説明

パック電池および充電システム

【課題】二次電池を安全に充電するに必要な情報を、充電器に確実に通知して安全に充電することができ、しかも電池温度を検出して充電制御する旧タイプの充電器を用いても安全に充電することのできるパック電池および充電システムを提供する。
【解決手段】二次電池の端子電圧と温度とに応じて前記二次電池を安全に充電する為の充電条件を4つに区分し、充電器に対して4段階の互いに異なる電圧レベルの制御電圧を択一的に出力する。特に二次電池の端子電圧を予め3段階に区分した電圧領域と、二次電池の充電可能な温度領域を予め2段階に区分した温度領域との組合せに応じて予め定めた4つの充電条件の1つを、前記二次電池の端子電圧と温度とに応じて選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を安全に充電するに必要な情報を、充電器に確実に通知して安全に充電することができ、しかも電池温度を検出して充電制御する旧タイプの充電器を用いても安全に充電することのできるパック電池および充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池を備えたパック電池を充電器に接続して充電する場合、二次電池を満充電状態まで効率的に充電することは勿論のこと、安全に充電することが重要である。特に二次電池としてリチウムイオン電池を用いる場合、充電の安全性を十分に保証することが要求される。
【0003】
ちなみにリチウムイオン電池を安全に充電する上での充電電圧および充電電流を定める条件(安全規格)として、次のような規格が推奨されている。この規格は、例えば図8に示すように標準温度域(0〜45℃)での上限充電電圧(充電禁止電圧)は4.25V/cellとして定められ、また高温度域(45〜60℃)での上限充電電圧(充電禁止電圧)は4.15V/cellとして定められており、上記各温度域を外れる(0℃以下または60℃以上)場合には充電そのものが禁止されている。また二次電池に対する最大充電電流も、例えば標準温度域中の低温度域(0〜10℃)で0.5C、上記低温度域以外(10〜60℃)で1.0Cとして定められている。尚、標準温度領域(0〜60℃)の全体に亘ってその最大充電電流を、1.0Cまたは1.5Cとして設定することも行われる。
【0004】
このように規定された安全条件を満たしながら二次電池を充電するべく、二次電池を備えたパック電池に、二次電池の端子電圧(セル電圧)を検出する電圧検出手段と、二次電池の温度(セル温度)を検出する温度検出手段とを設け、これらの各検出手段にて検出された電圧と温度とに従って二次電池に対する充電を制御することが提唱されている(例えば特許文献1を参照)。具体的には特許文献1には、電池温度に応じて二次電池に対する充電電圧を制限し、更には充電電流を制限しながら二次電池を充電することが開示される。
【0005】
また特許文献1には、予め区分した温度域毎に最大充電電圧を規定すること、また二次電池の端子電圧が上記最大充電電圧よりも高いとき、温度域毎に定められた電圧レベルの信号を電子機器(例えば充電器)に出力することが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−44946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで前述した充電制御を行うには、パック電池と、このパック電池が接続される充電器とを、予め定めた充電制御の仕様に基づいて構築することが必要である。具体的には図9に示すように、制御端子CHGから種々の充電制御信号を出力するように構成されたパック電池Aに対して、充電器Bには上記充電制御信号を判定してパック電池(二次電池)Aに対する充電を制御する制御部を設けることが必要である。しかし制御端子CHGを介して充電器Bとの間で、前述した特許文献1に示されるような充電制御信号を伝達する場合、一般的には充電器Bでの制御が複雑化することが否めない。
【0008】
尚、図9中、1は複数の電池セルを直並列に接続した二次電池、2は二次電池(電池セル)1の端子電圧(セル電圧)を検出する電圧検出部、3は二次電池1の充放電電流を検出する電流検出部、4は二次電池1の温度を検出する温度検出手段としてのサーミスタ、5はマイコンや保護IC等により構成される充電制御部、そして6,7は二次電池1の充放電路に直列に介挿されて前記充電制御部5により駆動される二次電池保護用のFETである。また8は二次電池1に充電電力を供給する電源部であり、9はマイコン等により構成されて前記電源部8の充電動作を制御する制御部である。
