説明

パッケージ、梱包体およびその管理方法

【課題】炭素繊維または炭素繊維プリプレグパッケージにおいて、ICタグ付き紙管を使用したときの通信性能の低下が起こらないパッケージと、そのパッケージを梱包しICタグを用いた製品管理の方法を提供すること。
【解決手段】紙管本体2に非接触パッシブ型のICタグ1を有したパッケージであって、ICタグは紙管の中に埋め込まれているか、または、紙管の内周面または外周面に取り付けられており、炭素繊維パッケージを水平な平面に縦置きにするに際して、ICタグの下端が紙管の中央から上部になるように設置したときに、紙管上部端面とICタグの下端面との距離をr、紙管上部端面と炭素繊維の巻き端面との距離をRとしたとき、R≧rであることを特徴とする炭素繊維パッケージ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維、または炭素繊維プリプレグをICタグ付き紙管に巻き付けたバッケージ、梱包体に関するものであり、さらに詳しくはICタグ付き紙管に巻き付けた管理が容易なパッケージ、梱包体およびその管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から炭素繊維または炭素繊維プリプレグは紙やプラスチック製の円筒体、いわゆる紙管に巻き付けたパッケージとして出荷されており、紙管に製造履歴情報を持つことが求められる。従来この情報は、紙にバーコード情報とともに、必要情報を印刷したラベルを紙管に貼り付けることが一般的であった。一方、製品の流通管理や品質管理には、近年、紙管に固有である情報(ID情報)等を記録可能なタグで、無線通信によりその情報を読み取り、書き込み可能なRFID(Radio Frequency IDentification)を取り付けた紙管が提案されている。特に、RFIDの中でも非接触パッシブ型のICを用いた小型のICタグであれば、かさばらず装着が容易であり、かつ外部電源が不要であるため、様々な対象物に装着することが可能である。
【0003】
近年、従来からの13.56MHz帯もしくはマイクロ波帯(2.45GHz)の非接触ICタグに加えて、わが国でも法改正によりUHF帯(952MHz〜955MHz)を使用することが可能になり、当該UHF帯非接触ICタグの実用化が図られている。UHF帯ICタグは、電磁誘導方式の13.56MHz帯の非接触ICタグに比べて遠距離(3〜5メートル)からの一括読み取りが可能な特徴がある。これはバーコードラベルと違って、ダンボールなどの不透明な包装体に遮蔽されていても、読み取り装置で読みとることができ、目的が終了した段階や、巻き量変更や、製品等級変更など製品状態が変化した時点で情報の書き換えが可能である。
【0004】
このようなICタグ付き紙管はプラスチックフィルム、糸、布、紙、金属箔などの捲装物を巻き付ける紙管として提案されており、ICタグの損傷や剥離を防ぐために紙管本体の端部内周面に嵌合する内筒体にICタグを取り付けたものが知られている(特許文献1)。
【0005】
上記のようなICタグ付き紙管として、ICタグの損傷や剥離対策としてICタグを埋設した円筒形状または球形状のクッション性スポンジ状体や、表面にICタグを貼着した円筒形状のスポンジ状体を紙管内に装着したもの(特許文献2)、紙管筒内にICタグが張り付けられたもの(特許文献3)、あるいは紙管本体の端部肉厚部に刻設したスリットにICタグを装着したものが知られている(特許文献4)。
【0006】
一方で、ICタグによる管理情報を利用した管理方法として紙管に設けられたICタグの情報を読み取り製造情報と管理情報を照合し加工内容を管理して歩留りの低下を回避する方法が提案されている(特許文献5)。また、紙管にとり付けたICタグの情報を管理データベースに登録することで製品の出荷先や保管場所を管理する方法が提案されている(特許文献6)。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜4、6のICタグ付き紙管を炭素繊維あるいは炭素繊維プリプレグの巻き取り用に使用した場合、ICタグは情報送信のために電磁波を用いており、炭素繊維の持つ電波吸収性のために送信した情報が読み取れない場合や、最悪の場合には情報の誤読が生じる場合がある。さらに、炭素繊維あるいは炭素繊維プリプレグパッケージを数本毎にダンボール等で梱包する場合、梱包体の外部からICタグの情報を読みとることができない製品が発生する問題点があった。
