する選択を行う。第1組合せを連続して15回行っていたときには描画色制御部61は第2組合せにて描画する選択を行う。
【0065】
同様に、過去の直近の組合せが第2組合せであったときには第2組合せを連続して15回行ったかどうかを検出する。そして、第2組合せを連続して15回行っていないときには描画色制御部61は第2組合せにて描画する選択を行う。第2組合せを連続して15回行っていたときには描画色制御部61は第1組合せにて描画する選択を行う。
【0066】
図5(b)〜図6(b)はステップS3の第1描画工程及びステップS4の第2描画工程に対応する図である。図5(b)に示すように、ステップS3及びステップS4において、主走査制御部58が液滴吐出ヘッド26を主走査方向に走査移動させながら吐出制御部60がノズル34から液滴40を吐出させる。続いて、着弾した液滴40に硬化ユニット22が紫外線64を照射しさらに温風65を吹き付ける。液滴40には光重合開始剤が添加されているので、これにより着弾した液滴40の表面は固化し本体部2上に固定される。そして、本体部2が配置してある場所の外側に液滴吐出ヘッド26が移動するとき副走査制御部59がステージ12を移動させて改行を行う。そして、描画制御部57は本体部2上に描画を行う。
【0067】
ステップS3では第1組合せの描画を行う。図5(c)に示すように、まず描画色制御部61は背景マーク8に黒色の第1着色液28を塗布する。このとき、表示マーク7を除いて第1着色液28が塗布される。塗布された第1着色液28は紫外線64の照射と温風65の吹付けにより固化される。続いて、図6(a)に示すように、描画色制御部61は表示マーク7に白色の第2着色液29を塗布する。塗布された第2着色液29は紫外線64の照射と温風65の吹付けにより固化される。これにより、本体部2には背景が黒色で文字が白色の第1組合せの描画パターンが形成される。
【0068】
表示マーク7と背景マーク8との境界を滲み難くしたいときには、第1着色液28と第2着色液29との一方を親水性の液状体にして他方を疎水性の液状体にする。これにより、表示マーク7に吐出される液滴40は背景マーク8と滲み難くすることができる。尚、表示マーク7と背景マーク8との境界における滲み具合が特に問題とならないときには、第1着色液28と第2着色液29との両方を親水性の液状体にしても良い。または、第1着色液28と第2着色液29との両方を疎水性の液状体にしても良い。
【0069】
ステップS4では第2組合せの描画を行う。図5(c)に示すように、まず描画色制御部61は背景マーク8に白色の第2着色液29を塗布する。このとき、表示マーク7を除いて第2着色液29が塗布される。塗布された第2着色液29は紫外線64の照射と温風65の吹付けにより固化される。続いて、図6(a)に示すように、描画色制御部61は表示マーク7に黒色の第1着色液28を塗布する。塗布された第1着色液28は紫外線64の照射と温風65の吹付けにより固化される。これにより、本体部2には背景が白色で文字が黒色の第2組合せの描画パターンが形成される。
【0070】
図6(b)は第1タンク23aにおける第1着色液28の残量と第2タンク23bにおける第2着色液29の残量との推移を示している。横軸は描画回数を示し右側が左側より多い回数となっている。尚、1回の描画回数で描画する範囲は特に限定されないが本実施形態では例えば1回の描画回数は1個の本体部2を描画することを示している。縦軸は着色液の残量を示し、上側が下側より多い残量となっている。第1残量線66は第1着色液28の残量の推移を示し、第2残量線67は第2着色液29の残量の推移を示している。
【0071】
描画回数が1〜15回の間では第1組合せの描画が行われる。従って、背景マーク8に第1着色液28が塗布され、表示マーク7に第2着色液29が塗布される。背景マーク8は表示マーク7より面積が広いので、第1着色液28は第2着色液29より多量に消費される。これにより、第1残量線66は第2残量線67より下向きに下降する。その結果、描画回数が15回のときには第1残量線66と第2残量線67との差が最大残量差68となる。
【0072】
描画回数が16〜30回の間では第2組合せの描画が行われる。従って、背景マーク8に第2着色液29が塗布され、表示マーク7に第1着色液28が塗布される。これにより、第2残量線67は第1残量線66より下向きに下降する。その結果、描画回数が30回のときには第1残量線66と第2残量線67との差が無くなる。
【0073】
描画回数が31〜45回の間では第1組合せの描画が行われる。従って、描画回数が45回のときには第1残量線66と第2残量線67との差が最大残量差68となる。続いて、描画回数が46〜60回の間では第2組合せの描画が行われる。従って、描画回数が60回のときには第1残量線66と第2残量線67との差が無くなる。このように第1組合せの描画と第2組合せの描画とが15回毎に交互に行われる。そして、第1残量線66と第2残量線67との差は最大残量差68以下の量となる。
【0074】
