説明

パック吊下げ治具およびパック封止装置

【課題】機能液が満たされたパック容器素材を容易に且つ適切に取り扱うことのできるパック吊下げ治具およびパック封止装置を提供する。
【解決手段】先端側に供給口3を有し、尾端から切り代部を隔てた帯状の封止部を未封止とした袋状のパック容器素材1に、必要量の機能液を満たすと共に、尾端を上にした状態でパック容器素材1を吊り下げるように保持するパック吊下げ治具10であって、パック容器素材1を保持した状態でパック支持部材を有するスタンドにセット可能に構成されたものにおいて、下側からパック容器素材1の尾端が突き当てられる位置規制部16を有すると共に、位置規制部16に尾端を突き当てた状態で切り代部を挟持する挟持部11と、挟持部11に連なり、パック支持部材に掛け止めするための掛止部12と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミラミネートフィルム等で構成され、内部にインク等の機能液を満たしたパック容器素材を吊り下げて保持するためのパック吊下げ治具およびパック封止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクパックの製造において、パック容器素材(インク袋)内にインクの注入を行うインク注入装置と、インクを注入したパック容器素材を封止するパック封止装置とが一体になったパック製造装置が知られている(特許文献1参照)。パック容器素材は、方形状の2枚のフィルム部材の一辺に、インクを供給するための供給口を挟み込むと共に、供給口の反対側となる尾端側を残して、周囲を熱溶着して形成されている。この未封止のパック容器素材の尾端部には、パック製造装置に設けられた袋支持棒に、パック容器素材にセットするための一対の係止孔が形成されている。そして、この一対の係止孔を介して袋支持棒に吊り下げたパック容器素材に対し、インク注入装置およびパック封止装置が臨み、インクの注入と、続くパック容器素材の封止とが行われる。
【特許文献1】特開2005−193571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のようなパック製造装置ではなく、パック容器素材にインクを注入するインク注入装置と、インクを注入したパック容器素材を封止するパック封止装置とが別体で設けられていた場合、インクが注入されたパック容器素材をインク注入装置からパック封止装置へ持ち運び、パック封止装置にパック容器素材をセットしなければならない。インクが満たされたパック容器素材は、人の手で取り扱う必要があり、フィルム状の袋で構成されているため、人の手では持ちにくく、インクをこぼしたり、パック容器素材を落下させてしまう虞があった。また、人の手では持運び個数に限界があり、複数のパック容器素材をまとめて運搬することができなかった。
【0004】
本発明は、機能液が満たされたパック容器素材を容易に且つ適切に取り扱うことのできるパック吊下げ治具およびパック封止装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のパック吊下げ治具は、先端側に供給口を有し、尾端から切り代部を隔てた帯状の封止部を未封止とした袋状のパック容器素材に、必要量の機能液を満たすと共に、尾端を上にした状態でパック容器素材を吊り下げるように保持するパック吊下げ治具であって、パック容器素材を保持した状態でパック支持部材を有するスタンドにセット可能に構成されたものにおいて、下側からパック容器素材の尾端が突き当てられる位置規制部を有すると共に、位置規制部に尾端を突き当てた状態で切り代部を挟持する挟持部と、挟持部に連なり、パック支持部材に掛け止めするための掛止部と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、パック容器素材は、その尾端を位置規制部により位置規制されその切り代部で挟持部に挟持されるため、常に挟持部に対し位置決めされ状態で且つ尾端側を閉じた状態に挟持することができる。また、パック容器素材は、その尾端が上となり供給口が下となって吊り下げられるため、安定に保持される。このため、パック吊下げ治具自体を持って機能液入りのパック容器素材を移動することができるため、機能液をこぼすことなく、これを容易に且つ適切に取り扱うことができる。また、掛止部により、パック容器素材をパック支持部材にセットすることができるため、複数のパック容器素材を、これにセットして移動させることができる。