【0008】
また上記特許文献5で提案されているICタグを使用したロールの管理方法は加工内容を管理し製造不良の発生を回避するものであり、製品出荷において製品が多品種ありそれを品種毎に出荷管理する際に発生する誤出荷、例えば、ある品種の製品を他の品種の製品と混同して梱包してしまうことの回避にまで結びつけることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008―24504号公報
【特許文献2】特開2001―203523号公報
【特許文献3】特開2004―75366号公報
【特許文献4】特開2006―232449号公報
【特許文献5】特開2007―41755号公報
【特許文献6】特開2009―1348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、炭素繊維または炭素繊維プリプレグパッケージにおいて、ICタグ付き紙管を使用したときの通信性能の低下が起こらないパッケージと、そのパッケージを梱包しICタグを用いた製品管理の方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため本発明は以下の構成を有するものである。
【0012】
(1)紙管本体に非接触パッシブ型のICタグを有した炭素繊維パッケージであって、前記ICタグは紙管の中に埋め込まれているか、または、紙管の内周面または外周面に取り付けられており、炭素繊維パッケージを水平な平面に縦置きにするに際して、ICタグの下端が紙管の中央から上部になるように設置されたときに、紙管上部端面とICタグの下端面との距離をr、紙管上部端面と炭素繊維の巻き端面との距離をRとしたとき、R≧rであることを特徴とする炭素繊維パッケージ。
【0013】
(2)紙管本体に非接触パッシブ型のICタグを有した炭素繊維プリプレグパッケージであって、前記ICタグは紙管の中に埋め込まれているか、または、紙管の内周面または外周面に取り付けられており、炭素繊維プリプレグのパッケージを水平な平面に横置きするに際して、ICタグの両端が紙管の中央から一端側になるように設置されたときに、該紙管の一端側の端面とICタグの該紙管の一端側と反対側の端面との距離をr、該紙管の一端側の端面と炭素繊維プリプレグの巻き端面との距離をRとしたとき、R≧rであることを特徴とするパッケージ。
【0014】
(3)前記非接触ICタグは、ICタグのID情報を出力可能あるいはパッケージ固有情報を入出力可能である、前記(1)または(2)に記載のパッケージ。
【0015】
(4)前記紙管は、紙管本体の端部内周面に嵌合する内筒体に前記非接触パッシブ型のICタグが取り付けれたものである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のパッケージ。
【0016】
(5)ID情報あるいはパッケージの固有情報が書き込まれたICタグと、前記固有情報を記載した製品表示ラベル両方を有する、前記(3)または(4)に記載のパッケージ。
【0017】
(6)前記非接触パッシブ型のICタグは、通信する周波数帯にUHF帯を利用し、照射された電波を電力に変換しICチップの持つ情報を送信するものである、前記(1)〜(5)いずれかに記載のパッケージ。
【0018】
(7)前記(1)または(3)〜(6)のいずれかに記載のパッケージが、紙管軸が垂直方向になるように梱包され、備えているICタグの設置部が梱包ケースの上部または下部に揃って梱包されていることを特徴とする梱包体。
【0019】
(8)前記(2)〜(6)のいずれかに記載のパッケージが、紙管軸が水平方向になるように梱包され、備えているICタグの設置部が梱包ケースのいずれかの側部に揃って梱包されていることを特徴とする梱包体。
【0020】
(9)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のパッケージの管理方法であって、炭素繊維または炭素繊維プリプレグを紙管へ巻き取った際に、トラブルが発生し規定の巻量に達しなかったあるいは規定の巻量には達しているが品質、品位もしくは外観に何らかの異常が見られたパッケージに対して、そのパッケージを含んだ製品の製品表示ラベルにはトラブル品であることがわかるように印をつけ、管理用コンピュータには前記と同様トラブル品であることを送信/登録することによって、ICタグのID情報と紐付けすることを特徴とする管理方法。
