説明

パチンコ遊技機

【課題】 ガイド溝の横断面形状を変更可能な構造をコンパクトにできてなおかつ、ガイド溝による遊技球のガイド効果を高めるに際して、ガイド溝を形成する部材に対して過大な負荷を掛けることのないパチンコ遊技機を提供すること。
【解決手段】 飾り枠20のステージ面21aは、その一部が可変ガイド溝装置25の布状部材26によって構成されている。布状部材26は、第1支持ローラ28と第2支持ローラ29との間で掛け渡されて配置されている。布状部材26は、モータ32及び駆動ローラ31によって駆動されることで、第1支持ローラ28と第2支持ローラ29との間における弛み具合が変更される。この布状部材26の弛み部分は、ステージ面21aの遊技球を始動口17側へと案内するガイド溝をなし、この弛み具合の変更は、ガイド溝の横断面形状を変更してそのガイド効果を変更することにつながる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパチンコ遊技機に関し、特に遊技領域における遊技球の転動に影響を与える構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技の本質は、遊技領域における遊技球の転動を楽しむことにあり、したがって従来のパチンコ遊技機には、遊技球の転動に影響を与えるための様々な機構が搭載されている。その内の一つとして、特許文献1に開示されているような棚板装置が存在する。
この棚板装置は、弾性材で形成された棚板本体と、棚板本体の下方への湾曲形状を変更するための駆動機構とからなっており、棚板本体の湾曲具合を変更することで、特定の位置(最も低い位置となる湾曲の頂点部分)から遊技球が落下する確率を変化させるものである。
つまり、棚板本体の湾曲具合が小さい状態(平面に近い状態)では、湾曲の頂点部分付近における、遊技球の落下方向へのガイド効果が低くなり、よって特定の位置から遊技球が落下される確率が低くなる。逆に、棚板本体の湾曲具合が大きい状態では、湾曲の頂点部分付近における、遊技球の落下方向へのガイド効果が高くなり、よって特定の位置から遊技球が落下される確率が高くなる。
このような技術について本願発明者は、棚板本体における湾曲の頂点部分付近を、棚板本体の幅方向(パチンコ遊技機の前後方向)へ延びる遊技球のガイド溝として把握した。また、棚板本体の湾曲具合を変更することは、ガイド溝の横断面形状を変更することとして把握した。
【特許文献1】特開2003−169913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前述した棚板装置においては、ガイド溝による遊技球のガイド効果を高めようとすると、棚板本体を大きく弾性変形させて湾曲の頂点付近を先鋭状に近づける必要、つまりガイド溝内における両側面(ガイド面)の傾斜を大きくする必要がある。このため、棚板本体に過大な負荷が掛かる問題があった。
また、弾性材よりなる棚板本体は局部的に湾曲させることが困難であるので、ガイド溝の横断面形状を変更するには、棚板本体を全体的に変形させる必要がある。このため、ガイド溝の横断面形状を大きく変更させて使用したい場合には、弾性材を用いたことでの力学的な問題から、棚板本体として長手方向にある程度大きなものが必要となり、よって棚板装置が大型化してその配置位置が限定されてしまう問題があった。
【0004】
本発明の目的は、ガイド溝の横断面形状を変更可能な構造をコンパクトにできてなおかつ、ガイド溝による遊技球のガイド効果を高めるに際して、ガイド溝を形成する部材に対して過大な負荷を掛けることのないパチンコ遊技機を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明では、遊技領域に配置された布状部材と、布状部材の一端側を支持する第1支持部材と、布状部材の他端側を支持することで第1支持部材との間で布状部材を掛け渡して配置させる第2支持部材と、布状部材を駆動して、第1支持部材と第2支持部材との間における布状部材の弛み具合を変更する弛み量変更手段と、で可変ガイド溝手段を構成した。
そして、可変ガイド溝手段は、第1支持部材と第2支持部材との間における布状部材の弛み部分がガイド溝をなすとともに、弛み量変更手段によって布状部材の弛み具合を変更することで、ガイド溝の横断面形状を変更するものである。
【0006】
このように、本発明においては、布状部材の弛みを利用してガイド溝を形成するようにしているので、例えば弾性材を用いた場合のような力学的障害が少なく、比較的小さな布状部材であっても所望のガイド効果を有した(大きな湾曲の)ガイド溝を形成することができる。よって、可変ガイド溝手段のコンパクト化を図ることができる。また、ガイド溝による遊技球のガイド効果を高める際には、布状部材の弛みを大きくすればよいので、弛み量変更手段が布状部材に作用させる緊張方向の負荷は小さくなる。
