説明

パターン膜形成部材、パターン膜形成部材の製造方法、電気光学装置、電子機器

【課題】隣接するパターン膜領域の液状体と混色することなく、所望の膜厚を有するパターン膜を形成する。
【解決手段】基材に区画して設けられた第1パターン膜領域に第1パターン膜の材料となる第1液状体を塗布する第1塗布工程と、前記第1塗布工程の後に、前記基材に区画して設けられた第2パターン膜領域に第2パターン膜の材料となる第2液状体を塗布する第2塗布工程と、前記第2塗布工程の後に、前記第1塗布工程において前記第1パターン膜領域に塗布された前記第1液状体の上に、新たに前記第1液状体を塗布する第3塗布工程と、前記第1液状体及び前記第2液状体を固化する固化工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン膜形成部材、パターン膜形成部材の製造方法、電気光学装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
パターン膜形成部材としてのカラーフィルタの製造方法は、例えば、インクジェット法を用いて、ガラス基材等に形成された区画部によって区画されたパターン膜領域に向けて、パターン膜の材料となる液状体を吐出する製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−281324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カラーフィルタのコントラストを調整するため、パターン膜としての色要素ごとに膜厚が異なる色素膜を形成する場合がある。ここで、所望の色素膜の厚みを得るためには、パターン膜領域内に区画部の高さ若しくはそれ以上の高さになるまで液状体を塗布する必要がある。そのため、パターン膜領域内に液滴を繰り返して吐出して、パターン膜領域内における液状体の塗布量を増加させていくこととなる。塗布された液状体は、表面張力により凝縮され、液状体の形状を維持することができるが、外力に対する抵抗力が低いので、例えば、吐出された液滴が既に塗布されている液状体に着弾した際、当該着弾の衝撃力によって液状体の表面張力が破壊され、液状体がパターン膜領域から決壊し、隣接するパターン膜領域の液状体と混じり合って混色を引き起こしてしまい、所望の膜厚を有する色素膜の形成が困難である、という課題があった。特に、近年のパターン膜領域の微細化に伴い、このような不具合が顕著に見られるようになっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法は、基材に区画して設けられた第1パターン膜領域に第1パターン膜の材料となる第1液状体を塗布する第1塗布工程と、前記第1塗布工程の後に、前記基材に区画して設けられた第2パターン膜領域に第2パターン膜の材料となる第2液状体を塗布する第2塗布工程と、前記第2塗布工程の後に、前記第1パターン膜領域に前記第1液状体を塗布する第3塗布工程と、前記第1液状体及び前記第2液状体を固化する固化工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、まず、第1パターン膜の材料となる第1液状体を第1パターン膜領域に塗布する(第1塗布工程)。その後、第2パターン膜の材料となる第2液状体を第2パターン膜領域に塗布する(第2塗布工程)。そして、再度、第1パターン膜領域に第1パターン膜の材料となる第1液状体を塗布する(第3塗布工程)。ここで、第1塗布工程から第3塗布工程までに第1液状体を塗布する時間のずれが生じる。当該時間のずれにより、第1塗布工程において塗布された第1液状体は増粘する。増粘された第1液状体の外力に対する抵抗力は、増粘されてない液状体に比べて向上する。従って、増粘された第1液状体の上に新たに第1液状体を塗布しても液状体全体の表面張力は維持され、液状体がパターン膜領域から決壊することが無く、第1パターン膜領域に多量の第1液状体を塗布することができる。よって、隣接するパターン膜領域の液状体と混色することなく、所望の膜厚を有するパターン膜を形成することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかるパターン膜形成部材において、前記第1パターン膜の膜厚は、前記第2パターン膜の膜厚よりも厚いことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第2パターン膜の膜厚よりも厚い第1パターン膜を形成する場合に、先に、第1パターン膜に対応する第1パターン膜領域から第1液状体を塗布する。