【0021】
(10)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のパッケージの管理方法であって、該パッケージに取り付けられたバーコードラベルID情報、ICタグのID情報あるいはパッケージの固有情報と、梱包するケースNo.の情報を前記ICタグリーダ/ライタ装置から管理用コンピュータに送信され関連づけられ管理情報として登録し、梱包後において関連づけした梱包ケースNo.と、パッケージからなる製品のICタグに入力されたパッケージの固有情報の正誤を判断することを特徴とする管理方法。
【0022】
(11)前記パッケージの固有情報が、品種、製造日、ロット番号、巻き量あるいは、巻き長、製品等級を含むことを特徴とする、(10)に記載の管理方法。
【0023】
(12)前記(7)に記載の梱包体のICタグを、読みとり装置で梱包パッケージのICタグに近い上面または底面の外側から読みとることを特徴とする管理方法。
【0024】
(13)前記(8)に記載の梱包体のICタグを、読みとり装置で梱包パッケージのICタグに近い側の側面外部から読みとることを特徴とする管理方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、炭素繊維または炭素繊維プリプレグを巻き取ったICタグ付き紙管のICタグ情報の読み取りが安定化するため、電波吸収性のある炭素繊維またはそれを有してなる炭素繊維プリプレグを巻き取った場合でもICタグを利用したトレーサビリティシステムに導入可能なパッケージを製造することができる。また、梱包状態においてもパッケージのICタグを用いて、そのパッケージ固有情報の読み取りができるため、一度ICタグ、バーコードラベルおよび梱包ケースNo.を関連づけて管理サーバに登録すれば、梱包後においても梱包ケースとその梱包ケースに内包される各パッケージの固有情報を、開封することなく内容物の確認が可能になるためパッケージ出荷時の誤出荷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】炭素繊維をICタグ付き紙管に巻き取った状態の炭素繊維パッケージを示す図である。
【図2】本発明の炭素繊維パッケージ管理方法におけるICタグ付き紙管の登録工程のフローチャートを示す図である。
【図3】本発明の炭素繊維パッケージ管理方法における炭素繊維巻き取り工程のフローチャートを示す図である。
【図4】本発明の炭素繊維パッケージ管理方法における梱包工程のフローチャートを示す図である。
【図5】(a)本発明の炭素繊維パッケージを上部端部にICタグがくるよう梱包した状態を示す図であり、(b)本発明の炭素繊維パッケージを下部端部にICタグがくるよう梱包した状態を示す図である。
【図6】本発明の炭素繊維パッケージ梱包体を読み取りゲートにより読み取らせる概念図である。
【図7】炭素繊維プリプレグをICタグ付き紙管に巻き取った状態のパッケージを示す図である。
【図8】(a)本発明の炭素繊維プリプレグパッケージを側部にICタグがくるよう梱包した状態を示す図であり、(b)本発明の炭素繊維プリプレグパッケージを別の側部にICタグがくるよう梱包した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の望ましい実施の形態について説明する。
【0028】
本発明に用いられる炭素繊維自身の特性はとくに限定されず、PAN系、ピッチ系などの炭素繊維に適用できる。たとえば引張強度2000〜7000MPa、引張弾性率150〜900GPaの範囲にあるものが例示される。特に弾性率が280GPa以上の炭素繊維では電波吸収性が高く、本発明の効果が大きい。
【0029】
ICタグには、製品である巻き取られた炭素繊維パッケージの固有情報が判別できる情報が書き込まれる。炭素繊維パッケージの固有情報とは、例えば炭素繊維の品種名、製造者、製造日(製造年月日)、ロット番号(製造ロット)、巻き重量、巻き長、パッケージ番号、製品等級などから任意に選ばれたものを含み、それ以外の情報を含んでいても良く、それらが直接的に記載されているか、あるいは固有番号や記号によって、システム本体に登録された上記情報と1対1に対応していても良い(以下これらの情報をパッケージ情報と称することがある)。
【0030】