【0007】
この場合、挟持部は、位置規制部の下方に連なり受動側挟持面を形成した挟持部本体と、挟持部本体に設けた鉛直軸に回動自在に取り付けられ、能動側挟持面を形成した挟持部片と、挟持部片と挟持部本体との間に切り代部を挟持した状態で、挟持部片を挟持部本体に締結する締結部と、を有していることが、好ましい。
【0008】
この構成によれば、挟持部本体の受動側挟持面に切り代部をあてがっておいて、挟持部片を挟持部本体に向かって回動させることにより、切り代部を受動側挟持面と能動側挟持面との間に簡単な操作で挟持することができる。また、挟持部片を挟持部本体に締結することにより、パック容器素材の挟持状態を安定に維持することができる。
【0009】
この場合、受動側挟持面および能動側挟持面の少なくとも一方には、鉛直方向に延びる溝条が形成されていることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、パック容器素材を封止する際に、切り代部を挟持したままパック容器素材内のエアーをこの溝条から簡単に抜くことができる。
【0011】
この場合、挟持部本体には、切り代部の幅方向を位置規制すると共に、切り代部の両側部を受動側挟持面に向かって抱き込むように位置規制する一対のガイド突起が設けられていることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、挟持部本体にパック容器素材の両サイドを位置決めした状態で、切り代部を挟持部片により挟持することができるため、挟持部の定位置にパック容器素材を取り付けることができる。特に、機能液で満たされたパック容器素材は、膨らみを有しているが、ガイド突起により、挟持部分の膨らみを抑えることができるため、挟持部片により挟持を容易に行うことができる。
【0013】
この場合、受動側挟持面および能動側挟持面のいずれか一方には、切り代部の幅に対応して水平方向に延在する凸部が形成され、他方には、凸部を受容すると共に切り代部の幅に対応して水平方向に延在する凹部が形成されていることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、両挟持面に挟持された切り代部は、凸部および凹部により湾曲した状態に押さえられる。このため、パック容器素材を強固に挟持することができ、機能液で満たされ重量のあるパック容器素材であっても、挟持部からパック容器素材が簡単に抜け落ちることがない。
【0015】
この場合、挟持部片は、能動側挟持面を有する挟持部片部と、鉛直軸に軸支される回動支持部とで、水平方向に「L」字状に延在していることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、鉛直軸と能動側挟持面とが十分に離間するため、挟持状態において、両挟持面に部分的な浮きが生じ難く、切り代部をその延在方向において均一な力で挟持することができる。
【0017】
この場合、挟持部の上面には、把持部が設けられていることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、把持部により、簡単且つ安定にパック容器素材の持ち運びを行うことができ、パック容器素材の落下の虞を軽減することができる。
【0019】
この場合、パック支持部材は、一対の水平アームで構成されると共に、掛止部は、一対の水平アームに横架されるよう、挟持部の両外端部に設けた一対のもので構成されており、各掛止部には、各水平アームに上側から係合する係合溝が形成されていることが、好ましい。
【0020】
この構成によれば、一対の水平アームにパック吊下げ治具を簡単且つ安定にセットすることができ、パック吊下げ治具と共にパック容器素材を一対の水平アームにセットした状態で持ち運ぶ際に、パック容器素材のふらつき等を防止することができる。
【0021】