【0009】
これに対して従来の一般的なパック電池(旧パック電池)Cは、例えば図8に示すように電池温度を検出する為の温度端子(サーミスタ端子)THを備えているに過ぎない。そしてこのパック電池Cを充電する充電器(旧充電器)Dは、例えばその出力端子から二次電池1の端子電圧を検出し、また前記温度端子THを介してパック電池(二次電池1)の温度を検出することで、パック電池Cとは別個に前記二次電池1の充電を制御するように構成されている。つまり上記パック電池Cと充電器Dとは、前述したパック電池Aと充電器Bとにより構築される充電システムとは異なる体系の充電システムを構築している。
【0010】
しかし図9において破線で示すように前述したパック電池Aを、旧タイプの充電器Dに装着した場合でも二次電池1を安全に充電したいと言う要求がある。しかしこの場合、旧タイプの充電器Dにおいてはパック電池Aから与えられる充電制御信号が持つ意味を判定する機能を備えていないので、該充電制御信号を有効に活用して充電制御を実行することができないと言う問題がある。
【0011】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、二次電池を安全に充電するに必要な情報を、充電器に確実に通知して安全に充電することができ、また前述した旧タイプの充電器を用いても安全に充電することのできるパック電池および充電システムを提供することにある。
【0012】
即ち、本発明は、パック電池において検出した二次電池の端子電圧および電池温度により決定される該二次電池を安全に充電する為の充電制御情報を、簡易にしかも確実に充電器に通知して該充電器での充電制御の簡易化を図ると共に、このような充電制御機能を備えていない旧タイプの充電器にパック電池を接続した場合でも、二次電池を安全に充電することのできるパック電池および充電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するべく本発明に係るパック電池は、二次電池と、この二次電池の端子電圧を検出する電圧検出手段と、前記二次電池の温度を検出する温度検出手段と、これらの各検出手段にてそれぞれ検出された前記二次電池の端子電圧と温度とに応じて前記二次電池を安全に充電する為の充電条件を複数に区分するロジック回路と、このロジック回路の出力に応じて前記二次電池を充電する充電器に対して複数段階の互いに異なる電圧レベルの制御電圧を択一的に与える出力回路とを具備し、
前記ロジック回路は、前記二次電池の端子電圧を予め複数段階(例えば3段階)に区分した電圧領域と、前記二次電池の充電可能な温度領域を予め複数段階(例えば2段階)に区分した温度領域との組合せに応じて予め定めた複数(例えば4つ)の充電条件の1つを、前記各検出手段にてそれぞれ検出された前記二次電池の端子電圧と温度とに応じて選択することを特徴としている。
【0014】
ちなみに前記二次電池の充電可能な温度領域は、例えば標準温度域(例えば0〜45℃)と高温度域(例えば45〜60℃)であって、
前記複数段階(例えば3段階)の電圧領域を区分する電圧閾値は、前記標準温度域における標準推奨充電電圧およびこの標準推奨充電電圧よりも低く定められた前記高温度域における高温推奨充電電圧であり、
前記ロジック回路は、前記二次電池の温度が前記標準温度域および高温度域を外れるとき(0℃以下または60℃以上)には前記二次電池の充電を禁止する充電禁止状態、前記二次電池の温度が前記標準温度域で、且つ前記二次電池の端子電圧が前記標準推奨充電電圧以上のときには前記二次電池の充電電流を制限して充電を許可する電流制限状態、前記二次電池の温度が前記高温度域で、且つ前記二次電池の端子電圧が該高温推奨充電電圧以上のときには前記二次電池の充電電圧を制限して充電を許可する電圧制限状態、それ以外の場合には該当する温度域での推奨充電電圧にて前記二次電池の充電を許可する充電許可状態をそれぞれ示す出力信号を択一的に生成するように構成される。
【0015】
尚、前記制御電圧は、例えば前記ロジック回路の出力信号が前記充電禁止状態、前記充電許可状態、前記電圧制限状態、前記電流制限状態の順にその電圧レベルが段階的に低下する電圧として生成される。
また前記二次電池は、複数個のリチウムイオン電池を直並列に接続したものであって、前記電圧検出手段は、前記リチウムイオン電池のセル電圧を検出するものからなる。
【0016】