本発明に用いられる炭素繊維プリプレグ自身の特性についてもとくに限定されず、強化繊維については、PAN系、ピッチ系などの炭素繊維を必須成分とし、他にガラス繊維などを含んでいても良い。また繊維の状態は、一方向に配列したもの、織布、不織布、マットなど形態に特に制限がない。これらの繊維を熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂に含浸させたものである。好ましい樹脂の例としてはエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、PEEKなどの熱可塑樹脂が挙げられる。炭素繊維の引張強度としては2000〜7000MPa、引張弾性率150〜900GPaの範囲にあるものが例示される。特に弾性率が280GPa以上の炭素繊維では電波吸収性が高く、本発明の効果が大きい。また、樹脂含有量としては、10〜60質量%のものが好ましい。これらのプリプレグは、通常離型紙や離型フィルムなどとともに紙管に捲回されるが、本発明で使用するプリプレグはその巻き幅が紙管幅に対して小さく設定され、紙管の両端がプリプレグを巻かずに露出しているものである。
【0031】
ICタグには、製品である巻き取られた炭素繊維パッケージまたは炭素繊維プリプレグパッケージの固有情報が判別できる情報が書き込まれる。上記固有情報とは、例えば炭素繊維またはプリプレグの品種名、製造者、製造日(製造年月日)、ロット番号(製造ロット)、巻き重量、巻き長、パッケージ番号、製品等級などから任意に選ばれたものを含み、それ以外の情報を含んでいても良く、それらが直接的に記載されているか、あるいは固有番号や記号によって、システム本体に登録された上記情報と1対1に対応していても良い(以下これらの情報をパッケージ情報と称することがある)。
【0032】
上記ICタグを取り付けた紙管本体は、例えば帯状の原紙をスパイラル状に何層にも巻回し、下層の原紙と上層の原紙を接着剤で互いに接着して形成した筒状の紙管である。また、運搬輸送中に紙管同士が当たることによるICタグの損傷を防ぐためその紙管本体の端部内周面に肉薄の凹部を形成し、該凹部に嵌合する内筒体に非接触パッシブ型のICタグを取り付けたICタグ付き紙管等が好ましい。また、材質が電磁波を吸収しない材質、たとえばプラスチックなどからなる、いわゆるプラスチック紙管であっても好適に使用できる。用いるICタグはICチップとアンテナを組み合わせた読み書き可能なICチップであり通信する周波数帯にUHF帯を利用し、照射された電波を電力に変換しICチップの持つ情報を送信するものである。送信される情報はICチップ固有のID番号であり、好ましくは上記パッケージの固有情報をICチップに保有し送信することができる。
【0033】
炭素繊維を巻き取ったパッケージの形状の一例を図1に示す。これは紙管上部端面からICタグの下端面までの距離rと、紙管上部端面から炭素繊維の巻き端面までの距離Rの関係において距離Rがrよりも小さくなり重なるとICタグが受信もしくは発信する電磁波が炭素繊維の高い電波吸収性によって阻害され情報を読み取れないトラブルが発生する。一方、距離R−rが20mmを越えると、炭素繊維の巻幅が狭くなり、パッケージとして炭素繊維の占める部分の厚みが大きくなり取り扱い性が悪化し、さらに梱包時においても収納効率が悪くなるという問題がある。
【0034】
したがって、本発明に係るICタグ付き炭素繊維パッケージにおいては、R≧r(R−r≧0)である必要があり、好ましくは、0≦R−r≦20mm、より好ましくは2mm≦R−r≦15mmの範囲に規定される。
【0035】
本発明における別の様態として、ICタグは紙管の外側に粘付される。また、紙管の表層と内層の間に埋め込むことも可能である。いずれの場合でも炭素繊維パッケージを側面から見たときに図1に示す位置関係、すなわちR−r≧0で有ることが必須であり、好ましくは、0≦R−r≦20mm、より好ましくは2mm≦R−r≦15mmの範囲に規定される。
【0036】
本発明における炭素繊維パッケージには、好ましくは炭素繊維パッケージ情報が書き込まれたICタグと、同様の情報を記載した表示ラベル両方を紙管内部に有しており、また更に好ましくは、表示ラベルにはバーコード情報が含まれている。したがって、情報取得が必要な時にはICタグリーダで情報を読み取る、表示ラベルに記載した情報を目視する、表示ラベルに記載したバーコードを読む、の3種類の方法を選択することができ、また、複数の情報の突合せによって、万一の誤操作を防止することができる。