図6(c)はステップS5の液補充判断工程及びステップS6の着色液補充工程に対応する図である。ステップS5において制御装置43は前回第1着色液28及び第2着色液29を補充した後の描画回数を検出する。図6(c)において横軸、縦軸、第1残量線66及び第2残量線67は図6(b)と同じであり、横軸及び縦軸の表示範囲が広く設定されている。描画することにより収容タンク23内の第1着色液28及び第2着色液29の残量は減少する。従って、第1残量線66及び第2残量線67は右下がりの線となっている。そして、制御装置43は描画回数と液交換設定値69とを比較する。液交換設定値69は着色液を補充する判断をするための比較値である。描画回数が液交換設定値69と同じ回数となったとき、ステップS6の着色液補充工程へ移行する。液交換設定値69は収容タンク23の容量と消費量とを用いて設定すれば良く、本実施形態では例えば6000回に設定している。
【0075】
ステップS6の着色液補充工程では、予め調合しておいた第1着色液28及び第2着色液29をそれぞれ第1タンク23a及び第2タンク23bに補充する。取り外し可能に形成された予備の収容タンク23があるときには、事前に予備の収容タンク23に第1着色液28及び第2着色液29を充填しておいても良い。そして、ステップS6にて着色液の残量が少ない収容タンク23と着色液が充填された収容タンク23とを交換しても良い。この方法では短時間で着色液を補充することができる。着色液を収容タンク23に補充することにより第1残量線66及び第2残量線67は上昇し、第1描画工程及び第2描画工程を継続することが可能となる。
【0076】
ステップS7の終了判断工程では本体部2が搭載された載置案内板15を載置面14から除材するかの判断を行う。載置案内板15に搭載された総ての本体部2に背景マーク8と表示マーク7とを描画したとき載置案内板15を除材する決定をする。そして、ステップS8の除材工程にて操作者は載置案内板15を載置面14から外して次工程の作業を行う場所へ移動する。ステップS9の固化工程では本体部2が搭載された載置案内板15に紫外線が照射され、さらに本体部2に塗布された着色液は加熱乾燥される。そして、本体部2に吐出された液滴40は内部まで固化されて硬くなる。これにより、着色液により形成された表示マーク7の耐摩耗性及び密着性が向上する。
【0077】
紫外線の光源には、例えばメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等のランプaを用いることができる。より具体的には、Fusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているランプを用いることができる。加熱乾燥はヒーターにて加熱した空気を本体部2に吹き付けることにより行うことができる。以上の工程により本体部2への描画作業を終了する。
【0078】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ステップS3の第1描画工程とステップS4の第2描画工程とで表示マーク7に用いる着色液と背景マーク8に用いる着色液とを入れ替えている。そして、ステップS3とステップS4とを15回毎に交替して行っている。従って、消費量の多い場所に塗布する着色液が切り替わる為、第1着色液28と第2着色液29とを補充する時期を同じ時期にすることができる。その結果、着色液を補充する回数を減らすことができる為、着色液の補充を生産性良く行うことができる。
【0079】
(2)本実施形態によれば、制御装置43が描画回数を検出している。描画に伴って着色液が消費されるので描画回数により着色液の消費量を推定することができる。着色液の残量は描画によって消費する前の着色液の量から消費した量を減算することにより算出が可能である。従って、描画回数を検出することにより着色液の残量を推定することができる。
【0080】
(3)本実施形態によれば、載置案内板15に搭載された本体部2の個数と第1組合せから第2組合せに切り替えるまでに描画する本体部2の個数を同じ個数に設定している。これにより、載置案内板15に形成されるマークの色の組合せは同じ組合せにすることができる。その結果、マークの色の組合せを仕分けし易くすることができる。
【0081】
(第2の実施形態)
次に、マークを描画する本発明の特徴的な描画方法の一実施形態について図2、図3、図4及び図7の着色液の差の推移図を用いて説明する。
本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、描画回数でなく着色液の残量の差を検出して第1組合せと第2組合せとを切り替える点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0082】
すなわち、本実施形態では、ステップS2の描画設定工程において描画色制御部61は図2に示す液残量検出装置32を駆動させる。そして、描画色制御部61は第1タンク23a内の第1着色液28及び第2タンク23b内の第2着色液29の残量を検出する。
【0083】
図7において、横軸は描画回数の推移を示し、右側は左側より描画回数が多くなっている。縦軸は収容タンク23内に残っている第1着色液28と第2着色液29との残量の差を示す。縦軸の中央では着色液の残量の差が0であり、中央から離れるにしたがい残量の差が多くなる。そして、上側では第1着色液28の残量が第2着色液29の残量より多く、下側では第2着色液29の残量が第1着色液28の残量より多くなっている。