【0007】
また、請求項2の発明では、第1支持部材及び第2支持部材において、弛んだ状態にある布状部材の裏面に対向する領域には、該裏面を当接支持してガイド溝の形状を保持するためのバックアップ支持面がそれぞれ形成されている。
【0008】
したがって、布状部材が弛んだ状態でもガイド溝における遊技球の転動が安定し、ガイド溝によるガイド効果が高くなる。また、このようなバックアップ支持に、布状部材を支持するための第1支持部材及び第2支持部材を兼用しているので、部品点数を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のパチンコ遊技機を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、パチンコ遊技機が備える遊技盤10を示す正面図である。この遊技盤10は、ベニヤ製の基板11の前面側に、外レール12、内レール13、遊技くぎ16等の遊技部品を取り付けることで構成されている。遊技盤10の前面側には、外レール12と内レール13とで囲まれることで、略円形状をなす遊技領域14が区画形成されている。遊技領域14の左側において外レール12と内レール13とが間隔をおいて並行する領域には、遊技球発射通路15が形成されている。そして、発射装置(図示せず)から発射された遊技球は、遊技球発射通路15を経由して遊技領域14の上方へと至る。
【0010】
遊技領域14の中央部には図柄表示装置18が設けられており、この図柄表示装置18の下方には始動口17が、また始動口17の下方には大入賞口19が、それぞれ設けられている。そして、パチンコ遊技機の図示しない遊技制御コンピュータは、遊技領域14を転動落下する遊技球が始動口17へ入賞することに基づき、大当り抽選及びこの抽選結果の図柄表示装置18での報知を行い、特に抽選結果が大当りの場合には、大入賞口19を開放する大当り遊技を遊技者に対して提供する。
【0011】
図1及び図2に示すように、遊技領域14において図柄表示装置18の周囲には、略四角枠状をなす飾り枠20が設けられている。飾り枠20の下辺部には、一般的に「ステージ」と呼ばれる周知の遊技球転動部21が形成されている。飾り枠20の左右両辺部には、一般的に「ワープ通路」と呼ばれる周知の遊技球通路24がそれぞれ形成されている。
【0012】
したがって、遊技領域14を転動落下する遊技球のうち、遊技球通路24に入った遊技球は、直接的に遊技球転動部21へと導かれることとなる。遊技球転動部21に導入された遊技球は、左右方向へ往復するように転動し、やがては遊技球転動部21の前端から始動口17側へと落下する。
【0013】
さて、図4に示すように、遊技球転動部21において遊技球が転動する領域であるステージ面21aは、各遊技球通路24の出口が臨む左右の固定面領域21a−1と、両固定面領域21a−1,21a−1間に位置して両固定面領域21a−1,21a−1を繋ぐ中央の可動面領域21a−2とを備えている。可動面領域21a−2は始動口17(図1参照)の直上に位置しており、したがってこの可動面領域21a−2の前端から始動口17側へ落下した遊技球は、固定面領域21a−1の前端から始動口17側へ落下した遊技球よりも、始動口17へ入る確率が高くなる。
【0014】
図3及び図4に示すように、ステージ面21aの各固定面領域21a−1は、飾り枠20を基板11に取り付けるための前側の取付板22と、図柄表示装置18の下辺部付近を装飾する為の後側の装飾板23との間に渡され固定された湾曲プレート35の上面によって形成されている。
【0015】
そして、ステージ面21aの可動面領域21a−2は、遊技球転動部21に設けられた可変ガイド溝装置25(可変ガイド溝手段)によって提供されている。この可変ガイド溝装置25は、可動面領域21a−2上を始動口17側へ向かう遊技球の転動をガイド可能であるとともに、可動面領域21a−2の面形状を変更してガイド効果を変更することで、可動面領域21a−2の前端から落下する遊技球の始動口17への入賞確率を変更可能である。
【0016】
以下、本実施形態の特徴点である可変ガイド溝装置25について詳細に説明する。
図3〜図5に示すように、可変ガイド溝装置25は、第1支持部材としての第1支持ローラ28と、第2支持部材としての第2支持ローラ29とを備えている。第1支持ローラ28は、左側の湾曲プレート35の右端縁近傍にて該右端縁に沿うように配置され、取付板22と装飾板23の間で回転可能に支持されている。第2支持ローラ29は、右側の湾曲プレート35の左端縁近傍にて該左端縁に沿うように配置され、取付板22と装飾板23の間で回転可能に支持されている。