【0037】
この炭素繊維パッケージの管理方法の好ましい一例についてICタグ付き紙管の登録工程を図2、炭素繊維巻き取り工程を図3、梱包工程を、図4を用いて説明する。図2に管理方法におけるICタグ付き紙管の登録工程のフローチャートを示す。まず、ICタグが正常に作動するかを確認するため使用するICタグ付き紙管の固有番号(以下ID)をICタグリーダであらかじめ読み取る。読み取りの結果作動を確認したICタグ付き紙管に、巻取り予定の炭素繊維品種を表示したバーコードラベルをバーコードリーダでID読み取り後貼り付ける。貼り付け後再びバーコードラベルを読み取り、貼付による影響がないか(読み取り可能か)そして貼付前後で読み取り内容に変化がないかを確認し、動作を確認した紙管のICタグのIDとバーコードラベルのIDを紐付けして、それらIDについての情報を登録管理する管理コンピュータのデータベースとなる管理サーバに送信して関連づけを登録する。
【0038】
一方、ICタグのID読み取りの結果、作動が確認できなかったICタグ付き紙管は紙管とICタグを分別し廃棄する。また、ICタグのIDは読みとれたがバーコードラベルのIDがラベル貼付前後で読み取り不可あるいは誤読み取りを起こすICタグ付き紙管についてはバーコードラベルを紙管から取り除き、同一のバーコードラベルを再発行し登録工程のはじめにもどって再登録処理を行う。これによって不良紙管の混入を防ぐものである。
【0039】
続いて図3に炭素繊維巻き取り工程のフローチャートを示す。前記の方法で登録したICタグ付き紙管を炭素繊維製造工程のワインダースピンドルの当該位置に装着して炭素繊維製品を巻き取った際、トラブルが発生せず規定の巻量に達した場合はある期間内の全生産品から任意に抜き取り検査した製品の品質、品位および当該製品の外観を照合判定し合格であれば正常品として梱包工程に進む。一方、トラブルが発生し規定の巻量に達しなかったあるいは規定の巻量には達しているが品質、品位もしくは外観に何らかの異常が見られた場合、製品に粘付した製品ラベルにはトラブル品であることがわかるように印をつけ、管理用コンピュータには前記と同様トラブル品であることを入力し紙管の登録工程において管理サーバ内で関連づけ登録したICタグのID情報とバーコードラベルのID情報を更新する。その後屑処理あるいはトラブル品として梱包工程に進む。これによって正常品とトラブル品の混合を防ぐものである。
【0040】
続いて図4に梱包工程のフローチャートを示す。正常品もしくはトラブル品は容器、たとえばカートンケースに梱包される。梱包ケースには内容物を管理するため梱包ケースIDタグが張り付けられる。梱包時に梱包される炭素繊維パッケージすべてのバーコードラベルIDを読みとり、続いて梱包ケースのIDを読み取り、バーコードラベルIDおよびあらかじめ関連づけしているICタグIDそして梱包ケースIDそれらを関連づけして管理サーバに登録する。同一ケース内に梱包する全てのパッケージについてこの作業を行い、新しく梱包するケース毎にこの作業を繰り返すことで、梱包ケース内のパッケージ情報および梱包本数を管理、識別することができる。
【0041】
この後再度梱包ケースについてICタグIDと梱包ケースIDを読み取り前記で管理サーバに登録した登録情報と照合する。照合の結果、製品情報および梱包本数が一致すれば梱包終了となり出荷となるが一致しない場合は開封し梱包製品を確認する。
【0042】
このように予め使用する紙管と梱包ケースのIDを記録しておくことで在庫管理を行うとともに、ICタグを用いているためダンボールなどの不透明な包装体に遮蔽されていても開封することなく梱包ケース内の製品情報を確認することができ、梱包ケース内に万一別製品が紛れ込んだ場合もすぐに識別することができるため梱包間違いを予防することが出来る。
【0043】
ここで取り扱う上記した製品情報から、品種、製造日、ロット番号、巻き量あるいは、巻き長、製品等級を把握することができる。
【0044】