本発明のパック封止装置は、パック容器素材を保持した上記のパック吊下げ治具がセットされるスタンドと、パック吊下げ治具を介して一対のパック支持部材に掛け止めされたパック容器素材の封止部に前後から臨む圧着ヘッドを有し、圧着ヘッドにより封止部を熱圧着により封止するシーラーと、パック容器素材に前後から臨む押圧手段を有し、押圧手段により記パック容器素材の膨らみ厚を調整する膨らみ厚調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、パック吊下げ治具を持った状態で、そのままパック支持部材にセットすることができるため、セット時においても、機能液をこぼすことなくパック容器素材を容易に取り扱うことができる。また、パック容器素材は、吊下げ治具に位置決め状態で挟持されているため、これをパック支持部材にそのままセットすることにより、吊り下げられたパック容器素材も常に同じ位置に位置決めされる。これにより、パック容器素材の封止部を同じ位置において封止することができる。また、膨らみ厚調整手段により、機能液容量を簡単に調整することができる。なお、機能液を予めパック容量より多めに満たしておくことは、言うまでもない。
【0023】
この場合、スタンドに設けられ、パック支持部材の上下位置を微調整する高さ調整手段を、さらに備えたことが、好ましい。
【0024】
この構成によれば、パック容量等の異なる複数種のパック容器素材に封止を行う場合でも、パック支持部材の上下位置を微調整することで、パック容器素材を適切な位置で封止することができる。
【0025】
この場合、パック容器素材から漏洩した機能液を受ける機能液受けパンを、さらに備えたことが、好ましい。
【0026】
この構成によれば、パック容器素材から機能液が漏れたとしても、これを機能液受けパンで受けることができ、周辺部品の汚染を防止することができる。特に、機能液が強酸性等である場合には、有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付の図面に基づいて、本発明のパック吊下げ冶具およびこれがセットされるパック封止装置について説明する。パック吊下げ治具は、機能液が注入されたパック容器素材を吊り下げ保持するものであり、パック封止装置は、機能液が注入されたパック容器素材を液密に封止するものである。ここでは、パック吊り下げ治具およびパック封止装置を説明する前に、未封止のパック容器であるパック容器素材について説明する。また、機能液としてインクを用いた場合について説明する。
【0028】
図1に示すように、パック容器素材1は、プリンタ等の液滴吐出装置にインクを供給するものであり、樹脂製のインク供給口3と、インク留めとなる袋体4とで構成されている。パック容器素材1は、先端側中央にインク供給口3を挟み込むようにして、方形に形成された2枚のアルミラミネートフィルムを重ね合わせ、尾端側を残して周縁部を熱圧着して形成されている。そして、未封止とした尾端側は、尾端から所定の寸法部分を切り代部5とし、更に切り代部5から僅かな寸法部分を帯状の封止部6としている(実際には、各部の境界は無く各部は上記のように設定されている)。すなわち、袋体4は、袋体本体7と、袋体本体7から尾端側に連なる封止部6と、封止部6から更に尾端側に連なる切り代部5と、で一体に形成されている。
【0029】
このように構成されたパック容器素材1は、これに尾端側からインクを注入することで所定量のインクを満たし、この状態でインク供給口3を下にしてパック吊下げ治具10が吊り下げるようにして取り付けられる。パック吊下げ治具10に吊り下げられたパック容器素材1は、パック封止装置50に搬入され、ここで封止部6を封止される。その後、切り代部5がカットされて、インクを充填したパック容器が完成する。
【0030】
次に、図2および図4を参照して、パック吊下げ治具10について詳細に説明する。パック吊下げ治具10は、パック容器素材1を吊り下げて保持するものであり、パック容器素材1を挟持する挟持部11と、挟持部11の両外端部に連なる一対の掛止部12と、挟持部11の上面にねじ止めされた把持部13と、を備えている。
【0031】
挟持部11は、一対の掛止部12と一体に形成された挟持部本体15と、挟持部本体15の上部に設けられた位置規制プレート16(位置規制部)と、挟持部本体15の一方の端部に取り付けられた鉛直軸17と、鉛直軸17を介して挟持部本体15に回動自在に取り付けられた挟持部片18と、挟持部片18の他方の端部に設けられたユリアネジ19(締結部)と、を備えている。