ここで、膜厚を厚くするためには、第1パターン膜領域に対して第1液状体を比較的多量に塗布する必要がある。ただし、第1パターン膜領域に一度に第1液状体を塗布することは困難である。一度に第1液状体を塗布しようとすると、第1液状体の表面張力が途中で破壊し、隣接するパターン膜領域の液状体と混じり合って混色してしまうおそれがあるからである。そこで、まず、膜厚を最も厚くしたい第1パターン膜に対応する第1パターン膜領域に対して表面張力が破壊されない程度に第1液状体を塗布する。その後、第2パターン膜に対応する第2パターン膜領域に対して表面張力が破壊されない程度に第2液状体を塗布する。そして、再度、第1パターン膜領域に対して、先に塗布された第1液状体の上に、新たに第1液状体を塗布する。ここで、先に塗布された第1液状体は、新たに第1液状体を塗布されるまでに、時間間隔があるので僅かながらも増粘する。そうすると、先に塗布された第1液状体の上に新たに第1液状体を塗布しても、表面張力が維持され、第1パターン膜領域に対して多量の第1液状体を塗布することができる。従って、膜厚を厚くしようとするパターン膜に対応するパターン膜領域から塗布する塗布順序を規定することにより、容易に膜厚が異なる第1パターン膜と第2パターン膜を形成することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法は、前記第1塗布工程と前記第3塗布工程との間に、所定時間間隔を空けることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、第1塗布工程と第3塗布工程との間に所定時間間隔を空けることで、第1塗布工程において塗布された第1液状体の増粘状態を適切に管理することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法は、前記第1塗布工程における前記第1パターン膜領域には、色要素が青色系の前記第1液状体を塗布し、前記第2塗布工程における前記第2パターン膜領域には、色要素が緑色系または赤色系の前記第2液状体を塗布することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、緑色系または赤色系の色要素を有する第2パターン膜よりも膜厚が厚い青色系の色要素を有する第1パターン膜を形成することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかるパターン膜形成部材の製造方法は、前記第1塗布工程における前記第1液状体の塗布量は、前記第3塗布工程における前記第1液状体の塗布量よりも少量であることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1塗布工程において塗布された第1液状体が早く増粘されるので、第1塗布工程と第3塗布工程との時間差を短縮させることができる。
【0016】
[適用例6]本適用例にかかるパターン膜形成部材は、上記のパターン膜形成部材の製造方法よって製造されたことを特徴とする。
【0017】
これによれば、パターン膜に欠陥のない高品位のパターン膜形成部材を提供することができる。この場合、パターン膜形成部材は、例えば、カラーフィルタ、有機ELの部材、FED(電界放出ディスプレイ)の部材等がこれに該当する。
【0018】
[適用例7]本適用例にかかる電気光学装置は、上記のパターン膜形成部材を備えたことを特徴とする。
【0019】
このような電気光学装置によれば、信頼性の高いパターン膜形成部材を備えることができる。この場合、電気光学装置は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等がこれに該当する。
【0020】
[適用例8]本適用例にかかる電子機器は、上記の電気光学装置を搭載したことを特徴とする。
【0021】
このような電子機器によれば、信頼性の高い電気光学装置を搭載することができる。この場合、電子機器は、例えば、カラーフィルタや有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)を搭載したテレビ受像機、パーソナルコンピュータの他、各種の電子製品がこれに該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮小を異ならせて図示している。
【0023】
(パターン膜形成部材の構成)