次に、ICタグ付き炭素繊維パッケージの梱包した状態の概念図を図5に示す。これは得られた炭素繊維パッケージを水平な平面に縦置きにし、すべて揃って上部(a)もしくは下部(b)側紙管の端部にICタグがくるよう梱包したものである。このように梱包することで、移動させる梱包ケースIDとケース内のパッケージIDを順次遠距離型の読み取りゲート6に読み取らせていく管理方法を採ることができる。この管理方法の例を図6に示す。炭素繊維パッケージを梱包したケースを輸送するベルトコンベア7のような輸送装置を利用し、その経路上にIDの遠距離型読み込みゲート6を設けることで行う。すなわち、ゲート内を通る梱包ケースIDと梱包ケース内のパッケージIDを読み取って管理サーバに送信するようにする。このときに、ICタグに位置が上側、または下側に揃っていることが好ましく、このようにするとゲート通過時に読みとるICタグの方向が揃っているためICタグ設置方向をランダムに梱包する場合に比べて読み取りミスが起こりにくい。また、検知器はICタグが設置されている方向にあることが一層好ましい。登録していたケースIDとパッケージID、もしくは数量が一致しない場合はライト8のような警報装置で知らせることで誤梱包を防ぐ。
【0045】
さらに、上記炭素繊維パッケージを炭素繊維プリプレグパッケージに置き換えても同様の効果が得られる。上記のとおりに説明される炭素繊維と、エポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂などのマトリックス樹脂を含んでなる炭素繊維プリプレグが巻き取られた炭素繊維プリプレグパッケージは、水平な平面に横置きされることが多く、そのため、炭素繊維プリプレグを巻き取ったパッケージの形状の一例を示す図7により説明することができる。
【0046】
すなわち、本発明の別の一態様によれば、紙管の一端側の端面とICタグの該紙管の一端側と反対側の端面との距離rと、紙管の一端側の端面と炭素繊維プリプレグの巻き端面との距離Rの関係において距離Rがrよりも小さくなり重なるとICタグが受信もしくは発信する電磁波が、炭素繊維プリプレグを構成する炭素繊維の高い電波吸収性によって阻害され情報を読み取れないトラブルが発生する。一方、距離R−rが40mmを越えると、紙管の巻幅が広くなり、梱包時において収納効率が悪くなるという問題がある。
【0047】
したがって、本発明に係るICタグ付き炭素繊維プリプレグパッケージにおいては、図7に示すようにR≧r(R−r≧0)である必要があり、好ましくは、0≦R−r≦40mm、より好ましくは2mm≦R−r≦25mmの範囲に規定される。
【0048】
なお、紙管ならびにパッケージの炭素繊維プリプレグパッケージ管理方法は、上記炭素繊維パッケージと同様であるが、炭素繊維プリプレグパッケージはその重量、大きさから1本で梱包されることが多く、梱包体についてはICタグ付き炭素繊維プリプレグパッケージの梱包した状態の概念図である、図8を用いて説明される。すなわち、図8のとおり、得られた炭素繊維プリプレグパッケージを水平な平面に横置きにし、その決められた側部どちらかに紙管の端部にICタグがくるよう梱包されている。なお、図8には省略されているが、炭素繊維プリプレグパッケージは、通常、紙管端面にダンボールなどからなる固定材で紙管を支えることにより梱包体に収納されている。
【0049】
以下に、本発明の具体的な実施例および比較例を示す。使用する非接触ICタグはICチップとアンテナを備えて構成されている。ICチップが有しているメモリには固有のID番号が記録される。アンテナは読み取り装置から発信される電波に共振して電流を発生させ、上記ICチップを起動させることができ、起動したICチップは上記メモリが記録している情報をアンテナから読み取り装置へ電波で送る。使用する電波帯はUHF帯を利用する。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
上記非接触ICタグを合成樹脂シートカバー材で覆い、紙管本体の端部内周面の紙層を切除して形成した凹部に嵌合したICタグ付き紙管にポリアクリロニトリル系繊維を前駆体とする炭素繊維束(単繊維数12000本)を紙管上部端面とICタグの下端面との距離rが15mm、紙管上部端面と炭素繊維の巻き端面との距離Rが17mm、つまりR−r=2mmになるよう巻き付け2kgのスクウェアーエンドパッケージ(紙管軸に対して端面が直角な巻形状)とした。この炭素繊維パッケージについて予めICタグのメモリ部に書き込んだ情報を読み取り装置で情報を読み取ることができるか試験を行ったところ、ICタグと読み取り装置との電波の送受信は良好で炭素繊維パッケージ50本に対して50本すべて読み取ることができた。
【0051】
(実施例2)