また本発明に係る充電システムは、前述した構成のパック電池と、このパック電池に接続されて前記二次電池を充電する充電器とからなり、
前記充電器は、前記パック電池から与えられる制御電圧のレベルを判定して前記二次電池に加える充電電圧および/または充電電流を制限する充電制御手段を備えるように構成される。
【0017】
或いは前記充電器は、前記パック電池から与えられる制御電圧を前記二次電池の温度情報として入力し、前記制御電圧のレベルが予め設定した上限電圧と下限電圧とにより規定される電圧範囲を外れたときに前記二次電池の温度が該二次電池を充電可能な温度域を外れたとして前記二次電池の充電を停止するものからなり、
特に前記パック電池における前記出力回路は、前記ロジック回路が選択した充電条件が充電禁止であるとき、および/または充電電流の制限であるときに、前記上限電圧と下限電圧とにより規定される電圧範囲を外れた電圧レベルの制御電圧を出力するように構成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るパック電池によれば、二次電池を安全に充電する為の充電条件を、二次電池の端子電圧(セル電圧)と電池温度とに応じて複数(例えば4つ)の充電条件として設定し、これらの充電条件を複数段階(例えば4段階)の互いに異なる電圧レベルの制御電圧(例えば4ステート出力)として出力するだけなので、上記充電条件を簡易に、しかも確実に充電器に通知することができる。
【0019】
また充電器においては、上記複数段階(例えば4段階)の互いに異なる電圧レベルの制御電圧を判定するだけなので、その判定処理が容易であり、また二次電池に対する充電制御をパック電池に委ねることができるので、その制御の簡素化を図ることができる。
【0020】
特に二次電池を安全に充電する為の充電条件として該二次電池の充電可能な温度領域を、例えば標準温度域(例えば0〜45℃)と高温度域(例えば45〜60℃)として設定し、上記温度域(標準温度域と高温度域)を外れる場合(例えば0℃以下または60℃以上)には一義的に二次電池の充電を禁止するものとしている。そして二次電池の温度が前記標準温度域に含まれる場合には該二次電池の端子電圧が標準推奨充電電圧を越えるか否かによって、また高温度域である場合には前記二次電池の端子電圧が前記標準推奨充電電圧よりも低く定められた高温推奨充電電圧を越えるか否かによってその充電制御の形態を選択するだけなので、二次電池に対する安全性を保証しながら簡易に二次電池を充電することができる。
【0021】
しかも充電器が上述した充電制御に対応していない旧タイプのものである場合には、前述した制御信号を該充電器の動作をオン・オフする為の温度情報として与えることになるので、該充電器が備える機能を有効に活用して二次電池を安全に充電することができる。具体的には電流制限して二次電池を充電する場合には、既に二次電池が或る程度充電された状態なので、前述した電流制限を示す情報を電池温度の上昇と捉え、その充電を一時的に停止することで二次電池を安全に充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るパック電池の要部概略構成図。
【図2】二次電池の端子電圧および電池温度に対する判定区分と、これらの判定区分に応じて設定される前記二次電池を安全に充電する為の充電条件の例を示す図。
【図3】図2に示した充電条件と、その充電条件に応じて出力される制御電圧との関係を示す図。
【図4】4段階の互いに異なる電圧レベルの制御電圧を択一的に生成する出力回路の構成例を示す図。
【図5】出力回路の別の構成例を示す図。
【図6】充電器における充電制御の流れの例を示す図。
【図7】充電制御に伴う電池温度の変化と、充電電圧および充電電流の変化の様子を示す図。
【図8】リチウムイオン電池の充電に対する安全規格の例を示す図。
【図9】充電安全対策を施したパック電池と充電器とのセット、および安全対策を施していないパック電池と充電器とのセット間での接続関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係るパック電池と、このパック電池に対する充電システムについて説明する。
この実施形態に係るパック電池Eは、基本的には図9に示したパック電池Aと同様な構成を有する。具体的にはパック電池Eは、一対の充放電端子[+],[−]を介して外部機器(充電器)により充電され、また前記一対の充放電端子[+],[−]に接続された外部機器(電子機器)に充電電力を放電する二次電池1を備える。この二次電池1は、複数の二次電池セル、例えばリチウムイオン電池セルを直並列に接続して構成される。図1に示す例では、2個ずつ並列接続した電池セルを3段直列に接続した構成の二次電池1を示すが、その構成はパック電池Eに要求される電圧・電流仕様に応じて決定すれば良い。