【0084】
着色液残量差推移線70は描画回数に対する着色液の残量の差の推移を示している。第1組合せにて描画を行うときには背景マーク8に第1着色液28を塗布し、表示マーク7に第2着色液29を塗布する。背景マーク8は表示マーク7より面積が広いので第2着色液29より第1着色液28を多く消費する。従って、第1組合せにて描画を行うときには着色液残量差推移線70は下降する。一方、第2組合せにて描画を行うときには背景マーク8に第2着色液29を塗布し、表示マーク7に第1着色液28を塗布する。従って、第2組合せにて描画を行うときには着色液残量差推移線70は上昇する。
【0085】
第1判定線71は、着色液残量差推移線70が高くなるときに比較する線である。ステップS4の第2描画工程において第2組合せの描画パターンの描画を行うときには着色液残量差推移線70が上昇する。そして、着色液残量差推移線70が第1判定線71に達するとき、描画色制御部61は描画パターンを第2組合せから第1組合せに切り替える。これにより、着色液残量差推移線70が下降する。
【0086】
第2判定線72は、着色液残量差推移線70が低くなるときに比較する線である。ステップS3の第1描画工程において第1組合せの描画パターンの描画を行うときには着色液残量差推移線70が下降する。そして、着色液残量差推移線70が第2判定線72に達するとき、描画色制御部61は描画パターンを第1組合せから第2組合せに切り替える。これにより、着色液残量差推移線70が上昇する。そして、描画色制御部61が第1組合せと第2組合せとを切替えて描画を行う。
【0087】
ステップS5の液補充判断工程ではCPU44が液残量検出装置32を駆動して第1着色液28と第2着色液29との残量を検出する。そして、残量が所定の比較判定量より少ないときにはステップS6の着色液補充工程に移行する。
【0088】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、描画色制御部61が第1組合せと第2組合せとを切り替えることにより着色液の残量の差を第1判定線71と第2判定線72との間に維持することができる。
【0089】
(2)本実施形態によれば、液残量検出装置32を駆動して第1着色液28と第2着色液29との残量を検出している。従って、着色液の残量が減ってきたときには警告音や光を発光して補充を促すことができる。その結果、確実に着色液の補充を実施することができる。
【0090】
(第3の実施形態)
次に、マークを描画する本発明の特徴的な描画方法の一実施形態について図8の着色液の残量の推移図を用いて説明する。
本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、1回描画する毎に描画色制御部61が第1組合せと第2組合せとを切り替える点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0091】
すなわち、本実施形態では、1つの本体部2に背景マーク8と表示マーク7とを描画する毎に描画色制御部61が第1組合せと第2組合せとを交替している。図8は第1タンク23aにおける第1着色液28の残量と第2タンク23bにおける第2着色液29の残量との推移を示している。横軸は描画回数を示し右側が左側より多い回数となっている。縦軸は着色液の残量を示し、上側が下側より多い残量となっている。第1残量線73は第1着色液28の残量の推移を示し、第2残量線74は第2着色液29の残量の推移を示している。
【0092】
描画回数が1回目のときには描画色制御部61は第1組合せの描画を行う。従って、背景マーク8に第1着色液28が塗布され、表示マーク7に第2着色液29が塗布される。背景マーク8は表示マーク7より面積が広いので、第1着色液28は第2着色液29より多量に消費される。これにより、第1残量線73は第2残量線74より下向きに下降する。その結果、描画回数が1回目のときには第1残量線73と第2残量線74との差が最大残量差75となる。
【0093】
描画回数が2回目では描画色制御部61は第2組合せの描画を行う。従って、背景マーク8に第2着色液29が塗布され、表示マーク7に第1着色液28が塗布される。これにより、第2残量線74は第1残量線73より下向きに下降する。その結果、2回目の描画が終了したときには第1残量線73と第2残量線74との差が無くなる。
【0094】
描画回数が3回目のときには描画色制御部61は第1組合せの描画を行う。従って、3回目の描画が終了したときには第1残量線73と第2残量線74との差が最大残量差75となる。続いて、描画回数が4回目のときには描画色制御部61は第2組合せの描画を行う。従って、4回目の描画が終了したときには第1残量線73と第2残量線74との差が無くなる。このように描画色制御部61は第1組合せの描画と第2組合せの描画とを1回毎に交互に行う。そして、第1残量線73と第2残量線74との差は最大残量差75以下の量となる。
【0095】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、1回描画する毎に描画色制御部61は第1組合せと第2組合せとを入れ替えている。従って、液滴吐出装置9は第1着色液28と第2着色液29との残量の差の変化を最大残量差75以下にすることができる。その結果、第1着色液と第2着色液との残量の差が広がらないようにすることができる。