厚み8mmのダンボールが、最大2層重なっている梱包ケースに上記と同様の炭素繊維パッケージ12本をすべて揃って下部側紙管の端部にICタグがくるよう一段で梱包し、予めICタグのメモリ部に書き込んだ情報を、梱包ケースを開封することなく外部下部方向から読み取り装置で情報を読み取ったところ、ICタグと読み取り装置との電波の送受信は良好で梱包本数12本に対してすべての情報を読み取ることができ同様のテストを3回繰り返したところ毎回すべて読みとることができた。
【0052】
(比較例1)
上記炭素繊維パッケージにおいて紙管上部端面とICタグの下端面との距離rが15mm、紙管上部端面と炭素繊維の巻き端面との距離Rが13mm、つまりR−r=−2mm、つまりICタグと炭素繊維の巻位置が2mm重なった状態で巻き付け2kgのスクウェアーエンドパッケージ(紙管軸に対して端面が直角な巻形状)とした。この炭素繊維パッケージについて予めICタグのメモリ部に書き込んだ情報を読み取り装置で情報を読み取ることができるか試験を行ったところ、炭素繊維パッケージ10本に対して7本しか読み取れず炭素繊維の持つ電波吸収性によりICタグが正常に作動しないことがわかった。
【0053】
(比較例2)
厚み8mmのダンボールが、最大2層重なっている梱包ケースに上記と同様の炭素繊維パッケージ12本のうち6本は揃って上部側紙管の端部にICタグがくるように、残りの6本は揃って下部側紙管の端部にICタグがくるよう一段で梱包し、予めICタグのメモリ部に書き込んだ情報を、梱包ケースを開封することなく外部下部方向から読み取り装置で情報を読み取ったところ、梱包本数12本に対して下部側紙管の端部にICタグがくるよう梱包した6本のみ情報を読み取ることができ、上部側紙管の端部にICタグがくるよう梱包した6本については情報を読み取ることができず同様のテストを3回繰り返したところ毎回すべて同様の結果となった。
【0054】
(比較例3)
厚み8mmのダンボールが、最大2層重なっている梱包ケースに上記と同様の炭素繊維パッケージ12本をすべて揃って上部側紙管の端部にICタグがくるよう一段で梱包し、予めICタグのメモリ部に書き込んだ情報を、梱包ケースを開封することなく外部下部方向から読み取り装置で情報を読み取ったところ、梱包本数12本に対してすべて情報を読み取ることができず同様のテストを3回繰り返したところ毎回すべて読みとることができなかった。
【0055】
(実施例3、比較例4)
上記非接触ICタグを取り付けた紙管(外径309mm、長さ1250mm)に炭素繊維プリプレグ(引張強度5GPa、弾性率230GPaの炭素繊維65質量%と、130℃硬化型エポキシ樹脂35質量%からなり、炭素繊維目付が150g/mであるもの)をシリコーンコートした離型紙に担持し、表面にポリエチレンの保護フィルムを貼り付け、100m長さを巻き付けた。紙管一方側の端面とICタグの紙管外側端面との距離rが42mm、その紙管端面とプリプレグの巻き端面との距離Rが45mm、つまりR−r=3mmになるよう巻き付け、梱包ケースに梱包した。予めICタグのメモリ部に書き込んだ情報を梱包ケースの外から読み取り装置でICタグを貼り付けた側の側面から読みとり試験を行ったところ、ICタグと読み取り装置との電波の送受信は良好で炭素繊維プリプレグパッケージ10本に対して10本すべて読み取ることができた。一方、紙管一方側の端面とICタグの紙管外側端面との距離rを50mm、つまりR−r=−5mmになるよう巻き付け、同様に試験を行ったところ、ICタグと読み取り装置との電波の送受信は炭素繊維プリプレグパッケージ10本に対して6本しか読みとれなかった。
【符号の説明】
【0056】
1.非接触ICタグ
2.紙管本体
3.炭素繊維束または炭素繊維プリプレグ
4.梱包ケース
5.炭素繊維または炭素繊維プリプレグパッケージ梱包体
6.遠距離型ID読み取りゲート
7.ベルトコンベア
8.警報ライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙管本体に非接触パッシブ型のICタグを有した炭素繊維パッケージであって、前記ICタグは紙管の中に埋め込まれているか、または、紙管の内周面または外周面に取り付けられており、炭素繊維のパッケージを水平な平面に縦置きにするに際して、ICタグの下端が紙管の中央から上部になるように設置されたときに、紙管上部端面とICタグの下端面との距離をr、紙管上部端面と炭素繊維の巻き端面との距離をRとしたとき、R≧rであることを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