【0024】
ちなみにパック電池Eに対する充電は、前記二次電池1がリチウムイオン電池である場合には、基本的には最大充電電流を0.5〜1.0C程度に規制すると共に、最大充電電圧を4.2V/cell程度に規制した定電流・定電圧充電により行われる。そして二次電池1の端子電圧(セル電圧)が所定の設定値以上に達したとき、或いはその充電電流が所定の設定値以下まで低下したとき、これを満充電として検出し、その充電が停止される。
【0025】
さて前記パック電池Eは、前記二次電池1の端子電圧を各段の電池セル毎にセル電圧として検出する電圧検出部2、および前記二次電池1の充放電路に直列に介挿されて該二次電池1の充放電電流を検出する電流検出部3を備え、更に該パック電池Eの温度、ひいては前記二次電池1の温度(セル温度)を検出するサーミスタ(温度検出手段)4を備える。
【0026】
マイコンや保護IC等により構成される充電制御部5は前記二次電池1に対する充電を制御すると共に、前記二次電池1を過充電や過放電から保護する役割を担う。具体的にはこの充電制御部5は、前記電圧検出部2により検出される前記二次電池1の端子電圧(セル電圧)、およびサーミスタ4を介して検出される二次電池1の温度(セル温度)に従って前記二次電池1の充電を制御すると共に、前記電流検出部3により検出される充放電電流に基づいて異常電流から二次電池1を保護する役割を担う。
【0027】
ちなみに充電制御部5による前記二次電池1の保護は、前記二次電池1の充放電路に直列に介挿された充電禁止用および放電禁止用のFET6,7を選択的に駆動し、これによって二次電池1の充放電路を遮断することによって行われる。尚、充電禁止用および放電禁止用のFET6,7については、図1に示す二次電池1のマイナス側の充放電路に代えて、該二次電池1のプラス側の充放電路に設けられる場合もある。
【0028】
基本的には上述した如く構成されるパック電池において本発明に係るパック電池Eが特徴とするところは、前記充電制御部5が前記二次電池1の端子電圧(セル電圧)と該二次電池1の温度(セル温度)とに応じて、該パック電池Eが接続されて前記二次電池1の充電に用いられる充電器に対して、その充電動作を制御する制御信号を出力するように構成している点にある。特に充電制御部5は、リチウムイオン電池を安全に充電し得る充電安全規格として、前述した図7に示したように温度範囲が規定(推奨)されていることから、前記二次電池1を充電可能な温度域を、例えば0〜45℃の標準温度域と、45〜60℃の高温度域とに分けて設定し、それ以外の温度域においては二次電池1に対する充電を禁止するようにしている。
【0029】
より具体的には前記充電制御部5は、前記二次電池1の温度Tが0℃以下(T≦0℃)になったか否かを判定し、また前記二次電池1の温度Tが60℃以上(60℃≦T)になったか否かを判定する。そしてこれらの判定条件が満たされたときに前記二次電池1の充電を禁止する。また上記判定条件が成立しない場合、つまり二次電池1の充電が許可される場合には、二次電池1の温度Tが前述した標準温度域であるか、或いは高温域であるかの判定が行われる。この判定は、例えば該二次電池1の温度Tが45℃以上(45℃≦T)であるか否かを判定することによって行われる。従って厳密には前述した標準温度域は1〜44℃(0℃<T<45℃)として設定され、また高温度域は45〜59℃(45≦T<60℃)として設定される。
【0030】
また前記充電制御部5は、リチウムイオン電池を安全に充電し得る上限充電電圧と最大充電電流とが、前述した図8に示した如く区分した電池温度範囲に応じてそれぞれ設定されていることから、各温度域における上限充電電圧に基づいてそれぞれ設定される推奨充電電圧を二次電池1の電池電圧(セル電圧)を判定する閾値としている。具体的には標準温度域においてはその上限充電電圧(4.25V/cell)に基づいて決定される標準推奨充電電圧(例えば4.20V/cell)を判定閾値として設定している。また高温度域においては、当該高温度域における上限充電電圧(4.15V/cell)に基づいて決定される高温推奨充電電圧(例えば4.10V/cell)を判定閾値としている。
【0031】