【0096】
(第4の実施形態)
次に、マークを描画する本発明の特徴的な描画方法の一実施形態について図9の描画パターンの模式図を用いて説明する。
本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、背景マーク8を上面2a全体から表示マーク7を取り囲む部分に限定した点にある。尚、第1の実施形態または第2の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0097】
すなわち、本実施形態では、表示マーク7を取り囲む一部に背景マーク76が設定されている。例えば、社名マーク4及び機種コードマーク5ではマークの輪郭から所定の距離内に背景マーク76が設定されている。ロット番号マーク6ではロット番号マーク6を囲む四角の領域に背景マーク76が設定されている。これにより、背景マーク76の面積は第1の実施形態における背景マーク8より少ない面積にすることができる。
【0098】
表示マーク7と背景マーク76とを描画するときにも第1の実施形態〜第3の実施形態のいずれかの方法を用いて描画することができる。これにより、第1着色液28と第2着色液29との残量の差を小さくすることができる。
【0099】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、背景マーク76の面積は第1の実施形態における背景マーク8より少ない面積となっている。従って、背景マーク76に塗布する着色液の消費量を減らすことができる。さらに、背景マーク76を描画する時間を短縮することができる為、生産性良く描画することができる。
【0100】
(2)本実施形態によれば、第1の実施形態〜第3の実施形態の方法を用いて描画することができる。このとき、表示マーク7の面積と背景マーク76の面積との差が第1の実施形態〜第3の実施形態のときより少ない為、第1着色液28と第2着色液29との残量の差を小さくすることができる。
【0101】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、インクジェット法を用いて描画したが、描画方法はこれに限らない。注射器に着色液を入れて、注射器から着色液を出しながら注射器と本体部2とを相対移動させても良い。他にも、筆やフェルト等に着色液を含ませた筆記具を用意して、この筆記具と本体部2とを相対移動させながら摺動させても良い。この場合にも、第1組合せと第2組合せとを切り替えることにより第1着色液28と第2着色液29との残量の差を少なくすることができる。
【0102】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、着色液に光重合開始剤を含有させて、着弾した液滴40に紫外線を照射した。着弾した液滴40が固化し易いときには、着色液に光重合開始剤を含有させなくとも良い。そして、着弾した液滴40を乾燥させて固化しても良い。硬化ユニット22が不要となるので装置を簡略化することができる。また、硬化ユニット22が使用するエネルギーを減らせるので、省資源な装置にすることができる。
【0103】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、キャビティ37を加圧する加圧手段に、圧電素子39を用いたが、他の方法でも良い。例えば、コイルと磁石とを用いて振動板38を変形させて着色液を加圧しても良い。他に、キャビティ37内にヒーター配線を配置して、ヒーター配線を加熱することにより、着色液を気化させたり、着色液に含む気体を膨張させたりして加圧しても良い。他にも、静電気の引力及び斥力を用いて振動板38を変形させて着色液を加圧しても良い。前記実施形態と同様に着色液を塗布することができる。
【0104】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、表示マーク7に英数字が用いられたが、表示マーク7には各国で使用される文字の他、図案を用いることができる。この場合にも、第1組合せと第2組合せとを切り替えることにより第1着色液28と第2着色液29との残量の差を少なくすることができる。
【0105】
(変形例5)
前記第1の実施形態では、液残量検出装置32にはフォトトランジスターが直線状に配列されたラインセンサーを用いたが他の方法を用いても良い。液面に光線を照射して反射光を検出しても良い。他にも、着色液にフロートを浮かべてフロートの位置を検出しても良い。フロートの検出には、光学式、磁気式、静電容量式等の各種の近接センサーを採用することができる。
【0106】
(変形例6)
前記第1の実施形態では、本体部2に表示マーク7及び背景マーク8を描画して半導体装置1のマークを形成したが、マークを描画する対象は半導体装置1に限定されない。各種の電子機器やシート等の表面にマークを描画するときに上記の方法を用いることができる。
【0107】
(変形例7)