【0032】
図2および図4に示すように、挟持部本体15は、全体として略長方体に形成され、挟持部片18に対峙する受動側挟持面24を有するセンターブロック部25と、センターブロック部25の両側に連なると共に一対の掛止部12と一体化された一対のサイドブロック部26と、で一体に形成されている。受動側挟持面24は、パック容器素材1を水平に横断するよう、パック容器素材1の幅よりも幾分幅広に形成されている。各サイドブロック部26には、受動側挟持面24の上部に両側から臨むように内向きの一対のガイド突起27が設けられている。各ガイド突起27は、受動側挟持面24の中央に向かって「L」字状に延在し、位置規制プレート16に突き当てられるパック容器素材1の幅を位置規制すると共に、パック容器素材1の両側端部を抱え込むよう配設されている。これにより、パック容器素材1が幅方向にぶれることがなく、パック容器素材1を挟持する際、これを適切に位置決めすることができる。
【0033】
また、受動側挟持面24には、その左右中間部位置に鉛直方向に延在する断面「コ」字状の溝条28が形成されると共に、この溝条28と交差するように、下寄りの位置に水平方向に幅いっぱいに延在する断面「U」字状の凹部29が形成されている。この溝条28により、挟持状態のパック容器素材1を押圧して封止する際、パック容器素材1内のエアーを抜くことができる。また、凹部29は、パック容器素材1を挟み込んだ状態で、後述する能動側挟持面40の凸部39を受容する。同図示の左側のサイドブロック部26には、その下部に横「U」字状の切欠き部30が形成され、この部分に上記の鉛直軸17を介して挟持部片18の基部が回動自在に取り付けられている。一方、同図示の右側のサイドブロック部26には、上記のユリアネジ19が螺合するネジ孔31が形成されている。
【0034】
位置規制プレート16は、規制プレート片33と、規制プレート片33に連なる固定プレート片34と、で断面「L」字状に折り曲げて形成され、固定プレート片34の部分でセンターブロック部25の裏面にネジ止めされている(図3参照)。この状態で、規制プレート片33は、センターブロック部25の上面および一対のガイド突起27の上端を覆うと共に、受動側挟持面24から前方に突出するよう配置されている。パック容器素材1をパック吊下げ治具10にセットする場合には、パック容器素材1の尾端側を両ガイド突起27にガイドするように下側から挿入し、その尾端を規制プレート片33に突き当てるようにする。そして、この状態で、挟持部片18を回動させて、挟持部本体15(センターブロック部25)との間にパック容器素材1を挟持するようにする。その際、パック容器素材1は、常に切り代部5の所定の位置で挟持されるようになっており、封止部6は、挟持部11から下側に十分外れた位置に位置決めされる。なお、位置規制プレート16は、挟持部本体15と一体に形成してもよい。
【0035】
図2、図3および図5に示すように、挟持部片18は、鉛直軸17に軸支された基部側の回動支持部35と、上記のセンターブロック部25に対峙する挟持部片部36と、平面視略「L」字状に一体に形成されている。回動支持部35には、鉛直軸17に軸支される軸受け孔37が形成されている。一方、挟持部片部36は、先端部を除く全域に、上記の受動側挟持面24に対応する能動側挟持面40を有し、また先端部に、上記のユリアネジ19を回転自在且つ抜止め状態で取り付けたネジ取付部38を有している。能動側挟持面40は、パック容器素材1を挟み込んで挟持部本体15の受動側挟持面24に密着し、パック容器素材1を挟持する。このとき、挟持部片18は、L字状に形成されているため、両挟持面24、40において、浮きを生ずることなく一様にパック容器素材1の切り代部5を挟持することができる。また、能動側挟持面40には、受動側挟持面24の凹部29に対応してその上下中間位置に水平方向に延在する凸部39が設けられている。凸部39の突出寸法に対し凹部29の窪み寸法は幾分大きく形成され、これに挟み込まれたパック容器素材1の切り代部5が、凸部39に添って湾曲するようになっている。これにより、パック容器素材1の挟持部11からの脱落が防止される。
【0036】