そして上記標準温度域においては、前記二次電池1の端子電圧(セル電圧)が前記標準推奨充電電圧(例えば4.20V/cell)を越える場合には、該二次電池1が満充電状態に近いとしてその最大充電電流を制限して充電し、また高温度域において前記二次電池1の端子電圧(セル電圧)が前記高温推奨充電電圧(例えば4.10V/cell)を越える場合には、その充電電圧を制限して二次電池1を充電するように、その充電を制御するものとなっている。
【0032】
換言すれば前記充電制御部5におけるロジック回路5aは、二次電池1の端子電圧(セル電圧)と電池温度とに応じて、図2に示すように電池温度Tが標準温度域および高温度域から外れる場合(T≦0℃または60℃≦T)には、前記二次電池1の端子電圧に拘わることなく該二次電池1の充電を禁止するステータス[充電禁止状態;4]を設定している。
【0033】
また前記ロジック回路5aは、前記二次電池1の電池温度Tが標準温度域にある場合(0℃<T<44℃)には、該二次電池1の端子電圧(セル電圧)を前述した閾値(標準推奨充電電圧)と比較判定している。そして前記端子電圧(セル電圧)Vが前記標準推奨充電電圧(例えば4.20V/cell)を越えるまでは定電流・定電圧充電による通常の充電を許可するステータス[充電許可状態;1]を設定し、また端子電圧(セル電圧)Vが前記標準推奨充電電圧を越えた場合には、その充電電流を、例えばその最大充電電流の1/2に制限するステータス[電流制限状態;2]を設定している。
【0034】
更に前記ロジック回路5aは、前記二次電池1の電池温度Tが高温度域にある場合(45℃<T<59℃)には、該二次電池1の端子電圧(セル電圧)を前述した閾値(高温推奨充電電圧)と比較判定している。そして端子電圧(セル電圧)Vが前述した高温推奨充電電圧(例えば4.10V/cell)を越えるまでは前述した定電流・定電圧充電による通常の充電を許可するステータス[充電許可状態;1]を設定し、端子電圧(セル電圧)Vが高温推奨充電電圧を越えた場合には、その充電電圧を制限するステータス[電圧制限状態;3]を設定している。
【0035】
そして前記充電制御部5における出力回路5bは、上述したロジック回路5aからの判定出力結果(ステータス)を受け、例えば図3に示すように各ステータスに応じて定められた電圧レベルの制御信号を生成し、これを前述した制御端子CHGから出力するものとなっている。ちなみに前記充電禁止状態[4]を示すステータスに対しては、前記出力回路5aは、前述した旧タイプの充電器Dが温度異常(高温異常)として検出可能な最も高い電圧(例えば1.7V)として設定される。また前述した電流制限状態[2]を示すステータスに対しては、二次電池1が満充電に近い状態であることから、前述した旧タイプの充電器Dが温度異常(低温異常)として検出可能な最も低い電圧(例えば0V)として設定される。
【0036】
更に前記出力回路5bは、前述した充電許可状態[1]を示すステータスに対しては、旧タイプの充電器Dが充電許可として確実に検出し得る電圧として、例えば1.5Vを生成し、更に電圧制限状態[3]を示すステータスに対しては、例えば1.3Vを生成するものとなっている。
【0037】
これらの4つのステータスをそれぞれ示す制御信号の互いに異なる各電圧は、前記充電制御部5を構成するマイコンや保護ICの駆動電圧が、例えば3〜5Vの範囲で変動すること、またその内部の参照基準電圧が、例えば2.3Vとして設定されることを考慮して定めたものである。またどのステータスを、どの電圧に対応付けるかは前述した旧タイプの充電器Dの検出特性(動作特性)を配慮して定めたものである。従って充電制御部5の動作仕様が上述した例と異なる場合には、少なくとも充電禁止状態[4]および電流制限状態[2]において、旧タイプの充電器Dがこれを充電禁止として判定しうるようにすれば、その仕様に応じて各電圧レベルを定めれば良いことは言うまでもない。また各ステータスに対応する電圧レベルの大小関係を逆に設定することも勿論可能である。
【0038】
尚、上述した如く設定された制御信号を生成する出力回路5aについては、例えば図4に示すように電源電圧(内部基準電圧)を分圧して1.7V,1.5V,1.3Vの電圧を生成する抵抗ラダー回路51の出力を、前記ロジック回路5aの出力を受けて択一的に導通するスイッチ回路52を介して選択し、これを出力バッファ53を介して外部出力するようにすれば良い。
【0039】