まず、パターン膜形成部材の構成について説明する。なお、本実施形態では、パターン膜形成部材としてのカラーフィルタの構成について説明する。図1は、カラーフィルタの構成を示し、図1(a)は、平面図であり、同図(b)は、同図(a)のA−A断面図である。
【0024】
図1(a),(b)において、カラーフィルタ1は、基材10と、基材10の上に形成された区画部11と、区画部11によって区画されたパターン膜領域としての色素膜領域16に形成されたパターン膜としての色素膜14(R,G,B)と、区画部11と色素膜14(R,G,B)の上に形成された保護膜18等で構成されている。なお、本実施形態では、カラーフィルタ1の色調整のため、色素膜14の厚みが、色要素毎に異なり、第1色素膜14Bが他の第2色素膜14G、第3色素膜14Rの膜厚に比べ最も厚く、第1色素膜14B,第2色素膜14G,第3色素膜14Rの順に膜厚が薄くなるように形成されている。
【0025】
基材10は、透明性を有し、一般にガラス基材が用いられるが、他にプラスチック等も使用可能であり、カラーフィルタとしての透過率、強度等の必要特性を有するものであれば特に限定されるものではない。区画部11は、遮光性を有し、金属、樹脂等を用いることができる。
【0026】
(液滴吐出装置の構成)
次に、カラーフィルタ1の製造に用いられる液滴吐出装置の構成について説明する。本実施形態では、カラーフィルタ1の色素膜14の材料となる液状体を塗布する方法として、液滴吐出法を例に説明する。図2は、液滴吐出法を可能とする液滴吐出装置の構成を示す斜視図である。
【0027】
図2において、液滴吐出装置30は、色素膜14の材料となる液状体を液滴として吐出するヘッド部50を有するヘッド機構部32と、ヘッド部50から吐出された液滴の吐出対象である基材10を載置するワーク機構部33と、ヘッド部50に液状体を供給する材料供給部34と、ヘッド部50の保守を行うメンテナンス機構部35と、これら各機構部および供給部を統括的に制御する制御部36等を備えている。
【0028】
液滴吐出装置30は、床上に設置された複数の支持脚41と、支持脚41の上側に設置された定盤42を備えている。定盤42の上側には、ワーク機構部33が定盤42の長手方向(X軸方向)に延在するように配置されている。ワーク機構部33の上方には、定盤42に固定された2本の支持柱52で支持されているヘッド機構部32が、ワーク機構部33と直交する方向(Y軸方向)に延在して配置されている。また、定盤42の一方の端部には、ヘッド機構部32のヘッド部50から連通して液状体を供給する材料供給部34が配置されている。そして、ヘッド機構部32の一方の支持柱52近傍には、メンテナンス機構部35がワーク機構部33と並んでX軸方向に延在するように配置されている。さらに、定盤42の下側には、制御部36が備えられている。
【0029】
ヘッド機構部32は、液状体を吐出するヘッド部50と、ヘッド部50を懸架したヘッドキャリッジ51と、ヘッドキャリッジ51のY軸方向への移動をガイドするY軸ガイド53と、Y軸ガイド53の側方にY軸ガイド53と平行に設置されたY軸リニアモータ54等を備えている。
【0030】
ワーク機構部33は、ヘッド機構部32の下方に位置し、ヘッド機構部32とほぼ同様の構成でX軸方向に延在するように配置されており、基材10を載置している載置台61と、載置台61の移動をガイドするX軸ガイド63と、X軸ガイド63の側方にX軸ガイド63と平行に設置されたX軸リニアモータ64等を備えている。
【0031】
これらの構成により、ヘッド部50と基材10とは、それぞれY軸方向およびX軸方向に往復自在に移動することができる。最初に、ヘッド部50の移動について説明する。ヘッド部50を懸架したヘッドキャリッジ51は、Y軸ガイド53に移動可能に取り付けられている。図示しないが、ヘッドキャリッジ51からY軸リニアモータ54側へ張り出している突起部が、Y軸リニアモータ54と係合して駆動力を得ることにより、ヘッドキャリッジ51がY軸ガイドに沿って任意の位置に移動する。同様に、載置台61に搭載された基材10もX軸方向に自在に移動する。
【0032】
このように、ヘッド部50は、Y軸方向の吐出位置まで移動して停止し、下方にある基材10のX軸方向の移動に同調して、液滴を吐出する構成となっている。X軸方向に移動する基材10と、Y軸方向に移動するヘッド部50とを相対的に制御することにより、基材10上に液状体を吐出することができる。ヘッド部50に液状体を供給する材料供給部34は、液状体が貯留されたタンク75からポンプ74を経てヘッド部50までを接続する流路チューブ79を備えている。