【0017】
第1支持ローラ28と第2支持ローラ29は平行に配置されている。第1支持ローラ28及び第2支持ローラ29の中心軸線は、前方側に向かって若干下降傾斜されている。
【0018】
第1支持ローラ28と第2支持ローラ29との間には、布状部材26が掛け渡されている。布状部材26は、可撓性を有するシート材(例えばゴムシートや織布やプラスチックフィルムが挙げられる)からなっている。布状部材26は、左右の固定面領域21a−1,21a−1間(湾曲プレート35,35間)の隙間を埋めるように配置されており、両固定面領域21a−1,21a−1を繋ぐ上面が可動面領域21a−2をなしている。
【0019】
図3に示すように、左側の湾曲プレート35の下方には駆動ローラ31が配置され、この駆動ローラ31は取付板22と装飾板23の間で回転可能に支持されている。駆動ローラ31の後方には、この駆動ローラ31を回転駆動するためのモータ32が配置されている。また、右側の湾曲プレート35において左端縁近傍の裏面には、取付部30が設けられている。
【0020】
そして、布状部材26の左端縁は、駆動ローラ31の外周面に固定されている。また、布状部材26の右端縁は取付部30に固定されている。したがって、モータ32の正逆回転によって、駆動ローラ31における布状部材26の左端側の巻き取り具合が変更され、よって第1支持ローラ28と第2支持ローラ29との間における布状部材26の張り具合(弛み具合)が変更される。つまり、駆動ローラ31や取付部30やモータ32等は、弛み量変更手段として把握することができる。
【0021】
図5(a)は、布状部材26の左端側が駆動ローラ31に多く巻き取られた状態を示している。この状態では、第1支持ローラ28と第2支持ローラ29との間における布状部材26の弛みは少なく、よって遊技球転動部21(ステージ面21a)の可動面領域21a−2は平面に近い状態となっている。したがって、遊技球転動部21のステージ面21aに導入された遊技球は、可動面領域21a−2を左右に通過し易くなっている。
【0022】
このことは、ステージ面21aを左右に転動する遊技球が可動面領域21a−2で減勢され難いこと、ひいては、ステージ面21aから始動口17側へ落下する複数の遊技球のうち可動面領域21a−2から始動口17側へ落下する割合が少なくなることや、可動面領域21a−2上を始動口17側へ転動する遊技球の左右の揺れが収束し難いこと等を意味する。つまりこの状態では、ステージ面21aから始動口17側へ落下する遊技球が始動口17へ入賞する確率は低いものとなっている。
【0023】
図5(b)は、布状部材26の左端側が駆動ローラ31に少なく巻き取られた状態を示している。この状態では、第1支持ローラ28と第2支持ローラ29との間における布状部材26の弛みは多く、よって遊技球転動部21(ステージ面21a)の可動面領域21a−2は、下方に湾曲した状態、別の見方をすれば前後方向へ延びるガイド溝状となっている。また、この状態では、布状部材26における左端側の弛み部分の裏面が第1支持ローラ28の外周面28a(バックアップ支持面)に、右端側の弛み部分の裏面が第2支持ローラ29の外周面29a(バックアップ支持面)に、それぞれ当接されバックアップ支持されるため、可動面領域21a−2がなすガイド溝の形状が安定する。
【0024】
したがって、遊技球転動部21のステージ面21aに導入された遊技球は、可動面領域21a−2を左右に通過し難くなっている。このことは、ステージ面21aを左右に転動する遊技球が可動面領域21a−2で減勢され易いこと、ひいては、ステージ面21aから始動口17側へ落下する複数の遊技球のうち可動面領域21a−2から始動口17側へ落下する割合が多くなることや、可動面領域21a−2上を始動口17側へ転動する遊技球の左右の揺れが収束し易いこと等を意味する。つまり、この状態では、ステージ面21aから始動口17側へ落下する遊技球が始動口17へ入賞する確率は高いものとなっている。
【0025】
そして、遊技制御コンピュータは、駆動ローラ31の正回転と逆回転とを所定時間ずつ交互に繰り返すようにモータ32を制御する。したがって、可変ガイド溝装置25は、図5(a)の状態と図5(b)の状態との間で、可動面領域21a−2がなすガイド溝形状の変形を繰り返すこととなる。つまり、本実施形態の可変ガイド溝装置25は、「遊技領域14に配置されたガイド溝(可動面領域21a−2)を有し、このガイド溝に受け入れた遊技球をガイド溝の延在方向へと案内可能であるとともに、このガイド溝の横断面形状を変更することが可能である」と言える。
【0026】
上記構成の本実施形態においては次ぎのような効果を奏する。