また或いは、例えば図5に示すようにロジック回路5aからの出力を、前述した各ステータスに応じてパルス幅変調(PWM変調)された信号として得、レベルシフト回路54においてそのパルス幅に応じた電圧に変換し、これを出力バッファ(FET)55を介して出力するようにしても良い。この場合には、例えば充電器B,D側に設けられたプルアップ抵抗Rを利用して、出力回路5bに外付けされるコンデンサ56を充電し、その充電電圧を外部出力として取り出すようにすることが好ましい。
【0040】
かくして上述した如く二次電池1の端子電圧(セル電圧)および電池温度に応じて前述した電圧レベルの異なる4つの制御信号を択一的に出力するパック電池によれば、その仕様に応じた充電器Bにおいては、例えば図6に示すようにパック電池側から与えられる制御信号を判定するだけで、パック電池に対する安全性を保証しながら該パック電池の充電を簡易に制御することができる。
【0041】
具体的には充電器Bにおいては、パック電池から出力される制御信号の状態を判定し<ステップS1〜S4>、制御信号が状態[4]であれば二次電池1に対する充電を中断する<ステップS5>。また制御信号が状態[1]であればそのときの状態に応じて二次電池1に対する充電を制御する<ステップS6>。具体的には通常充電中であるならば、その通常充電を継続し、充電中断中であれば充電を再開し、また電圧を下げた状態で充電中であるならば、その充電電圧を元に戻して通常充電する。
【0042】
また制御信号が状態[2]であるならば充電電流を制限して充電し<ステップS7>、状態[3]であるならば充電電圧を制限して充電する<ステップS8>。以上の処理は、二次電池1の満充電が検出されるまで繰り返し実行する<ステップS9>。そして二次電池1の充電が完了したならば、例えば該二次電池1の開放端子電圧OCVを判定することで<ステップS10>、二次電池1が正常に充電されたか、或いは充電以上のままその充電が終了したかを判定する。
【0043】
従って上述した充電制御によれば、パック電池は、例えば図7に示すようにその電池温度Tと端子電圧とに応じて充電電流が規制されながら充電される。具体的には常温状態(例えば10℃<T<44℃)で二次電池1の充電を開始した場合、充電許可のステータス[1]に従って前記二次電池1は前述した定電流・定電圧充電により通常充電される。この充電に伴って二次電池1の端子電圧(セル電圧)は次第に上昇し、また図7に破線で示すように二次電池1の相対充電容量RCOCも次第に上昇する。
【0044】
そして二次電池1が連続して或る程度充電されると、これに伴って該二次電池1の温度Tがその自己発熱に起因して次第に上昇し、また二次電池1の端子電圧(セル電圧)も次第に上昇する。このような充電過程において二次電池1の端子電圧が前述した標準推奨充電電圧(例えば4.20V/cell)に達すると、パック電池からは電流制限のステータス[2]が出力され、これを受けて充電電流が制限される。この電流制限は、例えばその充電電流を直前の充電電流の0.7倍に設定することによって行われる。するとこの充電電流の制限に伴って二次電池1の自己発熱が抑えられ、該二次電池1の温度が若干低下する。この結果、電池温度が低温度域に保たれ、また端子電圧も前記標準推奨充電電圧以下となるので、前述したステータスが充電許可を指令する[1]に戻される。そして二次電池1は新た設定された充電電流(制限された充電電流)の下で充電される。
【0045】
しかしながらこのとき、二次電池1は既に或る程度充電されているので、上述した電流制限下での充電であっても、比較的短時間の内にその端子電圧が前述した標準推奨充電電圧に達する。従ってパック電池においては再び前記ステータスを[2]として、充電器に対して電流制限の指令を与える。この結果、前述した充電電量の低減が再び実行され、これに伴って電池温度が低下し、また端子電圧も低下するので、再度、ステータスを[1]として二次電池1の充電が継続される。以降、二次電池1の端子電圧が標準推奨充電電圧に達する都度、ステータス[2]が発せられて、その充電電流が段階的に低減される。
【0046】
尚、図7には例示しないが、上述した充電過程において前記二次電池1の温度が45℃を越えた場合には、ステータス[3]が発せられて、充電電圧を制限する指令が与えられる。そしてこの充電電圧の制限により前記二次電池1の発熱が抑えられてその電池電圧が低温度域に戻った場合には、再び、前述した電流制限の下で二次電池1の充電が継続される。そして二次電池1の充電電流が所定の設定値以下となり、またその端子電圧が所定の設定値に達した場合には、これを二次電池1が満充電に達したと判定して、その充電を停止する。
【0047】