各掛止部12は、挟持部本体15の端部に延設され、その下面には逆略「U」字状の係合溝45が設けられている。係合溝45は、パック吊下げ治具10を後述する一対の水平アーム56に掛け止めする部位であり、溝底(上部)が水平アーム56の断面に合致する半円径に形成されると共に、開放端に向かって僅かに拡開形成されている。パック吊下げ治具10を、一対の水平アーム56に掛け止め(セット)すると、両係合溝45が一対の水平アーム56に係合してパック吊下げ治具10が一対の水平アーム56間に横架され、且つ一対の水平アーム56の間にパック容器素材1が吊り下がる。
【0037】
図2に示すように、把持部13は、略逆「U」字状の取っ手であり、両サイドブロック部26の上面間に渡すようにネジ止めされている。この把持部13を持つことでパック容器素材1の移動およびパック封止装置50へのセットを簡単なものとすることができる。
【0038】
ここで、パック容器素材1のパック吊下げ治具10への装着について説明する。なお、パック吊下げ治具10は、予めこれをストックする一対の水平アーム付のスタンド(専用ストッカー)に保持されており、この状態で、インクを注入したパック容器素材1を挟持する。先ず、パック吊下げ治具10のユリアネジ19を緩めて、挟持部片18を開いておき、パック容器素材1の尾端を、受動側挟持面24に添わせて下側から入れ込み、ガイド突起27に幅規制させながら、位置規制プレート16に当接させる。この後、挟持部片18を閉じるように回動させ、挟持部本体15と挟持部片18との両挟持面24、40において、パック容器素材1の切り代部5を挟み込む。ここで、ユリアネジ19で締め付け、挟持部本体15に挟持部片18を固定する。このようにして、パック容器素材1を装着したパック吊下げ治具10は、その複数個をスタンド(キャスタ付が好ましい)にセットした状態で、パック封止装置50に運び込まれる。
【0039】
図6に示すように、パック封止装置50は、機台51と、機台51上の左右にそれぞれ立設した短丈スタンド部52および長丈スタンド部53からなるスタンドフレーム54と、長丈スタンド部53の上端部に設けられた昇降機構55(高さ調整手段)と、昇降機構55に固定した一対の水平アーム56と、一対の水平アーム56の下方に位置してスタンドフレーム54に支持されたシーラー57と、シーラー57の下方に位置してスタンドフレーム54に支持された膨らみ厚調整部58(膨らみ厚調整手段)と、両スタンド部52、53の間の機台51上に載置され、パック容器素材1から漏洩したインクを受けるインクパン59と、を備えている。
【0040】
昇降機構55は、マイクロメータ等で構成され、その可動子(図示省略)に上記の一対の水平アーム56が取り付けられている。一対の水平アーム56は、2本の丸棒を上記パック吊下げ治具10の一対の掛止部12(係合溝45)の離間寸法に合致させて平行に且つ水平に配設したものであり、パック吊下げ治具10が上側から載せこむようにセットされる。すなわち、一対の水平アーム56は、昇降機構55を介して長丈スタンド部53に支持されている。昇降機構55を手動で操作することにより、一対の水平アーム56が一体として上下し、パック吊下げ治具10を介してこれに吊り下げられたパック容器素材1が上下する。これにより、シーラー57により封止される封止部6の上下位置が調整できるようになっている。なお、昇降機構55は、リードネジとモータを組み合わせたもの(自動)で構成してもよい。
【0041】
シーラー57は、相互に対峙する固定ヘッド61および可動ヘッド62から成る圧着ヘッド63と、可動ヘッド62を進退させるヘッド駆動機構64と、可動ヘッド62に組み込んだヒーター(図示省略)の温度を制御する温度制御部と、を備えている。固定ヘッド61は、パック容器素材1の幅に対応する幅を有し、長丈スタンド部53に水平姿勢となるように固定されている。可動ヘッド62は、固定ヘッド61と同様にパック容器素材1の幅に対応する幅を有し、ヘッド駆動機構64に水平姿勢となるように進退自在に取り付けられている。ヘッド駆動機構64は、短丈スタンド部52の上端部に支持されており、モータ駆動或いはソレノイド駆動で可動ヘッド62を固定ヘッド61に向かって進退させる。ヒーターを駆動すると共にヘッド駆動機構64を駆動し、可動ヘッド62を固定ヘッド61に向かって前進させると、両ヘッド62、63間に吊り下げられているパック容器素材1の封止部6が両ヘッド62、63により挟持されると共に熱圧着される。これにより、インクを満たしたパック容器素材1が封止される。