(1)布状部材26の弛み部分を遊技球のガイド溝(可動面領域21a−2)として利用するとともに、布状部材26の弛み具合を変化させることで、ガイド溝の横断面形状を変化させてこのガイド溝によるガイド効果を変更するようにしている。したがって、例えば弾性材を用いた場合のような力学的障害が少なく、比較的小さな布状部材26であっても所望のガイド効果を有した(大きな湾曲の)ガイド溝を形成することができる。よって、可変ガイド溝装置25のコンパクト化を図ることができる。また、ガイド溝による遊技球のガイド効果を高める際には、布状部材26の弛みを大きくすればよいので、モータ32が布状部材26に作用させる緊張方向の負荷は小さくなり、布状部材26の耐久性を向上させることができる。
【0027】
(2)布状部材26が弛んだ状態では、第1及び第2支持ローラ28,29の外周面28a,29aがそれぞれ布状部材26の弛み部分の裏面をバックアップ支持するため、ガイド溝(可動面領域21a−2)における遊技球の転動が安定し、ガイド溝によるガイド効果が高くなる。また、このようなバックアップ支持に、布状部材26を支持するための第1及び第2支持ローラ28,29を兼用しているので、部品点数を少なくすることができる。
【0028】
(別例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば上記実施形態を次のように変更してもよい。
○例えば図6に示すように、遊技球転動部21においてステージ面21aを二段とし、上段のステージ面21aに可変ガイド溝装置25を適用すること。或いは図示しないが、両方のステージ面21aに可変ガイド溝装置25を適用すること。
【0029】
○例えば図6に示すように、布状部材26の裏面側に、弛んだ布状部材26の全体を支持するための湾曲したバックアッププレート42を配置すること。
【0030】
○駆動ローラ31を削除し、布状部材26の左端縁を第1支持ローラ28に固定するとともに、第1支持ローラ29をモータ32で直接駆動すること。この場合、第2支持ローラ29を回転不能として、布状部材26の右端縁を第2支持ローラ29に固定するようにしてもよい。
【0031】
○可変ガイド溝装置25を「ステージ」以外の場所に適用すること。すなわち例えば、2種タイプのパチンコ遊技機において、大入賞装置内の球振分装置として用いること。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】遊技盤の正面図。
【図2】図1における飾り枠の拡大図。
【図3】図1における遊技球転動部の要部拡大平面図。
【図4】飾り枠において遊技球転動部付近の斜視図
【図5】可変ガイド溝手段の動作を説明する図。
【図6】別例を示す斜視図
【符号の説明】
【0033】
10…遊技盤、25…可変ガイド溝手段としての可変ガイド溝装置、26…布状部材、28…第1支持部材としての第1支持ローラ、28a…バックアップ支持面としての外周面、29…第2支持部材としての第2支持ローラ、29a…バックアップ支持面としての外周面、32…弛み量変更手段としてのモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技球が転動可能な遊技領域を有する遊技盤と、
前記遊技領域に配置されたガイド溝を有し、該ガイド溝に受け入れた遊技球を該ガイド溝の延在方向へと案内可能であるとともに、該ガイド溝の横断面形状を変更することが可能な可変ガイド溝手段と
を備えたパチンコ遊技機において、
前記可変ガイド溝手段は、
前記遊技領域に配置された布状部材と、
前記布状部材の一端側を支持する第1支持部材と、
前記布状部材の他端側を支持することで、前記第1支持部材との間で前記布状部材を掛け渡して配置させる第2支持部材と、
前記布状部材を駆動して、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間における該布状部材の弛み具合を変更する弛み量変更手段と
を備え、
前記可変ガイド溝手段は、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間における前記布状部材の弛み部分が前記ガイド溝をなすとともに、前記弛み量変更手段によって前記布状部材の弛み具合を変更することで前記ガイド溝の横断面形状を変更可能であることを特徴とするパチンコ遊技機。
【請求項2】
前記第1支持部材及び前記第2支持部材において、弛んだ状態にある前記布状部材の裏面に対向する領域には、該裏面を当接支持して前記ガイド溝の形状を保持するためのバックアップ支持面がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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