このようにして二次電池1の電池温度と端子電圧とに応じて充電条件を可変設定しながら二次電池1を充電する充電制御によれば、電池温度が45℃を越えた時点でその充電電圧自体を制限し、また端子電圧が設定電圧を越える都度、その充電電流を制限するので、全体的には二次電池1の温度を45℃以下に保ちながら該二次電池1を満充電まで安定に充電することができる。しかも充電電流を段階的に低減しながら二次電池1を充電するので、その満充電を正確に判定することができる等の効果が奏せられる。
【0048】
尚、前述したパック電池が、前述した充電条件の制御機能を備えていない旧タイプの。充電器Dに接続された場合には、該充電器Dにおいてはパック電池から与えられる制御信号の電圧レベルが、図3に示す充電許可の条件を満たしている否かだけを判定することになる。そして制御信号が状態[4]であり、二次電池1の温度が高温異常であることが示された場合には、充電器Dは速やかにその充電を中止する。また制御信号が電流制限を示す状態[2]である場合には、充電器Dはこれを二次電池1の温度が低温異常であると看做してその充電を中止する。そして充電器Dは前記制御信号が充電許可を示す状態[1]または電圧制限を示す状態[3]である場合にだけ、前記二次電池1に対する充電を実行する。
【0049】
従って上述した如く構成されたパック電池によれば、その仕様に応じた充電器Bに接続した場合は勿論のこと、旧タイプの充電器Dに接続した場合でも、該充電器B,Dに対して充電制御指示を適切に与えてその充電を安全に制御することができる。また充電器側にとっては、その充電制御をパック電池側に委ねることができるので、その制御の簡易化を図ることができる等の効果が奏せられる。
【0050】
更に本発明に係るパック電池によれば、前述したように二次電池1の端子電圧(セル電圧)および電池温度に応じて電圧レベルの異なる4つの制御信号を択一的に出力してその充電条件を制御するだけなので、従来のパック電池におけるサーミスタ端子TMが担う役割を、前述した1つの制御端子CHGにて兼ねることができる。換言すれば旧タイプの充電器Dにおいては前記制御端子CHGを、サーミスタ端子THであるとみなして、その充電を制御することができる。これ故、パック電池に設けられる端子数が増大することがなく、複数の端子がそれぞれ担う役割の共通化を図り得る等の効果が奏せられる。
【0051】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。前述した4つの状態を示す制御信号の電圧レベルは、その仕様に応じて定めれば良いものであり、4つの状態と電圧レベルとの対応関係については、旧タイプの充電器の検出特性(検出仕様)を勘案して設定すれば十分である。またここではリチウムイオン電池の充電について例示したが、他のタイプの二次電池に対する充電を制御する場合にも同様に適用可能である。
【0052】
また前述した背景技術において説明したように、二次電池に対する最大充電電流を、例えば標準温度中の低温度域(0〜10℃)において1.0C、低温度域以外(10〜60℃)において1.5Cとすることも可能である。この場合には低温度域(0〜10℃)でその充電電流を低減することになる。この電流の低減については、前述したようにその充電電流を1/2に一義的に制限しても良いし、2/3程度に制限(例えば1.5Cから1.0Cに低減)することも可能である。
【0053】
更には充電電流を一義的に低減することに変えて、図7を参照して説明したように、充電電流の低減に伴って二次電池1(電池セル)の電圧が所定の電圧(例えば4.20V/cell)に到達する毎に、その電流値を段階的に低減するようにしても勿論良い。この場合、例えばその直前の電流値の0.7倍程度に制限するようにすれば良い。またここでは4ステートの制御信号を出力する例について説明したが、温度範囲を更に細かく区分し、また端子電圧の範囲を更に細かく区分することも勿論可能である。
【0054】
また前述した実施形態においては制御端子CHGが抵抗9a,Rにてプルアップされているものとして説明したが、該制御端子CHGが抵抗を介してプルダウンされる場合にも同様に適用することができる。または制御端子CHGを介するステータスの出力論理を、具体的には出力電圧レベルを逆に設定することも勿論可能である。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
A,B パック電池
C,D 充電器
1 二次電池
2 電圧検出部
3 電流検出部
4 サーミスタ(温度検出手段)
5 充電制御部
5a ロジック回路