前記第1の実施形態では、描画回数を判定描画回数と比較して第1組合せと第2組合せとのいずれかの組合せにするかを判断した。組合せの判断には他の処理量を用いて判断しても良い。例えば、処理量を描画の累積時間とし、描画の累積時間を判定累積時間と比較して組合せの判断をしても良い。描画の累積時間と着色液の消費量との関係を調べることにより、描画の累積時間で着色液の消費量を推定することができる。
【0108】
他にも、処理量を累積吐出回数とし、累積吐出回数を用いて組合せを交替する判断をしても良い。1回の吐出にて消費する着色液の消費量を調べることにより、累積吐出回数で着色液の消費量を推定することができる。さらに、着色液を補充した直後の収容タンク23内の着色液の初期値を検出することにより、消費量から残量を算出することができる。これにより、着色液を補充する時期を判断することができる。
【0109】
(変形例8)
前記第1の実施形態では、着色液に消費期限が設定されていなかった。着色液に消費期限が設定されているときには、着色液の消費量が多い場所に消費期限の残日数の少ない着色液を塗布する設定にするのが好ましい。これにより、消費期限の残日数の少ない着色液が消費期限の残日数の多い着色液より早く消費される。従って、消費期限に近い着色液を消費期限内に消費する可能性を大きくすることができる。尚、変形例1〜変形例8の内容は第2の実施形態〜第4の実施形態にも適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
2…基材としての本体部、7…主パターンとしての表示マーク、8…副パターンとしての背景マーク、9…液滴吐出装置、23…収納容器としての収容タンク、28…第1着色液、29…第2着色液、32…残量検出部としての液残量検出装置、43…制御部としての制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に主パターンと前記主パターンを囲む副パターンとを形成するパターン形成方法であって、
前記主パターンを第1着色液で描画し、前記副パターンを第2着色液で描画する第1描画工程と、
前記主パターンを前記第2着色液で描画し、前記副パターンを前記第1着色液で描画する第2描画工程と、を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法であって、
前記第1描画工程における処理量を検出し、前記処理量が所定の量に達したとき、前記第1描画工程から前記第2描画工程に移行することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン形成方法であって、
前記処理量は前記主パターン及び前記副パターンを描画した回数であり、前記主パターン及び前記副パターンを所定の回数描画したときに前記第1描画工程から前記第2描画工程に移行することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン形成方法であって、
前記主パターン及び前記副パターンを描画する前記所定の回数は1回であり、前記主パターン及び前記副パターンを1回描画する毎に前記第1描画工程と前記第2描画工程とを繰り返すことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1に記載のパターン形成方法であって、
前記主パターン及び前記副パターンは収納容器に収納された前記第1着色液及び前記第2着色液を用いて描画され、
前記第1着色液及び前記第2着色液の残量を検出し、前記残量の差が所定の量に達したとき、前記第1描画工程から前記第2描画工程に移行することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
基材に向けて第1着色液と第2着色液とを液滴にして吐出し、主パターンと前記主パターンを囲む副パターンとを形成する液滴吐出装置であって、
前記第1着色液と前記第2着色液とをそれぞれ収納する収納容器と、
前記収納容器内の前記第1着色液と前記第2着色液との各残量を検出する残量検出部と、
前記主パターンと前記副パターンとに吐出する前記液滴の材料を前記第1着色液と前記第2着色液とから設定する制御部と、を備え、
前記残量検出部が検出する前記第1着色液と前記第2着色液との前記残量の差を参照して前記制御部は前記主パターンと前記副パターンとに吐出する前記液滴の前記材料を設定することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
基材に向けて第1着色液と第2着色液を液滴にして吐出し、主パターンと前記主パターンを囲む副パターンとを形成する液滴吐出装置であって、
前記主パターンと前記副パターンとに吐出する前記液滴の材料を前記第1着色液と前記第2着色液とから設定する制御部を備え、
前記制御部は前記液滴を吐出する処理量を検出して前記処理量が所定の前記処理量となるとき前記主パターンと前記副パターンとに吐出する前記液滴の前記材料を切り替えることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−189307(P2011−189307A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58827(P2010−58827)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】