【0042】
膨らみ厚調整部58は、パック容器素材1の袋体4の前後に対面して臨む可動押圧プレート70および固定押圧プレート71と、可動押圧プレート70を固定押圧プレート71に向かって進退させるプレート駆動機構72と、を備えている。固定押圧プレート71は、パック容器素材1の略下半部に対応する面積を有して矩形に形成され、一対のブラケット73を介して長丈スタンド部53に鉛直姿勢で固定されている。可動押圧プレート70は、固定押圧プレート71と同様に、パック容器素材1の略下半部に対応する面積を有して矩形に形成され、プレート駆動機構72の進退ロッド74の先端に鉛直姿勢で固定されている。プレート駆動機構72は、モータ駆動により、進退ロッド74を介して可動押圧プレート70を固定押圧プレート71に向かって進退させる。プレート駆動機構72を駆動して可動押圧プレート70を前進させ、固定押圧プレート71との間でパック容器素材1(袋体4)の膨らみ厚が所望の厚みとなるように、これを押圧する。パック容器素材1(袋体4)の膨らみ厚は、充填されるインク量に比例しており、パック容器素材1を押圧挟持する可動押圧プレート70と固定押圧プレート71との離間寸法で、充填するインク量が決定する。
【0043】
パック封止装置50によりパック容器素材1を封止する際、先ず、水平アーム56に、後述するパック吊下げ治具10に保持されたパック容器素材1を、吊り下げた状態でセットする。この後、水平アーム56を上下に移動させ、パック容器素材1の位置決めを行うことで、圧着ヘッド63と封止部6の上下位置を合わせ込む。ここで、膨らみ厚調整部58により、パック容器素材1を挟んで所定の膨らみ厚に調整する。この調整により、インクの液位は封止部6を越えて上昇する。この状態において、シーラー57を駆動し、封止部6を熱圧着により封止する。その後、パック容器素材1をパック封止装置50から取り外し、その切り代部5が切り取られことで、パック容器に所定量のインクを充填したインクパックが出来上がる。なお、パック封止装置50に、封止部6から溢れたインクを吸引する装置および切り代部5をカットする装置を、組み込むようにしてもよい。
【0044】
この構成によれば、パック吊下げ治具10を装着したパック容器素材1は、パック吊下げ治具10を持つことにより、パック容器素材1を持つことがなく、パック封止装置50への移動およびパック封止装置50へのセットを行うことができる。これにより、パック容器素材1に注入されたインクがこぼれることなく、パック容器素材1を取り扱うことができる。また、パック封止装置50への移動に際し、複数個のパック容器素材1を専用ストッカーにより、持ち運ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態に用いられるパック容器素材の平面図である。
【図2】本実施形態に係るパック吊下げ治具に吊り下げ保持されたパック容器素材の平面図である。
【図3】開いた状態のパック吊下げ治具の平面図である。
【図4】(a)は、挟持部本体の上面図であり、(b)は、挟持部本体の正面図である。
【図5】(a)は、挟持部片の上面図であり、(b)は、挟持部片の背面図である。
【図6】本実施形態に係るパック封止装置の模式図である
【符号の説明】
【0046】
1…パック容器素材 3…インク供給口 5…切り代部 6…封止部 10…パック吊下げ治具 11…挟持部 12…掛止部 13…把持部 15…挟持部本体 16…位置規制プレート 18…挟持部片 19…ユリアネジ 24…受動側挟持面 27…ガイド突起 28…溝条 29…凹部 35…回動支持部 36…挟持部片部 39…凸部 40…能動側挟持面 45…係合溝 50…パック封止装置 54…スタンドフレーム 55…昇降機構 56…水平アーム 57…シーラー 58…膨らみ厚調整部 59…インクパン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に供給口を有し、尾端から切り代部を隔てた帯状の封止部を未封止とした袋状のパック容器素材に、必要量の機能液を満たすと共に、尾端を上にした状態で前記パック容器素材を吊り下げるように保持するパック吊下げ治具であって、前記パック容器素材を保持した状態でパック支持部材を有するスタンドにセット可能に構成されたものにおいて、