紙管本体に非接触パッシブ型のICタグを有した炭素繊維プリプレグパッケージであって、前記ICタグは紙管の中に埋め込まれているか、または、紙管の内周面または外周面に取り付けられており、炭素繊維プリプレグのパッケージを水平な平面に横置きにするに際して、ICタグの両端が紙管の中央から一端側になるように設置されたときに、該紙管の一端側の端面とICタグの該紙管の一端側と反対側の端面との距離をr、該紙管の一端側の端面と炭素繊維プリプレグの巻き端面との距離をRとしたとき、R≧rであることを特徴とするパッケージ。
【請求項3】
前記非接触パッシブ型のICタグは、ICタグのID情報を出力可能あるいはパッケージ固有情報を入出力可能である、請求項1または2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記紙管は、紙管本体の端部内周面に嵌合する内筒体に前記非接触パッシブ型のICタグが取り付けられたものである、請求項1〜3のいずれかに記載のパッケージ。
【請求項5】
ID情報あるいはパッケージの固有情報が書き込まれたICタグと、前記固有情報を記載した製品表示ラベル両方を有する、請求項3または4に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記非接触パッシブ型のICタグは、通信する周波数帯にUHF帯を利用し、照射された電波を電力に変換しICチップの持つ情報を送信するものである、請求項1〜5のいずれかに記載のパッケージ。
【請求項7】
請求項1または3〜6のいずれかに記載のパッケージが、紙管軸が垂直方向になるように梱包され、備えているICタグの設置部が梱包ケースの上部または下部に揃って梱包されていることを特徴とする梱包体。
【請求項8】
請求項2〜6のいずれかに記載のパッケージが、紙管軸が水平方向になるように梱包され、備えているICタグの設置部が梱包ケースのいずれかの側部に揃って梱包されていることを特徴とする梱包体。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のパッケージの管理方法であって、炭素繊維または炭素繊維プリプレグを紙管へ巻き取った際に、トラブルが発生し規定の巻量に達しなかったあるいは規定の巻量には達しているが品質、品位もしくは外観に何らかの異常が見られたパッケージに対して、そのパッケージからなる製品の製品表示ラベルにはトラブル品であることがわかるように印をつけ、管理用コンピュータには前記と同様トラブル品であることを送信/登録することによって、ICタグのID情報と紐付けすることを特徴とする管理方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のパッケージの管理方法であって、該パッケージに取り付けられたバーコードラベルID情報、ICタグのID情報あるいはパッケージの固有情報と、梱包するケースNo.の情報をICタグリーダ/ライタ装置から管理用コンピュータに送信され関連づけられ管理情報として登録し、梱包後において関連づけした梱包ケースNo.と、その梱包ケースに含まれるパッケージからなる製品のICタグに入力されたパッケージの固有情報の正誤を判断することを特徴とする管理方法。
【請求項11】
前記パッケージの固有情報が、品種、製造日、ロット番号、巻き重量あるいは、巻き長、製品等級を含むことを特徴とする、請求項10に記載の管理方法。
【請求項12】
請求項7に記載の梱包体のICタグを、読みとり装置で梱包パッケージのICタグに近い上面または底面の外側から読みとることを特徴とする管理方法。
【請求項13】
請求項8に記載の梱包体のICタグを、読みとり装置で梱包パッケージのICタグに近い側部の側面外側から読みとることを特徴とする管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−232811(P2012−232811A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100819(P2011−100819)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】