【0033】
次に、ヘッド部50に備えられた吐出ヘッドの構造について説明する。図3は、吐出ヘッドの構造を示し、図3(a)は一部破断した斜視図であり、同図(b)は断面図である。
【0034】
図3(a)において、吐出ヘッド110は、振動板114と、ノズルプレート115を備えている。振動板114とノズルプレート115との間には、液溜まり116が配置され、孔118を介して供給される液状体が常に充填されるようになっている。また、振動板114と、ノズルプレート115との間には、複数の隔壁112が位置している。そして、振動板114と、ノズルプレート115と、一対の隔壁112とによって囲まれた部分がキャビティ111である。キャビティ111は、ノズル120に対応して設けられているため、キャビティ111の数とノズル120の数とは同じである。キャビティ111には、一対の隔壁112間に位置する供給口117を介して、液溜まり116から液状体が供給される。
【0035】
図3(b)に示すように、振動板114上には、それぞれのキャビティ111に対応して振動子113が取り付けられている。振動子113は、ピエゾ素子113cと、ピエゾ素子113cを挟む一対の電極113a,113bを有する。この一対の電極113a,113bに駆動電圧を与えることで、対応するノズル120から液状体が液滴121となって吐出される。なお、液状体を吐出させるために、振動子113の代わりに電気熱変換素子を用いてもよく、電気熱変換素子による液状体の熱膨張を利用して、液滴121として吐出することができる。
【0036】
図2に戻り、次に、メンテナンス機構部35について説明する。メンテナンス機構部35は、キャッピングユニット86、ワイピングユニット87、およびフラッシングユニット88のメンテナンスユニットを備えている。さらに、メンテナンスユニットを載置するメンテキャリッジ81と、メンテキャリッジ81の移動をガイドするメンテキャリッジガイド82と、メンテキャリッジ81と一体の螺合部85と、螺合部85が螺合するボールねじ84と、ボールねじ84を回転させるメンテモータ83とを備えている。これにより、メンテモータ83が正逆回転すると、ボールねじ84が回転し、螺合部85を介してメンテキャリッジ81が、X軸方向に移動する。メンテキャリッジ81がヘッド部50のメンテナンスのために移動するときには、Y軸ガイド53に沿ってヘッド部50が移動して、メンテナンスユニットの直上部に臨んでいる。
【0037】
メンテナンスユニットのキャッピングユニット86は、液滴吐出装置30が稼動していない時に、吐出ヘッド110に密着してキャッピングし、液状体が乾燥してノズル120が詰まるなどの不具合が生じないようにする。ワイピングユニット87は、液状体の連続吐出後やキャッピング時にノズル120に付着した液状体などを、洗浄液を含むワイピング布で拭い、全ノズルの清浄な状態を維持する。フラッシングユニット88は、液滴吐出装置30の稼動開始時や基材10への加工前に、ノズル120から吐出される液状体を受け、ノズル120の吐出状態を常に良好な状態にする。
【0038】
これらのメンテナンスユニットにより、液滴吐出装置30の非稼動時や基材10を交換載置している加工待ち時などに、吐出ヘッド110の状態を保全して良好な吐出状態を保つことができる。
【0039】
これらの構成により、ヘッド部50と基材10とは、それぞれY軸方向およびX軸方向に往復自在に移動することができる。
【0040】
次に、以上述べた構成を制御する制御部36の構成について説明する。図4は、制御部36の構成を示すブロック図である。制御部36は、指令部130と駆動部140とを備え、指令部130は、CPU132、記憶手段としてのROM133、RAM134および入出力インターフェース131からなり、CPU132が入出力インターフェース131を介して入力される各種信号を、ROM133,RAM134のデータに基づき処理し、入出力インターフェース131を介して駆動部140へ制御信号を出力する。
【0041】