5b 出力回路
8 電源部
9 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、この二次電池の端子電圧を検出する電圧検出手段と、前記二次電池の温度を検出する温度検出手段と、これらの各検出手段にてそれぞれ検出された前記二次電池の端子電圧と温度とに応じて前記二次電池を安全に充電する為の充電条件を複数に区分するロジック回路と、このロジック回路の出力に応じて前記二次電池を充電する充電器に対して複数段階の互いに異なる電圧レベルの制御電圧を択一的に与える出力回路とを具備し、
前記ロジック回路は、前記二次電池の端子電圧を予め複数段階に区分した電圧領域と、前記二次電池の充電可能な温度領域を予め複数段階に区分した温度領域との組合せに応じて予め定めた複数の充電条件の1つを、前記各検出手段にてそれぞれ検出された前記二次電池の端子電圧と温度とに応じて選択することを特徴とするパック電池。
【請求項2】
前記ロジック回路は、前記二次電池の端子電圧を予め3段階に区分した電圧領域と、前記二次電池の充電可能な温度領域を予め2段階に区分した温度領域との組合せに応じて予め定めた4つの充電条件の1つを、前記各検出手段にてそれぞれ検出された前記二次電池の端子電圧と温度とに応じて選択するものである請求項1に記載のパック電池。
【請求項3】
前記二次電池の充電可能な2つの温度領域は、標準温度域と高温度域であって、
前記3段階の電圧領域を区分する電圧閾値は、前記標準温度域における標準推奨充電電圧およびこの標準推奨充電電圧よりも低く定められた前記高温度域における高温推奨充電電圧であり、
前記ロジック回路は、前記二次電池の温度が前記標準温度域および高温度域を外れるときには前記二次電池の充電を禁止する充電禁止状態、前記二次電池の温度が前記標準温度域で、且つ前記二次電池の端子電圧が前記標準推奨充電電圧以上のときには前記二次電池の充電電流を制限して充電を許可する電流制限状態、前記二次電池の温度が前記高温度域で、且つ前記二次電池の端子電圧が該高温推奨充電電圧以上のときには前記二次電池の充電電圧を制限して充電を許可する電圧制限状態、それ以外の場合には該当する温度域での推奨充電電圧にて前記二次電池の充電を許可する充電許可状態をそれぞれ示す出力信号を前記制御信号として択一的に生成するものである請求項2に記載のパック電池。
【請求項4】
前記出力信号は、前記ロジック回路の出力信号が前記充電禁止状態、前記充電許可状態、前記電圧制限状態、前記電流制限状態の順にその電圧レベルが段階的に低下する電圧として出力されるものである請求項3に記載のパック電池。
【請求項5】
前記二次電池は、複数個のリチウムイオン電池を直並列に接続したものであって、
前記電圧検出手段は、前記リチウムイオン電池のセル電圧を検出するものである請求項1に記載のパック電池。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のパック電池と、このパック電池に接続されて前記二次電池を充電する充電器とからなり、
前記充電器は、前記パック電池から与えられる制御電圧のレベルを判定して前記二次電池に加える充電電圧および/または充電電流を制限する充電制御手段を備えることを特徴とする充電システム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のパック電池と、このパック電池に接続されて前記二次電池を充電する充電器とからなり、
前記充電器は、前記パック電池から与えられる制御電圧を前記二次電池の温度情報として入力し、前記制御電圧のレベルが予め設定した上限電圧と下限電圧とにより規定される電圧範囲を外れたときに前記二次電池の温度が該二次電池を充電可能な温度域を外れたとして前記二次電池の充電を停止するものであって、
前記パック電池における前記出力回路は、前記ロジック回路が選択した充電条件が充電禁止であるとき、および/または充電電流の制限であるときに、前記上限電圧と下限電圧とにより規定される電圧範囲を外れた電圧レベルの制御電圧を出力することを特徴とする充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−109802(P2011−109802A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261884(P2009−261884)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】