下側から前記パック容器素材の尾端が突き当てられる位置規制部を有すると共に、前記位置規制部に尾端を突き当てた状態で前記切り代部を挟持する挟持部と、
前記挟持部に連なり、前記パック支持部材に掛け止めするための掛止部と、
を備えたことを特徴とするパック吊下げ治具。
【請求項2】
前記挟持部は、
前記位置規制部の下方に連なり受動側挟持面を形成した挟持部本体と、
前記挟持部本体に設けた鉛直軸に回動自在に取り付けられ、能動側挟持面を形成した挟持部片と、
前記挟持部片と前記挟持部本体との間に前記切り代部を挟持した状態で、前記挟持部片を前記挟持部本体に締結する締結部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載のパック吊下げ治具。
【請求項3】
前記受動側挟持面および前記能動側挟持面の少なくとも一方には、鉛直方向に延びる溝条が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のパック吊下げ治具。
【請求項4】
前記挟持部本体には、前記切り代部の幅方向を位置規制すると共に、前記切り代部の両側部を前記受動側挟持面に向かって抱き込むように位置規制する一対のガイド突起が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載のパック吊下げ治具。
【請求項5】
前記受動側挟持面および前記能動側挟持面のいずれか一方には、前記切り代部の幅に対応して水平方向に延在する凸部が形成され、他方には、前記凸部を受容すると共に前記切り代部の幅に対応して水平方向に延在する凹部が形成されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のパック吊下げ治具。
【請求項6】
前記挟持部片は、前記能動側挟持面を有する挟持部片部と、前記鉛直軸に軸支される回動支持部とで、水平方向に「L」字状に延在していることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のパック吊下げ治具。
【請求項7】
前記挟持部の上面には、把持部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のパック吊下げ治具。
【請求項8】
前記パック支持部材は、一対の水平アームで構成されると共に、前記掛止部は、前記一対の水平アームに横架されるよう、前記挟持部の両外端部に設けた一対のもので構成され、
前記各掛止部には、前記各水平アームに上側から係合する係合溝が形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のパック吊下げ治具。
【請求項9】
前記パック容器素材を保持した請求項1ないし8のいずれかに記載のパック吊下げ治具がセットされる前記スタンドと、
前記パック吊下げ治具を介して一対の前記パック支持部材に掛け止めされた前記パック容器素材の前記封止部に前後から臨む圧着ヘッドを有し、前記圧着ヘッドにより前記封止部を熱圧着により封止するシーラーと、
前記パック容器素材に前後から臨む押圧手段を有し、前記押圧手段により前記パック容器素材の膨らみ厚を調整する膨らみ厚調整手段と、を備えたことを特徴とするパック封止装置。
【請求項10】
前記スタンドに設けられ、前記パック支持部材の上下位置を微調整する高さ調整手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項9に記載のパック封止装置。
【請求項11】
前記パック容器素材から漏洩した機能液を受ける機能液受けパンを、さらに備えたことを特徴とする請求項9または10に記載のパック封止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−152563(P2007−152563A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346515(P2005−346515)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】