駆動部140は、ヘッドドライバ141、モータドライバ142、ポンプドライバ143及びメンテドライバ145から構成されている。モータドライバ142は、指令部130の制御信号により、X軸リニアモータ64、Y軸リニアモータ54を制御し、基材10、ヘッド部50の移動を制御する。さらに、メンテモータ83を制御してメンテナンス機構部35の必要なユニットをメンテナンス位置へ移動させる。ヘッドドライバ141は、吐出ヘッド110からの液状体の吐出を制御し、モータドライバ142の制御と同調して、基材10上の所定位置に吐出などが行えるようにする。また、ポンプドライバ143は、液状体の吐出状態に対応してポンプ74を制御し、吐出ヘッド110への供給を最適に制御する。メンテドライバ145は、メンテナンス機構部35のキャッピングユニット86、ワイピングユニット87およびフラッシングユニット88を制御する。
【0042】
(パターン膜形成部材の製造方法)
次に、パターン膜形成部材の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、パターン膜形成部材としてのカラーフィルタの製造方法について説明する。図5は、本実施形態にかかるカラーフィルタの製造方法を示す工程図である。
【0043】
まず、図5(a)に示すように、基材10の上に区画部11を形成する。区画部11は、例えば、フォトリソグラフィー法等によって形成することができる。区画部11の形成によって区画された領域はパターン膜領域としての色素膜領域16(R,G,B)となる。ここで、第1色素膜領域16Bは、第1パターン膜領域に相当し、第2色素膜領域16Gは、第2パターン膜領域に相当し、第3色素膜領域16Rは、第3パターン膜領域とする。
【0044】
次に、図5(b)の第1塗布工程では、第1パターン膜領域としての第1色素膜領域16Bに第1パターン膜としての第1色素膜14Bの材料となる第1液状体を塗布する。本実施形態では、液滴吐出装置30を用いて、吐出ヘッド110から第1色素膜領域16Bに向けて第1液状体12Bを液滴121として吐出して、第1液状体12Bを付着させる。第1液状体12Bの塗布量は、塗布された第1液状体12Bの表面張力が維持される程度に調整される。
【0045】
次に、第2塗布工程では、図5(c)に示すように、第1塗布工程の後に、第2パターン膜領域としての第2色素膜領域16Gに第2パターン膜としての第2色素膜14Gの材料となる第2液状体を塗布する。本実施形態では、液滴吐出装置30を用いて、吐出ヘッド110から第2色素膜領域16Gに向けて第2液状体12Gを液滴121として吐出して、第2液状体12Gを付着させる。第2液状体12Gの塗布量は、塗布された第2液状体12Gの表面張力が維持される程度に調整される。
【0046】
その後、図5(d)に示すように、第3パターン膜領域としての第3色素膜領域16Rに第3パターン膜としての第3色素膜14Rの材料となる第3液状体を塗布する。本実施形態では、液滴吐出装置30を用いて、吐出ヘッド110から第3色素膜領域16Rに向けて第3液状体12Rを液滴121として吐出して、第3液状体12Rを付着させる。第3液状体12Rの塗布量は、塗布された第3液状体12Rの表面張力が維持される程度に調整される。
【0047】
次に、図5(e)の第3塗布工程に移行するが、第1塗布工程から第3塗布工程に至る間に、第1液状体12Bを増粘させ、増粘した第1液状体12B’を形成する(図5(c),(d))。例えば、第1塗布工程から第3塗布工程に至る間に、所定時間間隔を空け、自然乾燥状態において数秒から数分間空ける。当該時間間隔を空けることにより、先に塗布された第1液状体12Bは増粘し、増粘された第1液状体12B’が形成される。そして、第3塗布工程では、増粘された第1液状体12B’の上に、新たに第1液状体12Bを塗布する。この際、増粘された第1液状体12B’は、外力に対する抵抗力が向上しているため、新たに第1液状体12Bを塗布するための液滴121が着弾しても表面張力は容易に破壊されない。このため、新たに第1液状体12Bを比較的多量に塗布することができる。結果として、第1色素膜領域16Bには、他の第2及び第3色素膜領域16G,16Rに塗布された第2及び第3液状体12G,12Rの塗布量に比べて多量の第1液状体12,12B’を塗布することができる。
【0048】
その後、必要に応じて、第2及び第3色素膜領域16G,16Rに第2及び第3液状体12G,12Rを塗布する。この場合も、上記と同様に、先に塗布されてから時間が経過しているため、先に塗布された第2及び第3液状体12G,12Rは増粘し、増粘された第2及び第3液状体12G’,12R’が形成される。そして、増粘された第2及び第3液状体12G’,12R’の上に、新たに第2及び第3液状体12G,12Rを塗布する。なお、この場合において、新たに塗布される第2及び第3液状体12G,12Rの塗布量は、第1液状体12Bの塗布量よりも少量に塗布する。
【0049】
図5(f)の固化工程では、それぞれの色素膜領域16(B,G,R)に塗布された第1液状体12B,12B’と第2液状体12G,12G’と第3液状体12R,12R’とを固化して第1〜第3色素膜14B,14G,14Rを形成する。固化方法としては、例えば、加熱乾燥や減圧乾燥等が挙げられる。そして、本実施形態では、第1色素膜14B、第2色素膜14G、第3色素膜14Rの順に膜厚が薄く形成される。
【0050】
その後、必要に応じて、区画部11と色素膜14の上に保護膜18を形成する。保護膜18の形成方法としては、スピンコート法等が用いられ、材料としては、光硬化タイプ、熱硬化タイプあるいは光熱併用タイプの樹脂材料、蒸着、スパッタ等によって形成された無機膜等を用いることができる。
【0051】
以上、上記の製造方法によって、カラーフィルタ1が形成される。
【0052】
(電気光学装置)
次に、本実施形態にかかる電気光学装置について説明する。図6は、電気光学装置としての液晶ディスプレイの構成を示す断面図である。
【0053】
図6において、液晶ディスプレイ150は、カラーフィルタ1と、カラーフィルタ1に対向して配置された素子基材151と、シール材152によって接着されたカラーフィルタ1と素子基材151の隙間に充填された液晶153等で構成されている。
【0054】
カラーフィルタ1の保護膜18の上には共通電極161が形成され、共通電極161の上には配向膜162が形成されている。また、基材10の色素膜14が形成された面の反対面には偏光板175が備えられている。
【0055】
素子基材151は、透明性を有する基材170と、基材170の上に形成されたTFT(Thin Film Transistor)素子171と、基材170とTFT素子171の上に形成された配向膜172等で構成されている。また、基材170のTFT素子171が形成された面の反対面には偏光板176が備えられている。
【0056】
(電子機器)
次に、本実施形態にかかる電子機器について説明する。図7は、電子機器としてのテレビ受像機の構成を示す斜視図である。図7において、テレビ受像機180の表示部に液晶ディスプレイ150が搭載されている。
【0057】
従って、上記の実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0058】
(1)例えば、膜厚が、第1色素膜14B、第2色素膜14G、第3色素膜14Rの順に薄くなる色素膜14を形成するにあたって、まず、第1色素膜14Bに対応する第1色素膜領域16Bに第1液状体12Bを塗布し、次に、第2色素膜14Gに対応する第2色素膜領域16Gに第2液状体12Gを塗布し、その次に、第3色素膜14Rに対応する第3色素膜領域16Rに第3液状体12Rを塗布した。その後、再度、第1色素膜領域16Bにすでに塗布された第1液状体12B’の上に、新たに第1液状体12Bを塗布した。この際、すでに塗布された第1液状体12B’は、第2及び第3液状体12G,12Rを塗布する間に増粘されている。従って、増粘された第1液状体12B’の上に、新たに第1液状体12Bを塗布することにより、第1液状体12B,12B’の表面張力が維持され、第1色素膜領域16Bに多量の第1液状体12を塗布することができ、所望の厚い膜厚を有する第1色素膜14Bを形成することができる。
【0059】
(2)色素膜14の膜厚の厚い順に、すなわち、第1液状体12B→第2液状体12G→第3液状体12R→第1液状体12Bの順に繰り返し塗布することにより、この間の時間ずれを利用して、第1液状体12Bは増粘されて、増粘した第1液状体12B’が形成される。従って、第1液状体12Bの繰り返し塗布処理が容易となり、簡単に膜厚順に色素膜14を形成することができる。
【0060】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0061】
(変形例1)上記の実施形態では、第1色素膜領域16Bに第1液状体12Bを2回塗布したが、これに限定されない。さらに必要に応じて、3回以上の塗布を行ってもよい。この場合において、直前の塗布の後に時間を空けて次の塗布処理を行う。このようにすれば、更に厚い膜を有する色素膜14を形成することができる。特に、色素膜領域16が比較的狭い場合には有効である。なお、他の第2及び第3色素膜領域16G,16Rにあっても、上記同様に3回以上の塗布を行ってもよい。
【0062】
(変形例2)上記の実施形態では、第1塗布工程において塗布された第1液状体12Bの塗布量は、第3塗布工程において塗布される第1液状体12の塗布量Bよりも多かったが、第1塗布工程において塗布される第1液状体12Bの塗布量が、第3塗布工程において塗布される第1液状体12Bの塗布量よりも少なくしてもよい。このようにすれば、第1塗布工程において塗布される第1液状体12Bを素早く増粘させることができるので、塗布処理を短縮させることができる。なお、他の第2及び第3色素膜領域16G,16Rにあっても、上記同様に塗布量を調整してもよい。
【0063】
(変形例3)上記の実施形態では、パターン膜形成部材としてカラーフィルタ1を例として説明したが、これに限定されることなく、例えば、EL(Electro−Luminescence)発光部材、シリカガラス前駆体、金属化合物等の導電部材、誘電体部材等についても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】カラーフィルタの構造を示し、(a)は平面図、(b)は断面図。
【図2】液滴吐出装置の構成を示す斜視図。
【図3】ヘッドの構造を示し、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図。
【図4】液滴吐出装置の制御部の構成を示すブロック図。
【図5】カラーフィルタの製造方法を示す工程図。
【図6】液晶ディスプレイの構成を示す断面図。
【図7】テレビ受像機の斜視図。
【符号の説明】
【0065】
1…パターン膜形成部材としてのカラーフィルタ、10…基材、11…区画部、12B,12B’…第1液状体、12G,12G’…第2液状体、12R,12R’…第3液状体、14(R,G,B)…パターン膜としての色素膜、16(R,G,B)…パターン膜領域としての色素膜領域、30…液滴吐出装置、110…吐出ヘッド、121…液滴、150…電気光学装置としての液晶ディスプレイ、180…電子機器としてのテレビ受像機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に区画して設けられた第1パターン膜領域に第1パターン膜の材料となる第1液状体を塗布する第1塗布工程と、
前記第1塗布工程の後に、前記基材に区画して設けられた第2パターン膜領域に第2パターン膜の材料となる第2液状体を塗布する第2塗布工程と、
前記第2塗布工程の後に、前記第1パターン膜領域に前記第1液状体を塗布する第3塗布工程と、
前記第1液状体及び前記第2液状体を固化する固化工程と、を含むことを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記第1パターン膜の膜厚は、前記第2パターン膜の膜厚よりも厚いことを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記第1塗布工程と前記第3塗布工程との間に、所定時間間隔を空けることを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法において、
前記第1塗布工程における前記第1パターン膜領域には、色要素が青色系の前記第1液状体を塗布し、
前記第2塗布工程における前記第2パターン膜領域には、色要素が緑色系または赤色系の前記第2液状体を塗布することを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法であって、
前記第1塗布工程における前記第1液状体の塗布量は、前記第3塗布工程における前記第1液状体の塗布量よりも少量であることを特徴とするパターン膜形成部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のパターン膜形成部材の製造方法よって製造されたパターン膜形成部材。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン膜形成部材を備えた電気光学装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気光学装置を搭載した電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−82578(P2010−82578A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256080(P2008−256080)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】